JP7145731B2 - 磁気ディスク用ブランク材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の磁気ディスク用ブランク材は、Fe:0.4~3.0mass%、Mn:0.1~3.0mass%、Cu:0.003~1.000mass%及びZn:0.005~1.000mass%を含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるアルミニウム合金板からなり、面取部の表面における最大径5μm以上の孔の数が、50個/mm2未満であることを特徴とする磁気ディスク用ブランク材とできる。
以下、本発明の詳細な説明において、ワークの輪郭の一部を切削するように切削刃が形成され、ワークに対して移動させながら切削し所望の形状に加工する切削バイト(切削工具)を1本バイトと呼ぶ。
また、ワークの形状(輪郭線)、即ち所望の加工形状になるように切削刃が動くことにより面取部の形状に成形され、切削刃をワークに押し当てることで切削する切削バイトを総型バイトと呼ぶ。
まず、本発明に係る磁気ディスク用ブランク材(アルミニウム合金基板)(以下、「本発明に係るアルミニウム合金基板」又は、単に「アルミニウム合金基板」と略記する)について詳細に説明する。
以下、本発明に係るAl-Fe系合金を用いた磁気ディスク用ブランク材のアルミニウム合金成分及びその含有量について説明する。
Feは必須元素であり、主として第二相粒子(Al-Fe系金属間化合物等)として、一部はマトリックスに固溶して存在し、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を発揮する。このような材料に振動を加えると、第二相粒子とマトリックスとの界面における粘性流動により振動エネルギーが速やかに吸収され、極めて良好なフラッタリング防止特性が得られる。アルミニウム合金中のFe含有量が0.4%未満では、十分な機械強度とフラッタリング防止特性が得られない。一方、Fe含有量が3.0%を超えると、粗大なAl-Fe系金属間化合物粒子が多数生成する。このような粗大なAl-Fe系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時において脱落して大きな窪みが発生し、めっきピット発生によるめっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離を発生させる。また、Fe含有量が所定の範囲内であれば、圧延工程における加工性低下も抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のFe含有量は、0.4~3.0質量%(以下、単に%という。)の範囲とする。Fe含有量は、好ましくは0.6~2.0%、より好ましくは0.8~1.8%の範囲である。
Mnは、主として第二相粒子(Al-Mn系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を発揮する。このような材料に振動を加えると、第二相粒子とマトリックスとの界面における粘性流動により振動エネルギーが速やかに吸収され、極めて良好なフラッタリング防止特性が得られる。アルミニウム合金中のMn含有量が0.1%以上であることによって、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のMn含有量が3.0%以下であることによって、粗大なAl-Mn系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。このような粗大なAl-Mn系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時に脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、Mn含有量が所定の範囲内であれば、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のMn含有量は、0.1~3.0%の範囲とし、0.1~1.0%の範囲とするのが好ましい。
Cuは必須元素であり、ジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、また、ジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させ、次工程のめっき工程での平滑性及び密着性を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のCu含有量が0.003%未満では、ジンケート皮膜が不均一となり、めっき表面にピットが発生し、めっき表面の平滑生を低下させる。一方、アルミニウム合金中のCu含有量が1.000%を超えると、粗大なAl-Cu系金属間化合物粒子が多数生成し、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時に脱落して大きな窪みが発生し、めっき表面にピットが生じ、めっき表面の平滑性が低下する。また、めっき剥離が生じ易くなる。そのため、アルミニウム合金中のCu含有量は、0.003~1.000%の範囲とする。Cu含有量は好ましくは、0.005~0.400%の範囲である。
Znは必須元素であり、ジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させ、次工程のめっき工程での平滑性及び密着性を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のZn含有量が0.005%未満では、ジンケート皮膜が不均一となり、めっき表面にピットが発生し、めっき表面の平滑生を低下させる。一方、アルミニウム合金中のZn含有量が1.000%を超えるとジンケート皮膜が不均一となり、めっき表面にピットが発生し、めっき表面の平滑生を低下させる。また、めっき剥離が生じ易くなる。そのため、アルミニウム合金中のZn含有量は、0.005~1.000%の範囲とする。Zn含有量は好ましくは、0.100~0.700の範囲である。
Siは、主に第二相粒子(Si粒子やMg-Si系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を発揮する。このような材料に振動を加えると、第二相粒子とマトリックスとの界面における粘性流動により振動エネルギーが速やかに吸収され、極めて良好なフラッタリング防止特性が得られる。アルミニウム合金中のSi含有量が0.1%以上であることによって、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のSi含有量が0.4%以下であることによって、粗大な第二相粒子が多数生成することを抑制する。このような粗大な第二相粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時に脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、Si含有量が所定の範囲内であれば、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のSi含有量は、0.1~0.4%の範囲とするのが好ましく、0.1~0.3%の範囲とするのがより好ましい。
Niは、主として第二相粒子(Al-Ni系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を発揮する。このような材料に振動を加えると、第二相粒子とマトリックスとの界面における粘性流動により振動エネルギーが速やかに吸収され、極めて良好なフラッタリング防止特性が得られる。アルミニウム合金中のNi含有量が0.1%以上であることによって、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のNi含有量が3.0%以下であることによって、粗大なAl-Ni系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。このような粗大なAl-Ni系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時に脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、Ni含有量が上記の範囲内であれば、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のNi含有量は、0.1~3.0%の範囲とするのが好ましく、0.1~1.0%の範囲とするのがより好ましい。
Mgは、マトリックス中に固溶して、又は、第二相粒子(Mg-Si系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のMg含有量が0.1%以上であることによって、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のMg含有量が6.0%以下であることによって、粗大な第二相粒子が多数生成することを抑制する。このような粗大な第二相粒子がエッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時に脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、Mg含有量が所定の範囲内であれば、圧延工程における加工性低下をより一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のMg含有量は、0.1~6.0%の範囲とするのが好ましく、0.3%以上1.0%以下の範囲とするのがより好ましい。
Crは、主として第二相粒子(Al-Cr系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のCr含有量が0.01%以上であることによって、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のCr含有量が1.00%以下であることによって、粗大なAl-Cr系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。このような粗大なAl-Cr系金属間化合物粒子がエッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時に脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、Cr含有量が所定の範囲内であれば、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のCr含有量は、0.01~1.00%の範囲とするのが好ましく、0.10~0.50%の範囲とするのがより好ましい。
Zrは、主として第二相粒子(Al-Zr系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のZr含有量が0.01%以上であることによって、アルミニウム合金基板の機械強度とフラッタリング防止特性を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のZr含有量が1.00%以下であることによって、粗大なAl-Zr系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。このような粗大なAl-Zr系金属間化合物粒子がエッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時に脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、Zr含有量が所定の範囲内であれば、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のZr含有量は、0.01~1.00%の範囲とするのが好ましく、0.10~0.50%の範囲とするのがより好ましい。
Ti、B及びVは、鋳造時の凝固過程において、第二相粒子(TiB2などのホウ化物、或いは、Al3TiやTi-V-B粒子等)を形成し、これらが結晶粒核となるため、結晶粒を微細化することが可能となる。その結果、めっき性が改善する。また、結晶粒が微細化することで、第二相粒子のサイズの不均一性を小さくし、アルミニウム合金基板中の機械強度とフラッタリング防止特性のバラツキを低減させる効果を発揮する。但し、Ti、B及びVの含有量の合計が0.005%未満では、上記の効果が得られない。一方、Ti、B及びVの含有量の合計が0.500%を超えてもその効果は飽和し、それ以上の顕著な改善効果が得られない。そのため、Ti、B及びVを添加する場合のTi、B及びVの含有量の合計は、0.005~0.500%の範囲とするのが好ましく、0.005~0.100%の範囲とするのがより好ましい。
なお、合計量とは、Ti、B及びVのいずれか1種のみを含有する場合にはこの1種の量であり、いずれか2種を含有する場合にはこれら2種の合計量であり、3種全てを含有する場合にはこれら3種の合計量である。
また、本発明に用いるアルミニウム合金の残部は、Al及び不可避的不純物からなる。ここで、不可避的不純物としてはGa、Snなどが挙げられ、各々が0.10%未満で、かつ合計で0.20%未満であれば、本発明で得られるアルミニウム合金基板としての特性を損なうことはない。
次に、フラッタリング防止特性は、ハードディスクドライブのモーター特性によっても影響を受ける。本発明においては、フラッタリング防止特性は、空気中では、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。空気中で、50nm以下であれば一般的なHDD向けの使用に耐え得ると判断される。空気中で、50nmを超える場合は、読み取り部であるヘッドの位置決め誤差が増加する。
次に、磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法について説明する。以下の説明における厚さや温度、時間等の値は、代表的な値を例示するものであって、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の組成範囲を満たす任意の成分組成の各合金素材を常法に従って溶解し、アルミニウム合金溶湯を溶製した(ステップS101)。
ステップS101~ステップS112後のアルミニウム合金基板を用いディスク・フラッタリングの測定を行った。ディスク・フラッタリングの測定は、市販のハードディスクドライブに空気の存在下、アルミニウム合金基板を設置して測定を行った。ドライブはSeagate製ST2000(商品名)を用いて、モーター駆動はテクノアライブ製SLD102(商品名)をモーターに直結することにより駆動させた。回転数は7200rpmとし、ディスクは常に複数枚設置してその上部の磁気ディスクの表面にレーザードップラー計である小野測器製LDV1800(商品名)によって表面の振動を観察した。観察した振動は、小野測器製FFT解析装置DS3200(商品名)によってスペクトル分析した。観察はハードディスクドライブの蓋に孔を開けることにより、その穴からディスク表面を観察して行った。また、市販のハードディスクに設置されていたスクイーズプレートは外して評価を行った。
フラッタリング防止特性の評価は、空気中にて、30nm以下の場合をA(優)、30nmを超えて40nm以下をB(良)、40nmを超えて50nm以下をC(可)、50nmより大きい場合はD(劣)とした。
Claims (5)
- Fe:0.4~3.0mass%、Mn:0.1~3.0mass%、Cu:0.003~1.000mass%及びZn:0.005~1.000mass%を含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、面取部の表面における最大径5μm以上の孔の数が、50個/mm2未満であることを特徴とする磁気ディスク用ブランク材。
- Si:0.1~0.4mass%、Ni:0.1~3.0mass%、Mg:0.1~6.0mass%、Cr:0.01~1.00mass%及びZr:0.01~1.00mass%からなる群から選択される1種又は2種以上を、更に含有するアルミニウム合金を用いた、請求項1に記載の磁気ディスク用ブランク材。
- Ti、B及びVからなる群から選択される1種又は2種以上を含有量の合計で0.005~0.500mass%を、更に含有するアルミニウム合金を用いた、請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ブランク材。
- 前記面取部が、前記ブランク材の主面に対して25°以上60°以下の傾斜面である、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ブランク材。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ブランク材の製造方法であって、予め定められたディスク側面の形状に沿って切削工具を移動させることによって面取を行う工程を含んでなる、磁気ディスク用ブランク材の製造方法。
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