[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係る物体検知システム1を説明する。図1は、物体検知システム1の全体構成を模式的に示した図である。物体検知システム1は、鉄道車両11(専用路を走行する車両の一例)の走行中に、鉄道車両11の通過領域内に物体OBが存在する場合に、その物体OBを障害物として検知するシステムである。なお、ここでの物体OBは、車や人、落石や動物のように、ある程度以上の大きさがあり、通過領域内にあれば鉄道車両11の走行に影響を与える可能性のある物である。
鉄道車両11は、軌道12(専用路の一例)の上を走行する。鉄道車両11には、物体検知システム1を動作させるためのデータ処理装置21が搭載されている。鉄道車両11の走行方向の前側には、センサ22が設けられている。
軌道12の左側及び右側には、軌道12に沿って一定間隔で地上マーカ13A又は地上マーカ13B(以下、地上マーカ13Aと地上マーカ13Bを地上マーカ13と総称する)が設置されている。地上マーカ13の左右方向における設置位置は、建築限界PPの左右の端部の位置である。
建築限界PPは、法令等により定められている、軌道12周辺の構造物を設置してはならない範囲である。本実施形態では、鉄道車両11の通過領域として建築限界PPを用いるものとする。
地上マーカ13Aは軌道12が直線状となっている区間に設置され、地上マーカ13Bは、軌道12が曲線状となっている区間に設置されている。地上マーカ13Bの走行方向における設置の間隔は、地上マーカ13Aの走行方向における設置の間隔よりも短い。
図2は、物体検知システム1のハードウェア構成を示したブロック図である。データ処理装置21のハードウェアはコンピュータであり、プロセッサ211と、メモリ212と、インタフェース213を備える。
プロセッサ211は、メモリ212に記憶されているプログラムに従った処理を実行することによって、データ処理装置21の各部の動作を制御する。メモリ212は各種データを記憶する。インタフェース213は、センサ22、リーダ23、タコジェネレータ24、ブレーキ制御装置25と接続されており、これらの装置とプロセッサ211との間のデータの受け渡しを行う。
メモリ212には、鉄道車両11の異なる走行位置の各々における通過領域(本実施形態においては建築限界PP)の範囲を示す通過領域枠の情報を格納するデータベースである通過領域枠DBが記憶されている。
センサ22は、レーダ221、レーザ222、カメラ223を備えている。各々が地上マーカ13を検知可能であり、かつ、鉄道車両11の前方にある物体OBを検知可能である。
レーダ221は、前方に電波を発射し反射波を受信することにより、前方にある地上マーカ13及び物体OBを検知する。
レーザ222は、前方にレーザ光を照射し反射光を受光することにより、前方にある地上マーカ13及び物体OBを検知する。
カメラ223は、画像認識機能を備えるステレオカメラであり、前方を撮影した画像から地上マーカ13及び物体OBを検知する。
リーダ23(レシーバの一例)は、電波により地上マーカ13が有するICタグ133(後述)に対し送信要求を送信し、送信要求に応答してICタグ133が近距離無線により送信する走行位置IDを受信する。走行位置IDは、地上マーカ13の設置されている位置(走行位置)を識別する識別情報であり、地上マーカ13(基準物)を識別する役割も果たす。リーダ23は鉄道車両11が地上マーカ13の近傍を通過するときに、その地上マーカ13が有するICタグ133から送信された走行位置IDを受信する。
タコジェネレータ24は、鉄道車両11の走行に伴い車軸の回転により発電される電気の電圧が示す走行速度に時間を乗じた値を積算することにより、基準位置から走行距離を特定し、特定した走行距離を示すデータを出力する。データ処理装置21は、タコジェネレータ24からのデータに基づき、鉄道車両11の現在の走行位置を特定する。
ブレーキ制御装置25は、走行中の鉄道車両11のブレーキを制御することにより、鉄道車両11を減速、停止させる。
図3は、地上マーカ13Aと地上マーカ13Bの構成を示した図である。地上マーカ13A及び地上マーカ13Bは、センサ22により検知され、データ処理装置21が通過領域枠を設定する際に位置の基準として用いる基準物である。
図3(A)は、地上マーカ13Aの構成を示している。地上マーカ13Aは、円筒部131と、円筒部131の上に取り付けられた直角3面コーナ部132と、円筒部131の表面に取り付けられたICタグ133(基準物に配置されたタグの一例)を有する。円筒部131と直角3面コーナ部132の表面は、例えば白色の塗料で塗装されている。このため、センサ22が有するレーザ222及びカメラ223により検知されやすい。
レーダ221が発射する電波と、レーザ222が照射するレーザ光は、円筒部131と直角3面コーナ部132において反射する。直角3面コーナ部132は、直角に交差する3面に囲まれた凹部を有する形状をしている。なお、図3(A)においては、直角3面コーナ部132の形状を把握し易くするために、直角3面コーナ部132の上面が水平面に沿うような姿勢で直角3面コーナ部132が描かれているが、実際には、3面が接する頂点が鉄道車両11から見えるような姿勢で直角3面コーナ部132が円筒部131に取り付けられている。
直角3面コーナ部132は、指向性の高い反射特性を示す。地上マーカ13Aが鉄道車両11から遠い位置にある場合、鉄道車両11は直角3面コーナ部132の概ね正面方向に存在することになる。この場合、直角3面コーナ部132は鉄道車両11から発せられた電波とレーザ光を、鉄道車両11の方向に強く反射させることができる。一方、地上マーカ13Aが鉄道車両11から近い位置にある場合、鉄道車両11は直角3面コーナ部132の正面方向から外れた位置に存在することになる。この場合、直角3面コーナ部132は鉄道車両11から発せられた電波とレーザ光を、鉄道車両11の方向に強く反射させることができない。
円筒部131は、指向性の低い反射特性を示す。すなわち、円筒部131は電波やレーザ光の到達する方向にかかわらず、その送出源の方向に、ある程度の強さの反射波を生じる。ただし、円筒部131が生じる反射波は拡散するため、直角3面コーナ部132が生じる反射波と比較し、遠くまで到達しない。
従って、直角3面コーナ部132は遠い位置にいる鉄道車両11のセンサ22から検知され易く、円筒部131は近い位置にいる鉄道車両11のセンサ22から検知され易い。
ICタグ133は、リーダ23から送信される送信要求を受信し、送信要求に対する応答として、予め書き込まれている走行位置IDを送信する。リーダ23から送信される走行位置IDは、鉄道車両11が地上マーカ13Aの近傍を通過するときにリーダ23により受信される。
図2(B)は、地上マーカ13Bの構成を示している。地上マーカ13Bは、円筒部131と、円筒部131の表面に取り付けられたICタグ133を有する。地上マーカ13Bが有する円筒部131及びICタグ133は、地上マーカ13Aが有する円筒部131及びICタグ133と同じものである。なお、地上マーカ13Bは直角3面コーナ部132を有さない。
既述のように、地上マーカ13Bは、軌道12が曲線状となっている区間に設置される。従って、仮に地上マーカ13Bが地上マーカ13Aと同様に直角3面コーナ部132を有した場合、曲線状の軌道12に沿って走行する鉄道車両11のセンサ22は、鉄道車両11の正面方向が地上マーカ13Bの方向を向くごく短期間以外は、直角3面コーナ部132を検知することが困難である。従って、軌道12が曲線状となっている区間に設置される地上マーカ13Bにおいては、センサ22からあまり検知されない直角3面コーナ部132が省略されている。
図4は、データ処理装置21の機能的構成を示したブロック図である。データ処理装置21のハードウェアであるコンピュータのプロセッサ211が本実施形態に係るプログラムに従うデータ処理を行うことによって、図4に示す構成を備える装置が実現される。
走行位置取得部301は、リーダ23がICタグ133から受信した走行位置IDをリーダ23から取得する。
検知結果取得部302は、センサ22(レーダ221、レーザ222、カメラ223)から、物体の検知結果を示すデータを取得する。検知結果取得部302が取得するデータは、鉄道車両11から検知された物体までの距離と、鉄道車両11の正面方向を基準とする鉄道車両11から当該物体に向かう方向の角度と、当該物体の形状を示す。
通過領域枠DB生成部303は、検知結果取得部302により取得されたデータを用いて通過領域枠DBを生成する。通過領域枠DB生成部303は、通過領域枠DBの生成において、センサ22が検知した物体の各々が地上マーカ13であるか否かの判別を行う。センサ22が検知した物体が地上マーカ13であるか否かの判別は、例えば、物体の形状、前回の地上マーカ13の検知結果から推定される現在の地上マーカ13の位置と新たに検知された物体の位置との一致度等に基づき行われる。
積算距離取得部304は、タコジェネレータ24から鉄道車両11の走行における基準位置からの積算距離を示すデータを取得する。記憶部305は、通過領域枠DBを記憶する。
判定部306は、検知結果取得部302により取得される物体の検知結果と、通過領域枠DBに格納されている情報に基づき、センサ22により検知された物体が障害物であるか否かを判定する。判定部306は、センサ22により検知された物体が障害物であると判定した場合、ブレーキ制御装置25に対し、鉄道車両11を停車させる指示を行う。
図5は、通過領域枠DBのデータ構成を例示した図である。通過領域枠DBは、走行位置IDにより識別される複数の走行位置の各々に応じたデータテーブルの集まりである。
通過領域枠DBに含まれるデータテーブルの各々は、データフィールドとして、「積算距離」、「物体検知結果(レーダ)」、「物体検知結果(レーザ)」、「物体検知結果(カメラ)」、「前方マーカ距離」、「通過領域枠(レーダ)」、「通過領域枠(レーザ)」、「通過領域枠(カメラ)」を有する。
「積算距離」には、走行位置IDにより識別される走行位置からの積算距離を示すデータが格納される。
「物体検知結果(レーダ)」には、鉄道車両11が事前走行を行った際に、積算距離により特定される位置に鉄道車両11がいるときに、レーダ221が検知した物体の情報(距離、角度、形状等)を示すデータが格納される。
「物体検知結果(レーザ)」には、鉄道車両11が事前走行を行った際に、積算距離により特定される位置に鉄道車両11がいるときに、レーザ222が検知した物体の情報(距離、角度、形状等)を示すデータが格納される。
「物体検知結果(カメラ)」には、鉄道車両11が事前走行を行った際に、積算距離により特定される位置に鉄道車両11がいるときに、カメラ223が検知した物体の情報(距離、角度、形状等)を示すデータが格納される。
「前方マーカ距離」には、積算距離により特定される位置に鉄道車両11がいるときに、鉄道車両11の前方に位置する複数組の地上マーカ13(軌道12の左右に配置された2個1組の地上マーカ13)の各々までの距離を示すデータが格納される。
「通過領域枠(レーダ)」には、鉄道車両11が事前走行を行った際に、積算距離により特定される位置に鉄道車両11がいるときにレーダ221が検知した前方マーカ距離の各々に応じた地上マーカ13に関し、当該地上マーカ13の左右方向の位置に基づき特定された通過領域枠の範囲を示すデータが格納される。
「通過領域枠(レーザ)」には、鉄道車両11が事前走行を行った際に、積算距離により特定される位置に鉄道車両11がいるときにレーザ222が検知した前方マーカ距離の各々に応じた地上マーカ13に関し、当該地上マーカ13の左右方向の位置に基づき特定された通過領域枠の範囲を示すデータが格納される。
「通過領域枠(カメラ)」には、鉄道車両11が事前走行を行った際に、積算距離により特定される位置に鉄道車両11がいるときにカメラ223が検知した前方マーカ距離の各々に応じた地上マーカ13に関し、当該地上マーカ13の左右方向の位置に基づき特定された通過領域枠の範囲を示すデータが格納される。
「通過領域枠(レーダ)」、「通過領域枠(レーザ)」及び「通過領域枠(カメラ)」は、サブフィールドとして「左角度」と「右角度」を有する。「左角度」には、左右2個1組の地上マーカ13のうち左側の地上マーカ13に関し、センサから地上マーカ13に向かう方向とセンサの正面方向がなす角度を示すデータが格納される。「右角度」には、左右2個1組の地上マーカ13のうち右側の地上マーカ13に関し、センサから地上マーカ13に向かう方向とセンサの正面方向がなす角度を示すデータが格納される。これらの角度は、左右方向における通過領域の範囲を示す。
以下に、データ処理装置21が行う処理を説明する。データ処理装置21の処理は、鉄道車両11に事前走行を行わせ、その際にセンサ22が検知する物体の情報を用いて通過領域枠DBのデータを生成する処理(以下、「通過領域枠DB生成処理」という)と、鉄道車両11の通常走行時に、センサ22が検知する物体の情報と通過領域枠DBに格納されている情報に基づき、センサ22が検知する物体が障害物であるか否かを判定する処理(以下、「障害物検知処理」という)で構成される。
図6は、通過領域枠DB生成処理のフローを示した図である。通過領域枠DB生成処理は、鉄道車両11の通常走行より前に行われる事前走行において、センサ22が動作し、データ処理装置21がセンサ22からのデータの取得を待機している状態で実行される。
通過領域枠DB生成部303は、積算距離取得部304が取得する積算距離に基づき、鉄道車両11が新たに所定距離(例えば1m)を走行したか否かを判定する(ステップS501)。鉄道車両11が新たに所定距離を走行したことを検知すると(ステップS501;Yes)、通過領域枠DB生成部303は走行位置取得部301がリーダ23から走行位置IDを取得したか否かを判定する(ステップS502)。
ステップS502が実行されるタイミングで、鉄道車両11が地上マーカ13の近傍にいれば、走行位置取得部301がリーダ23から走行位置IDを取得する(ステップS502;Yes)。この場合、通過領域枠DB生成部303は、走行位置取得部301が取得した走行位置IDに応じた新たなデータテーブルを通過領域枠DBに追加する(ステップS503)。続いて、通過領域枠DB生成部303は、最後に走行位置取得部301が
取得した走行位置IDにより識別される地上マーカ13の位置を基準とする積算距離を示すカウンタ(以下、「積算距離カウンタ」という)を「0」にリセットする(ステップS504)。
ステップS502が実行されるタイミングで、鉄道車両11が地上マーカ13の近傍にいなければ、走行位置取得部301はリーダ23から走行位置IDを取得しない(ステップS502;No)。この場合、通過領域枠DB生成部303は、積算距離カウンタに「1」を加算する(ステップS505)。
ステップS504又はS505に続いて、通過領域枠DB生成部303は、通過領域枠DBのデータテーブルに新たなデータレコードを追加し、「積算距離」にカウンタの値を格納する。また、通過領域枠DB生成部303は、検知結果取得部302がレーダ221、レーザ222及びカメラ223の各々から取得した検知結果を示すデータを「物体検知結果(レーダ)」、「物体検知結果(レーザ)」、「物体検知結果(カメラ)」に格納する(ステップS506)。
続いて、通過領域枠DB生成部303は、検知結果取得部302がレーダ221、レーザ222及びカメラ223の各々から取得した検知結果を示すデータに基づき、それらのセンサが検知した物体から、前方マーカ距離の各々に応じた地上マーカ13を判別する(ステップS507)。
続いて、通過領域枠DB生成部303は、レーダ221、レーザ222及びカメラ223の各々に関し、前方マーカ距離の各々に応じて判別した地上マーカ13の位置に基づき通過領域枠の範囲を示す角度を特定し、特定した角度を示すデータを「通過領域枠(レーダ)」、「通過領域枠(レーザ)」、「通過領域枠(カメラ)」に格納する(ステップS508)。
続いて、通過領域枠DB生成部303は、ユーザによりデータ処理装置21に対し処理終了の操作が行われたか否かを判定する(ステップS509)。ユーザにより処理終了の操作が行われていない場合(ステップS509;No)、データ処理装置21は処理をステップS501に戻し、ステップS501以降の処理を繰り返す。一方、ユーザにより処理終了の操作が行われた場合(ステップS509;Yes)、データ処理装置21は通過領域枠DB生成処理を終了する。
図7は、障害物検知処理のフローを示した図である。障害物検知処理は、鉄道車両11の通常走行において、センサ22が動作し、データ処理装置21がセンサ22からのデータの取得を待機している状態で実行される。
まず、判定部306は、障害物の検知回数をカウントする障害物検知カウンタを「0」にリセットする(ステップS601)。
続いて、判定部306は、積算距離取得部304が取得する積算距離に基づき、鉄道車両11が新たに所定距離(例えば1m)を走行したか否かを判定する(ステップS602)。鉄道車両11が新たに所定距離を走行したことを検知すると(ステップS602;Yes)、判定部306は走行位置取得部301がリーダ23から走行位置IDを取得したか否かを判定する(ステップS603)。鉄道車両11がまだ所定距離を走行していない間(ステップS602;No)、判定部306は十分に短い時間間隔でステップS602の判定を繰り返す。
ステップS603が実行されるタイミングで、鉄道車両11が地上マーカ13の近傍に
いれば、走行位置取得部301がリーダ23から走行位置IDを取得する(ステップS603;Yes)。この場合、判定部306は、積算距離カウンタを「0」にリセットする(ステップS604)。
ステップS603が実行されるタイミングで、鉄道車両11が地上マーカ13の近傍にいなければ、走行位置取得部301はリーダ23から走行位置IDを取得しない(ステップS603;No)。この場合、判定部306は、積算距離カウンタに「1」を加算する(ステップS605)。
ステップS604又はS605に続いて、判定部306は障害物の検知の判定結果を示すフラグである障害物検知フラグを「0」にリセットする(ステップS606)。続いて、判定部306は、通過領域枠DBに含まれるデータテーブルのうち走行位置取得部301が最後に取得した走行位置IDに応じたデータテーブルを読み出し、読み出したデータテーブルから、積算距離カウンタの値に応じたデータレコードを読み出す(ステップS607)。
続いて、判定部306は、検知結果取得部302がレーダ221から取得した検知結果を示すデータと、ステップS607において読み出したデータレコードの「物体検知結果(レーダ)」に格納されているデータとを比較し、レーダ221によって事前走行時に検知されていない物体が新たに検知されたか否かを判定する(ステップS608)。
レーダ221によって事前走行時に検知されていない物体が新たに検知された、と判定した場合(ステップS608;Yes)、判定部306は、鉄道車両11(正確にはレーダ221の設置位置)から新たに検知された物体に向かう方向と鉄道車両11の正面方向がなす角度が、ステップS607において読み出したデータレコードの「通過領域枠(レーダ)」に格納されているデータが示す範囲内、すなわち通過領域枠内であるか否かを判定する(ステップS609)。新たな物体が検知されない場合(ステップS608;No)、判定部306はステップS617の処理に進む。
レーダ221により新たに検知された物体が通過領域枠内であると判定した場合(ステップS609;Yes)、判定部306は障害物検知フラグを「1」にする(ステップS610)。一方、レーダ221により新たに検知された物体が通過領域枠内でないと判定した場合(ステップS609;No)、判定部306は障害物検知フラグを変更せず、ステップS617の処理に進む。
判定部306は、ステップS608~S610の処理と並行して、検知結果取得部302がレーザ222から取得した検知結果を示すデータと、ステップS607において読み出したデータレコードの「物体検知結果(レーザ)」に格納されているデータとを比較し、レーザ222によって事前走行時に検知されていない物体が新たに検知されたか否かを判定する(ステップS611)。
レーザ222によって事前走行時に検知されていない物体が新たに検知された、と判定した場合(ステップS611;Yes)、判定部306は、鉄道車両11(正確にはレーザ222の設置位置)から新たに検知された物体に向かう方向と鉄道車両11の正面方向がなす角度が、ステップS607において読み出したデータレコードの「通過領域枠(レーザ)」に格納されているデータが示す範囲内、すなわち通過領域枠内であるか否かを判定する(ステップS612)。新たな物体が検知されない場合(ステップS611;No)、判定部306はステップS617の処理に進む。
レーザ222により新たに検知された物体が通過領域枠内であると判定した場合(ステ
ップS612;Yes)、判定部306は障害物検知フラグを「1」にする(ステップS613)。一方、レーザ222により新たに検知された物体が通過領域枠内でないと判定した場合(ステップS612;No)、判定部306は障害物検知フラグを変更せず、ステップS617の処理に進む。
判定部306は、ステップS608~S613の処理と並行して、検知結果取得部302がカメラ223から取得した検知結果を示すデータと、ステップS607において読み出したデータレコードの「物体検知結果(カメラ)」に格納されているデータとを比較し、カメラ223によって事前走行時に検知されていない物体が新たに検知されたか否かを判定する(ステップS614)。
カメラ223によって事前走行時に検知されていない物体が新たに検知された、と判定した場合(ステップS614;Yes)、判定部306は、鉄道車両11(正確にはカメラ223の設置位置)から新たに検知された物体に向かう方向と鉄道車両11の正面方向がなす角度が、ステップS607において読み出したデータレコードの「通過領域枠(カメラ)」に格納されているデータが示す範囲内、すなわち通過領域枠内であるか否かを判定する(ステップS615)。新たな物体が検知されない場合(ステップS614;No)、判定部306はステップS617の処理に進む。
カメラ223により新たに検知された物体が通過領域枠内であると判定した場合(ステップS615;Yes)、判定部306は障害物検知フラグを「1」にする(ステップS616)。一方、カメラ223により新たに検知された物体が通過領域枠内でないと判定した場合(ステップS615;No)、判定部306は障害物検知フラグを変更せず、ステップS617の処理に進む。
ステップS610、S613及びS616に続いて、判定部306は、障害物検知フラグが「1」であるか否かを判定する(ステップS617)。障害物検知フラグが「1」である場合(ステップS617;Yes)、判定部306は障害物検知カウンタに「1」を加算する(ステップS618)。一方、障害物検知フラグが「1」でない場合(ステップS617;No)、データ処理装置21は処理をステップS601に戻し、ステップS601以降の処理を繰り返す。
ステップS618に続いて、判定部306は障害物検知カウンタが所定の閾値に達したか否かを判定する(ステップS619)。障害物検知カウンタが閾値に達している、と判定した場合(ステップS619;Yes)、判定部306はブレーキ制御装置25に鉄道車両11を停止させる動作を指示する(ステップS620)。その後、データ処理装置21は障害物検知処理を終了する。
ステップS619の判定において、障害物検知カウンタが閾値に達していない、と判定した場合(ステップS619;No)、判定部306はユーザによりデータ処理装置21に対し処理終了の操作が行われたか否かを判定する(ステップS621)。ユーザにより処理終了の操作が行われていない場合(ステップS621;No)、データ処理装置21は処理をステップS602に戻し、ステップS602以降の処理を繰り返す。一方、ユーザにより処理終了の操作が行われた場合(ステップS621;Yes)、データ処理装置21は障害物検知処理を終了する。
上述した物体検知システム1によれば、鉄道車両11の通過領域の左端及び右端の位置に配置された、センサ22により検知され易い基準物である地上マーカ13の検知結果に基づき、通過領域の特定が高い精度で行われる。また、上述した物体検知システム1によれば、異なる方式の複数のセンサにより物体の検知が行われるため、環境条件が変化して
も高い精度で障害物の検知が行われる。
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態および以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
(1)上述の実施形態において、物体検知システム1は鉄道車両11の走行における障害物を検知するために用いられるものとした。物体検知システム1の利用対象は鉄道車両に限られず、専用路を走行する車両であれば他の種別の車両の走行における障害物の検知のために物体検知システム1が用いられてもよい。
例えば、物体検知システム1が、バス・ラピッド・トランジット(BRT)のような専用路を走行する自動車の走行における障害物の検知のために用いられてもよい。また、ライト・レール・トランジット(LRT)のように、部分的に専用軌道でない軌道を走行する軽量車両の走行における障害物の検知のために、物体検知システム1が用いられてもよい。
(2)上述の実施形態においては、物体を検知するためのセンサとして、レーダ221、レーザ222、カメラ223の3つの異なる方式のセンサが用いられる。これらのセンサの方式は例示であって、異なる方式のセンサが採用されてもよい。また、用いられるセンサの数は3つに限れない。
(3)上述の実施形態においては、地上マーカ13と物体OB(地上マーカ13以外)は同じセンサで検知される。これに代えて、地上マーカ13と物体OB(地上マーカ13以外)を異なるセンサで検知する構成が採用されてもよい。例えば、地上マーカ13はカメラで検知し、物体OB(地上マーカ13以外)はレーダ又はレーザで検知する構成としてもよい。
(4)上述の実施形態においては、3つのセンサの検知結果の各々に基づいて行われる障害物の有無の判定結果のいずれか1つでも肯定的であれば、障害物検知フラグが「1」となり、障害物の検知回数がカウントされる。これに代えて、例えば、3つのセンサの検知結果の各々に基づいて行われる障害物の有無の判定結果の2以上が肯定的であれば障害物の検知回数をカウントする、3つのセンサの検知結果の各々に基づいて行われる障害物の有無の判定結果の全てが肯定的であれば障害物の検知回数をカウントする、レーダ221とレーザ222の検知結果に基づく障害物の有無の判定結果の少なくとも一方が肯定的であるか又はカメラ223の検知結果に基づく障害物の有無の判定結果が肯定的であれば障害物の検知回数をカウントする、等の様々な条件が、障害物の検知回数をカウントするか否かの判定に用いられてよい。
(5)上述の実施形態においては、鉄道車両11を事前走行させることにより通過領域枠DBを作成することとしたが、これに代えて、通常走行中にリアルタイムに地上マーカ13の検知結果に基づき通過領域枠の範囲を特定し、通過領域枠DBを作成しながら障害物の検知を行ってもよい。
この場合、鉄道車両11の走行位置の特定は不要となる。従って、この変形例においては、鉄道車両11の大まかな走行位置を特定するために行われるリーダ23とICタグ133の間の近距離無線による走行位置IDの送受信や、鉄道車両11のより詳細な走行位置を特定するために行われるタコジェネレータ24による積算距離の特定は必ずしも行われなくてよい。
(6)上述の実施形態においては、軌道12が直線状の区間に地上マーカ13Aを設けることとしたが、軌道12が直線状の区間において、センサ22の正面方向と軌道12の位置関係が予め特定できるのであれば、地上マーカ13Aが設置されなくてもよい。
(7)上述の実施形態においては、鉄道車両11の積算距離を算出するために、タコジェネレータ24から走行速度を取得したが、これに限定されない。例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)により測定される鉄道車両11の位置に基づき積算距離が算出されてもよい。
(8)上述の実施形態においては、通過領域枠として建築限界枠を用いるものとしたが、通過領域枠は建築限界枠に限られず、例えば車両限界枠又は建築限界枠を外側に所定距離だけ拡張した枠等が通過領域枠として用いられてもよい。
(9)上述した実施形態においては、事前走行においてセンサ22が検知した物体の情報と、通常走行においてセンサ22が検知した物体の情報が比較され、それらの差分として特定される新たに検知された物体が、障害物の候補として扱われる。事前走行においてセンサ22が検知した物体の情報と、通常走行においてセンサ22が検知した物体の情報とを比較することにより障害物の候補となる物体を特定する方法は必ずしも採用されなくてよい。例えば、検知した地上マーカ13の位置に基づき設定した通過領域枠内に、検知された物体が含まれるか否かが単純に判定されてもよい。
(10)地上マーカ13の形状は上述した実施形態において示した形状に限られない。例えば、地上マーカ13の円筒部131に代えて、断面が半円の筒形状の部材が支柱として用いられてもよい。この場合、支柱の側面の湾曲している部分がセンサ22に対向するように地上マーカ13が設置されることになる。また、地上マーカ13Aの直角3面コーナ部132に代えて、2平面を面間の角度が直角となるように端辺で連結した形状の直角2面コーナや、球形状の部材が用いられてもよい。