JP7149533B2 - アンテナ装置 - Google Patents

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Description

本開示は、アンテナ装置に関する。
特許文献1には、2本のアンテナ導体と、少なくとも1個の接地導体と、アンテナ導体と接地導体とにより狭設され、かつアンテナ導体および接地導体と離隔して配置される人工磁気導体と、を備えるアンテナ装置が開示されている。このアンテナ装置では、2本のアンテナ導体のうち一方の給電側端部とは反対の先端側端部に対して実質的に対向する位置から、人工磁気導体と接地導体との少なくとも一方の先端部までがカットされて形成されるカット部を有する。
国際公開第2019/003830号
本開示は、アンテナ装置としての小型化と所望の動作周波数での基本波の周波数特性の安定化とを両立するアンテナ装置を提供する。
本開示は、給電側アンテナ導体と、非給電側アンテナ導体と、接地導体と、前記給電側アンテナ導体および前記非給電側アンテナ導体と前記接地導体とにより狭設され、かつ前記給電側アンテナ導体、前記非給電側アンテナ導体および前記接地導体のそれぞれと離隔して配置される人工磁気導体と、を備え、前記非給電側アンテナ導体は、前記人工磁気導体および前記接地導体のそれぞれの一端からの前記非給電側アンテナ導体までの長手方向の長さが、前記一端とは反対の前記人工磁気導体および前記接地導体のそれぞれの他端から前記給電側アンテナ導体までの長手方向の長さよりも短くなるように配置され、前記非給電側アンテナ導体と実質的に対向する前記接地導体の位置から前記接地導体の前記一端側に、前記接地導体と前記人工磁気導体とを導通する少なくとも1つのビア導体が設けられる、アンテナ装置を提供する。
本開示によれば、アンテナ装置としての小型化と所望の動作周波数での基本波の周波数特性の安定化とを両立できる。
実施の形態1に係るアンテナ装置の外観を示す斜視図 図1の矢印E-E’線方向から見たアンテナ装置の内部構造を示す断面図 実施の形態1に係るアンテナ装置が実装されたシートモニタの内部を上方から見た平面透視図 実施の形態1に係るアンテナ装置における電圧定在波比の周波数特性および指向性特性の一例を示す図 比較例に係るアンテナ装置が実装されたシートモニタの内部を上方から見た平面透視図 比較例に係るアンテナ装置における電圧定在波比の周波数特性および指向性特性の一例を示す図
(本開示に係る実施の形態に至る経緯)
特許文献1に開示されているように、非給電側アンテナ導体の給電側端部とは反対の先端側端部に実質的に対向する位置から、人工磁気導体と接地導体との少なくとも一方の先端部までがカットされると、そのカットの割合によっては、アンテナ装置において不要な共振が発生し易くなる。このため、アンテナ装置としての性能(例えば、所望の動作周波数帯における電波放射特性)が安定しないという課題があった。
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るアンテナ装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(実施の形態1)
実施の形態1では、上述した経緯に鑑みて、アンテナ装置としての小型化と所望の動作周波数での基本波の周波数特性の安定化とを両立するアンテナ装置の例を説明する。具体的には、実施の形態1に係るアンテナ装置は、例えば航空機内に搭載される電子機器としてエコノミークラスの座席の背もたれ部の背面に設置されたシートモニタに搭載される。アンテナ装置は、シートモニタの前面(例えばモニタ画面)から後部座席の正面方向に向けて、例えば2.4GHz~2.5GHzの高周波数帯の電波を放射する。ここで、2.4GHz~2.5GHzの高周波数帯は、Bluetooth(登録商標)で使用される動作周波数帯域であり、実施の形態1では基本波の周波数帯域として説明する。
図1は、実施の形態1に係るアンテナ装置101の外観を示す斜視図である。図2は、図1の矢印E-E’線方向から見たアンテナ装置101の内部構造を示す断面図である。
図1に示すように、アンテナ装置101は、複数の層を有する積層基板からなるプリント配線基板上に形成され、例えばダイポールアンテナを構成する。ダイポールアンテナは、プリント配線基板の表面の金属箔を、例えばエッチングすることで成形される。複数の層は、例えば銅箔あるいはガラスエポキシ等を用いて構成される。
アンテナ装置101は、プリント配線基板1と、給電側アンテナ導体の一例としてのストリップ導体であるアンテナ導体2と、非給電側アンテナ導体の一例としてのストリップ導体であるアンテナ導体3と、無給電導体8と、を備える。
ここで、図1および図2のxyz座標軸において、z軸の方向は、アンテナ装置101およびアンテナ導体2,3の長手方向を示す。y軸の方向は、アンテナ装置101およびアンテナ導体2,3の幅方向を示し、z軸の方向に対して直交する。x軸の方向は、アンテナ装置101の厚さ方向を示し、yz平面に対して直交する。
アンテナ導体2およびアンテナ導体3は、プリント配線基板1のビア導体4およびビア導体5にそれぞれ接続される。ビア導体4は、例えば導電性を有する銅箔を用いて形成され、アンテナ導体2の給電点Q1(図2参照)と無線通信回路(図示略;例えばプリント配線基板1の裏面1bに実装される信号源としての回路)との間の給電線を構成する。ビア導体5は、例えば導電性を有する銅箔を用いて形成され、アンテナ導体3の給電点Q2(図2参照)と上述した無線通信回路(図示略)との間の接地線を構成する。
アンテナ導体2およびアンテナ導体3のそれぞれは、ダイポールアンテナを構成し、それらの長手方向が略一直線(一直線も含む)上で-z方向および(+)z方向に延在する。また、アンテナ導体2およびアンテナ導体3のそれぞれは、各アンテナ導体2,3の対向する給電点Q1,Q2側の端部(以下「給電側端部」)がアンテナ導体2,3のそれぞれから放射される電波の相殺を極力少なくするために所定の間隔だけ離隔するように、プリント配線基板1の表面1aに形成される。
なお、アンテナ導体2,3のそれぞれの給電側端部とは反対のそれぞれの端部(具体的には、アンテナ装置101を平面視したときに、最大に互いに離隔する端部)を以下、アンテナ導体2,3のそれぞれの「先端側端部」という。
無給電導体8は、アンテナ導体2,3のそれぞれの配置方向(+z方向)に並列し、アンテナ導体2,3のそれぞれの側面の一方側に配置され、アンテナ導体2,3と電気的に分離されている。無給電導体8とアンテナ導体2,3のそれぞれとの間は、同様にそれぞれから放射される電波の相殺を極力少なくするために所定の距離だけ確保される。所定の距離は、例えば、アンテナ装置101が対応する動作周波数帯の電波の1波長の4分の1以内の距離である。
ビア導体4,5は、それぞれプリント配線基板1の表面1aから裏面1bにわたって厚さ方向に形成された貫通孔に銅箔等の導体を充填することで成形され、それぞれ給電点Q1,Q2の直下の実質的に対向する位置に形成される。アンテナ導体2は、ビア導体4を介して、プリント配線基板1の裏面1b上の無線通信回路(図示略、上述参照)の給電端子に接続され、給電側アンテナ導体として機能する。また、アンテナ導体3は、ビア導体5を介して、プリント配線基板1内の接地導体9および無線通信回路(図示略、上述参照)の接地端子に接続され、非給電側アンテナ導体として機能する。なお、アンテナ装置101のプリント配線基板1は、例えばシートモニタ等の電子機器のプリント配線基板上に実装されてもよい。
図2において、プリント配線基板1は、例えば誘電体基板6と、人工磁気導体(Artificial Magnetic Conductorと、誘電体基板11と、接地導体9と、誘電体基板13とをこの順序で上方から積層することで構成される。以下、人工磁気導体を「AMC」と称する。なお、このプリント配線基板1の積層構成は、一例である。プリント配線基板1では、AMC7と接地導体9とは、互いに対向し、かつ平面視において実質的に重なるように配置される。これにより、AMC7および接地導体9の一方が他方よりはみ出ることが無く、アンテナ装置101を小型化できる。
誘電体基板6,11,13は、それぞれ直流成分に対して絶縁性を有する基板であり、例えばガラスエポキシ等で形成される。
AMC7は、PMC(Perfect Magnetic Conductor)特性を有する人工磁気導体であり、所定の金属パターンにより形成される。AMC7には、+z軸方向に対向するビア導体4,5の中間部に、AMC7の厚さ方向に貫通し、かつAMC7の幅方向の端部近傍まで延在するスリット71が形成される。実施の形態1では、スリット71は、3つのスリットが幅方向の中央部分で連結する形状を有する(図3参照)。なお、AMC7には、スリット71から長手方向に所定の間隔だけ離隔した位置からプリント配線基板1の図1の右側(具体的には-z方向)端部まで延在する切欠き部(例えば開口部の一形態)が形成されてもよい。
AMC7は、アンテナ導体2,3および無給電導体8とそれぞれ静電結合し、アンテナの薄型化および高利得化を可能にする。無給電導体8は、アンテナ導体2,3と同様、AMC7と静電結合することで、アンテナ導体2,3とAMC7との間の静電容量を増加させ、無線周波数を低減側にシフトさせることが可能である。なお、無給電導体8の大きさ、形状、数等は、特に限定されない。無給電導体8は、アンテナ導体2,3と同じ側にあり、AMC7と静電結合している限り、アンテナ導体2,3と同一の面に限らず、AMC7と同一の面に配置されてもよい。
ビア導体4は、例えば円柱形状を有し、アンテナ導体2をアンテナとして駆動するための電力を供給するための給電線であり、プリント配線基板1の表面1aに形成されたアンテナ導体2を、無線通信回路(図示略、上述参照)の給電端子に電気的に接続する。ビア導体4は、AMC7および接地導体9のそれぞれと電気的に絶縁するように、AMC7および接地導体9に形成されたビア導体絶縁用孔17,19と実質的に同軸となるように形成される。したがって、ビア導体4の直径は、ビア導体絶縁用孔17,19の直径よりも小さい。
ビア導体5は、アンテナ導体3を無線通信回路(図示略、上述参照)の接地端子に電気的に接続する。ビア導体5は、AMC7および接地導体9のそれぞれと電気的に接続される。
接地導体9には、ビア導体4を貫通させかつ接地導体9と電気的に絶縁して形成されるビア導体絶縁用孔19と、ビア導体5を貫通させかつ接地導体9と電気的に接続して形成される孔とが形成されている。
上述した積層構造(図2参照)を有するアンテナ装置101では、非給電側のアンテナ導体3は、AMC7および接地導体9のそれぞれの一端(例えば非給電側のアンテナ導体3側(+z方向)の端)からのアンテナ導体3までの長手方向の長さが、上述した一端とは反対の他端(例えば給電側のアンテナ導体2側(-z方向)の端)からのアンテナ導体2までの長手方向の長さより短くなるように配置される。つまり、プリント配線基板1は、AMC7のスリット71の中央から-z方向(アンテナ導体2側)と+z方向(アンテナ導体3側)の長さが同一でなく、スリット71の中央から+z方向の長さL1が-z方向の長さL0よりも長さL2(=L0-L1)だけ短くなるように成形される。
したがって、アンテナ装置101は、非給電側アンテナ導体であるアンテナ導体3側の先端部の一部(カット部75)がカットされた形状を有する。言い換えると、アンテナ装置101は、給電側のアンテナ導体2を含む-z方向の略半分のプリント配線基板1に対し、非給電側のアンテナ導体3を含む+z方向の略半分のプリント配線基板1が短くカットされたカット部75(つまり、AMCおよび接地導体9が形成されていない部分)を有する。ここで、カット部75の大きさは、下記の数式(1)に示すように、スリット71の中心からプリント配線基板1のアンテナ導体2側の先端までの長さL0に対するカット部75の長さL2(即ち、プリント配線基板1のアンテナ導体3側の先端までの長さL1との差)の比(カット率=L2/L0)で表される。
カット率 = L2/L0…(1)
実施の形態1では、カット率は、例えば51%である。例えば、プリント配線基板1の長さが83mmである場合、カット部の長さは、約21mmとなる。
特許文献1には、例えばカット率として、7.5%、15.1%、22.6%、30.2%、37.7%、45.3%がそれぞれ挙げられている。カット率が例えば52.8%、60.4%の場合、特許文献1に開示されているように、2.4~2.5GHzの帯域(例えば基本波帯域の一形態)における電圧定在波比(VSWR)が3以下となる範囲が狭くなったり(狭帯域化)、2.7GHzにおいてVSWRが3以下となる不要な共振が起こったりする等の状況が発生する。このような不要な共振は、アンテナ装置を囲む導体(例えば金属)の存在(例えばシートモニタの筐体)が一因として挙げられる。
このように、アンテナ装置101の小型化を図るために、AMC7および接地導体9が形成されていないカット部75を設けたことで、アンテナ装置101は、基本波帯域の無線信号を送受信でき、かつ2倍高調波帯域の無線信号の放射を阻止できる。ただし、特許文献1にも示されるように、カット率が50%を超えると、基本波帯域において使用可能な帯域が狭くなったり、不要な共振が起き易くなる。
これに対し、実施の形態1では、カット率が50%を超える場合であっても、基本波帯域において使用可能な範囲を広帯域化し、また、不要な共振が起きて利得を下げないように安定化させるために、少なくとも1つのビア導体(例えば後述するビア導体31~38)を追加した。このビア導体は、プリント配線基板1の非給電側のアンテナ導体3からカット部75側の端部までの間の範囲に、少なくとも1本追加される。ここでは、例えばビア導体が8本追加される場合を示す。
8本のビア導体31~38は、プリント配線基板1の長手方向(+z方向)に等間隔で一列に配置される。8本のビア導体31~38は、いずれも非給電側のアンテナ導体3が配置されたプリント配線基板1に対し、AMC7、誘電体基板11,13および接地導体9を貫通し、AMC7と接地導体9とを導通させる。また、8本のビア導体31~38は、それぞれ接地導体9の先端側からアンテナ導体3の給電側端部とは反対の先端側端部に実質的に対向する位置に向かって形成される。つまり、8本のビア導体31~38は、+x方向において、アンテナ導体3と対向する位置に向かわないように形成される。これにより、8本のビア導体をプリント配線基板1のカット部側に配置することができ、AMC7および接地導体9がカットされたことによるアンテナ装置の特性を改善できる。
また、ビア導体の間隔sは、送受信される電波の波長λの1/8倍より短い距離になるように設定される。
電波の波長λは、数式(2)により求められる。
λ = C/f …… (2)
cは電波の速度(3×1011mm/s)、fは電波の周波数である。例えば、電波の周波数fが2.5GHzである場合、波長λは、15mmである。したがって、ビア導体の間隔sは、15mm/8、つまり約1.9mmより短い距離である。
実施の形態1では、一例として、プリント配線基板の長さ:83mm、カット率:51%、電波周波数:2.5GHzである場合、8本のビア導体31~38が設けられる。
このように、実施の形態1に係るアンテナ装置101は、カット部75を有することで小型化が可能となっただけでなく、ビア導体31~38を追加することでAMC7と接地導体9とを導通させる領域を見かけ上増加させることができ、AMC7と接地導体9とをカットしてアンテナ装置101が非対称構造になったことによる不要な共振の発生を抑制できる。
なお、追加される複数本のビア導体は、プリント配線基板1の面に対し、長手方向に等間隔で一列に配置される場合に限らず、任意に配置されてもよい。例えば、複数本のビア導体は、プリント配線基板の長手方向に対し、斜め方向に配置されてもよい。また、複数本のビア導体は、一列に直線状に配置される(直線配置)だけでなく、所定の面を形成するように配置されてもよい(面配置)。ただし、アンテナ導体に対し、垂直な方向、つまりプリント配線基板の幅方向(+y方向)に配置された場合、ビア導体の効果は、ほとんど得られない。
図3は、実施の形態1に係るアンテナ装置101が実装されたシートモニタ200の内部を上方から見た平面透視図である。シートモニタ200は、航空機内に搭載されるエコノミークラス用の座席の背もたれ部の背面に設置される。図3には、シートモニタ200の筐体200zの一部である前面パネルが外された状態にあるシートモニタ200の内部が示される。シートモニタ200の筐体200zの内部には、無線モジュール210、および1組のアンテナ装置101が設けられる。
なお、図3におけるアンテナ装置104は、透視図で描かれている。即ち、アンテナ装置101を平面視した場合、アンテナ導体2,3および無給電導体8は、最上層に位置するので、実線で描かれている。AMC7に形成されたスリット71およびビア導体31~38は、中間層に位置するので、破線で描かれている。
無線モジュール210は、アンテナ装置101(プリント配線基板1の裏面1bに配置された無線通信回路)を給電し、アンテナ装置101により送受信される電波の信号処理を行う。無線モジュール210および無線通信回路は、例えばフィルタ、スイッチ、送信用および受信用トランス、信号処理IC等の電子部品を含む。実施の形態1では、無線モジュールとして、Bluetooth(登録商標)用のモジュールが用いられる。なお、無線通信回路は、無線モジュール210の内部に設けられてもよい。
1組(ここでは、2つ)のアンテナ装置101は、それぞれシートモニタ200の前面から後部座席の正面に向けて2.4GHz~2.5GHzの電波を放射する。2つのアンテナ装置101は、後部座席の正面に対し平行に(横方向に)並べて配置される。つまり、2つのアンテナ装置101を+z方向に隣接して配置することで、それぞれのアンテナ装置101から投射される電波の指向方向を後部座席側に向けることができる。これにより、後部座席に投射される電波の指向性が高まる。なお、1組のアンテナ装置は、2つのアンテナ装置に限らず、3つ以上のアンテナ装置であってもよい。
図4は、実施の形態1に係るアンテナ装置101における電圧定在波比(VSWR)の周波数特性および指向性特性の一例を示す図である。VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の特性を示すグラフにおいて、縦軸はVSRWであり、横軸は周波数である。VSRWは、定在波における進行波と反射波の比率でインピーダンスの整合の度合い(反射の度合い)を示し、特に定在波である電波における電圧の最大の振幅と最小の振幅の比率で算出される。VSWRが値1に近づくほど、反射波が少なく、インピーダンス整合がとれている状態である。したがって、VSWRが値1に近いほど、電波の伝送効率が高いことになる。また、広帯域とは、基本波帯域(2.4GHz~2.5GHzkの帯域)において、VSWR<3である範囲が広いことを表す。
アンテナ装置101のVSRWの特性では、周波数:2.49GHz、VSRW:1.8のポイントg3が下限(ピーク)となっている。また、ポイントg1では、周波数:2.45GHz、VSRW:3.0である。ポイントg2では、周波数:2.52GHz、VSRW:3.0である。このように、基本波帯域におけるVSWRは、ほぼ3以下となっている。したがって、アンテナ装置101は、基本波帯域の無線信号を所定の損失以下で送受信可能であることがわかる。また、基本波帯域以外の帯域では、VSRWが3以下とならず、高い値になっている。したがって、アンテナ装置101は、不要な電波を送受信せず、不要な共振による無線信号および2倍高調波帯域の無線信号の放射を十分に阻止可能である。
また、指向性特性を示すスミスチャートは、インピーダンスの整合度合いを示す。スミスチャートの水平軸は複素反射係数の実数部を表し、垂直軸は虚数部を表す。スミスチャートでは、その中心がインピーダンスの整合度合いが最も高い点(つまり最大反射係数1)である。実施の形態1に係るアンテナ装置101における電波の放射パターンp1は、基本波帯域において円を描くように、スミスチャートの中心に向かって接近する。この場合、ポイントg3がスミスチャートの中心に最接近する。したがって、アンテナ装置101では、基本波帯域において、電波の放射パターンp1が指向性特性図の中心近くに集まっているので、広帯域化が図られる。
(比較例)
図5は、比較例に係るアンテナ装置104が実装されたシートモニタ200の内部を上方から見た平面透視図である。アンテナ装置104を除くシートモニタ200の構成は、実施の形態1と同一であるため、同一の内容の説明は省略する。また、比較例のアンテナ装置104は、8本のビア導体31~38が省かれることを除き、実施の形態1に係るアンテナ装置101と同一の構成を有するため、同一の内容の説明は省略する。
図6は、比較例に係るアンテナ装置104における電圧定在波比(VSWR)の周波数特性および指向性特性の一例を示す図である。比較例に係るアンテナ装置104のVSRWの特性では、周波数:2.5GHz、VSRW:2.8のポイントg13が下限(ピーク)となっている。また、ポイントg11では、周波数:2.48GHz、VSRW:3.0である。ポイントg12では、周波数:2.51GHz、VSRW:3.0である。このように、比較例に係るアンテナ装置104では、基本波帯域におけるVSWRが値3以下となっている範囲は、実施の形態1に係るアンテナ装置101と比べて狭い。したがって、アンテナ装置104では、基本波帯域において、無線信号を所定の損失以下で送受信可能な範囲が狭く、狭帯域であることがわかる。さらに、図中破線aで囲まれる基本波帯域以外の帯域においても、VSRWが3以下の値になっている。つまり、アンテナ装置101は、不要な電波を送受信しており、電波の周波数特性が不安定である。したがって、アンテナの利得が低下する。
比較例に係るアンテナ装置104における電波の放射パターンp2は、基本波帯域において放射パターンp1と比べて小さな円を描くように、指向性特性図の中心に向かって接近する他、図中破線aで囲まれる基本波帯域を超える帯域においても、より小さな円を描くように、指向性特性図の中心に向かって接近している。
このように、比較例に係るアンテナ装置104では、基本波帯域におけるVSWRは3以下となっている範囲が狭く、広帯域化を図ることができない。また、アンテナ装置104は、不要な電波を漏洩して放射する。
実施の形態1に係るアンテナ装置101では、プリント配線基板1にカット部75を設けることで、アンテナ装置101の長手方向の長さを抑えて、アンテナ装置のサイズを小さくすることができる。また、カット率が50%を超えても、ビア導体31~38を追加することで、基本波帯域において使用可能な帯域が狭くなったり、不要な共振が起きなくなったり、2倍高調波帯域を含む不要の電波の放射を阻止できる。したがって、アンテナ装置101は、周波数特性を安定化させ、かつ小型化が可能である。また、アンテナ装置101は、基本波帯域の無線信号を所定の損失以下で送受信でき、広帯域化を図ることができる。したがって、アンテナ装置101は、不要な電波の放射を十分に阻止し、アンテナの利得を向上できる。
以上により、実施の形態1に係るアンテナ装置101は、一組のアンテナ導体2,3(具体的には、給電側アンテナ導体としてのアンテナ導体2、非給電側アンテナ導体としてのアンテナ導体3)と、接地導体9と、アンテナ導体2,3および接地導体9により狭設され、かつアンテナ導体2,3および接地導体9のそれぞれと離隔して配置されるAMC7(人工磁気導体)と、を備える。アンテナ導体3は、AMC7および接地導体9のそれぞれの一端(例えば非給電側のアンテナ導体3側(+z方向)の端)からのアンテナ導体3までの長手方向の長さが、上述した一端とは反対の他端(例えば給電側のアンテナ導体2側(-z方向)の端)からのアンテナ導体2までの長手方向の長さより短くなるように配置される。アンテナ導体3と実質的に対向する接地導体9の位置から接地導体9の一端(上述参照)側に、接地導体9とAMC7とを導通する、8本のビア導体31~38(少なくとも1つのビア導体の一例)が設けられる。
これにより、アンテナ装置101は、カット部75を有することができてカット部75を有さない構造に比べて小型化が可能となっただけでなく、ビア導体31~38を追加することでAMC7と接地導体9とを導通させる領域を見かけ上増加させることができる。したがって、アンテナ装置101は、AMC7と接地導体9とをカットしてアンテナ装置101が非対称構造になったことによる不要な共振の発生を抑制できる。言い換えると、アンテナ装置101は、アンテナ装置としての小型化と所望の動作周波数での基本波の周波数特性の安定化とを両立できる。
また、8本のビア導体31~38は、それぞれ接地導体9の先端側からアンテナ導体3の給電側端部とは反対の先端側端部に実質的に対向する位置に向かって形成される。これにより、複数のビア導体31~38をアンテナ装置101のカット部75側に配置することができ、AMC7および接地導体9の一部がカットされたことによるアンテナ装置101の特性を改善できる。
また、8本のビア導体31~38のうち、隣接するビア導体の間隔は、アンテナ装置101の動作周波数に対応する1波長の(1/8)倍未満である。これにより、アンテナ装置101は、放射する電波の周波数に合わせて複数本のビア導体を正確に配置でき、所望の周波数の電波を放射できる。
また、アンテナ導体2,3が配置されるプリント配線基板1上に設けられる無給電導体8を更に備える。これにより、無給電導体8は、アンテナ導体2,3とAMC7との間の静電容量を増加させ、無線周波数を低減側にシフトすることが可能である。したがって、アンテナ装置101は、小型化されても、基本波帯域(2.4GHz帯)の無線周波数の電波を送受信可能である。
また、接地導体9とAMC7とは、互いに対向し、かつ、平面視において実質的に重なるように配置される。これにより、AMC7および接地導体9の一方が他方よりはみ出ることが無く、アンテナ装置101を小型化できる。
また、8本のビア導体31~38は、AMC7および接地導体9が配置されるプリント配線基板1の長手方向に等間隔で一列に形成される。これにより、ビア導体の本数およびビア導体の間隔は、無線周波数を基に正確に算出可能である。
また、アンテナ導体2,3は、ダイポールアンテナを構成する。給電側のアンテナ導体2と非給電側のアンテナ導体3との間の位置に実質的に対向する、AMC7の位置には、スリット71が形成された。これにより、アンテナ装置101は、小型化されたダイポールアンテナの利得を高めることができる。
また、アンテナ装置101は、アンテナ導体2,3と接地導体9とAMC7とを有するアンテナ素子を複数有して構成されてよい(図3参照)。この場合、複数のアンテナ素子のそれぞれは、並べて配置されるとともに、それぞれのアンテナ素子から所定の指向性を形成するように電波を放射する。これにより、アンテナ装置101が搭載されたシートモニタ等の電子機器から送受信される電波の指向性をより高めることができる。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
例えば、上述した実施の形態1では、後部座席の正面に向かう方向に対し電波の指向性を高めるために、アンテナ装置101は、例えばシートモニタの筐体内にプリント配線基板が長手方向に2つ配置された、2素子アレイである場合を示した。しかし、指向性を特に高める必要が無い場合、アンテナ装置101は、例えばシートモニタの筐体内にプリント配線基板が1つ配置された1素子であってもよい。また、アンテナ装置101は、2素子アレイに限られず、シートモニタの筐体内にプリント配線基板が長手方向に3つ以上配置された、多素子アレイであってもよい。
また、上述した実施の形態1では、アンテナ装置101は、航空機内に設置されるシートモニタ内に搭載される例を示した。しかし、シートモニタに限らず、例えばコードレス電話機の親機あるいは子機、電子棚札(例えば、小売店の陳列棚に貼付される、商品の売価が表示されたカード型の電子機器)、スマートスピーカ、車載機器、電子レンジ、冷蔵庫等の多くのIoT(Internet Of Things)機器等に搭載されてもよい。
また、上述した実施の形態1では、アンテナ装置101は、例えば2.4GHz帯(例えば2.4~2.5GHz)を主な動作周波数とするBluetooth(登録商標)に対応して動作可能なアンテナ装置である例を示した。しかし、アンテナ装置101は、Bluetooth(登録商標)の動作周波数帯と同一の周波数帯域(例えば2.4GHz)を有するWifi(登録商標)用のアンテナ装置として使用できてもよいし、あるいは他の周波数帯域のアンテナ装置として使用できてもよい。
また、上述した実施の形態1に係るアンテナ装置101は、電波の送受信がともに可能なアンテナ装置の例を説明したが、例えば送信専用あるいは受信専用のアンテナ装置に適用してもよい。
本開示は、アンテナ装置としての小型化と所望の動作周波数での基本波の周波数特性の安定化とを両立するアンテナ装置として有用である。
1 プリント配線基板
2、3 アンテナ導体
4、5 ビア導体
6、11、13 誘電体基板
7 人工磁気導体
8 無給電導体
9 接地導体
17、19 ビア導体絶縁用孔
31、32、33、34、35、36、37、38 ビア導体
101 アンテナ装置
Q1、Q2 給電点

Claims (8)

  1. 給電側アンテナ導体と、
    非給電側アンテナ導体と、
    接地導体と、
    前記給電側アンテナ導体および前記非給電側アンテナ導体と前記接地導体とにより狭設され、かつ前記給電側アンテナ導体、前記非給電側アンテナ導体および前記接地導体のそれぞれと離隔して配置される人工磁気導体と、を備え、
    前記非給電側アンテナ導体は、前記人工磁気導体および前記接地導体のそれぞれの一端からの前記非給電側アンテナ導体までの長手方向の長さが、前記一端とは反対の前記人工磁気導体および前記接地導体のそれぞれの他端から前記給電側アンテナ導体までの長手方向の長さより短くなるように配置され、
    前記非給電側アンテナ導体と実質的に対向する前記接地導体の位置から前記接地導体の前記一端側に、前記接地導体と前記人工磁気導体とを導通する少なくとも1つのビア導体が設けられる、
    アンテナ装置。
  2. 前記ビア導体は複数設けられ、それぞれの前記ビア導体は、前記接地導体の先端側から前記非給電側アンテナ導体の給電側端部とは反対の先端側端部に実質的に対向する位置に向かって形成される、
    請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 隣接する前記ビア導体の間隔は、前記アンテナ装置の動作周波数に対応する1波長の(1/8)倍未満である、
    請求項2に記載のアンテナ装置。
  4. 前記給電側アンテナ導体および前記非給電側アンテナ導体のそれぞれが配置される基板上に設けられる無給電導体、を更に備える、
    請求項1に記載のアンテナ装置。
  5. 前記接地導体と前記人工磁気導体とは、互いに対向し、かつ、平面視において実質的に重なるように配置される、
    請求項1~4のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
  6. 複数の前記ビア導体は、前記人工磁気導体および前記接地導体が配置される基板の長手方向に等間隔で一列に形成される、
    請求項1に記載のアンテナ装置。
  7. 前記給電側アンテナ導体と前記非給電側アンテナ導体とは、ダイポールアンテナを構成し、
    前記給電側アンテナ導体と前記非給電側アンテナ導体との間の位置に実質的に対向する前記人工磁気導体の位置には、スリットが形成される、
    請求項1に記載のアンテナ装置。
  8. 前記アンテナ装置は、前記給電側アンテナ導体および前記非給電側アンテナ導体と前記接地導体と前記人工磁気導体とを有するアンテナ素子を複数有して構成され、
    複数の前記アンテナ素子のそれぞれは、並べて配置されるとともに、それぞれの前記アンテナ素子から所定の指向性を形成するように電波を放射する、
    請求項1~7のうちいずれか一項に記載のアンテナ装置。
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