(第1実施形態)
図1から図14を参照して表示体および表示体の製造方法の第1実施形態を説明する。なお、表示体は、物品の偽造の困難性を高める目的で用いられてもよいし、物品の意匠性を高める目的で用いられてもよいし、これらの目的を兼ねて用いられてもよい。物品の偽造の困難性を高める目的としては、表示体は、例えば、パスポートや免許証等の認証書類、商品券や小切手等の有価証券類、クレジットカードやキャッシュカード等のカード類、紙幣等に貼り付けられる。また、物品の意匠性を高める目的としては、表示体は、例えば、身に着けられる装飾品や、使用者に携帯される物品、家具や家電等のように据え置かれる物品、壁や扉等の構造物等に取り付けられる。
図1が示すように、表示体の有する表面10Sは、第1表示領域10Aと、第2表示領域10Bとに区画される。第1表示領域10Aの備える断面構造と、第2表示領域10Bの備える断面構造とは、相互に異なる。第1表示領域10Aは、表面10Sにおいて、文字、図形、記号、模様、絵などを描く領域であり、図1では、例えば、星形の図形を描く領域である。
[表示体の構造]
まず、本発明の実施形態に係る第1表示領域10Aを備える表示体の参考となる第1表示領域10A’を備える表示体について以下に説明する。
図2が示すように、第1表示領域10A’は、表示体の表面10Sと対向する方向から見て、複数の孤立領域A2と、各孤立領域A2を囲む単一の周辺領域A3とを含む。各孤立領域A2の平面形状は、正方形である。以下の図では、孤立領域A2を説明する便宜上、各孤立領域A2にドットを付して示す。
各孤立領域A2は、表面10Sに沿って単位格子が正方形である正方配列に並ぶ。単位格子は、表面10Sに沿って並んだ複数の孤立領域A2に含まれる4つの孤立領域A2を結んだ線がつくる格子状の構造単位のうち、一辺の長さが最も短くなる格子である。正方配列は、単位格子の一辺が構造周期PT1を有する正方形LTの各頂点に孤立領域A2が位置する配列である。したがって、第1表示領域10A’においては、X方向(紙面左右方向)に沿った孤立領域A2間の隙間距離と、Y方向(紙面左右方向)に沿った孤立領域A2間の隙間距離とは等しい。
次に、本発明の第1実施形態およびその変形例に係る表示体の第1表示領域10Aについて説明する。図3に第1実施形態の表示体における第1表示領域10Aを示し、図4に第1実施形態の変形例に係る表示体における第1表示領域10Aを示す。第1表示領域10Aでは、第1表示領域10A’と異なり、孤立領域A2が並ぶ方向である第1の方向(X方向)に沿った孤立領域A2間の隙間距離と、孤立領域A2が並ぶ方向であって第1の方向に交差する第2の方向(Y方向)に沿った孤立領域A2間の隙間距離とが異なっている。なお、第1の方向と、第2の方向とは直交している。
図3に示すように、第1実施形態に係る表示体の第1表示領域10Aにおいて、孤立領域A2は平面形状が正方形である。また、各孤立領域A2は表面10Sに沿って単位格子が長方形である長方配列に並ぶ。単位格子が長方形である配列は、単位格子の一辺が構造周期PT2を有し、もう一辺が構造周期PT3を有する長方形LT2の各頂点に孤立領域A2が位置する配列である。構造周期PT2及びPT3は互いに周期が異なり、いずれもサブ波長周期である。
次に、本発明の第1実施形態の変形例に係る表示体の第1表示領域10Aについて説明する。図4に第1実施形態の変形例に係る表示体における第1表示領域10Aを示す。図4に示すように、変形例に係る表示体の第1表示領域10Aにおいて、各孤立領域A2は平面形状が長方形である。また、各孤立領域A2は表面10Sに沿って正方配列に並ぶ。より詳細には、単位格子は一辺が構造周期PT4を有する正方形LT3の各頂点に孤立領域A2が位置する正方配列である。第1の方向(X方向)に沿った孤立領域A2間の隙間距離はWP5であり、孤立領域A2が並ぶ方向であって第1の方向に交差する第2の方向(Y方向)に沿った孤立領域A2間の隙間距離はWP6であり、WP5の方が長い。すなわち、WP5とWP6とは異なっている。WP5およびWP6はいずれもサブ波長周期である。なお、以下の説明では便宜上、構造周期PT2~PT4を総称して構造周期PTという。
図5が示すように、表示体は、可視領域の光を透過する透明な支持部11を備える。可視領域の光が有する波長は、400nm以上800nm以下である。支持部11は、第1表示領域10Aと第2表示領域10Bとに共通する。支持部11の有する断面構造は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
支持部11を構成する材料は、誘電体であり、例えば、光硬化性樹脂などの樹脂や、石英などの無機材料である。物品に表示体を貼り付けることに要する可撓性を得やすいこと、支持部11に付加できる光学的な特性の自由度が高いことなどの観点において、支持部11を構成する材料は、樹脂であることが好ましい。支持部11の屈折率は、空気層よりも高く、例えば1.2以上1.7以下である。
第1表示領域10Aは、支持部11に近い層から順に、第1格子層21と、中間格子層31と、第2格子層41とを備える。中間格子層31は、第1格子層21と第2格子層41とに挟まれている。なお、支持部11において第1格子層21の位置する面が、支持部11の表面であり、支持部11に対して第1格子層21の位置する側が、構造体における表面側である。反対に、第1格子層21に対して支持部11の位置する側が、構造体における裏面側である。
[第1格子層21]
支持部11の表面には、第1格子層21が位置する。第1格子層21は、複数の第1誘電体層22と、単一の第1金属層23とを備える。各第1誘電体層22は、表示体の表面10Sと対向する方向から見て、孤立領域A2に位置する。単一の第1金属層23は、表面10Sと対向する方向から見て、周辺領域A3に位置する。複数の第1誘電体層22は、表面10Sに沿って、二次元格子状の配列に並ぶ。
各第1誘電体層22は、支持部11の表面から突き出た構造体である。各第1誘電体層22は、例えば、支持部11と一体である。あるいは、各第1誘電体層22は、例えば、支持部11の表面との間に境界を有し、支持部11とは別体である。
第1金属層23は、表面10Sと対向する方向から見て、各第1誘電体層22を1つずつ囲う網目状を有する。第1格子層21において、単一の第1金属層23は、自由電子が行きわたる光学的な海成分であり、各第1誘電体層22は、海成分のなかに分布する島成分である。
表面10Sと対向する方向から見て、第1誘電体層22の位置する周期は、相互に隣り合う第1誘電体層22の最短幅WPと、第1誘電体層22の幅WTとの合計であり、上記構造周期PTである。構造周期PTは、可視領域の波長以下であるサブ波長周期である。
構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比は、0.25以上0.75以下である。第1格子層21の加工の精度が得られること、第1格子層21においてプラズモン共鳴が生じやすいことなどの観点において、構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比は、好ましくは、0.40以上0.60以下である。
第1格子層21の厚さは、10nm以上200nm以下であることが好ましい。第1格子層21の加工の精度が得られること、第1格子層21においてプラズモン共鳴が生じやすいこと、各観察による像の色彩が鮮明となることなどの観点において、第1格子層21の厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましい。
[中間格子層31]
第1格子層21の上には、中間格子層31が位置する。中間格子層31の厚さは、第1格子層21の厚さよりも厚い。中間格子層31の加工の精度が得られる観点において、中間格子層31の厚さは、150nm以下であることが好ましい。
中間格子層31は、複数の第1中間誘電体層32と、単一の第2中間誘電体層33とを備える。各第1中間誘電体層32は、表面10Sと対向する方向から見て、孤立領域A2に位置する。単一の第2中間誘電体層33は、表面10Sと対向する方向から見て、周辺領域A3に位置する。複数の第1中間誘電体層32は、表面10Sに沿って、二次元格子状の配列に並ぶ。
各第1中間誘電体層32は、第1誘電体層22から突き出た構造体である。各第1中間誘電体層32は、例えば、第1誘電体層22と一体である。あるいは、各第1中間誘電体層32は、例えば、第1誘電体層22との間に境界を有し、第1誘電体層22とは別体である。表面10Sと対向する方向から見て、第1中間誘電体層32の位置する周期は、第1誘電体層22と同じく、最短幅WPと幅WTとの合計であり、上記構造周期PTである。構造周期PTに対する第1中間誘電体層32の幅WTの比は、0.25以上0.75以下である。また、構造周期PTに対する第1中間誘電体層32の幅WTの比は、好ましくは、0.40以上0.60以下である。
第2中間誘電体層33は、表面10Sと対向する方向から見て、各第1中間誘電体層32を1つずつ囲う網目状を有する。中間格子層31において、単一の第2中間誘電体層33は、構造的および光学的に海成分であり、各第1中間誘電体層32は、構造的および光学的に島成分である。第2中間誘電体層33は、空気層、あるいは、樹脂層であり、第1中間誘電体層32よりも低い誘電率を有する。
[第2格子層41]
中間格子層31の上には、第2格子層41が位置する。第2格子層41の厚さは、10nm以上200nm以下であることが好ましく、また、第2格子層41の厚さは、中間格子層31の厚さよりも薄い。第2格子層41の加工の精度が得られること、第2格子層41においてプラズモン共鳴が生じやすいこと、各観察による像の色彩が鮮明になることなどの観点において、第2格子層41の厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましい。
第2格子層41は、複数の第2金属層42と、単一の第2誘電体層43とを備える。各第2金属層42の位置は、表面10Sと対向する方向から見て、孤立領域A2を含む。単一の第2誘電体層43の位置は、表面10Sと対向する方向から見て、周辺領域A3に含まれる。複数の第2金属層42は、表面10Sに沿って、二次元格子状の配列に並ぶ。
各第2金属層42は、第1中間誘電体層32の頂面に重なる構造体である。各第2金属層42は、第1中間誘電体層32との間に境界を有し、第1中間誘電体層32とは別体である。表面10Sと対向する方向から見て、第2金属層42の位置する周期は、第1誘電体層22と同じく、最短幅WPと幅WTとの合計であり、上記構造周期PTである。構造周期PTに対する第2金属層42の幅の比は、0.25以上0.75以下である。また、構造周期PTに対する第2金属層42の幅の比は、好ましくは、0.40以上0.60以下である。
第2誘電体層43は、表面10Sと対向する方向から見て、各第2金属層42を1つずつ囲う網目状を有する。第2格子層41において、単一の第2誘電体層43は、第2金属層42と比べて自由電子が少ない光学的な海成分であり、各第2金属層42は、海成分のなかに分布する島成分である。第2誘電体層43は、空気層、あるいは、樹脂層であり、第1中間誘電体層32よりも低い誘電率を有する。
第1格子層21における海成分である第1金属層23の体積比率は、第2格子層41における島成分である第2金属層42の体積比率よりも大きい。また、第2格子層41における島成分である第2金属層42の体積比率は、中間格子層31における金属材料の体積比率よりも大きい。
なお、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とから構成される構造体は、周期要素の一例であり、支持部11の表面を基準面として、基準面から突出する凸部11Tでもある。そして、支持部11、第1誘電体層22、および、第1中間誘電体層32から構成される構造体は、周期構造体の一例である。また、第1金属層23と第2金属層42とから構成される層は、層全体としての形状が周期構造体の表面形状に追従する形状を有した金属層として捉えられる。周期構造体の表面は、基準面のうち各周期要素を囲む領域と各周期要素の表面とを含む面である。
図6が示すように、周辺領域A3においては、支持部11に近い層から順に、第1格子層21の第1金属層23と、中間格子層31の第2中間誘電体層33と、第2格子層41の第2誘電体層43とが位置する。第2中間誘電体層33は、第1金属層23と第2誘電体層43とに挟まれている。
図7が示すように、第2表示領域10Bは、支持部11の上に、上述した第1格子層21、中間格子層31、および、第2格子層41を備えていない。すなわち、第2表示領域10Bは、支持部11の備える光透過性に従って、可視領域の光を透過する。
なお、第2表示領域10Bは、第1表示領域10Aとは異なる層を、支持部11の上に備えてもよい。第2表示領域10Bは、例えば、第1誘電体層22のみを備えてもよい。また、第2表示領域10Bは、例えば、第1金属層23を構成する材料と同一の材料から構成された単一の金属層のみを備えてもよい。第2表示領域10Bにおける層構成は、第2表示領域10Bが表示する像への要請に応じて、適宜選択される。
また、上述のように、支持部11の有する断面構造は、多層構造であってもよいし、各第1誘電体層22は支持部11との間に境界を有していなくてもよい。図8は、支持部11が2つの層から構成され、これらの層のうち支持部11の表面側の層が各第1誘電体層22と一体である構造を示す。すなわち、支持部11は、基材11aと中間層11bとを備え、中間層11bは、基材11aに対して表面側に位置する。各第1誘電体層22は、中間層11bから突き出ており、各第1誘電体層22と中間層11bとは一体である。
[表示体の光学的な構成]
次に、表示体が備える光学的な構成を説明する。
ここでは、表示体の表面10S、および、表示体の裏面10Tが、それぞれ空気層と接し、第2中間誘電体層33と第2誘電体層43との各々が、空気層である構成、あるいは、空気層に近い屈折率を有した樹脂層である構成を例として説明する。
図9が示すように、支持部11の屈折率は、誘電体に支配された大きさであって、空気層の屈折率よりも大きい。
第1誘電体層22の屈折率は、空気層の屈折率よりも高く、第1金属層23の屈折率は、空気層の屈折率よりも低い。第1格子層21の屈折率は、これら第1金属層23の屈折率と、第1誘電体層22の屈折率とによって、平均化された大きさに近似される。構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比は、0.25以上0.75以下であるため、第1格子層21の屈折率は、結局のところ、海成分である第1金属層23に支配された大きさであり、空気層の屈折率よりも十分に低い。
第1中間誘電体層32の屈折率は、空気層の屈折率よりも高く、第2中間誘電体層33の屈折率は、空気層の屈折率と等しい、もしくは、空気層の屈折率よりも高い。中間格子層31の屈折率は、これら第2中間誘電体層33の屈折率と、第1中間誘電体層32の屈折率とによって、平均化された大きさに近似される。構造周期PTに対する第1中間誘電体層32の幅WTの比は、0.25以上0.75以下であるため、中間格子層31の屈折率は、結局のところ、海成分である第2中間誘電体層33に支配された大きさであり、空気層の屈折率よりも高く、かつ、空気層の屈折率に近い値である。
第2金属層42の屈折率は、空気層の屈折率よりも低く、第2誘電体層43の屈折率は、空気層の屈折率と等しい、もしくは、空気層の屈折率よりも高い。第2格子層41の屈折率は、これら第2誘電体層43の屈折率と、第2金属層42の屈折率とによって、平均化された大きさに近似される。構造周期PTに対する第2金属層42の幅WTの比は、0.25以上0.75以下であるため、第2格子層41の屈折率は、結局のところ、海成分である第2誘電体層43に支配された大きさであり、空気層の屈折率よりも低く、かつ、空気層に近い値である。
[表面反射観察、裏面透過観察]
ここで、表示体の外側から第2格子層41に入射する白色の光L1は、空気層から第2格子層41に入り、第2格子層41から中間格子層31に入る。第2格子層41に入射する光L1は、空気層に近い屈折率を有した第2格子層41に空気層から入るため、空気層と第2格子層41との界面においては、フレネル反射を生じ難い。また、中間格子層31に入射する光は、空気層に近い屈折率を有した第2格子層41から、空気層に近い屈折率を有した中間格子層31に入るため、ここでも、第2格子層41と中間格子層31との界面においては、フレネル反射を生じ難い。
一方で、第2金属層42の構造周期PTが、可視領域の波長以下のサブ波長周期であるため、第2格子層41ではプラズモン共鳴が生じる。プラズモン共鳴は、第2格子層41に入射した光の一部と電子の集団的な振動とが結合する現象である。第2格子層41に入射した光L1の一部は、第2格子層41でのプラズモン共鳴によって表面プラズモンに変換され、表面プラズモンは第2格子層41を透過する。第2格子層41を透過した表面プラズモンは、光に再変換されて出射される。プラズモン共鳴に起因して第2格子層41が出射する光EP2の波長領域は、第2金属層42の構造周期PTを含む格子構造および材料に依存した特定の波長領域である。結果として、第2格子層41は、第2格子層41に入射した光の波長領域の一部の光を、中間格子層31へ透過する。
また、第1誘電体層22の構造周期PTも、可視領域の波長以下のサブ波長周期であるため、第1格子層21でもプラズモン共鳴が生じる。すなわち、第1格子層21に入射する光の一部もまた、第1格子層21でのプラズモン共鳴によって表面プラズモンに変換され、表面プラズモンは第1格子層21を透過し、光に再変換されて出射される。プラズモン共鳴に起因して第1格子層21が出射する光EP1の波長領域は、第1誘電体層22の構造周期PTを含む格子構造および材料に依存した特定の波長領域である。結果として、第1格子層21は、第1格子層21に入射した光の波長領域の一部の光を、支持部11へ透過する。
以上により、表示体の外側から第2格子層41へ光L1を入射させて、表示体の表面側から表面10Sを観察する表面反射観察によれば、上記各界面でのフレネル反射を生じ難いこと、上記各格子層でのプラズモン共鳴を生じること、これらが相まって、黒色、もしくは、黒色に近い色彩が、第1表示領域10Aで視認される。
他方、表示体の外側から第2格子層41へ光L1を入射させて、表示体の裏面側から裏面10Tを観察する裏面透過観察によれば、上記各格子層でのプラズモン共鳴を経て透過した有色の光LP1が、すなわち、白色および黒色以外の光が、第1表示領域10Aで視認される。なお、上記表面反射観察や裏面透過観察の結果は、表面10Sに向けた外光の光量が、裏面10Tに向けた外光の光量よりも高い場合においても、同様の傾向を示す。
[裏面反射観察、表面透過観察]
図10が示すように、表示体の外側から支持部11に入射する白色の光L1は、空気層から支持部11に入り、支持部11から第1格子層21に入る。支持部11に入射した光L1は、空気層よりも高い屈折率を有した支持部11から、空気層よりも低い屈折率を有した第1格子層21に入るため、支持部11と第1格子層21との界面では、フレネル反射を生じやすい。なお、支持部11の屈折率と、第1格子層21の屈折率との差は、第1格子層21と中間格子層31との間の屈折率差よりも大きく、また、中間格子層31と第2格子層41との間の屈折率差よりも大きい。
一方で、支持部11と第1格子層21との界面を透過した光の一部は、第1格子層21でのプラズモン共鳴に供される。ここでも、プラズモン共鳴に起因して第1格子層21が出射する光EP1の波長領域は、第1金属層23の構造周期PTを含む格子構造および材料に依存した特定の波長領域である。この波長領域の光は、支持部11と第1格子層21との界面では反射されずに、プラズモン共鳴によって消費される。結果として、支持部11に入射した光の波長領域の一部の光は、支持部11と第1格子層21との界面で反射され、第1格子層21は、第1格子層21に入射した光の波長領域の一部の光を、中間格子層31へ透過する。
また、中間格子層31を透過して第2格子層41に入射した光の一部も、第2格子層41でのプラズモン共鳴に供される。ここでも、プラズモン共鳴に起因して第2格子層41が出射する光EP2の波長領域は、第2誘電体層43の構造周期PTを含む格子構造および材料に依存した特定の波長領域である。結果として、第2格子層41は、第2格子層41に入射した光の波長領域の一部の光を、空気層へ透過する。
以上により、表示体の外側から支持部11へ光L1を入射させて、表示体の裏面側から裏面10Tを観察する裏面反射観察によれば、上記界面でのフレネル反射による有色の光LRが、すなわち、白色および黒色以外の光LRが、第1表示領域10Aで視認される。なお、こうした支持部11と第1格子層21との界面で生じるフレネル反射は、上述した表面反射観察において、より黒色に近い色彩を、第1表示領域10Aで視認させる。
他方、表示体の外側から支持部11へ光L1を入射させて、表示体の表面側から表面10Sを観察する表面透過観察では、上記フレネル反射と、上記各格子層でのプラズモン共鳴とを経た有色の光LP2が、第1表示領域10Aで視認される。なお、上記表面透過観察や裏面反射観察の結果は、裏面10Tに向けた外光の光量が、表面10Sに向けた外光の光量よりも高い場合においても、同様の傾向を示す。
[偏光選択性]
上述の作用に加えて、第1実施形態およびその変形例に係る表示体では、第1の方向に沿った孤立領域A2間の隙間距離と、第2の方向に沿った孤立領域A2間の隙間距離とが異なるため、偏光選択性を有する。以下で、具体的に説明する。
第1実施形態に係る表示体では、各格子層21、41においてプラズモン共鳴によって消費される波長領域は、各格子層21、41の格子構造、すなわち、構造周期PT2、PT3によって変わる。つまり、図3の場合には、第1の方向(X方向)では構造周期PT2に依存したプラズモン共鳴吸収が発生し、前記方向に直交するもう第2の方向(Y方向)では構造周期PT3に依存したプラズモン共鳴吸収が発生する。このように、第1の実施形態に係る表示体では、構造周期PTを方向に応じて異なる長さとすることにより、偏光選択性を付与することが可能になる。
ここで、構造体の偏光選択性とは、プラズモン共鳴において、入射光に垂直な平面上に互いに直交する2つの偏光方向を有する入射光に対し、この2つの偏光方向に対応する2つのプラズモン共鳴吸収スペクトルの極大が生じることを意味する。すなわち、各格子層21、41の1つの方向における構造周期PT2と、前記方向に直交するもう1つの方向の構造周期PT3において、2つの吸収極大が生じるような配向が得られていることを意味する。また、2つの方向に対応する構造周期PT2、PT3を調整することにより、吸収スペクトルの極大の波長位置の差異を調整することができる。
本発明者は、構造周期PTが長い方がプラズモン共鳴吸収が生じる波長は、長波長側にシフトすることを見出した。つまり、図3の場合には、構造周期PT3のY方向に生じるプラズモン共鳴吸収の方が、構造周期PT2のX方向に生じるプラズモン共鳴吸収よりも、長波長側に出現する。
ここで、表示体を構成する孤立領域A2の長方配列の短軸方向に平行な偏光(X偏光)を有する光を入射した場合、短軸方向の構造周期PT2に対応した表面プラズモン共鳴が発生し、短軸方向の構造周期PT2に起因した波長域の光が吸収される。一方、表示体を構成する孤立領域A2の長方配列の長軸方向に平行な偏光(Y偏光)を有する光を入射した場合、長軸方向の構造周期PT3に対応した表面プラズモン共鳴が発生し、長軸方向の構造周期に起因した波長域の光が吸収される。このとき、構造周期PT2及び構造周期PT3は互いに周期が異なるため、X偏光とY偏光とで表面プラズモン共鳴吸収が発生する波長域は異なる。このように、入射光の偏光方向に依存した表面プラズモン共鳴吸収の効果を選択的に取り出すことができる。本発明の表示体は、入射する偏光の方向によって応答が異なるので、表示機能に加えて光学応答機能やセンサ機能としての効果も発現することができる。
また、第1実施形態の変形例に係る表示体では、隣接する孤立領域A2間の隙間距離が長い方が、プラズモン共鳴吸収が生じる波長は、短波長側にシフトする。
図4の場合には、X方向に隣接する孤立領域A2間の距離はWP5、Y方向に隣接する孤立領域A2間の距離はWP6であり、WP5の方が距離が長い。よって、孤立領域A2の隙間距離が長いX方向に生じるプラズモン共鳴吸収の方が、孤立領域A2の隙間距離が短いY方向に生じるプラズモン共鳴吸収よりも、短波長側に出現する。
ここで、第1実施形態の変形例に係る表示体を構成する孤立領域A2の配列において、孤立領域A2の隙間距離が長い方向に平行な偏光(X偏光)を有する光を入射した場合、X方向の構造周期及び孤立領域A2の隙間距離に対応した表面プラズモン共鳴が発生し、X方向の構造周期及び孤立領域A2の隙間距離に起因した波長域の光が吸収される。一方、表示体を構成する孤立領域A2の配列において、孤立領域A2の隙間距離が短い方向に平行な偏光(Y偏光)を有する光を入射した場合、Y方向の構造周期及び孤立領域A2の隙間距離に対応した表面プラズモン共鳴が発生し、Y方向の構造周期及び孤立領域A2の隙間距離に起因した波長域の光が吸収される。このとき、孤立領域A2の隙間距離はX方向とY方向とで異なるため、X偏光とY偏光とでの表面プラズモン共鳴吸収が発生する波長域は異なる。このようにして、第1実施形態の変形例に係る表示体においても、2つの方向に対応する隙間距離(WP5、WP6)を異なる長さとすることにより、偏光選択性を付与することが可能である。
[表示体の製造方法]
次に、第1実施形態およびその変形例に係る表示体を製造する方法の一例を説明する。
まず、支持部11の表面に、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とを形成する。第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とは、支持部11の表面から突き出た突部として一体に形成される。突部を形成する方法は、例えば、光、あるいは、荷電粒子線を用いたフォトリソグラフィー法や、ナノインプリント法、あるいは、プラズマエッチング法などを採用できる。特に、樹脂からなる支持部11の表面に突部を形成する方法として、例えばナノインプリント法を活用できる。また、硬い材質の基材などを加工することにより突部を形成する場合には、光、あるいは、荷電粒子線を用いたフォトリソグラフィー法とプラズマエッチング法を組み合わせた方法を用いればよい。
例えば、図8に示したように基材11aと中間層11bとから構成される支持部11を有する表示体を製造する場合、まず、基材11aとして、ポリエチレンテレフタラートシートを用い、基材11aの表面に、紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、紫外線硬化性樹脂からなる塗工膜の表面に、凹版である合成石英モールドの表面を押し当て、これらに紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂から合成石英モールドを離型する。これによって、基材11aの表面の樹脂に凹版の有する凹凸が転写され、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とからなる突部および中間層11bが形成される。なお、紫外線硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂に変更することも可能であり、紫外線の照射は、加熱に変更することも可能である。また、紫外線硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に変更することも可能であり、紫外線の照射は、加熱および冷却に変更することも可能である。
次いで、突部を備える支持部11の表面に、第1金属層23、および、第2金属層42を形成する。第1金属層23、および、第2金属層42を形成する方法は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法である。これによって、第1金属層23の頂面によって区画される第1格子層21が形成され、第2金属層42の頂面によって区画される第2格子層41が形成され、これら第1格子層21と第2格子層41とに挟まれた中間格子層31が形成される。
[第1表示領域の構成例]
図11が示すように、第1金属層23の厚さT2が厚いほど、第1格子層21と支持部11との界面では、フレネル反射による光の強度が大きく、裏面反射観察での像の明度が高まる。構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比が小さいほど、これもまた、裏面反射観察での像の明度が高まる。
また、第1金属層23の厚さT2が厚いほど、裏面10Tから表面10Sへ透過する光の強度が小さく、表面反射観察での色彩が、より黒色に近づく。構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比が小さいほど、これもまた、表面反射観察での色彩が、より黒色に近づく。
そして、第1金属層23の厚さT2が10nm以上であり、かつ、構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比が0.75以下であれば、表示体の表裏を判断するための上記観察において、それの精度が十分に得られる。
他方、第1金属層23の厚さT2が薄いほど、また、第2金属層42の厚さT4が薄いほど、表面透過観察や裏面透過観察では、これらを透過する光の強度が大きい。構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比が大きいほど、これもまた、表示体を透過する光の強度が大きい。
そして、第1金属層23の厚さT2や、第2金属層42の厚さT4が、200nm以下であり、かつ、構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比が0.25以上であれば、表面透過観察で視認される像や、裏面透過観察で視認される像が、それを視認できる程度に明りょうとなる。
第1誘電体層22の厚さT2と、第1中間誘電体層32の厚さT3との合計は、第1誘電体層22の幅WTと、最短幅WPとの合計である構造周期PTよりも小さいことが好ましい。また、第1誘電体層22の厚さT2と第1中間誘電体層32の厚さT3との合計は、構造周期PTの半分よりも小さいことが、より好ましい。
こうした構成であれば、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とが一体である樹脂構造体において、その構造体の形状の精度を高めることが可能であり、また、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とからなる凸部11Tが支持部11の表面で倒れることが抑えられる。
可視領域の波長における複素誘電率の実部が負の値である金属材料は、それを用いた第1格子層21や第2格子層41において、プラズモン共鳴を生じやすい。そこで、第1金属層23を構成する材料は、上記複素誘電率の実部が負の値の材料であることが好ましい。第2金属層42を構成する材料もまた、上記複素誘電率の実部が負の値の材料であることが好ましい。
これら第1金属層23や第2金属層42を構成する材料は、例えば、アルミニウム、銀、金、インジウム、タンタルなどである。
なお、上記製造方法において説明したように、第1金属層23と第2金属層42とは、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とが形成された支持部11に対する金属層の成膜によって、単一の工程で形成することができる。
この場合、成膜源から飛行する金属粒子は、支持部11の表面に対して、所定の角度分布を有して付着する。結果として、第2金属層42の幅W4は、第1中間誘電体層32の幅WTよりも若干大きくなり、相互に隣り合う第2金属層42の最短幅WP4は、最短幅WPよりも若干小さくなる。この際、構造周期PTに対する第2金属層42の幅W4の比は、0.25以上0.75以下である。ちなみに、第1金属層23における第1中間誘電体層32の周囲は、第2金属層42によるシャドウ効果の影響を受け、第1中間誘電体層32に近い部位ほど薄い。
また、上記成膜方法によって形成される構造体においては、第1中間誘電体層32の側面にも、第2金属層42に連続する金属層である中間金属層32Aが形成される。
中間金属層32Aは、第1中間誘電体層32と第2中間誘電体層33とに挟まれる。中間金属層32Aは、第2金属層42と一体の構造体であり、第1中間誘電体層32の側面上での厚みが、第1金属層23に近い部位ほど薄い。
こうした中間金属層32Aは、構造周期PTがサブ波長周期であるため、第2格子層41や中間格子層31の厚さ方向での屈折率の変化を連続的とする。そして、中間金属層32Aは、表示体の外側から第2格子層41に入射した光を反射し難く、中間格子層31や第1格子層21へ透過しやすい。それゆえに、上述した表面反射観察においては、より黒色に近い色が、第1表示領域10Aで視認される。 また、上記成膜方法によって形成される構造体においては、第1金属層23を構成する材料と、第2金属層42を構成する材料とは、相互に等しい。
ここで、第2誘電体層43と第2金属層42との間の屈折率差が小さいほど、第2格子層41での平均化された屈折率は、第2格子層41と他の層との界面でのフレネル反射を抑えやすい。他方、第1誘電体層22と第1金属層23との間の屈折率差が大きいほど、第1格子層21の平均化された屈折率は、第1格子層21と支持部11との界面でのフレネル反射を促しやすい。
そこで、第1金属層23と第2金属層42とが、相互に等しい屈折率を有し、かつ、第1誘電体層22と第1金属層23との間の屈折率差が、第2誘電体層43と第2金属層42との間の屈折率差よりも大きい構成であれば、第2格子層41と他の層との界面でのフレネル反射を抑え、かつ、第1格子層21と他の層との界面でのフレネル反射を促すことが可能である。
なお、第2格子層41と他の層との界面でのフレネル反射を抑え、かつ、第1格子層21と他の層との界面でのフレネル反射を促すためには、以下の条件が満たされていることが好ましい。すなわち、第2誘電体層43に対して中間格子層31とは反対側で第2誘電体層43に接する層である表面層と、第2誘電体層43との間の屈折率差は、第1金属層23と支持部11との間の屈折率差よりも小さいことが好ましい。表面層は、例えば空気層である。そして、第2誘電体層43の屈折率は、表面層の屈折率と等しいことがさらに好ましい。
以上、第1実施形態およびその変形例によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)表面反射観察と裏面反射観察とにおいて別々の色彩を有した像を第1表示領域10Aで視認させられるため、表示体の表裏を判別することが可能となる。また、表示体の貼り付けられた物品に対して、それの真贋の判定を容易なものとすることや、表示体の貼り付けられた物品の意匠性を高めることが可能ともなる。
(2)表面反射観察と裏面透過観察とにおいても別々の色彩を有した像を第1表示領域10Aで視認させられるため、表裏の判断結果に対する精度を高めることが可能となる。また、裏面反射観察と表面透過観察とにおいても別々の色彩を有した像を第1表示領域10Aで視認させられるため、表裏の判断結果に対する精度を高めることが可能となる。
(3)構造周期PTの大きさが、可視領域の波長以下であるサブ波長周期であり、可視領域の光の一次回折光の形成を抑える大きさである。そのため、裏面反射観察、表面透過観察、裏面透過観察による像に、虹色が含まれることを抑えて、各観察による像の色彩を、より鮮明にすることが可能ともなる。
(4)第1格子層21の厚さT2と、中間格子層31の厚さT3との合計が、ナノインプリントなどの凹版を適用できる程度の大きさであるため、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とを一体に成形することが可能ともなる。
(5)第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とが一体の構造体であり、また、第2中間誘電体層33と第2誘電体層43とが一体であるため、表示体の構造を簡素化することが可能ともなる。さらに、第2中間誘電体層33と第2誘電体層43とが一体の空気層である構成であれば、表示体の構造をさらに簡素化することが可能ともなる。
(6)中間金属層32Aが反射防止機能を備えるため、表面反射観察によって視認される像の色彩を、さらに黒色に近い色彩とすることが可能ともなる。
(7)表面反射観察と、裏面反射観察と、表面もしくは裏面での透過観察との各々において、第1表示領域10A’の色彩を固有のものとすることができる。それゆえに、表示体が付された物品に対して、それの真贋の判定における精度を高めることが可能ともなる。
(8)表面反射観察と、裏面反射観察と、表面もしくは裏面での透過観察との各々において、第1表示領域10A’の色彩を固有のものとすることができる。それゆえに、表示体による表示の形態を、より複雑なものとすること、また、表示体の有する意匠性を高めることが可能ともなる。
(9)第1の方向に沿った孤立領域A2間の隙間距離と、第2の方向に沿った孤立領域A2間の隙間距離とが異なるため偏光選択性を有することができる。それゆえに、孤立領域A2間の各隙間距離を調整して、表示機能に加えて光学応答機能やセンサ機能としての効果を発現することができる。
<変形例>
上記第1実施形態およびその変形例に係る表示体は、以下のように変更して実施することもできる。
[中間格子層31]
・第1中間誘電体層32と第2中間誘電体層33とは、各別の構造体に具体化できる。この際、第2中間誘電体層33は、第1中間誘電体層32の屈折率よりも空気層の屈折率に近い屈折率を有した樹脂層であることが好ましい。
・第2中間誘電体層33と第2誘電体層43とは、各別の構造体に具体化できる。この際、第2中間誘電体層33は、第2誘電体層43の屈折率よりも空気層の屈折率に近い屈折率を有した樹脂層であることが好ましい。
[第1格子層21]
・図12が示すように、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とを一体の構造体として構成する。この一体の構造体である凸部11Tの形状は、支持部11の表面から突き出る錐体状に具体化できる。こうした構造であれば、第1誘電体層22や第1中間誘電体層32の形成に際して、それを形成するための凹版の離型を円滑に進めることが可能である。
[第2表示領域10B]
・図13が示すように、第2表示領域10Bは、支持部11の表面に金属層23Bのみを備える構成として具体化できる。この際、表面反射観察では、黒色、もしくは、黒色に近い色彩を有する像を、第1表示領域10Aで視認させることができ、かつ、金属光沢を有する像を、第2表示領域10Bで視認させることができる。他方、裏面反射観察では、第1格子層21と支持部11との界面でのフレネル反射による光として、第1格子層21でのプラズモン共鳴によって消費される波長領域の影響を受けた光による有色の像を、第1表示領域10Aで視認させることができ、かつ、金属層23Bと支持部11との界面でのフレネル反射のみが反映された金属光沢を有する像を、第2表示領域10Bで視認させることができる。
[保護層]
・表示体は、第2金属層42の上に保護層をさらに備える。この際、保護層と第2金属層42との界面におけるフレネル反射の強度、および、それに伴う表示体での波長の選択性が、保護層の屈折率によって変わる。そこで、保護層を構成する材料は、表示体に選択させる波長領域に基づき、適宜選択される。
なお、図14が示すように、保護層45は、第2誘電体層43、および、第2中間誘電体層33と一体の構造体に具体化できる。この際、保護層45は、低屈折率の樹脂層であることが好ましい。低屈折率の樹脂層は、第1誘電体層22の屈折率や第1中間誘電体層32の屈折率よりも空気層の屈折率に近い屈折率を有する。
・表示体の表面10Sと対向する方向から見た孤立領域A2の配置は、孤立領域A2が並ぶ第1の方向と、孤立領域A2が並ぶ方向であって第1の方向に交差する第2の方向とで孤立領域A2間の隙間距離が異なれば、正方配列、六方配列および長方配列に限らず、二次元格子状の配列であればよい。すなわち、複数の第1誘電体層22は二次元格子状に並んでいればよく、また、複数の第1中間誘電体層32も二次元格子状に並んでいればよく、また、複数の第2金属層42も二次元格子状に並んでいればよい。換言すれば、周期構造体の周期要素は、第1の方向と、第2の方向とで周期要素間の隙間距離が異なる、サブ波長周期を有した二次元格子状に並んでいればよい。二次元格子状の配列は、二次元平面内において交差する2つの方向の各々に沿って要素が並ぶ配列である。この際、構造周期PTに対する幅WTの比は、1つの方向での構造周期PTに対する幅WTの比であり、当該比が所定の範囲内であるとは、周期要素が並ぶ上記2つの方向の各々について、構造周期PTに対する幅WTの比が所定の範囲内であることを示す。
また、表示体の表面10Sと対向する方向から見た孤立領域A2の形状、すなわち、周期要素の平面形状は、正方形や長方形に限らず、他の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
・第1格子層21および第2格子層41にてプラズモン共鳴が生じる構造を表示体が有していれば、表示体を透過する透過光は、構造周期PTに応じた特定の波長領域の光となる。第2格子層41と他の層との界面にてフレネル反射が生じ、表面反射観察にて黒色とは異なる有色の像が第1表示領域10Aで視認される場合であっても、プラズモン共鳴によって消費される波長領域は、反射光には含まれないため、表面反射観察と裏面透過観察とでは、互いに異なる色彩の像が視認される。また、裏面反射観察と表面透過観察とでも、互いに異なる色彩の像が視認される。したがって、表示体の表面の観察と裏面の観察とで、互いに異なる色彩の像を視認させることが可能であり、すなわち、観察の条件に応じて互いに異なる外観の像を視認させることができる。それゆえ、表示体の付された物品における偽造の困難性や意匠性をより高めることができる。例えば、構造周期PTに対する第1誘電体層22の幅WTの比、および、構造周期PTに対する第2金属層42の幅WTの比は、0.25以上0.75以下とは異なる値であってもよい。また例えば、第1格子層21と中間格子層31と第2格子層41との厚さの関係は、上記実施形態と異なってもよい。
(第2実施形態)
図15から図18を参照して表示体、表示体付きデバイス、および、表示体の製造方法の第2実施形態を説明する。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
[表示体の構造]
図15が示すように、表示体の第1表示領域10Aは、支持部11、第1格子層21、中間格子層31、および、第2格子層41に加えて、上部格子層51を備えている。第1格子層21、中間格子層31、第2格子層41、および、上部格子層51は、支持部11の表面からこの順に並んでいる。すなわち、第2格子層41は、中間格子層31と上部格子層51とに挟まれている。支持部11は、第1実施形態と同様の構成を有する。図15は、支持部11が基材11aと中間層11bとから構成された形態を示している。なお、支持部11が、基材11aと中間層11bとから構成される場合、基材11aを構成する材料の屈折率と、中間層11bを構成する材料の屈折率とは近いほど好ましい。基材11aおよび中間層11bの各々の屈折率は、空気層よりも高く、例えば、1.2以上1.7以下である。
[第1格子層21]
第1格子層21は、複数の第1誘電体層22と、単一の第1金属層23とを備える。各第1誘電体層22は、表示体の表面10Sと対向する方向から見て、孤立領域A2に位置する。単一の第1金属層23は、表面10Sと対向する方向から見て、周辺領域A3に位置する。複数の第1誘電体層22は、表面10Sに沿って、二次元格子状の配列に並ぶ。各第1誘電体層22は、支持部11の表面から突き出た構造体である。各第1誘電体層22は、支持部11と一体であってもよいし、支持部11とは別体であってもよい。表面10Sと対向する方向から見て、第1誘電体層22の位置する周期である構造周期PTは、可視領域の波長以下であるサブ波長周期である。第1金属層23は、表面10Sと対向する方向から見て、各第1誘電体層22を1つずつ囲う網目状を有する構造体である。第1金属層23は、支持部11とは別体である。第1格子層21において、第1金属層23は、構造的および光学的に海成分であり、各第1誘電体層22は構造的および光学的に島成分である。
[中間格子層31]
中間格子層31は、複数の第1中間誘電体層32と、単一の第2中間誘電体層34とを備える。各第1中間誘電体層32は、表面10Sと対向する方向から見て、孤立領域A2に位置する。単一の第2中間誘電体層34は、表面10Sと対向する方向から見て、周辺領域A3に位置する。複数の第1中間誘電体層32は、表面10Sに沿って、二次元格子状の配列に並ぶ。各第1中間誘電体層32は、第1誘電体層22から突き出た構造体である。各第1中間誘電体層32は、第1誘電体層22と一体であってもよいし、第1誘電体層22とは別体であってもよい。表面10Sと対向する方向から見て、第1中間誘電体層32の位置する周期は、構造周期PTである。第2中間誘電体層34は、表面10Sと対向する方向から見て、各第1中間誘電体層32を1つずつ囲う網目状を有する構造体である。第2中間誘電体層34は、第1金属層23とは別体である。中間格子層31において、第2中間誘電体層34は、構造的および光学的に海成分であり、各第1中間誘電体層32は、構造的および光学的に島成分である。
[第2格子層41]
第2格子層41は、複数の第2金属層42と、単一の第2誘電体層44とを備える。各第2金属層42の位置は、表面10Sと対向する方向から見て、孤立領域A2を含む。単一の第2誘電体層44の位置は、表面10Sと対向する方向から見て、周辺領域A3に含まれる。複数の第2金属層42は、表面10Sに沿って、二次元格子状の配列に並ぶ。各第2金属層42は、第1中間誘電体層32の頂面に重なる構造体である。各第2金属層42は、第1中間誘電体層32とは別体である。表面10Sと対向する方向から見て、第2金属層42の位置する周期は、構造周期PTである。第2誘電体層44は、表面10Sと対向する方向から見て、各第2金属層42を1つずつ囲う網目状を有する構造体である。第2誘電体層44は、第2中間誘電体層34と一体であってもよいし、別体であってもよい。第2格子層41において、第2誘電体層44は、構造的および光学的に海成分であり、各第2金属層42は、構造的および光学的に島成分である。
[上部格子層51]
上部格子層51は、複数の第1上部誘電体層52と、単一の第2上部誘電体層53とを備える。各第1上部誘電体層52の位置は、表面10Sと対向する方向から見て、孤立領域A2を含む。単一の第2上部誘電体層53の位置は、表面10Sと対向する方向から見て、周辺領域A3に含まれる。複数の第1上部誘電体層52は、表面10Sに沿って、二次元格子状の配列に並ぶ。
各第1上部誘電体層52は、第2金属層42の頂面に重なる構造体である。各第1上部誘電体層52は、第2金属層42とは別体である。表面10Sと対向する方向から見て、第1上部誘電体層52の位置する周期は、構造周期PTである。第2上部誘電体層53は、表面10Sと対向する方向から見て、各第1上部誘電体層52を1つずつ囲う網目状を有する。第2上部誘電体層53は、第2誘電体層44とは別体である。上部格子層51において、第2上部誘電体層53は、構造的および光学的に海成分であり、各第1上部誘電体層52は、構造的および光学的に島成分である。図16が示すように、周辺領域A3においては、支持部11に近い層から順に、第1格子層21の第1金属層23と、中間格子層31の第2中間誘電体層34と、第2格子層41の第2誘電体層44と、上部格子層51の第2上部誘電体層53とが位置する。
[各格子層の材料]
第1誘電体層22および第1中間誘電体層32は、誘電体であり、例えば、光硬化性樹脂などの樹脂や、石英などの無機材料から構成される。第1誘電体層22および第1中間誘電体層32の各々の屈折率は、空気層よりも高く、例えば、1.2以上1.7以下である。例えば、基材11aの中間層11b、第1誘電体層22、および、第1中間誘電体層32は一体の構造物であり、これらは同一の材料から構成される。第1金属層23および第2金属層42は、金属材料から構成されている。第1金属層23および第2金属層42を構成する材料は、可視領域の波長における複素誘電率の実部が負の値の材料であることが好ましく、例えば、アルミニウム、銀、金、インジウム、タンタルなどであることが好ましい。第1金属層23と第2金属層42とは、例えば、同一の材料から構成される。
第2中間誘電体層34、第2誘電体層44、および、第1上部誘電体層52は、可視領域の光を透過する透明な誘電体である。第2中間誘電体層34、第2誘電体層44、および、第1上部誘電体層52は、二酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ニオブ(Nb2O5)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化チタン(TiO2)、弗化マグネシウム(MgF2)、弗化カルシウム(CaF2)などの無機化合物から構成されることが好ましい。ただし、第2中間誘電体層34、第2誘電体層44、および、第1上部誘電体層52は、有機化合物から構成されてもよい。第2中間誘電体層34、第2誘電体層44、および、第1上部誘電体層52の各々の屈折率は、空気層よりも高く、例えば、1.3以上3.0以下である。
例えば、第2中間誘電体層34と第2誘電体層44とは一体の構造物であり、第2中間誘電体層34、第2誘電体層44、および、第1上部誘電体層52は、同一の材料から構成される。
第2上部誘電体層53は、可視領域の光を透過する透明な誘電体であり、空気層、もしくは、空気層に近い屈折率を有した樹脂層である。第2上部誘電体層53の屈折率は、第1上部誘電体層52および第2誘電体層44の各々の屈折率よりも低い。
孤立領域A2と周辺領域A3とからなる平面において、単位面積あたりにおいて孤立領域A2が占める面積の割合は、0.5よりも小さい。すなわち、第1格子層21における第1金属層23の体積比率は、第1格子層21における第1誘電体層22の体積比率よりも大きい。また、中間格子層31における第2中間誘電体層34の体積比率は、中間格子層31における第1中間誘電体層32の体積比率よりも大きい。
そして、第2格子層41における第2誘電体層44の体積比率は、第2格子層41における第2金属層42の体積比率よりも大きい。また、上部格子層51における第2上部誘電体層53の体積比率は、上部格子層51における第1上部誘電体層52の体積比率よりも大きい。
上記構成において、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とから構成される構造体は、周期要素の一例であり、支持部11の表面を基準面として、基準面から突出する凸部11Tでもある。そして、支持部11、第1誘電体層22、および、第1中間誘電体層32から構成される構造体は、周期構造体の一例である。また、第1金属層23と第2金属層42とから構成される層は、周期構造体の表面に位置し、層全体としての形状が周期構造体の表面形状に追従する形状を有した金属層61として捉えられる。周期構造体の表面は、基準面のうち各周期要素を囲む領域と各周期要素の表面とを含む面である。
また、第2中間誘電体層34、第2誘電体層44、および、第1上部誘電体層52から構成される層は、金属層61における周期構造体と接する面とは反対側の面に位置し、層全体としての形状が金属層61の表面形状に追従する形状を有した誘電体層62として捉えられる。
[表示体の製造方法]
次に、第2実施形態の表示体を製造する方法の一例を説明する。
支持部11、第1誘電体層22、第1中間誘電体層32、第1金属層23、および、第2金属層42は、第1実施形態と同様に形成される。すなわち、第1誘電体層22と第1中間誘電体層32とは、支持部11の表面から突き出た凸部11Tとして一体に形成される。凸部11Tの形成には、例えば、光、あるいは、荷電粒子線を用いたフォトリソグラフィー法や、ナノインプリント法、あるいは、プラズマエッチング法などを採用できる。特に、樹脂からなる支持部11の表面に凸部11Tを形成する方法として、例えばナノインプリント法を活用できる。また、硬い材質の基材などを加工することにより凸部11Tを形成する場合には、光、あるいは、荷電粒子線を用いたフォトリソグラフィー法とプラズマエッチング法を組み合わせた方法を用いればよい。
次いで、凸部11Tが形成された支持部11の表面に、真空蒸着法やスパッタリング法などを用いて、金属層61が形成される。金属層61は、支持部11と凸部11Tとからなる周期構造体の表面形状に追従する形状に形成される。これにより、第1金属層23、および、第2金属層42が形成される。
次いで、金属層61が形成された構造体の表面に、誘電体層62が形成される。誘電体層62の形成には、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法が用いられる。誘電体層62は、金属層61の表面形状に追従する形状に形成される。これにより、第2中間誘電体層34、第2誘電体層44、および、第1上部誘電体層52が形成される。
こうした製造方法によって、第1金属層23の頂面によって区画される第1格子層21が形成され、第1中間誘電体層32の頂面、すなわち、凸部11Tの頂面によって区画される中間格子層31が区画される。さらに、第2金属層42の頂面によって区画される第2格子層41が形成され、第1上部誘電体層52の頂面によって区画される上部格子層51が形成される。
[表示体の光学的な作用]
図17を参照して、第2実施形態の表示体における光学的な構成および作用を説明する。
図17が示すように、表示体の外側から上部格子層51に入射する白色の光L1は、空気層から上部格子層51に入る。上部格子層51の屈折率は、第1上部誘電体層52の屈折率と第2上部誘電体層53の屈折率とによって平均化された大きさに近似される。すなわち、上部格子層51の屈折率は、海成分である第2上部誘電体層53に支配された大きさであり、空気層に近い値である。このとき、光L1は、空気層に近い屈折率を有した上部格子層51に空気層から入るため、空気層と上部格子層51との界面においては、フレネル反射を生じ難い。したがって、空気層と上部格子層51との界面での反射が抑えられ、上部格子層51に入射した光は上部格子層51を透過して第2格子層41に到達する。
第2格子層41の屈折率は、第2金属層42の屈折率と第2誘電体層44の屈折率とによって平均化された大きさに近似される。すなわち、第2格子層41の屈折率は、海成分である第2誘電体層44に支配された大きさであり、空気層の屈折率よりも高い値である。また、第2格子層41は金属と誘電体とからなる格子構造を有し、第2金属層42の構造周期PTはサブ波長周期であるため、第2格子層41ではプラズモン共鳴が生じる。したがって、第2格子層41に到達した光の一部は、上部格子層51と第2格子層41との界面で反射し、第2格子層41に到達した光の一部は、表面プラズモンに変換されて第2格子層41を透過する。プラズモン共鳴によって消費される波長領域の光EP2は、上部格子層51と第2格子層41との界面で反射されない。
中間格子層31の屈折率は、第1中間誘電体層32の屈折率と第2中間誘電体層34の屈折率とによって平均化された大きさに近似される。すなわち、中間格子層31の屈折率は、海成分である第2中間誘電体層34に支配された大きさである。第1中間誘電体層32と第2中間誘電体層34とは、可視領域の光を透過する透明な誘電体であるため、中間格子層31は、可視領域の光の透過性が高い。第2格子層41の屈折率と中間格子層31の屈折率との差によっては、中間格子層31に到達した光の一部は、第2格子層41と中間格子層31との界面で反射する。
第1格子層21の屈折率は、第1誘電体層22の屈折率と第1金属層23の屈折率とによって平均化された大きさに近似される。すなわち、第1格子層21の屈折率は、海成分である第1金属層23に支配された大きさである。また、第1格子層21は金属と誘電体とからなる格子構造を有し、第1誘電体層22の構造周期PTはサブ波長周期であるため、第1格子層21ではプラズモン共鳴が生じる。したがって、第1格子層21に到達した光の一部は、中間格子層31と第1格子層21との界面で反射し、第1格子層21に到達した光の一部は、表面プラズモンに変換されて第1格子層21を透過する。プラズモン共鳴によって消費される波長領域の光EP1は、中間格子層31と第1格子層21との界面で反射されない。
第1格子層21を透過した光の一部は、第1格子層21と支持部11との界面や、中間層11bと基材11aとの界面や、支持部11と空気層との界面で反射され得る。そして、第1格子層21を透過した光の一部は、支持部11を透過して表示体の裏面側に射出される。
このように、表示体の外側から白色の光L1を入射させたとき、表示体の裏面側には、第1格子層21および第2格子層41を透過した表面プラズモンが再変換された光と、すべての層を透過した光とを含む特定の波長領域の光LP1が射出される。したがって、表示体の外側から上部格子層51へ光L1を入射させて、表示体の裏面側から裏面10Tを観察する裏面透過観察によれば、黒色および白色とは異なる有色の色彩が、第1表示領域10Aで視認される。
各層の界面で反射した光は、表示体の表面側に射出され、これらの光の光路差に起因して干渉を起こす。結果として、表示体の外側から白色の光L1を入射させたとき、表示体の表面側には、プラズモン共鳴および光の干渉が作用した特定の波長領域の光LR1が射出される。上述のように、第1格子層21および第2格子層41の各々において特定の波長領域の光に対しプラズモン共鳴が生じるため、格子層21,41ごとに、プラズモン共鳴によって消費されて格子層21,41を透過する波長領域と、プラズモン共鳴によって消費されずに格子層21,41と他の層との界面で反射される波長領域とは異なる波長領域となる。したがって、表示体の外側から上部格子層51へ光L1を入射させて、表示体の表面側から表面10Sを観察する表面反射観察によれば、裏面透過観察とは異なる色彩であって、黒色および白色とは異なる有色の色彩が、第1表示領域10Aで視認される。
また、表示体の外側から支持部11に白色の光を入射させたとき、同様に、第1格子層21および第2格子層41の各々ではプラズモン共鳴が生じる。そして、表示体の表面側には、第1格子層21および第2格子層41の各々を透過した表面プラズモンが再変換された光と、すべての層を透過した光とを含む特定の波長領域の光が射出される。一方、表示体の外側から支持部11に白色の光を入射させたとき、表示体の裏面側には、各層の界面で反射した光として、プラズモン共鳴および光の干渉が作用した特定の波長領域の光が射出される。
したがって、表示体の外側から支持部11へ光を入射させたとき、表示体の表面側から表面10Sを観察する表面透過観察と、表示体の裏面側から裏面10Tを観察する裏面反射観察とでは、互いに異なる色彩であって、黒色および白色とは異なる有色の色彩が、第1表示領域10Aで視認される。
孤立領域A2と周辺領域A3とからなる平面において、孤立領域A2が占める面積比率が0.5よりも小さいことに基づき、プラズモン共鳴が生じる第1格子層21と第2格子層41のうち、第1格子層21は、第1金属層23が支配的に位置する層となり、第2格子層41は、第2誘電体層44が支配的に位置する層となる。こうした構造の違いに起因して、第1格子層21と第2格子層41とで、プラズモン共鳴により消費される波長領域は異なり、また、第1格子層21と他の層との界面と、第2格子層41と他の層との界面とで、光の反射率は異なる。そして、こうした第1格子層21と第2格子層41との光学的な特性の違いは、孤立領域A2が占める面積比率が小さくなるほど、顕著となる。
表示体の表面側から表示体に入射する光は、第1格子層21よりも第2格子層41に先に到達し、第2格子層41による光学的作用を大きく受ける。一方、表示体の裏面側から表示体に入射する光は、第2格子層41よりも第1格子層21に先に到達し、第1格子層21による光学的作用を大きく受ける。結果として、表面側から表示体に光が入射する場合と、裏面側から表示体に光が入射する場合とで、特に反射光の色相が大きく異なる。すなわち、表面反射観察と裏面反射観察とでは、互いに異なる色彩の像が第1表示領域10Aで視認される。なお、表面透過観察と裏面透過観察とでは、同様の色相の像が視認される。
さらに、各格子層21,41においてプラズモン共鳴によって消費される波長領域は、各格子層21,41の格子構造、すなわち、構造周期PTや各格子層21,41の厚さや第1誘電体層22および第2金属層42の幅WTによって変わり、また、各格子層21,41の材料、すなわち、金属層61の材料や凸部11Tの材料の屈折率や誘電体層62の材料の屈折率によって変わる。したがって、例えば、第1格子層21における第1誘電体層22の材料の選択や、第2格子層41における第2誘電体層44の材料の選択によって、反射観察や透過観察で観察される色彩を調整することができる。
例えば、同一の構造周期PTを有する2つの表示体であって、凸部11Tおよび金属層61の各々の材料が2つの表示体で同一であり、誘電体層62の材料が2つの表示体で異なる表示体を比較する。すなわち、2つの表示体において、第1格子層21の構成は同一であり、中間格子層31における第1中間誘電体層32の材料も同一であり、第2格子層41における第2金属層42の材料も同一である。一方、2つの表示体において、中間格子層31における第2中間誘電体層34の材料は互いに異なり、第2格子層41における第2誘電体層44の材料は互いに異なり、上部格子層51における第1上部誘電体層52の材料も互いに異なっている。2つの表示体に裏面側から光を照射するとき、2つの表示体における第1格子層21の構成は同一であるため、裏面反射観察によって観察される色彩は、2つの表示体で大きくは変わらない。一方、2つの表示体に表面側から光を照射するとき、表面反射観察によって観察される色彩は、各表示体の第2誘電体層44の屈折率に応じて、2つの表示体で互いに異なる。また、2つの表示体において、中間格子層31、第2格子層41、および、上部格子層51の各々の構成が互いに異なっていることにより、これらの層を透過する光の波長領域は、2つの表示体で互いに異なる。したがって、表面透過観察によって観察される色彩は、2つの表示体で互いに異なり、また、裏面透過観察によって観察される色彩も、2つの表示体で互いに異なる。
[各格子層の構成例]
各格子層の詳細構成について、好ましい構成例を説明する。
図15および図16に示すように、凸部11Tの高さである厚さT5は、すなわち、第1格子層21と中間格子層31とを合わせた厚さである。厚さT5は、凸部11Tが倒れにくく支持部11と凸部11Tとからなる構造体の耐久性が高められること、および、凸部11Tの加工の精度が得られやすいことから、構造周期PTの2分の1よりも小さいことが好ましい。さらに、プラズモン共鳴や光の干渉の作用によって反射観察や透過観察で視認される色彩が鮮明になる観点から、厚さT5は、50nm以上200nm以下であることがより好ましい。
金属層61の厚さT6は、すなわち、第1金属層23および第2金属層42の各々の厚さである。厚さT6は、プラズモン共鳴が生じやすいこと、および、反射観察で視認される色彩が鮮明になることから、10nm以上であることが好ましい。一方、厚さT6が厚さT5以上であると、凸部11Tが金属層61に埋没し、中間格子層31が消失する。中間格子層31が存在しなかったとしても、金属層61が、支持部11と凸部11Tとからなる構造体の表面形状に追従した形状を有することにより第1格子層21と第2格子層41とが形成されていれば、プラズモン共鳴に起因した表面反射観察と裏面反射観察とでの視認される色彩の違い、および、これらの反射観察と透過観察とでの視認される色彩の違いは生じ得る。しかしながら、金属層61が凸部11Tを埋没させない程度に薄い方が、表示体における光の透過率が高められ、透過観察における像が明りょうに視認される。したがって、金属層61の厚さT6は、凸部11Tの高さである厚さT5よりも小さいことが好ましい。
なお、金属層61の製法によっては、金属層61の厚さは、凸部11T上の領域、すなわち第2金属層42と、隣り合う凸部11Tの間の領域、すなわち第1金属層23とで異なる場合がある。本実施形態において金属層61の厚さT6とは、周辺領域A3における帯状に延びる領域、すなわち、1つの方向に沿って凸部11Tが存在しない領域の幅方向の中央部に位置する金属層61の厚さとして定義される。
誘電体層62の厚さT7は、すなわち、第2中間誘電体層34と第2誘電体層44とを合わせた厚さであり、かつ、第1上部誘電体層52の厚さである。誘電体層62の厚さT7は、凸部11Tの高さである厚さT5よりも大きいことが好ましい。なお、隣り合う凸部11Tの間の領域において誘電体層62が凸部11T上の金属層61よりも突出しているとき、上部格子層51における第2上部誘電体層53の一部は、誘電体層62によって構成される。
厚さT7が厚さT5よりも大きい構成であれば、第2格子層41にて第2金属層42の厚さ方向の全体が誘電体層62に囲まれるため、第2格子層41におけるプラズモン共鳴が生じやすくなり、また、誘電体層62の材料の変更が、第2格子層41でのプラズモン共鳴で消費される波長領域の変化に反映されやすくなる。また、支持部11、凸部11T、および、金属層61からなる構造体が、誘電体層62に埋没するため、誘電体層62が上記構造体を保護する層として機能する。
なお、厚さT7が厚さT5よりも小さかったとしても、金属と誘電体との格子構造を有する層ではプラズモン共鳴が生じ、このプラズモン共鳴の作用により反射観察と透過観察とでの視認される色彩の違いは生じ得る。
ちなみに、誘電体層62の厚さT7が小さく、隣り合う凸部11Tの間の領域に位置する誘電体層62が凸部11T上の金属層61よりも窪んでいるとき、第2格子層41の第2誘電体層44の一部もしくは全部は、上部格子層51の第2上部誘電体層53と同一の材料から構成される。すなわち、この場合、第2誘電体層44の一部もしくは全部は、空気層もしくは樹脂層である。ただし、第2誘電体層44は、上述のように、第2中間誘電体層34から連続する構造体であることが好ましく、誘電体層62の厚さT7は、凸部11Tの高さである厚さT5よりも大きいことが好ましい。
誘電体層62の製法によっては、誘電体層62の厚さは、凸部11T上の領域、すなわち第1上部誘電体層52と、隣り合う凸部11Tの間の領域、すなわち第2中間誘電体層34および第2誘電体層44とで異なる場合がある。本実施形態において誘電体層62の厚さT7とは、周辺領域A3における帯状に延びる領域、すなわち、1つの方向に沿って凸部11Tが存在しない領域の幅方向の中央部に位置する誘電体層62の厚さとして定義される。
孤立領域A2と周辺領域A3とからなる平面において、孤立領域A2が占める面積比率、すなわち、基準面と凸部11Tとを含む平面において、単位面積あたりにおいて凸部11Tが占める面積の割合は、0.1より大きいことが好ましい。上記面積比率が0.1より大きい構成であれば、凸部11Tの幅に対する高さの比であるアスペクト比が過度に大きくなることが抑えられるため、支持部11と凸部11Tとからなる構造体の耐久性が高められ、また、凸部11Tの加工の精度が得られやすい。
一方、上記面積比率が0.5より小さい構成であれば、上部格子層51とその上層との界面においてフレネル反射が生じることが好適に抑えられる。なお、金属層61や誘電体層62の製法によっては、これらの層の形成の際に凸部11Tの側面にも材料が付着する。上記面積比率が0.5より小さい構成であれば、互いに隣り合う凸部11T間の領域の大きさが十分に確保され、凸部11T間の領域が、金属層61や誘電体層62の形成の際に凸部11Tの側面に付着した材料によって埋まることが抑えられる。したがって、金属層61および誘電体層62が下層の表面形状に追従した形状に形成されやすい。その結果、第1上部誘電体層52が点在する上部格子層51が好適に形成され、上部格子層51の界面でフレネル反射を抑える効果が好適に得られる。
なお、上記面積比率が0.5以上であっても、誘電体層62の表面が金属層61の表面形状に追従した凹凸を有していることにより、誘電体層62の表面が平坦である場合と比較して、フレネル反射を抑える効果は得られる。また、上部格子層51とその上層との界面においてフレネル反射が生じたとしても、第1格子層21および第2格子層41でのプラズモン共鳴に起因した表面反射観察と裏面反射観察とでの視認される色彩の違い、および、これらの反射観察と透過観察とでの視認される色彩の違いは生じ得る。ただし、上部格子層51とその上層との界面でのフレネル反射、すなわち、表示体の最外面付近でのフレネル反射が抑えられることにより、表示体の内部における各層の界面での反射光の波長領域に応じた色が、表面反射観察において鮮明に視認されやすくなる。
表示体の特に表面側でフレネル反射を抑えるためには、第2上部誘電体層53に対して第2格子層41とは反対側で第2上部誘電体層53に接する層である表面層と、第2上部誘電体層53との間の屈折率差は、第1金属層23と支持部11との間の屈折率差よりも小さいことが好ましい。表面層は、例えば空気層である。そして、第2上部誘電体層53の屈折率は、表面層の屈折率と等しいことがさらに好ましい。
なお、第2表示領域10Bは、第1実施形態と同様に、支持部11のみを備えていてもよいし、支持部11に加えて、金属層61および誘電体層62の少なくとも一方を備えていてもよい。反射観察や透過観察にて、第2表示領域10Bは、第2表示領域10Bの層構成に応じた色彩や質感の像であって、第1表示領域10Aとは異なる色彩や質感の像を視認させることができる。
[表示体付きデバイス]
図18を参照して、上記表示体を備える表示体付きデバイスの構成を説明する。
図18が示すように、表示体付きデバイス110は、第2実施形態の表示体である表示体100と、光を放つことが可能に構成された光射出構造体70とを備えている。光射出構造体70は、光射出構造体70に照射された光を反射によって射出する構造体、もしくは、光射出構造体70自身の発光によって光を射出する構造体である。例えば、光射出構造体70は、白色光下において白色に見える構造体である。
光射出構造体70は、表示体100の裏面10Tの一部と対向する位置に配置されており、光射出構造体70と裏面10Tとは離間している。すなわち、表示体100の表面10Sと対向する方向から見て、表面10Sには、光射出構造体70と重なる領域と、光射出構造体70と重ならない領域とが含まれる。詳細には、光射出構造体70は、第1表示領域10Aの一部と対向する位置に配置されている。
こうした構成によれば、表示体付きデバイス110の外側から表示体100の表面10Sに向けて白色の光が照射されたとき、第1表示領域10Aのなかで表示体100の裏面側に光射出構造体70が配置されていない部分では、上記表面反射観察と同様、表示体100からの反射光による色彩が視認される。
一方、第1表示領域10Aのなかで表示体100の裏面側に光射出構造体70が位置している部分では、光射出構造体70から表示体100の裏面10Tに向けて、光が照射される。光射出構造体70が自身に照射された光を反射によって射出する構造体である場合、裏面10Tに照射される光は、表示体100の透過光を光射出構造体70が反射した光であってもよいし、光射出構造体70の付近に設けられた光源から光射出構造体70に照射された光を光射出構造体70が反射した光であってもよい。また、光射出構造体70が自身の発光によって光を射出する構造体である場合、裏面10Tに照射される光は、光射出構造体70の発光によって生じた光である。したがって、表示体100の表面側から見た場合、第1表示領域10Aのなかで光射出構造体70と重なっている部分では、表面側から照射されて表示体100にて反射された光と、裏面側から照射されて表示体100を透過した光とを含む光による色彩が視認される。
結果として、表示体付きデバイス110の外側から表示体100の表面10Sに向けて白色の光が照射されている状態で、表示体100の表面側から表面10Sを観察すると、第1表示領域10Aのなかで光射出構造体70と重なっている部分と、光射出構造体70と重なっていない部分とが、互いに異なる色相の色に見える、あるいは、互いに異なる彩度や明度の色に見える。したがって、光射出構造体70の形状に応じた像が視認されるため、多様な像の表現が可能である。
また、光射出構造体70に対する光の照射の入切や光射出構造体70の発光の入切によって、光射出構造体70の形状に応じた像が見えたり見えなかったりするように、像の視認性の調節も可能である。これによっても、より多様な像の表現が可能である。
なお、光射出構造体70は、表示体100の表面10Sの一部と対向する位置に配置されていてもよい。この場合、表示体付きデバイス110の外側から表示体100の裏面10Tに向けて白色の光が照射されている状態で、表示体100の裏面側から裏面10Tを観察すると、第1表示領域10Aのなかで光射出構造体70と重なっている部分と、光射出構造体70と重なっていない部分とが、互いに異なる色彩に見える。
以上、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(3),(7)~(9)の効果に加えて、以下に列挙する効果が得られる。
(10)表示体が、誘電体層62を備えているため、誘電体層62を構成する材料の変更によって、反射観察や透過観察で観察される色彩を調整することが可能であり、こうした色彩の調整についての自由度が高められる。特に、誘電体層62が無機化合物から構成される形態であれば、誘電体層62の屈折率を広い範囲から選択可能である。また、誘電体層62は、金属層61の表面形状に追従する形状を有しているため、誘電体層62の表面が平坦である場合と比較して、表示体の最外面付近でのフレネル反射が抑えられる。その結果、表面反射観察において観察される色彩が鮮明になる。
(11)凸部11Tの高さである厚さT5が、構造周期PTの2分の1の長さよりも小さい構成であれば、支持部11と凸部11Tとからなる構造体の耐久性が高められ、また、凸部11Tの加工の精度が得られやすい。
(12)金属層61の厚さT6が10nm以上である構成であれば、第1格子層21および第2格子層41にてプラズモン共鳴が生じやすく、また、反射観察で視認される色彩が鮮明になる。また、金属層61の厚さT6が、凸部11Tの高さである厚さT5よりも小さい構成であれば、表示体における光の透過率が高められ、透過観察における像が明りょうになる。
(13)誘電体層62の厚さT7が、凸部11Tの高さである厚さT5よりも大きい構成であれば、第2格子層41におけるプラズモン共鳴が生じやすくなり、また、誘電体層62の材料の変更が、第2格子層41でのプラズモン共鳴で消費される波長領域の変化に反映されやすくなる。また、支持部11、凸部11T、および、金属層61からなる構造体が、誘電体層62に埋没するため、上記構造体が誘電体層62によって保護される。
(14)支持部11の表面である基準面と周期要素である凸部11Tとを含む平面において、単位面積あたりにおいて凸部11Tが占める面積の割合が0.1よりも大きい構成であれば、支持部11と凸部11Tとからなる構造体の耐久性が高められ、また、凸部11Tの加工の精度が得られやすい。また、上記面積の割合が0.5よりも小さい構成であれば、上部格子層51とその上層との界面においてフレネル反射が生じることを抑える効果が好適に得られる。
(15)表示体付きデバイス110では、光射出構造体70から射出された光の一部が表示体100の第1表示領域10Aを透過して光射出構造体70とは反対側に射出される。したがって、表面10Sおよび裏面10Tのうち、光射出構造体70が対向している面とは反対側の面に向けて光が照射されている状態でこの面を観察すると、第1表示領域10Aのなかで光射出構造体70と重なっている部分と、光射出構造体70と重なっていない部分とが、互いに異なる色に見える。それゆえ、光射出構造体70の形状に応じた像が視認され、より多様な像の表現が可能であり、表示体付きデバイス110における偽造の困難性や意匠性がより高められる。
(16)凸部11Tの形成にナノインプリント法を用いる製造方法、すなわち、基材11aの表面に塗工された樹脂に凹版の有する凹凸を転写することにより、支持部11と複数の凸部11Tとから構成される周期構造体を形成する製造方法であれば、微細な凹凸を有する周期構造体を、容易にかつ好適に形成することができる。
<第2実施形態の変形例>
上記第2実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1金属層23と第2金属層42とは、図11に示した形状的特徴を有し得る。そして、金属層61は、第1中間誘電体層32の側面に位置して第2金属層42に連続する金属層である中間金属層32Aを含み得る。中間金属層32Aは、第1中間誘電体層32と第2中間誘電体層34とに挟まれ、第1中間誘電体層32の側面上での厚みが、第1金属層23に近い部位ほど薄い。なお、中間金属層32Aの存在によって、中間格子層31でもプラズモン共鳴が生じ得る。
・第2実施形態においても、第1実施形態の図12で示した構造と同様に、凸部11Tの形状は、支持部11の表面から突き出る錐体状であってもよい。
・表示体は、第1表示領域10Aに含まれる領域として、構造周期PTが互いに一致し、かつ、表示体を構成する材料のうち誘電体層62の材料のみが互いに異なる複数の領域を備えていてもよい。こうした構成によれば、反射観察において、第1表示領域10Aにおける複数の領域に互いに異なる色彩を視認させることができる。そして、上記複数の領域に対し、凸部11Tや金属層61を同一の工程で形成することができるため、上記表示体を容易に製造することができる。
・図19が示すように、表示体は、誘電体層62の上に保護層45をさらに備えてもよい。こうした構成によれば、支持部11および凸部11Tと、金属層61と、誘電体層62とから構成される構造体を保護することができる。保護層45は、第2上部誘電体層53と一体の構造体に具体化できる。この際、保護層45は、低屈折率の樹脂層であることが好ましい。低屈折率の樹脂層は、第1誘電体層22の屈折率や第1中間誘電体層32の屈折率よりも空気層の屈折率に近い屈折率を有する。
また、人が素手で表示体を触る用途に表示体が用いられる場合、表示体の表面を構成する保護層45がフッ素を含む樹脂から構成されることが好ましい。こうした構成によれば、表示体の表面に皮脂などの汚れが付着することが抑えられる。
なお、保護層45は、図19が示すように平坦な表面を有していてもよいし、誘電体層62の表面形状に追従した形状を有していてもよい。
・表示体の表面10Sと対向する方向から見た孤立領域A2の配置は、孤立領域A2が並ぶ第1の方向と、孤立領域A2が並ぶ方向であって第1の方向に交差する第2の方向とで孤立領域A2間の隙間距離が異なれば、正方配列、六方配列および長方配列に限らず、二次元格子状の配列であればよい。すなわち、複数の第1誘電体層22は二次元格子状に並んでいればよく、また、複数の第1中間誘電体層32も二次元格子状に並んでいればよく、また、複数の第2金属層42も二次元格子状に並んでいればよく、また、複数の第1上部誘電体層52も二次元格子状に並んでいればよい。換言すれば、周期構造体の周期要素は、第1の方向と、第2の方向とで孤立領域A2間の隙間距離が異なる、サブ波長周期を有した二次元格子状に並んでいればよい。二次元格子状の配列は、二次元平面内において交差する2つの方向の各々に沿って要素が並ぶ配列である。この際、表示体が有する各層の厚さが構造周期PTに対して所定の範囲内であるとは、周期要素が並ぶ上記2つの方向の各々における構造周期PTに対して、各層の厚さが所定の範囲内であることを示す。
また、表示体の表面10Sと対向する方向から見た孤立領域A2の形状、すなわち、周期要素の平面形状は、正方形や長方形に限らず、他の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
・図20が示すように、孤立領域A2には、支持部11の表面から窪む凹部11Hが位置してもよい。表示体の表面10Sと対向する方向から見て、複数の凹部11Hは、サブ波長周期を有した二次元格子状に並ぶ。こうした構成においては、支持部11が周期構造体である。すなわち、周期構造体が有する周期要素は、支持部11の表面を基準面として、基準面から窪む凹部11Hであってもよい。この場合も、金属層61は、周期構造体の表面形状に追従する形状を有し、誘電体層62は、金属層61の表面形状に追従する形状を有する。この際、各凹部11Hの底面に位置する金属層71と、支持部11のなかで各金属層71を囲う網目状の部分とによって、金属と誘電体とからなる格子構造が形成される。また、金属層71上に位置する誘電体層72と、基準面に位置して各誘電体層72を囲う網目状の金属層73とによっても、金属と誘電体とからなる格子構造が形成される。表示体に光が照射されると、これらの格子構造を有する層にて、プラズモン共鳴が生じることに起因して、上記実施形態と同様に、表面反射観察と裏面透過観察とで異なる色彩が視認され、また、裏面反射観察と表面透過観察とで異なる色彩が視認され、また、表面反射観察と裏面反射観察とで異なる色彩が視認される。
なお、周期要素が凹部11Hである場合も、基準面と周期要素とを含む平面において、単位面積あたりにおいて周期要素が占める面積の割合は、0.1よりも大きく0.5よりも小さいことが好ましい。上記面積の割合が上記範囲内であれば、金属層61および誘電体層62が、周期構造体の表面の凹凸形状に追従した形状に形成されやすい。また、上記面積の割合が上記範囲内であれば、周期構造体の耐久性が高められるとともに、凹部11Hの加工の精度が得られやすい。なお、第1実施形態の表示体においても、周期要素は、基準面から窪む凹部11Hであってもよい。
・表示体付きデバイスが備える表示体は、第1実施形態の表示体であってもよい。
[実施例]
上述した表示体およびその製造方法について、具体的な実施例を用いて説明する。
まず、光ナノインプリント法で用いる凹版であるモールドを用意した。具体的には、合成石英基板の表面に、クロム(Cr)からなる膜をスパッタリングによって10nmの厚さに成膜し、電子線リソグラフィによって電子線レジストパターンをCr膜上に形成した。使用したレジストはポジ型であり、膜厚は150nmとした。形成したパターンは、一辺が1cmである正方形形状の領域内に、一辺が160nmである正方形を、構造周期P2Tが320nm、構造周期PT3が350の長方配列に配置したパターンであり、電子線を描画した領域は上記正方形の内側領域である。
次に、塩素と酸素との混合ガスに高周波を印加して発生させたプラズマにより、レジストから露出した領域のCr膜をエッチングした。続いて、六弗化エタンガスに高周波を印加して発生させたプラズマにより、レジストおよびCr膜から露出した領域の合成石英基板をエッチングした。これによりエッチングした合成石英基板の深さは100nmであった。残存したレジストおよびCr膜を除去し、凹凸構造が形成されたモールドを得た。モールドの表面には、離型剤としてオプツールHD-1100(ダイキン工業製)を塗布した。
次に、上記モールドのパターンが形成された面である表面に紫外線硬化性樹脂を塗工した。そして、片面に易接着処理が施されたポリエチレンテレフタラートフィルムを用い、このフィルムの易接着処理が施された面でモールドの表面を覆った。さらに、モールドにおけるパターンの形成された領域の全体に紫外線硬化性樹脂が広がるように、ローラーを用いて紫外線硬化性樹脂を延ばし、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化した後、モールドからポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離した。これにより、六方配列に並ぶ凸部のパターンが紫外線硬化性樹脂の表面に形成され、この紫外線硬化性樹脂からなる層とポリエチレンテレフタラートフィルムである基材との積層体である周期構造体を得た。硬化後の紫外線硬化性樹脂の屈折率は1.52であった。
次に、上記周期構造体の表面に真空蒸着法を用いてアルミニウム(Al)からなる膜を50nmの厚さに成膜することにより、金属層を形成した。さらに、金属層の表面に、二酸化珪素(SiO2)からなる膜を150nmの厚さに成膜することにより、誘電体層を形成した。これにより、実施例の表示体を得た。実施例の表示体は、第2実施形態の表示体に相当する。基材に対して誘電体層の位置する側が表示体の表面側であり、誘電体層に対して基材の位置する側が表示体の裏面側である。
実施例の表示体に対し白色の光を照射して観察したところ、凸部のパターンが形成されている領域においては、表面反射観察によって黒色に近い青色が観察され、裏面反射観察によって紫色が観察され、表面透過観察および裏面透過観察によって橙色が観察された。また、凸部のパターンが形成されていない領域では、アルミニウムからなる金属層からの反射光として、金属光沢を有する色が観察された。