以下、実施の形態に係る固定子鉄心、固定子、電動機、及び、圧縮機について図面等を参照しながら説明する。なお、図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置あるいは部品の配置及び向きを限定するものではない。また、以下の説明で用いる「平面図」とは、対象物を固定子鉄心200の積層方向から見た場合の上面視による図である。
実施の形態1.
[圧縮機100の構成]
図1は、実施の形態1に係る圧縮機100の縦断面図である。図1を用いて、密閉型圧縮機である圧縮機100について説明する。圧縮機100は、ローリングピストン型のシングルロータリー式圧縮機であり、圧縮機100の内部に吸入した低圧のガス冷媒を、高圧のガス冷媒として吐出する流体機械である。圧縮機100の筐体は、シリンダ形状に形成された鉄製の密閉容器101によって構成されている。密閉容器101は、縦断面が逆U字形状の上部容器101aと、縦断面がU字形状の下部容器101bとにより構成されており、上部容器101aの開口部の外側面は、下部容器101bの開口部の内側面に固定されている。上部容器101aと下部容器101bとの固定部分は、例えばアーク溶接又は抵抗溶接等によって接合されている。
密閉容器101の外側には、吸入マフラー127が配置されている。吸入マフラー127は、密閉容器101の外側面に配置された支持部材を介して密閉容器101に固定されている。吸入マフラー127の頂部には、流入管127aが吸入マフラー127を貫通して固定されている。流入管127aは、低圧のガス冷媒又は乾き度の高い二相冷媒を吸入マフラー127の内部に流入させる冷媒配管である。吸入マフラー127の底部には、吸入連結管128の一端が貫通して固定されており、吸入連結管128の他端は、密閉容器101の下部容器101bの側面部を貫通して固定されている。吸入マフラー127は、吸入連結管128によって圧縮機構部103のシリンダ105と連結する。
吸入マフラー127は、流入管127aから流入する冷媒により発生する騒音を低減又は除去する消音器である。また、吸入マフラー127は、アキュムレータ機能も有しており、余剰冷媒を貯留する冷媒貯留機能と、運転状態が変化する際に一時的に発生する液冷媒を滞留させることによる気液分離機能とを有している。吸入マフラー127の気液分離機能により、密閉容器101の内部に大量の液冷媒が流入し、圧縮機100で液圧縮が行われることを防ぐことができる。
密閉容器101を構成する上部容器101aの上面側には、吐出管129が貫通して固定されている。吐出管129は、高圧のガス冷媒を密閉容器101の外部に吐出させる冷媒配管である。吐出管129と上部容器101aとの固定部分は、例えばろう付け又は抵抗溶接等によって接合されている。
更に、密閉容器101を構成する上部容器101aの上面側には、ガラス端子119が設けられている。ガラス端子119は、外部電源と接続されるインタフェースを提供している。外部電源は、圧縮機100に電力を供給する電源装置であり、交流周波数が50Hz又は60Hzの一般商用交流電源、又は交流周波数を変化させることが可能なインバータ電源が用いられる。周波数を変更できるインバータ電源を用いた場合、圧縮機100の回転数を変化させることができるため、圧縮機100では高圧のガス冷媒の吐出管129からの吐出量を制御することができる。
密閉容器101の内部には、電動機部102と、圧縮機構部103と、シャフト104とが収容されている。密閉容器101の内部において、圧縮機構部103の上方に電動機部102が配置されている。シャフト104は、密閉容器101の中心部において、電動機部102と圧縮機構部103との間に配置され、電動機部102と圧縮機構部103との間を上下方向に延びるように設けられている。圧縮機構部103は、圧縮機構部103の内部が吸入連結管128と連通するように配置されている。密閉容器101の内部の中空空間は、圧縮機構部103で圧縮された高圧のガス冷媒で満たされている。
電動機部102は、密閉容器101内に配置される圧縮機用の電動機である。電動機部102は、外部電源から供給された電力を用いてシャフト104に回転駆動力を発生させ、シャフト104を介して圧縮機構部103に回転駆動力を伝達するモータとして構成される。電動機部102は、上面視において中空円筒形状の外観を有する固定子1と、固定子1の内側面の内側に回転自在に配置された円筒状の回転子5とを備えている。
固定子1は、焼嵌等により密閉容器101の下部容器101bの内側面に固定され、リード線9を介してガラス端子119に接続されている。電動機部102は、外部電源から供給される電力が、固定子1を構成する巻回されたコイルにリード線9を介して供給されることにより、固定子1の内側面の内側で回転子5を回転させることができる。圧縮機100においては、例えばDCブラシレスモータ等が電動機部102として用いられる。固定子1を構成する固定子鉄心200は、外径が下部容器101bの内径よりも大きく、下部容器101bに焼嵌され固定されている。なお、固定子1の詳細な構成については、後述する。
回転子5は、磁石挿入穴24A及び冷媒流路23が形成された回転子鉄心5Aと、回転子鉄心5Aの軸方向の両端部にそれぞれ配置され、永久磁石24の飛散を防止する役割を兼ねた上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bと、を有する。また、回転子5は、上バランスウェイト25a、下バランスウェイト25b、及び回転子鉄心5Aを固定するリベット26を備える。
回転子鉄心5Aは、固定子鉄心200と同様に薄板電磁鋼板を打抜き形成される回転子鉄心シートを積層して構成される。回転子鉄心5Aは、シャフト104において圧縮機構部103よりも上方に位置する上部シャフト104aに焼嵌によって固定される。そのため、回転子鉄心5Aの内径は、シャフト104の外径よりも小さい。上バランスウェイト25aは、圧縮機100において、回転子鉄心5Aの上端部に配置される。下バランスウェイト25bは、圧縮機100において、回転子鉄心5Aの下端部に配置される。なお、回転子5は、上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bとは別に、回転子鉄心5Aの軸方向の両端に配置される端板を設けてもよい。
リベット26は、回転子鉄心5A、上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bに連続して形成されたリベット穴26Aに挿入される。回転子5に形成された冷媒流路23は、圧縮機構部103から吐出された冷媒ガスを密閉容器101の上部へ導くと共に、冷媒ガスと共に密閉容器101の上部に導かれた冷凍機油を密閉容器101の下部に落とすための役割を持つ。また、固定子1と密閉容器101の間にも、密閉容器101の上部と下部を連通する、冷媒流路23と同様の役割を持つ空間が存在する。
回転子5の中心部には、シャフト104が回転子5を貫通して固定されている。シャフト104は、圧縮機構部103に回転子5の回転駆動力を伝達する回転軸である。シャフト104は、圧縮機構部103の内部においてシリンダ105と対応する位置に配置される偏心部104bを有している。偏心部104bの外周には、偏心部104bの外側面に沿って回転自在に取り付けられた略円筒状のローリングピストン109が配置されている。ローリングピストン109は、電動機部102によってシャフト104が回転すると、シリンダ105内をその内周面に沿って回転する。
圧縮機構部103は、電動機部102から供給された回転駆動力により、吸入連結管128から密閉容器101の低圧空間に吸入された低圧のガス冷媒を高圧のガス冷媒に圧縮し、圧縮した高圧のガス冷媒を圧縮機構部103の上方に吐出するものである。
圧縮機構部103は、中空円筒形状のシリンダ105を備えている。シリンダ105の外側面は、アークスポット溶接等のアーク溶接又は焼嵌によって、密閉容器101の下部容器101bの内側面に固定されている。シリンダ105の内側面に取り囲まれて構成された中空部分の空間には、シャフト104の偏心部104b及びローリングピストン109が収容されている。シリンダ105は、シリンダ105の中空部分において、シャフト104の回転により、シャフト104の偏心部104b及びローリングピストン109が偏心回転できるように構成されている。シリンダ105は、シリンダ105に形成された溝内を径方向に往復運動するベーン110の一端がローリングピストン109の外周壁に当接することで圧縮室が形成されている。
シリンダ105の軸方向両端の開口部は、上軸受106及び下軸受107によって閉塞されている。すなわち、シリンダ105の上側には上軸受106が配置されており、シリンダ105の下側には下軸受107が配置されている。上軸受106、シリンダ105及び下軸受107には、シャフト104が貫通している。上軸受106及び下軸受107は、シャフト104を摺動自在に支持するすべり軸受であり、シャフト104を回転自在に支持している。上軸受106、シリンダ105及び下軸受107は、この順に積層され、シリンダ105の中空部分の上下開口を上軸受106と下軸受107とにより塞ぐことによって、中空部分内の気密性が確保されている。上軸受106及び下軸受107は、例えば、ボルト等によりシリンダ105の上側及び下側に固定されている。
上軸受106の上面側には、圧縮機構部103における冷媒の圧縮時に発生する騒音を除去又は低減する消音器108を配置することができる。消音器108には、上軸受106に設けられた吐出口(図示は省略)から流入する高圧のガス冷媒を密閉容器101の内部に吐出させる開口部108aを設けることができる。
圧縮機構部103において、ローリングピストン109、シリンダ105、ベーン110、上軸受106、及び下軸受107に囲まれた密閉自在な空間は、吸入連結管128から吸入された低圧のガス冷媒を圧縮する圧縮室を構成する。
本実施の形態では、圧縮機100を縦置型の圧縮機として構成しているが、横置型の圧縮機として構成してもよい。また、本実施の形態では、圧縮機100をローリングピストン型のロータリー式圧縮機として構成しているが、スイングベーン方式のスイング圧縮機、スクリュ圧縮機、レシプロ型圧縮機、又はスクロール圧縮機として構成してもよい。また、本実施の形態では、シングルロータリー式のロータリー圧縮機として構成しているが、ツインロータリ式のロータリー圧縮機として構成してもよい。圧縮機100は、電動機部102が密閉容器101内に配置される密閉型の圧縮機100であればその圧縮構造を問わない。
[圧縮機100の動作]
次に、本実施の形態の圧縮機100の動作について説明する。電動機部102の駆動によりシャフト104が回転すると、シャフト104と共に、シリンダ105の内部に収容された偏心部104b及びローリングピストン109が偏心回転する。偏心部104b及びローリングピストン109の偏心回転により、ローリングピストン109の外周面は、シリンダ105の中空部分において、シリンダ105の内側面に接触して移動する。シリンダ105内のローリングピストン109の偏心回転と連動し、シリンダ105に形成された溝の内部に配置されたベーン110がピストン運動する。吸入連結管128から圧縮機構部103に流入した低圧のガス冷媒は、ローリングピストン109、シリンダ105、ベーン110、上軸受106、及び下軸受107に囲まれた密閉空間である圧縮室に流入する。圧縮室の内部に流入した低圧のガス冷媒は、ローリングピストン109の偏心回転による圧縮室の容積の減少に伴い、高圧のガス冷媒に圧縮される。高圧のガス冷媒は、上軸受106に設けられた吐出口を介して、圧縮機構部103の外部の、密閉容器101の内部の中空空間に吐出される。密閉容器101の内部の中空空間に吐出された高圧のガス冷媒は、例えば、電動機部102の固定子1と回転子5との間の隙間等を通過し、吐出管129を介して密閉容器101の外へと吐出される。
[固定子1の詳細な構成]
図2は、実施の形態1に係る固定子1の平面図である。図1及び図2に示すように、固定子1は、固定子鉄心200と、固定子鉄心200に絶縁材3を介して配置された巻線4と、を有する。
[固定子鉄心200]
図3は、実施の形態1に係る固定子1を構成する固定子鉄心200の平面図である。固定子鉄心200は、外径が密閉容器101の内径よりも大きく、密閉容器101の内周壁101eに焼嵌されて固定されている。また、固定子鉄心200は、密閉容器101の外径側から実施される熱カシメによって、密閉容器101にカシメられる。熱カシメは、例えば、密閉容器101を高周波加熱して押圧することで、密閉容器101の内壁の一部を、固定子鉄心200に形成された後述する熱カシメ溝124に挿入させ、熱カシメ溝124を構成する壁に固く密着させることによって行われる。固定子鉄心200は、円筒形状に形成されている。固定子鉄心200は、分割鉄心120が周方向に複数配置されて形成されている。すなわち、固定子鉄心200は、複数の分割鉄心120が周方向に配置されることで円筒形状に形成されている。図1及び図3では、合計9個の分割鉄心120が、円環状に配置されているが、固定子鉄心200を円環状に構成できれば、分割鉄心120の合計数は8個以下でもよく、10個以上であってもよい。
複数の分割鉄心120は、それぞれ互いに連結され一連に構成されている。分割鉄心120は、図3に示すように、バックヨーク部20aと、ティース部20bとを有している。バックヨーク部20aは、固定子鉄心200の外周壁1aを構成し、固定子鉄心200において円筒形状の周壁を構成する。隣り合う分割鉄心120同士は、互いのバックヨーク部20aが結合されることで連結されている。ティース部20bは、バックヨーク部20aの内周側において、周方向の中央部分から固定子鉄心200の中心側へ突出し、略T字形状に形成されている。ティース部20bは、根元から一定の幅で半径方向の内側に延び、先端において幅が広がった形状となっている。固定子鉄心200において、ティース部20bの一定の幅に形成された部分には、絶縁材3を介して巻線4が集中巻で巻装されている。分割鉄心120は、ティース部20bとは直角方向、すなわち、バックヨーク部20aの周方向の両端部に、突当部120aと端面部120bとを有する。固定子鉄心200は、回動自在に連結され一連に構成された分割鉄心120が環状に配置され、両端に位置する分割鉄心120の同士が溶接によって固定されることによって円環状に形成される。
図4は、分割鉄心120の一部を構成する電磁鋼板20の平面図である。図5は、分割鉄心120の一部を構成する電磁鋼板20の平面図である。図6は、分割鉄心120同士の溶接位置における固定子鉄心200の拡大平面図である。図4の電磁鋼板20と図5の電磁鋼板20とは、固定子鉄心200において形成されるスリットの向きが異なるだけであり、基本構造は同じである。なお、スリットは、突当部120aの縁部により形成される。スリットは、固定子鉄心200において、径方向に延びるように形成されており、径方向の中央部が周方向に凸となるように形成されている。そして、固定子鉄心200の周方向において、ジョイント部121に対して突当部120aが右側にある場合に右向きのスリットと称し、ジョイント部121に対して突当部120aが左側にある場合に左向きのスリットと称する。そのため、図4の電磁鋼板20の当該スリットの向きは周方向において右向きであり、図5の電磁鋼板20の当該スリットの向きは周方向において左向きである。
電磁鋼板20は、分割鉄心120において積層されている鋼板である。電磁鋼板20は、例えば鉄を主成分とする磁性材料の板材であり、特定の形状に打ち抜かれて形成されている。分割鉄心120は、薄板の電磁鋼板20が重ね合わされ、カシメ部123において、重ね合わせ方向にカシメられて、電磁鋼板20同士が固定されている。重ねられた電磁鋼板20によって構成された分割鉄心120の軸方向の端面には、絶縁部材(図示は省略)が固定される。電磁鋼板20のバックヨーク部20aには、インシュレータ挿入溝125が形成されている。インシュレータ挿入溝125には、絶縁部材に設けられた突起が挿入され、絶縁部材が分割鉄心120に係止される。
電磁鋼板20は、バックヨーク部20aにおいて、固定子鉄心200として構成された場合の周方向の一端にジョイント部121を有する。ジョイント部121は、例えばカシメによって構成され、分割鉄心120は、ジョイント部121を中心に回転自在に支持される。分割鉄心120は、ジョイント部121を介して隣り合う分割鉄心120と連結される。ジョイント部121の構造は、固定子鉄心200の分割鉄心120毎に電磁鋼板20を積層させ、各分割鉄心120を連結させて形成される固定子鉄心200に使用されることが知られている。上述したように、電磁鋼板20は、ティース部20bの長手方向とは直角方向、すなわち、バックヨーク部20aの周方向の両端部に、突当部120aと端面部120bとを有する。固定子鉄心200において、両端に位置する分割鉄心120の同士が溶接によって固定される場合に、突当部120aと端面部120bとが嵌合して当接する。従来より、この電磁鋼板20のジョイント部121は、固定子鉄心200のジョイントラップ構造と称されている。
図6に示すように、固定子鉄心200の当接部132において、固定子鉄心200の外周壁1aには溶接溝131が形成されている。当接部132は、連結された複数の分割鉄心120の両端部に位置し、互いに溶接により接合された分割鉄心120同士が当接する部分である。溶接溝131は、当接部132を構成するバックヨーク部20aの端部の電磁鋼板の外縁部20cにおいて、ティース部20bが形成されている側の内周壁20dに向かって凹むように形成されている溝である。
電磁鋼板20は、バックヨーク部20aの外縁部20cに一対の突出部122を有する。外縁部20cは、バックヨーク部20aの周縁部であって、固定子鉄心200の外周壁1aを構成する。突出部122は、バックヨーク部20aにおいて、ティース部20bとは反対側の位置に設けられている。複数の分割鉄心120の中で密閉容器101の内周壁101eと接触する分割鉄心120の突出部122は、密閉容器101と接触する箇所の中で第1接触部であり、密閉容器101に対する焼嵌代を構成する。なお、焼嵌代は、加熱前の固定子鉄心200の外径と、密閉容器101の内径との差である。突出部122は、バックヨーク部20aの外縁部が形成する中心Oを中心とする仮想の真円と比較して突出した部分である。固定子鉄心200は、後述する固定子鉄心200の中心Oと突出部122の外縁部との距離によって焼嵌代の厚さが調整される。より詳細には、固定子鉄心200は、中心Oから突出部122の外縁部までの径方向の距離によって焼嵌代の厚さが調整される。突出部122は、外縁部20cに形成された突出片であり、周方向において外縁部20cに2つ形成されている。突出部122の突出形状は、周方向において2つの突出部122の外側に形成された熱カシメ溝124と、2つの突出部122の間に形成された中央溝126とによって形成されている。
熱カシメ溝124及び中央溝126は、外縁部20cにおいて、ティース部20bが形成されている側の内周壁20dに向かって内径側に凹むように形成されている溝である。熱カシメ溝124は、固定子鉄心200の外周壁1aにおいて内径側に凹むように形成されている。熱カシメ溝124は、密閉容器101の外径側から実施される熱カシメに対して熱カシメ溝124内に入り込んだ密閉容器101と嵌合する。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、熱カシメ溝124を有し、密閉容器101の外径側から加熱されてカシメられることで周方向及び軸方向の移動が規制される。なお、周方向及び軸方向とは、固定子1又は固定子鉄心200の周方向及び軸方向であり、軸方向とは、後述する電磁鋼板20の積層方向でもある。固定子鉄心200は、熱カシメ溝124が外周壁1aに形成された分割鉄心120を少なくとも1相分以上有する。
従来のジョイント部を持つジョイントラップ構造の固定子鉄心は、焼嵌代を構成する接触部と、熱カシメ溝とを有することで、密閉容器と周方向に対して結合する。そして、固定子を構成する固定子鉄心は、外周壁と密閉容器の内周壁とに働く把持力を向上させ、固定子と密閉容器との間の保持トルク、及び、密閉容器に対する固定子の抜け荷重を向上させる事を可能としている。また、固定子の外周壁と密閉容器との接触部分について、運転時の磁束密度が低い箇所に焼嵌応力を集中させるように、従来よりも接触面積を減少させ、固定子の外周形状の変更によって、圧縮機の性能向上を可能としている。
しかし、密閉容器の内周壁の内径寸法、及び、固定子の外周壁の外径寸法は、製造時のばらつきを持つ。そのため、熱カシメによる保持トルク及び抜け荷重の向上分だけ、焼嵌代及び焼嵌応力を低減させて性能向上を狙う場合に、従来工程を流用する場合において焼嵌代を0以上とする場合には、焼嵌代の低減に対する製造上の制約が生じる事になる。また、密閉容器の内周壁の内径寸法、及び、固定子の外周壁の外径寸法の製造時のばらつきに対して、焼嵌代の低減に対する製造上の制約が低減可能であったとしても、次のような問題が生じる場合がある。すなわち、ジョイント部を有する固定子鉄心は、焼嵌代の低減によって生じる把持力の低下によって固定子鉄心の剛性の低下が懸念される。そして、固定子鉄心は、固定子鉄心の剛性の低下により、密閉容器との熱カシメによる歪みの影響を受けやすくなり、固定子の形状の変形量が増大するため、圧縮機の騒音及び振動に影響を及ぼすことが危惧される。これに対して、実施の形態1に係る圧縮機100は、以下に説明する固定子1の外周形状の工夫により焼嵌代及び応力のばらつきを低減させ、圧縮機100の性能向上を可能とする。また、圧縮機100は、熱カシメによる把持力を向上させることができる熱カシメ溝124を有し、かつ、熱カシメによる歪みに対して、固定子1の形状の変形を抑制することができる。
図7は、熱カシメ溝124及び右方向のスリットが形成された比較例の連結鋼板2Eの平面図である。図8は、熱カシメ溝124及び右方向のスリットが形成された実施の形態1に係る連結鋼板2Fの平面図である。図9は、熱カシメ溝124及び左方向のスリットが形成された比較例の他の連結鋼板2ELの平面図である。図10は、熱カシメ溝124及び左方向のスリットが形成された実施の形態1に係る他の連結鋼板2FLの平面図である。まず、図7及び図9を用いて、比較例の固定子1として、周方向に全9個の分割鉄心120を有する3相構造の固定子の場合について検討する。なお、比較例の固定子1は、従来の固定子1である。以下に説明する連結鋼板の総称を連結鋼板2と称し、連結鋼板2は、電磁鋼板20が連結して形成された円環状の電磁鋼板である。
従来の固定子1の固定子鉄心200Dは、連結鋼板2Eと、連結鋼板2ELとが1枚毎に交互に積層して形成されている。連結鋼板2Eは、全9個の電磁鋼板20が円環状に配置されて構成されており、当接部132が右向きのスリットを構成する。連結鋼板2Eは、両端に位置する電磁鋼板20同士が接合される部分に溶接溝131が形成されている。また、連結鋼板2Eを構成する各電磁鋼板20は、それぞれ上述した突出部122を2つ有すると共にジョイント部121を有し、各電磁鋼板20には、密閉容器101と嵌合自在な熱カシメ溝124が形成されている。図7では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A2、電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A4、電磁鋼板20A5、電磁鋼板20A6、電磁鋼板20A7、電磁鋼板20A8、電磁鋼板20A9として示している。
連結鋼板2ELは、連結鋼板2Eとスリットの向きが異なるだけである。すなわち、連結鋼板2ELは、全9個の電磁鋼板20が円環状に配置されて構成されており、当接部132が左向きのスリットを構成する。連結鋼板2ELは、両端に位置する電磁鋼板20同士が接合される部分に溶接溝131が形成されている。また、連結鋼板2ELを構成する各電磁鋼板20は、それぞれ上述した突出部122を2つ有すると共にジョイント部121を有し、各電磁鋼板20には、密閉容器101と嵌合自在な熱カシメ溝124が形成されている。図9では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B2、電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B4、電磁鋼板20B5、電磁鋼板20B6、電磁鋼板20B7、電磁鋼板20B8、電磁鋼板20B9として示している。
これに対して、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、連結鋼板2F及び連結鋼板2FLと、連結鋼板2I及び連結鋼板2ILと、連結鋼板2G及び連結鋼板2GLと、連結鋼板2H及び連結鋼板2HLとを有する。
実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、連結鋼板2Fと、連結鋼板2FLとが1枚毎に交互に積層して形成されている。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、固定子鉄心200の鋼板の積層方向の一部分を構成する積層鉄心群Aを有し、積層鉄心群Aは、積層された連結鋼板2Fと連結鋼板2FLとによって構成される。
連結鋼板2Fは、全9個の電磁鋼板20が円環状に配置されて構成されており、当接部132が右向きのスリットを構成する。連結鋼板2Fは、両端に位置する電磁鋼板20同士が接合される部分に溶接溝131が形成されている。また、連結鋼板2Fを構成する各電磁鋼板20は、それぞれ上述した突出部122を2つ有すると共にジョイント部121を有し、各電磁鋼板20には、密閉容器101と嵌合自在な熱カシメ溝124が形成されている。図8では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A2、電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A4、電磁鋼板20A5、電磁鋼板20A6、電磁鋼板20A7、電磁鋼板20A8、電磁鋼板20A9として示している。なお、図8では、全ての電磁鋼板20に熱カシメ溝124が形成されているが、熱カシメ溝124は、全ての電磁鋼板20に形成されていなくてもよい。熱カシメ溝124は、例えば、周方向において均等な間隔をもって配置された電磁鋼板20A2、電磁鋼板20A5、電磁鋼板20A8、の3つの電磁鋼板20のみに形成されていてもよい。
連結鋼板2FLは、連結鋼板2Fとスリットの向きが異なるだけである。すなわち、連結鋼板2FLは、全9個の電磁鋼板20が円環状に配置されて構成されており、当接部132が左向きのスリットを構成する。連結鋼板2FLは、両端に位置する電磁鋼板20同士が接合される部分に溶接溝131が形成されている。また、連結鋼板2FLを構成する各電磁鋼板20は、それぞれ上述した突出部122を2つ有すると共にジョイント部121を有し、各電磁鋼板20には、密閉容器101と嵌合自在な熱カシメ溝124が形成されている。図10では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B2、電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B4、電磁鋼板20B5、電磁鋼板20B6、電磁鋼板20B7、電磁鋼板20B8、電磁鋼板20B9として示している。なお、図10では、全ての電磁鋼板20に熱カシメ溝124が形成されているが、熱カシメ溝124は、全ての電磁鋼板20に形成されていなくてもよい。熱カシメ溝124は、例えば、周方向において均等な間隔をもって配置された電磁鋼板20B2、電磁鋼板20B5、電磁鋼板20B8、の3つの電磁鋼板20のみに形成されていてもよい。
連結鋼板2Fは、一対の第1突出部122a及び一対の第2突出部122bの2種類の突出部122を有している。同様に、連結鋼板2FLは、第1突出部122a及び第2突出部122bの2種類の突出部122を有している。固定子鉄心200は、中心Oを基準とした径方向における第1突出部122aの突出量が、中心Oを基準とした径方向における第2突出部122bの突出量よりも大きい。すなわち、固定子鉄心200は、中心Oから第1突出部122aの外縁部までの距離が、中心Oから第2突出部122bの外縁部までの距離よりも大きい。なお、中心Oは、固定子鉄心200の中心部である。したがって、中心Oを円の中心とし、第1突出部122aと接する仮想の円Caの第1外径Daは、第2突出部122bと接する仮想の円Cbの第2外径Dbよりも大きい。なお、第1外径Daは、固定子鉄心200の最外縁部の直径である。ここで、従来の固定子1は、複数の分割鉄心の全ての突出部122が密閉容器の内周壁と接触する。図7及び図9で示す円Ceは、従来の固定子鉄心200Dにおいて密閉容器の内周壁と接触する場合の突出部122と接する仮想の円である。そして、外径Deは、従来の固定子鉄心200Dの最外縁部を通る円Ceの直径である。固定子鉄心200の第1外径Daは、従来の固定子鉄心200Dの外径Deよりも大きい。また、固定子鉄心200の第2外径Dbは、従来の固定子鉄心200Dの外径Deと同じ大きさであるか、あるいは、従来の固定子鉄心200Dの外径Deよりも小さい。
固定子鉄心200が密閉容器101に焼嵌められた場合に、第1突出部122aは、密閉容器101の内周壁101eと接触する第1接触部であり、密閉容器101に対する焼嵌代を構成する。これに対して、第2突出部122bは、固定子鉄心200が密閉容器101に焼嵌められても、密閉容器101の内周壁101eとは当接しない。なお、従来の固定子鉄心200Dは、固定子鉄心が密閉容器に焼嵌められた場合には、全ての突出部122が密閉容器の内周壁と当接する。
連結鋼板2F及び連結鋼板2FLは、第1突出部122aを有する3つの電磁鋼板20と、第2突出部122bを有する6つの電磁鋼板20とを有する。なお、連結鋼板2F及び連結鋼板2FLは、第1突出部122aを有する電磁鋼板20と、第2突出部122bを有する電磁鋼板20との構成比が、上記構成に限定されるものではない。例えば、連結鋼板2F及び連結鋼板2FLは、第1突出部122aを有する電磁鋼板20が4つ以上で構成されてもよい。
図11は、実施の形態1の圧縮機100と従来の圧縮機との構成及び性能を比較した図である。図12は、図11に基づき実施の形態1の圧縮機100及び従来の圧縮機の、焼嵌応力とモータ性能との関係を示した図である。なお、図11及び図12では、前提条件として、従来の圧縮機と実施の形態1に係る圧縮機100との間において、部品公差が同等であり、かつ、焼嵌応力下限値が同等である。ここでは、実施の形態1に係る圧縮機100の構成を示すだけであり、各図が表わしている実施の形態1に係る圧縮機100の効果についての説明は後述する。圧縮機100の固定子1の外径は、従来の圧縮機の固定子の外径よりも大きい。すなわち、連結鋼板2Fは、従来の固定子1の固定子鉄心200を構成する連結鋼板2Eよりも外径が大きい。同様に、連結鋼板2FLは、従来の固定子1の固定子鉄心200を構成する連結鋼板2ELよりも外径が大きい。
連結鋼板2Fは、固定子鉄心200の1相分の分割鉄心120を構成する3枚の電磁鋼板20のみ、突出部122が密閉容器101と接触し、かつ、密閉容器101に対する焼嵌代が、従来の連結鋼板2Eと比較して3倍の長さを有している。同様に、連結鋼板2FLは、固定子鉄心200の1相分の分割鉄心120を構成する3枚の電磁鋼板20のみ、突出部122が密閉容器101と接触し、かつ、密閉容器101に対する焼嵌代が、従来の連結鋼板2ELと比較して3倍の長さを有している。
図13は、分割鉄心120の一部を構成する電磁鋼板20Iの平面図である。図14は、分割鉄心120の一部を構成する電磁鋼板20Iの平面図である。図15は、溶接溝131及び右方向のスリットが形成された連結鋼板2Iの平面図である。図16は、溶接溝131及び左方向のスリットが形成された連結鋼板2ILの平面図である。図13の電磁鋼板20I及び図14の電磁鋼板20I、並びに、図15の連結鋼板2I及び図16の連結鋼板2ILは、固定子鉄心200において形成されるスリットの向きが異なるだけであり、基本構造は同じである。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、連結鋼板2Iと、連結鋼板2ILとが1枚毎に交互に積層して形成されている。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、固定子鉄心200の鋼板の積層方向の一部分を構成する積層鉄心群Bを有し、積層鉄心群Bは、積層された連結鋼板2Iと連結鋼板2ILとによって構成される。
連結鋼板2Iは、全9個の電磁鋼板20Iが円環状に配置されて構成されており、当接部132が右向きのスリットを構成する。連結鋼板2Iは、両端に位置する電磁鋼板20I同士が接合される部分に溶接溝131が形成されている。また、連結鋼板2Iを構成する各電磁鋼板20Iは、それぞれ上述した突出部122を2つ有すると共にジョイント部121を有している。なお、電磁鋼板20Iは、熱カシメ溝124を有していないため、突出部122Aは、突出片形状となる連結鋼板2F及び連結鋼板2FLの突出部122と異なり、外縁部が外周側に僅かに膨出するように形成されている。突出部122Aは、バックヨーク部20aにおいて、ティース部20bとは反対側の位置に設けられている。突出部122Aは、バックヨーク部20aにおいて、ティース部20bとは反対側の位置に形成された中央溝126を挟んで周方向に2つ形成されている。複数の分割鉄心120の中で密閉容器101の内周壁101eと接触する分割鉄心120の突出部122Aは、密閉容器101と接触する箇所の中で第1接触部であり、密閉容器101に対する焼嵌代を構成する。上述したように、複数の分割鉄心120の中で密閉容器101の内周壁101eと接触する分割鉄心120の突出部122は、密閉容器101と接触する箇所の中で第1接触部であり、密閉容器101に対する焼嵌代を構成する。すなわち、突出部122及び突出部122Aは、バックヨーク部20aにおける熱カシメ溝124の有無でそれぞれの形状が異なるものである。
なお、連結鋼板2Iを構成する電磁鋼板20Iは、熱カシメ溝124を有していない点で連結鋼板2Fを構成する電磁鋼板20と異なり、他の構成は連結鋼板2Fを構成する電磁鋼板20と同じである。図15では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A2、電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A4、電磁鋼板20A5、電磁鋼板20A6、電磁鋼板20A7、電磁鋼板20A8、電磁鋼板20A9として示している。
連結鋼板2ILは、全9個の電磁鋼板20Iが円環状に配置されて構成されており、当接部132が左向きのスリットを構成する。連結鋼板2ILは、両端に位置する電磁鋼板20I同士が接合される部分に溶接溝131が形成されている。また、連結鋼板2ILを構成する各電磁鋼板20Iは、それぞれ突出部122Aを2つ有すると共にジョイント部121を有している。
連結鋼板2ILを構成する電磁鋼板20Iは、熱カシメ溝124を有していない点で連結鋼板2FLを構成する電磁鋼板20と異なり、他の構成は連結鋼板2FLを構成する電磁鋼板20と同じである。図16では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B2、電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B4、電磁鋼板20B5、電磁鋼板20B6、電磁鋼板20B7、電磁鋼板20B8、電磁鋼板20B9として示している。
連結鋼板2Iは、一対の第1突出部122Aa及び一対の第2突出部122Abの2種類の突出部122Aを有している。同様に、連結鋼板2ILは、第1突出部122Aa及び第2突出部122Abの2種類の突出部122Aを有している。固定子鉄心200は、中心Oを基準とした径方向における第1突出部122Aaの突出量が、中心Oを基準とした径方向における第2突出部122Abの突出量よりも大きい。すなわち、固定子鉄心200は、中心Oから第1突出部122Aaの外縁部までの距離が、中心Oから第2突出部122Abの外縁部までの距離よりも大きい。したがって、第1突出部122Aaと接する仮想の円Caの第1外径Daは、第2突出部122Abと接する仮想の円Cbの第2外径Dbよりも大きい。なお、第1外径Daは、固定子鉄心200の最外縁部の直径である。ここで、従来の固定子1は、複数の分割鉄心の全ての突出部122Aが密閉容器の内周壁と接触する。固定子鉄心200の第1外径Daは、従来の固定子鉄心200Dの外径Deよりも大きい。また、固定子鉄心200の第2外径Dbは、従来の固定子鉄心200Dの外径Deと同じ大きさであるか、あるいは、従来の固定子鉄心200Dの外径Deよりも小さい。
固定子鉄心200が密閉容器101に焼嵌められた場合に、第1突出部122Aaは、密閉容器101の内周壁101eと接触する第1接触部であり、密閉容器101に対する焼嵌代を構成する。これに対して、第2突出部122Abは、固定子鉄心200が密閉容器101に焼嵌められても、密閉容器101の内周壁101eとは当接しない。なお、従来の固定子鉄心200Dは、固定子鉄心が密閉容器に焼嵌められた場合には、全ての突出部122Aが密閉容器の内周壁と当接する。
連結鋼板2I及び連結鋼板2ILは、第1突出部122Aaを有する3つの電磁鋼板20と、第2突出部122Abを有する6つの電磁鋼板20とを有する。なお、連結鋼板2I及び連結鋼板2ILは、第1突出部122Aaを有する電磁鋼板20と、第2突出部122Abを有する電磁鋼板20との構成比が、上記構成に限定されるものではない。例えば、連結鋼板2I及び連結鋼板2ILは、第1突出部122Aaを有する電磁鋼板20が4つ以上で構成されてもよい。
連結鋼板2Iは、従来の固定子1の固定子鉄心200を構成する連結鋼板2Eよりも外径が大きい。同様に、連結鋼板2ILは、従来の固定子1の固定子鉄心200を構成する連結鋼板2ELよりも外径が大きい。
連結鋼板2Iは、固定子鉄心200の1相分の分割鉄心120を構成する3枚の電磁鋼板20のみ、突出部122Aが密閉容器101と接触し、かつ、密閉容器101に対する焼嵌代が、従来の連結鋼板2Eと比較して3倍の長さを有している。同様に、連結鋼板2ILは、固定子鉄心200の1相分の分割鉄心120を構成する3枚の電磁鋼板20のみ、突出部122Aが密閉容器101と接触し、かつ、密閉容器101に対する焼嵌代が、従来の連結鋼板2ELと比較して3倍の長さを有している。
図17は、連結鋼板2Gを用いた分割鉄心120同士の溶接位置における固定子鉄心200の拡大平面図である。図18は、熱カシメ溝124、溶接小溝133及び右方向のスリットが形成された連結鋼板2Gの平面図である。図19は、熱カシメ溝124、溶接小溝133及び左方向のスリットが形成された連結鋼板2GLの平面図である。図17の連結鋼板2Gと図18の連結鋼板2GLは、固定子鉄心200において形成されるスリットの向きが異なるだけであり、基本構造は同じである。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、連結鋼板2Gと、連結鋼板2GLとが1枚毎に交互に積層して形成されている。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、固定子鉄心200の鋼板の積層方向の一部分を構成する積層鉄心群Cを有し、積層鉄心群Cは、積層された連結鋼板2Gと連結鋼板2GLとによって構成される。
連結鋼板2Gは、全9個の電磁鋼板20が円環状に配置されて構成されており、当接部132が右向きのスリットを構成する。連結鋼板2Gは、両端に位置する電磁鋼板20同士が接合される部分に溶接小溝133が形成されている。この溶接小溝133の周方向の幅は、連結鋼板2Fに形成された溶接溝131の周方向の幅よりも小さい。したがって、固定子鉄心200の鋼板の積層方向において、固定子鉄心200の外周壁1aには、溶接溝131と溶接小溝133とによって幅の異なる溝が形成されている。連結鋼板2Gは、溶接小溝133に沿って溶接小溝133の縁部を構成する辺縁接触部135を有する。辺縁接触部135は、連結鋼板2Gの周方向において、溶接小溝133の両側に位置している。辺縁接触部135は外周壁1aの一部を構成する。辺縁接触部135は、圧縮機100内において固定子鉄心200と、密閉容器101とが接触する部分である。辺縁接触部135は、密閉容器101と接触する箇所の中で第2接触部であり、密閉容器101内において密閉容器101の内周壁101eに当接する一対の接触部である。
また、連結鋼板2Gを構成する各電磁鋼板20は、それぞれ上述した第1突出部122a又は第2突出部122bを有すると共に、ジョイント部121を有し、各電磁鋼板20には、密閉容器101と嵌合自在な熱カシメ溝124が形成されている。なお、連結鋼板2Gは、溶接溝131よりも周方向の幅が小さい溶接小溝133が形成されている点、溶接小溝133の周方向の両側に辺縁接触部135を有している点で、連結鋼板2Fと異なり、他の構成は連結鋼板2Fと同じである。図17では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A2、電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A4、電磁鋼板20A5、電磁鋼板20A6、電磁鋼板20A7、電磁鋼板20A8、電磁鋼板20A9として示している。なお、図18では、全ての電磁鋼板20に熱カシメ溝124が形成されているが、熱カシメ溝124は、全ての電磁鋼板20に形成されていなくてもよい。熱カシメ溝124は、例えば、周方向において均等な間隔をもって配置された電磁鋼板20A2、電磁鋼板20A5、電磁鋼板20A8、の3つの電磁鋼板20のみに形成されていてもよい。
連結鋼板2GLは、全9個の電磁鋼板20が円環状に配置されて構成されており、当接部132が左向きのスリットを構成する。連結鋼板2GLは、両端に位置する電磁鋼板20同士が接合される部分に溶接小溝133が形成されている。この溶接小溝133の周方向の幅は、連結鋼板2FLに形成された溶接溝131の周方向の幅よりも小さい。連結鋼板2GLは、溶接小溝133に沿って溶接小溝133の縁部を構成する辺縁接触部135を有する。辺縁接触部135は、連結鋼板2GLの周方向において、溶接小溝133の両側に位置している。辺縁接触部135は外周壁1aの一部を構成する。辺縁接触部135は、圧縮機100内において固定子鉄心200と、密閉容器101とが接触する部分である。
また、連結鋼板2GLを構成する各電磁鋼板20は、それぞれ上述した第1突出部122a又は第2突出部122bを有すると共にジョイント部121を有し、各電磁鋼板20には、密閉容器101と嵌合自在な熱カシメ溝124が形成されている。なお、連結鋼板2GLは、溶接溝131よりも周方向の幅が小さい溶接小溝133が形成されている点、溶接小溝133の周方向の両側に辺縁接触部135を有している点で、連結鋼板2FLと異なり、他の構成は連結鋼板2FLと同じである。図18では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B2、電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B4、電磁鋼板20B5、電磁鋼板20B6、電磁鋼板20B7、電磁鋼板20B8、電磁鋼板20B9として示している。なお、図19では、全ての電磁鋼板20に熱カシメ溝124が形成されているが、熱カシメ溝124は、全ての電磁鋼板20に形成されていなくてもよい。熱カシメ溝124は、例えば、周方向において均等な間隔をもって配置された電磁鋼板20A2、電磁鋼板20A5、電磁鋼板20A8、の3つの電磁鋼板20のみに形成されていてもよい。
連結鋼板2Gは、従来の固定子1の固定子鉄心200を構成する連結鋼板2Eよりも外径が大きい。同様に、連結鋼板2GLは、従来の固定子1の固定子鉄心200を構成する連結鋼板2ELよりも外径が大きい。連結鋼板2Gは、固定子鉄心200の1相分の分割鉄心120を構成する3枚の電磁鋼板20のみ、突出部122が密閉容器101と接触し、かつ、密閉容器101に対する焼嵌代が、従来の連結鋼板2Eと比較して3倍の長さを有している。同様に、連結鋼板2GLは、固定子鉄心200の1相分の分割鉄心120を構成する3枚の電磁鋼板20のみ、突出部122が密閉容器101と接触し、かつ、密閉容器101に対する焼嵌代が、従来の連結鋼板2ELと比較して3倍の長さを有している。
図20は、溶接小溝133及び右方向のスリットが形成された連結鋼板2Hの平面図である。図21は、溶接小溝133及び左方向のスリットが形成された連結鋼板2HLの平面図である。図20の連結鋼板2Hと図21の連結鋼板2HLは、固定子鉄心200において形成されるスリットの向きが異なるだけであり、基本構造は同じである。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、連結鋼板2Hと、連結鋼板2HLとが1枚毎に交互に積層して形成されている。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、固定子鉄心200の鋼板の積層方向の一部分を構成する積層鉄心群Dを有し、積層鉄心群Dは、積層された連結鋼板2Hと連結鋼板2HLとによって構成される。
連結鋼板2Hは、全9個の電磁鋼板20が円環状に配置されて構成されており、当接部132が右向きのスリットを構成する。連結鋼板2Hは、両端に位置する電磁鋼板20同士が接合される部分に溶接小溝133が形成されている。この溶接小溝133の周方向の幅は、連結鋼板2Fに形成された溶接溝131の周方向の幅よりも小さい。連結鋼板2Hは、溶接小溝133に沿って溶接小溝133の縁部を構成する辺縁接触部135を有する。辺縁接触部135は、連結鋼板2Hの周方向において、溶接小溝133の両側に位置している。
また、連結鋼板2Hを構成する各電磁鋼板20は、それぞれ上述した第1突出部122Aa又は第2突出部122Abを有すると共にジョイント部121を有している。なお、連結鋼板2Hを構成する電磁鋼板20は、熱カシメ溝124を有していない点で連結鋼板2Fを構成する電磁鋼板20と異なる。また、なお、連結鋼板2Hは、溶接溝131よりも周方向の幅が小さい溶接小溝133が形成されている点、溶接小溝133の周方向の両側に辺縁接触部135を有している点で、連結鋼板2Iと異なり、他の構成は連結鋼板2Iと同じである。図20では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A2、電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A4、電磁鋼板20A5、電磁鋼板20A6、電磁鋼板20A7、電磁鋼板20A8、電磁鋼板20A9として示している。
連結鋼板2HLは、全9個の電磁鋼板20が円環状に配置されて構成されており、当接部132が左向きのスリットを構成する。連結鋼板2HLは、両端に位置する電磁鋼板20同士が接合される部分に溶接小溝133が形成されている。また、連結鋼板2HLを構成する各電磁鋼板20は、それぞれ上述した第1突出部122Aa又は第2突出部122Abを有すると共にジョイント部121を有している。連結鋼板2HLを構成する電磁鋼板20は、熱カシメ溝124を有していない点で連結鋼板2FLを構成する電磁鋼板20と異なる。また、連結鋼板2HLは、溶接溝131よりも周方向の幅が小さい溶接小溝133が形成されている点、溶接小溝133の周方向の両側に辺縁接触部135を有している点で、連結鋼板2ILと異なり、他の構成は連結鋼板2ILと同じである。図21では、当接部132を有する電磁鋼板20から反時計回りに、電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B2、電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B4、電磁鋼板20B5、電磁鋼板20B6、電磁鋼板20B7、電磁鋼板20B8、電磁鋼板20B9として示している。
連結鋼板2Hは、従来の固定子1の固定子鉄心200を構成する連結鋼板2Eよりも外径が大きい。同様に、連結鋼板2HLは、従来の固定子1の固定子鉄心200を構成する連結鋼板2ELよりも外径が大きい。
連結鋼板2Hは、固定子鉄心200の1相分の分割鉄心120を構成する3枚の電磁鋼板20のみ、突出部122Aが密閉容器101と接触し、かつ、密閉容器101に対する焼嵌代が、従来の連結鋼板2Eと比較して3倍の長さを有している。同様に、連結鋼板2HLは、固定子鉄心200の1相分の分割鉄心120を構成する3枚の電磁鋼板20のみ、突出部122Aが密閉容器101と接触し、かつ、密閉容器101に対する焼嵌代が、従来の連結鋼板2ELと比較して3倍の長さを有している。
図22は、積層鉄心群A、積層鉄心群B、積層鉄心群C、積層鉄心群Dの特徴をまとめた図である。図22に示すように、積層鉄心群Aは、連結鋼板2F及び連結鋼板2FLから構成されており、外周壁1aには熱カシメ溝124と、溶接溝131とが形成されている。積層鉄心群Bは、連結鋼板2I及び連結鋼板2ILから構成されており、外周壁1aには溶接溝131が形成されている。積層鉄心群Cは、連結鋼板2G及び連結鋼板2GLから構成されており、外周壁1aには熱カシメ溝124と、溶接小溝133とが形成されている。積層鉄心群Dは、連結鋼板2H及び連結鋼板2HLから構成されており、外周壁1aには溶接小溝133が形成されている。
図23は、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200の周方向の一部の側面図である。図24は、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200における当接部の位置の側面図である。図23及び図24に示すように、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、上述した積層鉄心群A、積層鉄心群B、積層鉄心群C、積層鉄心群Dが組み合わされて構成される。図23及び図24では、固定子鉄心200は、固定子鉄心200を構成する積層方向の一端から他端にむけて、積層鉄心群D、積層鉄心群B、積層鉄心群A、積層鉄心群C、積層鉄心群A、積層鉄心群B、積層鉄心群Dの順番に組み合わされている。ただし、固定子鉄心200において、上記の積層鉄心群A~Dの組み合わせ方は一例であり、積層鉄心群A~Dの組み合わせ方は上記の構成に限定するものではない。例えば、固定子鉄心200を構成する積層方向の一端から他端にむけて、積層鉄心群D、積層鉄心群B、積層鉄心群C、積層鉄心群B、積層鉄心群Dの順番に組み合わせ、積層鉄心群Aを使用しなくてもよい。
図23に示すように、固定子鉄心200は、積層鉄心群A、積層鉄心群B、積層鉄心群C及び積層鉄心群Dを構成する電磁鋼板20が積層されることで積層方向の一部に熱カシメ溝124を形成している。分割鉄心120の外周側から見て、鋼板の積層方向の一部、すなわち、固定子1の軸方向の一部に熱カシメ溝124が形成されている。熱カシメ溝124は、固定子鉄心200の周方向及び軸方向Rの一部に形成されており、熱カシメ溝124の凹み形状を構成する側壁は、分割鉄心120を構成する電磁鋼板20の板面及び側面で構成されている。熱カシメ溝124は、図23に示すように、固定子鉄心200の軸方向Rの中央部に形成されていることが望ましい。
図24に示すように、固定子鉄心200は、外周壁1aの周方向において、連結された複数の分割鉄心120の両端部に位置する分割鉄心120同士の当接位置CTに対して両側に形成されている辺縁接触部135を有する。辺縁接触部135は、図23及び図24に示すように、鋼板の積層方向において熱カシメが施される熱カシメ溝124と同じ位置に形成されている。すなわち、辺縁接触部135は、固定子鉄心200の軸方向Rにおいて密閉容器101の外径側から実施される熱カシメの位置と同じ位置に形成されている。更に、固定子鉄心200は、鋼板の積層方向の両端部に辺縁接触部135を有している。
図24に示すように、固定子鉄心200の外周壁1aには、当接位置CTに沿って溝が形成されている。この溝は、周方向の幅が広い溶接溝131と周方向の幅が狭い溶接小溝133とから構成されている。密閉容器101の内周壁101eと接触する辺縁接触部135は、溶接小溝133の周方向の両側に位置する壁部によって構成されている。ジョイント部121によって回動自在に連結された分割鉄心120により構成される固定子鉄心200の両端部に位置する分割鉄心120は、溶接溝131又は溶接小溝133において当接部132が溶接によって固定されている。図23及び図24に示すように、外周壁1aに形成された溶接溝131又は溶接小溝133には、溶接ビード140が形成されている。溶接ビード140とは、溶接加工によって発生する溶接痕の盛り上がりである。
図25は、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子1を説明する概念図である。なお、固定子1の構造を説明するため上述した巻線4の図示を省略している。図25に示すように、圧縮機100は、密閉容器101と固定子1とが接触する接触部TAを3箇所有している。接触部TAでは、密閉容器101の内周壁101eに、固定子1の第1突出部122a及び第1突出部122Aaが接している。第1突出部122a及び第1突出部122Aaは、軸方向Rに並ぶように連続して配置されており、連続した突出部122が軸方向Rに延びるように形成されている。一体となった第1突出部122a及び第1突出部122Aaは、固定子1において、中心Oを中心とし、固定子1の外縁に沿った仮想の真円から突出するように形成されている。固定子鉄心200は、固定子鉄心200の周方向において、複数の分割鉄心120の内、等間隔に配置された3つの分割鉄心120のみが、密閉容器101と接触する第1接触部である第1突出部122a及び第1突出部122Aaを有している。すなわち、圧縮機100は、密閉容器101の内面と、固定子1の外周面とが接触する位置を周方向で3点に規定している。圧縮機100は、固定子1を形成する9個の分割鉄心120のうち、周方向で互いに等距離に配置された3個の分割鉄心120が密閉容器と接触している。なお、密閉容器101と接触する分割鉄心120の数は3個に限定されるものではない。実施の形態1に係る圧縮機100は、一例として9個の分割鉄心120を有する態様を示したものであり、固定子1を構成する分割鉄心120の数が異なれば密閉容器101と接する分割鉄心120の数も3個以外であってもよい。ただし、焼嵌め等における密閉容器101による固定子1への応力を均等に分散させるため、密閉容器101と接触する分割鉄心120が周方向で等間隔となるように配置されることが望ましい。
図26は、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子1を説明する他の概念図である。なお、固定子1の構造を説明するため上述した巻線4の図示を省略している。図26は、圧縮機100の周方向における、熱カシメ溝124の形成位置の一例を示したものである。固定子鉄心200は、固定子鉄心200の周方向において、複数の分割鉄心120の内、等間隔に配置された3つの分割鉄心120のみに、熱カシメによって密閉容器101と接触する熱カシメ溝124が形成されている。圧縮機100は、固定子1を形成する9個の分割鉄心120のうち、周方向で互いに等距離に配置された3個の分割鉄心120に熱カシメ溝124が形成されている。なお、熱カシメ溝124が形成された分割鉄心120の数は3個に限定されるものではない。実施の形態1に係る圧縮機100は、一例として9個の分割鉄心120を有する態様を示したものであり、固定子1を構成する分割鉄心120の数が異なれば熱カシメ溝124が形成された分割鉄心120の数が3個以外であってもよい。ただし、熱カシメによる固定子1への応力を均等に分散させるため、熱カシメ溝124が形成された分割鉄心120が周方向で等間隔となるように配置されることが望ましい。また、圧縮機100は、固定子1を形成する全ての分割鉄心120に熱カシメ溝124が形成されていてもよい。
図27は、実施の形態1に係る圧縮機100及び実施の形態2に係る圧縮機150の構成図である。なお、図27において、分割鉄心T1は、電磁鋼板20A1及び電磁鋼板20B1によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T2は、電磁鋼板20A2及び電磁鋼板20B2によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T3は、電磁鋼板20A3及び電磁鋼板20B3によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T4は、電磁鋼板20A4及び電磁鋼板20B4によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T5は、電磁鋼板20A5及び電磁鋼板20B5によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T6は、電磁鋼板20A6及び電磁鋼板20B6によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T7は、電磁鋼板20A7及び電磁鋼板20B7によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T8は、電磁鋼板20A8及び電磁鋼板20B8によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T9は、電磁鋼板20A9及び電磁鋼板20B9によって構成された分割鉄心120である。分割鉄心T1及び分割鉄心T9は、連結された複数の分割鉄心120の両端部に位置する端部分割鉄心である。固定子鉄心200は、端部分割鉄心同士、すなわち、分割鉄心T1及び分割鉄心T9が溶接により接合されている。
また、図27の、「密閉容器溶接箇所径(CENTER)」において、点線で囲った箇所範囲は、焼嵌代の発生した箇所を表わす。更に、図27の、「焼嵌代(CENTER)」において、点線で囲った範囲は、焼嵌代が0以上の箇所を表わすものである。また、「焼嵌代(CENTER)」において、負の値は隙間が発生していることを表わすものである。また、「熱カシメ溝」の「有り」「無し」は、固定子に熱カシメ溝124が形成されているか否かを表わすものであり、「有り」は固定子1に熱カシメ溝124が形成されており、「無し」は、固定子1に熱カシメ溝124が形成されていない。また、「溶接溝」の「通常」は、固定子1に溶接溝131が形成されていることを表わし、「小」は、固定子1に溶接小溝133が形成されていることを表わす。また、「溶接溝」の矢印は、上枠の構成と同じ構成であることを表わしているものである。
[固定子鉄心200の作用効果]
まず、図11、図12及び図27を用いて、固定子鉄心200の密閉容器101との接触箇所、及び、固定子鉄心200の径による効果について説明する。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200が、図11及び図27に示すような、使用する連結鋼板の形状、密閉容器101との接触箇所数、固定子鉄心200の外径を有する場合に次のような効果を生ずる。
図11に示すように、従来の圧縮機と比較して、焼嵌応力の指標となる「A(焼嵌代)×B(密閉容器101との接触箇所数)×C(密閉容器101との接触面積)」の下限値(MIN)は同等のまま、ばらつきを従来比で3分の1にすることができる。また、従来の圧縮機と比較して、焼嵌応力の下限値(MIN)は同等のまま、焼嵌応力の指標となる「A(焼嵌代)×B(密閉容器101との接触箇所数)×C(密閉容器101との接触面積)」の上限値(MAX)を低減することができる。
図12の焼嵌応力とモータ性能との関係で示すように、焼嵌応力とモータ性能との間には負の相関がある。従来の圧縮機と、実施の形態1に係る圧縮機100とを焼嵌応力の上限値(MAX)同士で比較すると、モータ性能として0.4%の改善が可能となる。そのため、実施の形態1に係る圧縮機100は、従来の圧縮機に対して、高性能なモータを提供することが可能である。また、上述した実施の形態1に係る圧縮機100の例は、周方向に全9個の分割鉄心120を有する3相構造の固定子1において、1相のみが密閉容器101と接触している。実施の形態1に係る圧縮機100は、周方向に全M個の分割鉄心120を有するN相構造の固定子1において、P相分の分割鉄心120が密閉容器101に接触する構造とすることができる。
複数の分割鉄心120は、N相構造を構成する全M個の分割鉄心120である場合に、突出部122及び突出部122Aが、密閉容器101の内周壁101eと接触するP相分の分割鉄心120を有する。また、複数の分割鉄心120は、N相構造を構成する全M個の分割鉄心120である場合に、突出部122及び突出部122Aが、内周壁101eと接触しない(N-P)相分の分割鉄心120を有する。更に、固定子鉄心200は、密閉容器101との接触箇所において、従来の圧縮機の焼嵌代のような全M個の分割鉄心120の全てが内周壁101eと接触する場合の焼嵌代と比較して、N/P倍の厚さの焼嵌代となる外周壁1aを有する。このような構造の圧縮機100の場合は、従来の圧縮機に対して焼嵌代がN/P倍となる密閉容器101との接触箇所の外径を有する固定子1で、焼嵌応力のばらつきをP/N倍とすることができる。
一般的に、ステータ熱カシメ工法によって製造された圧縮機は、固定子と密閉容器との間の焼嵌把持力が向上する。その一方で、当該工法によって製造された圧縮機は、現行の生産設備を流用する観点から0以上の焼嵌代を確保させ、かつ、固定子と密閉容器との間の焼嵌代を低減させながらも性能の向上を図る場合、低減可能な焼嵌代は、密閉容器の内径及び固定子の外径の、寸法のばらつきにより制約されてしまう。そして、焼嵌代の低減が少ない場合には、焼嵌応力による鉄損が増大するため効率が低減する。
実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、密閉容器101との接触箇所において、全M個の分割鉄心120の全てが内周壁101eと接触する場合の焼嵌代と比較して、N/P倍の厚さの焼嵌代となる外周壁1aを有する。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、当該構成を有することで、必要となる焼嵌応力を従来の固定子鉄心の焼嵌応力と同等した場合に、焼嵌応力のばらつきをP/Nにすることができる。そのため、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、焼嵌代のばらつきの低減分を焼嵌代の低減に適用することができ、焼嵌応力による鉄損増大を抑制した高効率にすることができる。固定子1、当該固定子を備えた電動機部102、当該電動機部102を備えた圧縮機100は、上記構成を有する固定子鉄心200を備えているので、固定子鉄心200と同様の効果を有する。
次に、固定子鉄心200における熱カシメ溝124の形状例とその効果について説明する。例えば、図27に示す実施の形態1に係る圧縮機100のように、固定子鉄心200の外周壁1aに熱カシメ溝124を持つ連結鋼板2F~連結鋼板2GLと、熱カシメ溝124を持たない連結鋼板2H~連結鋼板2ILとを組み合わせる。すなわち、図23及び図24のように、積層鉄心群A、積層鉄心群B、積層鉄心群C、及び、積層鉄心群Dを組み合わせて、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200を構成する。そして、図27及び図23に示すように、分割鉄心T2、分割鉄心T5、分割鉄心T8のそれぞれに、分割鉄心T2、分割鉄心T5、分割鉄心T8の外周側から見て、鋼板の積層方向の一部、すなわち、固定子1の軸方向の一部に熱カシメ溝124を形成する。熱カシメ溝124は、固定子鉄心200の周方向及び軸方向Rの一部に形成されており、熱カシメ溝124を構成する側壁は、分割鉄心120で構成されている。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、熱カシメにより、密閉容器101が熱カシメ溝124と嵌合可能な形状に変形する場合、熱カシメによる把持力は、熱カシメ溝124の周方向だけではなく、鋼板の積層方向、すなわち、固定子1の軸方向に対しても作用する。また、熱カシメ溝124は、固定子鉄心200の軸方向Rの中央部に形成されていることが望ましい。熱カシメ溝124が当該位置に形成されていることで、熱カシメによる把持力は、軸方向及び周方向にバランスよく固定子1に作用する。一方、熱カシメ溝124が形成されていない分割鉄心120は、溝が形成されておらずバックヨーク部20aの壁の厚みを確保することができるため、固定子1は全体の剛性を確保することができる。
実施の形態1に係る圧縮機100は、従来の圧縮機の密閉容器と固定子との熱カシメと比較して、密閉容器101による固定子1の把持力を向上させることができ、固定子1の保持トルク、抜け荷重の品質が向上する。その結果、上述の通り、固定子鉄心200の焼嵌代を低減させたとしても、固定子1と密閉容器101との間の把持力を向上させることができ、固定子1の保持トルク、抜け荷重の品質が向上する。
また、従来の圧縮機は、熱カシメによる固定位置からの外力の影響が大きく、固定子を密閉容器に固定する際の密閉容器による固定子の締め付けにより、円筒形状の固定子が変形し、モータの軸方向から見た場合に真円から歪む恐れがある。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、従来の圧縮機と比較して熱カシメの位置がずれないようにすることで、密閉容器101の内面と固定子1の外面との接触箇所を減らしても密閉容器101と固定子1とを固定できる。そして、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、密閉容器101の内面と固定子1の外面との接触箇所を減らすことで、密閉容器101から固定子1に応力を受けないようにし、これにより、固定子1の歪みを最小限にすることができる。さらに、実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、固定子鉄心200の周方向において、複数の分割鉄心120の内、等間隔に配置された3つの分割鉄心120のみが、第1接触部を有している。固定子鉄心200は、密閉容器101から固定子1にかかる応力を均等に配置された第1接触部の3点で支えることができ、応力の均衡を図ることができる。これにより、固定子1は、密閉容器101の応力に基づく歪みを最小限にすることができる。
次に、固定子鉄心200に形成される溶接溝131と溶接小溝133の効果について説明する。例えば、上述したように、固定子鉄心200を構成する分割鉄心T2、分割鉄心T5、分割鉄心T8のそれぞれに、分割鉄心T2、分割鉄心T5、分割鉄心T8の外周側から見て、鋼板の積層方向の一部に熱カシメ溝124が形成されている場合について説明する。実施の形態1に係る圧縮機100の固定子鉄心200は、連結した分割鉄心120において、両端部に位置する分割鉄心120には溶接溝131と溶接小溝133とが形成されている。そして、固定子鉄心200は、周方向において溶接小溝133の両側に辺縁接触部135を有している。なお、連結した分割鉄心120において両端部に位置する分割鉄心120は、図27では、分割鉄心T1及び分割鉄心T9として記載されている。固定子鉄心200は、図23及び図24に示すように、鋼板の積層方向において、密閉容器101と接触する辺縁接触部135は、熱カシメ溝124と同じ位置に形成されている。また、辺縁接触部135は、鋼板の積層方向において、固定子鉄心200の両端部に形成されている。すなわち、固定子鉄心200の軸方向において、辺縁接触部135と熱カシメ溝124とは、固定子鉄心200の端部から同じ位置に形成されている。また、辺縁接触部135は、固定子鉄心200の軸方向の上下端部に形成されている。
圧縮機100の製造過程において、例えば、分割鉄心T2、分割鉄心T5、分割鉄心T8が熱カシメによる歪みにより内径側に押し込まれた場合、その他の分割鉄心120が固定子鉄心200の外径側に移動するようにバランスを保つ変形をする。一方で、ジョイントラップ構造をもつ固定子鉄心200は、連結した分割鉄心120の両端部に位置する分割鉄心T1と分割鉄心T9との溶接個所の強度が最も脆弱な箇所である。そのため、密閉容器101の歪みが大きい場合には、分割鉄心T1と分割鉄心T9との溶接個所が破壊し、分割鉄心T1及び分割鉄心T9の外径側への変形量が増大し、固定子1の形状が極端に悪化する可能性がある。すなわち、一般に、ステータ熱カシメ工法は、固定子鉄心として周方向に分割された鉄心を使用する場合、焼嵌代の低減により、固定子の剛性が低下し、密閉容器の歪みの影響を受けやすくなる場合がある。また、固定子鉄心は、剛性低下により、密閉容器の熱カシメによる歪み影響を受けやすくなり、固定子形状の変形量増大により圧縮機の騒音と振動とに影響を及ぼすことが危惧される。
これに対して、連結した分割鉄心120の両端部に位置する分割鉄心T1と分割鉄心T9とに形成された辺縁接触部135は、密閉容器101に対する焼嵌代が0近傍となっている。そして、辺縁接触部135は、連結した分割鉄心120の両端部に位置する分割鉄心T1及び分割鉄心T9に対して、熱カシメによって固定子鉄心200の外径側に変形する力が働く際に、密閉容器101と接触し焼嵌代を増大させる方向に作用する。そのため、辺縁接触部135は、熱カシメによる固定子1の変形を抑制することができる。その結果、熱カシメによる歪みに対する耐性を向上させた固定子1により騒音と振動を抑制することができ、圧縮機100の品質を向上させることができる。
実施の形態2.
図27を用いて、実施の形態2に係る圧縮機150について説明する。なお、図1~図24の圧縮機100と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
実施の形態2に係る圧縮機150は、実施の形態1に係る圧縮機100と同様に、連結鋼板2F、連結鋼板2FL、連結鋼板2I、連結鋼板2IL、連結鋼板2G、連結鋼板2GL、連結鋼板2H、及び、連結鋼板2HLを有する。すなわち、実施の形態2に係る圧縮機150は、上述した積層鉄心群A、積層鉄心群B、積層鉄心群C、積層鉄心群Dを有する。また、実施の形態2に係る圧縮機150は、連結鋼板2Fa、連結鋼板2Fb、連結鋼板2Ia、連結鋼板2Ib、連結鋼板2Ga、連結鋼板2Gb、連結鋼板2Ha、及び、連結鋼板2Hbを有する。更に、実施の形態2に係る圧縮機150は、連結鋼板2FLa、連結鋼板2FLb、連結鋼板2ILa、連結鋼板2ILb、連結鋼板2GLa、連結鋼板2GLb、連結鋼板2HLa、及び、連結鋼板2HLbを有する。連結鋼板2Fa及び連結鋼板2FLa、連結鋼板2Fbと連結鋼板2FLb、連結鋼板2Ia及び連結鋼板2ILa、並びに、連結鋼板2Ib及び連結鋼板2ILbは、それぞれスリットの向きが異なるものである。同様に、連結鋼板2Ga及び連結鋼板2GLa、連結鋼板2Gb及び連結鋼板2GLb、連結鋼板2Ha及び連結鋼板2HLa、並びに、連結鋼板2Hb及び連結鋼板2HLbもそれぞれスリットの向きが異なるものである。
連結鋼板2Faは、上述した連結鋼板2Fと同じ構成であるが、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7を構成する電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A4及び電磁鋼板20A7の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。連結鋼板2FLaは、上述した連結鋼板2FLと同じ構成であるが、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7を構成する電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B4及び電磁鋼板20B7の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。
連結鋼板2Fbは、上述した連結鋼板2Fと同じ構成であるが、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9を構成する電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A6及び電磁鋼板20A9の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。連結鋼板2FLbは、上述した連結鋼板2FLと同じ構成であるが、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9を構成する電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B6及び電磁鋼板20B9の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。
連結鋼板2Iaは、上述した連結鋼板2Iと同じ構成であるが、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7を構成する電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A4及び電磁鋼板20A7の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。連結鋼板2ILaは、上述した連結鋼板2ILと同じ構成であるが、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7を構成する電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B4及び電磁鋼板20B7の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。
連結鋼板2Ibは、上述した連結鋼板2Iと同じ構成であるが、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9を構成する電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A6及び電磁鋼板20A9の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。連結鋼板2ILbは、上述した連結鋼板2ILと同じ構成であるが、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9を構成する電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B6及び電磁鋼板20B9の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。
連結鋼板2Gaは、上述した連結鋼板2Gと同じ構成であるが、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7を構成する電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A4及び電磁鋼板20A7の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。連結鋼板2GLaは、上述した連結鋼板2GLと同じ構成であるが、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7を構成する電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B4及び電磁鋼板20B7の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。
連結鋼板2Gbは、上述した連結鋼板2Gと同じ構成であるが、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9を構成する電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A6及び電磁鋼板20A9の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。連結鋼板2GLbは、上述した連結鋼板2GLと同じ構成であるが、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9を構成する電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B6及び電磁鋼板20B9の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。
連結鋼板2Haは、上述した連結鋼板2Hと同じ構成であるが、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7を構成する電磁鋼板20A1、電磁鋼板20A4及び電磁鋼板20A7の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。連結鋼板2HLaは、上述した連結鋼板2HLと同じ構成であるが、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7を構成する電磁鋼板20B1、電磁鋼板20B4及び電磁鋼板20B7の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。
連結鋼板2Hbは、上述した連結鋼板2Hと同じ構成であるが、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9を構成する電磁鋼板20A3、電磁鋼板20A6及び電磁鋼板20A9の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。連結鋼板2HLbは、上述した連結鋼板2HLと同じ構成であるが、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9を構成する電磁鋼板20B3、電磁鋼板20B6及び電磁鋼板20B9の突出部122が密閉容器101と接触するように構成されている。
実施の形態2に係る圧縮機150は、分割鉄心T1、分割鉄心T4及び分割鉄心T7、並びに、分割鉄心T3、分割鉄心T6及び分割鉄心T9が、密閉容器101と接触する突出部122有する。また、実施の形態2に係る圧縮機150は、分割鉄心T1及び分割鉄心T9が密閉容器101と接触する辺縁接触部135を有する。
実施の形態2に係る圧縮機150は、実施の形態1に係る圧縮機100に対して、相毎の分割鉄心120が密閉容器101と接触する突出部122を持ち、かつ、積層方向において任意の順で各相の分割鉄心120が密閉容器101と接触箇所する。すなわち、実施の形態2に係る圧縮機150の固定子鉄心200は、固定子鉄心200の軸方向Rに垂直な断面において、密閉容器101との接触箇所が周方向で異なるN~N×P種の外周壁1aの形状を有する。すなわち、固定子鉄心200は、密閉容器101と接触する突出部122の位置が固定子鉄心の周方向で異なるN~N×P種の連結鋼板2を有する。実施の形態2に係る圧縮機150は、上面視において、実施の形態1に係る圧縮機100と比較して、密閉容器101との接触箇所が、鋼板の積層方向に対して、全ての分割鉄心120で接触する構成となる。そのため、実施の形態2に係る圧縮機150は、焼嵌応力が全分割鉄心に対してバランスよく加わり、固定子1の形状を真円形状にしやすい。その結果、実施の形態2に係る圧縮機150は、実施の形態1に係る圧縮機100と比較して更に騒音及び振動を抑制することができる。
また、上述した実施の形態2に係る圧縮機150の例は、周方向に全9個の分割鉄心120を有する3相構造の固定子1において、1相のみが密閉容器101と接触している。しかし、実施の形態2に係る圧縮機150は、周方向に全M個の分割鉄心120を有するN相構造の固定子1において、P相分の分割鉄心120が密閉容器101に接触する構造とすることができる。すなわち、分割鉄心120は、N相構造を構成する全M個の分割鉄心120である場合に、突出部122及び突出部122Aが、密閉容器101の内周壁101eと接触するP相分の分割鉄心120を有する。また、分割鉄心120は、N相構造を構成する全M個の分割鉄心120である場合に、突出部122及び突出部122Aが、内周壁101eと接触しない(N-P)相分の分割鉄心120を有する。更に、固定子鉄心200は、密閉容器101との接触箇所において、従来の圧縮機の焼嵌代のような全M個の分割鉄心120の全てが内周壁101eと接触する場合の焼嵌代と比較して、N/P倍の厚さの焼嵌代となる外周壁1aを有する。このような構造の圧縮機150の場合は、従来の圧縮機に対して焼嵌代がN/P倍となる密閉容器101との接触箇所の外径を有する固定子1で、焼嵌応力のばらつきをP/N倍とすることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。