JP7152010B2 - 塗装表面用水系組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、車両のガラスや車体本体などの所望の物品の表面に塗布することにより、防汚性と耐擦り傷性を有するとともにそれらの耐久性を兼ね備え、溶剤として有機溶剤を使用しない完全水系の組成物に関するものである。
自動車、鉄道、飛行機や船などの乗り物の塗装表面には、外観の向上、防汚性の付与などを目的とした表面処理剤が施されている場合がある。例えば、フッ素系化合物を用いた撥水処理剤、シリコーン系化合物を用いた艶出し処理剤、無機化合物(シリカやチタン)などを用いた親水処理剤などである。中でも、フッ素系化合物やシリコーン系化合物を用いた撥水剤や艶出し剤については、数多く開発されており、多種多様な商品が知られている。
また、親水処理剤もセルフクリーニング機能を有する防汚剤として知られている。中でも、防汚塗料として長期耐久性を謳った塗料はあるものの、表面処理剤(コーティング剤)として有機系化合物を用いた場合は、被膜の薄さや紫外線劣化などその耐久性に課題があるため、無機系の化合物を用いた例が多い。
例えば、特許文献1において、フッ素系化合物として、パーフルオロポリエーテル変性ポリシラザンを用いて、m-キシレンヘキサフロライド及びハイドロフルオローエテル、フルオロカーボン等のフッ素系溶媒、ジメチルポリシロキサン、環状シロキサン、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒、アセトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素から選ばれる有機溶媒に溶解した塗装表面用コーティング剤が開示されている。
また、特許文献2において、テトラエトキシシラン、セルロースナノファイバー、エタノール、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール分散型シリカゾル等からなる親水性コーティング組成物が開示されている。
特開2013-185038号公報 特開2018-119073号公報
しかしながら、先行文献1の組成物では、塗膜作成後には水や油をよく弾き、防汚性に優れるものであるが、所定時間経過後の防汚性については必ずしも良好といえず、また傷が比較的付きやすいという課題があり、さらに、昨今の環境問題の観点から、作業を行う現場の環境改善が求められ、有機溶剤の使用を抑えることが必要とされているところ、フッ素系化合物を溶解させるために有機溶剤を使用しているという課題があった。
また、先行文献2の組成物では、物理的な擦り傷に対しても耐久性のある良好な親水性コーティング塗膜を作成することができるものの、組成物中の90%以上をエタノール等の有機化合物が占めており、コーティング塗膜を作成する作業現場で揮発した有機溶剤の吸引による中毒等が懸念されることから、上述したような環境改善が求められており、有機溶剤を使用しないようにするという課題があった。
そこで、本発明において、塗膜としたときに撥水性における耐久性が優れるとともに、防汚性及び耐擦り傷性に優れ、溶剤として有機溶剤を使用しない完全水系の塗装表面用の組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、水系組成物について鋭意研究を重ね、種々の化合物を組み合わせて配合することにより、組成物として、撥水性における耐久性が優れるとともに、防汚性及び耐擦り傷性に優れた塗膜を作成することができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明に至った。
〔1〕すなわち、本発明は、
(a-1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシランと、
n-Si-(OY)4-n・・・・・・・(1)
(式中Xは炭素数1~18のアルキル基、Yは炭素数1~4のアルキル基、nは1~3 の整数である)(a-2)前記アルコキシシランの加水分解縮合物であるオルガノポリ シロキサンと、(a-3)非イオン性界面活性剤を含有する(A)シリコーン乳化物 0.1~10重量%と、(B)フッ素樹脂が0.05~10重量%と、(C)セルロー スナノファイバーが0.05~1.0重量%と、(D)水が60~95重量%含有する ことを特徴とする塗装表面用水系組成物である。
本発明の水系組成物によれば、塗膜としたときに撥水性における耐久性が優れるとともに、防汚性及び耐擦り傷性に優れ、溶剤として有機溶剤を使用しない完全水系の塗装表面用の組成物とすることができる。
以下、本発明の塗装表面用水系組成物に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記は、上限と下限を含有するものである。
本発明の塗膜組成物は、(A)シリコーン乳化物と、(B)フッ素樹脂と、(C)セルロースナノファイバーと、(D)水を含有している。少なくともこれら成分を配合した組成物により、後述するように、塗膜作製後に撥水性における耐久性が優れるとともに、防汚性及び耐擦り傷性に優れる塗膜を作成することができる。
(A)シリコーン乳化物は、(a-1)特定のアルコキシシランと、(a-2)前記アルコキシシランの加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンと、(a-3)非イオン性界面活性剤と、(a-4)水を含有してなるエマルジョンである。(A)シリコーン乳化物に関して、後述する条件に合致するように、各成分を自ら調整するなどして配合することもできるし、市販品を購入することもできる。
本発明に含有される(a-1)アルコキシシランは、下記の一般式(1)で表される化合物である。
n-Si-(OY)4-n・・・・・・・(1)
(式中Xは炭素数1~18のアルキル基、Yは炭素数1~4のアルキル基、nは1~3の整数である)
当該アルコキシシランによれば、塗布する基材と結合し、塗膜に艶、親水性、防汚性を付与することができる。
当該アルコシシランとしては、例えば、1官能のトリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシランなどや、2官能のジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシランなどや、3官能のメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-テトラデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-テトラデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシランなどが好ましく、3官能の上記アルコシシランがさらに好ましい。このうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、(A)シリコーン乳化物における(a-1)一般式(1)で表されるアルコキシシランの含有割合は、1~30重量%であることが好ましく、2~25重量%であることが好ましい。(a-1)一般式(1)で表されるアルコキシシランの含有割合がこの範囲であると、塗布する基材の表面に艶、撥水性、防汚性を付与し、さらに、加水分解による凝集も生じにくくなり保存安定性を向上させることができる。
本発明に含有される(a-2)前記アルコキシシランの加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンは、(a-1)一般式(1)で表されるアルコキシシランの加水分解物を脱水縮合により形成された重合物である。
当該オルガノポリシロキサンは、重合平均分子量として、200~10000が好ましく、300~6000が好ましい。当該オルガノポリシロキサンの重合平均分子量がこの範囲にあると、塗布する基材の表面に艶、撥水性、防汚性を付与し、さらに、加水分解による凝集も生じにくくなり保存安定性を向上させることができる。なお、当該オルガノポリシロキサンの重合平均分子量を測定する方法として、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて、展開溶媒としてトルエンなどを用いて、標準ポリスチレン換算として算出されることが好ましい。
また、(A)シリコーン乳化物における(a-2)前記アルコキシシランの加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンの含有割合は、1~30重量%であることが好ましく、1~20重量%であることが好ましい。当該オルガノポリシロキサンの含有割合がこの範囲であると、塗布する基材の表面に艶、撥水性、防汚性を付与し、さらに、加水分解による凝集も生じにくくなり保存安定性を向上させることができる。
本発明に含有される(a-3)非イオン性界面活性剤は、直鎖状又は分岐鎖を有するアルキル鎖の炭素数が12~20と、-CH2CH2O-で表されるオキシエチレンユニットまたは-CH2CH(CH3)O-で表されるオキシプロピレンユニットの少なくとも一方から構成されてなるポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル、ポリオキシプロピレン(POP)アルキルエーテル、ポリオキシエチレン(POE)ポリオキシプロピレン(POP)アルキルエーテルなどの界面活性剤である。オキシエチレンユニット及びオキシプロピレンユニットとしては、1~100、好ましくは1~50、さらに好ましくは1~20含むことが好ましい。非イオン性界面活性剤中に、オキシエチレンユニット及びオキシプロピレンユニットがともに存在する場合、オキシエチレンユニット及びオキシプロピレンユニットはそれぞれランダム又はブロックで結合することができる。
(a-3)非イオン性界面活性剤の具体例としては、POE(7)ラウリルエーテル、POE(9)ラウリルエーテル、POE(11)ラウリルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(5)オレイルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POP(5)ラウリルエーテル、POP(7)セチルエーテル、POP(10)オレイルエーテル、POE(3)POP(5)ラウリルエーテルなどが挙げられる。なお、POE、POPのカッコ内の数値は、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニットのユニット数を示している。
また、(A)シリコーン乳化物における(a-3)非イオン性界面活性剤の含有割合は、1~10重量%であることが好ましく、2~8重量%であることが好ましい。(a-3)非イオン性界面活性剤の含有割合がこの範囲であると、(A)シリコーン乳化物の乳化安定性を維持することができる。
本発明に含有される(a-4)水は、(A)シリコーン乳化物をエマルジョンとするためのものである。(a-4)水としては、精製水、イオン交換水、工業用水など任意の水を使用することができる。また、水に含有される微量成分も(A)シリコーン乳化物のエマルジョン形成や塗膜作製時の硬化性に影響を及ぼさない範囲で含有されていてもよい。
また、(A)シリコーン乳化物における(a-4)水の含有割合は、30~70重量%であることが好ましく、40~60重量%であることが好ましい。(a-4)水の含有割合がこの範囲であると、(A)シリコーン乳化物の乳化安定性を維持することができる。
そして、本発明の水系組成物における(A)シリコーン乳化物の含有割合は、0.1~10重量%であることが好ましく、0.5~5.0重量%であることが好ましい。(A)シリコーン乳化物の含有割合がこの範囲であると、被塗布物の艶、撥水性を継続的に維持することができる。
本発明に含有される(B)フッ素樹脂は、構造中にフッ素原子が結合されている高分子化合物である。当該フッ素樹脂によれば、被塗布物の表面に、塗膜のベースとなる被膜を形成し、構造中のフッ素原子によりそもそも汚れが付着しにくいことから、防汚性に優れた塗膜とすることができる。
(B)フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体などが好ましい。このようなフッ素樹脂を用いることにより、フッ素原子が汚れを付着しにくくする。さらに、炭素-フッ素の結合解離エネルギーは、おおよそ490~514kJ/molであり、炭素-水素の結合解離エネルギーであるおおよそ410~431よりも大きいため、紫外線を含む太陽光に曝露されても分解しにくいという耐光性を有するので、耐久性にも優れている。主鎖の炭素原子に結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換された完全フッ素化樹脂でもよいし、耐光性が良好である限りにおいて主鎖の炭素原子に結合する水素原子が一部フッ素原子に置換された部分フッ素化樹脂でもよい。
(B)フッ素樹脂は、(A)シリコーン乳化物に含有されている(a-3)非イオン性界面活性剤や(a-4)水と乳化物を形成し、または、(A)シリコーン乳化物とは別途に、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル、ポリオキシプロピレン(POP)アルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤及び水と予め乳化物として形成されて配合されたときに、フッ素樹脂が水系組成物中で沈殿や大きな凝集等の偏りが生じずに分散しており、均一な塗膜を形成させることができる。
(B)フッ素樹脂の親水性を向上させてより乳化しやすくするために、側鎖にカルボキシル基、スルホニル基、リン酸基の少なくとも1つを備えるフッ素樹脂を用いることもできる。例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2-(2-フルオロカルボニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体の加水分解物、カルボニルアルコキシドを有するフッ化メチレン鎖とトリフルオロエチレンのビニルアルコールとの共重合体の加水分解物、パーフルオロ[2-(2-フルオロカルボニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]の重合体の加水分解物などにより、側鎖にカルボキシル基を有するフッ素樹脂を作製することができるので好ましい。
また、本発明の水系組成物における(B)フッ素樹脂の含有割合は、0.05~10重量%であることが好ましく、0.5~5重量%であることが好ましい。フッ素樹脂の含有割合がこの範囲であると、被塗布物の撥水性、防汚性を継続的に維持することができる。
(A)シリコーン乳化物と(B)フッ素樹脂との配合比(重量比)は、(B)フッ素樹脂が、(A)シリコーン乳化物1に対して、0.1~5で配合されることが好ましく、さらに0.5~2で配合されることが好ましい。(A)シリコーン乳化物と(B)フッ素樹脂との配合比がこの範囲であると、被塗布物の撥水性の耐久性、防汚性を発現させることができる。
本発明に含有される(C)セルロースナノファイバーは、セルロース分子鎖が水素結合及び分子間力によって結合した化合物であるセルロースミクロフィブリル、又はそのセルロースミクロフィブリルを最小単位として複数が集合した集合体であり、その太さが1nm~800nm程度の径のサイズのものである。また、その長さは100nm~8μm程度に及ぶものである。一般に、セルロースナノファイバーは、天然に存在するセルロース組織を機械的に解繊して得られる。
当該セルロースナノファイバーは、その太さが数nm~数百nmの名のサイズのものであり、比表面積が大きく表面に存在するフリーの水酸基(他と結合していない)が多くなるために、セルロースナノファイバーを配合することにより、アルコキシシランが加水分解することにより生成する水酸基又は各種基材表面との親和性が良好であるために、おおよそ均一で透明な塗膜を作製することができるとともに、塗膜の機械的強度を向上させることができる。セルロースナノファイバーは、粉末状のものを配合することができるが、水分散体であるスラリー状、ペースト状、ゲル状などの形態で配合することが好ましい。このような水分散体であると、セルロースナノファイバーがより分散しやすく、塗膜にしたときにセルロースナノファイバーの濃度にムラがなくなる。市販品としては、レオクリスタ(第一工業製薬社製)、セリッシュ(ダイセルファインケム社製)、セルロースナノファイバー(大王製紙社製)、変性セルロースナノファイバー(日本製紙社製)などが用いられる。
また、当該セルロースナノファイバーの水系組成物中における含有割合は、0.05~1.0重量%であることが好ましく、0.1~0.5重量%であることが好ましい。セルロースナノファイバーの含有割合がこの範囲であると、各種基材表面に水系組成物を塗布したときに作製される塗膜の物理的力に対する耐久性を向上することができる。
さらに、セルロースナノファイバーは、(A)シリコーン乳化物及び(B)フッ素樹脂の合計重量に対して、0.5~20重量%配合されていることが好ましく、1.0~10重量%であることが好ましい。セルロースナノファイバーの含有割合がこの範囲であると、各種基材表面に水系組成物を塗布したときに作製される塗膜の物理的力に対する耐久性、すなわち耐擦り傷性を向上することができる。
本発明に含有される(D)水は、(a-4)水とは別途配合されるものであり、(A)シリコーン乳化物、(B)フッ素樹脂、(C)セルロースナノファイバーを均一分散させるための溶剤である。(D)水としては、(a-4)水と同様に、精製水、イオン交換水、工業用水など任意の水を使用することができる。また、水に含有される微量成分も塗膜作製時の硬化性に影響を及ぼさない範囲で含有されていてもよい。
また、本発明の塗装表面用水系組成物における(D)水の含有割合は、60~95重量%であることが好ましく、65~93重量%であることが好ましい。当該水の含有割合がこの範囲であると、ムラが生じないように塗膜を作成することができるとともに、有機溶剤を含有しないので塗工作業を行う作業者が有機溶剤による急性又は慢性の中毒に侵されることを防ぐことができる。
本発明の水系組成物は、(A)シリコーン乳化物と、(B)フッ素樹脂と、(C)セルロースナノファイバーと、(D)水の各成分を配合後、室温で撹拌して調製される。
そして、本発明の塗装表面用水系組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤、pH調整剤などを添加することができる。
本発明の塗装表面用水系組成物は、ガラスや樹脂、金属やセラミックスなどを対象基材にすることが好ましい。
本発明の塗装表面用水系組成物を各基材に処理する方法は、特に限定されず、スピンコート、ディップコート、ロールコート、フローコート、スプレーコートなどで処理してもよいし、スポンジや布などの治具を用いた手塗などで処理してもよい。その後、溶剤として使用される当該アルコールを自然乾燥させることで塗膜を作成することができ、加熱乾燥による後処理は必要でない。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(調整例1)
攪拌気、加熱装置、還流冷却装置及び滴下漏斗を備えたフラスコにメチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBM13)136g、メタノール20gおよびメチルトリクロロシランを塩酸濃度が20ppmとなるように仕込み、攪拌しながら水10gを滴下漏斗により徐々に滴下した。そして、約70℃の還流温度で2時間反応を継続して加水分解縮合反応を行った。反応後、未反応の水分等を分液して減圧下でメタノール等の揮発溶剤を留去して、未反応のトリメトキシシランも含有するオルガノポリシロキサン94gを得た。得られたオルガノポリシロキサンの重合平均分子量3000であった。そして、この未反応のトリメトキシシランも含有するオルガノポリシロキサン90gに、非イオン系界面活性剤であるPOE(15)セチルエーテル3gを加えて40℃程度に加温し、その後、ホモミキサーを用いて5000rpmにて攪拌を行い、そこへ加温した水93gを徐々に添加し、40~45℃で30分攪拌を行い、50%水溶液のシリコーン乳化物(A-1)を得た。
(実施例1)
シリコーン乳化物(A-1)0.5重量%、フッ素樹脂乳化物(AGCコーテック社製:オブリガードPW202(フッ素樹脂分36重量%))2.0重量%、セルロースナノファイバー水分散体(第一工業製薬社製:レオクリスタ、2重量%水溶液品)5重量%、水92.5重量%からなる塗装表面処理組成物を得た。
(実施例2)
シリコーン乳化物(A-1)1.0重量%、フッ素樹脂乳化物(AGCコーテック社製:オブリガードPW202(フッ素樹脂分36重量%))5.0重量%、セルロースナノファイバー水分散体(第一工業製薬社製:レオクリスタ、2重量%水溶液品)10重量%、水84.0重量%からなる塗装表面処理組成物を得た。
(実施例3)
シリコーン乳化物(A-1)5重量%、フッ素樹脂乳化物(AGCコーテック社製:オブリガードPW202(フッ素樹脂分36重量%))5.0重量%、セルロースナノファイバー水分散体(第一工業製薬社製:レオクリスタ、2重量%水溶液品)20.0重量%、水65.0重量%からなる塗装表面処理組成物を得た。
(比較例1)
フッ素樹脂乳化物(AGCコーテック社製:オブリガードPW202(フッ素樹脂分36重量%))20.0重量%、水80.0重量%からなる塗装表面処理組成物を得た。
(比較例2)
シリコーン乳化物(A-1)10.0重量%、フッ素樹脂乳化物(AGCコーテック社製:オブリガードPW202(フッ素樹脂分36重量%))3.0重量%、水87.0重量%からなる塗装表面処理組成物を得た。
(比較例3)
シリコーンレジン(旭化成ワッカー社製、商品名:R-2701)10.0重量%、水90.0重量%からなる塗装表面処理組成物を得た。
(比較例4)
テトラエトキシシラン0.5重量%、オルガノシリカゾル(日産化学工業社製、商品名:IPA-ST)1.0重量%、イソプロピルアルコール88.5重量%、水10重量%からなる塗装表面処理組成物を得た。
(試験片の作成)
自動車の車体用めっき鋼板材片に、アクリル-メラミン系樹脂からなる自動車用塗料をベースコートとトップコートの積層形態で焼付け塗装して塗装板を作成した後、これをけいそう土で研磨し、水洗風乾して基材を作製した。実施例1~3に記載の組成物及び比較例1~4に記載の水系組成物等を、ネル布を用いて、基材に処理して、別の新しいクロスにてムラが残らないように拭き上げた。それを室温にて1日間室温にて自然乾燥及び養生して塗膜を付した試験片を作製した。
これらの塗膜を付した試験片を用いて、基材に各組成物を処理した際の作業性、作業後の外観、および、組成物自体の環境性を評価した。作業性については、処理時の液の伸びがよく、また、クロスで軽く仕上げ拭きできるものを〇、そうでないものには×と評価した。また、処理後の外観については、クロスで拭き上げた後、目視にてムラなく均一に仕上がっているものを〇、施工ムラが発生しているものは×と評価した。さらに、環境性については、作業者及び環境への影響を考慮し、アルコールなどの水溶性溶剤も含まない完全水系の組成物を〇、溶剤を含有する組成物を×と評価した。いずれも〇を良好、×を良好でないと判断した。
また、各試験片を用いて、撥水性における耐久性の評価を行うとともに、防汚性及び耐擦り傷性についても評価を行った。
(撥水性試験)
撥水性については、試験片の作製直後である初期時と後述する屋外暴露後に、協和界面科学社製のDropMasterを用いて、当該塗膜表面における水に対する接触角をθ/2法により5点測定しその平均値を求めた。また、屋外暴露については、試験片をJIS Z2381に規定する暴露試験装置に設置し、2週間毎に試験片を取り出し、水洗後、接触角を測定し、撥水性について12ヶ月の推移を確認した。
そして、初期時に測定した接触角と、12ケ月間の屋外暴露後の接触角の値を用いて下記一般式(2)に基づき接触角の変化率を算出した。
接触角変化率(%)=(初期時の接触角-12ケ月間の屋外暴露後の接触角)/初期時の接触角×100・・・・(2)
撥水性について、こうして得られた接触角変化率が、10%未満のものを○、10%以上20%未満のものを△、20%以上のものを×と評価し、○である塗膜を撥水性について耐久性があるとして良好と判断した。
(防汚性試験)
防汚性については、試験片の作製直後である初期時と12ケ月間の屋外暴露後に、JIS Z8781-4「測色試験」に準じて、試験片の作製直後である初期時と屋外暴露試験後の時に、コニカミノルタ製色彩色差計を用いてL*a*b*を測定し、色差(ΔE)を
算出することにより、防汚性を評価した。防汚性について、こうして得られた色差が、3未満のものを○、3以上のものを×と評価し、○である塗膜を防汚性があるとして良好と判断した。
(耐擦り傷性試験)
耐擦り傷性については、試験片の作製直後である初期時と、JIS K2396「撥水持続性」に準じて、ガードーナーストレート型ウォッシャビリティーマシンを使用し、タオルを装着した状態で荷重が525gになるように調整し、炭酸ナトリウムとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる洗浄液で500往復させた擦り傷試験後に、撥水性試験と同様に塗膜表面の接触角を測定した。
そして、耐擦り傷性試験についても、撥水性試験と同様に、上記一般式(2)を用いて接触角変化率(%)を算出した。その結果、接触角変化率が、5%未満のものを〇、5%以上10%未満のものを△、10%以上のものを×と評価し、〇である塗膜を耐擦り傷性が良好であるとして良好と判断した。
得られた各種組成物の組成を表1、そして、それらの組成物を用いて作成するときの作業性、及び作成された塗膜の物性評価の結果を表2に示す。
Figure 0007152010000001
Figure 0007152010000002
表1及び表2に示すように、実施例1~3の組成物により作成された塗膜において、作業性や作業後の外観に優れ、撥水性及び防汚性において、屋外暴露後においても接触角の変化率や色差が0に近くあまり変化していないことを示しており、そして、耐擦り傷性において、擦り傷性試験の前後においても接触角の変化率が0に近くあまり変化していないことを示しており、また、比較例1~4の組成物よりも小さいことから、撥水性において耐久性に優れ、防汚性及び耐擦り傷性にも優れるものであった。このように、(A)シリコーン乳化物と、(B)フッ素樹脂と、(C)セルロースナノファイバーと、(D)水を共に配合された水系の組成物において、撥水性における耐久性が優れるとともに、防汚性及び耐擦り傷性に優れた塗膜を作製することができることが分かった。

Claims (1)

  1. (a-1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシランと、
    n-Si-(OY)4-n・・・・・・・(1)
    (式中Xは炭素数1~18のアルキル基、Yは炭素数1~4のアルキル基、nは1~3の整数である)
    (a-2)前記アルコキシシランの加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンと、
    (a-3)非イオン性界面活性剤を含有する
    (A)シリコーン乳化物が0.1~10重量%と、
    (B)フッ素樹脂が0.05~10重量%と、
    (C)セルロースナノファイバーが0.05~1.0重量%と、
    (D)水が60~95重量%
    含有することを特徴とする塗装表面用水系組成物。
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