JP6588508B2 - 磁気ディスク用アルミニウム合金基板 - Google Patents
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[1] 芯材と、該芯材の両面に形成された皮材とからなる、両面クラッド構造を持つ磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、
芯材の金属組織における最長径4μm以上30μm以下の第二相粒子の周囲長の合計が10mm/mm2以上であり、
前記芯材の線膨張係数α1[/℃]と前記皮材の線膨張係数α2[/℃]との関係が下記式(1)を満たすことを特徴とする、磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
0.4×10−6≦(α2−α1)≦3.6×10−6 ・・・(1)
[2] 前記アルミニウム合金基板の略回転中心を通る直線に沿う方向において、前記皮材の厚みを計測し、一方の皮材の厚みをA[mm]、他方の皮材の厚みをB[mm]、前記直線上の位置をx[mm]とし、この位置xに対する皮材の厚み差(A−B)をYとして、Y=f(x)をプロットしたときの、f(x)とx軸で囲まれる領域を面積S[mm2]とするとき、
前記アルミニウム合金基板の、特定の直径方向および該特定の直径方向に垂直な直径方向を少なくとも含む複数の直径方向iにそれぞれ延びる直線上で算出した面積Siのうち、最も大きい値である面積Smax[mm2]が、前記アルミニウム合金基板の平均厚みt[mm]および前記芯材の平均厚みt1[mm]との関係で、下記式(2)を満たす、上記[1]に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
Smax/(t×t1)≦2.25 ・・・(2)
[3] 前記最も大きい面積Smax[mm2]は、前記芯材の線膨張係数α1[/℃]および前記皮材の線膨張係数α2[/℃]、並びに前記アルミニウム合金基板の平均厚みt[mm]および前記芯材の平均厚みt1[mm]との関係で、さらに下記式(3)を満たす、上記[2]に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
{Smax/(t×t1)}×(α2−α1)≦2.60×10 −6 ・・・(3)
[4] 前記芯材および前記皮材はいずれも、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、チタン、銅、マグネシウム、ジルコニウムおよび亜鉛から選択される1種または2種以上を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、
前記芯材は、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、ニッケルおよびチタンから選択される1種以上の元素の合計含有量が0.70質量%以上であり、かつ、
前記皮材は、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、ニッケルおよびチタンから選択される1種以上の元素の合計含有量が0.45質量%以下である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の磁気ディスク用アルミ合金基板。
本発明に従う磁気ディスク用アルミニウム合金基板(以下、単に「Al合金基板」という。)は、芯材と、該芯材の両面に形成された皮材とからなる、両面クラッド構造を持つ磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、芯材の金属組織における最長径4μm以上30μm以下の第二相粒子の周囲長の合計が10mm/mm2以上であり、前記芯材の線膨張係数α1[/℃]と前記皮材の線膨張係数α2[/℃]とが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
0.4×10−6≦(α2−α1)≦3.6×10−6 ・・・(1)
さらに、特定第二相粒子の各周囲長の合計は、まず、光学顕微鏡で観察した平面画像1mm2の領域において、最長径が4μm以上30μm以下である第二相粒子を特定し、該特定第二相粒子について粒子毎にその像(輪郭線)の外周の長さを求め、それを合計した値である。
W=F(rpm)a2(1−ν2)/Eβh3λ4 ・・・(I)
0.4×10−6≦(α2−α1)≦3.6×10−6 ・・・(1)
Smax/(t×t1)≦2.25 ・・・(2)
{Smax/(t×t1)}×(α2−α1)≦2.60×10 −6 ・・・(3)
(芯材)
芯材は、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、チタン、銅、マグネシウム、ジルコニウムおよび亜鉛から選択される1種または2種以上を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避不純物からなる合金組成を有することが好ましい。
皮材は、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、チタン、銅、マグネシウム、ジルコニウムおよび亜鉛から選択される1種または2種以上を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避不純物からなる合金組成を有することが好ましい。
以下、本発明の実施形態に係るAl合金基板の製造工程の各工程およびプロセス条件を詳細に説明する。なお、以下は製造方法の一例であり、本発明の効果を奏する範囲で必要に応じて種々改変してもよい。
DC鋳造:スパウトを通して注がれた溶湯は、ボトムブロックと、水冷されたモールドの壁、及びインゴット(鋳塊)の外周部に直接吐出される冷却水で熱を奪われ、凝固し、鋳塊として下方に引き出される。
CC鋳造:一対のロール(又はベルトキャスタ、ブロックキャスタ)の間に鋳造ノズルを通して、溶湯を供給し、ロールからの抜熱で薄板を直接鋳造する。
例えば、熱間圧延して板厚15mm程度の皮材とする工程と、芯材用鋳塊を面削し板厚270mm程度の芯材とし、芯材の両面に皮材を合わせて合わせ材とする。
本発明の実施形態では板厚は1.3mmから0.45mm程度の範囲が好ましい。
表1および2に示す合金組成の各合金を常法に従って溶解し、Al合金溶湯を溶製した(ステップS101)。表1および2中「−」は、測定限界値以下を示す。
上記実施例および比較例に係るAl合金基板について、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りである。結果を表3〜5に示す。
研削加工(ステップS108)後の磁気ディスク用Al合金基板を対象に、アニール処理(ステップS109)の前と後において、平坦度の測定を行った。各測定は、平坦度測定器FT−17(株式会社ニデック製)を用いて行い、ディスクの一方の面および他方の面のそれぞれのPV値(N=2)の平均を、ディスク平坦度とした。そして、アニールの前後での、ディスク平坦度の差分を算出し、変化量を求めた。
その上で、厚さの測定を行うためのサンプルIと、フラッタリングや平滑性の測定を行うサンプルIIの、対となった2つのサンプル群を準備した。各実施例および各比較例におけるサンプルIおよびサンプルIIは、圧延時に同じ長手位置に隣接していたブランク同士であって、かつ、ディスクの平坦度の測定において、ほぼ同じ形状変化および変化量を示したものの中から選別した。このように選別したのは、これまでのデータ蓄積から、このようなディスクでは、面積和Smaxが同程度となることが把握されているためである。また、各(芯材、皮材、厚さ)組み合わせのディスク基板において、平坦度変化量を3水準(小さいもの、中間のもの、大きいもの)選択し、全体を代表するように考慮した。各々、N数は2である。
各実施例および各比較例における平坦度の測定値は、該当するサンプルIおよびサンプルIIの平均値(N=4)であって、得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき平坦度を評価し、AおよびBを合格レベルと評価した。
<平坦度の評価基準>
A:変化量が5μm以下
B:変化量が5μm超10μm以下
C:変化量が10μm超
平坦度の測定において選別したサンプルIのディスクの厚さを測定した。まず、サンプルIのディスクの厚さを、静電容量式板厚計(CL−5600、株式会社小野測器製)を用いて、板厚を測定する。
次の過程で、皮材の厚みを計測する予定直線上に一致するよう、ディスクと測定ヘッドの相対位置を移動させ、対象となる複数直線上の板厚の値を得た。
次に、芯材および皮材の厚さの測定を、ディスクの横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって計測した。測定用サンプルは、ディスクの略回転中心を通る直線に沿った横断面(厚み方向に平行な断面)を含む領域をディスクから切り出し、樹脂埋めした後、研磨して作製した。測定用サンプルの主平面がステージ移動方向と一致するように装置にセットし、観察倍率100倍でSEM画像を撮影し、撮影した画像を解析して、組成の違いから明度の差として、皮材と芯材の境界を同定した。
上記画像解析によりディスクの厚さt、芯材の厚さt1、一方の皮材の厚さの寸法A、および他方の皮材の厚さの寸法Bをそれぞれ計測した。なお、各位置でのディスクの厚さ計測値が、前記静電容量式板厚計の計測値に一致するよう、補正を掛けている。
皮材の厚さの寸法AおよびBについては、ステージ移動量xと組み合わせて、A(x)とB(x)の値を得た。さらに、Y=f(x)をプロットしたときの、f(x)とx軸で囲まれる領域を面積S[mm2]として算出した。
上記測定は、4本の横断面でそれぞれ行い、ディスクの厚さtおよび芯材の厚さt1はそれぞれ平均値を算出し、面積Sは最も大きい値である面積Smax[mm2]を求めた。なお、面積Sの算出において、xが離散的な場合、A(x)−B(x)の各測定値を結んだ折線yを曲線yの代用として、面積和Sを求めた。
線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA4000SA、ネッチ・ジャパン株式会社製)を用い、圧縮法によるTMA測定により行った。なお、測定は、芯材11および皮材13と同じ組成の合金材料から5mm×5mm×10mmの測定用サンプルを作製し、荷重10gf、昇温速度5℃/分にて、測定温度領域(室温から400℃)にて行った。測定安定性等を考慮して、線膨張係数は、50℃以上300℃以下の平均線膨張係数として求めた。
第二相粒子の最長径及び周囲長の測定は、上記厚さの測定[1]の際に選別したサンプルIを対象に行った。測定用サンプルは、サンプルIから該ディスクの略回転中心を通る直線に沿った横断面(厚み方向に平行な断面)を含む領域を切り出し、樹脂埋めした後研磨して作製した。この横断面の厚さ方向の中央部分を、光学顕微鏡により400倍で20視野(1視野の面積:0.05mm2)観察し、粒子解析ソフト(A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて画像処理を行い、第二相粒子の輪郭線を抽出し、第二相粒子の最長径及び周囲長の合計(mm/mm2)を求めた。
上記厚さの測定[1]の際に選別したサンプルIIのうち、Ni−Pめっき処理(ステップS111)工程後のAl合金基盤を用いディスク・フラッタの測定を行った。ディスク・フラッタの測定は、市販のハードディスクドライブに空気の存在下、Al合金基盤を設置し、測定を行った。ドライブはSeagate製ST2000(商品名)を用いて、モーター駆動はテクノアライブ株式会社製SLD102(商品名)をモーターに直結することにより駆動させた。回転数は7200rpmとし、ディスクは常に複数枚設置してその上部の磁気ディスクの表面にレーザードップラー計(LDV1800、株式会社小野測器製)にて表面の振動を観察した。観察した振動はFFT解析装置(DS3200、株式会社小野測器製)にてスペクトル分析した。観察はハードディスクドライブの蓋に孔を開けることにより、その穴からディスク表面を観察して行った。また市販のハードディスクに設置されていたスクイーズプレートは外して評価を行っている。
フラッタリング特性の評価は、フラッタリングが現れる300Hzから1500Hzの付近のブロードなピークの最大変位(ディスクフラッタリング(nm))にて行った。このブロードなピークはNRRO(Non−Repeatable Run Out)と呼ばれ、ヘッドの位置決め誤差へ大きな影響があることがわかっている。
本実施例では、空気中で得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づきフラッタリング変位を評価し、AおよびBを合格レベルと評価した。
<フラッタリング変位の評価基準>
A:変位が30nm以下
B:変位が30nm超40nm以下
C:変位が40nm超50nm以下
D:変位が50nm超
上記厚さの測定[1]の際に選別した上記サンプルIIのうち、Ni−Pメッキ処理(S111)後のAl合金基盤の表面を、光学顕微鏡にて観察(視野:1mm2)し、ピットの個数を数え、単位面積当たりの個数(個/mm2)を求めた。なお、このような測定を3回行なって、その算術平均値をもって試料の単位面積当たりのピット数(個/mm2)とした。本実施例では、ピット数が4個/mm2以下である場合を合格レベルと評価した。
11 芯材
13(13a、13b) 皮材
Claims (4)
- 芯材と、該芯材の両面に形成された皮材とからなる、両面クラッド構造を持つ磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、
芯材の金属組織における最長径4μm以上30μm以下の第二相粒子の周囲長の合計が10mm/mm2以上であり、
前記芯材の線膨張係数α1[/℃]と前記皮材の線膨張係数α2[/℃]との関係が下記式(1)を満たすことを特徴とする、磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
0.4×10−6≦(α2−α1)≦3.6×10−6 ・・・(1) - 前記アルミニウム合金基板の略回転中心を通る直線に沿う方向において、前記皮材の厚みを計測し、一方の皮材の厚みをA[mm]、他方の皮材の厚みをB[mm]、前記直線上の位置をx[mm]とし、この位置xに対する皮材の厚み差(A−B)をYとして、Y=f(x)をプロットしたときの、f(x)とx軸で囲まれる領域を面積S[mm2]とするとき、
前記アルミニウム合金基板の、特定の直径方向および該特定の直径方向に垂直な直径方向を少なくとも含む複数の直径方向iにそれぞれ延びる直線上で算出した面積Siのうち、最も大きい値である面積Smax[mm2]が、前記アルミニウム合金基板の平均厚みt[mm]および前記芯材の平均厚みt1[mm]との関係で、下記式(2)を満たす、請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
Smax/(t×t1)≦2.25 ・・・(2) - 前記最も大きい面積Smax[mm2]は、前記芯材の線膨張係数α1[/℃]および前記皮材の線膨張係数α2[/℃]、並びに前記アルミニウム合金基板の平均厚みt[mm]および前記芯材の平均厚みt1[mm]との関係で、さらに下記式(3)を満たす、請求項2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
{Smax/(t×t1)}×(α2−α1)≦2.60×10 −6 ・・・(3) - 前記芯材および前記皮材はいずれも、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、チタン、銅、マグネシウム、ジルコニウムおよび亜鉛から選択される1種または2種以上を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、
前記芯材は、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、ニッケルおよびチタンから選択される1種以上の元素の合計含有量が0.70質量%以上であり、かつ、
前記皮材は、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、ニッケルおよびチタンから選択される1種以上の元素の合計含有量が0.45質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気ディスク用アルミ合金基板。
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