以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。尚、本実施形態のフィーダー治具において、テーブル部材4の前とは折丁を取り出し入紙掛機械のドラムへ供給する側を指し、後とはその反対側、さらにそれらを結ぶ線分と直交する方向を幅方向・左右方向を意味するものとする。
図1~図9に、本発明を適用したフィーダー治具の一実施形態を示す。このフィーダー治具3は、既存のフィーダーのテーブル(以下、治具のテーブル部材4と区別するためフィーダーテーブル13と呼ぶ)の上に載置して使用するものであり、フィーダーテーブル13の上に突出するフィーダーの部品例えば背当てが取り付けられるガイドレール(フィーダーテーブルの左右両側で前後方向に配置されるガードとも呼ばれるレール状の突起物)29あるいはフィーダーテーブル上に突出するその他の部品を利用してフィーダーテーブル13の上に固定されるものである。
ここで、フィーダー1は、折丁2の大半を支える平板状の水平なフィーダーテーブル13と、該フィーダーテーブル13から突出した折丁2の先端縁を僅かに引っ掛け下方に引っ張り力を受けたときに取り出し可能に支持するフック部11と、フィーダーテーブル13から突出した折丁2の先端部分を吸着して下方へ引き出す吸着部材(サッカーとも呼ばれる)10とを備え、フィーダーテーブル13とフック部11との間に積み重ねられてストックされた折丁2を下から1部ずつ取り出し入紙掛機械のドラム14へ供給する装置である。フック部11は、積み重ねられた折丁2の先端縁下側を引っ掛けて支持する支持ピン8および支持爪9から構成されている。また、フィーダーテーブル13には、積み上げられた折丁2の後端側を受け止める背当て(バックストッパーあるいはリミットストッパーなどとも呼ばれる)35と、この背当て35の位置を前後方向に調整可能に支持するガイドレール29とが備えられている。そして、折り帖サイズ例えばA4判、B5判などに応じて背当て35の位置を移動可能に支持されている。
また、フィーダー1は、図3に示すように、折丁2の縦あるいは横の縁に接する壁面等であり積み重ねた折丁2の周囲を囲むガイド7を備えている。これらガイド7は、折丁2の先端縁を下から支える支持ピン8を有している。支持ピン8は例えば小型の先細り形状の突起で、折丁2の全体を下から支持するが、折丁2を1部ずつ引き出す際は引き出し動作を妨げない。また、水平な支持軸16を中心に回動可能な支持爪9が折丁2の先端縁中央を下側から支持する。さらに、フィーダー1は、折丁2を1部ずつ引き出し可能とする手段として、折丁2の裏面に吸着しながら図4に示すように水平な回動軸15を中心に回動して折丁2を1部ずつ引き下げて引き出し可能な状態とする吸着部材10を有する。なお、フィーダー1の下側に設けられた図示しない入紙掛機械は、折丁2の端部を把持した状態で回転ドラム14とともに回転し折丁2を1部ずつ引き出す図示しない押え爪を備えている。
本実施形態のフィーダー治具は、図1に示すように、フィーダーテーブル13に載置されてフィーダーテーブル13に代わるテーブル面を形成するテーブル部材4と、折丁2の両側部の被裁断部分2aをテーブル面よりも高い位置に持ち上げる突起5と、テーブル部材4をフック部11に向けて前下がりに傾斜させてフィーダーテーブル13の上に載置させる脚部17と、テーブル部材4の一方の側縁部をフィーダーテーブル13の上に突出する部品たとえば一方のガイドレール29に固定する固定具24と、反対側の側縁部をフィーダーテーブル13の上に突出する部品たとえば他方のガイドレール29に押し当てて固定すると共にその反力をテーブル部材4に付与してテーブル部材4をフィーダーテーブル13に向けて凸となるように撓ませる締め付け具30とを有している。
ここで、テーブル部材4は、本実施形態の場合、例えばステンレススティール製プレートなどの一定の外力が付加されることで撓みうる可撓性を有する板材で構成され、折丁2の積み板としての剛性を全体として有しながら、特定の方向即ち幅方向には湾曲し得る構造とされている。例えば、テーブル部材4の少なくとも前縁部並びに後縁部のガイド溝及びその周辺には補強となる構造例えば折り返し4bを設けず、それ以外の側方周縁部や後縁部の一部分には脚部17や折り返し4bを設けて補強し、積み上げられる折丁の重量に耐えうる剛性が得られる構造とされている。また、テーブル部材4の前縁部は、両側の脚部17によって持ち上げられ、中央部分が下に凸となるように容易に撓みうる構造とされている。これによって、テーブル部材4の一方の側縁部を一方のガイドレール29に固定具24を使って固定する一方、反対側の側縁部を締め付け具30を使って他方のガイドレール29に押し当てて固定すると共にその反力をテーブル部材4に付与すれば、テーブル部材4の中央部分がフィーダーテーブル13に向けて凸となるように撓ませる力が与えられる。依って、フィーダーテーブル13の上に設置した際にテーブル部材4が下に膨らむように変形して湾曲したテーブル面を形成し得る。
テーブル部材4は、本実施形態では、図4に示すように、前下がりの勾配を有する脚部17によって両側部が支持されることで、テーブル部材4を折丁2の供給方向に向けて前下りに傾斜させる構造とされている。即ち、テーブル部材4は、フィーダーテーブル13に載置するだけで所定の傾斜をテーブル部材4の上面即ちテーブル面に与えることができる。ここで、テーブル部材4の傾斜角度は、特定の角度に限定されていないが、例えば10°~30°、好ましくは15°~28°、より好ましくは20°~25°、最も好ましくは25°程度である。必ずしも傾斜していなくとも良いが、水平なテーブル面であると、折丁をサッカーで下に引き出されるときに折丁が直角に曲げられながら引っ張りだされることとなり、過度に摩擦力が発生する。その反面、テーブル面を前下がりに傾けると、引き出される折丁2のテーブル部材4の前縁部での折り曲げ角が(水平なフィーダーテーブル13の場合よりも)小さくなるため、テーブル部材4の前縁部と接触することによる折丁2の汚れがより少なくなる。また、折丁2の鉛直方向の荷重はテーブル面に沿った方向とテーブル面に垂直な方向とに分解可能となり、テーブル面に垂直な方向の分力が小さくなることに加えテーブル面に沿った分力が生じる。したがって、テーブル部材4が傾斜していない場合に比べて最下層の折丁2が引き出しやすくなり、引き出し時の汚れが少なくなる。
つまり、傾斜角度がある程度付与されていないと、紙の送りがスムーズにならない。その反面、傾斜が急だと、積んだ紙が不安定になる。この好適な傾斜角度は、折丁の紙の材質や積み上げ量などで変わるものであることから、上述の範囲に限定されるものでもないし、調整可能とすることが好ましい。そこで、本実施形態の脚部17には、傾斜角度を変更させる補助的な踏み台となる調整脚部20が備えられている。この調整脚部20は、例えば1本の連結軸21を中心に脚部17の後端側に縁直面に沿って揺動可能に取付けられており、連結軸21を中心とする円弧状の長孔22に固定用ねじ23が貫通されて脚部17にねじ込まれている。したがって、ねじ23を弛めて調整脚部20を連結軸21を中心に縁直面に沿って回動させることにより調整脚部20を脚部17の底面から突出させ、任意の高さでねじ23を固定することによって脚部17の後端側の高さを変更する(即ち、テーブル部材4の傾斜角度を調整可能とする)ようにしている。
また、フィーダーテーブル13の撓みは、特定の値に限定されるものではないが、あまり大き過ぎると積み上げる折丁の姿勢が不安定になり、少な過ぎると引き出される折丁とその上の折丁との間に十分な隙間を形成すること、あるいは隙間が無くとも摩擦を軽減して印刷面の汚れを軽減させる程度の擦れが起こらない程度の圧力とすることができない。そこで、例えば左右の突起5の間の中央値で、突起5の部分のテーブル面高さよりも5~20mm、好ましくは10~15mm程度沈下する程度の撓みとすることが好ましい。このテーブル面の撓みは、少なくとも突起5が配置されている部分から前縁部にかけて必要であるが、後端縁側にも形成されていることが折丁の送りを良好なものとする上でも好ましい。
突起5は、フィーダー1のテーブル部材4上に積み重ねた折丁2のうち最下層の折丁2の両側縁の一部をテーブル部材4の上面よりも高い位置で下面側から持ち上げ支持するもので、図2に示すように、テーブル部材4の両側部に設けられている。本実施形態の突起5は、テーブル部材4の両側に1個ずつ計2個が対称位置に設けられているが、必ずしも2個1組である必要はなく、これより多く設けてもよいし、常に対称配置しなくても本実施形態と同様に印刷面の汚れを少なくする作用効果を得ることが可能である。
突起5は、例えば図2及び図3に示すようにテーブル面から上へ突出した円柱形状の部材で、積み重ねた折丁2の両側の製本後に裁断される被裁断部分2aの一部を下側から支持するように左右対称配置している。例えば、被裁断部分2aが図2において一点鎖線よりも外側の部分として示される場合、突起5はこの一点鎖線よりも外側に配置される。したがって、突起5が支持するのは常に折丁2の被裁断部分2aだけである。
また、上述の突起5は、折丁2の全体幅、裁断幅などに応じて幅方向へ適宜移動できることが好ましい。本実施形態では、図1~図3に示すようにテーブル部材4の両側部に長孔6を設け、この長孔6のストローク範囲内で突起5を折丁2の幅方向へ自在に移動できるようにしている。ここでは、図示するように蝶ナット12をテーブル部材4の裏面から嵌め合わすことによって突起5を固定するが、固定手段はボルト・ナットに限定されない。尚、長孔6は、直線形状の溝である必要はない。例えば、円弧形状やクランク形状の溝であっても、突起5の移動に伴い折丁2の幅方向への変位を与え得るものであれば種々の大きさ・形状の折丁2に対し適宜対応することが可能となる。また、長孔6は、場合によっては、テーブル部材4の奥行き方向に突起5の位置を調整可能に設けられることもある。
本実施形態では突起5の一形態として図1のような円柱形のものを挙げたが突起5の高さあるいは形状は特に限定されることはなく、上述のように折丁2の一部を両端で支持し、印刷面における接触・摩擦を印刷が汚れない程度に軽減し得るものであれば良い。したがって、テーブル部材4からの突起5の高さをさらに高くしても構わないし、突起5の上端面を平坦面でなく凸状曲面に形成しても構わない。また、突起5の周面を斜めに形成すればエッジがなくなり抵抗を少なくできるし、突起5を先細り形状とすれば折丁2との接触面積を少なくできる。また、図10に示すように突起5をL形に形成し、先端円側に向けて折り曲げた先端側部分で折丁2の両側を支持するようにすれば、長孔6の位置はそのままに突起5の支持部分を先端側に配置できる。
脚部17と固定具24並びに脚部17と締め付け具30とは、それぞれ互いに独立した部品あるいは構造物として備えても良いが、本実施形態の場合、脚部17は固定具24あるいは締め付け具30を兼用している。即ち、固定具24は、脚部17と該脚部17にスペーサを介在させて対向するように配置される固定プレートと、固定プレートのねじ孔にねじ込まれる締め付け用ボルトとで構成され、脚部17と固定プレートとの間の隙間にフィーダーテーブル上のガイドレール29を挟んでから、脚部17との間で締め付け用ボルトでガイドレール29を挟み付けて固定するように設けられている。勿論、固定具24は、脚部17とは互いに完全に独立した存在として設けられても良い。例えば、脚部17とは別にガイドレール29を跨ぐように挟む一対のプレート材を含むコ形の連結部材をテーブル部材4の裏面に溶接付し、それらの少なくとも一方に締め付け用ボルトを備え、締め付け用ボルトの締め付けにより他方のプレート材にガイドレール29を押しつけるようにして固定することができる。
他方、締め付け具30は、例えば、テーブル部材4の裏面に対して取り付けられるL形のボルト支持プレート31と、脚部17と、該脚部17に対向するように配置されるボルト支持プレート31の一方の辺31bのねじ孔にねじ込まれる締め付け用ボルト32とを少なくとも有し、ボルト支持プレート31の締め付け用ボルト32と脚部17との間でガイドレール29を挟み付けて固定するように設けられている。この締め付け具30によれば、ボルト支持プレート31と脚部17との間に、フィーダーテーブル13の上のガイドレール29を挟んだ状態で締め付け用ボルト32を押し当てて固定すると共に、締め付けの際の反力をテーブル部材4の端に付与してテーブル部材4の中央をフィーダーのテーブルに向けて撓ませることができる。したがって、ガイドレール29の固定後の締め付け用ボルトの更なる締め付けは、ボルト支持プレート31を介してテーブル部材4が反り返るように撓ませる力を付与することとなる(テーブル部材湾曲作業)。尚、本実施形態では、ボルト支持プレート31とテーブル部材4とは、テーブル部材4の脚部17の外の領域に設けられている長孔34を貫通する例えば摘みねじのような固定用ねじ33によって連結されることで固定され、固定用ねじ33を長孔34内で移動させることで、固定位置が調整可能とされる。勿論、ボルト支持プレート31とテーブル部材4とは、溶接付などで固着しても良い。
本実施形態の場合、テーブル部材4の中央部分を下に突出させるように撓ませるための手法としては、テーブル部材4の一端側をフィーダーテーブル13の上の部品に固定する一方、他端側の端をフィーダーテーブル13の上の部品に押しつけることで、テーブル部材4の端を上に向けて押し上げる力をテーブル部材4に付与しつつ固定させると同時にテーブル部材4の中央部分が下に向けて突出するように撓ませるようにしているが、この構造に特に限定されるものではない。また、テーブル部材4の湾曲の度合いは、締め付け具30の締め付け度合いに左右されるものであり、任意に変化させ得る可変的なものであるが、場合によっては予め成形された固定的な湾曲面としても良い。
テーブル部材4の後端縁には、積み上げる折り帖のサイズ(例えばA4判、B5判など)に応じて背当て35の位置を調整可能とするための開口部即ちガイド溝18が形成されている。
既存のフィーダー1に付属する背当て35は、図示していないが、積み上げられた折丁2の後端面を広範囲に面的に支持する板状物(これを背板と呼ぶ)で主に構成されており、フィーダーテーブル13の両側に備えられたガイドレール29のいずれか一方に支持基台部を取り付けて、フィーダーテーブル13の上の幅方向中央で起立するように支持されている。そして、ガイドレール29に沿って支持基台部を前後方向に移動させて積み上げられる折丁サイズに合わせて背板の位置を調整するように設けられている。これに対し、上述のフィーダー治具3は、フィーダーテーブル13の上に設置して傾斜したテーブル面を形成するものであることから、テーブル部材4と背当て35とが干渉することとなる。そこで、背当て35をテーブル部材4と干渉させないで調整移動可能なものとするために、テーブル部材4の後端縁側には、フィーダーテーブル13の上に起立する背当て35が最小適用サイズの折丁の後端面位置まで侵入するのを可能とする、背当て35よりも広い幅の切り欠きから成るガイド溝18が設けられて、背当て35とフィーダー治具3のテーブル部材4とが交差しうる構造とされている。
ここで、ガイド溝18は、対象となる最小サイズの折丁の後端縁に宛がわれる位置まで背当て35を侵入させる必要があるので、その位置までの切り欠きが必要となる。また、対象となる最大サイズの折丁の後端位置まで背当て35を後退させる必要があるので、最大サイズの折丁に合わせて背当て35を後退させる位置までの間で切り欠きを埋める必要がある。そこで、テーブル部材4の後端縁に、背当て35よりも僅かに幅広の切り欠きから成るガイド溝18が形成されている(図10参照)。この背板幅のガイド溝18の場合、折丁を積み上げるテーブル面に無視できない大きな空所を発生させ、テーブル部材4の切り欠きの縁が段差となって折丁に作用するため、引き出される折丁にかかる圧力・摩擦力が高まり、印刷面が擦れて汚れてしまう虞がある。そこで、折丁サイズに応じて、空所を埋める調整板36を差し入れる構造とされている。例えば、図11に示すように、テーブル部材4の切り欠きの両側縁に沿って裏面側に調整板36差し込み用のレール溝を有するレール部材37を備えておき、調整板36をレール溝に差し込むことで空所を塞ぐようにしている。これによって、折丁のサイズに応じた背当て35の位置に位置調整したときに、折丁を支えるテーブル部材4のテーブル面が折丁の全幅を支えることができる。このとき、調整板36は、テーブル部材4の他の部分と同様に撓むようにするため、孔38を開けて撓み易い構造としておくことが望ましい。尚、調整板36は固定ねじ39で固定される。
しかし、調整板36を埋め込む構造の場合、テーブル部材4の長さ(幅)に比べて遙かに短い調整板36では、テーブル部材4の撓みと同じ変形状態にすることが難しいため、場合によっては、前縁部側に段差が生じてしまうことがある。テーブル部材4の切り欠きよりも前側の部分と、切り欠きに差し込まれた調整板36の部分との間で段差が生じないように、例えば多数の孔を開けて撓み易くしたり、作業の都度微調整するなどの、調整板36の可撓性や撓み量を好適なものに調整することが必要となる。
そこで、上述の調整板36の撓みの調整の手間を省くため、本実施形態にかかるフィーダー治具に適した新規な構造の背当て35と、背当て35の一部分を出し入れ可能に通過させる細い溝(スリット)で構成されているガイド溝18(図1,3参照)とを組み合わせて使用するようにしても良い。即ち、本実施形態の背当て35は、例えば、図9に示すように、フィーダー治具のテーブル部材4の上に配置される背板部40と、テーブル部材4の下に配置される支持基台部42と、該支持基台部42から起立してテーブル部材4に形成されたガイド溝18を通過すると共に背板部40を支持する支持アーム41とで構成されている。支持基台部42は、上述の既存の背当て35と同様に、フィーダーテーブル13の両側に備えられたガイドレール29のいずれか一方に取り付けられており、ガイドレール29に沿って前後方向に移動することで背板部40の位置を調整するように設けられている。また、支持アーム41は、支持基台部42の先端部から鉛直方向に起立しており、背板部40を側面から挟み付けて挟持するように固定して支持している。つまり、背板部40とその側方を挟み付ける支持アーム41とは、折丁2に対して面一に接する。尚、図中の符号43は締め付けねじである。
さらに本実施形態では、テーブル部材4の後端縁で開口された1組のガイド溝18例えば2本のスリットから成るガイド溝18が設けられている。このガイド溝18は、フィーダーテーブル13の上にセットされる背当て35を支持するための支持アーム41を通過させるものであり、折丁2のサイズに応じて背当て35の位置を可能とする。本実施形態の場合、支持アーム41並びにガイド溝18は、2本配置し、折丁2の中心より左右方向に均等でかつ最小サイズの折丁と最大サイズの折丁の双方において効果的に支持できる位置に配置することが好ましいが、3本以上でも良いし、場合によっては1本でも良い。
この実施形態の背当て35の場合においても、テーブル部材4の上面(テーブル面)は、前下がりに傾斜しているため、対応する折丁サイズの最大と最小サイズとの間ではフィーダーテーブル13からの高さが異なってくるので、最大折丁サイズと最小折丁サイズのときの背板部40の下端面とテーブル部材4のテーブル面との間の隙間が大きく開きが生ずることとなる。しかしながら、背板部40の両側の支持アーム41が積み重ねられた折丁の下の方の部分の後端面と接触してこれを支持するため、背当て35の機能を損なうことがない。即ち、ガイド溝18を通過する支持アーム41自体を背当て35の一部として機能させ、積み重ねられた折丁の後端部に宛がわれて後方への移動を阻止することが可能である。
この実施形態によれば、支持アーム41の部分のみを通過させるスリット状のガイド溝18は切り欠かれる面積(特に幅)が狭いため、テーブル部材4が撓むときに左右のガイド溝18の間の領域も一緒になって撓むので、テーブル面に段差が生ずることがない。即ち、段差に起因する擦れで汚れることがなくなる。
また、本実施形態において、背当て35は、テーブル部材4の上方で折丁の後端面を広範囲に面的に支持する背板部40を含んでいるが、場合によっては棒状物で代用するようにしても良い。例えば、積み上げられた折丁の後端面の互いに離れた少なくとも2箇所を平行な2本の棒で支持する場合にも、背板部(即ち、面的支持)と同様の支持効果が得られる。この場合には、背板部40を省くことで構造がシンプルとなる。また、複数本の棒状物で構成する場合には、互いに独立させても良いが、桁材のようなものでテーブル面の上方で横に連結することで構造的に強化するようにしても良い。また、棒状物で背当て35を構成する場合、折丁の傾きを防ぐには少なくも2本配置することが望ましいが、場合によっては、1本の棒状物で折丁の後端面を受け支えて後退による位置ずれを阻止するようにしても良い。
尚、本実施形態の場合には、脚部17の外側には、フィーダーテーブル上に突出する部品例えば回動軸15などを覆うガード枠(図示省略)などに当接させることで、治具が所定の位置よりも前方へずれるのを防ぐためのストッパと位置決めを兼ねる係止片が溝19によってそれぞれ形成されている。この係止片は、前述のフィーダーテーブル上に突出する部品例えば回動軸15などを覆うガード枠の一部を受け入れる溝19とその外側でカバーの一部の側面と当接して左右方向の位置決めを行う部分とで構成されている。
以上のように構成された本実施形態のフィーダー治具3によると、フィーダーテーブル13の上に載置して、フィーダーテーブル13の上に突出する部品例えば背当て35を前後動させるガイドレール29を利用して固定することで、フィーダーテーブル13に向けて突出するようにテーブル部材4が変形して湾曲したテーブル面を形成し、テーブル部材4の上に積み重ねられる折丁2の両側の被裁断部分をテーブル面から突出した突起5によって支持可能とすることができる。
即ち、突起5は、図2に示すように、折丁2の両側の被裁断部分2aの一部を押し上げて、突起5の周辺において折丁2が浮いた状態でこの折丁2を支持する。同時に、テーブル部材4は、突起5と突起5を結ぶ線分の中央付近で最も沈むように湾曲しているため、折丁2を全体的に撓ませる。換言すれば、テーブル面から折丁2の中央部を浮かせて印刷面にかかる荷重を軽くするように作用する。
このため、テーブル部材4の湾曲と突起5による両側の被裁断部分2aの支持とが相俟って、最下層の折丁2とその上の下から2枚目の折丁2との間では、隙間が空くか、あるいは隙間が空かなくても互いの接触圧が印刷面が汚れない程度に小さくなる。依って、折丁2の印刷面にかかる荷重を少なくし、印刷面どうしの擦れ合いによる汚れを防止することができる。しかも、突起5が折丁2に接触するのは製本後に裁断される被裁断部分2aのみであるため、たとえ印刷面に汚れが生じたとしても製本時に裁断されるため何ら影響がない。
また、印刷面間における接触力の大きさを少なくできるので、従来よりも多くの折丁2を積み重ねることが可能となる。これにより、製本作業において折丁2を補充する頻度が減るので、製本作業の能率向上に寄与する。
このテーブル部材4をフィーダーテーブル13の上に配置する場合、図3に示すように吸着部材10の回動軸15のほぼ直上に配置しても構わないが、図4に示すように回動軸15より後方に設けるようにしても良い。このように前縁部を後方配置した場合、吸着部材10によって引き下げられた折丁2の曲がり始まる部分が後方にシフトするので、折丁2の湾曲し得る部分が増えて曲率が小さくなる。したがって、腰が強く曲がりにくい折丁2を供給するような場合であっても、折丁2を吸着部材10で吸着した状態を維持し引き下げることができる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では本発明をフィーダー治具に適用した例を挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、フィーダーそのもののフィーダーテーブルに適用するようにしても良い。即ち、フィーダーテーブル13をフック部11に向けて前下がりに傾斜させると共に、折丁2の進行方向と直交する幅方向に湾曲させた形状とし、折丁の両側部の製本後に裁断される被裁断部分2aをテーブルの面よりも高い位置に持ち上げる突起5を備えるようにしても良い。この場合においても、積み重ねられた折丁を突起5の間で支えたときに、突起5による被裁断部分2aの持ち上げとフィーダーテーブル13の湾曲によって、最下層の折丁とその上の折丁との間に隙間を形成し、または隙間を形成しなくても摩擦を軽減して印刷面の汚れをさらに軽減させることができる。
ここで、フィーダーテーブル13の湾曲は、固定的な曲面でも良いし、曲率が変化する可動曲面としても良い。例えば、フィーダーテーブルの中央が下向きに凸を成すように撓み得る支持構造とすると共に、左右の両端を押し上げあるいは中央部分を引き下げる調整ねじなどを機械本体とフィーダーテーブル中央部との間に備えることで、調整ねじを操作することでフィーダーテーブル中央部に下向きの力を与えて撓ませるようにしても良い。また、湾曲面の最大変位位置は、テーブル面の左右に配置される突起5と突起5とを結ぶ線分の中央付近となるように撓ませることが好ましい。このテーブル13の湾曲の度合いは、調整ねじの締め付け度合いに左右されるものであり、任意に変化させ得る可変的なものであるが、場合によっては予め成形された固定的な湾曲面としても良い。