以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」と表記する。)を、図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
はじめに、従来の検出装置において、対象物の到来を判定するために信号値と比較される閾値を固定値とすることが難しい事情について説明する。センサによって対象物を検出する場合、センサをどのような設備のどこに設置するか、対象物がどのような物であるか、センサによってどのような物理量を測定するかといった個別の事情により、対象物が無い状態に測定される信号値と、対象物が有る状態に測定される信号値とがそれぞれ異なり、また、信号値が変化する速さが異なる。ここで、対象物が無い状態に測定される信号値と、対象物が有る状態に測定される信号値とは、互いに独立している場合もあれば、ある程度相関している場合もある。
例えば、センサが、対象物に光を照射して、対象物により反射した光を検出する反射型センサの場合、対象物無しの状態の受光量を決める要因は、センサと背景反射物との配置であったり、背景反射物の反射率であったりする。また、対象物有りの状態の受光量を決める要因は、センサと対象物との配置であったり、対象物の反射率であったりする。そのため、対象物の到来を判定するために信号値と比較される閾値を固定値とすることは難しく、使用状況に応じて設定する必要があった。
また、センサが、対象物に光を照射して、対象物を透過する光を検出する透過型センサの場合、対象物無しの状態の受光量を決める要因は、投光量であったり、投光部と受光部との配置であったりする。また、対象物有りの状態の受光量を決める要因は、対象物の透過率であったりする。そのため、対象物の到来を判定するために信号値と比較される閾値を固定値とすることは難しく、使用状況に応じて設定する必要があった。
次に、従来の検出装置において、当初設定した閾値を経時的に再調整しなければならない事情について説明する。センサによって対象物を検出する場合、センサの汚れや劣化により信号値が経時的に変化したり、環境変化によって信号値が経時的に変化したりすることがある。
例えば、センサが、反射型センサであったり、透過型センサであったりする場合、投光部の光学窓に汚れが付着することにより、投光量が低下し、その結果、受光量が低下することがある。それとは反対に、投光部の光学窓の汚れを除去したことにより、受光量が急激に増加することもある。また、投光部の投光素子が劣化することにより投光量が低下し、受光量が低下することがある。さらに、太陽光の影響等により測定環境の明るさが変動することにより、受光量が変動することがある。そのため、対象物の到来を判定するために信号値と比較される閾値を経時的に再調整しなければならない場合があり、閾値を使用状況に応じて設定する必要があった。
以下に説明するように、本実施形態に係る検出装置10では、対象物の有無を判定するために、信号値に対する閾値を用いないため、閾値を使用状況に応じて設定するユーザの負担を無くすことができる。もっとも、本実施形態に係る検出装置10に固有の設定事項は発生し得る。しかしながら、本実施形態に係る検出装置10では、設定事項をできる限り少なくすることができるし、設定事項を無くしても使用できることが多い。
本実施形態に係る検出装置10に固有の設定事項として、信号値の立ち上がり又は立下りを判定するための設定が挙げられる。本実施形態に係る検出装置10では、信号値が示す波形(信号波形の立ち上がり又は立ち下がり)に着目して対象物の有無を判定するため、対象物の運動の速さの違い等に起因する受光量変化の速さの変動に対して、ユーザが調整を必要としないようにすることが望まれる。
[構成例]
図1及び2を参照しつつ、本実施形態に係る検出装置10の構成の一例について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る検出装置10を含む検出システム1の概要を示す図である。検出システム1は、検出装置10と、コントローラ20と、コンピュータ30と、ロボット40と、搬送装置50とを備える。
検出装置10は、測定される信号値に基づいて、検出装置10の検出範囲10aに対象物100が到来したことを検出する装置である。検出装置10は、例えば反射型の光電センサであってよい。検出装置10が反射型の光電センサで構成される場合、対象物100が検出装置10の検出領域に到来すると、検出される反射光量が増加する。なお、本実施形態では、説明を具体的にするために検出装置10が光電センサで構成される例について説明するが、以下の説明は、「受光量」をセンサの種類に応じて他の物理量に置き換え、変動要因等をセンサの検出原理に応じて読み替えることにより、検出装置10が任意のセンサで構成される場合に一般化できる。
対象物100は、検出装置10による検出の対象となる物であり、例えば生産される製品の完成品であったり、部品等の未完成品であったりしてよい。また、本明細書において「対象物」とは、対象物100全体のほか、対象物100の部分(対象物100の端部、対象物100上の模様や欠陥等)であってもよい。対象物100が粒子やピンの場合のように、対象物100が検出領域よりも小さい場合は、対象物100全体が検出対象になることもある。
なお、検出装置10は、一般に欠陥検査と呼ばれる用途に用いられるものであってもよく、その場合、検出装置10は、対象物100の欠陥部分が検出範囲10aに到来したことを検出してよい。
コントローラ20は、ロボット40及び搬送装置50を制御する。コントローラ20は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)で構成されてよい。コントローラ20は、検出装置10からの出力により対象物100が到来したことを検知し、ロボット40を制御する。
コンピュータ30は、検出装置10、コントローラ20及びロボット40の設定を行う。また、コンピュータ30は、コントローラ20から、コントローラ20による制御の実行結果を取得する。さらに、コンピュータ30は、検出装置10により検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定するためのアルゴリズム(学習モデル)において用いられるパラメータを機械学習により生成する学習装置を含んでよい。アルゴリズム(学習モデル)の種類には、たとえばニューラルネットワークや決定木がある。
ロボット40は、コントローラ20による制御に従って、対象物100を操作したり加工したりする。ロボット40は、例えば対象物100をピックアップして別の場所に移動させたり、対象物100を切削したり、組み立てたりしてよい。
搬送装置50は、コントローラ20による制御に従って、対象物100を搬送する装置である。搬送装置50は、例えばベルトコンベアであってよく、コントローラ20により設定された速度で対象物100を搬送してよい。
図2は、本実施形態に係る検出装置10の構成を示す図である。検出装置10は、測定部11と、記憶部12と、判定部13と、制御部14と、入出力部15とを備える。
<測定部>
測定部11は、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かに応じて値が変化する物理量を逐次信号値に変換する。測定部11は、受光量等の物理量を第2の周期で測定し、3値以上のデジタル値である信号値を出力してよい。信号値は、例えば8ビット(256値)で表されてよい。また、第2の周期は、例えば0.1ms(ミリ秒)であってよい。
検出装置10が光電センサの場合、測定部11は、入射する光を受光素子に集めるレンズ、光を電流信号に変換する受光素子(例えばフォトダイオード)、電流信号を電圧信号に変換するアンプ及び電圧信号をデジタル値に変換するA/D変換器を含んでよい。さらに、測定部11は、アナログ処理又はデジタル処理によるローパスフィルタやハイパスフィルタ等を含んでもよいし、対象物100に光を照射する投光素子(例えばLED)を含んでもよい。
<記憶部>
記憶部12は、所定数の信号値を、測定部11により測定された順に記憶する。記憶部12は、所定数の信号値のうち、最も古い信号値を削除し、新たに測定された信号値を記憶するものであってよい。このように、記憶部をFIFO(First In First Out)メモリとすることで、ハードウェアの規模を小さく抑えつつ、高速に読み書き可能とすることができる。
本実施形態に係る検出装置10において、記憶部12は、n段のFIFOメモリで構成される。記憶部12は、初段q0、第1段q1、第2段q2、第j段qj、第k段qk及び第n段qnというアドレスを有する。ここで、j<k<nであり、nは例えば100程度であってよい。記憶部12は、第1の周期で、最終段である第n段qnに格納されている信号値snを削除し、各段に格納されている信号値s0,s1,s2,sj,skを1つ後方の段にシフトして、初段q0に新たに測定された信号値を格納する。
ここで、第1の周期は、第2の周期と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第2の周期は、測定部11を構成するセンサに固有の値(例えば0.1ms)に固定されていてもよい。検出装置10が光電センサの場合、投光素子が第2の周期でパルス投光し、受光素子の出力をパルス投光のタイミングに合わせて第2の周期でA/D変換してもよい。一方、第1の周期は、コンピュータ30によって、コントローラ20経由で設定可能であってもよい。第1の周期は、同時に処理したい信号値波形の範囲が記憶部12に収まるように決定される必要がある。第1の周期は、第2の周期よりも長く設定されてもよく、第2の周期は、例えば1msであってよい。第1の周期内に複数の信号値が生成される場合は、それらの信号値の平均値を記憶部12に記憶させる信号値としてもよい。
<判定部>
判定部13は、FIFOメモリに記憶されている信号値の内の所定の複数の信号値が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定する。判定部13は、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かの判定を第1周期で行ってよい。ここで、測定部11は、信号値を、第1周期以下の第2周期で測定してよい。第1周期が第2周期以上であることで、検出範囲に対象物が到来したか否かを判定する際に適切な数の信号値を参照することができる。
判定部13は、記憶部12の複数の段に格納されている信号値を参照し、第1の周期で判定を行い、判定結果を制御部14に対して出力してよい。判定部13は、記憶部12に記憶された所定数の信号値が、立ち上がり波形又は立ち下がり波形を含むか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定してよい。すなわち、判定条件は、記憶部12に記憶された所定数の信号値が、立ち上がり波形又は立ち下がり波形を含むことを表す条件であってよい。なお、判定部13は、立ち上がり波形及び立ち下がり波形のうち、対象物100の到来の判定に必要な一方の波形についての判定を行うものであってよい。
判定部13による判定に記憶部12のいずれのアドレスに格納されている信号値を用いるか、どのような判定論理に従って判定を行うかといった判定条件は、コンピュータ30からコントローラ20経由で設定されてよい。なお、判定条件は、検出装置10の製造段階において設定されていてもよい。
判定部13による判定結果は、検出範囲10aに対象物100が到来したか、検出範囲10aに対象物100が到来していないかに対応する2値であってよいが、判定結果は、3値以上で表されてもよい。例えば判定結果が3値の場合、対象物100が到来した状態と、到来していない状態の他、到来の可能性があるが確度が低い状態を3つ目の状態として加えてもよい。
本実施形態に係る検出装置10によれば、ある時点における信号値と閾値とを比較して検出範囲10aにおける対象物100の有無を検出し、検出結果の変化によって対象物100が到来したか否かを判定するのではなく、記憶部12に記憶された所定数の信号値の変化が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定することで、閾値を使用状況に応じて設定するユーザの負担を無くして対象物100の到来を検出することができる。より具体的には、記憶部12に記憶された所定数の信号値の変化が立ち上がり波形又は立ち下がり波形を含むか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定することができ、閾値を使用状況に応じて設定するユーザの負担を無くして対象物100の到来を検出することができる。
<制御部>
制御部14は、検出装置10全体の動作を制御する。制御部14は、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ及びメモリに格納された検出装置制御プログラム等からなるコンピュータとして構成することができる。検出装置制御プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよく、検出システム1のコンピュータ30から通信路を介して提供されてもよい。制御部14は、コンピュータ30による設定に従って、第1の周期、第2の周期及び判定部13が判定を行うための判定条件等について必要な設定を行ってよい。また、制御部14のマイクロプロセッサは、検出装置10により検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定する処理を含む検出装置制御プログラムを実行することで、判定部13として機能してもよい。
制御部14は、制御部14が有するメモリを、検出装置制御プログラムに従って制御することでFIFOメモリを実現して、制御部14が有するメモリによって記憶部12を代替してもよい。この場合、FIFOメモリの後段への信号値のシフトは、格納されているデータの物理的なシフトではなく、メモリ上のアクセス箇所の更新によって行うことができる。なお、記憶部12は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
制御部14は、判定部13により対象物100が到来したと判定された場合、その後の一定期間又は外部からリセットされるまで、対象物100が到来したことを示す外部への出力状態を保持するようにしてもよい。
<入出力部>
入出力部15は、少なくとも、対象物100の到来に対応する信号を外部に出力する。入出力部15は、対象物100の到来及び非到来に対応する2値の電圧信号又は電流信号を、1本の信号線により出力するようにしてもよい。なお、検出装置10が外部からの通信による設定を受け付けない場合には、入出力部15という名称に関わらず、入出力部15は、出力部のみを有してもよい。
入出力部15は、ネットワークインタフェースを含んで、設定情報を受信し、判定部13による判定結果を出力するものであってもよい。
入出力部15は、判定部13による判定に用いられる判定条件の入力を受け付けてもよい。これにより、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定するための判定条件を調整することができ、ユーザの所望の条件により対象物100の到来を検出することができる。検出装置10は、さらに、図示されない操作キーや表示灯を備えてよい。
図3aは、本実施形態に係る検出装置10により測定された信号値の一例をグラフにより示す図である。同図では、横軸に時間を示し、縦軸に信号値を示して、信号値の時間変化をグラフにより示している。
横軸に示したt0、t1、t2…t6の間隔は、第1の周期であり、例えば1ms間隔であってよい。また、信号値は、任意の電気的信号であってよいが、例えば電圧信号であってよく、その場合、単位はボルトである。
なお、本例では、説明を簡単化するために、信号値を折れ線状のノイズを含まない波形として示しているが、実際に得られる波形はノイズが重畳した波形であってよいし、波形の立ち上がり部分や立下り部分は曲線状となってよい。
図3bは、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例をグラフにより示す図である。同図では、横軸にFIFOステージを示し、縦軸に信号値を示して、記憶部12に記憶されている信号値をグラフにより示している。
横軸に示したq0、q1、q2…q6は、記憶部12(FIFOメモリ)のステージ数を示す。本例及び以下に説明する第1~5事例では、説明を簡単化するために、FIFOメモリのステージ数を合計7段としているが、ステージ数はより多くの段数であってもよく、例えば100段程度であってもよい。
本例では、記憶部12は、7つの信号値を、測定部11により測定された順に記憶する。すなわち、初段q0に時刻t6に測定された信号値「8」を記憶し、第1段q1に時刻t5に測定された信号値「8」を記憶する。第2段q2~第5段q5についても同様であり、第6段q6に時刻t0に測定された信号値「4」を記憶する。
図4aは、第1事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例をグラフにより示す図である。同図では、横軸にFIFOステージを示し、縦軸に信号値を示して、記憶部12に記憶されている信号値をグラフにより示している。
図4bは、第1事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例を示す図である。同図では、図4aに示す信号値を表形式でまとめて示している。以降、「c(n)」(nは整数)という表記は、FIFOメモリの更新の第n周期であることを示す。どの周期を第0周期に選ぶかは任意である。また、第n周期においてFIFOメモリに記憶されている信号値のことを総称して「信号値c(n)」と表記する。
第1事例では、検出範囲10aに対象物100が到来していない時点までに測定され、記憶された信号値c(-5)を実線で示し、その後に最も古い信号値を削除し、新たに測定された信号値を記憶した信号値c(-4)を破線で示している。信号値c(-5)は、初段q0から第6段q6について「4」であり、検出範囲10aに対象物100が到来していないことを示している。その後、検出装置10は、第6段q6に記憶された最も古い信号値を削除し、初段q0から第5段q5に記憶された信号値を一段シフトして、新たに測定された信号値「5」を初段q0に記憶する。信号値c(-4)は、初段q0について「5」、第1段q1から第6段q6について「4」であり、検出範囲10aに対象物100が進入してきたことを示している。
同様に、信号値c(-4)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「6」を初段q0に記憶した信号値c(-3)を一点鎖線で示している。また、信号値c(-3)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「7」を初段q0に記憶した信号値c(-2)を二点鎖線で示している。また、信号値c(-2)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(-1)を点線で示している。また、信号値c(-1)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(0)を実線で示している。また、信号値c(0)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(1)を破線で示している。また、信号値c(1)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(2)を一点鎖線で示している。また、信号値c(2)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「5」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(3)を二点鎖線で示している。また、信号値c(3)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「6」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(4)を点線で示している。最後に、信号値c(4)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「7」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(5)を実線で示している。
このように、記憶部12に記憶される信号値が時々刻々と変化する状況で、判定部13は、信号値を測定部11により測定しつつ、所定数の信号値が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定する。ここで、判定条件は、第1時点において取得された信号値と、第1時点より後の第2時点において取得された信号値とが実質的に等しいことと、第2時点において取得された信号値よりも、第2時点より後の第3時点において取得された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいことと、を含んでよい。以下では、この条件を第1判定条件と呼ぶ。第1判定条件は、所定数の信号値が立ち上がり波形を含むことを表す条件の一例である。この例では、FIFOメモリに逐次記憶していく信号値のパターンが所定の立ち上がり波形となった場合に、検出範囲10aに対象物100が到来したものとして判定する。
本例の場合、第1判定条件における第1時点において取得された信号値は、第6段q6に記憶された信号値であってよく、第2時点において取得された信号値は、第5段q5に記憶された信号値であってよく、第3時点において取得された信号値は、第4段q4に記憶された信号値であってよい。すなわち、第1判定条件は、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいことと、第5段q5に記憶された信号値よりも、第4段q4に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいことと、を含んでよい。
ここで、2つの信号値が実質的に等しいとは、2つの信号値が完全に等しいことのみならず、2つの信号値が完全に等しくないが、信号値の差がノイズによる影響の範囲であると判定されることをいう。例えば、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値との差が、±0.2の範囲に収まる場合に、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいと判定してよい。
また、2つの信号値の差が所定の値よりも大きいとは、2つの信号値の差がノイズによる影響の範囲を超えて相違していることをいう。例えば、第4段q4に記憶された信号値から第5段q5に記憶された信号値を引いた値が、0.2より大きい場合に、第5段q5に記憶された信号値よりも、第4段q4に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいと判定してよい。
本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(0)である。また、第5段q5に記憶された信号値よりも、第4段q4に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(0)からc(3)である。従って、本例の場合、第1判定条件を満たす信号値は、信号値c(0)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(0)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
なお、本例では波形の立ち上がり部分を検出する場合について説明したが、波形の立ち下がり部分を検出する場合には、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値との差が±0.2の範囲に収まることと、第5段q5に記憶された信号値よりも、第4段q4に記憶された信号値の方が小さく、その差の絶対値が0.2より大きいことと、を判定条件とすればよい。このことは、以下に説明する第2~5事例についても同様である。
なお、第1判定条件は、さらに、第3時点において取得された信号値と、第3時点より後の第4時点において取得された信号値とが実質的に等しいこと及び第3時点において取得された信号値よりも、第4時点において取得された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいことの少なくともいずれかという条件を含んでもよい。ここで、第4時点において取得された信号値は、第3段q3に記憶された信号値であってよく、第1判定条件は、第4段q4に記憶された信号値と、第3段q3に記憶された信号値とが実質的に等しいこと及び第4段q4に記憶された信号値よりも、第3段q3に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいことの少なくともいずれかという条件を含んでよい。あるいは、波形の立ち上がり部分を検出する条件は3つ以上の信号値が単調増加(波形の立ち下がり部分を検出するときは単調減少)しているという条件を含んでよい。このことは、以下に説明する第2~5事例についても同様である。
判定条件は、第1時点において取得された信号値と、第1時点より後の第2時点において取得された信号値とが実質的に等しいことと、第2時点より後の第3時点において取得された信号値と、第3時点より後の第4時点において取得された信号値とが実質的に等しいことと、第1時点において取得された信号値及び第2時点において取得された信号値のいずれかよりも、第3時点において取得された信号値及び第4時点において取得された信号値のいずれかの方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいことと、を含んでよい。以下では、この条件を第2判定条件と呼ぶ。第2判定条件は、所定数の信号値が立ち上がり波形を含むことを表す条件の一例である。この例では、FIFOメモリに逐次記憶していく信号値のパターンが所定の立ち上がり波形となった場合に、検出範囲10aに対象物100が到来したものとして判定する。
本例の場合、第2判定条件における第1時点において取得された信号値は、第6段q6に記憶された信号値であってよく、第2時点において取得された信号値は、第5段q5に記憶された信号値であってよく、第3時点において取得された信号値は、第1段q1に記憶された信号値であってよく、第4時点において取得された信号値は、初段q0に記憶された信号値であってよい。すなわち、第2判定条件は、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいことと、第1段q1に記憶された信号値と、初段q0に記憶された信号値とが実質的に等しいことと、第6段q6に記憶された信号値及び第5段q5に記憶された信号値のいずれかよりも、第1段q1に記憶された信号値及び初段q0に記憶された信号値のいずれかの方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいことと、を含んでよい。
本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(0)である。また、第1段q1に記憶された信号値と、初段q0に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(0)からc(5)である。さらに、第6段q6に記憶された信号値及び第5段q5に記憶された信号値のいずれかよりも、第1段q1に記憶された信号値及び初段q0に記憶された信号値のいずれかの方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(-4)からc(4)である。従って、本例の場合、第2判定条件を満たす信号値は、信号値c(0)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(0)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
なお、本例では波形の立ち上がり部分を検出する場合について説明したが、波形の立ち下がり部分を検出する場合には、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値との差が±0.2の範囲に収まることと、第1段q1に記憶された信号値と、初段q0に記憶された信号値との差が±0.2の範囲に収まることと、第6段q6に記憶された信号値及び第5段q5に記憶された信号値のいずれかよりも、第1段q1に記憶された信号値及び初段q0に記憶された信号値のいずれかの方が小さく、その差の絶対値が0.2より大きいことと、を判定条件とすればよい。このことは、以下に説明する第2~5事例についても同様である。
第1判定条件及び第2判定条件において、信号値が実質的に等しいか否かの判定のために3以上の時点において取得された信号値を用い、単発的に他の信号値と実質的に等しくない信号値が生じても、そのような信号値を除外するようにしてもよい。例えば、信号値が外れ値であるか否かを判定し、外れ値を除外することとしてもよい。これにより、ノイズによる誤動作を低減することができる。
検出装置10は、入出力部15により、第1判定条件又は第2判定条件の入力を受け付けてもよい。また、判定条件を決定する前に、検出装置10からコンピュータ30に実測した信号値のデータを送り、それを用いて試作した判定条件が実測された波形に対してうまく働くかを確認するためのシミュレーションを、コンピュータ30により行ってもよい。また、ユーザが行う判定条件の作成手順をプログラム化して、コンピュータ30を用いて判定条件の作成を半自動化してもよい。そのようにして作成された判定条件は、コンピュータ30からコントローラ20を経由して、又は検出装置10の製造段階で、検出装置10に設定されてよい。
図5aは、第2事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例をグラフにより示す図である。同図では、横軸にFIFOステージを示し、縦軸に信号値を示して、記憶部12に記憶されている信号値をグラフにより示している。
図5bは、第2事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例を示す図である。同図では、図5aに示す信号値を表形式でまとめて示している。
第2事例は、第1事例と比較して、対象物100の反射率が大きく、検出範囲10aに対象物100が到来した場合に測定部11により測定される信号値が第1事例の場合より大きい例を示している。具体的には、第2事例において検出範囲10aに対象物100が到来した場合に測定部11により測定される信号値は、第1事例の場合の1.25倍である。図5aでは、信号値c(-2)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「10」を初段q0に記憶した信号値c(-1)を破線で示している。また、信号値c(-1)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「10」を初段q0に記憶した信号値c(0)を実線で示している。
このように、対象物100の反射率が大きく、記憶部12に記憶される信号値が比較的大きい場合であっても、判定部13は、信号値を測定部11により測定しつつ、所定数の信号値が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定することができる。ここで、判定条件は、第1判定条件及び第2判定条件の少なくともいずれかであってよい。
本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(0)である。また、第5段q5に記憶された信号値よりも、第4段q4に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(0)からc(3)である。従って、本例の場合、第1判定条件を満たす信号値は、信号値c(0)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(0)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
また、本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(0)である。また、第1段q1に記憶された信号値と、初段q0に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(0)からc(5)である。さらに、第6段q6に記憶された信号値及び第5段q5に記憶された信号値のいずれかよりも、第1段q1に記憶された信号値及び初段q0に記憶された信号値のいずれかの方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(-4)からc(4)である。従って、本例の場合、第2判定条件を満たす信号値は、信号値c(0)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(0)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
図6aは、第3事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例をグラフにより示す図である。同図では、横軸にFIFOステージを示し、縦軸に信号値を示して、記憶部12に記憶されている信号値をグラフにより示している。
図6bは、第3事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例を示す図である。同図では、図5aに示す信号値を表形式でまとめて示している。
第3事例は、第1事例と比較して、背景反射率が小さく、検出範囲10aに対象物100が到来していない場合に測定部11により測定される信号値が第1事例の場合より小さい例を示している。具体的には、第3事例において検出範囲10aに対象物100が到来していない場合に測定部11により測定される信号値は、第1事例の場合の0.5倍である。図6aでは、信号値c(-2)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「2」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(-1)を破線で示している。また、信号値c(-1)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「2」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(0)を実線で示している。
このように、背景反射率が小さく、記憶部12に記憶される信号値が比較的小さい場合であっても、判定部13は、信号値を測定部11により測定しつつ、所定数の信号値が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定することができる。ここで、判定条件は、第1判定条件及び第2判定条件の少なくともいずれかであってよい。
本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(0)である。また、第5段q5に記憶された信号値よりも、第4段q4に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(0)からc(3)である。従って、本例の場合、第1判定条件を満たす信号値は、信号値c(0)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(0)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
また、本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(0)である。また、第1段q1に記憶された信号値と、初段q0に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(0)からc(5)である。さらに、第6段q6に記憶された信号値及び第5段q5に記憶された信号値のいずれかよりも、第1段q1に記憶された信号値及び初段q0に記憶された信号値のいずれかの方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(-4)からc(4)である。従って、本例の場合、第2判定条件を満たす信号値は、信号値c(0)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(0)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
図7aは、第4事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例をグラフにより示す図である。同図では、横軸にFIFOステージを示し、縦軸に信号値を示して、記憶部12に記憶されている信号値をグラフにより示している。
図7bは、第4事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例を示す図である。同図では、図5aに示す信号値を表形式でまとめて示している。
第4事例は、第1事例と比較して、測定部11の投光量が小さく、測定部11により測定される信号値が第1事例の場合より小さい例を示している。具体的には、第4事例において検出範囲10aに対象物100が到来した場合に測定部11により測定される信号値は、第1事例の場合の0.5倍であり、検出範囲10aに対象物100が到来していない場合に測定部11により測定される信号値も、第1事例の場合の0.5倍である。図7aでは、信号値c(-2)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「2」を削除し、新たに測定された信号値「4」を初段q0に記憶した信号値c(-1)を破線で示している。また、信号値c(-1)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「2」を削除し、新たに測定された信号値「4」を初段q0に記憶した信号値c(0)を実線で示している。
このように、測定部11の投光量が小さく、記憶部12に記憶される信号値が比較的小さい場合であっても、判定部13は、信号値を測定部11により測定しつつ、所定数の信号値が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定することができる。ここで、判定条件は、第1判定条件及び第2判定条件の少なくともいずれかであってよい。
本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(0)である。また、第5段q5に記憶された信号値よりも、第4段q4に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(0)からc(3)である。従って、本例の場合、第1判定条件を満たす信号値は、信号値c(0)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(0)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
また、本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(0)である。また、第1段q1に記憶された信号値と、初段q0に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(0)からc(5)である。さらに、第6段q6に記憶された信号値及び第5段q5に記憶された信号値のいずれかよりも、第1段q1に記憶された信号値及び初段q0に記憶された信号値のいずれかの方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(-4)からc(4)である。従って、本例の場合、第2判定条件を満たす信号値は、信号値c(0)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(0)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
図8aは、第5事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例をグラフにより示す図である。同図では、横軸にFIFOステージを示し、縦軸に信号値を示して、記憶部12に記憶されている信号値をグラフにより示している。
図8bは、第5事例において、本実施形態に係る検出装置10に記憶された所定数の信号値の一例を示す図である。同図では、図5aに示す信号値を表形式でまとめて示している。
第5事例は、第1事例と比較して、対象物100の移動が速い例を示している。具体的には、第5事例において検出範囲10aに対象物100が到来した場合に測定部11により測定される信号値は、第1事例の場合と同じ大きさであるが、信号値の変化が速い。図5aでは、信号値c(-2)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(-1)を破線で示している。また、信号値c(-1)を記憶した後に、第6段q6に記憶された最も古い信号値「4」を削除し、新たに測定された信号値「8」を初段q0に記憶した信号値c(0)を実線で示している。
このように、対象物100の移動が速く、記憶部12に記憶される信号値が比較的急激に変化する場合であっても、判定部13は、信号値を測定部11により測定しつつ、所定数の信号値が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定することができる。ここで、判定条件は、第1判定条件及び第2判定条件の少なくともいずれかであってよい。
本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(1)である。また、第5段q5に記憶された信号値よりも、第4段q4に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(1)及びc(2)である。従って、本例の場合、第1判定条件を満たす信号値は、信号値c(1)のみである。そのため、判定部13は、信号値c(1)が記憶された周期において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
また、本例の場合、信号値c(-5)からc(5)のうち、第6段q6に記憶された信号値と、第5段q5に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-5)からc(1)である。また、第1段q1に記憶された信号値と、初段q0に記憶された信号値とが実質的に等しいという条件を満たす信号値は、信号値c(-1)からc(5)である。さらに、第6段q6に記憶された信号値及び第5段q5に記憶された信号値のいずれかよりも、第1段q1に記憶された信号値及び初段q0に記憶された信号値のいずれかの方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいという条件を満たす信号値は、信号値c(-3)からc(3)である。従って、本例の場合、第2判定条件を満たす信号値は、信号値c(-1)、c(0)及びc(1)である。そのため、判定部13は、信号値c(-1)、c(0)及びc(1)が記憶されている期間において、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定する。
以上の各事例に示すように、使用状況に応じて信号値が変動することが想定されるが、それにもかかわらず、信号値の立ち上がり又は立下りを安定的に検出することができ、閾値を使用状況に応じて設定するユーザの負担を無くして対象物の到来を検出することができる。
以上説明した第1~5事例では、理解を容易にするために、信号値c(0)の波形の立ち上がり部分の中点がFIFOステージの第3段q3に記憶されるとして、第1判定条件及び第2判定条件ともに、信号値c(0)付近で判定条件が満たされる例とした。当然ながら、判定条件を満たす信号値は、波形の立ち上がり部分の中点が、FIFOステージの中央の段に記憶されていなくてもよい。
第1判定条件では、FIFOステージの第4段q4~第6段q6又は第3段q3~第6段q6に記憶された信号値を判定に用い、初段q0~第2段q2に記憶された信号値を判定に用いていない。ここで、第1判定条件を修正し、波形の立ち上がり部分の中点が第1段q1に記憶されたときに判定条件が満たされるように、初段q0~第3段q3を用いる判定条件に修正すれば、第1周期に関して3サイクル早く立ち上がりを検出することができる。より具体的には、第1判定条件は、第3段q3に記憶された信号値と、第2段q2に記憶された信号値とが実質的に等しいこと、及び第2段q2に記憶された信号値よりも、第1段q1に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいこと、という条件であってよい。さらに、第1段q1に記憶された信号値と、初段q0に記憶された信号値とが実質的に等しいこと及び第1段q1に記憶された信号値よりも、初段q0に記憶された信号値の方が大きく、その差の絶対値が所定の値よりも大きいことの少なくともいずれか、という条件を加えてもよい。例えば第1事例の場合、この判定条件を満たす信号値は、信号値c(-3)となる。第1判定条件に限らず、このように、FIFOメモリのなるべく前段の部分を用いる判定条件を設定することで、より早く信号波形の立ち上がりを検出することができ、検出範囲10aに対象物100が到来したことをより早く検出することができるようになる。
検出範囲10aに対象物100が到来したか否かは、機械学習により生成されたパラメータにより特定される学習済みモデルの実行により、時系列の複数の信号値により構成される波形が機械学習用データセットとされた複数の基準波形が有する特徴と共通する特徴を備えていることについて肯定的な結果が得られることを判定条件として判定することもできる。
図9は、本実施形態に係る検出装置10により、検出装置10や搬送装置50のさまざまな状態において測定される可能性がある、立ち上がり波形を構成する信号値の例を示す図である。同図では、第1事例から第5事例までの各事例において記憶された信号値c(0)と同じ信号値を、測定される可能性がある、立ち上がり波形を構成する信号値として示している。同図に示す信号値により構成される波形は、機械学習用データセットとして用意される基準波形の例である。立ち下がり波形により対象物100の到来を検出する場合には、立ち下がり波形を基準波形とする。検出装置10により、さまざまな種類の対象物100について測定される可能性がある立ち上がり波形又は立ち下がり波形を基準波形としてもよい。
判定部13は、信号値を測定部11により測定しつつ、記憶部12に記憶された所定数の信号値が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定する。これにより、使用状況に応じて信号値が変動する場合であっても、検出範囲10aに対象物100が到来した際に測定される可能性がある立ち上がり波形、すなわち機械学習用データセットとされた複数の基準波形が有する特徴と共通する特徴を備えているか否かに基づき検出対象物100が到来したか否かを判定することができ、閾値を使用状況に応じて設定するユーザの負担を無くして対象物100の到来を検出することができる。
本例の場合、基準波形を構成する複数の信号値は、第1~5事例において記憶された信号値c(0)と同じ信号値である。もっとも、基準波形を構成する信号値は、実際に測定された信号値でなくてもよく、人により又は何らかのアルゴリズムにより生成された信号値であってよい。
図10は、本実施形態に係る検出装置10により実行される学習済みモデルの設定方法のフローチャートである。学習済みモデルの設定方法は、学習装置によって学習済みモデルを生成し、学習済みモデルを検出装置10に設定(実装)する方法である。
はじめに、機械学習用データセットとして用いる複数の基準波形について、それぞれの基準波形を構成する複数の信号値を準備する(S30)。例えば、図9に示したような信号値を準備する。
次に、コンピュータである学習装置によって、記憶部12に記憶されている所定数の信号値により構成される波形が、複数の基準波形が有する特徴と共通する特徴を備えているか否かを判定する学習済みモデルを機械学習により生成する(S31)。ここで、学習済みモデルは、任意のモデルであってよいが、例えばニューラルネットワークや決定木であってよい。そして、機械学習により学習済みモデルのパラメータを生成するアルゴリズムは、任意のものであってよいが、例えばニューラルネットワークであれば、モメンタム法やAdam等を用いた誤差逆伝播法によってパラメータを生成してよいし、例えば決定木であれば、CART(Classification and Regression Trees)やID3(Iterative Dichotomiser 3)であってよい。
最後に、生成された学習済みモデルを検出装置10に設定(実装)する(S32)。以上により、設定方法が終了する。
図11は、本実施形態に係る検出装置10を設定する設定方法を、図10の設定方法の場合を含んでより包括的に示したフローチャートである。
はじめに、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定する第1周期を決定する(S10)。第1周期は、信号値波形の立ち上がり又は立ち下がりに要する時間に基づき、検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定するために必要となる信号値が記憶部12に収まるように決定されてよい。
次に、信号値の波形が立ち上がり波形又は立ち下がり波形に該当するか否かを判定するための判定条件を決定する(S11)。判定条件は、例えば、上述した第1判定条件であったり、第2判定条件であったり、学習済みモデルの実行により所定の結果が得られることであったりしてよい。判定条件は、記憶部12に記憶された所定数の信号値の取得時点うち、判定に用いる複数の時点の指定を含んでよい。例えば、記憶部12に記憶された所定数の信号値のうち判定に用いる信号値を記憶している3以上のFIFOステージを、判定に用いる時点として指定してよい。
そして、第1周期及び判定条件を検出装置10に設定する(S12)。以上により、設定方法が終了する。
第1周期の設定は、コンピュータ30におけるユーザによる入力または検出装置10に設けられた図示しない操作スイッチを用いたユーザによる入力に基づいて行ってもよい。
判定条件の決定及び検出装置10への設定は、好ましくは、検出装置10の供給者によって実行される。ここで、検出装置10の供給者とは、検出装置10の製造者、販売者、又は検出装置10の導入に関するサービス提供者などの、検出装置10の最終的なユーザ以外の者をいう。判定条件は、信号値の波形が立ち上がり波形又は立ち下がり波形を構成する信号値に該当するか否かを判定するための条件であるから、検出装置10の最終的なユーザにおける対象物100の種類や検出装置10の設置状態を知らない供給者においても、判定条件を決定することができる。さらに、検出装置10の最終的なユーザは、対象物100の種類や検出装置10の設置状態などの状況がさまざまであっても、都度それらの状況において自ら機械学習やティーチングを実行することなく検出装置10を使用することができる。判定に用いる複数の時点については、設定可能な判定条件に含めず、検出装置10における変更できない構成としてもよい。検出装置10の供給者により、S30及びS31又はS11が再実行されるなどにより、判定条件の更新版(改良版)が用意された場合は、設定方法の内、最後の設定するステップ(S32、S12)のみ、更新された判定条件を受領した検出装置10の最終的なユーザが行ってもよい。
本実施形態に係る設定方法によれば、信号値と閾値とを比較することによる対象物の有無判定の変化に基づいて検出範囲に対象物が到来したか否かを判定するのではなく、記憶部に記憶された所定数の信号値が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲に対象物が到来したか否かを判定することで、閾値を使用状況に応じて設定するユーザの負担を無くして対象物の到来を検出することができる。
図12は、本実施形態に係る検出装置10により実行される検出方法のフローチャートである。検出方法は、判定部13により検出範囲10aに対象物100が到来したか否かを判定する方法である。
はじめに、検出装置10は、測定部11により、第2周期で物理量を逐次信号値に変換し、第1周期による記憶部12の更新タイミングを待つ(S20)。そして、取得された順に順序付けて所定数の信号値を記憶している記憶部12に対して、最も古い信号値を削除し、測定部11により新たに取得された信号値を追加する(S21)。
その後、検出装置10は、信号値が判定条件を満たすか否かを判定する周期であるか判定する(S22)。ここで、判定する周期である場合(S22:YES)、判定部13は、記憶部12に記憶されている信号値のうちの所定の複数の順位の信号値が判定条件を満たすか否かを判定する(S23)。なお、判定条件は、例えば、上述した第1判定条件であったり、第2判定条件であったり、学習済みモデルの実行により所定の結果が得られることであったりしてよい。そして、記憶部12に記憶されているうちの所定の複数の信号値が判定条件を満たす場合(S23:YES)、検出装置10は、検出範囲10aに対象物100が到来したと判定し、判定結果を入出力部15により出力する(S24)。判定結果の出力を終えた場合、信号値が判定条件を満たすか否かを判定する周期でない場合(S22:NO)及び所定の複数の信号値が判定条件を満たさない場合(S23:NO)、検出装置10は、第1周期による記憶部12の更新タイミングを待つ処理に戻る(S20)。以上の処理を継続的に繰り返し行ってよい。
本実施形態に係る検出方法によれば、ある時点における信号値と閾値とを比較して検出範囲における対象物の有無を検出し、検出結果の変化によって対象物が到来したか否かを判定するのではなく、記憶部に記憶された所定数の信号値により構成される波形が判定条件を満たすか否かに基づいて、検出範囲に対象物が到来したか否かを判定することで、閾値を使用状況に応じて設定するユーザの負担を無くして対象物の到来を検出することができる。さらに、この判定条件は、信号値の波形が立ち上がり波形又は立ち下がり波形に該当するか否かを判定するための条件であるから、対象物の種類や検出装置の設置状態が異なっていても共通の判定条件を適用できる場合が多い。この点でも、検出実行の準備をする段階でのユーザの負担は軽減される。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
[附記1]
検出範囲(10a)に対象物(100)が到来したか否かに応じて値が変化する物理量に対応する信号値に基づいて、前記検出範囲(10a)に前記対象物(100)が到来したことを検出する検出装置(10)であって、
前記物理量を逐次前記信号値に変換する測定部(11)と、
所定数の前記信号値を前記測定部(11)から取得した順に順序付けて記憶するための記憶領域を備え、第1周期で、記憶している所定数の前記信号値を前記測定部(11)から新たに取得した前記信号値により更新する記憶部(12)と、
前記更新を1回または複数回行う毎に一度の頻度で、前記記憶部(12)に記憶されている前記信号値のうちの所定の複数の順位の前記信号値が立ち上がり波形又は立ち下がり波形を構成する信号値に該当するか否かを判定するための判定条件を満たすか否かに基づいて、前記検出範囲(10a)に前記対象物(100)が到来したか否かを判定する判定部(13)と、
を備える検出装置(10)。