JP7152118B2 - 空調システムの最適起動制御装置 - Google Patents

Description

この発明は、空調機の前倒し運転を制御する空調システムの最適起動制御装置に関する。

オフィスビル及び住居ビル等の各種ビルに用いられる空調機システムの中には、予め設定された時刻において、空調制御対象室の室内室温が目標室内温度に到達するように、空調機を前倒し運転するものが提供されている。そして、このような、従来の空調システムとしては、例えば、特許文献１に開示されている。

特開２００４－８５１４１号公報

上記従来の空調システムは、空調機の前倒し運転を、算出した最適起動時刻から開始することにより、予め設定された時刻において、室内温度が目標室内温度に到達するようにしている。このとき、上記従来の空調システムは、空調機の前倒し運転制御時に、単位時間当たりの室内温度変化量となるゲインを使用しているが、このゲインを一律な値としていた。

これにより、上記従来の空調システムは、今回の最適起動時刻における室内温度と目標室内温度との温度差が、前回の温度差と異なるにも関わらず、毎回同じ値となるゲインを使用することになる。この結果、上記従来の空調システムは、余分な前倒し運転、または、前倒し運転不足を招くおそれがあり、快適な室内環境を得ることができない。

この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、空調機における前倒し運転時の制御性を向上させることにより、快適な室内環境を得ることができる空調システムの最適起動制御装置を提供することを目的とする。

この発明に係る空調システムの最適起動制御装置は、予め設定されたスケジュール時刻に室内温度が目標室内温度に到達するように、空調機を前倒し運転させる空調システムの最適起動制御装置において、室内温度を計測する室温計測手段と、室温計測手段によって計測された過去の室内温度と、目標室内温度とに基づいて、空調機の前倒し運転時間を算出し、当該前倒し運転時間をスケジュール時刻から差し引くことにより、空調機の最適起動時刻を算出する最適起動時刻算出手段と、最適起動時刻における室温計測手段によって計測された室内温度と目標室内温度との温度差と、最適起動時刻算出手段によって算出された前倒し運転時間とに基づいて、単位時間当たりの室内温度変化量の実績値となる実績ゲインを算出する実績ゲイン算出手段と、最適起動時刻における温度差と、実績ゲイン算出手段によって算出された実績ゲインとの関係を、記録していく記録手段と、記録手段に記録された関係を学習し、この学習した関係から予測ゲインを決定する予測ゲイン決定手段と、最適起動時刻算出手段によって算出された最適起動時刻の経過後に、予測ゲイン決定手段によって決定された予測ゲインに基づいて、空調機を制御する空調機制御手段に動作指示を行う動作指示手段とを備えることを特徴とするものである。

この発明によれば、空調機における前倒し運転時の制御性を向上させることにより、快適な室内環境を得ることができる。

実施の形態１に係る空調システムの概略構成図である。 実施の形態１に係る最適起動制御装置の構成を示したブロック図である。 空調機の最適起動時刻における温度差とゲインとの関係を示した散布図である。

以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。

先ず始めに、本発明の着眼点について説明する。ビル等の建物においては、空調制御対象室の使用開始時刻に、予め快適な室内環境になっていることが望まれる場合がある。そこで、本出願人は、居住者の室内環境に対する快適性には、空調機の制御開始時における室内温度と空調制御対象室の目標室内温度との温度差と、単位時間当たりの室内温度変化量となるゲインとが、大きく関係していることを見出した。従って、本発明に係る空調システムの最適起動制御装置は、ゲインを学習するものではなく、上記温度差とゲインとの関係を学習することにより、最適な予測ゲインを決定し、その最適な予測ゲインを用いて、空調機の前倒し運転を制御するものである。

実施の形態１．
図１は、実施の形態１に係る空調システム１の概略構成図である。この空調システム１は、監視装置１１、上位コントローラ１２、下位コントローラ１３、及び、空調機１４等を備えている。それらは、通信回線を介して接続されている。

監視装置１１は、上位コントローラ１２を管理すると共に、上位コントローラ１２及び下位コントローラ１３を介して、空調機１４を監視または制御するものである。具体的には、監視装置１１は、下位コントローラ１３が空調機１４から取得した、当該空調機１４の運転状態に関する空調機情報を、上位コントローラ１２を介して収集する。そして、監視装置１１は、その収集した空調情報に基づいて、上位コントローラ１２及び下位コントローラ１３を介して、空調機１４に対する動作指示を行う。

上位コントローラ１２は、監視装置１１から送信された動作指示に基づいて、下位コントローラ１３を監視または制御するものである。

下位コントローラ１３は、上位コントローラ１２から送信された動作指示に基づいて、空調機１４を監視または制御するものである。また、下位コントローラ１３は、予め設定された周期で、空調機１４から空調機情報を取得し、この取得した空調機情報を、上位コントローラ１２を介して、監視装置１１に送信する。なお、下位コントローラ１３は、空調機制御手段を構成するものである。

空調機１４は、空調制御対象室に設けられており、給気風量及び給気温度を制御することにより、その室内温度及び室内湿度を調整可能とするものである。また、空調機１４は、予め設定されたスケジュール情報に従って、運転が制御されている。スケジュール情報は、例えば、空調機１４のスケジュール起動時刻及びスケジュール停止時刻等を含む情報である。即ち、スケジュール起動時刻は、空調制御対象室の使用開始時刻であり、スケジュール停止時刻は、空調制御対象室の使用終了時刻である。

ここで、上位コントローラ１２は、最適起動制御装置２０を備えている。この最適起動制御装置２０は、予め設定されたスケジュール起動時刻において、室内温度が、予め設定された目標室内温度に到達するように、空調機１４をスケジュール起動時刻に対して前倒し運転させるものである。

次に、最適起動制御装置２０の構成について、図２及び図３を用いて詳細に説明する。図２は、実施の形態１に係る最適起動制御装置２０の構成を示したブロック図である。図３は、空調機１４の最適起動時刻における温度差とゲインとの関係を示した散布図である。

最適起動制御装置２０は、目標室内温度設定手段２１、室温計測手段２２、最適起動時刻算出手段２３、実績ゲイン算出手段２４、記録手段２５、予測ゲイン決定手段２６、及び、動作指示手段２７を有している。

目標室内温度設定手段２１は、空調制御対象室の目標室内温度を予め設定するものである。また、室温計測手段２２は、空調制御対象室の室内温度を計測するものである。

最適起動時刻算出手段２３は、空調機１４の最適起動時刻を算出するものである。具体的には、最適起動時刻算出手段２３は、目標室内温度設定手段２１によって予め設定された目標室内温度と、室温計測手段２２によって計測された過去の室内温度とに基づいて、空調機１４の前倒し運転時間を算出する。そして、最適起動時刻算出手段２３は、その算出した前倒し運転時間をスケジュール起動時刻から差し引くことにより、当該空調機１４の最適起動時刻を算出する。

実績ゲイン算出手段２４は、空調機１４の前倒し運転制御時における単位時間当たりの室内温度変化量の実績値となる実績ゲインを算出するものである。具体的には、実績ゲイン算出手段２４は、最適起動時刻における室温計測手段２２によって計測された室内温度と目標室内温度設定手段２１によって予め設定された目標室内温度との温度差（以下、「最適起動時刻における温度差」と記す）と、最適起動時刻算出手段２３によって算出された前倒し運転時間とに基づいて、実績ゲインを算出する。

記録手段２５は、最適起動時刻における温度差と実績ゲイン算出手段２４によって算出された実績ゲインとの関係を、継続的に記録していくものである。この記録手段２５は、例えば、図３に示した散布図（分布図）を有しており、この散布図を用いて、最適起動時刻における温度差と実績ゲインとの関係を記録していく。この図３に示した散布図は、相互に関係がある温度差及びゲインを、それぞれ横軸及び縦軸に採って、最適起動時刻における温度差と実績ゲインとの対応点を打点（プロット）したグラフである。

予測ゲイン決定手段２６は、記録手段２５によって記録された、最適起動時刻における温度差と実績ゲインとの関係を学習し、この学習した関係から予測ゲインを決定するものである。この予測ゲイン決定手段２６は、例えば、図３に示した散布図に、最適起動時刻における温度差と実績ゲインとの対応点の分布度合いに基づいて、近似曲線を追加し、この近似曲線上の点を、最適起動時刻における温度差と予測ゲインとの対応点とすることにより、当該予測ゲインと決定する。なお、図３に示した近似曲線は、線形近似曲線としている。

また、図３に示した点線は、実施の形態１に係る最適起動制御装置２０を備えていない従来の空調システムによって、空調機１４の前倒し運転を制御する際に設定される予測ゲインである。即ち、従来の予測ゲインは、空調機１４の最適起動時刻における温度差に関わらず、一定値となるものである。これに対して、最適起動制御装置２０によって算出した予測ゲインは、過去に算出した実績ゲインに、最適起動時刻における温度差を加味し続けたものとなっている。言い換えれば、最適起動制御装置２０によって算出した予測ゲインは、最適起動時刻における温度差と実績ゲインとの関係を学習することによって得られたものである。

動作指示手段２７は、最適起動時刻算出手段２３によって算出された最適起動時刻の経過後に、予測ゲイン決定手段２６によって決定された予測ゲインに基づいて、下位コントローラ１３に動作指示を行う。即ち、下位コントローラ１３は、予測ゲイン決定手段２６によって決定された予測ゲインに基づいて、空調機１４の前倒し運転を制御する。

以上より、実施の形態１に係る空調システム１の最適起動制御装置２０は、予め設定されたスケジュール時刻に室内温度が目標室内温度に到達するように、空調機１４を前倒し運転させるものであって、室内温度を計測する室温計測手段２２と、過去の室内温度と目標室内温度とに基づいて、空調機１４の前倒し運転時間を算出し、当該前倒し運転時間をスケジュール時刻から差し引くことにより、空調機１４の最適起動時刻を算出する最適起動時刻算出手段２３と、最適起動時刻における室内温度と目標室内温度との温度差と、前倒し運転時間とに基づいて、単位時間当たりの室内温度変化量の実績値となる実績ゲインを算出する実績ゲイン算出手段２４と、最適起動時刻における温度差と実績ゲインとの関係を記録していく記録手段２５と、記録手段２５に記録された上記関係を学習し、この学習した関係から予測ゲインを決定する予測ゲイン決定手段２６と、最適起動時刻の経過後に、予測ゲインに基づいて、空調機１４を制御する下位コントローラ１３に動作指示を行う動作指示手段２７とを備えている。これにより、空調システム１の最適起動制御装置２０は、空調機１４における前倒し運転時の制御性を向上させることにより、快適な室内環境を得ることができる。

なお、本願発明は、その発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは、実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。

１ 空調システム
１１ 監視装置
１２ 上位コントローラ
１３ 下位コントローラ
１４ 空調機
２０ 最適起動制御装置
２１ 目標室内温度設定手段
２２ 室温計測手段
２３ 最適起動時刻算出手段
２４ 実績ゲイン算出手段
２５ 記録手段
２６ 予測ゲイン決定手段
２７ 動作指示手段

Claims (2)

1. 予め設定されたスケジュール時刻に室内温度が目標室内温度に到達するように、空調機を前倒し運転させる空調システムの最適起動制御装置において、
   前記室内温度を計測する室温計測手段と、
   前記室温計測手段によって計測された過去の室内温度と、前記目標室内温度とに基づいて、前記空調機の前倒し運転時間を算出し、当該前倒し運転時間を前記スケジュール時刻から差し引くことにより、前記空調機の最適起動時刻を算出する最適起動時刻算出手段と、
   前記最適起動時刻における前記室温計測手段によって計測された室内温度と前記目標室内温度との温度差と、前記最適起動時刻算出手段によって算出された前倒し運転時間とに基づいて、単位時間当たりの室内温度変化量の実績値となる実績ゲインを算出する実績ゲイン算出手段と、
   前記最適起動時刻における前記温度差と、前記実績ゲイン算出手段によって算出された実績ゲインとの関係を、記録していく記録手段と、
   前記記録手段に記録された関係を学習し、この学習した関係から予測ゲインを決定する予測ゲイン決定手段と、
   前記最適起動時刻算出手段によって算出された最適起動時刻の経過後に、前記予測ゲイン決定手段によって決定された予測ゲインに基づいて、前記空調機を制御する空調機制御手段に動作指示を行う動作指示手段とを備える
   ことを特徴とする空調システムの最適起動制御装置。
2. 前記記録手段は、
   前記関係に対応した対応点を打点して記録した散布図を有し、
   前記予測ゲイン決定手段は、
   前記散布図に近似曲線を追加し、当該近似曲線を用いて予測ゲインを決定する
   ことを特徴とする請求項１記載の空調システムの最適起動制御装置。

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