以下、本発明を具体化した実施例1~5を図面を参照しつつ説明する。これらの圧縮機は、片頭ピストン式圧縮機である。これらの圧縮機は、車両に搭載されており、空調装置の冷凍回路を構成している。
(実施例1)
図1及び図2に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング1と、駆動軸3と、固定斜板5と、複数のピストン7と、弁形成プレート9と、回転体11と、制御弁13と、吸入機構15aと、吸入絞り部43aとを備えている。弁形成プレート9は、本発明の「吐出弁」の一例である。
ハウジング1は、フロントハウジング17と、リヤハウジング19と、シリンダブロック21とを有している。本実施例では、フロントハウジング17が位置する側を圧縮機の前方側とし、リヤハウジング19が位置する側を圧縮機の後方側として、圧縮機の前後方向を規定している。また、図1及び図2の紙面の上方を圧縮機の上方側とし、紙面の下方を圧縮機の下方側として、圧縮機の上下方向を規定している。そして、図3以降では、図1及び図2に対応させて前後方向及び上下方向を表示する。なお、実施例における前後方向等は一例であり、本発明の圧縮機は、搭載される車両等に対応して、その姿勢が適宜変更される。
フロントハウジング17には、径方向に延びる前壁17aと、前壁17aと一体をなして、前壁17aから駆動軸3の軸心O方向で後方に延びる周壁17bとを有しており、略円筒状をなしている。前壁17aには、第1ボス部171と、第2ボス部172と、第1軸孔173とが形成されている。第1ボス部171は軸心O方向で前方に向かって突出している。第1ボス部171内には軸封装置25が設けられている。第2ボス部172は後述する斜板室31内において、軸心O方向で後方に向かって突出している。第1軸孔173は、軸心O方向で前壁17aを貫通している。
リヤハウジング19には、吸入室27と、吐出室29と、吸入口27aと、吐出口29aとが形成されている。吸入室27は、リヤハウジング19の中心側に位置している。吐出室29は環状に形成されており、吸入室27の外周側に位置している。吸入口27aは、吸入室27と連通しており、リヤハウジング19内を軸心O方向に延びてリヤハウジング19の外部に開いている。吸入口27aは、配管を介して蒸発器と接続している。これにより、吸入室27内には、吸入口27aを通じて蒸発器を経た低圧の冷媒ガスが吸入される。吐出口29aは、吐出室29と連通しており、リヤハウジング19の径方向に延びてリヤハウジング19の外部に開いている。吐出口29aは、配管を介して凝縮器と接続している。なお、配管、蒸発器及び凝縮器の図示は省略する。
シリンダブロック21は、フロントハウジング17とリヤハウジング19との間に位置している。シリンダブロック21には、軸心O方向に延びる複数個のシリンダボア21aが形成されている。各シリンダボア21aは、それぞれ周方向に等角度間隔で配置されている。シリンダブロック21は、フロントハウジング17と接合されることにより、フロントハウジング17の前壁17a及び周壁17bとの間に斜板室31を形成している。斜板室31は、図示しない連絡通路によって吸入室27と連通している。なお、シリンダボア21aの個数は適宜設計可能である。
また、シリンダブロック21には、第2軸孔21bと、支持壁21cと、シリンダボア21と同数の第1連通路21dとが形成されている。第2軸孔21bは、シリンダブロック21の中心側に位置しており、軸心O方向に延びている。第2軸孔21bの後方側は、シリンダブロック21が弁形成プレート9を介してリヤハウジング19と接合されることにより、吸入室27内に位置する。これにより、第2軸孔21bは吸入室27と連通している。
支持壁21cは、シリンダブロック21の中心側であって、第2軸孔21bの前方に位置している。支持壁21cにより、第2軸孔21bは斜板室31から区画されている。支持壁21cには、第3軸孔210が設けられている。第3軸孔210は、第1軸孔173と同軸であり、支持壁21cを軸心O方向に貫通している。第1~3軸孔173、21b、210は、本発明の「軸孔」の一例である。
各第1連通路21dは、それぞれシリンダボア21aと連通している。各第1連通路21dは、それぞれシリンダブロック21の径方向に延びており、シリンダボア21aと第2軸孔21bとに連通している。
弁形成プレート9は、リヤハウジング19とシリンダブロック21との間に設けられている。この弁形成プレート9を介して、リヤハウジング19とシリンダブロック21とが接合されている。
弁形成プレート9は、バルブプレート91と、吐出弁プレート92と、リテーナプレート93とで構成されている。バルブプレート91には、シリンダボア21aと同数の吐出孔910が形成されている。各シリンダボア21aは、各吐出孔910を通じて吐出室29と連通する。
吐出弁プレート92は、バルブプレート91の後面に設けられている。吐出弁プレート92には、弾性変形によって各吐出孔910を開閉可能な複数の吐出リード92aが設けられている。リテーナプレート93は、吐出弁プレート92の後面に設けられている。リテーナプレート93は、吐出リード弁92aの最大開度を規制する。
駆動軸3は、軸心O方向でハウジング1の前方側から後方側に向かって延びている。駆動軸3は、ねじ部3aと、第1径部3bと、第2径部3cとを有している。ねじ部3aは、駆動軸3の前端に位置している。このねじ部3aを介して駆動軸3は、図示しないプーリや電磁クラッチ等と連結されている。
第1径部3bは、ねじ部3aの後端と連続しており、軸心O方向に延びている。第2径部3cは、第1径部3bの後端と連続しており、軸心O方向に延びている。第2径部3cは、第1径部3bよりも小径となっている。これにより、第1径部3bと第2径部3cとの間には、段部3dが形成されている。
また、図3に示すように、第2径部3cには、軸路30aと第2径路30bとが形成されている。軸路30aは、第2径部3c内を軸心O方向に延びている。軸路30aの後端は、第2径部3cの後面、すなわち、駆動軸3の後面に開いている。第2径路30bは、軸路30aと連通している。第2径路30bは、第2径部3c内を径方向に延びており、第2径部3cの外周面に開いている。
また、第2径部3cの後方側には、支持部材33が圧入されている。これにより、支持部材33は、第2軸孔21b内で、駆動軸3とともに回転可能となっている。支持部材33は、フランジ部33aと筒部33bとで構成されている。フランジ部33aは、第2軸孔21bとほぼ同径に形成されている。筒部33bは、フランジ部33aよりもやや小径に形成されている。筒部33bは、フランジ部33aと一体をなしており、フランジ部33aから軸心O方向で前方に向かって延びている。
図1及び図2に示すように、駆動軸3は、第1径部3bを第1軸孔173及び第3軸孔210に支承させつつ、ハウジング1に回転可能に挿通されている。これにより、第1径部3bは、斜板室31内で回転可能となっている。また、第2径部3cは、第2軸孔21b内に位置しており、第2軸孔21b内で回転可能となっている。第2径部3cの後端は、第2軸孔21b内から突出してしており、吸入室27内に延びている。これにより、軸路30aは、後端で吸入室27と繋がっている。また、支持部材33が第2軸孔21bの後方側に配置される。これにより、フランジ部33aによって、第2軸孔21b内が吸入室27から区画されている。
また、第1ボス部171内では、軸封装置25に駆動軸3が挿通される。これにより、軸封装置25は、ハウジング1の内部とハウジング1の外部との間を封止する。
固定斜板5は、駆動軸3の第1径部3bに圧入されており、斜板室31内に配置されている。これにより、固定斜板5は、駆動軸3が回転することにより、斜板室31内で駆動軸3とともに回転可能となっている。ここで、固定斜板5は、駆動軸3に垂直な平面に対する傾斜角度が一定となっている。また、斜板室31内において、第2ボス部172と固定斜板5との間には、スラスト軸受35が設けられている。
各ピストン7は、それぞれ各シリンダボア21a内に収容されている。各ピストン7と、弁形成プレート9とにより、各シリンダボア21a内にそれぞれ圧縮室45が形成されている。また、各ピストン7には、係合部7aが形成されている。各係合部7a内には、半球状のシュー8a、8bがそれぞれ設けられている。これらのシュー8a、8bによって、各ピストン7は固定斜板5に連結されている。これにより、シュー8a、8bは、固定斜板5の回転を各ピストン7の往復動に変換する変換機構と機能する。このため、各ピストン7は、それぞれシリンダボア21a内をピストン7の上死点とピストン7の下死点との間で往復動することが可能となっている。以下では、各ピストン7の上死点及びピストン7の下死点について、それぞれ上死点及び下死点と記載する。
図3に示すように、回転体11は第2軸孔21b内に配置されている。回転体11は、外周面11aと内周面11bとを有する略円筒状に形成されている。回転体11は、第2軸孔21bとほぼ同径に形成されている。内周面11bは、駆動軸3の第2径部3cを挿通可能となっている。また、第2軸孔21b内に回転体が配置されることにより、第2軸孔21b内において、支持壁21cと回転体11との間に制御圧室37が形成されている。
回転体11は、内周面11bにおいて第2径部3cとスプライン結合されている。これにより、回転体11は、第2軸孔21b内で駆動軸3と一体回転可能となっている。また、図4及び図5に示すように、回転体11は、吸入圧力と制御圧力との差圧により、駆動軸3に対し、第2軸孔21b内を軸心O方向、すなわち、第2軸孔21b内を前後方向に移動可能となっている。なお、吸入圧力及び制御圧力については後述する。
ここで、図3及び図4に示すように、回転体11は第2軸孔21b内を軸心O方向で最も後方に移動することにより、支持部材33の筒部33bと当接する。また、図5に示すように、回転体11は第2軸孔21b内を軸心O方向で最も前方に移動することにより、駆動軸3の段部3dと当接する。このように、筒部33bは回転体11の後方への移動量を規制する第1規制部として機能し、段部3dは回転体11の前方への移動量を規制する第2規制部として機能する。
また、回転体11と支持部材33との間には、コイルばね39が設けられている。図3に示すように、コイルばね39の後端は、支持部材33の筒部33b内に収容されている。コイルばね39は、回転体11を第2軸孔21bの前方に向けて付勢している。
回転体11には、第2連通路41が形成されている。第2連通路41は、第1径路41aと本体通路41bとからなる。第1径路41aは、回転体11の内周面11bに開いており、回転体11の径方向に延びている。第1径路41aは、回転体11が第2径部3cに挿通されることにより、第2径路30bと連通する。第1径路41aは、第2径路30bと同径に形成されている。
本体通路41bは、外周面11aに凹設されており、第1径路41aと連通している。より具体的には、図1及び図2に示すように、本体通路41bは、外周面11aにおいて回転体11の前後方向の略中央から後端まで延びるように形成されている。本体通路41bは、前端から後端に向かうにつれて、次第に外周面11aの周方向に大きく形成されている。つまり、外周面11aの周方向に小さく形成された第1部位411が本体通路41bの前端側に位置しており、外周面11aの周方向に大きく形成された第2部位412が本体通路41bの後端側に位置している。なお、本体通路41bの形状は適宜設計可能である。また、図1及び図2では、説明のため、回転体11について、図3~図5で示す位置よりも軸心O周りにずらした状態で図示している。さらに、図3~図5では、説明を容易にするため、本体通路41bの形状等を簡略化して図示している。後述する図8~図19についても同様である。
図3~図5に示すように、第2連通路41では、駆動軸3が回転し、回転体11が第2軸孔21b内で回転することにより、本体通路41bは各第1連通路21dと間欠的に連通する。そして、本体通路41bは、回転体11の第2軸孔21b内における位置、つまり、駆動軸3に対する軸心O方向の位置によって、駆動軸3の1回転当たりで各第1連通路21dと連通する軸心O周りの連通角度が変化する。以下、駆動軸3の1回転当たりで各第1連通路21dと本体通路41bとが連通する軸心O周りの連通角度を単に連通角度と記載する。
図3に示すように、制御弁13は、リヤハウジング19に設けられている。また、リヤハウジング19には、検知通路13a及び第1給気通路13bが形成されている。さらに、リヤハウジング19及びシリンダブロック21に亘って、第2給気通路13cが形成されている。検知通路13aは、吸入室27と制御弁13とに接続している。第1給気通路13bは、吐出室29と制御弁13とに接続している。第2給気通路13cは、制御圧室37と制御弁13とに接続している。制御圧室37には、第1、2給気通路13b、13c及び制御弁13を通じて、吐出室29内の冷媒ガスの一部が導入される。また、制御圧室37は、図示しない抽気通路によって吸入室27と接続している。これにより、制御圧室37の冷媒ガスは、抽気通路によって、吸入室27に導出される。制御弁13は、検知通路13aを通じて吸入室27内の冷媒ガスの圧力である吸入圧力を感知することにより、弁開度を調整する。これにより、制御弁13は、第1、2給気通路13b、13cを経て、吐出室29から制御圧室37に導入される冷媒ガスの流量を調整する。具体的には、制御弁13は、弁開度を大きくすることにより、第1、2給気通路13b、13cを経て吐出室29から制御圧室37に導入される冷媒ガスの流量を増大させる。一方、制御弁13は、弁開度を小さくすることにより、第1、2給気通路13b、13cを経て吐出室29から制御圧室37に導入される冷媒ガスの流量を減少させる。こうして、制御弁13は、制御圧室37から吸入室27に導出される冷媒ガスの流量に対して、吐出室29から制御圧室37に導入される冷媒ガスの流量を変化させることで、制御圧室37の冷媒ガスの圧力である制御圧力を制御する。なお、制御圧室37は、抽気通路によって斜板室31と接続しても良い。
吸入機構15aは、各第1連通路21dと、第2連通路41と、軸路30aと、第2径路30bとで構成されている。吸入機構15aは、吸入室27の冷媒ガスを各圧縮室45内に吸入させる。具体的には、吸入室27の冷媒ガスは、軸路30aから第2径路30bに流通し、第2連通路41の第1径路41aに至る。そして、第1径路41aに至った冷媒ガスは、第1径路41aから本体通路41bに流通し、本体通路41bから各第1連通路21dを流通して各圧縮室45内に吸入される。
吸入絞り部43aは、第1径路41aと第2径路30bとで構成されている。第1径路41aと第2径路30bとは、回転体11が第2軸孔21b内を軸心O方向に移動することにより、連通面積を変化させる。これにより、吸入絞り部43aは、回転体11の軸心O方向の移動に基づいて、各圧縮室45への冷媒ガスの流量、すなわち、各圧縮室45に吸入される冷媒ガスの流量を変化させることが可能となっている。
以上のように構成された圧縮機では、駆動軸3が回転することにより、斜板室31内で固定斜板5が回転する。これにより、各ピストン7が各シリンダボア21a内を上死点と下死点との間で往復動することで、各圧縮室45では、吸入室27から冷媒ガスを吸入する吸入行程と、吸入された冷媒ガスを圧縮する圧縮行程と、圧縮された冷媒ガスを吐出する吐出行程とが繰り返し行われることとなる。吐出行程において、冷媒ガスは弁形成プレート9によって吐出室29に吐出される。その後、吐出室29内の冷媒ガスは、吐出口29aを経て凝縮器に吐出される。
そして、この圧縮機では、これらの吸入行程等が行われる間に回転体11を第2軸孔21b内で軸心O方向に移動させることにより、駆動軸3の1回転当たりで各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変更することができる。
具体的には、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を増大させる場合には、制御弁13が弁開度を大きくすることで、吐出室29から制御圧室37に導入される冷媒ガスの流量を増大させる。こうして、制御弁13は、制御圧室37の制御圧力を増大させる。これにより、制御圧力と吸入圧力との差圧である可変差圧が大きくなる。
このため、コイルばね39の付勢力に抗して、回転体11は、図2に示す位置から第2軸孔21b内を軸心O方向で後方に移動し始める。これにより、本体通路41bは、各第1連通路21dに対して後方に相対移動する。このため、本体通路41bでは、外周面11aの周方向に小さく形成された部分において、各第1連通路21dと連通する状態となる。こうして、この圧縮機では、連通角度が徐々に小さくなる。また、回転体11の移動により、第1径路41aは、第2径路30bに対して後方に相対移動し始めるため、第1径路41aと第2径路30bとの連通面積が徐々に大きくなる。これにより、吸入絞り部43aは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を徐々に増大させる。
そして、可変差圧が最大となることにより、図3及び図4に示すように、回転体11は第2軸孔21b内を最も後方に移動した状態となり、筒部33bと当接する。これにより、本体通路41bでは、第1部位411において各第1連通路21dと連通する状態となる。こうして、この圧縮機では、連通角度が最小となる。
このため、回転体11が回転することで、第2連通路41では、本体通路41bは、各圧縮室45内を各ピストン7が上死点から下死点に向って移動している間のみ各第1連通路21dと連通する状態となる。
また、可変差圧が最大となることにより、図4に示すように、第1径路41aが第2径路30bに対してより後方に相対移動することで、第1径路41aは第2径路30bと全域で連通する状態となる。このため、第1径路41aと第2径路30bとの連通面積がS1となり、吸入絞り部43aは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最大にする。
このため、各ピストン7が上死点から下死点に向って移動している間、各圧縮室45に吸入される冷媒ガスの流量が最大となる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45が圧縮行程になった際、各圧縮室45内で圧縮される冷媒の流量が最大となるため、各圧縮室45が吐出行程になった際、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大となる。
一方、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を減少させる場合には、制御弁13が弁開度を小さくすることで、吐出室29から制御圧室37に導入される冷媒ガスの流量を減少させる。こうして、制御弁13は、制御圧室37の制御圧力を減少させる。これにより、可変差圧が小さくなる。
このため、コイルばね39の付勢力によって、回転体11は、図3に示す状態から第2軸孔21b内を軸心O方向で前方に移動する。これにより、本体通路41bは、各第1連通路21dに対して前方に相対移動し、外周面11aの周方向に大きく形成された部分において、各第1連通路21dと連通する状態となる。このため、連通角度が徐々に大きくなる。
これにより、回転体11が回転することで、第2連通路41では、本体通路41bは、各圧縮室45内を各ピストン7が上死点から下死点に向って移動している間だけでなく、各ピストン7が下死点から上死点に向って一定程度移動している間も各第1連通路21dと連通する状態となる。このため、各ピストン7が上死点から下死点に向って移動している間に各圧縮室45に吸入された冷媒ガスの一部は、各第1連通路21d及び本体通路41bを経て、各圧縮室45の上流側、つまり、各圧縮室45の外部に排出される。
また、可変差圧が小さくなり、回転体11が前方に移動することで、第1径路41aは、第2径路30bに対して前方に相対移動する。これにより、第1径路41aと第2径路30bとの連通面積が徐々に小さくなる。このため、吸入絞り部43aは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を減少させる。このため、各ピストン7が上死点から下死点に向って移動している間に各圧縮室45に吸入される冷媒ガスの流量が減少する。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45が圧縮行程になった際に各圧縮室45内で圧縮される冷媒の流量が減少するため、各圧縮室45が吐出行程になった際、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が減少する。
そして、可変差圧が最小となることにより、図5に示すように、回転体11は第2軸孔21b内を最も前方に移動した状態となり、段部3dと当接する。これにより、本体通路41bでは、第2部位412において各第1連通路21dと連通する状態となり、連通角度が最大となる。また、可変差圧が最小となることで、第1径路41aが第2径路30bに対してより前方に相対移動するため、第1径路41aは第2径路30bの僅かな部分でのみ連通する状態となる。これにより、第1径路41aと第2径路30bとの連通面積が最小のS2となり、第2径路30bから第1径路41aへ流通する冷媒ガスの流量が最少となる。
このように、連通角度が最大となることにより、本体通路41bは、各ピストンが上死点により接近するまでの間、各第1連通路21dと連通する状態となる。このため、各第1連通路21d及び本体通路41bを経て、各圧縮室45の外部に多くの冷媒ガスが排出される。また、第1径路41aと第2径路30bとの連通面積が最小のS2となることにより、吸入絞り部43aは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最少にする。このため、各ピストン7が上死点から下死点に向って移動している間に各圧縮室45に吸入される冷媒ガスの流量が最少となる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45が圧縮行程になった際に各圧縮室45内で圧縮される冷媒の流量が最少となるため、各圧縮室45が吐出行程になった際、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少となる。
このように、この圧縮機では、各第1連通路21d及び本体通路41bを通じて各圧縮室45の外部に排出される冷媒ガスの流量と、吸入機構15aによって各圧縮室45に吸入される冷媒の流量とによって、各圧縮室45から吐出室29に吐出する冷媒ガスの流量を変化させることができる。これにより、この圧縮機では、優れた制御性を発揮できる。この作用について、比較例の圧縮機と比較しつつ説明する。
図示を省略するものの、比較例の圧縮機では、駆動軸3に軸路30a及び第3径路30bが形成されておらず、また、第2連通路41が本体通路41bのみで構成されている。これらにより、比較例の圧縮機では、吸入機構15aが吸入絞り部43aを有していない。比較例の圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
比較例の圧縮機では、吸入室27内の冷媒ガスが本体通路41b及び各第1連通路21dを通じて各圧縮室45内に吸入される。この際、比較例の圧縮機は吸入絞り部43aを有していないため、各圧縮室45の外部に排出される冷媒ガスの流量を変化させることのみで、各圧縮室45内の冷媒ガスの流量を変化させる。
このため、図6及び図7に示すように、比較例の圧縮機では、連通角度を小さい状態から大きい状態に変化させても、それによって、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒の流量が減少し難くなる。このため、比較例の圧縮機では、制御性を高くすることができない。特に、図6に示すように、駆動軸3が高速で回転し、固定斜板5が高速で回転している運転状態では、各圧縮室45内に吸入された冷媒ガスが各第1連通路21d及び本体通路41bを通じて圧縮室45の外部に十分に排出される前に、回転体11の回転によって本体通路41bと各第1連通路21dとが非連通となる。このため、比較例の圧縮機では、各圧縮室45内に存在する冷媒ガスの流量を減少させ難い。そして、この冷媒ガスが圧縮されてしまうため、比較例の圧縮機では、連通角度を小さい状態から大きい状態に変化させた際に各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が減少し難くなる問題がより顕著となる。
これに対し、実施例1の圧縮機では、連通角度が大きくなるにつれて、吸入絞り部43aが各圧縮室45への冷媒ガスの流量を減少させる。このため、実施例1の圧縮機では、連通角度が最大であるときを含め、連通角度が大きいときには、各圧縮室45へ吸入される冷媒ガスの流量が少なくなる。
これにより、比較例の圧縮機に比べて、実施例1の圧縮機では、図6に示すように、固定斜板5が高速で回転する運転状態である場合だけでなく、図7に示すように、固定斜板5が低速で回転する運転状態である場合においても、連通角度を小さい状態から大きい状態に変化させた際に、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が好適に減少する。こうして、実施例1の圧縮機では、連通角度を大きくするにつれて、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を好適に減少させることが可能となっている。また、実施例1の圧縮機では、連通角度が最小であるときを含め、連通角度が小さいときには、各圧縮室45に吸入される冷媒ガスの流量が多くなる一方、各圧縮室45に吸入された後に各圧縮室内45から排出される冷媒ガスの流量が少なくなる。こうして、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を好適に増大させることができる。
したがって、実施例1の圧縮機は制御性に優れている。
特に、この圧縮機では、回転体11の軸心O方向の移動に基づき、吸入絞り部43aでは、第1径路41aと第2径路30bとの連通面積が変化する。そして、連通角度が大きくなれば、第1径路41aと第2径路30bとの連通面積が減少することで、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を減少させる。これにより、この圧縮機では、第2軸孔21b内における回転体11の位置に応じて、吸入絞り部43aは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を好適に調整することが可能となっている。
また、この圧縮機では、第1、2給気通路13b、13cを経て吐出室29から制御圧室37に導入される冷媒ガスの流量を制御弁13によって変化させる入れ側制御を行っている。このため、制御圧室37を迅速に高圧にすることができ、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を速やかに増大させることができる。
(実施例2)
図8に示すように、実施例2の圧縮機では、フロントハウジング17の周壁17bに吸入口27aが形成されている。これにより、この圧縮機では、蒸発器を経た低圧の冷媒ガスが吸入口27aを通じて斜板室31に吸入される。つまり、斜板室31が吸入室としても機能する。このため、斜板室31内は吸入圧力となっている。制御弁13は、検知通路13aによって斜板室31と接続している。一方、リヤハウジング19の中心側には、制御圧室37が形成されている。これにより、第2軸孔21bの後端は制御圧室37と連通しており、制御圧室37とともに制御圧力となっている。なお、この圧縮機では、制御圧室37は図示しない抽気通路によって斜板室31と接続している。
また、シリンダブロック21に吸入通路21eが形成されている。吸入通路21eは、第2軸孔21b内に形成された吸入空間47と、支持壁21cに形成された貫通孔49とからなる。貫通孔49は、軸心O方向に支持壁21cを貫通しており、斜板室31と吸入空間47とを連通させている。これにより、貫通孔49及び吸入空間47は斜板室31と同様に吸入圧力となっている。なお、吸入空間47については後述する。
また、駆動軸3は、ねじ部3aと第1径部3bとで構成されている。これにより、駆動軸3は、実施例1の圧縮機に比べて軸心O方向の長さが短くなっている。図9及び図10に示すように、第1径部3bには、後面から軸心O方向で前方に向って延びる凹部3eが形成されている。
そして、この圧縮機では、回転体51を備えている。回転体51は、第1弁体53と第2弁体55とを有している。第1弁体53及び第2弁体55は第2軸孔21b内に配置されている。
第1弁体53は、軸部53aと、テーパ部53bと、ばね座53cと、連結部53dとを有している。軸部53aは軸心O方向に延びている。軸部53aは、前方側が凹部3e内に圧入されている。これにより、第1弁体53は駆動軸3に固定されており、第2軸孔21b内において駆動軸3と一体回転可能となっている。テーパ部53bは、軸部53aの後端に接続している。テーパ部53bは、軸心O方向で後方に向って延びるにつれて次第に拡径する円錐状をなしている。ばね座53cは、テーパ部53bの後端に接続している。ばね座53cは、テーパ部53bの後端、つまり、テーパ部53bにおいて最大径となる部分よりも大径をなしている。連結部53dは、ばね座53cよりも小径に形成されており、ばね座53cと接続している。連結部53dは、ばね座53cから軸心O方向で後方に向って延びている。
第2弁体55は、第2軸孔21b内に配置されることにより、第2軸孔21b内において、吸入空間47を制御圧室37から区画している。これにより、第2軸孔21b内において、第2弁体55と支持壁21cとの間が吸入空間47とされている。
第2弁体55は、弁本体55aと、弁孔55bと、支持部材55cと、コイルばね55dとを有している。弁本体55aは、第2軸孔21bとほぼ同径をなす円筒状に形成されている。弁本体55a内には環状通路551が形成されている。また、弁本体55aには、第2連通路41、すなわち、第1径路41aと本体通路41bとが形成されている。ここで、この圧縮機では、本体通路41bが実施例1の圧縮機とは前後方向を反転させた状態で弁本体55aの外周面に凹設されている。これにより、この圧縮機では、本体通路41bの後端側に第1部位411が位置しており、本体通路41bの前端側に第2部位412が位置している。また、第1径路41aは、環状通路551と連通している。これにより、環状通路551と第2連通路41とが連通している。
弁孔55bは、弁本体55aの前方に位置している。弁孔55bの周囲、すなわち、弁本体55aの前面は、弁座552とされている。弁孔55bは軸心O方向に延びており、環状通路551と連通している。これにより、環状通路551は、弁孔55bを通じて吸入空間47と連通している。弁孔55b内には、第1弁体53の軸部53a及びテーパ部53bが挿通されている。ここで、弁孔55bは、テーパ部53bよりも僅かに大径に形成されている。
支持部材55cは、フランジ部553と被連結部554とを有している。フランジ部553は、弁本体55aに圧入されている。これにより、支持部材55cは、環状通路551内で第1弁体53よりも後方に位置した状態で、弁本体55aに固定されている。被連結部554は、フランジ部553と一体をなしており、フランジ部553から第1弁体53に向かって延びている。被連結部554には連結孔555が形成されている。連結孔555には、第1弁体53の連結部53dが挿通されている。
ここで、連結部53dは、連結孔555内において、被連結部554とスプライン結合されている。これにより、駆動軸3及び第1弁体53aの回転が弁本体55aに伝達される。このため、第2軸孔21b内において、弁本体55a、ひいては第2弁体55は、駆動軸3及び第1弁体53と一体回転することが可能となっている。また、吸入圧力と制御圧力との差圧により、第2弁体55では、被連結部554が連結部53dを軸心O方向に摺動する。こうして、第2弁体55は、駆動軸3に対して、第2軸孔21b内を軸心O方向に移動可能となっている。
コイルばね55dは、ばね座53cとフランジ部553との間に設けられている。コイルばね55dは、第2弁体55を第2軸孔21bの後方に向けて付勢している。
また、第2軸孔21b内には、サークリップ59が設けられている。サークリップ59は、第2軸孔21b内の後方側に位置しており、第2弁体55が第2軸孔21b内を軸心O方向で最も後方に移動した際に当接する。これにより、サークリップ59は、第2弁体55の後方への移動量を規制する。また、第2弁体55が第2軸孔21b内を軸心O方向で最も前方に移動した際には、被連結部554と第1弁体53のばね座53cとが当接する。これにより、被連結部554及びばね座53cは、第2弁体55の前方への移動量を規制する。
この圧縮機では、各第1連通路21dと、第2連通路41と、吸入通路21eと、弁孔55bと、環状通路551とによって吸入機構15bが構成されている。これにより、この圧縮機では、斜板室31に吸入された冷媒ガスが吸入通路21e、弁孔55b及び環状通路551を経て第1径路41aに至る。そして、第1径路41aに至った冷媒ガスは、本体通路41bから各第1連通路21dを流通して各圧縮室45に吸入される。
また、この圧縮機は、吸入絞り部43bを備えている。吸入絞り部43bは、第1弁体53の軸部53a及びテーパ部53bと、弁孔55bとによって構成されている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
この圧縮機では、制御弁13が制御圧室37の制御圧力を増大させて可変差圧を大きくすることにより、コイルばね55dの付勢力に抗して、第2弁体55が図10に示す状態から第2軸孔21b内を軸心O方向で前方に移動し始める。このため、テーパ部53bは、弁通路552に対して後方に相対移動し始める。これにより、吸入絞り部43bでは、弁孔55bの開度が徐々に大きくなる。このため、弁孔55bを流通する冷媒ガスの流量が徐々に多くなる。こうして、吸入絞り部43bは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を徐々に増大させる。また、第2弁体55が第2軸孔21b内を軸心O方向で前方に移動することにより、連通角度が徐々に小さくなる。こうして、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が徐々に増大する。
そして、可変差圧が最大となることにより、テーパ部53bが弁孔55bに対してさらに後方に相対移動することで、図9に示すように、弁孔55b内には、軸部53aのみが進入した状態となる。これにより、吸入絞り部43bでは、弁孔55bの開度が最大となるため、弁孔55bを流通する冷媒ガスの流量が最大となる。これにより、吸入絞り部43bは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最大にする。また、本体通路41bでは、第1部位411において各第1連通路21dと連通することで、連通角度が最小となる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大となる。
一方、制御弁13が制御圧室37の制御圧力を減少させて可変差圧を小さくすることにより、コイルばね55dの付勢力によって、第2弁体55は第2軸孔21b内を軸心O方向で後方に移動し始める。このため、テーパ部53bが弁孔55bに対して前方に相対移動し、弁孔55b内に進入し始める。これにより、吸入絞り部43bでは、弁孔55bの開度が徐々に小さくなる。こうして、吸入絞り部43bは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を徐々に減少させる。また、第2弁体55が第2軸孔21b内を軸心O方向で後方に移動することにより、連通角度が徐々に小さくなる。こうして、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が徐々に減少する。
そして、可変差圧が最小となることにより、テーパ部53bが弁孔55b内により深く進入した状態となる。これにより、吸入絞り部43bでは、弁孔55bの開度が最小となるため、弁孔55bとテーパ部53cとの僅かな隙間を通じて吸入通路21eから環状通路551へ冷媒ガスが流通する。つまり、弁孔55bを流通する冷媒ガスの流量が最少となる。これにより、吸入絞り部43bは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最少にする。また、本体通路41bでは、第2部位412において各第1連通路21dと連通することで、連通角度が最大となる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少となる。
(実施例3)
図11に示すように、実施例3の圧縮機では、フロントハウジング17の周壁17bに吸入口27aが形成されている。これにより、実施例2の圧縮機と同様、この圧縮機でも斜板室31が吸入室としても機能するため、斜板室31内は吸入圧力となっている。制御弁13は、検知通路13aによって斜板室31と接続している。斜板室31と第2軸孔21b内とは、支持壁21cに形成された貫通孔49によって連通している。一方、リヤハウジング19の中心側には、制御圧室37が形成されている。これにより、第2軸孔21bは制御圧室37とも連通している。また、固定斜板5には、径方向に延びて斜板室31内に開く導入路5aが形成されている。
駆動軸3は、ねじ部3aと第1径部3bとで構成されている。第1径部3bの後端は、第2軸孔21b内から突出してしており、制御圧室37内に延びている。第1径部3b内には、供給路71と接続路73とが形成されている。供給路71は、第1供給路71aと、第2供給路71bと、第3供給路71cと、第4供給路71dとで構成されている。第1供給路71aは、第1径部3bの前方側に位置している。第1供給路71aは、径方向に延びて第1径部3bの外周面に開いており、導入路5aと連通している。これにより、供給路71は、導入路5aを通じて斜板室31と繋がっている。
第2供給路71bは、第1供給路71aと連通しており、第1径部3b内を軸心O方向で後方側に向かって延びている。図12及び図13に示すように、第3供給路71cは、第2供給路71bと連通しており、第1径部3b内を軸心O方向で後方側に向かって延びている。第3供給路71cは、第2供給路71bよりも大径に形成されている。これにより、第2供給路71bと第3供給路71cとの間には第1段部711が形成されている。第4供給路71dは、第3供給路71cと連通している。第4供給路71dは、第1径部3b内を軸心O方向で後方側に向かって延びており、第1径部3bの後面に開いている。これにより、供給路71は、制御圧室37とも繋がっている。また、第4供給路71dは、第3供給路71cよりも大径に形成されている。これにより、第3供給路71cと第4供給路71dとの間には第2段部712が形成されている。接続路73は、第4供給路71dと連通している。接続路73は、径方向に延びて第1径部3bの外周面に開いている。
第4供給路71d内には、移動体75が設けられている。移動体75は第4供給路71dとほぼ同径に形成されており、第4供給路71dとスプライン結合されている。これにより、移動体75は、駆動軸3と一体回転可能となっている。また、移動体75は、第4供給路71d内を軸心O方向に移動可能となっている。ここで、移動体75は第4供給路71d内に設けられることにより、移動体75の前面には、第1~3供給路71a~71cを通じて吸入圧力が作用する一方、移動体75の後面には、第4供給路71dを通じて制御圧力が作用する。
移動体75内には、連絡路75aが形成されている。連絡路75aは軸心O方向に延びるとともに径方向に延びる略クランク形状をなしている。連絡路75aは、第2、3供給路71b、71cに向って開く第1開口751と、接続路73に向って開く第2開口752とを有している。これにより、連絡路75aは、第1~3供給路71a~71cを通じて斜板室31と連通しているとともに、接続路73と連通している。
また、第4供給路71d内には、サークリップ74が設けられている。図13に示すように、サークリップ74は、移動体75が第4供給路71d内を軸心O方向で最も後方に移動した際に当接する。これにより、サークリップ74は、移動体75の後方への移動量を規制する。一方、図12に示すように、移動体75は、第4供給路71d内を軸心O方向で最も前方に移動することで第2段部712と当接する。これにより、第2段部712は、移動体75の前方への移動量を規制する。
また、第3供給路71c内において、第1段部711と移動体75との間には、コイルばね76aが設けられている。コイルばね76aは、移動体75を第4供給路71dの後方に向けて付勢している。
この圧縮機では、回転体77を備えている。回転体77は、第2軸孔21bとほぼ同径をなす円筒状に形成されており、第2軸孔21b内に配置されている。これにより、回転体77の前面には、貫通孔49を通じて吸入圧力が作用し、回転体77の後面には制御圧力が作用する。
回転体77は、駆動軸3の第1径部3bとスプライン結合している。これにより、回転体77は、第2軸孔21b内で駆動軸3と一体回転可能となっている。また、回転体77は、吸入圧力と制御圧力との差圧により、駆動軸3に対し、第2軸孔21b内を軸心O方向に移動可能となっている。
また、第1径部3bには、サークリップ78、79が設けられている。サークリップ78は、第1径部3bにおいて、第2軸孔21b内の前方側となる位置に設けられており、回転体77が第2軸孔21b内を軸心O方向で最も前方に移動した際に当接する。これにより、サークリップ78は、回転体77の前方への移動量を規制する。サークリップ79は、第1径部3bにおいて、第2軸孔21b内の後方側となる位置に設けられており、回転体77が第2軸孔21b内を軸心O方向で最も後方に移動した際に当接する。これにより、サークリップ79は、回転体77の後方への移動量を規制する。
また、第2軸孔21b内において、回転体77と支持壁21cとの間には、コイルばね76bが設けられている。コイルばね76bは、回転体77を第2軸孔21bの後方に向けて付勢している。
回転体77には、本体通路41bと第3径路41cとが形成されている。本体通路41bと第3径路41cとにより、第2連通路42が構成されている。ここで、この圧縮機でも、実施例2の圧縮機と同様、本体通路41bが実施例1の圧縮機とは前後方向を反転させた状態で回転体77の外周面に凹設されている。第3径路41cは径方向に延びており、本体通路41bと接続路73とに連通している。第3径路41cは、実施例1の圧縮機における第1径路41aに比べて軸心O方向に長く形成されている。これにより、回転体77が第2軸孔21b内を軸心O方向に移動した場合であっても、第3径路41cと接続路73との連通面積は一定となっている。
この圧縮機では、各第1連通路21dと、第2連通路42と、供給路71と、接続路73と、連絡路75aとによって、吸入機構15cが構成されている。これにより、この圧縮機では、斜板室31に吸入された冷媒ガスが供給路71及び連絡路75aを経て、接続路73から第3径路41cに至る。そして、第3径路41cに至った冷媒ガスは、本体通路41bから各第1連通路21dを流通して各圧縮室45に吸入される。
また、この圧縮機は、吸入絞り部43cを備えている。吸入絞り部43cは、接続路73と連絡路75aとによって構成されている。さらに、この圧縮機でも、実施例2の圧縮機と同様、制御圧室37は図示しない抽気通路によって斜板室31と接続している。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
この圧縮機では、制御弁13が制御圧室37の制御圧力を増大させて可変差圧を大きくすることにより、コイルばね76bの付勢力に抗して、回転体77が図13に示す状態から第2軸孔21b内を軸心O方向で前方に移動し始める。これと同時に、コイルばね76aの付勢力に抗して、移動体75が第4供給路71d内を軸心O方向で前方に移動し始める。これにより、吸入絞り部43cでは、連絡路75aの第2開口752と接続路73との連通面積が徐々に大きくなる。このため、連絡路75aから接続路73へ流通する冷媒ガスの流量が徐々に多くなる。こうして、吸入絞り部43cは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を徐々に増大させる。また、回転体77が前方に移動することにより、連通角度が徐々に小さくなる。こうして、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が徐々に増大する。
そして、可変差圧が最大となることにより、図12に示すように、移動体75が第4供給路71d内で最も前方に位置する。これにより、吸入絞り部43cでは、第2開口752と接続路73との連通面積が最大となるため、連絡路75aから接続路73へ流通する冷媒ガスの流量が最大となる。このため、吸入絞り部43cは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最大にする。また、この際には、回転体77が第2軸孔21b内で最も前方に位置することにより、連通角度が最小となる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大となる。
一方、制御弁13が制御圧室37の制御圧力を減少させて可変差圧を小さくすることにより、コイルばね76bの付勢力によって、回転体77が第2軸孔21b内を軸心O方向で後方に移動し始める。これと同時に、コイルばね76aの付勢力によって、移動体75が第4供給路71d内を軸心O方向で後方に移動し始める。これにより、吸入絞り部43cでは、第2開口752と接続路73との連通面積が徐々に小さくなる。このため、連絡路75aから接続路73へ流通する冷媒ガスの流量が徐々に少なくなる。こうして、吸入絞り部43cは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を減少させる。また、回転体77が後方に移動することにより、連通角度が徐々に大きくなる。こうして、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が減少する。
そして、可変差圧が最小となることにより、図13に示すように、移動体75が第4供給路71d内で最も後方に位置する。これにより、吸入絞り部43cでは、第2開口752と接続路73との連通面積が最小となるため、連絡路75aから接続路73へ流通する冷媒ガスの流量が最少となる。このため、吸入絞り部43cは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最少にする。また、この際には、回転体77が第2軸孔21b内で最も後方に位置することにより、連通角度が最大となる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少となる。
(実施例4)
図14~図16に示すように、実施例4の圧縮機では、リヤハウジング19に径孔61が形成されている。径孔61は、リヤハウジング19の中心側からリヤハウジング19の径外方向に向って延びており、リヤハウジング19の外部に開いている。径孔61内には、区画部材63が固定されている。この区画部材63によって、径孔61は第1吸入通路271と制御圧室37とに区画されている。第1吸入通路271におけるリヤハウジング19の径外方向の端部は吸入口27aとされている。
また、リヤハウジング19には、第2吸入通路272が形成されている。第2吸入通路272は、第1吸入通路271と吸入室27とに連通している。これにより、吸入口27a及び第1、2吸入通路271、272を通じて、吸入室27に冷媒ガスが吸入される。吸入室27は、シリンダブロック21に形成された吸入連通路27bによって第2軸孔21b内と連通している。これにより、第2軸孔21b内は吸入室27とともに吸入圧力となっている。
また、リヤハウジング19には第3ボス191部が形成されている。第3ボス191部は、本発明の「ボス部」の一例である。第3ボス部191は、吸入室27内で軸心O方向に延びている。また、リヤハウジング19には、第4軸孔192が形成されている。第4軸孔192も本発明の「軸孔」の一例である。第4軸孔192は軸心O方向に第3ボス191部を貫通しており、吸入室27と制御圧室37とに連通している。
駆動軸3は、ねじ部3aと、第1径部3bと、第3径部3fとを有している。第3径部3fは、駆動軸3の後方側に位置しており、第1径部3bの後端と連続している。第3径部3fは、第3軸孔210に支承されている。第3径部3fは、第1径部3bよりも大径となっている。また、第3径部3fには、第2軸路30cと第2径路30dとが形成されている。第2軸路30cは、第3径部3f内を軸心O方向に延びている。第2軸路30cの後端は第3径部3fの後面に開いている。第2径路30dは、第2軸路30cと連通している。第2径路30dは、第3径部3f内を径方向に延びており、第3径部3fの外周面に開いている。
図15及び図16に示すように、この圧縮機では、回転体65を備えている。回転体65は、本体部67と延在部69とを有している。本体部67は、第2軸孔21bとほぼ同径に形成されている。延在部69は、本体部67と一体をなしており、本体部67から軸心O方向で後方に向かって延びている。延在部69は、本体部67よりも小径であって、第4軸孔192とほぼ同径に形成されている。延在部69の後端には、後方に向かって突出する突部69aが形成されている。
回転体65では、本体部67が第2軸孔21b内に配置されている。これにより、本体部67の前面には、吸入圧力が作用する。一方、延在部69は、吸入室27内に延びつつ、第4軸孔192に支承されている。これにより、突部69aを含め、延在部69の後端は制御圧室37内に進入している。このため、延在部69の後面には、制御圧力が作用する。
また、回転体65には、第1径路65aと、第1軸路65bとが形成されている。第1径路65aは、延在部69内に形成されており、径方向に延びて延在部69の外周面に開いている。これにより、第1径路65aは吸入室27と連通している。
第1軸路65bは、小径部650と、第1大径部651と、第2大径部652とを有している。小径部650は、本体部67内から延在部69内に亘って形成されている。小径部650は、軸心O方向に延びており、延在部69内で第1径路65aと連通している。第1大径部651は、本体部67内に形成されている。第1大径部651は軸心O方向に延びており、小径部650と連通している。第1大径部651は小径部650よりも大径に形成されている。これにより、第1軸路65bにおいて、第1大径部651と小径部650との間には第1段部653が形成されている。第2大径部652は、本体部67内に形成されている。第2大径部652は軸心O方向に延びており、前端が本体部67の前面に開いているとともに、後端が第1大径部651と連通している。第2大径部652は第1大径部651よりも大径に形成されている。これにより、第1軸路65bにおいて、第2大径部652と第1大径部651との間には第2段部654が形成されている。
回転体65は、第2大径部652において、駆動軸3の第3径部3fとスプライン結合されている。これにより、回転体65は、駆動軸3と一体回転可能となっている。また、回転体65では、吸入圧力と制御圧力との差圧により、本体部67が駆動軸3に対して第2軸孔21b内を軸心O方向に移動可能となっている。この際、延在部69は第4軸孔192内を軸心O方向に移動可能となっている。そして、第3径部3fと第2大径部652とがスプライン結合されることにより、第1軸路65bと第2軸路30cとが連通する。
図15に示すように、本体部67が第2軸孔21b内を軸心O方向で最も前方に移動することにより、第2段部654が第3径部3fの後端と当接する。これにより、第2段部654は、回転体65の前方への移動量を規制する。また、図16に示すように、延在部69が第4軸孔192内を軸心O方向で最も後方に移動することにより、突部69aが制御圧室37の内壁、すなわち、リヤハウジング19に当接する。これにより、リヤハウジング19は、回転体65の後方への移動量を規制する。
また、第1大径部651内において、第3径部3fの後端と第1段部653との間には、コイルばね66が設けられている。コイルばね66は、回転体65を第2軸孔21bの後方に向けて付勢している。
本体部67には、第2連通路42、すなわち、本体通路41bと第3径路41cとが形成されている。ここで、この圧縮機でも、実施例2、3の圧縮機と同様、本体通路41bは、実施例1の圧縮機とは前後方向を反転させた状態で本体部67の外周面に凹設されている。また、第3径路41cは第2径路30dと連通している。ここで、実施例3の圧縮機と同様、本体部67が第2軸孔21b内を軸心O方向に移動した場合であっても、第3径路41cと第2径路30dとの連通面積は一定となっている。
この圧縮機では、各第1連通路21dと、第2連通路42と、第1径路65aと、第1軸路65bと、第2軸路30cと、第2径路30dとによって、吸入機構15dが構成されている。これにより、この圧縮機では、吸入室27に吸入された冷媒ガスが第1径路65aから第1軸路65b、第2軸路30c及び第2径路30dを経て、第3径路41cに至る。そして、第3径路41cに至った冷媒ガスは、本体通路41bから各第1連通路21dを流通して各圧縮室45に吸入される。
また、この圧縮機は、吸入絞り部43dを備えている。吸入絞り部43dは、第1径路65aと第3ボス部191とによって構成されている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
この圧縮機では、制御弁13が制御圧室37の制御圧力を増大させて可変差圧を大きくすることにより、コイルばね66の付勢力に抗して、回転体65の本体部67が図16に示す状態から第2軸孔21b内を軸心O方向で前方に移動し始める。また、回転体65の延在部69が第4軸孔192内を軸心O方向で前方に移動し始める。このため、第1径路65aが第3ボス部191の前方に移動し始める。これにより、吸入絞り部43dでは、第1径路65aの開度が徐々に大きくなる。このため、吸入室27から第1径路65aに流通する冷媒ガスの流量が徐々に増大する。こうして、吸入絞り部43dは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を徐々に増大させる。また、本体部67が第2軸孔21b内を軸心O方向で前方に移動することにより、連通角度が徐々に小さくなる。こうして、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が増大する。
そして、可変差圧が最大となることにより、図15に示すように、第1径路65aの全体が第3ボス部191の前方に位置する。これにより、吸入絞り部43dでは、第1径路65aの開度が最大となるため、吸入室27から第1径路65aに流通する冷媒ガスの流量が最大となる。このため、吸入絞り部43dは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最大にする。また、この際には、連通角度が最小となる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大となる。
一方、制御弁13が制御圧室37の制御圧力を減少させて可変差圧を小さくすることにより、コイルばね66の付勢力によって、本体部67が第2軸孔21b内を軸心O方向で後方に移動し始める。また、延在部69が第4軸孔192内を軸心O方向で後方に移動し始める。このため、第1径路65aが第3ボス部191の後方に移動しつつ、第4軸孔192内に進入し始める。つまり、第1径路65aが第3ボス部191に覆われ始める。これにより、吸入絞り部43dでは、第1径路65aの開度が徐々に小さくなる。このため、吸入室27から第1径路65aに流通する冷媒ガスの流量が徐々に減少する。こうして、吸入絞り部43dは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を徐々に減少させる。また、本体部67が第2軸孔21b内を軸心O方向で前方に移動することにより、連通角度が徐々に大きくなる。こうして、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が減少する。
そして、可変差圧が最小となることにより、図16に示すように、第1径路65aの大部分が第3ボス部191に覆われた状態となる。これにより、吸入絞り部43dでは、第1径路65aの開度が最小となるため、吸入室27から第1径路65aに流通する冷媒ガスの流量が最少となる。このため、吸入絞り部43dは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最少にする。また、この際には、連通角度が最大となる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少となる。
(実施例5)
図17~図19に示すように、実施例5の圧縮機では、リヤハウジング19の径孔61内に吸入弁81と、サークリップ82、83とが設けられている。吸入弁81は、サークリップ82とサークリップ83との間に配置されている。この吸入弁81により、径孔61は吸入室27と制御圧室37とに区画されている。これにより、吸入弁81における吸入室27側には吸入圧力が作用し、吸入弁81における制御圧室37側には制御圧力が作用する。また、吸入室27におけるリヤハウジング19の径外方向の端部は吸入口27aとされている。
吸入弁81は、径孔61内における吸入圧力と制御圧力との差圧、つまり可変差圧により、吸入室27内でリヤハウジング19の径方向、つまり上下方向に移動可能となっている。図17及び図18に示すように、吸入弁81は、吸入室27内を最も上方に移動することでサークリップ82に当接する。これにより、サークリップ82は、吸入弁81の上方への移動量を規制する。また、図19に示すように、吸入弁81は、吸入室27内を最も下方に移動することでサークリップ83に当接する。これにより、サークリップ83は、吸入弁81の下方への移動量を規制する。
吸入弁81とサークリップ82との間にはコイルばね84が設けられている。コイルばね84は、吸入弁81を吸入室27の下方側、つまり、制御圧室37側に向けて付勢している。
吸入弁81の内部には、第1通孔81aと第2通孔81bとが形成されている。第1通孔81aは、軸心O方向と交差する方向に延びており、吸入弁81の上面に開口している。第2通孔81bは、第1通孔81aと連通しており、軸心O方向に延びて吸入弁81を貫通している。
また、リヤハウジング19には、吸入通路85と連通室86とが形成されている。吸入通路85は、軸心O方向に延びており、第2通孔81bと連通している。これにより、吸入通路85は、第1、2通孔81a、81bを通じて吸入室27と連通している。連通室86は、リヤハウジング19の中心側に形成されており、吸入通路85と連通している。また、連通室86は、第4軸孔192によって、制御圧室37と連通している。
この圧縮機では、回転体65の本体部67が第2軸孔21bに配置されることにより、延在部69は、連通室86内に延びつつ、第4軸孔192に支承される。これにより、第1径路65aは連通室86と連通する。ここで、この圧縮機では、実施例4の圧縮機と異なり、リヤハウジング19に第3ボス部191が形成されていない。このため、延在部69が軸心O方向に移動しても、第1径路65aと連通室86との連通面積は一定となっている。
この圧縮機では、各第1連通路21dと、第2連通路42と、吸入弁81と、吸入通路85と、連通室86と、第1径路65aと、第1軸路65bと、第2軸路30cと、第2径路30dとによって、吸入機構15eが構成されている。これにより、この圧縮機では、吸入室27に吸入された冷媒ガスが第1、2通孔81a、81b及び吸入通路85を経て連通室86に至る。そして、連通室86に至った冷媒ガスが第1径路65aから、第1軸路65b、第2軸路30c及び第2径路30dを経て、第3径路41cに至る。そして、第3径路41cに至った冷媒ガスは、本体通路41bから各第1連通路21dを流通して各圧縮室45に吸入される。
また、この圧縮機は、吸入絞り部43eを備えている。吸入絞り部43eは、吸入弁81と吸入通路85とによって構成されている。この圧縮機における他の構成は実施例4の圧縮機と同様である。
この圧縮機では、制御弁13が制御圧室37の制御圧力を増大させて可変差圧を大きくすることにより、吸入室27内では、コイルばね84の付勢力に抗して、図19に示す状態から吸入弁81が吸入室27内を上方に移動し始める。これにより、吸入絞り部43eでは、吸入通路85に対して、吸入弁81が上方に移動することで、吸入通路85と第2通孔81bとの連通面積が徐々に大きくなる。このため、第2通孔81bから吸入通路85を経て連通室86に流通する冷媒ガスの流量が徐々に増大する。こうして、吸入絞り部43eは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を徐々に増大させる。
そして、可変差圧が最大となることにより、図18に示すように、吸入弁81が吸入室27内で最も上方に位置する。これにより、吸入絞り部43eでは、吸入通路85と第2通孔81bとの連通面積が最大となる。このため、第2通孔81bから吸入通路85を経て連通室86に流通する冷媒ガスの流量が最大となる。このため、吸入絞り部43eは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最大にする。なお、可変差圧の増大時における本体部67の第2軸孔21b内での移動及び延在部69の第4軸孔192内での移動は、実施例4の圧縮機と同様である。このため、この圧縮機では、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大となる。
一方、制御弁13が制御圧室37の制御圧力を減少させて可変差圧を小さくすることにより、吸入室27内では、コイルばね84の付勢力によって、吸入弁81が吸入室27内を下方に移動し始める。これにより、吸入絞り部43eでは、吸入通路85に対して、吸入弁81が下方に移動することで、吸入通路85と第2通孔81bとの連通面積が徐々に小さくなる。このため、第2通孔81bから吸入通路85を経て連通室86に流通する冷媒ガスの流量が徐々に減少する。こうして、吸入絞り部43eは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を徐々に減少させる。
そして、可変差圧が最小となることにより、図19に示すように、吸入弁81が吸入室27内で最も下方に位置する。これにより、吸入絞り部43eでは、第2通孔81bが僅かな部分でのみ吸入通路85とすることから、吸入通路85と第2通孔81bとの連通面積が最小となる。このため、第2通孔81bから吸入通路85を経て連通室86に流通する冷媒ガスの流量が最少となる。このため、吸入絞り部43eは、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を最少にする。なお、可変差圧の減少時における本体部67の第2軸孔21b内での移動及び延在部69の第4軸孔192内での移動についても、実施例4の圧縮機と同様である。このため、この圧縮機では、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少となる。
この圧縮機では、本体部67及び延在部69の軸心O方向の移動、すなわち、回転体65の軸心O方向の移動とは独立して、吸入絞り部43eでは、吸入通路85と第2通孔81bとの連通面積が変化することで、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を増減させる。これにより、この圧縮機でも、各圧縮室45への冷媒ガスの流量を好適に調整することが可能となっている。
こうして、実施例2~5の圧縮機においても、実施例1の圧縮機と同様の作用を奏することが可能となっている。
以上において、本発明を実施例1~5に即して説明したが、本発明は上記実施例1~5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例1~5の圧縮機を両頭ピストン式圧縮機として構成しても良い。
また、実施例1の圧縮機において、回転体11が第2軸孔21b内を軸心O方向で前方に移動することにより、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が増大する構成としても良い。
また、実施例1~5の圧縮機において、各シュー8a、8bに換えて、固定斜板5の後面側にスラスト軸受を介して揺動板を支持するとともに、揺動板と各ピストン7とをコンロッドによって連接するワッブル型の変換機構を採用しても良い。
さらに、実施例1~5の圧縮機において、外部から制御弁13への電流のONとOFFとを切り替えて制御圧力を制御する外部制御を行っても良く、外部からの電流に依らずに制御圧力を制御する内部制御を行っても良い。ここで、外部制御を行う場合であって、制御弁13への電流をOFFにすることによって、制御弁13が弁開度を小さくするように構成すると、圧縮機の停止時において、弁開度が小さくなり、制御圧室37の制御圧力を低くできる。このため、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少の状態で圧縮機を起動できることから、起動ショックを低減することができる。
また、実施例1~5の圧縮機において、抽気通路を経て制御圧室37から吸入室27又は斜板室31に導出する冷媒ガスの流量を制御弁13によって変化させる抜き側制御を行ってもよい。この場合には、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させるに当たって使用する吐出室29内の冷媒ガスの量を少なくできることから、圧縮機の効率を上げることができる。また、この場合、制御弁13への電流をOFFにすることによって弁開度を大きくするように構成すると、圧縮機の停止時において、弁開度が大きくなり、制御圧室37の制御圧力を低くできる。このため、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少の状態で圧縮機を起動できることから、起動ショックを低減することができる。
さらに、実施例1~5の圧縮機において、制御弁13に換えて、抽気通路と給気通路との両者で開度を調整可能な三方弁を採用しても良い。