JP7154088B2 - 毛髪用化粧料組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、毛髪用化粧料組成物に関し、さらに詳しくは、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、もしくはヘアトリートメント等として用いることに適した毛髪用化粧料組成物に関する。
毛髪をシャンプー等で洗髪した後は、一般的に艶や指通りが悪くなる。そのため、ヘアリンス等の毛髪用化粧料が用いられている。このような毛髪用化粧料には、通常、毛髪に対する柔軟性や帯電防止性の付与のため、第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が配合されている(特許文献1~3)。
一方で、特許文献4には、カチオン性重合開始剤を用いて作られたカチオン性ゲル粒子およびその製造方法が開示されている。
特開2010-180172号公報 特開2010-275231号公報 特開2012-31128号公報 国際公開第2017/043484号
しかしながら、第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤は、毛髪の滑り性を良くするようなリンス、コンディショナー、もしくはトリートメントとしての効果(以下「トリートメント様効果」という)を発揮するものの、細胞への障害性なども認められているものもあり、満足なトリートメント様効果を発揮する量を製品に添加できないという課題があった。また、第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤の刺激性の強さから、人によっては第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を含有する毛髪用化粧料を使用できないという課題もあった。
また、国際公開第2017/043484号には、カチオン性重合開始剤を用いて作られたカチオン性ゲル粒子が開示されているものの、そのゲル粒子自体のトリートメント様効果については記載されていない。
本発明者らは、毛髪用化粧料に使用する低細胞障害性および低刺激性のカチオン性素材を検討するにあたり、カチオン性重合開始剤を用いて作られたカチオン性ゲル粒子に、毛髪の滑り性を良くするようなトリートメント様の効果があり、その高い安全性から第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤に代わる安全性の高い毛髪用化粧料用の素材として使用できることを見出した。さらに、本発明者らは、上記のカチオン性ゲル粒子が、トリートメント以外の様々な用途に利用可能であることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
従って、本発明は、毛髪の滑り性を良くするようなトリートメント様効果などの効果があり、刺激性が少なく、安全性が高い毛髪用化粧料組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)表面が陽性荷電で覆われたゲル粒子を含んでなる毛髪用化粧料組成物であって、該ゲル粒子が、カチオン性重合開始剤および炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーに由来する構造単位を含んでなる共重合体である、毛髪用化粧料組成物。
(2)前記共重合体が架橋剤に由来する構造単位を含むものである、(1)に記載の毛髪用化粧料組成物。
(3)前記カチオン性重合開始剤が、一般式(I):
Figure 0007154088000001
[式中、
Yは、単結合またはCR85を表し、
Zは、単結合またはCR86を表し、
72、R73、R75、R76、R77、R78、R85およびR86は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニルおよびヒドロキシからなる群から選択され、ここで前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニルおよびフェニルは、さらにC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニルおよびヒドロキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されていてもよく、
72およびR73は、さらに、それぞれ独立して、アダマンチル、またはSi(OCH(CH)で置換されたC1-6アルキルを表してもよく、
あるいは、R75およびR76、またはR77およびR78は、一緒になって-(CH3-5-を形成してもよく、
81、R82、R83、およびR84は、C1-4アルキル、C1-4アルキルカルボニル、およびC1-3アルコキシからなる群から選択される置換基であり、ここで前記C1-4アルキルは一つのC1-3アルコキシ基で置換されていてもよく、および
71およびR74は、それぞれ独立して、C1-3アルキル基であり、
はカウンターアニオンである]
の化学構造を有する化合物である、(1)または(2)に記載の毛髪用化粧料組成物。
(4)前記カチオン性重合開始剤が、2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)である、(1)~(3)のいずれかに記載の毛髪用化粧料組成物。
(5)前記炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーが、ビニル系化合物モノマーである、(1)~(4)のいずれかに記載の毛髪用化粧料組成物。
(6)前記炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーが、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸類、アクリル酸類のエステル類、メタクリル酸類、メタクリル酸類のエステル類、スチレン類、および酢酸ビニルモノマーからなる群より選択される1または2以上の化合物である、(1)~(5)のいずれかに記載の毛髪用化粧料組成物。
(7)前記炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーが、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)、メタクリル酸メチル(MMA)、および酢酸ビニルモノマーからなる群より選択される1または2以上の化合物である、(1)~(6)のいずれかに記載の毛髪用化粧料組成物。
(8)前記架橋剤が、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAM)および/またはジビニルベンゼンである、(2)~(7)のいずれかに記載の毛髪用化粧料組成物。
(9)前記毛髪用化粧料組成物の製品形態が、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアシャンプーまたはリンスインシャンプーである、(1)~(8)のいずれかに記載の毛髪用化粧料組成物。
(10)毛髪のボリュームアップ、毛髪のまとまりの促進、毛髪の染色、または外部からの刺激に対する毛髪の保護に用いるための、(1)~(8)のいずれかに記載の毛髪用化粧料組成物。
本発明は、細胞障害性および刺激性が少ない毛髪用化粧料組成物を提供できるという点で有利である。また、本発明は、そのゲル粒子表面が共有結合性のカチオン性基に覆われているため、化学的に安定であり、刺激をもたらす化合物が溶出せず毛髪用化粧料組成物として安全性が高い点で有利である。また、本発明は、毛髪の滑り性を良くするようなトリートメント様効果のある毛髪用化粧料組成物が提供できるという点で有利である。また、本発明は、毛髪の柔軟性を向上し、毛髪の帯電を防止し、毛髪の枝毛を防止する毛髪用化粧料組成物が提供できるという点で有利である。さらに、本発明は、ゲル粒子内部に所望の物質を内包させ、外部からの刺激に応じて、そこから該物質を時間と量を制御しながら放出させることにより、より効果的な毛髪のケアを行える毛髪用化粧料組成物を提供できる点で有利である。さらに、本発明の毛髪用化粧料組成物は、毛髪のボリュームアップ、毛髪のまとまりの促進、毛髪の染色、外部からの刺激に対する毛髪の保護にも用いることができる。
図1は、カチオン性ポリ酢酸ビニルゲル粒子(TT035)と標品のポリ酢酸ビニルのIRスペクトルの測定結果である。 図2は、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)ゲル粒子の毛髪付着性評価(励起波長473nm、蛍光波長485~585nm)の結果である(蛍光強度が強い部分を濃色で表示)。下段の棒グラフは、カチオン性(EF043)若しくはアニオン性(K40)N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)ゲル粒子処理による毛髪表面への蛍光物質の付着評価を定量的に行ったものである。縦軸の値は毛髪単位面積当たりの蛍光強度の平均値(n=5~6、エラーバーは標準誤差)である。 図3は、N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)ゲル粒子の毛髪付着性評価(励起波長473nm、蛍光波長485-585nm)の結果である(蛍光強度が強い部分を濃色で表示)。NIPMAM(-)は、アニオン性重合開始剤を用いて製造したゲル粒子(MAM001)、NIPMAM(+)は、カチオン性重合開始剤を用いて製造したゲル粒子(MAM006)の結果である。 図4は、メタクリル酸メチル(MMA)ゲル粒子の毛髪付着性評価(励起波長473nm、蛍光波長485-585nm)の結果である(蛍光強度が強い部分を濃色で表示)。MMA(-)は、アニオン性重合開始剤を用いて製造したゲル粒子(OG036)、MMA(+)は、カチオン性重合開始剤を用いて製造したゲル粒子(OG037)の結果である。 図5は、対照(サンプル塗布無し)のブリーチ毛髪の走査型電子顕微鏡写真(撮影条件:500V,2000倍,WD5.5mm,spot 3.0,検出器CBS,スケールバー=10μm)である。 図6は、0.1(w/v)%カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルのブリーチ毛髪への吸着の様子を示す走査型電子顕微鏡写真(撮影条件:500V,941倍,WD5.4mm,spot 3.0,検出器CBS,スケールバー=20μm)である。矢印部分が、毛髪表面に吸着したカチオン性MMAゲルである。 図7は、0.5(w/v)%カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルのブリーチ毛髪への吸着の様子を示す走査型電子顕微鏡写真(撮影条件:500V,2000倍,WD5.5mm,spot 3.0,検出器CBS,スケールバー=10μm)である。 図8は、0.1(w/v)%のアニオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルのブリーチ毛髪への吸着の様子を示す走査型電子顕微鏡写真(撮影条件:500V,2000倍,WD5.3mm,spot 3.0,検出器CBS,スケールバー=10μm)である。 図9は、0.1(w/v)%カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルで処理した毛髪を熱融着させた後の様子を示す走査型電子顕微鏡写真(撮影条件:500V,2500倍,WD5.7mm,spot 3.0,検出器CBS,スケールバー=10μm)である。 図10は、0.1(w/v)%カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルで処理した毛髪の熱融着後に2分間洗浄し、自然乾燥させた後の毛髪の様子(左図)、および17時間洗浄し、自然乾燥させた後の毛髪の様子(右図)を示す走査型電子顕微鏡写真(撮影条件:500V,2500倍,WD4.8mm,spot 3.0,検出器CBS,スケールバー=10μm)である。 図11は、0.1(w/v)%カチオン性アクリル酸ブチル(BA)ゲルで処理した毛髪を自然乾燥させた後の毛髪の様子を示す走査型電子顕微鏡写真(撮影条件:500V,2500倍,WD4.6mm,spot 3.0,検出器CBS,スケールバー=10μm)である。 図12は、0.4(w/v)%カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)懸濁液および0.4(w/v)%N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)懸濁液のそれぞれで処理した後の毛髪の乾燥時静電気発生量を示すグラフである。 図13は、左から、未処理のブリーチ黒髪毛髪、および0.68(w/v)%BAゲル懸濁液(AK055)で処理した毛髪の様子を示す写真である。 図14は、左から、白髪人毛対照(未処理)、0.1(w/v)%BAゲル(AK055)処理白髪人毛、0.1(w/v)%MMA-DVBゲル(AK053)処理白髪人毛の様子を示す写真である。 図15は、赤色MMA粒子TT083で処理した毛髪の様子を示す写真である。左が未処理の白髪であり、右がTT083処理毛髪である。 図16は、青色MMA粒子TT087で処理した毛髪の様子を示す写真である。左が未処理の白髪であり、右がTT087処理毛髪である。
発明の具体的説明
1.毛髪用化粧料組成物
本発明の毛髪用化粧料組成物は、表面が陽性荷電で覆われたゲル粒子を含んでなり、このゲル粒子は、カチオン性重合開始剤に由来する構造単位および炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーに由来する構造単位を含んでなる共重合体である。この特徴により、本発明の毛髪用化粧料組成物は、毛髪の滑り性を良くするようなトリートメント様効果などの様々な効果があり、その高い安全性から第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤に代わる安全性の高い毛髪用化粧料組成物として使用することができる。
さらに、ゲル粒子の化学的安定性を向上させる上では共重合体が架橋構造を含むことが好ましく、従って、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の毛髪用化粧料組成物は、表面が陽性荷電で覆われたゲル粒子を含んでなり、このゲル粒子は、カチオン性重合開始剤に由来する構造単位、炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーに由来する構造単位および架橋剤に由来する構造単位を含んでなる共重合体とされる。
2.表面が陽性荷電で覆われたゲル粒子
本発明の毛髪用化粧料組成物に含まれるゲル粒子は、表面が陽性荷電で覆われた任意の形状のゲル粒子:
Figure 0007154088000002
である。本発明で用いられるゲル粒子の形状は、好ましくは略楕円球形状であり、さらに好ましくは略球形状である。
上記のゲル粒子は、毛髪に対する細胞障害性および刺激性が少なく、その表面が共有結合性のカチオン性基に覆われているため、化学的に安定であり、刺激をもたらすカチオン性化合物が溶出せず、毛髪に対する安全性が高いという特徴を有する。また、上記のゲル粒子は、毛髪の滑り性を良くするようなトリートメント様効果や、毛髪の柔軟性を向上し、毛髪の帯電を防止し、毛髪の枝毛を防止するなどの効果を有し、よって、それ自体、ヘアリンス、ヘアコンディショナーまたはヘアトリートメント等の毛髪用化粧料組成物として使用することができる。さらに、上記のゲル粒子の内部に所望の物質を内包させ、外部からの刺激に応じてそこから該物質を放出させることにより、より効果的な毛髪のケアを行える毛髪用化粧料組成物を提供することもできる。さらに、本発明の毛髪用化粧料組成物は、毛髪のボリュームアップ、毛髪のまとまりの促進、毛髪の染色、外部からの刺激に対する毛髪の保護にも用いることができる。
一つの好ましい実施態様によれば、上記のゲル粒子は、
Figure 0007154088000003
の構造を有する。
3.表面が陽性荷電で覆われたゲル粒子の製造方法
上記のゲル粒子は、例えば、2つの末端のうち少なくとも一方の末端のユニットまたはその近辺のユニットが陽性荷電を有するポリマーを作製することにより製造することができる。一つの好ましい実施態様によれば、本発明で用いられるゲル粒子は、カチオン性重合開始剤と、炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーとを用いるラジカル重合反応を行うことにより製造される。さらに、本発明の好ましい実施態様によれば、ゲル粒子は、カチオン性重合開始剤と、炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーに加えて、架橋剤を用いる重合反応によって製造される。
(1)カチオン性重合開始剤
本発明に用いられるカチオン性重合開始剤は、(a)常温で安定であり、(b)水溶性であり、(c)ラジカル重合反応を惹起させるラジカル産生能があり、(d)ラジカル重合反応後の重合体の末端においても幅広いpHの範囲で、少なくとも中性付近で、正電荷を有するものである。
ここで、上記カチオン性重合開始剤は、細胞内において正電荷を保持するものであることが好ましい。多くの細胞内のpHは2~9、さらに一般的な動物、植物および微生物の細胞であれば4~8程度である。従って、カチオン性重合開始剤は、このpHの範囲内で正電荷を保持するものであることが望ましい。
また、上記カチオン性重合開始剤は、毛髪表面でカチオン性であることが望ましい。つまり毛髪表面は、濡れて水分のある環境や乾いた環境など、状態が変化する。そのどちらの条件下でも正電荷を保持していることが効果を長く発揮する上で望ましい。つまり、水中では、水がブレンステッドの酸として働くため、アミンなどはカチオン性になりやすいが、水分などがない環境下でもカチオン性になっていることが望ましい。具体的にはプロトン付加型のカチオン構造でなく、例えば4級アンモニウム構造を持つことが望ましい。
本発明に用いられるカチオン性重合開始剤は、例えば、一般式(I):
Figure 0007154088000004
[式中、
Yは、単結合またはCR85を表し、
Zは、単結合またはCR86を表し、
72、R73、R75、R76、R77、R78、R85およびR86は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニルおよびヒドロキシからなる群から選択され、ここで前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニルおよびフェニルは、さらにC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニルおよびヒドロキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されていてもよく、
72およびR73は、さらに、それぞれ独立して、アダマンチル、またはSi(OCH(CH)で置換されたC1-6アルキルを表してもよく、
あるいは、R75およびR76、またはR77およびR78は、一緒になって-(CH3-5-を形成してもよく、
81、R82、R83、およびR84は、C1-4アルキル、C1-4アルキルカルボニル、およびC1-3アルコキシからなる群から選択される置換基であり、ここで前記C1-4アルキルは一つのC1-3アルコキシ基で置換されていてもよく、および
71およびR74は、それぞれ独立して、C1-3アルキル基であり、
はカウンターアニオンである]
の化学構造を有する。
上記カチオン性重合開始剤における「カウンターアニオン」とは、有機化学の技術分野で有機化合物のカウンターアニオンとして通常用いられるアニオンであれば特に制限されず、例えば、ハロゲン化物アニオン(塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン)、有機酸の共役塩基(例えば酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン)、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオンなどが含まれる。本発明において好ましいカウンターアニオンとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(トリフレート)、塩化物イオン、硝酸イオンなどが挙げられる。
なお、カウンターアニオンが2価以上である場合、それに対応する個数のイオン性官能基とイオン結合を形成することは当業者により容易に理解されるとおりである。
本発明の一つの実施態様では、式(I)のYおよびZは単結合を表す。
別の実施態様では、式(I)のR81、R82、R83およびR84は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メチルカルボニル、イソブチル、および2-メチル-2-メトキシ-プロピルからなる群から選択される。
別の実施態様では、式(I)のR71およびR74はメチル基である。
別の実施態様では、式(I)のR72、R73、R75、R76、R77、R78、R85、およびR86は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニルおよびヒドロキシからなる群から選択される。
別の実施態様では、式(I)のR75およびR76、またはR77およびR78は、一緒になって-(CH-を形成する。
本発明の好ましい実施態様によれば、式(I)のR72およびR73、R75およびR77、R76およびR78、R81およびR84、R82およびR83、並びにR71およびR74は、それぞれ同一の置換基を表し、かつ、YおよびZは、同一の置換基、または共に単結合を表す。
本発明に用いられるカチオン性重合開始剤のさらに好ましい実施態様によれば、式(I)のR71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、およびR84がメチル基であり、R75、R76、R77、およびR78が水素原子であり、YおよびZが単結合である。
式(I)の化合物の合成法は、特に限定されないが例えば次のようにして合成することができる。
まず、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)誘導体:
Figure 0007154088000005
を適当な溶媒に溶解し、過剰量のメタノール存在下、室温で塩化水素ガスを通じることによって、活性なイミノエステル誘導体:
Figure 0007154088000006
を得ることができる。なお、本明細書において構造式中のMeはメチル基を意味する。次に、当該イミノエステル誘導体に、エチレンジアミンなどのアルキレンジアミン誘導体:
Figure 0007154088000007
を過剰量加え、撹拌することによって環状構造になった化合物:
Figure 0007154088000008
を得ることができる。さらに、ジクロロメタンに生成物を溶解し、室温、脱酸素条件下において、2.1当量のトリフルオロエタンスルホン酸エステルR71OTfもしくはR74OTfを反応させることにより、Nアルキル化反応が起こり、式(I)に表される目的の化合物を得ることができる。
本発明の好ましい実施態様によれば、上記の式(I)の化合物は、2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)とされる。
(2)モノマー
本発明において、ラジカル重合反応の原料となるモノマーとしては、炭素-炭素二重結合を有する化合物であれば、いずれのものも使用することができる。また、その中で、所望の成分、化合物を充填し、または化学結合するにあたり適当なものを、当業者であれば適宜選択することができる。また、その中で、生体適合性や分解容易性等の観点から適当なものを、当業者であれば適宜選択することができる。さらに、その中で、ラジカル重合反応の効率、経済性、安全性等の観点から適当なものを、当業者であれば適宜選択することができる。
本発明の一つの実施態様では、例えば、充填する成分または化合物の分子量が1000以下の低分子である場合には、架橋剤濃度を高くしてポアサイズを小さくしたゲル粒子を選択することができる。加えて、低分子はそのゲル粒子の網目から拡散で外に漏出してしまいやすいため、以下の記載のように低分子の疎水性や電荷などを利用して、ゲル粒子との相互作用を促すか、もしくは共有結合によって、ゲル粒子と直接結合できるようなモノマーを選択することが望ましい。一方、分子量が比較的大きな高分子の場合は、架橋剤の濃度を適切に選択することで網目を制御することが挙げられる。
別の実施態様では、生体適合性を重視する場合には、PEGなどのモノマーを用いることが挙げられる。
別の実施態様では、充填する成分または化合物が電荷を持っている場合は、その電荷のカウンターとなるイオン性基を持ったモノマーを選択することができる。例えば、充填する成分または化合物が負電荷を持っていれば、アミン等の正電荷を持つ側鎖を有するモノマーなどが挙げられ、充填する成分または化合物が正電荷を持っていれば、カルボン酸等の負電荷を持つ側鎖を有するモノマーなどが挙げられる。
別の実施態様では、充填する成分または化合物の疎水性・親水性によっても、モノマーの選択ができる。例えば、充填する成分または化合物が疎水性の高い分子であれば、側鎖に水酸基やアミン基およびイオン性基を含まず、かつ炭素数の大きなモノマーが挙げられ、さらにその中でも、充填する成分または化合物がベンゼン環を含むような構造であれば、フェニル基を側鎖に持つようなモノマーを選択することで、相互作用により、ゲル粒子内での充填成分の安定性を保つことができる。一方、充填する成分または化合物が水に溶けやすいような親水性の高い分子であれば、側鎖に水酸基やアミン基およびイオン性基を含むようなモノマーが挙げられる。
別の実施態様では、成分または化合物をゲル粒子に共有結合する場合は、アクリルアミド系のモノマーなどに目的の低分子または高分子を共有結合させた化合物を合成することで、該化合物をゲル粒子のモノマーとして利用できる。
別の実施態様では、pHに応答して、充填する成分または化合物をゲル粒子外に放出するようなことを考える場合には、pHに応答して化学構造が変わるようなモノマーを選択することで、ゲル粒子のポアサイズや充填する成分または化合物との相互作用の強弱をコントロールできる。そのようなモノマーとして、カルボン酸やアミンを側鎖に含むようなモノマーが挙げられる。
別の実施態様では、温度に応答して、充填する成分または化合物をゲル粒子外に放出するようなことを考える場合には、温度に応答してポリマー構造が変わるようなモノマーを選択することで、ゲル粒子のポアサイズや充填する成分または化合物との相互作用の強弱をコントロールできる。そのようなモノマーとして、アクリルアミド系のモノマーが挙げられる。
別の実施態様では、紫外線などの光に応答して、充填する成分または化合物をゲル粒子外に放出するようなことを考える場合には、UVに応答してモノマーの一部分の構造が開裂するようなモノマーを選択することで、ゲル粒子の構造を大きく変え、充填する成分または化合物をゲル粒子外に放出することができる。そのようなモノマーとして、PEG-photo―MA(Murayama, Shuhei, et al. “NanoPARCEL: a method for controlling cellular
behavior with external light.”Chemical Communications 48.67 (2012): 8380-8382.)のような光開裂性モノマーが挙げられる。
さらに、本発明の特徴として、カチオン性表面を有する様々なポリマー粒子・ゲルが合成できることにより、そのポリマー組成に対応した特徴を持つ粒子・ゲルを容易に毛髪表面に吸着させることが可能である。例えば、使用する数モル%のモノマーの親水性を変化させることにより、ポリマー粒子の性質が変化し、トリートメント効果やボリュームアップの使い分けが可能である。つまり、トリートメント効果を増強するにはポリマー粒子の親水性が強い方がよく、一方で、ボリュームアップ効果を増強するにはポリマー粒子の疎水性が強い方がよいという傾向がある。また、毛髪のまとまりを促進するには、ポリマー粒子のガラス転移温度が低い方がよいという傾向もある。これらの情報に照らし、当業者であれば、所望するポリマー粒子・ゲルの性質に応じて、適切なモノマーを選択することができ、さらには架橋剤などの他の要素を選択・配合することができる。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明に用いられる炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーとしては、ビニル系化合物モノマーが挙げられる。例えば、共重合体の合成などに関して経験的に有用な指標であるAlfrey,Priceの式に基づいたQ-eスキームを使った場合のQ値でモノマーをクラス分けすれば、Q≧0.2の共役系モノマーとして、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸類、アクリル酸類のエステル類、メタクリル酸類、メタクリル酸類のエステル類、スチレン類などが挙げられ、Q<0.2の非共役系モノマーとして、酢酸ビニルモノマーなどが挙げられる。Q値が近いモノマーは共重合しやすいなどの性質が知られていることから、これらのカテゴリーの中での共重合体は容易に作製することが可能である。
本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明に用いられる炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーとしては、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)、メタクリル酸メチル(MMA)、または酢酸ビニルモノマーが用いられる。
(3)架橋剤
本発明において、ラジカル重合反応の原料として架橋剤を用いる場合には、架橋剤としては、分子中に2以上のビニル基を含むモノマーであって、架橋剤として通常使用されているものであれば特に限定されない。当該架橋剤の具体的な例としては、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、N,N'-エチレンビスアクリルアミド、N,N'-メチレンビスメタクリルアミド、N,N'-エチレンビスメタクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
本発明において使用する架橋剤モノマーの量は、特に限定されないが、例えば、炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーに対して、0.1~20モル%の量を使用することができる。
本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明に用いられる架橋剤としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAM)またはジビニルベンゼンが用いられる。
(4)反応条件
本発明で用いられるゲル粒子は、高分子合成の技術分野における通常の知識に基づいて合成することができ、例えば、ラジカル重合などによる重合体として得ることができる。
本発明で用いられるゲル粒子の製造方法の1例は以下の通りである。
Figure 0007154088000009
重合開始剤の使用量は、使用するモノマーに対して0.01モル%以上の量であればよく、ラジカル合成が進行する濃度の範囲内で適量を選択することができる。例えば、0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上の重合開始剤を使用することができる。
重合反応に使用する反応溶媒は、特に限定されないが、例として、水、メタノール、アセトン、もしくはそれらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくは水を溶媒として系中を撹拌して重合反応を行う乳化重合系がよい。ラジカル重合は、特に限定はされないが、例えば0~100℃、好ましくは50~70℃の反応温度、および例えば1~48時間、好ましくは2~16時間の反応時間で行うことができる。
架橋剤モノマーを使用する場合の共重合反応は、当該技術分野で慣用の手法により行うことができる。
当該共重合反応に使用する反応溶媒としては、特に限定されないが、例えば、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ペンタデカン硫酸ナトリウム、N-ドデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロマイド、N-セチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロマイド、トライトンX-100など)を含む水を使用することができる。
共重合体のナノゲル(ナノサイズのゲル微粒子)のサイズは、共重合反応における撹拌効率、反応温度、界面活性剤の使用量、反応開始剤の使用量、架橋剤モノマーの使用量により調節することができる。例えば、界面活性剤および/または反応開始剤の使用量を増加させることにより、サイズが小さいナノゲルを得ることができる。得られるナノゲルのサイズは、本発明が属する当業者であれば適宜調節することができ、本発明の共重合体のナノゲルのサイズは、例えば、5~100nmである。
当該共重合反応条件は、特に限定はされないが、例えば0~100℃、好ましくは50~70℃の反応温度、および例えば1~48時間、好ましくは2~16時間の反応時間が挙げられる。
また、高分子合成の技術分野における通常の知識に基づき、必要に応じて、紫外線照射により、重合反応を起こすこともできる。
本発明の好ましい実施態様によれば、重合反応は機械的な攪拌の下で行われる。また、疎水性モノマーを用いてゲル粒子を製造するには、水との相溶性の高い溶媒、例えば、水、メタノール、アセトン、またはこれらの混合物を用いて重合反応を行うことが好ましい。さらに、水溶性モノマーを用いてゲル粒子を製造する場合であっても、得られるポリマーが水に溶けにくいものである場合には、上記と同様、水との相溶性の高い溶媒、例えば、水、メタノール、アセトン、またはこれらの混合物を用いて重合反応を行うことができる。また、水溶性モノマーを用いてゲル粒子を製造する場合において、得られるポリマーが水に溶けやすいものである場合には、水溶性モノマーの水溶液を油中水エマルジョンを形成し、これにカチオン性重合開始剤を添加して重合反応を行うことによってゲル粒子を製造することができる。さらに、ゲル粒子を製造する際に架橋剤を用いると、様々な性質のモノマーを用いてゲル粒子を形成することができ、また、得られるゲル粒子の化学的安定性を向上させることができる。
4.その他の成分
本発明の毛髪用化粧料組成物には、必要に応じて、上記以外の成分を、本発明の効果を実質上損なわない範囲内で配合することができる。このような成分としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ひまし油等の液体油脂;固体油脂;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等のロウ;ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アミノ変性若しくはポリエーテル変性シリコーン油等のシリコーン油;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ソルビトール、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤;カチオン化セルロース、カチオン化グアガム、カチオン化ローカストビーンガムなどのカチオン性多糖類、ポリクオタニウム-7などの合成系カチオン性高分子、ポリクオタニウム-39などの両性高分子等の水溶性高分子;トリクロロカルバニリド、イオウ、ジンクピリチオン、イソプロピルメチルフェノール等の抗フケ用薬剤;植物系増粘剤、微生物系増粘剤、動物系増粘剤、セルロース系増粘剤、デンプン系増粘剤、アルギン酸系増粘剤、ビニル系高分子、高分子量ポリエチレングリコール等の増粘剤;粘度調整剤;乳濁剤;金属イオン封鎖剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、1,2-オクタンジオール、メチルイソチアゾリノン等の防腐剤;マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、群青、紺青、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体等の粉末成分;赤色106号、だいだい色205号、黄色4号、緑色3号、青色1号等の色素;低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、各種抽出液、血行促進剤、局所刺激剤、毛包賦活剤、抗男性ホルモン剤、抗脂漏剤、角質溶解剤、殺菌剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、消炎剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、生薬エキス類等の育毛薬剤、pH調整剤、香料等が挙げられ、これらを必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することができる。
本発明の毛髪用化粧料組成物は、選択する剤形と形態に応じた方法に従って製造することが可能であり、典型的には、上記の必須配合成分と必要な選択的成分を、水等の溶剤に溶解させることにより製造される。本発明の毛髪用化粧料組成物の製品形態としては、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアシャンプー、リンスインシャンプー等が挙げられる。さらに、本発明の毛髪用化粧料組成物は、毛髪のボリュームアップ、毛髪のまとまりの促進、毛髪の染色、外部からの刺激に対する毛髪の保護にも用いることができ、それぞれの用途に応じた製品形態とすることもできる。
以下に実施例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実験手法
ゼータ電位は、Zetasizer Nano ZS (Malvern)を用いて測定を行った。ゲル粒子径は動的光散乱法(DLS)に基づき測定し、ELS-8000(大塚電子)またはZetasizer Nano ZS (Malvern)を用いて行った。
共重合体の合成に必要な単量体(蛍光性ユニット)の1つであるN-(2-{[7-(N,N-ジメチルアミノスルホニル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-イル]-(メチル)アミノ}エチル)-N-メチルアクリルアミド(DBThD-AA)は、文献A(Chemistry A European Journal 2012年,第18巻,第9552~9563頁)に記載の方法に従って行った。
同じく、共重合体の合成に必要な単量体(蛍光性ユニット)の1つである8-(4-アクリルアミドフェニル)-4,4-ジフルオロ-1,3,5,7-テトラメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY-AA)は、文献B(Analyst 2015年, 第140巻,第4498~4506頁)に記載の方法に従って行った。
実施例A-1:カチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を用いたN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)ゲルの製造
100mMの感熱性ユニットN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、1mMの架橋剤N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAM)、1.9mMの塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、1mMのN-(2-{[7-(N,N-ジメチルアミノスルホニル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-イル]-(メチル)アミノ}エチル)-N-メチルアクリルアミド(DBThD-AA)、および2.9mMのN,N,N’,N’-テトラメチレンジアミンを、19mLの蒸留水に溶解した。30分間アルゴンガスを通じることにより、この水溶液から溶存酸素を除去した。その後、この水溶液に、1mLの水に溶解した、28mMの2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を加え、70℃にてメカニカルスターラーを用いて1時間乳化重合させた。この反応液を室温に冷やした後、塩化ナトリウムを加え塩析をし、蒸留水で透析を行い、精製し、75.3mgの共重合体化合物EF043を得た(収率31%)。
同じくN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を主鎖としたアニオンゲルK40の合成は、文献B(Chemistry A European Journal 2012年,第18巻,第9552~9563頁)中のDBThD nanogelに記載の方法に従って行った。
実施例A-2:アニオン性重合開始剤過硫酸アンモニウム(APS)およびカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を用いたN-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)ゲルの製造
(1)アニオン性重合開始剤によるNIPMAMゲル(MAM001)の合成
254.37mg(2mmol)のN-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)、3.08mg(20μmol)のN,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAM)、7.67mg(20μmol)のN-(2-{[7-(N,N-ジメチルアミノスルホニル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-イル]-(メチル)アミノ}エチル)-N-メチルアクリルアミド(DBThD-AA)、および72.6mg(251mmol)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を19mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した。70℃で撹拌しながら、窒素ガスで30分間バブリングすることにより、この水溶液から溶存酸素を追い出した。1mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した127.8mg(560μmol)の過硫酸アンモニウム(APS)、および6.74mg(58μmol)のテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を滴下することで反応を開始した。70℃で、150rpmで撹拌しながら、1時間反応を行った。反応液を超純水を外液とする透析により精製して、148mgの共重合体化合物MAM001を得た。
(2)カチオン性重合開始剤によるNIPMAMゲル(MAM005)の合成
254.37mg(2mmol)のN-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)、3.08mg(20μmol)のN,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAM)、7.67mg(20μmol)のN-(2-{[7-(N,N-ジメチルアミノスルホニル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-イル]-(メチル)アミノ}エチル)-N-メチルアクリルアミド(DBThD-AA)、および12.16mg(38μmol)の塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)を、19mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した。70℃で撹拌しながら、窒素ガスで30分間バブリングすることにより、この水溶液から溶存酸素を追い出した。1mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した339.7mg(560μmol)の2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)、6.74mg(58μmol)のテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を滴下することで反応を開始した。70℃で、150rpmで撹拌しながら、1時間反応を行った。反応液を超純水を外液とする透析により精製して、79mgの共重合体化合物MAM005を得た。
実施例A-3:アニオン性重合開始剤過硫酸アンモニウム(APS)およびカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を用いたメタクリル酸メチル(MMA)ゲルの製造
(1)蛍光標識アニオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(OG036)の合成
247.9mg(123.8mM)のメタクリル酸メチル(MMA)、44.4mg(8.88mM)のポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、および0.97mg(0.1238mM)の8-(4-アクリルアミドフェニル)-4,4-ジフルオロ-1,3,5,7-テトラメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY―AA)を18mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した。常温でプロペラ撹拌しながら、窒素ガスで30分間バブリングすることにより、この水溶液から溶存酸素を追い出した。1mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した194.94mg(33.8mM)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を滴下し、オイルバスにセットした後、1mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した36.15mg(8mM)のアニオン性重合開始剤過硫酸アンモニウム(APS)を加えて反応を開始した。80℃で、約350rpmでプロペラ撹拌しながら、1時間反応を行った。反応液を超純水を外液とする7日間の透析により精製して、全量を凍結乾燥し、72mgの共重合体化合物OG036を得た。
(2)蛍光標識カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(OG037)の合成
247.9mg(123.8mM)のメタクリル酸メチル(MMA)、44.4mg(8.88mM)のポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、および0.97mg(0.1238mM)の8-(4-アクリルアミドフェニル)-4,4-ジフルオロ-1,3,5,7-テトラメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY―AA)を、18mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した。常温で30分プロペラ撹拌しながら窒素をバブリングし溶存酸素を追い出した。1mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した21.63mgCTAC(3.38mM)を加え溶解を確認した後、オイルバスにセットして1mLの超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)に溶解した9.71mgカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)(0.8mM)を加えて反応を開始した。70℃で、約150rpmでプロペラ撹拌しながら1時間反応を行った。反応液を超純水を外液とする7日間の透析により精製して、全量を凍結乾燥し、20mgの共重合体化合物OG037を得た。
実施例A-4:カチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を用いたポリ酢酸ビニルゲルの製造
300mLの3つ口フラスコに、inhibitor remover (sigma)により禁止剤除去した5mL(62.6mmol)の酢酸ビニルモノマー、および0.625mmolの架橋剤ジビニルベンゼンを入れ、121.47mg(0.333mmol)臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を入れ、水50mLを入れ、窒素で30分間溶存酸素を追い出した。そこに58.23mg(0.096mmol)のカチオン性開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)をいれ、70℃で1時間加熱した。反応終了後、撹拌を続けながらウォーターバスから外して常温まで冷却した。反応液を超純水を外液とする7日間の透析により精製して、乳化液の状態で、70.4mgの共重合体化合物TT035を得た。
TT035の一部を凍結乾燥して粉末にし、IRを測定した結果、図1のようなスペクトルが得られた。対照として市販のポリ酢酸ビニルポリマーのIRを測定し、そのスペクトルと見比べたところ、TT035は、ポリ酢酸ビニルに特徴的なピークを全て有していた。また、動的光散乱法(DLS)による粒子径測定をELS-8000(大塚電子)により行ったところ、TT035は、410nmの粒子径(DMSO中)であることがわかった。またゼータ電位測定を行ったところ、TT035の表面電位は20.5mVであり、カチオン性ポリ酢酸ビニル粒子ができていることを確認できた。
Alfrey,Priceの式に基づいたQ-eスキームのQ値では、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)などのアクリルアミド系モノマー、N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)などのメタクリルアミド系モノマー、メタクリル酸メチル(MMA)などのメタクリル酸エステルモノマーは、Q≧0.2の共役系モノマーであり、酢酸ビニルはQ<0.2の非共役系モノマーであるから、今回この両方のカテゴリーでゲル粒子の重合が確認できたことは、ラジカル重合開始剤を使ってビニル系モノマーを自由自在にゲル粒子に転換することができることを示している。
実施例B-1:蛍光標識ゲル粒子を用いたカチオン性粒子の毛髪付着性評価
以下の表1に示した実施例A-1~3で合成した蛍光標識ゲル粒子を用いて、毛髪付着性を評価した。評価に用いた毛髪は、軽度に脱色(ブリーチ)したヒト黒髪(株式会社毛束屋より入手)である。長さ1cm程度に切った毛髪を、0.05%重量の各種ゲル粒子水溶液に10分浸漬後、超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)で3回洗浄した。処理後の毛髪を、共焦点絞りを開き(C.A.785nm)、励起波長473nm、蛍光波長520-620nmもしくは485-585nm、の条件の下で、UPlanApo10X/0.40レンズを使用した蛍光顕微鏡(FV1000、オリンパス社)により観察を行った。
Figure 0007154088000010
N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)、メタクリル酸メチル(MMA)それぞれのゲル粒子を用いて蛍光顕微鏡観察を行った結果を、図2~4に示した。図2~4に示す通り、カチオン性ゲル粒子はアニオン性ゲル粒子と比較して毛髪表面への付着性が極めてよかった。また得られた画像から、毛髪部分をROIで囲み、蛍光強度の平均値を算出した(n=5~6)。その結果、図2の棒グラフに示すように、単位面積あたりの毛髪の蛍光強度はカチオン性粒子で有意に高いことがわかった。統計処理を行ったところ、t検定により未処理群とアニオン性K40処理群との間には有意差がなく(P>0.1)、未処理群とカチオン性EF043処理群との間には有意差が有る(P<0.001)ことが明らかとなった。これらの結果より、カチオン性ゲル粒子にはおしなべて毛髪表面への強い付着性があることが明らかとなった。
実施例C-1:カチオン性ゲル粒子を用いた毛髪の滑り性評価
蛍光色素を含有する、N-(2-{[7-(N,N-ジメチルアミノスルホニル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-イル]-(メチル)アミノ}エチル)-N-メチルアクリルアミド(DBThD-AA)を添加しない点を除いては、実施例A-2に記載された方法に従い、カチオン性若しくはアニオン性N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)ゲルを合成した。また、蛍光色素を含有する、8-(4-アクリルアミドフェニル)-4,4-ジフルオロ-1,3,5,7-テトラメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY-AA)を添加しない点を除いては、実施例A-3に記載された方法に従い、カチオン性若しくはアニオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルを合成した。
上述の方法に従い合成したそれぞれのゲル粒子の特徴を表2に示す。それぞれカチオン性若しくはアニオン性の特徴を持ったゲル粒子が合成できた。
Figure 0007154088000011
合成したカチオン性若しくはアニオン性N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)ゲル、およびカチオン性若しくはアニオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルの1重量%の水溶液を調製し、常温で一晩静置後、上清部分だけを取り分けて、そこに脱色(ブリーチ)した約2gの黒髪ヒト毛髪(根元揃え、1cm直径程度の束)を10分程度浸した。その後、毛髪を超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造された)で洗浄し、ドライヤーで乾燥させた。
アニオン性N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)ゲル水溶液、カチオン性N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)ゲル水溶液の2つで処理した髪の根本部分の滑りに関して、単盲検の5人の官能評価の結果、全ての人でカチオン性ゲル処理をした毛髪が良いとの結果であった。ゲルを入れなかった水のみの処理群を入れた場合を含めた場合でも、5人中4人でカチオン性ゲル塗布群が最も滑りが良いと答えた。同じくメタクリル酸メチル(MMA)ゲルに関しては、1日後の毛髪を触ったところ、3人の官能評価の結果、アニオン性ゲル処理、未処理群と比較して、最も滑りが良いという評価で一致した。これらの結果より、カチオン性ゲル粒子には、毛髪の滑り性を良くするようなトリートメント様効果があり、その高い安全性からカチオン性界面活性剤に代わる安全性の高い毛髪用化粧料組成物用の素材として使用できることが明らかとなった。
実施例D-1:カチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を用いたカチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルの製造
(1)カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(OG087-2)の合成
窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水1L(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)を準備した。1L容四つ口フラスコに超純水960mLを入れ、52℃にセットしたウォーターバスに入れて加温した。次に、6407.68mgのメタクリル酸メチル(64mM)と83.32mgのDVB(0.64mM)を加え、360rpmで撹拌した。40mLの超純水に溶解した1243.55mgのADIP(2.05mM)を滴下して反応を開始した。上部空寸に微弱な窒素をフローし、冷媒で5℃に冷却した還流管をセットし、その上部にシリンジで空気抜きを確保した。50℃(湯浴は52℃で設定し、液の実測値は50℃)で、360rpmの撹拌を続けながら6時間反応させた。反応後、ウォーターバスから四つ口フラスコを取り出し、一晩空冷した。反応液を、7.5kDaポアの透析膜にて超純水を外液とする4日間の透析により精製して、固形分含量0.54(w/v)%のOG087-2を得た。
(2)アニオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(AK041)の合成
窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水30mL(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)を準備した。また、ウォーターバスを70℃に昇温しておいた。30mLバイアル瓶に192.22mg(64mM)のメタクリル酸メチル(MMA)と2.5mg(0.64mM)のジビニルベンゼン(DVB)を29mL超純水に加え、30分間、ウォーターバス内で500rpmで攪拌しながら加温した。その後、14.034mg(2.05mM)の過硫酸アンモニウム(APS)を1mLの超純水に溶解したものを加え、そこから6時間、70℃、500rpmで攪拌しながらウォーターバス内で加温して反応を行った。反応液を、超純水を外液とする1日間の透析により精製して、固形分含量0.5(w/v)%のAK041を得た。
(3)平均粒子径およびゼータ電位の測定
上述の方法に従って合成したそれぞれのゲル粒子の平均粒子径およびゼータ電位を測定したところ、表3のようになり、それぞれカチオン性表面およびアニオン性表面を有するゲルが出来ていることがわかった。
Figure 0007154088000012
実施例D-2:カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルを用いた毛髪への吸着の観察
黒髪毛束を1(w/v)%ラウレス硫酸ナトリウムに1分間浸漬し、洗浄し、紙タオルとドライヤーで乾燥させた。1(w/v)%過酸化水素水と1(w/v)%アンモニア水を1:1(v/v)で混合し、ブリーチ液を調製した。作製した毛束を38℃ブリーチ液に20分間浸漬し、洗浄後に紙タオルとドライヤーで乾燥させた。この操作を3回繰り返し、ブリーチ毛髪を作製した。ブリーチ毛髪を、38℃に温めた0.5(w/v)%カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(OG087-2)、0.1(w/v)%カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(OG087-2)、およびアニオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(AK041)のそれぞれに、30分間、浴比1:10(毛髪/各サンプル(w/w))で浸漬したのち、ぬるま湯で2分間すすぎ、自然乾燥させた。これらの毛髪サンプルについて、走査型電子顕微鏡による観察を行った。それぞれの電子顕微鏡写真を図5~8に示す。
その結果、サンプルを塗布していないブリーチ毛髪の様子(図5)と比較して、0.1(w/v)%カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルを塗布したブリーチ毛髪では、毛髪のキューティクルに沿ってMMAゲルが吸着する様子が観察された(図6)。また、0.1(w/v)%カチオン性MMAゲル(図6)と0.5(w/v)%カチオン性MMAゲル(図7)の吸着の様子を観察すると、濃度依存的にMMAゲルの吸着量が増加する様子が確認された。0.1(w/v)%のカチオン性MMAゲルと同濃度のアニオン性MMAゲル(図8)との比較では、カチオン性MMAゲルの方がアニオン性のMMAゲルと比較して毛髪によく吸着する様子が観察された。
実施例E-1:カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルの熱による被膜形成性
図6で示したカチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルが吸着した毛髪を、ヘアアイロンによって加熱することで、毛髪表面の粒子の吸着の様子の違いを観察した。ヘアアイロンとしてはサロニアダブルイオンストレートアイロン(SL-004S)を用いた。毛髪束の根もとから10cm程度の範囲において、180℃に加熱したアイロンを30秒間のうちに繰り返しあてた。その後、走査型電子顕微鏡にて観察した。その電子顕微鏡を図9に示す。その結果、上述の方法で加熱処理した毛髪は、熱によりゲル粒子が溶融することで被膜を形成する様子が観察された。
さらに、ヘアアイロンで加熱した毛髪を、超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)20mL中に浸漬し、十分に毛髪が浸るようにした。その後2分間、17時間それぞれ、シェーカーで40rpmで振とうした。超純水ですすいだ後、毛髪を自然乾燥させて走査型電子顕微鏡にて観察を行った。その電子顕微鏡を図10に示す。その結果、すすぎ2分後(図6左)、17時間後(図6右)のいずれにおいても、洗浄によって被膜が剥離していないことが分かった。
実施例E-2:カチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を用いたカチオン性アクリル酸ブチル(BA)ゲル(AK049)の製造
窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水30mL(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)を準備した。また、ウォーターバスを60℃に昇温しておいた。29mLの超純水と246.09mg(64mM)のアクリル酸ブチル(BA)を添加し、マグネチックスターラーで1400rpm、出力50%で30分間攪拌した。その後、37.307mg(2.05mM)のカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を添加し、60℃で6時間反応させた。反応後の溶液を一部採取し、超純水を外液とする3日間の透析により精製した。固形分含量0.67(w/v)%のAK049を得た。
上述の方法に従って合成したAK049の平均粒子径およびゼータ電位を測定したところ、表4のようになり、カチオン性表面を有するゲルが出来ていることがわかった。
Figure 0007154088000013
実施例E-3:カチオン性アクリル酸ブチル(BA)ゲルの熱による被膜形成性
上記で合成したAK049を超純水で希釈し、0.1(w/v)%の濃度の懸濁液を調製した。そこに毛髪数本を十分浸るように浸漬し、自然乾燥させた。毛髪表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図11のように室温でも粒子が溶融し、被膜形成している様子が観察された。図9の同濃度のMMAゲルを塗布した様子と比較すると毛髪の表面を覆う被膜の様子が異なることが確認された。
この違いに起因する要素の一つとしては、ガラス転移温度の違いが考えられた。ポリメタクリル酸メチルのガラス転移温度は100℃程度であり、ポリアクリル酸ブチルのガラス転移温度は-56℃程度である。ガラス転移温度の低いBAゲルの方が室温で溶融し、容易に被膜を形成しやすいと考えられた。
実施例F-1:カチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を用いたカチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルおよびN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)ゲル粒子の製造
(1)カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(AK028-2)の合成
窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水500mL(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)を準備した。450rpm攪拌下で窒素バブリングを行いつつ、60℃まで加温した。その後、2880mg(64mM)のメタクリル酸メチル(MMA)と1mLの超純水に溶解した559.5mg(2.05mM)のカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を滴下して反応を開始した。60℃で6時間、450rpmでプロペラ攪拌させながら反応させた。反応液は、超純水を外液とする2日間の透析により精製して、乳化液の状態で固形分含量0.56(w/v)%の共重合体化合物TT060を得た。本方法で作られたゲルはパッチテストで安全性が確認されている。OG087-2と同一の組成で合成した固形分含量0.55(w/v)%のAK028とTT060を混合したもの(AK028-2)を、コーミングテスターによる帯電性測定のサンプルとして用いた。
(2)カチオン性N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)ゲル(AK020)の合成
窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水500mL(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)を準備した。480mLの超純水に5658mg(100mM)のNIPAMと325.475mg(5mM)のDVBを加えて、300rpm、70℃で30分間、シーリングミキサーUZUを用いて攪拌した。その後、20mLの超純水に溶かした8492.5mg(28mM)のカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を加え、ゴム栓で密栓し、1時間反応させた。反応後溶液を氷冷し、凝集物をろ紙で除いたのち、飽和量以上の塩化ナトリウムを加えて塩析した。析出物をガラスフィルターでろ取し、超純水に溶かして溶液とした。その溶液を3.5kDaの透析膜により透析した。同一のプロトコルで5バッチ作成し、全量2.99gのAK020を得た。この方法で合成したゲルはパッチテストにより安全性が確認されている。
(3)平均粒子径およびゼータ電位の測定
上述の方法に従って合成したそれぞれのゲル粒子の平均粒子径およびゼータ電位を測定したところ、表5のようになり、それぞれカチオン性表面を有するゲルが出来ていることがわかった。
Figure 0007154088000014
実施例F-2:カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルおよびN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)ゲルを毛髪に処理した際の静電気発生量の測定
上述の方法で合成したカチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(AK028-2)およびN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)ゲル(AK020)を0.4(w/v)%の濃度に調製したものを試験サンプルとして使用し、BLANKとして水ですすいだダメージ毛髪を用いた。約16gの株式会社Beaulax製のアジア人ダメージ毛髪毛束を使用し、次の手順で測定を行った。まず、毛髪を洗浄液で洗浄した後に、コーミングテスター(SK-7A、株式会社テクノハシモト製)でベースラインを整えた。自然乾燥させた毛髪に試験サンプルを1.5gずつ塗布した。コーミングテスターに設定したプログラムを実施した(櫛を8回通した後、約40℃の湯で流しながら櫛を15回通した。湯を止め、櫛を8回通した)。翌日、自然乾燥させた毛髪をコーミングテスターにセットし、櫛を4回通した。この時に測定した値を「乾燥時の静電気発生量」とした。1サンプルにつき、3本の毛束を用いて測定を行った。
上記の方法で測定した乾燥時の静電気発生量を図12に示す。図12に示されるように、BLANKと比較して、0.4(w/v)%MMAゲル懸濁液および0.4(w/v)%NIPAMゲル懸濁液で処理した毛髪は有意に帯電することが確認された。
特開2003-275016号公報および特開2003-201218号公報にも記載されているように、帯電性があることはネガティブな側面のみならず、毛髪を櫛通した際に毛髪のボリュームアップにつながる。この結果より、カチオン性メタクリル酸メチルゲルおよびN-イソプロピルアクリルアミドゲルは、毛髪のボリュームアップ効果を奏することが示された。
実施例G-1:カチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を用いたカチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルおよびアクリル酸ブチル(BA)ゲルの製造
(1)カチオン性メタクリル酸メチル(MMA-DVB)ゲル(AK053)の合成
6006.9mg(120mM)のメタクリル酸メチル(MMA)、78.11mg(1.2mM)のジビニルベンゼン(DVB)を、窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水490mL(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)に溶解した。常温から30分間プロペラ撹拌しながら加温し、60℃に昇温させた。242.64mg(0.8mM)のカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を加えて反応を開始した。60℃で6時間、450rpmでプロペラ攪拌させながら反応させた。反応液は、超純水を外液とする1日間の透析により精製して、乳化液の状態で固形分含量0.54(w/v)%の共重合体化合物AK053を得た。
(2)カチオン性メタクリル酸メチル(MMA-PEGDA)ゲル(AK054)の合成
6006.9mg(120mM)のメタクリル酸メチル(MMA)、2587.2mg(9mM)のポリエチレングコールジアクリレート(PEGDA、Mn=575)を、窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水490mL(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)に溶解した。常温から30分間プロペラ撹拌しながら加温し、60℃に昇温させた。242. 64mg(0.8mM)のカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を加えて反応を開始した。60℃で6時間、450rpmでプロペラ攪拌させながら反応させた。反応液は、超純水を外液とする1日間の透析により精製して、乳化液の状態で固形分含量1.5(w/v)%の共重合体化合物AK054を得た。
(3)カチオン性アクリル酸ブチル(BA)ゲル(AK055)の合成
AK049について実施例E-2に記載したものと同一のプロトコルで、500mLスケールで合成を行った。60℃で6時間、450rpmでプロペラ攪拌させながら反応させた。反応液は、超純水を外液とする1日間の透析により精製して、乳化液の状態で固形分含量0.69(w/v)%の共重合体化合物AK055を得た。
(4)平均粒子径およびゼータ電位の測定
上述の方法に従って合成したそれぞれのゲル粒子の平均粒子径およびゼータ電位を測定したところ、表6のようになり、カチオン性表面を有するゲルが出来ていることがわかった。
Figure 0007154088000015
実施例G-2:カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルを用いた毛髪の滑り性評価
黒髪毛束を1(w/v)%ラウレス硫酸ナトリウムに1分間浸漬し、洗浄し、紙タオルとドライヤーで乾燥させた。1(w/v)%過酸化水素水と1(w/v)%アンモニア水を1:1(v/v)で混合し、ブリーチ液を調製した。作製した毛束を38℃ブリーチ液に20分間浸漬し、洗浄後に紙タオルとドライヤーで乾燥させた。この操作を3回繰り返し、ブリーチ毛髪を作製した。上記で合成した架橋剤の異なる2種類のカチオン性メタクリル酸メチルMMA-DVBゲル(AK053)およびMMA-PEGDAゲル(AK054)の0.54(w/v)%濃度の水溶液を調製し、そこにブリーチ毛髪約2.5g(根元揃え、0.5cm直径程度の束)を30分程度浸漬した。その後、毛髪を超純水(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)で洗浄し、自然乾燥させた。
上記の手順により得られた毛髪の根元~中央部分の滑り性に関して、単盲検の5人のパネルによる官能評価の結果、全ての人がAK054で処理をした毛髪の方が滑り性が良いと評価した。AK054で処理した毛髪はふんわりしているというコメントもあった。
AK053は、帯電性を高めたという実施例F-2に記載のメタクリル酸メチル(MMA)ゲル(AK028-2)とメタクリル酸メチルとジビニルベンゼンの組成比が同一のサンプルであるため、滑り性の改善よりは、ボリュームアップにつながる特性を示す。その一方で、親水性のPEGDAを加えると、滑り性に効果をもたらすようなAK054のような粒子になる。本発明の特徴として、カチオン性表面を有する様々なポリマー粒子・ゲルが合成できることにより、そのポリマー組成に対応した特徴を持つ粒子・ゲルを容易に毛髪表面に吸着させることが可能である。例えば、使用する数モル%のモノマーの親水性を変化させることにより、ポリマー粒子の性質が変化し、トリートメント効果やボリュームアップの使い分けが可能になることが明らかとなった。
実施例G-3:カチオン性ポリマー粒子を用いた毛髪のまとまりやすさ評価
上記で合成した0.69(w/v)%アクリル酸ブチル(BA)ゲル(AK055)を、毛髪の滑り性の官能評価を行った実施例G-2でのブリーチ処理と同様にブリーチ処理した黒髪毛束に塗布したところ、毛髪にBAゲルがまとわりつき、未処理毛髪と比較して毛髪がまとまる様子が認められた(図13)。
さらに、AK055を0.1(w/v)%に希釈したBAゲル懸濁液で白髪ヒト毛髪を処理し、毛髪のまとまりやすさの評価を行った。具体的には、0.1(w/v)%のメタクリル酸メチル(MMA-DVB)ゲル(AK053)および0.1(w/v)%アクリル酸ブチル(BA)ゲル(AK055)を調製し、これらに白髪ヒト毛髪(Beaulax社製、根元そろえ、重さ1g程度)を30分間浸漬した。余分な水分をキムタオルで除去した後、ドライヤーで乾燥させた。これらの毛髪サンプルを90%~100%程度の密閉された高湿度環境下で、24時間、37℃でインキュベートした。この後に、毛髪サンプルの毛髪の広がりについて観察を行い、毛先のもっとも幅が大きかった部分の横幅の測定を行った(表7)。また、図14に高湿度条件下でインキュベートした後の毛髪サンプルの様子を示した。
Figure 0007154088000016
図14と表7より、AK055のアクリル酸ブチル(BA)ゲルの塗布により、Control試験区、MMA-DVBゲル塗布試験区と比較して毛髪の広がりが抑制されている様子が確認された。また、図13と図14の比較より、BAゲルの濃度を調節することによって、「毛髪のまとまりやすさ」という性質を付与できることが示された。
実施例H-1:カチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲルを用いた毛髪の染色剤としての効果
(1)色素モノマーを共重合させたカチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(TT083)の合成
窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水30mL(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)を準備した。30mLバイアル瓶にて、29mL超純水に192.22mg(64mM)のMMA、およびメタノール1mLに溶解した2.2mgの赤系色素モノマーRDW-R13(富士フィルム和光社製)を加え、30分間、ウォーターバス内でマグネチックスターラーで攪拌(500rpm)しながら60℃まで加温した。その後、37.3mg(2.05mM)のカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を添加し、蓋をした状態で60℃で16.5時間、撹拌しながら反応させた。反応液の10mLを回収し、9100×gで5分間の遠心処理により合成したMMAゲル粒子を回収し、超純水での洗浄を行った。この操作を計2回行い、1mLの超純水を加えて懸濁液の状態にし、毛髪への処理を行った。
(2)低分子色素を内包するカチオン性メタクリル酸メチル(MMA)ゲル(TT087)の合成
窒素ガスで30分間バブリングすることにより溶存酸素を追い出した超純水30mL(ミリポア社製の超純水製造装置により製造)を準備した。30mLバイアル瓶にて、29mL超純水に192.22mg(64mM)のメタクリル酸メチル(MMA)を加え、30分間、ウォーターバス内でマグネチックスターラーで攪拌(500rpm)しながら60℃まで加温した。その後、37.3mg(2.05mM)のカチオン性重合開始剤2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)を添加し、蓋をした状態で60℃、0.5時間、撹拌しながら反応させた。そこに2.48mg(0.1mM)のCBB R-250(濃青色)を添加し、続けて16時間、60℃で撹拌しながら反応させた。反応液の10mLを回収し、9100×gで5分間の遠心処理により合成したMMAゲル粒子を回収し、超純水での洗浄を行った。この操作を計2回行い、1mLの超純水を加えて懸濁液の状態にし、毛髪への処理を行った。
(3)ポリマーゲルによる毛髪の処理
白髪ヒト毛髪(Beaulax社製、根元そろえ、重さ1g程度)を、合成・精製した約1mLのTT083懸濁液およびTT087懸濁液のそれぞれに30分間浸漬した。その後、毛髪を超純水でよく洗浄し、ドライヤーで乾燥させた。
TT083およびTT087で処理した毛髪の写真を図15および図16に示した。画像解析ソフトImageJにより写真の毛髪部分のRGB表記での平均強度(0-255)を測定したところ、図15における未処理白髪は(190、164、126)、TT083処理髪は(204、118,144)であり、白髪はやや黄色を帯びた色をしているのに対し、TT083処理毛髪は鮮やかな赤色をしていた。また、図16における毛髪部分のRGB表記での平均強度は、未処理白髪が(188、169、105)であり、TT087処理毛髪が(133、133,125)であり、目視でもTT087処理毛髪はやや青を帯びたシルバー色であった。これらの結果から、色素含有カチオン性ゲルの表面カチオン基によって、毛髪表面に強く色素ゲル・粒子が吸着し、毛髪が色を帯びたと考えられた。
また、TT087に内包されている色素であるCBB R-250は一般的にタンパク質染色に使われるが、ゲル合成に用いた0.1mM水溶液では容易に染色することができず、ほぼ未処理時と変化がない。このことからカチオン性粒子に色素を組み入れることによって、従来使用できなかった色素を毛髪の染色剤として利用可能になることもわかった。
さらにこれは色素のみならず、カチオン性ゲルに低分子を内包することによって、毛髪表面に低分子を局在できることも意味している。例えば、UV吸収剤などを入れれば、毛髪を紫外線から守る保護剤ともなり得る。
また、実施例E-1で示したように、毛髪表面に塗布した粒子は熱によって皮膜を形成し、水で流しても落ちない状態になる。色素含有粒子に関しても同様で、アイロン処理後は表面が均一になり、色素も表面に固定され、物理的な処理などでも落ちにくい状態になる。よって、本発明のゲル粒子を用いた染色剤はブリーチ処理などを必要としないため、従来の染色剤と比較して安全で効果の高い染色剤と言える。

Claims (6)

  1. 表面が陽性荷電で覆われたゲル粒子を含んでなる毛髪用化粧料組成物であって、該ゲル粒子が、カチオン性重合開始剤および炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーに由来する構造単位を含んでなる共重合体であり、
    前記共重合体が架橋剤に由来する構造単位を含むものであり、
    前記炭素-炭素二重結合を含んでなるモノマーが、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N-イソプロピルメタクリルアミド(NIPMAM)、メタクリル酸メチル(MMA)、およびアクリル酸ブチルからなる群より選択される1または2以上の化合物である、毛髪用化粧料組成物。
  2. 前記カチオン性重合開始剤が、一般式(I):
    Figure 0007154088000017
    [式中、
    Yは、単結合またはCR85を表し、
    Zは、単結合またはCR86を表し、
    72、R73、R75、R76、R77、R78、R85およびR86は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニルおよびヒドロキシからなる群から選択され、ここで前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニルおよびフェニルは、さらにC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルカルボニル、フェニルおよびヒドロキシからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されていてもよく、
    72およびR73は、さらに、それぞれ独立して、アダマンチル、またはSi(OCH(CH)で置換されたC1-6アルキルを表してもよく、
    あるいは、R75およびR76、またはR77およびR78は、一緒になって-(CH3-5-を形成してもよく、
    81、R82、R83、およびR84は、C1-4アルキル、C1-4アルキルカルボニル、およびC1-3アルコキシからなる群から選択される置換基であり、ここで前記C1-4アルキルは一つのC1-3アルコキシ基で置換されていてもよく、および
    71およびR74は、それぞれ独立して、C1-3アルキル基であり、
    はカウンターアニオンである]
    の化学構造を有する化合物である、請求項1に記載の毛髪用化粧料組成物。
  3. 前記カチオン性重合開始剤が、2,2’-アゾビス-(2-(1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-3-イウム-2-イル))プロパン トリフレート(ADIP)である、請求項1又は2に記載の毛髪用化粧料組成物。
  4. 前記架橋剤が、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAM)および/またはジビニルベンゼンである、請求項のいずれか一項に記載の毛髪用化粧料組成物。
  5. 前記毛髪用化粧料組成物の製品形態が、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアシャンプーまたはリンスインシャンプーである、請求項1~のいずれか一項に記載の毛髪用化粧料組成物。
  6. 毛髪のボリュームアップ、毛髪のまとまりの促進、毛髪の染色、または外部からの刺激に対する毛髪の保護に用いるための、請求項1~のいずれか一項に記載の毛髪用化粧料組成物。
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JP2008223022A (ja) 2007-03-09 2008-09-25 Rohm & Haas Co カチオン性ポリマーラテックス
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