JP7153904B2 - 床板 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 平成29年11月29日 第5回鉄道技術展2017において文書をもって発表 平成29年11月29日 第5回鉄道技術展2017において展示により公開
この発明は、レールを移動自在に支持する床板に関する。
鉄道の分岐器では、ポイント部の融雪及び凍結防止のために、トングレールを転換自在に支持する床板に、この床板を加熱するためのヒータなどの加熱装置を取り付けている。従来の床板(従来技術1)は、床板加熱用のヒータを収容するヒータ保持枠と、このヒータ保持枠を床板の両側面に接合する接合具などを備えている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術1では、床板の両側面に接合具を溶接し、金属板材をU字状に折り曲げて形成したヒータ保持枠内にヒータを収容した状態で、このヒータ保持枠を接合具によって床板に取り付けている。また、従来の床板(従来技術2)は、ヒータ本体を支持する枠板と、この枠板を床板内部に収容する空間部と、この空間部に枠体を挿入する挿入口などを備えている(例えば、特許文献2参照)。この従来技術2では、ヒータ本体によって床板を加熱して、トングレールが摺動する摺動面上の積雪を溶かすとともに、トングレールが摺動面上で凍結するのを防止している。
特開2009-019499号公報
特開2001-131901号公報
従来技術1は、床板の両側面に予めヒータ保持枠を取り付ける必要があり、床板の外部からヒータによって床板を加熱する構造である。このため、従来技術1では、ヒータ保持枠を床板に溶接するための作業が必要になり、組立作業に手間がかかりコストが高くなってしまうとともに、床板自体が温まり難い問題点がある。また、従来技術1は、床板の両側にヒータ保持枠が取り付けられるため床板の幅が広くなる。このため、従来技術1では、床板が装着されたまくらぎからヒータ保持枠が突出し、軌道保守時に作業員が道床の突き固め作業を実施するときに、ヒータ保持枠が支障になってしまう問題点がある。
従来技術2は、締結孔が存在する軌間外側の床板の端部に挿入口を形成することができず、軌間外側の床板の端部から枠板を床板の内部に挿入することができない。このため、従来技術2は、締結孔が存在しない軌間内側の床板の端部に挿入口を形成しており、枠板を着脱するときには軌間内側から枠板を作業員が着脱する必要がある。また、従来技術2は、挿入口に差し込まれた状態の枠板内のヒータ本体に、電力を供給する電線を接続するために、軌間外側から軌間内側に電線を配線し、軌間内側からヒータ本体に電線を接続する必要がある。このため、従来技術2では、枠板の着脱作業やヒータ本体への配線作業を作業員が軌間内側で実施する必要があり、列車が走行していない間に作業時間が制限されてしまう問題点がある。また、従来技術2では、軌道保守時に道床の突き固め作業などを実施するときに、軌間内側の配線が作業の支障になってしまうため、軌道保守時に配線を着脱しなければならない問題点がある。さらに、従来技術2では、軌間内側から軌間外側に配線を引き出すために、この配線を収納するケーブル保護用のまくらぎを敷設する必要があり、作業に手間がかかるとともに作業コストが増加してしまう問題点がある。
この発明の課題は、保線作業や配線作業を容易に実施することができる床板を提供することである。
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図5~図8に示すように、レール(4,4b)を移動自在に支持する床板であって、床板加熱用の細長状加熱部(12a)を床板内部に収容する収容部(11i)と、前記細長状加熱部を前記収容部に軌間外側(P 2 )から挿入するための挿入部(11j)と、前記収容部を塞ぐ塞ぎ部(11m)とを備え、前記細長状加熱部は、前記挿入部に挿入された状態で前記軌間外側から配線されており、前記収容部の全長よりも長さが短く、トングレール(4a,4b)の底部下面(4d)が摺動する摺動面(11b)に到達可能な長さに形成されており、前記収容部は、一方の床板端部から他方の床板端部に直線状に形成されており、床板貫通孔(11c,11e)を避けて床板下面に形成された溝部に前記細長状加熱部を収容し、前記塞ぎ部は、前記溝部を塞ぐ薄板部材であることを特徴とする床板(11)である。
この発明によると、構造が簡単で保線作業や配線作業を容易に実施することができる。
この発明の実施形態に係る床板が使用される分岐器を一例として概略的に示す平面図である。 この発明の実施形態に係る床板の使用状態を概略的に示す平面図である。 この発明の実施形態に係る床板の使用状態を概略的に示す側面図である。 図2に示すIV方向から見た正面図である。 図2のV-V線で切断した状態を示す断面図である。 図2のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。 この発明の実施形態に係る床板を概略的に示す平面図である。 この発明の実施形態に係る床板の収容部の縦断面図である。 この発明の実施形態に係る床板に収容される細長状加熱部の配線を模式的に示す平面図である。
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1に示す転換装置1は、分岐器2を転換するための転換力を発生する装置である。転換装置1は、摩擦クラッチ及び減速歯車などを介して電動機の回転力をポイント部3の転てつ棒6に伝達してポイント部3を転換させる電気転てつ機である。転換装置1は、所定のストロークで動作かん1aと、この動作かん1aと分岐器2の転てつ棒6とを接続するスイッチアジャスタ1bなどを備えている。
分岐器2は、一つの軌道を二つ以上の軌道に分ける装置である。図1に示す分岐器2は、基準線が直線であり分岐線(他の一線)が曲線である片開き分岐器である。分岐器2は、ポイント部3などを備えている。ポイント部3は、分岐器2を構成する部分のうち軌道を分ける部分である。ポイント部3は、図1に示すトングレール4a,4bと、基本レール5a,5bと、転てつ棒6と、まくらぎ7と、図2~図6に示すレールプレス8と、図2~図4に示す締結部材9,10と、図1~図7に示す床板11などを備えている。ポイント部3は、転換装置1の動作かん1aに転てつ棒6が連結されており、転換装置1の転換動作と連動してトングレール4a,4bがA1,A2方向に転換動作する。ポイント部3は、トングレール4a,4bがA1方向に転換したときには、トングレール4aが基本レール5aと密着し、トングレール4bが基本レール5bから離間する。一方、ポイント部3は、トングレール4a,4bがA1方向とは反対方向のA2方向に転換したときには、トングレール4aが基本レール5aから離間し、トングレール4bが基本レール5bと密着する。図1~図3、図5及び図7に示す軌間内側P1は、左右の基本レール5a,5bの内側の領域であり、図1~図7に示す軌間外側P2は左右の基本レール5a,5bの外側の領域である。
図1に示すトングレール4a,4bは、先端部を尖らせた転換可能な可動レールである。トングレール4a,4bは、いずれも同一構造であり、以下では図1に示す一方のトングレール4aを中心に説明し、他方のトングレール4bについては詳細な説明を省略する。トングレール4aは、図2、図3、図5及び図7に示すように、床板11上に支持されるレール底部4cを備えており、このレール底部4cは床板11と接触する底部下面4dを備えている。
基本レール5a,5bは、トングレール4a,4bの先端部が密着及び分離する固定レールである。基本レール5a,5bは、図1~図6に示すように、床板11を介してまくらぎ7に締結されている。図1に示す基本レール5a,5bは、いずれも同一構造であり、以下では、図1に示す一方の基本レール5aを中心に説明し、他方の基本レール5bについては詳細な説明を省略する。基本レール5aは、図2~図6に示すように、鉄道車両の車輪と接触するレール頭部5cと、床板11を介してまくらぎ7に支持されるレール底部(フランジ部)5dと、レール頭部5cとレール底部5dとを繋ぐレール腹部(ウェブ部)5eなどを備えている。レール頭部5cは、車輪を直接支持する頭頂面(頭部上面)5fと、レール頭部5cの左右の側面部分を構成し頭頂面5fと連続する頭部側面5gと、レール頭部5cとレール腹部5eとの間の境界面部分を構成する上首部5hなどを備えている。レール底部5dは、レールプレス8によって床板11上に着脱自在に取り付けられる。レール底部5dは、レールプレス8によって押さえ付けられる底部上面5iと、床板11と接合する底部下面5jと、レール底部5dの左右の側面部分を構成する底部側面5kなどを備えている。図1に示す転てつ棒6は、トングレール4a,4bに取り付けられる部材である。転てつ棒6は、転換装置1が発生する転換力によって駆動してA1,A2方向に往復移動する。
図1~図6に示すまくらぎ7は、分岐器2を支持する支持体(支承体)である。まくらぎ7は、図1に示すように、基本レール5a,5bを固定し軌間を正確に保持するとともに、トングレール4a,4b及び基本レール5a,5bから伝達される列車荷重を広く道床に分散させるために、トングレール4a,4b及び基本レール5a,5bと道床との間に設置される。図1~図6に示すまくらぎ7は、天然の樹木から製造され防腐処理が施された木まくらぎであり、分岐器2に使用される分岐まくらぎである。まくらぎ7は、図1に示すように、トングレール4a,4b及び基本レール5a,5bの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、トングレール4a,4b及び基本レール5a,5bを離散的に支持している。
図2~図6に示すレールプレス8は、基本レール5a,5bの転倒を防止する部材である。レールプレス8は、図3及び図5に示すように、トングレール4aと接触する側とは反対側の基本レール5aの上首部5h及びレール腹部5eと密着するとともに、基本レール5aの底部上面5iを押さえ付けている。レールプレス8は、図2及び図6に示す挿入孔8aと、図3及び図5に示す突起部8bなどを備えている。図2及び図6に示す挿入孔8aは、締結部材9の締結ボルト9aを挿入する部分である。挿入孔8aは、床板11に対してレールプレス8をスライドさせた状態で、締結ボルト9aがレールプレス8を貫通するように長孔に形成されている。突起部8bは、床板11の嵌合溝11dと嵌合する部分である。突起部8bは、レールプレス8の下面から突出して形成されており、所定の長さで直線状に形成された凸部である。
図2~図6に示す締結部材9は、基本レール5aを床板11に締結する部材である。締結部材9は、締結ボルト9aと、締結ナット9bと、座金9cなどを備えている。締結ボルト9aは、レールプレス8を締め付ける部材である。締結ボルト9aは、図6に示すように、外観が略T字状のTボルトである。締結ボルト9aは、床板11の抜け止め部11gに引っ掛かるボルト頭部9dと、締結ボルト9aの中心線回りの回転を阻止する回り止め部9eなどを備えている。回り止め部9eは、床板11側の回り止め部11hと嵌合するように、ボルト頭部9dの首下の一部の横断面形状が正方形に形成されている。締結ナット9bは、締結ボルト9aの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部を有する部材である。座金9cは、締結ナット9bとレールプレス8との間に挟み込まれる部材である。
図2~図4に示す締結部材10は、床板11をまくらぎ7に締結する部材である。締結部材10は、例えば、床板11をまくらぎ7に締結する止めくぎである。締結部材10は、図2に示すように、床板11の上面を押さえ付ける平面形状が円形の頭部10aと、図7に示すように水平面で切断したときの断面形状が円形であり床板11の締結孔11cに挿入されてまくらぎ7に打ち込まれるくぎ部10bなどを備えている。
図1~図7に示す床板11は、トングレール4a,4bを移動自在に支持する部材である。床板11は、トングレール4a,4b及び基本レール5a,5bとまくらぎ7との間に挿入される部材であり、これらの間に挟み込まれた状態でまくらぎ7に締結される締結用部材である。床板11は、トングレール4a,4bの底部下面4dを摺動自在に支持するとともに、基本レール5a,5bの底部下面5jを支持する。床板11は、例えば、一般構造用圧延材などの金属をプレス加工又は切断加工して所定の形状に形成されており、図2及び図7に示すように平面形状が長方形の板状部材である。図1~図7に示す床板11は、例えば、50kgNレール用床板又は60kgレール用床板である。床板11は、図3、図5及び図7に示す座面11aと、図2、図3、図5及び図7に示す摺動面11bと、図7に示す締結孔11cと、図2、図3、図5及び図7に示す嵌合溝11dと、図6及び図7に示す締結孔11eと、図5~図8に示す収容部11iと、図4、図5及び図7に示す挿入部11jと、図6及び図8に示す接合部11kと、図4~図6及び図8に示す塞ぎ部11mなどを備えている。
図3、図5及び図7に示す座面11aは、基本レール5a,5bの底部下面5jを搭載する部分である。座面11aは、図3及び図5に示すように、摺動面11bよりも僅かに低く平坦面に形成されている。座面11aは、レール底部5dが床板11上の所定の位置に位置決めされるように、このレール底部5dの底部側面5kが引っ掛かる段差部(ショルダ部)を備えている。
図2、図3、図5及び図7に示す摺動面11bは、トングレール4a,4bの底部下面4dが摺動する部分である。摺動面11bは、図1に示すように、トングレール4a,4bがA1,A2方向に転換可能なように、図3及び図5に示すように座面11aと平行な平坦面に形成されている。図7に示す締結孔11cは、床板11を貫通する貫通孔である。締結孔11cは、締結部材10のくぎ部10bを挿入するために、床板11に形成された円形状の貫通孔である。締結孔11cは、床板11の長さ方向の両端部の4箇所の角部に形成されている。図2、図3、図5及び図7に示す嵌合溝11dは、レールプレス8の突起部8bが嵌合する溝である。嵌合溝11dは、図7に示すように、レール2の長さ方向と交差する方向に床板11の上面に所定の深さで直線状に形成されており、床板11の一方の縁部から他方の端部まで形成されている。
図6及び図7に示す締結孔11eは、床板11を貫通する貫通孔である。締結孔11eは、締結部材9の締結ボルト9aを床板11の上面側から挿入するために床板11に形成されている。締結孔11eは、図7に示すように、座面11aが形成されている側の床板11の端部寄りに、この床板11の中心線上に形成されており、締結孔11cよりも内側に形成されている。締結孔11eは、床板11の上面側に平面形状が略T形状に形成されている。締結孔11eは、図7に示す挿入口11fと、図6に示す抜け止め部11gと、図6及び図7に示す回り止め部11hなどを備えている。
図7に示す挿入口11fは、締結部材9の締結ボルト9aのボルト頭部9dを挿入する部分である。挿入口11fは、ボルト頭部9dを挿入可能なように長孔状に形成されている。図6に示す抜け止め部11gは、締結部材9の締結ボルト9aが締結孔11eから抜け出すのを阻止する部分である。抜け止め部11gは、図7に示すように、回り止め部11hの下方の床板11の下面側を部分的に切り欠いて形成された凹部である。抜け止め部11gは、図7に示すように、挿入口11fから締結ボルト9aを挿入し、この締結ボルト9aを回り止め部11hに向けてスライドさせたときに,この締結ボルト9aのボルト頭部9dが引っ掛かる。図6及び図7に示す回り止め部11hは、締結部材9の締結ボルト9aの回転を阻止する部分である。回り止め部11hは、締結ボルト9a側の回り止め部9eと嵌合することによって、締結ボルト9aに締結ナット9bを装着するときに、この締結ボルト9aが中心線回りに回転するのを阻止する。
図5~図8に示す収容部11iは、床板加熱用の細長状加熱部12aを床板11の内部に収容する部分である。収容部11iは、図5及び図7に示すように、この収容部11iの内部に浸入した水又は塵埃などの異物が容易に排出可能なように、床板11の一方の端部から他方の端部に直線状に形成されている。収容部11iは、図7に示すように、この収容部11iが締結孔11c,11eと干渉しないように、これらの締結孔11c,11eを避けて床板11の内部に細長状加熱部12aを収容する。収容部11iは、締結孔11cと締結孔11eとの間を通過するように、床板11の長さ方向に互いに平行に二本形成されている。収容部11iは、図6及び図8に示すように、断面形状が略U字状の溝部であり、細長状加熱部12aの外径よりも僅かに内径が大きくなるように、機械加工などによって形成されている。収容部11iは、図5及び図7に示すように、軌間外側P2から軌間内側P1に向かって床板11の下面に形成された溝部に細長状加熱部12aを収容する。
図4、図5及び図7に示す挿入部11jは、細長状加熱部12aを収容部11iに軌間外側P2から挿入するための部分である。挿入部11jは、図4に示すように、床板11の一方の端部に形成された開口部であり、図5及び図7に示すように収容部11iに接続されている。挿入部11jは、図7に示すように、床板11の座面11a寄りの床板11の端部に形成されている。挿入部11jは、床板11をまくらぎ7に装着したときに、軌間内側P1ではなく軌間外側P2に位置する。
図6及び図8に示す接合部11kは、床板11に塞ぎ部11mを接合する部分である。接合部11kは、収容部11iと床板11の下面とが交差する角部に形成された段部(切欠部)である。接合部11kは、塞ぎ部11mを床板11に接合したときに、床板11の下面と塞ぎ部11mの下面とが同じ高さになるように、塞ぎ部11mの厚さと略同じ深さで形成されている。
図4~図6及び図8に示す塞ぎ部11mは、収容部11iを塞ぐ部分である。塞ぎ部11mは、例えば、一般構造用圧延材などの金属をプレス加工又は切断加工して、収容部11iと同じ長さ及び幅に形成されており、平面形状が長方形の薄板部材である。塞ぎ部11mは、接合部11kに溶接又は接着されている。
図9に示す加熱装置12は、床板11を加熱する装置である。加熱装置12は、床板11を加熱することによって、この床板11上の積雪を溶解して分岐器2の可動部分の凍結を防止する。加熱装置12は、電気機器を使用して融雪する電気融雪装置であり、故障が少なく運転制御が容易で保守の省力化を図ることが可能である。加熱装置12は、図4~図9に示す細長状加熱部12aと、図9に示す電源部12bと、コネクタ部12cと、配線部12dなどを備えている。
図4~図9に示す細長状加熱部12aは、床板11を加熱する手段である。細長状加熱部12aは、電流が流れたときに電気エネルギーを熱エネルギーに変換して発熱する発熱体である。細長状加熱部12aは、図4~図6及び図8に示すように、外観が円柱状又は円筒状であり、床板加熱用の棒状ヒータである。細長状加熱部12aは、床板11の内部からこの床板11の座面11a及び摺動面11bを加熱することによって、基本レール5a,5bの近辺とトングレール4a,4bの可動範囲とを加熱する。細長状加熱部12aは、図4~図6及び図8に示すように、床板11の収容部11iと塞ぎ部11mとの間の隙間を通過可能な外径に形成されている。細長状加熱部12aは、図5及び図7に示すように、収容部11iの全長よりも長さが短く形成されており、床板11の座面11aから摺動面11bに到達可能な長さに形成されている。細長状加熱部12aは、図9に示すように、挿入部11jに挿入された状態で軌間外側P2から配線される。細長状加熱部12aは、図8に示すように、温度に応じて抵抗値が変化するニッケルを主成分とする電熱線12eと、この電熱線12eの外周面を被覆してこの電熱線を電気的に絶縁する酸化マグネシウムなどの絶縁材12fと、この絶縁材12fの外周面を被覆して防水性、耐候性及び耐食性を向上させるステンレス、アルミニウム又は銅などの外装材12gなどを備えている。細長状加熱部12aは、床板11の温度が低下すると電熱線12eの抵抗値が上昇して発熱量が上昇し、床板11の温度が上昇すると電熱線12eの抵抗値が低下して発熱量が低下する。細長状加熱部12aは、内部に電熱線12eが略U字状に配線されており、コネクタ部12c側から細長状加熱部12aの先端部まで配線された電熱線12eがこの先端部で折り返されてコネクタ部12cまで配線されている。
図9に示す電源部12bは、細長状加熱部12aに電力を供給する手段である。電源部12bは、例えば、商用電源又は電池であり、コネクタ部12c及び配線部12dを通じて細長状加熱部12aに電力を供給する。コネクタ部12cは、細長状加熱部12aと配線部12dとを電気的に接続する手段である。コネクタ部12cは、細長状加熱部12aの電熱線12e側の導線と配線部12d側の導線とを接続した状態で、かつ、これらを電気的に絶縁した状態で収容する。コネクタ部12cは、軌間外側P2の任意の方向に配線部12dを配線可能なように、このコネクタ部12cと細長状加熱部12aとの間、及びこのコネクタ部12cと配線部12dとの間が屈曲可能に接続されている。コネクタ部12cは、電源部12bから供給される交流電力を直流電力に変換する変圧器を必要に応じて内蔵しており、変換後の直流電力を細長状加熱部12aの電熱線に供給する。配線部12dは、電源部12bからコネクタ部12cに送電する手段である。配線部12dは、コネクタ部12cから軌間外側P2に引き出されており、軌間外側P2で電源部12bと接続されている。配線部12dは、例えば、電源部12bからコネクタ部12cに電力を供給する屋外配線用の配電ケーブルなどである。
次に、この発明の実施形態に係る床板の取付方法を説明する。
図2~図4に示すまくらぎ7上に床板11を作業員が位置決めして、図7に示す床板11の締結孔11cに締結部材10のくぎ部10bを作業員が挿入し、まくらぎ7にくぎ部10bを作業員が打ち込むと、図1~図6に示すようにまくらぎ7に床板11が取り付けられる。次に、図3、図5及び図7に示す床板11の座面11a上に基本レール5a,5bが搭載されるとともに、床板11の摺動面11b上にトングレール4a,4bが搭載される。この状態で、図3及び図5に示すレールプレス8の突起部8bを床板11の嵌合溝11dに作業者が嵌合させて、基本レール5a,5bの上首部5h及びレール腹部5eにレールプレス8を作業者が密着させる。図3及び図5に示す床板11上にレールプレス8を作業員が位置決めした後に、図2に示すレールプレス8の挿入孔8a及び図6に示す床板11の締結孔11eに、締結ボルト9aのボルト頭部9dを作業員が挿入する。次に、図7に示す締結ボルト9aの回り止め部9eを床板11の回り止め部11hに作業員が嵌め込むと、図6に示す締結ボルト9aのボルト頭部9dが床板11の抜け止め部11gに引っ掛かる。図6に示すように、締結ボルト9aの雄ねじ部に座金9cを作業員が装着し、この締結ボルト9aの雄ねじ部に締結ナット9bを作業員が締め付けると、図1に示すように床板11を介してまくらぎ7に基本レール5a,5bが締結される。
次に、図4、図5及び図7に示す床板11の挿入部11jに細長状加熱部12aの端部を軌間外側P2から作業員が挿入し、床板11の座面11aから摺動面11bに達するまで細長状加熱部12aを挿入部11jに作業員が差し込むと、床板11の収容部11iに細長状加熱部12aが収納される。次に、図9に示すように、軌間外側P2に配線部12dを作業員が敷設し、配線部12dの一方の端部を電源部12bに作業員が接続するとともに、配線部12dの他方の端部をコネクタ部12cに作業員が接続すると、細長状加熱部12aに配線部12dが軌間外側P2から配線される。他の床板11についても収容部11iに細長状加熱部12aを作業者が差し込み、電源部12bとコネクタ部12cとを配線部12dによって作業員が接続する。古い細長状加熱部12aを新品の細長状加熱部12aと交換するときには、コネクタ部12cから配線部12dを作業員が取り外して、古い細長状加熱部12aを挿入部11jから作業員が引き抜き、新品の細長状加熱部12aを挿入部11jに作業員が差し込み、コネクタ部12cに配線部12dを作業員が接続する。
次に、この発明の実施形態に係る床板の作用を説明する。
図9に示す電源部12bからコネクタ部12cに配線部12dを通じて電力が供給されると、細長状加熱部12aの電熱線12eに電流が流れて細長状加熱部12aが発熱する。基本レール5a,5bの付近やトングレール4a,4bの可動範囲に積雪したり凍結が発生したりすると、床板11の温度が低下して細長状加熱部12aの電熱線12eの抵抗値が上昇する。このため、細長状加熱部12aの電熱線12eの発熱量が上昇して床板11の温度が上昇し、床板11上の積雪が溶解し凍結が防止される。基本レール5a,5bの付近やトングレール4a,4bの可動範囲の積雪が溶解し凍結が解消すると、床板11の温度が上昇して細長状加熱部12aの電熱線12eの抵抗値が低下する。このため、細長状加熱部12aの発熱量が低下して床板11の温度が低下し、電熱線12eの発熱の上昇が抑えられて無駄な電力消費が抑えられる。
この発明の実施形態に係る床板には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、床板加熱用の細長状加熱部12aを床板11の内部に収容部11iが収容する。このため、従来技術1のようなヒータ保持枠を床板11の両縁部に外付けする構造とは異なり、細長状加熱部12aを床板11内に収納することができる。その結果、床板11の幅が広がらずまくらぎ7の幅の範囲内に床板11を設置することができ、軌道の突き固め作業時などに細長状加熱部12aが作業の支障になるのを防ぐことができる。また、細長状加熱部12aによって床板11を内部から直接加熱することができるため、床板11自体を短時間で効率的に広範囲で加熱することができ、ポイント部3の融雪効果及び凍結防止効果を向上させることができる。
(2) この実施形態では、細長状加熱部12aを収容部11iに軌間外側P2から挿入するための挿入部11jを床板11が備えている。このため、従来技術2のような軌間内側P1から板状ヒータを床板11の内部に挿入する構造とは異なり、軌間外側P2から収容部11iに細長状加熱部12aを挿入することができる。その結果、軌間内側P1に作業員が立ち入らずに、軌間外側P2から細長状加熱部12aの着脱作業を実施することができる。また、従来技術2のようなヒータ保持枠を床板11の側縁部に溶接する作業が不要になり、組立作業に手間がかからず作業コストを削減することができる。
(3) この実施形態では、細長状加熱部12aが挿入部11jに挿入された状態で軌間外側P2から細長状加熱部12aに配線される。このため、従来技術2のような軌間内側P1から板状ヒータに配線する構造とは異なり、軌間外側P2から細長状加熱部12aに配線することができるとともに、軌間内側P1から軌間外側P2に配線を引き出す作業を省略することができる。その結果、軌間内側P1に作業員が立ち入らずに細長状加熱部12aの配線作業を実施することができるとともに、ケーブル保護用のまくらぎを敷設する必要がなくなって低コスト化を図ることができる。また、軌間内側P1から軌間外側P2に配線を引き出す必要がなくなって配線が短くなるため、設置コストを低減することができる。
(4) この実施形態では、床板11の締結孔11c,11eを収容部11iが避けてこの床板11の内部に細長状加熱部12aをこの収容部11iが収容する。このため、床板11の締結孔11c,11eと細長状加熱部12aが干渉しないように、床板11の一方の端部から他方の端部まで細長状加熱部12aを任意の長さで挿入することができる。例えば、従来技術2のような板状ヒータを床板11の内部に挿入する場合には、この板状ヒータの挿入箇所が軌間内側P1の床板11の端部に制限される。このため、従来技術2では、締結孔11eが存在する基本レール5a,5b付近まで板状ヒータを挿入することができず、基本レール5a,5bの付近を加熱することができない。この実施形態では、床板11の締結孔11cと締結孔11eとの間の隙間に細長状加熱部12aを挿入することができ、基本レール5a,5bの付近を細長状加熱部12aによって十分に加熱することができ、積雪防止効果及び凍結防止効果を向上させることができる。
(5) この実施形態では、軌間外側P2から軌間内側P1に向かって床板11の下面に形成された溝部に細長状加熱部12a収容する。このため、床板11の基本構造を大規模に改変せずに、床板11の下面に機械加工などによって簡単に溝部を形成して細長状加熱部12aを収容することができる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、分岐器2が片開き分岐器である場合を例に挙げて説明したが、片開き分岐器に限定するものではない。例えば、両開き分岐器、内方分岐器、外方分岐器、振分分岐器、三枝分岐器、複分岐器又は三線式分岐器などについても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、ポイント部3のトングレール4a,4bを支持する床板11を例に挙げて説明したが、ポイント部3の床板11に限定するものではない。例えば、ノーズ可動クロッシング、ウィング可動クロッシング、可動K字クロッシング又は鈍端可動クロッシングなどのクロッシング部の可動レールを支持する床板についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、トングレール4a,4bのレール底部4cを摺動面11bによって移動自在に支持する床板11を例に挙げて説明したが、このような支持構造に限定するものではない。例えば、トングレール4a,4bが転換動作するときにこのトングレール4a,4bに作用する摩擦抵抗を低減するために、トングレール4a,4bのレール底部4cを玉軸受(ボールベアリング)によって移動自在に支持する支持構造の床板についても、この発明を適用することができる。
(2) この実施形態では、まくらぎ7が木まくらぎである場合を例に挙げて説明したが、木まくらぎに限定するものではない。例えば、緊張材として使用される鋼材によってプレストレスが与えられたプレストレストコンクリート製まくらぎ(PC(Prestressed concrete)まくらぎ)、合成樹脂製の合成まくらぎ、又は鋼製若しくは鋳鉄製の鉄まくらぎなどについても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、支承体としてまくらぎ7を例に挙げて説明したが、このような支承体に限定するものではない。例えば、矩形平板状のプレキャストのコンクリート板(軌道スラブ)によって構成されて道床とまくらぎとを一体化させた省力化軌道の一種である軌道スラブ、又はレール2をそれぞれ支持するプレストレスコンクリート構造(PRC構造)の縦梁を鋼管製の継材によって連結する梯子状のラダーまくらぎなどの支承体についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、締結部材10がとめくぎである場合を例に挙げて説明したが、犬くぎ又はねじくぎなどの他の締結部材についても、この発明を適用することができる。
(3) この実施形態では、加熱装置12が電気機器を使用して融雪する電気融雪装置である場合を例に挙げて説明したが、温水を使用して融雪する温水融雪装置についても、この発明を適用することができる。この場合には、細長状加熱部12aの内部に温水を循環させて床板11を加熱することができる。また、この実施形態では、細長状加熱部12aの外観が円柱状又は円筒状の棒状ヒータである場合を例に挙げて説明したが、外観が角柱状又は角筒状の棒状ヒータ、外観が細板状又は長板状の線状ヒータなどについても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、細長状加熱部12aの長さを収容部11iの全長よりも短く形成する場合を例に挙げて説明したが、細長状加熱部12aの長さを収容部11iの全長と略同じ長さに形成する場合についても、この発明を適用することができる。
(4) この実施形態では、2つの収容部11iを床板11に形成する場合を例に挙げて説明したが、1つの収容部11iを床板11に形成する場合又は3つ以上の収容部11iを床板11に形成する場合についても、この発明の適用することができる。また、この実施形態では、2つの収容部11iを床板11に形成し細長状加熱部12aを2つの収容部11iにそれぞれ収容する場合を例に挙げて説明したが、細長状加熱部12aを2つの収容部11iのいずれか一方に収容する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、収容部11iと塞ぎ部11mとの間に細長状加熱部12aを挟み込み収容する場合を例に挙げて説明したが、このような収容構造に限定するものではない。例えば、細長状加熱部12aが収容部11iに密着するように、細長状加熱部12aと塞ぎ部11mとの間に波形の板ばねを収容する場合についても、この発明を適用することができる。
1 転換装置
2 分岐器
3 ポイント部
4a,4b トングレール
5a,5b 基本レール
7 まくらぎ
8 レールプレス
8a 挿入孔
9,10 締結部材
11 床板
11a 座面
11b 摺動面
11c,11e 締結孔(床板貫通孔)
11i 収容部
11j 挿入部
11k 接合部
11m 塞ぎ部
12 加熱装置
12a 細長状加熱部
12e 電源部
12f コネクタ部
12g 配線部
1 軌間内側
2 軌間外側

Claims (1)

  1. レールを移動自在に支持する床板であって、
    床板加熱用の細長状加熱部を床板内部に収容する収容部と、
    前記細長状加熱部を前記収容部に軌間外側から挿入するための挿入部と、
    前記収容部を塞ぐ塞ぎ部とを備え、
    前記細長状加熱部は、
    前記挿入部に挿入された状態で前記軌間外側から配線されており、
    前記収容部の全長よりも長さが短く、トングレールの底部下面が摺動する摺動面に到達可能な長さに形成されており、
    前記収容部は、一方の床板端部から他方の床板端部に直線状に形成されており、床板貫通孔を避けて床板下面に形成された溝部に前記細長状加熱部を収容し、
    前記塞ぎ部は、前記溝部を塞ぐ薄板部材であること、
    を特徴とする床板。
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