JP7144396B2 - シリコーン消泡剤組成物、および、シリコーン消泡剤組成物の製造方法。 - Google Patents

シリコーン消泡剤組成物、および、シリコーン消泡剤組成物の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、ゼータ電位の分布幅が設定されたシリコーン消泡剤組成物に関するもので、様々なタイプの泡に対して優れた消泡性を有するシリコーン消泡剤組成物、および、その製造方法に関するものである。
消泡剤は、化学工業、食品工業、石油工業、製糸工業、織物工業、医薬品工業等の発泡を伴う工程において広く用いられている。
シリコーンは表面張力が低いので、泡を消す潜在的な能力を有する。また、シリカが破泡の作用があることが知られているので、シリコーンとシリカを共に用いた消泡剤が広く用いられている。シリコーン系消泡剤としては、オイル、コンパウンド、溶液、エマルジョン、自己乳化、粉体、固体の7つのタイプがある。コンパウンドは消泡剤の業界ではオイルコンパウンドと称されることもあるが、本発明では、シリコーンオイルを必須成分とする油分とシリカの混合物およびさらに一部が化学反応で結合したものをコンパウンドと称する。
消泡剤には大きく分けて、起泡液に予め添加しておくタイプと、起泡液の泡が立った後に外部から適用するタイプの2種類がある。このうち、起泡液に予め添加しておくタイプが消泡剤の主流である。さらにこのタイプには2種類がある。うち1種類は、予め起泡液にポリエーテル変性シリコーン等を溶解させておくか、起泡液に鉱物油等を投入して液面に油膜を張ることにより、起泡液の界面張力を下げて、抑泡、すなわち泡が立たないようにする、ないしは、泡の立ち方をなるべく抑えるようにする。この場合は、消泡剤を大量に用いる必要がある。また、大量の消泡剤により起泡液の品質が変わってしまい、排水の環境負荷も大きくなる。もう1種は、主に、シリコーンの界面張力低下機能とシリカによる破泡効果を起こさせるために、シリコーンとシリカの複合粒子を予め起泡液に添加しておくタイプであり、泡が立った場合に破泡の作用を示す。抑泡の作用もあると見られているが、その効果の確認は十分できていない。このタイプの場合は、消泡剤としての使用量が少なくて済み、起泡液の品質もあまり変わらないことから、最も一般的な消泡剤のタイプとなっている。一方、消泡剤を、既に泡が立っている起泡液に対し、外部から適用するタイプは、スプレー等の方法で消泡剤を投与する。この場合は、物理的作用または界面張力の低下作用のいずれかで破泡する。この場合は、一時的な破泡には有効な場合もあるが、消泡持続性がないことや、抑泡の作用がないことが多い。
従って、消泡剤は、予め起泡液に添加しておく複合粒子のタイプが最も主流であり、そしてそれは主に破泡の作用により消泡を示す。
消泡剤として働くためには、複合粒子が泡膜の近傍に存在する必要があり、水中での分散性を飛躍的に高めるためにはエマルジョンの形のものが最も有効であるため、エマルジョンタイプのシリコーン消泡剤が最も多く用いられている。また、起泡液にすぐに分散できる状態として、固形状態であるコンパウンドとしても多く用いられている。
消泡剤の消泡性能は起泡液ごとに大きく異なることが多く、ある種の起泡液に対しては優れた消泡性能を示しても、他の起泡液に対しては消泡性能が不足することがあった。従って、従来の消泡剤は、個別の消泡事例における経験則のみで消泡剤組成物を設計してきた。また、個別の起泡液に対する消泡剤を開発するに当たっては、その都度当該起泡液を入手する必要があった。また、消泡剤の開発現場では技術者の経験値や実験の試行錯誤に負うところが大きく、開発期間の長期化や人的経済的損失の肥大化が問題となることがあった。同じ消泡剤組成物であっても製造の微妙な方法の違いや条件の違い、バッチの違いなどで、消泡性能がばらつくことが多く、消泡剤として目的の性能は発揮されないケースが頻発していた。
主流である、起泡液に予め添加しておくタイプで、シリコーンとシリカの複合粒子からなるシリコーン消泡剤の場合は、抑泡の作用もあるものの十分でないため、泡が立ってしまい、その泡を破泡する。であるからこそ、安定した消泡性能を出すための試行錯誤が難しい。
これらの問題を改善するために、様々なタイプの泡に対して広く安定的に消泡性を示す消泡剤を、理論的かつ定量的に設計、評価し、製造する方法の確立が求められている。また、様々なタイプの泡に対して広く安定的に消泡性を示す消泡剤が求められている。
これに対し、例えば、非特許文献1には、消泡剤が泡膜に侵入する際の界面自由エネルギー変化(E)と、拡張する際の界面自由エネルギー変化(S)が、減少する方向を正に取った場合、共に負であるときに破泡が起きるという、いわゆるRoss理論が提案されている。
しかし、E、S>0はそれぞれ消泡剤が泡膜に侵入した配置、泡膜上で拡張した配置が、平衡状態として好まれるかという判別であり、それがどのような時間スケールで起きるかについての予測を与えない。従ってRoss理論の条件を満たすように設計しても、侵入、拡張に長時間を要し、現実の消泡剤としては使用不可能なものが出来うる。さらに、本質的に同じ原料の中からいずれか特定の原料を選択するに際し、これらはいずれも同一の界面張力と表面張力を有しているため、Ross理論だけでは選択の指針が得られないのである。
また、非特許文献2では、疎水性紛体粒子が、泡膜を安定化させている界面活性剤を吸着することで泡が不安定化して破泡するという、ピンホール効果が提案されている。ピンホール効果は多くのシリカ含有のシリコーン消泡剤において指摘されている理論である。また、多くのシリカを用いる消泡剤においては、シリカの尖端部分が物理的に破泡する、いわゆるニードル効果を起こすことが経験的に信じられている。
しかし、シリカをはじめとする疎水性紛体粒子が、泡膜までたどりつく、あるいは近傍に存在するためにはどんな要件が必要であるかについては論ぜられていない。すなわち、ピンホール効果またはニードル効果が実効的に表れる条件が解明されない限り、実用的な消泡性能との関係を見出すことはできない。
また、非特許文献3では、消泡剤が泡膜の両表面を突き破ってブリッジ構造を取ったのち、水のはじきによって両表面が短絡されて破泡するという機構が提示されている。さらに非特許文献4では当該ブリッジ構造が泡膜内方向に引き延ばされて、消泡剤部分が薄膜化することで泡が不安定化して破泡するという機構が提示されている。これらのモデルでは消泡剤によるブリッジ構造の形成が破泡に向けた第一ステップとして認識されている。
しかし、各種の泡に対して当該ブリッジ構造の形成を速める設計要因は明らかではないため、消泡剤の設計には役立っていない。
また、非特許文献5では、界面活性剤等、泡膜表面の吸着分子によって作られる電気二重層が泡膜の厚みを一定以上に保つ働きをしており、消泡剤によって当該吸着分子を置換することで電気二重層反発による安定化機構を崩すことで破泡が起きやすくなることが論じられている。
しかし、消泡剤を用いた場合の破泡は普通泡膜が1μm以上で起きるのに対し、二つの泡膜内壁間の電気二重層による反発は泡膜が20nm程度まで薄まるまで発現しないことが知られており、当該電気二重層反発は消泡剤設計上の考慮に入れる必要が無いことが示唆される。
以上より、最も主流である、起泡液に予め添加しておくタイプで、シリコーンとシリカによる複合粒子による消泡剤、例えば特許文献1に記載されているようなシリコーン消泡剤組成物においては、以上のような消泡の理論のみでは、製造処方や製造バッチ毎に一定の消泡性能を得るためのシリコーン消泡剤組成物としての組成面、製造面での具体的かつ定量的な指標を得ることができない。
よって、このタイプの消泡剤の開発においては、対象となる起泡液を入手して経験に基づく組成、製造法を、試行錯誤的に最適条件を見出すしかなく、また製造においても、バッチ間の消泡性能の再現性が十分ではなかった。その制御方法は、定性的な視認であり、定量的な指標に基づく制御方法は見出されていなかった。
本件出願人は、特許文献2において、フュームドシリカ粒子のように、無機粒子群の下位の凝集体同士が非化学的結合により高位の凝集体を形成して水中に分散している水分散体、およびこのような水分散体をベースに油分を添加する水中油型ピッカリングエマルジョンにおいて、複合粒子間の状態のばらつきに言及する一方、水分散体の安定性、均一性評価にゼータ電位を測定し、安定性、均一性の指標となり得ることを示している。しかし、これは、ゼータ電位の分布幅が狭い方が安定性、均一性がよいことを示すものであって、消泡性能に与える影響は何ら示すものではなかった。また、エマルジョンが安定であるものが必ずしもゼータ電位の分布幅が狭いわけではなかった。
また、繊維処理や塗膜の
安定性などを向上させる目的でゼータ電位が用いられることはある。しかし、それらは物質の吸着を促進させる目的であった。
以上のように、消泡剤の消泡性能をゼータ電位を用いて評価する指標はかつて存在せず、それを示唆するような先行技術も存在しなかった。
以上より、従来の予め添加しておくことにより消泡するタイプのシリコーン消泡剤においては、使用するシリコーン成分やシリカの種類によらない、あるいは起泡液の種類によらない普遍的な消泡性能を測る指標が存在しなかったために、消泡性能が製造処方や製造バッチ毎に一定であり、かつ再現性よく発現させるための方法がなく、組成上および工程上の多くの試行錯誤を解消することができなかった。
また、初期消泡性と消泡持続性の制御、消泡性能と分散安定性の制御、抑泡と破泡の制御に関しても、これまでは何ら指標も方法も存在しなかった。
J.Phys.Chem.,54(3),429(1950) Ind.Eng.Chem.Fundam.,16(4),472(1977) Int.J.Mineral Process.,9,1(1982) Langmuir,15(24),8514(1999) 油化学,42(10),762(1993)
特表2008-529778公報 特許第6344878号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、所与の起泡液に対して予め添加しておくタイプの消泡剤において、起泡液中での消泡剤の分散性を確保するとともに、抑泡および破泡の両面から消泡性を奏することにより、消泡持続性を確保可能なシリコーン消泡剤組成物を提供することを目的とする。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、所与の起泡液に対して予め添加しておくタイプの消泡剤の製造方法において、起泡液中での消泡剤の分散性を確保するとともに、抑泡および破泡の両面から消泡性を奏することにより、消泡持続性を確保可能なシリコーン消泡剤組成物を起泡液に応じて安定的に再現よく製造する方法を提供することを目的とする。
よって、従来技術のいかなるものも、上記課題を解決するシリコーン消泡剤組成物、および、その製造方法は開示されていなかった。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の分布幅が、起泡液に応じて設定される閾値以上であるシリコーン消泡剤組成物が、様々なタイプの泡に対して優れた消泡性能を有することを見出した。
本発明のシリコーン消泡剤組成物は、起泡液に対して予め添加しておくことにより消泡するタイプのシリコーン消泡剤組成物であって、シリコーンを必須成分とする油分とシリカとの複合粒子群を含み、複合粒子群中のいずれかの複合粒子が起泡液により形成される泡を構成する包囲膜の内面に及ぶことにより、抑泡および破泡が可能なように、複合粒子群のゼータ電位の分布幅が、起泡液に応じて設定されている、ことを特徴とする、シリコーン消泡剤組成物であることを特徴とする。
本発明のシリコーン消泡剤組成物の製造方法は、起泡液に対して予め添加しておくことにより消泡するタイプのシリコーン消泡剤組成物の製造方法であって、起泡液の種類に応じて、油分成分およびシリカ成分それぞれの種類および/または量を選択する段階と、選択した油分成分およびシリカ成分を混合し、シリコーンを必須成分とする油分とシリカとの複合粒子群を含むシリコーン消泡剤組成物を調製する段階と、生成したシリコーン消泡剤組成物をサンプリングし、複合粒子群のゼータ電位の分布幅を計測する段階と、起泡液により形成される泡を構成する包囲膜の内面に及ぶことにより、抑泡および破泡が可能なように、計測したゼータ電位の分布幅が、起泡液に応じて設定される閾値以上となるまで、前記選択段階および/または前記調整段階、および前記計測段階を繰り返す、ことを特徴とするシリコーン消泡剤組成物の製造方法であることを特徴とする。
発明の作用
本発明のシリコーン消泡剤組成物は、所与の起泡液に対して予め添加しておくタイプの消泡剤における消泡持続性について、消泡剤の複合粒子群の分散性にとって、複合粒子群のゼータ電位の分布幅は狭いのが好ましい一方、起泡液の種類、および泡形成開始から形成完了までの過渡的状態に応じて、消泡すべき泡の条件は変わるところ、泡形成開始の際、複合粒子群の起泡液中での分散性を確保することにより、複合粒子群のいずれかの複合粒子が泡の内部に存在する状況を創出しやすくするとともに、複合粒子が泡の包囲膜の内面に及び、泡膜の界面張力低下による抑泡およびピンホール効果またはニードル効果による破泡の両面から消泡するのが可能となるように、起泡液に応じて、複合粒子群のゼータ電位について、その分布の幅を設定するものである。
なお、抑泡とは、起泡液中において複合粒子による、主に泡の内面の界面張力低下により泡が形成しない、またはしにくい作用が支配的である消泡作用を意味するものである。全く泡を生成しないこと、ないしは既に泡が生成している状況で新たな泡を生成しにくい作用を示すことである。また、破泡とは、既に生成している泡に対し、複合粒子による、主にピンホール効果またはニードル効果により泡を破る作用が支配的である消泡作用を意味するものである。
また、消泡性、消泡性能とは、抑泡および破泡の両方を含む広義の意味である。そして、良好な消泡性能とは、断りのない限り、初期消泡性と消泡持続性のそれぞれが、少なくとも消泡現場で受け入れ可能な水準以上であることを意味する。
本発明のシリコーン消泡剤組成物の製造方法は、所与の起泡液に対して予め添加しておくタイプの消泡剤の製造方法について、起泡液の種類に応じて、油分成分およびシリカ成分それぞれの種類および/または量を選択する段階と、選択した油分成分およびシリカ成分を混合し、シリコーンを必須成分とする油分とシリカとの複合粒子群を含むシリコーン消泡剤組成物を調製する段階、生成したシリコーン消泡剤組成物をサンプリングし、複合粒子群のゼータ電位の分布幅を計測する段階と、起泡液により形成される泡を構成する包囲膜の内面に及ぶことにより、抑泡および破泡が可能なように、計測したゼータ電位の分布幅が、起泡液に応じて設定される閾値以上とすることにより、起泡液中での消泡剤の分散性を確保するとともに、起泡液に応じて消泡性能を安定的に再現よく発揮することが可能にするものである。
また、計測したゼータ電位の分布幅が、起泡液に応じて設定される閾値以上となるまで、前記選択段階および/または前記調整段階、および前記計測段階を繰り返すことにより、起泡液に応じた要求性能を具備した消泡剤を製造するための試行錯誤の負担を軽減するものである。
以下に本発明のシリコーン消泡剤組成物およびその製造方法の詳細を説明する。
なお、本発明の場合、コンパウンドの形態で起泡液に添加し消泡する場合と、コンパウンドをエマルジョン化してから起泡液に添加し消泡する場合の双方を対象にしている。両方の場合に対しての発明を実施するための形態について以下記述する。
本発明のシリコーン消泡剤組成物は、シリコーンを必須成分とする油分とシリカからなるコンパウンド、または、そのコンパウンドをエマルジョン化したものである。コンパウンドの場合は、直接起泡液に添加するか、適宜水分散液としてから添加する。エマルジョンの場合は、そのまま起泡液に添加するか、適宜水で希釈してから添加する。
シリコーンは、平均組成式が一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。化学構造は直鎖状でも分岐状でもよいが、オイル状である必要がある。
SiO(4-a)/2 (1)
式(1)中、Rは、分子中で同一であっても異なっていてもよく、置換もしくは非置換の炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6~30の芳香族基、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基または水素原子基である。
上記の有機基は、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基;-CH-CH-CH-N、-CH-CH-CH-NH(CH)、-CH-CH-CH-N(CH、-CH-CH-NH-CH-CH-NH、-CH-CH-CH-NH(CH)、-CH-CH-CH-NH-CH-CH-NH、-CH-CH-CH-NH-CH-CH-N(CH、-CH-CH-CH-NH-CH-CH-NH(CHCH)、-CH-CH-CH-NH-CH-CH-N(CHCH、-CH-CH-CH-NH-CH-CH-NH(cyclo-C11)で表される窒素含有炭化水素基;炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基等によって置換されたクロロメチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、クロロフェニル基、ジブロモフェニル基、テトラクロロフェニル基、ジフルオロフェニル基、β-シアノエチル基、γ-シアノプロピル基、β-シアノプロピル基等の置換炭化水素基等が挙げられる。特に好ましい有機基はメチル基、-CH-CH-CH-NH-CH-CH-NH基、フェニル基である。
aはシロキサン結合の次数と関係する数値であり、aが2.0であれば直鎖のオルガノポリシロキサンを示す。aは1.9≦a≦2.2、好ましくは1.95≦a≦2.15の正数である。aが1.9未満では、オルガノポリシロキサンの粘度が低過ぎるので、起泡液中でシリコーン成分とシリカ成分の分離が起こりがちになるので、消泡持続性が劣り、2.2を超えると、泡膜の界面張力低下作用が十分でないので、初期消泡性が劣り適さない。
また、オルガノポリシロキサンは単一の成分でも、2種以上の成分の混合でも、いずれでもよい。
オルガノポリシロキサンの25℃での粘度は、1~2000000mPa・sが好ましい。より好ましくは1~100000mPa・s、特に好ましくは1~50000mPa・sの範囲内である。1mPa・s未満、または2000000mPa・sを超えると、コンパウンドの場合は起泡液中で安定的に分散できず、エマルジョンの場合は、乳化が難しく、安定なエマルジョンが得られない。
このオルガノポリシロキサンの構造は、上記の条件内にさえあれば、どのようなものでもよいが、入手の容易性や経済性、化学的安定性の観点からは、全Rの80モル%以上、特に90%モル%以上がメチル基であることが好ましい。
本発明のシリコーン消泡剤組成物に用いる油分としては、シリコーンは必須成分であるが、シリコーンの他に有機物のオイルを混合したものを用いても構わない。流動性を示すオイルであって、シリコーンと相溶するものであれば、種類は問わない。各種鉱物油、合成油、植物油等が例示される。起泡液の使用分野により最適なオイルの種類を選択する。例えば、食品の分野であれば人体に影響の少ない植物油を使用するなどである。有機物のオイルの種類は1種であっても2種以上のものを併用するのでも、どちらでも構わない。
シリコーンと有機物のオイルとの使用割合は限定されないが、シリコーンの割合が50質量%以上であることが好ましい。50質量%未満だと、シリコーンによる界面張力の低下効果を十分に得られないからである。
本発明のシリコーン消泡剤組成物においては、シリカは必須成分である。シリコーンを必須成分とする油分とともに複合粒子として起泡液中に分散する必要があることから、シリカは粒子状である必要がある。
シリカ粒子は、合成法によって製造される二酸化ケイ素の粒子であって、珪藻土や結晶石英のような鉱物系のシリカは含まれない。合成法によって製造される二酸化ケイ素として、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、溶融シリカ等の乾式法による微紛、湿式法による沈降シリカまたはコロイダルシリカを挙げることができる。これらは当業者には公知のものである。これらの中では、焼成シリカ、沈降性シリカあるいはコロイダルシリカを用いることが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。本発明に用いるシリカ粒子は、表面のシラノール基が残留した親水性シリカであっても、表面のシラノール基をシリル化した疎水性シリカであってもよい。疎水性シリカは、親水性シリカを、メチルトリクロロシランのようなハロゲン化有機ケイ素やジメチルジアルコキシシランのようなアルコキシシラン類、シラザン、低分子量のメチルポリシロキサンで処理する公知の方法によって製造することができる。
シリカ粒子は、塊状ではなく粒子状である必要がある。また、一次粒子が凝集した一次凝集物の状態、あるいは、さらに一次凝集物が凝集した二次凝集物の状態であってもよい。
本発明は、予め起泡液に添加しておくタイプで、シリコーンを必須成分とする油分とシリカからなるコンパウンド、またはそれをエマルジョン化させたものを消泡剤として使用するに当たり、良好な消泡性能を示す指標として、本発明のシリコーン消泡剤組成物による油分とシリカからなる複合粒子のゼータ電位を取り上げる。
ゼータ電位とは、液中で分散体とともに移動する液面(滑り面)における電位のことであり、分散体の荷電状態の指標として一般的に用いられている。例えば、2つの分散体粒子が同符号かつ十分絶対値の大きいゼータ電子を持つ場合は、静電反発によって衝突が避けられるため凝集しない。近年は、板や繊維にもゼータ電位の概念を拡張することが試みられており、例えば、非処理剤である金属板と分散体が異符号あるいは同符号だが絶対値の小さいゼータ電位を持つ場合、分散体が非処理剤に吸着しやすい。
ゼータ電位は、シリカの水分散体中におけるシリカの分散安定性をある程度示せる指標として用いられてきた。その水分散液のゼータ電位の分布幅が狭いほど分散安定性がよいとされてきた。ゼータ電位の分布幅が狭いのは同符号で同様の電位を示すシリカ粒子が多いことを意味し、シリカ粒子同士が凝集しにくいため分散安定性がよいと考えられている。
このように、従来はゼータ電位というものは、粒子の水分散体などにおいて粒子の安定性や凝集性の指標として用いられてきたのに対し、本発明では複合粒子による消泡性能の指標としても使えるという、驚くべき発見をしたものである。
本発明のシリコーン消泡剤組成物の複合粒子群が泡膜の界面に存在する場合に消泡するメカニズムは、Ross理論等で説明できる。すなわち、シリコーンによる泡膜の低界面張力化とシリカ粒子によるピンホール効果またはニードル効果により消泡する。しかし、シリコーン消泡剤の複合粒子が泡膜の界面に近づいている状態となるための要件の解明ができていなかった。
本発明のシリコーン消泡剤組成物の複合粒子群が、水中または起泡液中で分散している場合、複合粒子表面には、その組成および/または形態の違いにより決定される様々な電位が生成している。符号の違いを含め、1つの複合粒子内および複合粒子間には電位のばらつきが生ずる。また、その状況は時間的にも刻々と変化する。異なる複合粒子間において、符号の異なる電位が存在する地点同士は引き合う。同符号同士の地点間においては、反発する場合もあるが、反発しない程度に近づく場合もあり得る。粒子は対流やブラウン運動によって常に動いており、粒子内も高粘度ではあっても流体の範疇であるため、化学構造も常に動いているので、複合粒子内および複合粒子間での電位の分布は常に流動的である。よって、複合粒子間では引き合う部分と離れる部分が混在し、常に変化している状況である。
従って、本発明のシリコーン消泡剤組成物の複合粒子群が、水中または起泡液中で分散している場合は、複合粒子群として安定性を確保している一方で、どれかの複合粒子においては他の複合粒子または他の物質との間で電位的に近づき得るチャンネルを持っているということができる。
一方、起泡液における個々の泡粒の内界面の電位は、場所ごとに全く不均一である。また、起泡液からの泡形成開始から泡形成完了までの過渡的状況においては、場所ごとの電位の分布は時間的にも刻々と変わっていく。そうした状態で、本発明のシリコーン消泡剤組成物の複合粒子が有効に消泡作用を発揮するには、泡形成開始の際、複合粒子群の起泡液中での分散性を確保することにより、複合粒子群のいずれかの複合粒子が泡の内部に存在する状況を創出しやすくするとともに、起泡液により形成される泡を構成する包囲膜の内面にシリコーン消泡剤組成物の複合粒子が及ぶようにさせる必要がある。
本発明のシリコーン消泡剤組成物の複合粒子群と起泡液により形成される泡を構成する包囲膜との間にも、電位的な作用により互いに近づき得る地点が存在する可能性がある。もし、複合粒子群のうちのどれかの複合粒子のチャンネルの電位と、泡を構成する包囲膜の内面のどこかの電位の関係が最適化されれば、複合粒子が包囲膜の内面に及び、シリコーンによる泡膜の低界面張力化および/またはシリカ粒子によるピンホール効果またはニードル効果により消泡することができる。従って、シリコーン消泡剤組成物の複合粒子の側としては、このような最適化が起こるための電位的なチャンネルが多彩であることが消泡作用を示す確率が高くなる。
以上の関係をゼータ電位の観点から論ずると次のようになる。すなわち、泡の包囲膜の内面のゼータ電位は、起泡液の種類、および泡形成開始から形成完了までの過渡的状態に応じて、条件は変わる。
このような状況の中で消泡効果を高めるためには、シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の分布幅を広くすることが有効であることを、本発明において見出した。泡の包囲膜の内面の状況がばらつき、複合粒子の表面の状況もばらつく中、ばらつきとばらつきの中でどこかで消泡効果が発揮される最適点が現れるためである。
消泡を行いたい起泡液の種類や泡の状況により、泡の内面の電位の符号や分布状況が違うので、それに最も適した最頻度ゼータ電位やゼータ電位分布をもつ複合粒子を適用するのが最も消泡効果が高くなるはずではあるが、本発明では、それらの状況にはよらずに、複合粒子のゼータ電位の分布幅が広いことで、消泡効果が上がることを見出した。ただし、所与の起泡液に対しての所定の消泡効果を上げるためには、複合粒子のゼータ電位の下限の閾値は、個別具体的に設定する方が好ましい。
シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の分布幅のみならず、分布の形状やピーク高さも消泡性能に与える影響がある可能性はあるが、現状では分かっていない。現状では、ゼータ電位分布ピークの全体面積におけるピーク裾の両端をそれぞれ0%、100%とした場合、10%の地点と90%の地点の幅を分布幅と定義することが有効であると推定している。一定の存在確率以上の消泡のためのチャンネルが存在するに足るゼータ電位の分布幅と捉えている。
また、ゼータ電位の分布のピークが2以上に分かれている場合は、本発明で扱うゼータ電位の分布幅としての対象としては適当ではないと推定している。ピークが1つである場合の方が、ゼータ電位の分布幅が消泡性能へ与える影響が、より関連性が高いと推定している。ただし、ピークに肩を持つ場合は1ピークとして定義する。
シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の分布幅が高くなるほど、起泡液中での分散安定性は低下する。本発明では、ゼータ電位の分布幅には一定の上限値を設定することにより、複合粒子の起泡液中での分散安定性を確保できる。
従来の予め起泡液に入れておくタイプのシリコーンとシリカによる複合粒子の消泡剤においては、分散安定性が必ずしも十分でなかったり、製造処方またはバッチ毎に分散安定性がばらつくことが多かった。それに対し、本発明のシリコーン消泡剤組成物の複合粒子群は、分散安定性が確保されているので、破泡性に加えて抑泡性も十分に発揮でき、しかも安定的に発揮できる。このように、抑泡性と破泡性の双方の機能を発揮することができるため、初期消泡性と消泡持続性の双方を発揮することができる。
ただし、起泡液の外部から投入するタイプの消泡剤に比べ、消泡剤の分散安定性がより重要視されることから、初期消泡性よりも消泡持続性に特徴がある。
本発明のシリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位を把握するに当たっては、コンパウンド形態の場合は、適宜界面活性剤等を用い水に分散させて計測し、エマルジョン形態の場合は、適宜水で希釈等をして計測する。いずれも、複合粒子が起泡液の中で分散している状態を模してゼータ電位を計測するものである。
シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の分布幅は、複合粒子の一個の粒子内および/または粒子間での組成的・形態的不均一性で決まる。組成的不均一性、形態的不均一性のそれぞれが大きくなるに従い、複合粒子のゼータ電位の分布幅が広くなる。組成的不均一性、形態的不均一性の両方が大きくなれば、ゼータ電位の分布幅がさらに広くなる。
複合粒子のゼータ電位の分布幅が広くするために、組成的不均一性、形態的不均一性を大きくする具体的な方法を以下に述べる。
シリコーン消泡剤組成物において、油分のみでなくシリカを用いた複合粒子とすること、すなわち、シリカ粒子を用いることがゼータ電位の分布幅が広くなる。また、シリコーンを主成分とする油分、および、シリカの種類の多さと形態のバリエーションがゼータ電位の分布幅を広げる。
組成的不均一性を大きくする具体的方法としては、下記が挙げられる。
使用するシリカ粒子の種類が多いほど、組成的不均一性が大きくなり、ゼータ電位の分布幅が広くなる。使用するシリコーン成分の種類が多いほど、組成的不均一性が大きくなり、ゼータ電位の分布幅が広くなる。油分として、シリコーン成分以外に、有機系オイルを併用すると、組成的不均一性が大きくなり、ゼータ電位の分布幅が広くなる。さらに、有機系オイルの種類が多いほど、組成的不均一性が大きくなり、ゼータ電位の分布幅が広くなる。
形態的不均一性を大きくする具体的な方法としては、以下が挙げられる。油分に対するシリカ粒子の質量割合が多いほど、複合粒子1粒内および複合粒子間の形態的不均一性が大きくなり、ゼータ電位の分布幅が広くなる。使用するシリカ粒子の種類が多いほど、複合粒子1粒内および複合粒子間の形態的不均一性が大きくなり、ゼータ電位の分布幅が広くなる。
シリコーン消泡剤組成物がエマルジョン形態の場合は、エマルジョン製造時のせん断速度が小さいほど、複合粒子1粒内および複合粒子間の形態的不均一性が大きくなり、ゼータ電位の分布幅が広くなる。
シリコーン消泡剤組成物の複合粒子を予め起泡液に分散させておく場合において、目的の初期消泡性を得るには、ゼータ電位の分布幅を起泡液に応じて設定することによりなされる。より具体的には、起泡液の種類やイオン性物質等の溶解物の種類や濃度、液性や泡の性状などの状態に応じて設定される閾値以上にゼータ電位の分布幅がなるようにすることによりなされる。ゼータ電位の分布幅が所定の閾値以上になるように組成を組み、製造条件等を最適化させて複合粒子の形態不均一性を所望の状態にさせる。
シリコーン消泡剤組成物がエマルジョン形態の場合は、製造の過程でゼータ電位の分布幅をチェックする段階を設け、所定の閾値に満たない場合は、リワークを行い、せん断速度その他の工程要素を最適化させて、ゼータ電位の分布幅が所定の閾値以上になるまで、チェックとリワークを繰り返すことで、確実に目的の初期消泡性を得ることができる。
これまで産業界では、ゼータ電位の分布幅が広い方がよく、しかもそれをコントロールするという考え方は存在しなかった。
ゼータ電位の分布幅の制御が有効なのは消泡剤に限ったことではないが、泡膜の電位が均質ではないことと、過渡的状況に対して特に有効であることから、消泡剤が最も好適である。
一方、消泡持続性としては、シリコーン消泡剤の複合粒子の安定性と分散性を保ちつつ、時間の変化に伴う泡膜の内面の電位の変化にも対応することが必要である。そのためには、複合粒子は様々な表面電位を有する、すなわちゼータ電位の分布幅が広い、ことが必要である。すなわち、ゼータ電位の分布幅が広いことにより、一旦消泡性能から外れた複合粒子が、再利用されることより、消泡持続性が得られる。よって、シリコーン消泡剤のゼータ電位の分布幅が広いことにより、初期消泡性能と消泡持続性能の双方が改良される。
シリコーン消泡剤組成物の分散粒子のゼータ電位の分布幅が広いことは、初期消泡性および消泡持続性が高くなる。しかし、起泡液中での複合粒子の分散安定性、および、シリコーン消泡剤組成物がエマルジョン形態である場合は、エマルジョン中での複合粒子の分散安定性は、複合粒子のゼータ電位の分布幅が広くなるほど低下する。ゼータ電位の分布幅が広いほど、複合粒子間が引き合う、すなわち凝集する機会が増えるためである。
起泡液の泡膜の電位は時々刻々と変わるので、シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のいろんなチャンネルを使えることが重要である。そのためには、複合粒子の起泡液中での分散安定的分散が必要である。したがって、初期消泡性と消泡持続性を両立させるためには、目的に応じて、所定のゼータ電位の分布幅の上限値を設定する必要がある。
シリコーン消泡剤組成物がエマルジョン形態の場合、エマルジョンとしての安定性を確保する場合は、上述の理由で、所定のゼータ電位の分布幅の上限値を設定する必要がある。同様に、起泡液中での複合粒子の分散安定性を重視する場合においても、所定のゼータ電位の分布幅の上限値を設定することが好ましい。
上述したシリコーン消泡剤の複合粒子のゼータ電位の分布幅を広くするための組成的不均一性および形態的不均一性のうち、主に形態的不均一性への寄与が大きいシリカ粒子については、シリコーン消泡剤組成物における油分に対するシリカの質量比が大きいほど、初期消泡性が高くなる。ただし、消泡持続性と両立させる場合、または、エマルジョンの粒子の分散安定性を確保する場合は、複合粒子のゼータ電位との兼ね合いから、油分に対するシリカの質量比には所定の上限値を設ける必要がある。
本発明においては、起泡液の泡形成開始から泡形成完了までの過渡的状態に応じて、消泡すべき泡の条件は変わるところ、泡形成開始の際、複合粒子群の起泡液中での分散性を確保することにより、複合粒子群のいずれかの複合粒子が泡の内部に存在する状況を創出しやすくするとともに、複合粒子が泡の包囲膜の内面に及び、泡膜の界面張力低下による抑泡およびピンホール効果またはニードル効果による破泡の両面から消泡するのが可能となるように、起泡液に応じて、複合粒子群のゼータ電位について、その分布の幅を設定するものである。
過渡的な状況においては、ゼータ電位の分布幅を決めるのは組成的不均一性と形態的不均一性のどちらが支配的なのかについては、時間的、場所的な条件により異なると考えられる。また、組成的不均一性と形態的不均一性のどちらかが優勢なことにより、消泡が抑泡主体なのか破泡主体なのかに影響をあたえるものと推定できる。そのため、シリコーン消泡剤組成物の例えば、シリカの量比、エマルジョン作製時のせん断速度という2つの要素の使い分けにより、抑泡主体か破泡主体かをある程度制御できる。
コンパウンドまたはエマルジョン以外の形態のシリコーン消泡剤のいずれにおいても、起泡液中での同様な振る舞いから消泡性能を上げることになると考えられるので、粒子のゼータ電位の関係は理論的には成り立つはずである。しかし、これらの消泡剤は、ゼータ電位を計測するための水分散状態を作ることが難しい。よって、本発明ではシリコーン消泡剤組成物はコンパウンドまたはエマルジョン形態に対象を限るものとした。
本発明に鑑みたシリコーン消泡剤組成物の開発の手順を述べる。
1.用途や起泡液の種類に応じて、使えるシリコーンオイルの粘度、有機オイルの種類等の制約を確認する。
2.シリコーンオイル、シリカ、有機オイルのそれぞれの種類をなるべく増やし、シリカの量もなるべく増やした組成を検討する。(複合粒子のゼータ電位をなるべく広くさせる)
3.消泡剤組成物がエマルジョン形態の場合は、エマルジョン製造時のせん断速度をなるべく下げた製造方法を検討する。(複合粒子のゼータ電位をなるべく広くさせる)
4.用途、目的により、必要な初期消泡性、消泡持続性、分散安定性のバランスを取るように、2、3の条件を最適化させる。
上述の開発の手順により開発されたシリコーン消泡剤組成物を製造する時の手順を述べる。
起泡液の種類に応じて、油分成分およびシリカ成分それぞれの種類および/または量を選択する段階と、選択した油分成分およびシリカ成分を混合し、油分とシリカとの複合粒子を含むシリコーン消泡剤組成物を調製する段階と、生成したシリコーン消泡剤組成物をサンプリングし、複合粒子のゼータ電位の分布幅を計測する段階と、起泡液からの泡形成開始から泡形成完了までの過渡的状態において泡形成を抑制するように、計測したゼータ電位の分布幅が、起泡液に応じて設定される閾値以上となるまで、該選択段階および/または該調整段階、および該計測段階を繰り返す。
シリコーン消泡剤組成物がコンパウンド形態の場合は、水分散の状態でゼータ電位を計測し、エマルジョン形態の場合は、エマルジョン作製時に所定せん断速度でせん断することにより、シリコーン消泡剤組成物を調製し、エマルジョンの形態でゼータ電位を計測する。
油分とシリカを混練し、コンパウンドとするには、例えばゲートミキサー、ニーダー、加圧ニーダー、二軸混練基、インテンシブミキサー等の混練機を使用することができる。適宜、時間、温度をかけ、複合粒子とした場合に1粒子内、および粒子間での十分な組成不均一性、形態不均一性が出現するような条件を選ぶ。場合により、油分とシリカの間に化学結合が形成する方法を選んでもよい。
油分に対するシリカの質量比は、複合粒子のゼータ電位の分布幅に影響を与える因子である。好ましい質量比の範囲は、起泡液の種類や目標とする消泡性能にもよるが、油分100質量部に対するシリカの質量部は、0.5質量部以上、かつ、40質量部以下であることが好ましい。0.5質量部未満だと、ゼータ電位の分布幅が十分に広くなく十分な消泡性能が得られない。また、40質量部を超えると、初期消泡性と消泡持続性との両立が難しく、消泡剤がエマルジョン形態の場合は、エマルジョンとしての安定性が低下する、例えば粒子が沈降する、などの問題が生じる。さらに好ましくは、1質量部以上、かつ、30質量部以下の範囲である。
シリコーン消泡剤組成物がエマルジョン形態の場合は、エマルジョン100質量部中における油分の好ましい含有量は、1質量部以上、かつ、90質量部以下の範囲内である。1質量部未満では十分な乳化精度が得られず、かつ収率も低下し、90質量部を超えると、水性エマルジョンの粘度が高くなり取り扱い性が悪くなる。より好ましくは、2質量部以上、かつ、70質量部以下の範囲内である。
上記コンパウンドをエマルジョンとするに際しては、公知の方法を用いることができる。乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキレン変性オルガノポリシロキサンを用いて自己乳化型のエマルジョンとしてもよいし、非イオン性界面活性剤を用いて通常のエマルジョンとしてもよい。アニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤を用いると、これらイオン性界面活性剤で包まれた消泡剤組成物表面の電荷が一様になり、本発明にあるような分布幅の広いゼータ電位は得られず、一部の泡に対してのみ強い消泡性能を示すようになる。従って、非イオン性界面活性剤を用いることは本発明を実現する上で非常に好ましい。
ポリオキシエチレンアルキレン変性オルガノポリシロキサンを用いて自己乳化型消泡剤組成物とする場合、ポリオキシエチレンアルキレン変性オルガノポリシロキサンの使用量はエマルジョン100質量部中で1質量部以上、かつ、30質量部以下であることが好ましくい。1質量部未満だと、乳化が十分行えず、30質量部を超えるとゼータ電位の分布幅を広くする方向でなくなるからである。より好ましくは、2質量部以上、かつ、20質量部以下である。
非イオン性界面活性剤を用いて通常のエマルジョンとする場合、非イオン性界面活性剤の使用量はエマルジョン100質量部中で1質量部以上、かつ、30質量部以下であることが好ましくい。1質量部未満だと、乳化が十分行えず、30質量部を超えるとゼータ電位の分布幅を広くする方向でなくなるからである。より好ましくは、2質量部以上、かつ、20質量部以下である。
上記ポリオキシエチレンアルキレン変性オルガノポリシロキサンまたは非イオン性界面活性剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよいが、合計の含有量がエマルジョン100質量部中で1質量部以上、かつ、50質量部以下であることが好ましくい。1質量部未満だと、乳化が十分行えず、50質量部を超えるとゼータ電位の分布幅を広くする方向でなくなるからである。より好ましくは、2質量部以上、かつ、30質量部以下である。
本発明のエマルジョン形態でのシリコーン消泡剤組成物の作製方法は、上記の方法の範囲内であれば特に限定されないが、公知の方法で作製することができる。例えば、エマルジョンの作製に適当な常用の混合機、例えばホモジナイザー、コロイドミル、ホモミキサー、高速ステーターローター攪拌装置等を用いて上記成分を混合、乳化することにより作製することができる。
エマルジョン作製時に複合粒子にかかるせん断速度は、5,000s-1以上、かつ、100,000s-1以下が好ましい。せん断速度が5,000s-1未満だと、エマルジョン粒子の分散安定性が劣り、粒子が沈降しやすくなったり、消泡持続性が不十分となりやすい。また、100,000s-1を超えると、複合粒子内および/または複合粒子間の組成面および/または形態面のばらつきが小さくなり過ぎるので、ゼータ電位の分布幅が狭くなり、十分な消泡性能が出ない。より好ましくは、7,000s-1以上、かつ、50,000s-1以下である。
本発明のエマルジョン形態でのシリコーン消泡剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステルなどのノニオン性界面活性剤、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム等のイオン性界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤量としては、エマルジョン100質量部中、50質量部以下が好ましくより好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、環境に悪影響を与えるほか、シリカ粒子の凝集力が低下し、製品の保存安定性および希釈時の取り扱い性を損なう。
本発明のエマルジョン形態でのシリコーン消泡剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、防腐剤として、サリチル酸,安息香酸ナトリウム,デヒドロ酢酸ナトリウム,ソルビン酸カリウム,フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチルを含んでもよい。
さらに本発明の同組成物には本発明の趣旨に反しない限り他の添加物を添加することができる。例えば、pH調整剤、着色剤、酸化防止剤、消臭剤、架橋剤、各種触媒、乳化安定剤、各種有機溶剤、キレート剤などを添加することができる。
本発明のエマルジョン形態でのシリコーン消泡剤組成物に用いる水の種類は、特に限定されないが、イオン交換水を用いることが好ましく、好ましくはpH2~12、より好ましくはpH4~10の範囲内のイオン交換水を用いる。
本発明のエマルジョン形態でのシリコーン消泡剤組成物におけるエマルジョン粒子の粒径は0.1μm以上、かつ、1000μm以下の範囲内が好ましくい。0.1μm未満だと十分な消泡性能を発揮することができず、1000μmを超えると粒子沈降性などの問題が生じる。0.5μm以上、かつ、500μm以下の範囲内がより好ましくい。なお、本発明において、平均粒径は、一例として、コールター社製、粒度分布測定装置N4Plusにより測定することができる。
以上により、本発明のエマルジョン形態でのシリコーン消泡剤組成物は、シリコーンを必須成分とする油分およびシリカ粒子により、またその製法により、安定的に粒子径のコントロールができ、粒子径のばらつきを狭くすることができるので、保存安定性や用途展開時の安定性が高まる。
本発明によるシリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位は、いかなる方式や装置で計測したものでも、消泡性能や安定性にとって同様の傾向を示す。ただし、ゼータ電位の計測における水分散液中の複合粒子の濃度については、適正な値が得られる範囲が存在する。複合粒子の水分散液中における濃度は10ppm以上、かつ、50,000ppm(5%)以下が好ましい。10ppm未満でも、50,000ppm(5%)を超えても適正な値が出ない可能性がある。そのため、シリコーン消泡剤組成物がエマルジョン形態の場合は、当該好ましい複合粒子濃度になるように、水で希釈または濃縮を行う。また、コンパウンド形態の場合は、当該濃度にて水中に分散させる。必要に応じ、適宜界面活性剤等を用いて分散させる。
また、ゼータ電位を計測する水分散液のpHもゼータ電位に測定結果に影響を与える。泡液のpHが予め分かっている場合は、そのpHに合わせてゼータ電位を計測するなどのこともできる。ゼータ電位の比較は、同じpH下で比較することに意味がある。
本発明によるシリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の好ましい分布幅は、起泡液の種類や目的の消泡性能などによって絶対値は変わってくるが、最も一般的には、下記のような好ましい範囲が存在する。すなわち、レーザー・ドップラー電気泳動法を用い、計測する水分散液のpHを7とした場合で測定したゼータ電位の累積相対度数分布において、積分値10%と積分値90%との差が6mV以上、かつ、60mV以下であることが好ましい。6mV未満だと、初期消泡性が十分でなく、60mVを超えると、初期消泡性と消泡持続性の両立が難しくなり、消泡剤がエマルジョン形態の場合は、粒子の分散安定性が低下する。より好ましくは、10mV以上、かつ、40mV以下である。
上述のように、シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の分布幅の設定により、初期消泡性を重視するのか、初期消泡性と消泡持続性の両立を重視するのか、あるいは、エマルジョンの製品としての安定性を重視するのかを、用途に応じて使い分けることができる。例えば、泡の高さの許容範囲や、起泡液が入った容器の形状によってこれらの優先順位が変る。用途の一例としては、廃液を狭くて深いプールに溜め、頻繁に廃液を交換することが多く泡が溢れやすい場合は、初期消泡性が重要視され、広くて浅いプールを用いるため泡は溢れにくく、長期間置いておく場合は、初期消泡性と消泡持続性の両立が要求される、などが挙げられる。
また、抑泡を主体的に起こさせるのか、あるいは破泡を主体的に起こさせるのかについても、用途に応じてある程度使い分けることができる。上述した組成的不均一性と形態的不均一性のバランスを用途に応じ設定することによる。例えば、泡が少しでも立っては困る用途では、抑泡を主体的に起こさせるために組成的不均一性の寄与を大きくし、泡が立つこと自体は構わないが、ある程度の成長段階で破泡してそれ以上成長しないことでよい用途では、形態的不均一性の寄与を大きくする。
本発明のシリコーン消泡剤組成物およびその製造方法は、化学工業、食品工業、石油工業、製糸工業、織物工業、医薬品工業等の発泡を伴うあらゆる工程において有効に作用する。これまで、試行錯誤の度合いが大きかった消泡剤の製品開発、製品製造において、本発明により、消泡性能が予測可能となり、消泡性能が高くて安定的な消泡性能を示す消泡剤およびその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明のシリコーン消泡剤組成物は、用途や目的に応じて、初期消泡性と消泡持続性とのバランス、消泡性能と分散安定性とのバランスを調整できることが期待できる。
また、用途や目的に応じて、抑泡と破泡のどちらを支配的に起こさせるかについても制御できる可能性が期待できる。
次に本発明を実施例によって説明する。なお、本発明はこれによって限定されるものではない。また、実施例、比較例におけるゼータ電位計測方法、消泡性能評価方法、分散安定性評価は、以下のようにして行った。
なお、性能評価試験において、一部でも不合格の結果を有するものは、比較例として記載する。
<ゼータ電位計測方法>
シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位を計測するに当たっては、イオン交換水によって2倍希釈した中性りん酸塩緩衝液中に複合粒子の濃度を10~100ppmの範囲内に設定した水分散液を調製した。シリコーン消泡剤組成物がコンパウンド形態の場合は、界面活性剤を用いて20,000s-1のせん断速度で分散させ、エマルジョン形態の場合は、複合粒子の濃度が所定範囲に入るように、水で希釈するか、あるいは濃縮することによって調製した。いずれの場合も、水分散液のpHは7に調整した。
ゼータ電位の計測は、マルバーン社製Nano-ZS90型機を使用し、レーザー・ドップラー電気泳動法で実施した。計測は25℃で行った。
ゼータ電位の累積相対度数分布において、積分値10%と積分値90%との差をもってゼータ電位の分布幅とした。
<分散安定性評価方法>
シリコーン消泡剤組成物の複合粒子の分散安定性を評価するに当たっては、イオン交換水中に複合粒子の濃度を1質量%に設定した水分散液を調製した。シリコーン消泡剤組成物がコンパウンド形態の場合は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤を適宜用いて分散させ、エマルジョン形態の場合は、複合粒子の濃度が所定範囲に入るように、水で希釈するか、あるいは濃縮することによって調製した。
調製した水分散液を50mlスクリュー管に30g入れ、25℃で貯蔵1か月後に、クリーミング、沈降分離の有無を確認した。
評価基準;
○:クリーミング、沈降分離なし、△:クリーミング、沈降分離の傾向あり、×:クリーミング、沈降分離あり。
〇または△を合格とする。
<消泡性能評価方法>
イオン交換水に起泡液を1.5質量%投入し、さらにシリコーン消泡剤組成物を添加して試験起泡液を調製した。この際、試験起泡液中における複合粒子の濃度は100ppmになるように調整した。シリコーン消泡剤組成物がコンパウンド形態の場合は、適宜界面活性剤を用いて分散させた。
この試験起泡液100mlを口径50mmの500mlメスシリンダーに入れ、木下ガラスボールフィルター504G-1を使用してエアンプで空気を1.5L/分の流量で送り込み泡立てた。空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積を記録し、初期消泡性を評価した。
起泡液としては、起泡液1として、アルキルエーテル硫酸塩、起泡液2として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、の2種類を用意し、評価に付した。
初期消泡性の評価基準;
10秒後の泡の体積により5段階の評価基準を設けた。3以上を合格とする。
5:10ml未満、4:10ml以上かつ100ml未満、3:100ml以上かつ200ml未満、2:200ml以上かつ300ml未満、1:300ml以上
消泡持続性の評価は、上記の初期消泡性を評価した後に、そのままの状態でさらに同じ条件で空気の送り込みを20分続け、20分経過時点での泡の体積を記録し、上記と同様の評価方法により消泡性能を評価した。
消泡持続性の評価基準;
20分後の泡の体積により5段階の評価基準を設けた。3以上を合格とする。
5:50ml未満、4:50ml以上かつ200ml未満、3:200ml以上かつ300ml未満、2:300ml以上で泡がシリンダー内に留まっている、1:泡がシリンダーから溢れる。
消泡性能の総合評価としては、初期消泡性、消泡持続性共に合格の場合を合格とする。
<実施例1>
以下に示す「部」は、特に明示しない限り全て質量に基づく。また、単位の%は、全てのシロキサン中のシロキサンの合計数に対して対応するシロキサン単位の割合を意味する。
(CHSiO2/2単位99.2%と(CHSiO1/2単位0.8%とからなり、ポリジメチルシロキサン単位全体の0.03%がケイ素原子修飾エトキシ基を有するポリジメチルシロキサン(シリコーンオイルAとする)100部と、BET表面積が200m/gである親水性フュームドシリカ(シリカ1とする)5.0部とをディスク型溶解機を使用して密接に混合した。この混合物を150℃で4時間加熱することでコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は18mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は45mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、10秒後に40mlだったので、評価は4であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は95mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に85mlだったので、評価は4であった。
以上のコンパウンド形態としてのシリコーン消泡剤組成物としての組成、ゼータ電位分布幅の計測結果、分散安定性、消泡性能結果を表1に示す。
次に、上記コンパウンドを、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを適宜用いて分散させ、エマルジョンを作製した。せん断速度は120,000s-1とした。生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は5.5mVだった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は220mlだったので、評価は2であり不合格となった。
そこで、せん断速度を20,000s-1に設定し直してリワークを行った。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は17mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は40mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、10秒後に35mlだったので、評価は4であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は90mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に80mlだったので、評価は4であった。
以上のエマルジョン形態としてのシリコーン消泡剤組成物としての組成、ゼータ電位分布幅の計測結果、分散安定性、消泡性能結果を表2に示す。ただし、せん断速度は最終リワーク時のものとし、分散安定性、消泡性能の評価結果は最終リワーク後のものとする。
<実施例2>
実施例1において、シリコーンオイルAを100質量部の代わりに、シリコーンオイルAを50質量部および(CHSiO2/2単位99.7%と(CHSiO1/2単位0.3%とからなり、ポリジメチルシロキサン単位全体の0.03%がケイ素原子修飾エトキシ基を有するポリジメチルシロキサン(シリコーンオイルBとする)を50質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は19mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は20mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、10秒後に9mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は85mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に70mlだったので、評価は4であった。
次に、上記コンパウンドを実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は18mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は20mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、10秒後に15mlだったので、評価は4であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は70mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に65mlだったので、評価は4であった。
<実施例3>
実施例1において、シリコーンオイルAを100質量部の代わりに、シリコーンオイルAを70質量部および鉱物油としてイソパラフィンを30質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は39mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は12mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、10秒後に5mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は55mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に52mlだったので、評価は4であった。
次に、上記コンパウンドを実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は37mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は13mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、10秒後に12mlだったので、評価は4であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は54mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に51mlだったので、評価は4であった。
<実施例4>
実施例1において、シリカ1を5.0質量部の代わりに、シリカ1を2.5質量部およびBET表面積が300m/gである親水性フュームドシリカ(シリカ2とする)を2.5質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は37mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は9mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に8mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は48mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、20分後に42mlだったので、評価は5であった。
次に、上記コンパウンドを実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は35mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は9mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に7mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は49mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、20分後に43mlだったので、評価は5であった。
<実施例5>
実施例1において、シリコーンオイルAを100質量部の代わりに、シリコーンオイルAを50質量部およびシリコーンオイルBを50質量部とし、シリカ1を5.0質量部の代わりに、シリカ1を2.5質量部およびシリカ2を2.5質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は39mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は9mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に8mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は55mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に52mlだったので、評価は4であった。
次に、上記コンパウンドを実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は37mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は8mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に8mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は54mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に53mlだったので、評価は4であった。
<実施例6>
実施例1において、シリカ1を5.0質量部の代わりに、1.0質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は7mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は160mlだったので、評価は3であった。起泡液2では、10秒後に155mlだったので、評価は3であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は270mlだったので、評価は3であった。起泡液2では、20分後に260mlだったので、評価は3であった。
次に、上記コンパウンドを実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は7mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は155mlだったので、評価は3であった。起泡液2では、10秒後に150mlだったので、評価は3であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は245mlだったので、評価は3であった。起泡液2では、20分後に240mlだったので、評価は3であった。
<実施例7>
実施例1において、シリカ1を5.0質量部の代わりに、30質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は55mVだった。
分散安定性の評価は、△であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は5mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に4mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は30mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、20分後に25mlだったので、評価は5であった。
次に、上記コンパウンドを実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は6mVだった。
分散安定性の評価は、△であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は5mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に3mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は30mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、20分後に28mlだったので、評価は5であった。
<実施例8>
実施例1で作製したコンパウンドを、実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は7,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は25mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は9mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に8mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は75mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に60mlだったので、評価は4であった。
<実施例9>
実施例1で作製したコンパウンドを、実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は50,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は12mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は130mlだったので、評価は3であった。起泡液2では、10秒後に115mlだったので、評価は3であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は185mlだったので、評価は4であった。起泡液2では、20分後に180mlだったので、評価は4であった。
<比較例1>
実施例1において、シリカ1を5.0質量部の代わりに、0.2質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は5mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は310mlだったので、評価は1であった。起泡液2では、10秒後に180mlだったので、評価は3であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点で泡がシリンダーから溢れたので、評価は1であった。起泡液2では、20分後に320mlだったので、評価は2であった。
次に、上記コンパウンドを実施例18と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は5mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は305mlだったので、評価は1であった。起泡液2では、10秒後に175mlだったので、評価は3であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点で泡がシリンダーから溢れたので、評価は1であった。起泡液2では、20分後に325mlだったので、評価は2であった。
よって、コンパウンド形態、エマルジョン形態共に、起泡液1では、初期消泡性、消泡持続性共に不合格であった。また、コンパウンド形態、エマルジョン形態共に、起泡液2では、初期消泡性は合格だったが、消泡持続性は不合格であった。
<比較例2>
実施例1において、シリカ1を5.0質量部の代わりに、50質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は70mVだった。
分散安定性の評価は、×であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は7mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に6mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点で泡がシリンダーから溢れたので、評価は1であった。起泡液2では、20分後に泡がシリンダーから溢れたので、評価は1であった。
次に、上記コンパウンドを実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は67mVだった。
分散安定性の評価は、×であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は7mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に7mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点で泡がシリンダーから溢れたので、評価は1であった。起泡液2では、20分後に泡がシリンダーから溢れたので、評価は1であった。
よって、コンパウンド形態、エマルジョン形態共に、起泡液1、起泡液2共に、初期消泡性は合格だったが、消泡持続性は不合格であった。
<比較例3>
実施例1において、シリコーンオイルAを100質量部の代わりに、シリコーンオイルAを35質量部、シリコーンオイルBを35質量部および鉱物油としてイソパラフィンを30質量部とする以外は、実施例1と同じ方法でコンパウンドを作製した。
上記コンパウンドのゼータ電位の分布幅は65mVだった。
分散安定性の評価は、×であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は9mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に8mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は330mlだったので、評価は2であった。起泡液2では、20分後に315mlだったので、評価は2であった。
次に、上記コンパウンドを実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は20,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は64mVだった。
分散安定性の評価は、×であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は9mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に8mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は325mlだったので、評価は2であった。起泡液2では、20分後に310mlだったので、評価は2であった。
よって、コンパウンド形態、エマルジョン形態共に、起泡液1、起泡液2共に、初期消泡性は合格だったが、消泡持続性は不合格であった。
<比較例4>
実施例1で作製したコンパウンドを、実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は3,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は55mVだった。
分散安定性の評価は、×であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は9mlだったので、評価は5であった。起泡液2では、10秒後に8mlだったので、評価は5であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点で泡がシリンダーから溢れたので、評価は1であった。起泡液2では、20分後に泡の体積は290mlだったので、評価は3であった。
よって、起泡液1では初期消泡性は合格だったが、消泡持続性は不合格であった。起泡液2では初期消泡性、消泡持続性共に合格であった。
<比較例5>
実施例1で作製したコンパウンドを、実施例1と同じ方法でエマルジョンを作製した。最終リワーク時のせん断速度は150,000s-1とした。
生成したエマルジョンのゼータ電位の分布幅は6mVだった。
分散安定性の評価は、〇であった。
初期消泡性の評価では、起泡液1では、空気の送り込み開始後10秒後の泡の体積は210mlだったので、評価は2であった。起泡液2では、10秒後に195mlだったので、評価は3であった。
消泡持続性の評価は、起泡液1では、20分経過時点での泡の体積は305mlだったので、評価は2であった。起泡液2では、20分後に275mlだったので、評価は3であった。
よって、起泡液1では初期消泡性、消泡持続性共に不合格であった。起泡液2では初期消泡性、消泡持続性共に合格であった。
Figure 0007144396000001
Figure 0007144396000002
表1、表2において、実施例と比較例から明らかなように、シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の分布幅は、油分および/またはシリカの種類が多いものほど広くなる傾向があった。また、油分に対するシリカの質量%が大きいほど広くなった。また、エマルジョンの作製時のせん断速度が小さいほど広くなった。
ゼータ電位が5mVだった比較例1においては、起泡液1においても起泡液2においても、消泡性の総合評価は不合格だった。ゼータ電位が6mVだった比較例5においては、起泡液1においては、消泡性の総合評価は不合格だったが、泡液2においては、合格だった。従って、ゼータ電位が7mVだった実施例6においては、起泡液1においても起泡液2においても、消泡性の総合評価は合格だった。
従って、シリコーン消泡剤組成物の複合粒子のゼータ電位の分布幅の下限の閾値は、起泡液1においては6mVと7mVの間に、起泡液2においては5mVと6mVの間に存在することが示された。
同様に、実施例7、比較例4、比較例3の結果から、ゼータ電位の分布幅の上限の閾値は、起泡液1においては54mVと55mVの間に、起泡液2においては55mVと64mVの間に存在することが示された。
このように、起泡液に応じたゼータ電位の分布幅の適当な範囲の違いが示された。
ただし、ゼータ電位の分布幅が50mVを超えると、消泡持続性が低下する傾向が見られ、複合粒子の分散安定性も低下した。
本発明のシリコーン消泡剤組成物およびその製造方法は、化学工業、食品工業、石油工業、製糸工業、織物工業、医薬品工業等の発泡を伴うあらゆる工程において有効に作用する。これまで、試行錯誤の度合いが大きかった消泡剤の製品開発、製品製造において、本発明により、消泡性能が予測可能となり、消泡性能が高くて安定的な消泡性能を示す消泡剤およびその製造方法を提供することができる。さらに、用途や目的に応じて、初期消泡性と消泡持続性とのバランス、消泡性能と分散安定性とのバランスを調製できることが期待できる。また、用途や目的に応じて、抑泡と破泡のどちらを支配的に起こさせるかについても制御できる可能性が期待できる。

Claims (1)

  1. 起泡液に対して予め添加しておくことにより消泡するタイプのシリコーン消泡剤組成物であって、
    シリコーンを必須成分とする油分とシリカとの複合粒子群を含み、
    下記のゼータ電位計測方法により得られる前記シリコーン消泡剤組成物の複合粒子群のゼータ電位の累積相対度数分布において、積分値10%と積分値90%との差が6mV以上、かつ、60mV以下であることを特徴とする、シリコーン消泡剤組成物。
    <ゼータ電位計測方法>
    前記シリコーン消泡剤組成物がコンパウンド形態の場合は、イオン交換水によって2倍希釈した中性りん酸塩緩衝液中に前記複合粒子の濃度が10~100ppmの範囲内となるように、前記シリコーン消泡剤組成物をポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いて、20,000s -1 のせん断速度で分散させ、水分散液を調整する。
    前記シリコーン消泡剤組成物がエマルジョン形態の場合は、前記複合粒子の濃度が10~100ppmの範囲内となるように、水で希釈するか、あるいは濃縮することにより、水分散液を調整する。
    レーザー・ドップラー電気泳動法を用い、pHを7とした前記水分散液のゼータ電位を測定する。
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