実施の形態1.
以下、本発明に係る空調システム及び利用側ユニットの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システム100を示す模式図である。図1に示すように、例えば室外機である熱源側ユニット1と、室内等の空調空間の空気を調整する複数の利用側ユニット2a,2b,2c,2dと、熱源側ユニット1とは別に空気調和の対象でない非空調空間8等に設置される中継ユニット3と、これらを制御する制御装置50とを備えている。熱源側ユニット1と中継ユニット3とは、2本の冷媒配管4で接続され、二相変化する冷媒又は超臨界状態の冷媒が流れる冷媒回路が構成されている。中継ユニット3と利用側ユニット2a,2b,2c,2dとは2本の熱媒体配管5で接続され、水、ブライン又は不凍液等といった熱媒体が流れる熱媒体回路が構成されている。このように、2本の配管が用いられることにより、空調システム100の施工が容易となる。
熱源側ユニット1は、通常、ビル等の建物9の外部空間である室外空間6に設置されている。利用側ユニット2a,2b,2c,2dは、ビル等の建物9の内部の居室等の室内空間7において、加熱された又は冷却された熱媒体が送り届けられる位置に設置されている。中継ユニット3は、熱源側ユニット1及び利用側ユニット2a,2b,2c,2dとは別の筐体として構成されており、冷媒配管4及び熱媒体配管5によって接続されて、室外空間6及び室内空間7とは別の場所に設置される。中継ユニット3は、建物9の内部のうち、室内空間7とは別の空間である例えば天井裏等の非空調空間8に設置されている。なお、中継ユニット3は、エレベータ等が設けられた共用部等に設置されてもよい。
中継ユニット3は、1つの親中継ユニット3aと2つの子中継ユニット3bとから構成されている。これにより、1つの親中継ユニット3aに対し、複数の子中継ユニット3b(1),3b(2)を接続することができる。なお、本実施の形態1では、親中継ユニット3aと子中継ユニット3bとの間の接続配管は3本である。
図2は、本発明の実施の形態1の第1変形例に係る空調システム100を示す模式図である。図2に示すように、中継ユニット3が1つであってもよい。接続される利用側ユニット2a,2b,2c,2dが少ない場合に、中継ユニット3の数を減らすことができる。
なお、本実施の形態1では、熱源側ユニット1は、建物9の外の室外空間6に設置されている場合について例示しているが、換気口が設けられた機械室等といった閉空間に設置されてもよいし、建物9の内部に設置されて排気ダクトによって廃熱を建物9の外に排気してもよいし、水冷式の熱源側ユニット1として建物9の内部に設置されてもよい。また、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが天井カセット型である場合について例示しているが、利用側ユニット2a,2b,2c,2dは、天井埋め込み型又は天井吊り下げ型等のように、室内空間7に直接又はダクト等を用いて接続され、加熱された空気又は冷却された空気を室内空間7に供給できるものであればよい。なお、中継ユニット3は、熱源側ユニット1の近傍に配置されてもよいが、熱媒体の移送動力を減らして省エネ化するために、中継ユニット3と利用側ユニット2a,2b,2c,2dとの距離は短い方が望ましい。なお、本実施の形態1では、1台の熱源側ユニット1に4台の利用側ユニット2a,2b,2c,2dが接続されている場合について例示するが、熱源側ユニット1の台数は2台以上でもよいし、利用側ユニット2a,2b,2c,2dの台数は1台から3台でも5台以上でもよい。
(熱源側ユニット1)
図3は、本発明の実施の形態1に係る空調システム100を示す回路図である。図3に示すように、熱源側ユニット1は、圧縮機10、流路切替装置11、熱源側熱交換器12、アキュムレータ17及び熱源側流路調整ユニット13を有している。
圧縮機10は、吸入した冷媒を圧縮して高温且つ高圧の状態で吐出する。圧縮機10は、吐出側が流路切替装置11に接続され、吸入側がアキュムレータ17に接続される。圧縮機10は、例えば容量制御可能なインバータ圧縮機等である。流路切替装置11は、例えば四方弁であり、運転モードに応じて冷媒の流れる方向を切り替える。流路切替装置11は、運転モードが冷房運転であるとき、圧縮機10の吐出側と熱源側熱交換器12とを接続し、熱源側流路調整ユニット13とアキュムレータ17の吸入側とを接続する。また、流路切替装置11は、運転モードが暖房運転であるとき、圧縮機10の吐出側と熱源側流路調整ユニット13とを接続し、熱源側熱交換器12とアキュムレータ17の吸入側とを接続する。なお、流路切替装置11は、四方弁である場合について例示しているが、二方弁又は三方弁等を組み合わせることによって構成されてもよい。
熱源側熱交換器12は、例えばプレート内を流れる冷媒とプレート内を流れる水又は不凍液等の熱媒体との間で熱交換するプレート型熱交換器である。熱源側熱交換器12は、一方が流路切替装置11に接続され、他方が熱源側流路調整ユニット13を介して高圧側の冷媒配管4に接続されている。熱源側熱交換器12は、冷房運転時に凝縮器として作用し、暖房運転時に蒸発器として作用する。なお、熱源側熱交換器12の近傍に熱源側送風機(図示せず)が設けられてもよい。これにより、熱源側熱交換器12の熱媒体の凝縮及び蒸発を促進させることができる。なお、熱源側熱交換器12は、プレート型熱交換器に限定されず、放熱または吸熱が可能な構成であればよい。
アキュムレータ17は、暖房運転時に流れる冷媒と冷房運転時に流れる冷媒との差である余剰冷媒を蓄える。また、アキュムレータ17は、例えば利用側ユニット2a,2b,2c,2dの運転台数の変化といった過度的な運転の変化によって生じる余剰冷媒を蓄える。アキュムレータ17は、一方が圧縮機10の吸入側に接続され、他方が流路切替装置11に接続されている。なお、アキュムレータ17は省略されてもよい。
熱源側流路調整ユニット13は、冷房運転及び暖房運転のいずれの場合にも、熱源側ユニット1から中継ユニット3に流れる冷媒の流れを一定方向にするものであり、第1の逆止弁13b、第2の逆止弁13c、第3の逆止弁13a及び第4の逆止弁13dを有している。第1の逆止弁13bは、流路切替装置11と高圧側の冷媒配管4とを接続する配管に設けられ、流路切替装置11から高圧側の冷媒配管4に向かう冷媒の流れを許容する。第2の逆止弁13cは、熱源側熱交換器12と低圧側の冷媒配管4とを接続する配管に設けられ、低圧側の冷媒配管4から熱源側熱交換器12に向かう冷媒の流れを許容する。第3の逆止弁13aは、熱源側熱交換器12と高圧側の冷媒配管4とを接続する配管に設けられ、熱源側熱交換器12から高圧側の冷媒配管4に向かう冷媒の流れを許容する。第4の逆止弁13dは、流路切替装置11と低圧側の冷媒配管4とを接続する配管に設けられ、低圧側の冷媒配管4から流路切替装置11に向かう冷媒の流れを許容する。なお、熱源側流路調整ユニット13は、省略されてもよい。
(利用側ユニット2a,2b,2c,2d)
利用側ユニット2a,2b,2c,2dは、例えば居室等の建物9の内部の空間である室内空間7において、冷房用空気又は暖房用空気を供給することができる位置に配置されている。これにより、利用側ユニット2a,2b,2c,2dは、空調対象空間である室内空間7に冷房用空気又は暖房用空気を供給する。利用側ユニット2a,2b,2c,2dには、有線又は無線によってリモコン(図示せず)が接続されており、利用者がリモコンを操作することによって、リモコンから利用側ユニット2a,2b,2c,2dに所定の信号が送信される。各利用側ユニット2a,2b,2c,2dは、それぞれ利用側熱交換器26a,26b,26c,26d及び利用側送風機20a,20b,20c,20dを有している。
利用側熱交換器26a,26b,26c,26dは、利用側送風機20a,20b,20c,20dから供給される負荷熱媒体である空気と熱媒体との間で熱交換して、室内空間7に冷房用空気又は暖房用空気として供給する。利用側熱交換器26a,26b,26c,26dは、冷媒配管4を介して、中継ユニット3にそれぞれ接続されている。利用側熱交換器26a,26b,26c,26dは、冷房運転時に蒸発器として作用し、暖房運転時に凝縮器として作用する。利用側送風機20a,20b,20c,20dは、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに室内空気を送る。これにより、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの熱媒体の凝縮または蒸発を促進させることができる。なお、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dが放射熱を利用するものであれば、利用側送風機20a,20b,20c,20dを省略することもできる。なお、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが設置されている室内には、室内の温度を検出する室内温度センサ39が設けられている。
(中継ユニット3)
中継ユニット3は、熱源側ユニット1及び複数の利用側ユニット2a,2b,2c,2dとは別の筐体からなり、室外空間6及び室内空間7とは別の位置に設置可能である。中継ユニット3は、高圧側の冷媒配管4及び低圧側の冷媒配管4を介して熱源側ユニット1に接続され、熱媒体配管5を介して各利用側ユニット2a,2b,2c,2dに接続されている。中継ユニット3は、熱源側ユニット1から供給される冷熱又は温熱を各利用側ユニット2a,2b,2c,2dに分配する。中継ユニット3は、前述の如く、親中継ユニット3aと、子中継ユニット3bとから構成されている。
親中継ユニット3aは、気液分離器14と、膨張部16eとを備えている。気液分離器14は、熱源側ユニット1から供給される高圧の気液二相冷媒を、液冷媒とガス冷媒とに分離する。気液分離器14は、中継ユニット3の入口に設置され、高圧側の冷媒配管4を介して熱源側ユニット1に接続されている。膨張部32は、例えば開度が変更自在の電子式膨張弁からなり、冷媒を減圧して膨張させる。なお、CO2冷媒が使用される場合、超臨界サイクルとなるため、冷媒を冷却する放熱器では、冷媒は液化しない。このため、原則として暖房運転が実施される。このとき、気液分離器14においてガス冷媒は、中間熱交換器15aに流出する。
子中継ユニット3bは、中間熱交換器15a,15b、子膨張部16a,16b,16c,16d、ポンプ21a,21b、流路切替弁22a,22b,22c,22d、23a,23b,23c,23d、止め弁24a,24b,24c,24d、バイパス回路27a,27b,27c,27d及び流量調整弁25a,25b,25c,25dを有している。中間熱交換器15a,15bは、冷媒と熱媒体との間で熱交換する熱交換器である。本実施の形態1では、加熱用の中間熱交換器15a及び冷却用の中間熱交換器15bの2つが設置されている場合について例示しているが、暖房又は冷房のいずれか一方のみが行われる場合、中間熱交換器15a,15bは1台で済む。この場合、凍結防止運転時に、別の中間熱交換器15a,15bに熱媒体を流す必要がないため、流路を簡素化することができる。また、加熱用の中間熱交換器15a及び冷却用の中間熱交換器15bはそれぞれ複数個設けられてもよい。
子膨張部16a,16b,16c,16dは、4つ設けられ、例えば開度が変更自在の電子式膨張弁からなり、冷媒を減圧して膨張させる。ポンプ21a,21bは、それぞれの中間熱交換器15a,15bの下流側に設けられており、熱媒体を移送する。流路切替弁22a,22b,22c,22d,23a,23b,23c,23dは、三方弁等からなり、各利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口側流路と出口側流路とに対応して設けられており、流路切替弁22a,22b,22c,22dは中間熱交換器15a,15bの間で出口側流路を切り替え、流路切替弁23a,23b,23c,23dは入口側流路を切り替える。
本実施の形態1では、流路切替弁22a,22b,22c,22dが中間熱交換器15a,15bの間で出口側流路を切り替え、流路切替弁23a,23b,23c,23dが中間熱交換器15a,15bの間で入口側流路を切り替えている。なお、流路切替弁22a,22b,22c,22d,23a,23b,23c,23dは、三方弁等の三方流路を切り替えるものでもよいし、二方流路を切り替える開閉弁等を2つ組み合わせたものでもよい。また、流路切替弁22a,22b,22c,22d,23a,23b,23c,23dは、ステッピングモータ駆動式の混合弁等の三方流路の流量を変化させるもの又は二方流路の流量を変化させる電子式膨張弁等を2つ組み合わせたものでもよい。これにより、流路の突然の開閉によるウォーターハンマーを抑制することができる。
なお、流路切替弁22a,22b,22c,22d,23a,23b,23c,23d、止め弁24a,24b,24c,24d及び流量調整弁25a,25b,25c,25dは、各利用側熱交換器26a,26b,26c,26dにそれぞれ1つずつ接続される場合について例示しているが、各利用側熱交換器26a,26b,26c,26d1つに対し、それぞれが複数接続されてもよい。この場合、同じ利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに接続されている流路切替弁22a,22b,22c,22d,23a,23b,23c,23d、止め弁24a,24b,24c,24d及び流量調整弁25a,25b,25c,25dは、同じように動作させればよい。
止め弁24a,24b,24c,24dは、熱媒体回路に設けられ、熱媒体配管5に流れる熱媒体の流れを遮断する。バイパス回路27a,27b,27c,27dは、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口側と出口側とを接続し、熱媒体をバイパスする。流量調整弁25a,25b,25c,25dは、三方弁等からなり、熱媒体が利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに流れるかバイパス回路27a,27b,27c,27dに流れるかを切り替える。
ここで冷媒回路は、圧縮機10、流路切替装置11、熱源側熱交換器12、膨張部16e、気液分離器14、中間熱交換器15a,15b及び子膨張部16a,16b,16c,16dが冷媒配管4により接続されて構成されている。冷媒回路に流れる冷媒は、R-22及びR-134a等の単一冷媒、R-410A及びR-404A等の疑似共沸混合冷媒、R-407C等の非共沸混合冷媒、化学式内に二重結合を含むCF3CF=CH2等の地球温暖化係数が比較的小さい値とされている冷媒又はその混合物、CO2又はプロパン等の自然冷媒とすることができる。
また1つの熱媒体回路が、中間熱交換器15a、ポンプ21a、流路切替弁22a,22b,22c,22d、止め弁24a,24b,24c,24d、利用側熱交換器26a,26b,26c,26d、流量調整弁25a,25b,25c,25d及び流路切替弁23a,23b,23c,23dが熱媒体配管5により接続されて構成されている。さらに別の熱媒体回路が、中間熱交換器15b、ポンプ21b、流路切替弁23a,23b,23c,23d、止め弁24a,24b,24c,24d、利用側熱交換器26a,26b,26c,26d、流量調整弁25a,25b,25c,25d及び流路切替弁22a,22b,22c,22dが熱媒体配管5により接続されて熱媒体回路が構成されている。なお、各利用側熱交換器26a,26b,26c,26dは、2つの中間熱交換器15a,15bに対しそれぞれ並列に設けられており、それぞれ熱媒体回路を構成している。熱媒体回路に流れる熱媒体は、水又はブライン等である。
また、子中継ユニット3bは、第1の熱媒体温度センサ31a,31b、第2の熱媒体温度センサ32a,32b、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33d、第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34d、第5の温度センサ35、第6の温度センサ37、第7の温度センサ38及び圧力センサ36を有している。第1の熱媒体温度センサ31a,31bは、中間熱交換器15a,15bの出口側の熱媒体の温度を検出する。第2の熱媒体温度センサ32a,32bは、中間熱交換器15a,15bの入口側の熱媒体の温度を検出する。
第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33dは、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの冷房時の入口側の熱媒体の温度を検出する。第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dは、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの冷房時の出口側の熱媒体の温度を検出する。第5の温度センサ35は、中間熱交換器15aの出口側の冷媒の温度を検出する。圧力センサ36は、中間熱交換器15aの出口側の冷媒の圧力を検出する。第6の温度センサ37は、中間熱交換器15bの入口側の冷媒の温度を検出する。第7の温度センサ38は、中間熱交換器15bの出口側の冷媒の温度を検出する。なお、これらの温度センサ及び圧力センサ36として、各種の温度計、温度センサ、圧力計又は圧力センサ36等が用いられる。
なお、流量調整弁25a,25b,25c,25d、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33d、第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dが、中継ユニット3の内部に設置されている場合について例示しているが、これに限らない。例えば、流量調整弁25a,25b,25c,25d、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33d、第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dが利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの近傍、即ち利用側ユニット2a,2b,2c,2dの内部又は近傍に設置されてもよい。
(熱負荷)
次に、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dのそれぞれにおける熱負荷について説明する。利用側熱交換器26a,26b,26c,26dのそれぞれの熱負荷は、(1)式で表される。熱負荷は、熱媒体の流量と密度と定圧比熱と、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口と出口の熱媒体の温度差とを乗じることによって求められる。ここで、Vwは熱媒体の流量、ρwは熱媒体の密度、Cpwは熱媒体の定圧比熱、Twは熱媒体の温度、添字のinは利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口側の熱媒体の値、添字のoutは利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの出口側の熱媒体の値を示す。
(1)式より、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dへ流す熱媒体の流量が一定の場合、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dでの熱負荷の変化に応じ、熱媒体の入出口での温度差が変化する。そこで、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入出口の温度差を目標とし、予め定めた目標値に近づくように、流量調整弁25a,25b,25c,25dが制御される。これにより、余分な熱媒体がバイパス回路27a,27b,27c,27dに流れて、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dへ流れる流量を制御することができる。利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口側と出口側との温度差の目標値は、例えば5℃等に設定される。
なお、本実施の形態1では、流量調整弁25a,25b,25c,25dが利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの下流側に設置する混合弁である場合を例に説明を行ったが、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの上流側に設置する三方弁であってもよい。
そして、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dにおいて熱交換を行った熱媒体と、熱交換を行わず温度変化をせずバイパス回路27a,27b,27c,27dを通過した熱媒体とは、その後の合流部で合流する。合流部においては、(2)式が成り立つ。ここで、Twin、Twoutは利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口側及び出口側の熱媒体温度、Vwは流量調整弁25a,25b,25c,25dへ流入する熱媒体の流量、Vwrは利用側熱交換器26a,26b,26c,26dへ流入する熱媒体の流量、Twは利用側熱交換器26a,26b,26c,26dを流れた熱媒体とバイパス回路27a,27b,27c,27dに流れた熱媒体とが合流した後の熱媒体の温度を表す。
(2)式より、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dにおいて熱交換を行い温度が変化した熱媒体と、熱交換を行わず温度変化をせずバイパス回路27a,27b,27c,27dを通過した熱媒体とが、合流すると、熱媒体の温度差がバイパスされた流量の分、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口側の温度に近づく。例えば、全流量が20L/min、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの熱媒体入口温度が7℃、出口温度が13℃、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの側に流れた流量が10L/minである時、その後の合流後の温度は、(2)式より、10℃となる。
利用側ユニット2a,2b,2c,2d又はバイパス回路27a,27b,27c,27dを通過して、流路切替弁22a,22b,22c,22dを通ったあとに合流した熱媒体は、中間熱交換器15a,15bへ流入する。この際、中間熱交換器15a,15bの熱交換量が変わらなければ、中間熱交換器15a又は15bでの熱交換により、入口側と出口側での熱媒体の温度差はほぼ同じになる。例えば、中間熱交換器15a又は15bの入口側と出口側で熱媒体の温度差が6℃となっており、当初は、中間熱交換器15a又は15bの入口側での熱媒体の温度が13℃、出口側の熱媒体の温度が7℃となっていたとする。そして、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dでの熱負荷が下がり、中間熱交換器15a又は15bの入口側の熱媒体の温度が10℃に低下したとする。すると、何もしなければ、中間熱交換器15a又は15bはほぼ同じ量の熱交換を行うため、中間熱交換器15a又は15bから熱媒体は4℃にて流出し、これが繰り返され、出口側の熱媒体の温度が下がっていってしまう。
そこで、中間熱交換器15a又は15bの出口側の熱媒体の温度が目標値に近づくように、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの熱負荷の変化に応じて、ポンプ21a,21bの回転数を変化させる。これにより、熱負荷が下がったときは、ポンプ21a,21bの回転数が下がって省エネになり、熱負荷が上がった時は、ポンプ21a,21bの回転数が上がって、熱媒体の流量Vwを増やすことができる。
ポンプ21bは、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dのいずれかにて、冷房負荷又は除湿負荷が発生した場合に動作し、いずれの利用側熱交換器26a,26b,26c,26dにおいても、冷房負荷及び除湿負荷がない場合は停止する。また、ポンプ21aは、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dのいずれかにて、暖房負荷が発生した場合に動作し、いずれの利用側熱交換器26a,26b,26c,26dにおいても、暖房負荷がない場合は停止する。
(制御装置50)
本実施の形態1では、制御装置50が一つである場合について説明するが、制御装置50は、図3に示すように、熱源側制御装置50aと中継側制御装置50bとに分離されていてもよい。この場合、熱源側制御装置50aは、熱源側ユニット1が室外機として機能するように制御し、中継側制御装置50bは、中継ユニット3を構成する機器を制御する。熱源側制御装置50a及び中継側制御装置50bは、マイコン及び電気回路等からなり、互いに通信可能である。なお、中継側制御装置50bは、リモコン、ネットワークに接続された他の空調機器、熱源側ユニット1及び利用側ユニット2a,2b,2c,2dと通信可能に接続されてもよい。なお、熱源側制御装置50a及び中継側制御装置50bは、空調システム100の全体を統括する集中コントローラに接続されてもよい。
また、中継側制御装置50bの機能は、熱源側ユニット1、利用側ユニット2a,2b,2c,2d、集中コントローラ、リモコン又はネットワークに接続された他の空調機器のいずれかと分担されてもよい。ここで、集中コントローラは、熱源側ユニット1及び利用側ユニット2a,2b,2c,2dを管理し、リモコンは室内空間7に設けられてユーザから指示された室温情報を、熱源側ユニット1及び利用側ユニット2a,2b,2c,2dに送信する。リモコンからの情報は、熱源側制御装置50aを介して熱源側ユニット1に送信されてもよい。このように、省エネ性の観点から、熱源側ユニット1とリモコンとが通信する場合もある。なお、制御装置50は、本実施の形態1のように複数の機器で構成されてもよいし単一の機器で構成されてもよい。本実施の形態1は、各利用側ユニット2a,2b,2c,2dがそれぞれ冷房運転又は暖房運転が可能な冷暖混在運転を行う空調システム100である。
図4は、本発明の実施の形態1に係る制御装置50の物理的な構成を示すハードウエア構成図である。図4に示すように、制御装置50は、空調システム100の動作を制御するものであり、通信部54と、制御判定部51と、記憶手段55とを有している。通信部54、制御判定部51及び記憶手段55は、内部バスで接続されている。通信部54は、通信ポートに接続された送受信回路であり、通信ポートを介して通信の送受信をする。制御判定部51は、例えばマイクロコンピュータであり、通信部54が受信したデータを、必要に応じて記憶手段55に格納する。また、制御判定部51は、記憶手段55に格納されたデータを読み出し、読み出したデータを通信部54を介して送信対象に送信する。記憶手段55は、各種データを記憶するRAMである。
図5は、本発明の実施の形態1に係る制御装置50の機能的な構成を示すブロック図である。図5に示すように、制御装置50は、入力部52と、出力部53と、通信部54と、記憶手段55と、制御判定部51とを有している。なお、制御装置50の機能は、マイコンが実行するプログラムによって実現されてもよい。入力部52は、ユーザから設定される設定温度に代表される情報を取得する。また、入力部52は、第1の熱媒体温度センサ31a,31b等の検出結果を読み込む。出力部53は、バイパス回路27a,27b,27c,27dに流れる熱媒体の流量を調節する制御情報等を流量調整弁25a,25b,25c,25dに出力する。通信部54は、利用側ユニット2a,2b,2c,2d、熱源側ユニット1、集中コントローラ等の空調システム100を構成する機器と通信する。例えば、温度、バルブ開閉、流路制御装置の制御、圧縮機10の周波数及び空調システム100の運転停止等の情報が通信される。ここで、制御装置50は、蓄熱モードと利用モードとを有している。蓄熱モードは、圧縮機10が動作しているときに、利用側熱交換器26a,26b,26c,26d又は熱媒体配管5を用いて熱媒体が有する温熱又は冷熱を蓄えるモードである。利用モードは、蓄熱モードにおいて蓄えられた温熱又は冷熱を利用するモードである。
記憶手段55は、メモリ等からなり、熱媒体流量制御情報55aと空間情報55bとを有している。熱媒体流量制御情報55aは、ユーザが設定する目標設定温度と、室内温度センサ39の検出結果に基づいた熱媒体の流量制御に必要な情報とからなる。熱媒体の流量制御に必要な情報とは、例えば、利用側ユニット2a,2b,2c,2dの入口温度、出口温度及び吸込み温度等である。空調システム100は、利用側ユニット2a,2b,2c,2dの入口温度、出口温度及び吸込み温度等に基づいて各利用側ユニット2a,2b,2c,2dの運転能力を算出し、設定温度に到達するように空気調和する。空間情報55bは、室内空間7と設置されている利用側ユニット2a,2b,2c,2dとの対応を識別する情報と、設置された空間の特性とからなる。ここで、利用側ユニット2a,2b,2c,2dを識別する情報とは、室内空間7の間取り、又は利用側ユニット2a,2b,2c,2dが有する通信用の固有アドレス等である。空間の特性は、室内空間7が電算室として利用されていること、又は特定の時間帯に空室となること等の情報である。また、空間の特性は、ほかに、空間の温度変化が許容範囲にあること等の情報である。なお、記憶手段55は、制御装置50に組み込まれていなくてもよい。
制御判定部51は、入力部52から受け取った情報を、記憶手段55及び通信部54からの情報と照合して、各機器の制御内容を出力部53に送信する。ここで、通信部54からの情報とは、前述の如く、例えば、温度、バルブ開閉、流路制御装置の制御、圧縮機10の周波数及び空調システム100の運転停止等の情報である。制御判定部51は、蓄熱手段51a、凍結抑制手段51b及び熱媒体流量制御手段51cを有している。
蓄熱手段51aは、蓄熱モードにおいて、圧縮機10が動作しているときに、熱媒体が有する温熱又は冷熱を躯体に蓄えるものである。本実施の形態1では、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dを利用して熱を蓄える場合について例示しており、空室に蓄熱される。蓄熱手段51aは、入力部52から利用側熱交換器26a,26b,26c,26dが設置された室内空間7のいずれかが空室であるという情報を受け取った場合、空室である室内空間7に設置された利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに流れる熱媒体が有する温熱又は冷熱を空室に蓄える。本実施の形態1では、空室であるという情報は、ユーザがリモコン等で操作して入力部52を介して蓄熱手段51aが受け取り、記憶手段55に空間情報55bとして格納される。蓄熱手段51aは、空室の判定を行う。ここで、空室とは、人が不在の部屋のことである。空室の例として、居室、倉庫又は電算室等が挙げられる。倉庫の場合、保管される荷物の保管状態を考慮して、庫内温度の上限値及び下限値(空間情報55b)が設定される。電算室の場合、必要以上に冷却されることによって、蓄冷される。なお、空間情報55bの設定は、集中コントローラによるユーザインターフェースを用いてもよい。ここで、ユーザインターフェースを用いるとは、表示装置で設定することをいう。また、空間情報55bの設定は、複数のスイッチによる機械的なオン又はオフの状態を組み合わせてもよい。更に、空間情報55bのうち静的な情報は、空調システム100の製造時に予め設定されてもよい。
凍結抑制手段51bは、利用モードにおいて、蓄熱手段51aによって蓄えられた温熱を熱媒体に流して熱媒体の凍結を抑制するものである。凍結抑制手段51bは、熱媒体の温度が温度閾値以下の場合、蓄熱手段51aによって蓄えられた温熱を熱媒体に流して熱媒体の凍結を抑制する凍結防止運転を中間熱交換器15a,15bに実施させる。中間熱交換器15a,15bから利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに至る熱媒体の流路は、概して建物9の内部に設置されており、通常は熱媒体の凍結温度、例えば水の場合は0℃よりも高い温度に保たれている。ここで、圧縮機10及びポンプ21a,21bが長期間停止されていた場合、又は、中間熱交換器15a,15bが屋外に設置されている場合等に、熱媒体回路が冷やされ凍結温度に至る可能性がある。特に、深夜等は外気の温度低下が顕著であり、また人が不在となることが多いために暖房が使われず停止状態が続くため、熱媒体の凍結が発生しやすい。このため、熱媒体の凍結を抑制するための凍結抑制を行う必要がある。
凍結抑制手段51bは、第1の熱媒体温度センサ31a,31b、第2の熱媒体温度センサ32a,32b、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33d又は第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dのいずれかの検出温度が、予め定めた設定温度以下になった場合に凍結防止運転を中間熱交換器15a,15bに実施させる。
凍結防止運転では、凍結抑制手段51bは、中間熱交換器15a,15bにポンプ21a又は21bを動作させて熱媒体を循環させ、熱媒体配管5内の熱媒体を攪拌することにより、熱媒体回路全体の温度を均一化することができ、温度が下がった部分の熱媒体の温度を上げ、凍結を防止することができる。
なお、第1の熱媒体温度センサ31a,31b、第2の熱媒体温度センサ32a,32b、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33d又は第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dのいずれの検出温度が設定温度以下になったかによって、ポンプ21a,21bのうち、いずれを動作させるかが変更される。凍結抑制手段51bは、第1の熱媒体温度センサ31aと第2の熱媒体温度センサ32aとのいずれかが設定温度以下になった場合は、ポンプ21aを動作させる。また、第1の熱媒体温度センサ31bと第2の熱媒体温度センサ32bとのいずれかが設定温度以下になった場合は、ポンプ21bを動作させる。更に、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33d又は第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dのいずれかが設定温度以下になった場合は、対応する利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに接続されるポンプ21a又は21bのいずれかを動作させ熱媒体を循環させる。
また、例えば日中に暖房運転をしている場合は、外気温度よりも室内温度の方が高温になる。即ち、室内空間7に存在する空気、壁及び床等の躯体に温熱が蓄えられている。このとき、非空調空間8に配設された熱媒体配管5内の熱媒体の温度より室内空間7の温度の方が高いため、室内空間7の空気と熱媒体との間で熱交換することでも凍結防止が可能である。そこで、この実施の形態の水空調システムでは加温する必要のない空室内の空気に蓄熱をして熱媒体の凍結防止に利用する。蓄熱手段51aは、空間情報55bから空室に設置されている利用側ユニット2a,2b,2c,2dを識別し、この利用側ユニット2a,2b,2c,2dの利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに取り付けられた利用側送風機20a,20b,20c,20d等で熱交換を促進することで、室内空間7に存在する空気、壁及び床等の躯体に蓄熱された温熱を熱媒体回路に流す。これにより、熱媒体の凍結を防ぐことが可能である。なお、日中は空室ではない場合でも、夜間等の凍結防止が起こり易い時間帯は空室となることが多いため、事前に空間情報55bに夜間の時間帯に限定して空室を設定することによって、空室を利用した凍結防止運転を行うことができる。
熱媒体流量制御手段51cは、蓄熱手段51a及び凍結抑制手段51bから信号を受信したとき、ポンプ21a,21b、流路切替弁22a,22b,22c,22d,23a,23b,23c,23d、流量調整弁25a,25b,25c,25d、止め弁24a,24b,24c,24d及び利用側送風機20a,20b,20c,20dの動作を制御する。具体的には、図7に示すフローチャートを用いて後述する。
図6は、本発明の実施の形態1に係る空調システム100の空室の認識動作を示すフローチャートである。制御装置50は、空室の認識動作を常時又は一定の周期で実行する。図6に示すように、制御装置50は、ユーザから入力部52を介して空室であるという情報を受け取る(ステップST1)と、空室であるという空間情報55bを記憶手段55に格納する(ステップST2)。
図7は、本発明の実施の形態1に係る空調システム100の熱媒体の凍結防止の動作を示すフローチャートである。図7に示すように、凍結抑制手段51bは、第1の熱媒体温度センサ31aによって検出された温度T1aが設定温度Ts以下になったかを判定する(ステップST11)。第1の熱媒体温度センサ31aによって検出された温度T1aが設定温度Tsより大きい場合、凍結抑制手段51bは、第2の熱媒体温度センサ32aによって検出された温度T2aが設定温度Ts以下になったかを判定する(ステップST12)。第2の熱媒体温度センサ32aによって検出された温度T2aが設定温度Tsより大きい場合、凍結抑制手段51bは、第1の熱媒体温度センサ31bによって検出された温度T1bが設定温度Ts以下になったかを判定する(ステップST13)。第1の熱媒体温度センサ31bによって検出された温度T1bが設定温度Tsより大きい場合、凍結抑制手段51bは、第2の熱媒体温度センサ32bによって検出された温度T2bが設定温度Ts以下になったかを判定する(ステップST14)。第2の熱媒体温度センサ32bによって検出された温度T2bが設定温度Tsより大きい場合、制御装置50はn=1とする(ステップST16)。ここで、nとは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dを識別するための識別子である。例えば、利用側ユニット(1)は2a、利用側ユニット(2)は2b、利用側ユニット(3)は2c、利用側ユニット(4)は2dとなり、このときのnの最大値は4である。なお、ステップST11、ステップST12、ステップST13及びステップST14において第1の熱媒体温度センサ31a,31b又は第2の熱媒体温度センサ32a,32bの検出結果のいずれかが設定温度Ts以下の場合、凍結抑制手段51bは、蓄熱手段51aによって蓄えられた熱を凍結防止に利用すると判断し、その判断結果を保持する(ステップST15)。
凍結抑制手段51bは、n番目の利用側ユニット(n)に設けられた第4の熱媒体温度センサによって検出された温度T4aが設定温度Ts以下になったかを判定する(ステップST17)。第4の熱媒体温度センサによって検出された温度T4aが設定温度Tsより大きい場合、凍結抑制手段51bは、第4の熱媒体温度センサによって検出された温度T4bが設定温度Ts以下になったかを判定する(ステップST18)。第4の熱媒体温度センサによって検出された温度T4bが設定温度Ts以下の場合、制御装置50はnが最大値であるかを判定し(ステップST20)、nが最大値でない場合、n=n+1として(ステップST21)、ステップST17に戻る。なお、ステップST17及びステップST18において第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dが設定温度Ts以下の場合、凍結抑制手段51bは、蓄熱手段51aによって蓄えられた熱を、凍結防止に利用する(ステップST19)。なお、ステップST17において、第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dの代わりに、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33dが使用されてもよい。この場合、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33dが設けられた場所は、凍結防止運転中において凍結し易いため、温度検出の正確性を高めることができる。
ステップST20においてnが最大値である場合、凍結抑制手段51bは、第1の熱媒体温度センサ31a,31b及び第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dによって検出された温度が、全て設定温度Ts以上かを判定する(ステップST22)。例えば、事前に凍結防止に必要な熱量が既に蓄熱されている場合は、ステップST22のNoとなり、蓄熱されていない場合は、ステップST22のYesとなる。なお、第2の熱媒体温度センサ32a,32b及び第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33dが、温度判定に使用されてもよい。全ての温度が設定温度Ts以上の場合、凍結抑制手段51bは、凍結防止運転を停止する(ステップST23)。
図8は、本発明の実施の形態1に係る空調システム100の躯体蓄熱の動作を示すフローチャートである。図8に示すように、蓄熱手段51aは、現在時刻で圧縮機10が運転中且つ蓄熱が必要であるかを判定する(ステップST31)。蓄熱の利用の要否は、ステップST15、ステップST19及びステップST23において決定される。圧縮機10が停止しているか蓄熱が不要である場合、制御装置50は蓄えられた熱を利用するかを判定する(ステップST32)。ステップST31又はステップST32のいずれかがYESの場合、制御装置50はn=1とする(ステップST33)。蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが空室に設置されているかを判定する(ステップST34)。
空室に設置されている場合、蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dの温度が、予め記憶された許容される温度範囲内にあるかを判定する(ステップST35)。許容される温度範囲内である場合、熱媒体流量制御手段51cは、ポンプ21a又は21bを動作させる(ステップST36)。そして、熱媒体流量制御手段51cは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dに接続される流路切替弁22a,22b,22c,22dを加熱用の中間熱交換器15a側に切り替え、流路切替弁23a,23b,23c,23dを、冷却用の中間熱交換器15b側に切り替える(ステップST37)。
その後、熱媒体流量制御手段51cは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dの流量調整弁25a,25b,25c,25dを利用側熱交換器26a,26b,26c,26d側に全開し、止め弁24a,24b,24c,24dを開き、利用側送風機20a,20b,20c,20dを運転させる(ステップST38)。そして、制御装置50はnが最大値であるかが判定され(ステップST39)、nが最大値でない場合、n=n+1として(ステップST40)、ステップST34に戻る。nが最大値の場合、制御は終了する。即ち、利用側ユニット2a,2b,2c,2dがn=1から順に最大値になるまで検索される。なお、ステップST31においてYESの場合のステップST33~ステップST40では、空室に冷熱が蓄えられる。また、ステップST32においてYESの場合のステップST33~ステップST40では、躯体に蓄えられた熱が利用される。また、ステップST32における「蓄熱された冷熱を利用する」という条件は、図7のステップST19及びステップST15に示すように熱媒体凍結防止の処理において任意で指示することができる。また、ステップST36においてポンプ21a,21bの両方を動作させてもよい。
図9は、本発明の実施の形態1に係る空調システム100の利用側ユニット2aのみが空室に設定されている場合の熱媒体の流れを示す回路図である。図9に示すように、利用側ユニット2aのみが空室に設置されている場合、熱媒体は、中間熱交換器15bによって冷却され、空室に冷熱が蓄えられる。
図10は、本発明の実施の形態1に係る空調システム100の利用側ユニット2a,2bが空室に設定されている場合の熱媒体の流れを示す回路図である。ステップST37において、流路切替弁22,23は、中間熱交換器15a又は15b側に切り替えているが、温度が低い熱媒体と温度が高い熱媒体とが撹拌するように切り替えられればよい。例えば、空室に設置されている利用側ユニット(n)の流路切替弁22が中間熱交換器15a側に切り替えられ、流路切替弁23が中間熱交換器15b側に切り替えられる。そして、空室に設置されている利用側ユニット(n+1)の流路切替弁22が中間熱交換器15b側に切り替えられ、流路切替弁23が中間熱交換器15a側に切り替えられる。
また、空室に設置されている利用側ユニット(n)の流路切替弁22が中間熱交換器15b側に切り替えられ、流路切替弁23が中間熱交換器15a側に切り替えられる。そして、空室に設置されている利用側ユニット(n+1)の流路切替弁22が中間熱交換器15a側に切り替えられ、流路切替弁23が中間熱交換器15b側に切り替えられる。この場合、図10に示すように、利用側ユニット2a,2bが空室に設置されていると、利用側ユニット2aにおいて温熱が蓄えられ、利用側ユニット2bにおいて冷熱が蓄えられる。
本実施の形態1の制御装置50の制御方法は、圧縮機10が動作しているときに、利用側熱交換器26a,26b,26c,26d又は熱媒体配管5を用いて熱媒体が有する温熱又は冷熱を蓄えるステップと、蓄えられた温熱又は冷熱を利用するステップと、を有する。
本実施の形態1によれば、制御装置50が蓄熱モードと利用モードとを有している。空調システム100は、蓄熱モードにおいて、利用側熱交換器26a,26b,26c,26d又は熱媒体配管5の内部に冷熱又は温熱を蓄えることができる。このように、空調システム100は、別途蓄熱槽が用意されなくとも冷熱又は温熱を蓄えることができる。ここで、本実施の形態1において、制御装置50は、蓄熱モードにおいて、人が不在の空室に設置された利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに流れる熱媒体が有する温熱又は冷熱を、空室に蓄える蓄熱手段51aを有する。このように、蓄熱場所は空室、即ち屋内であるため、空室に蓄えられた温熱又は冷熱は、放散され難い。従って、蓄えられた熱の利用効率を向上させることができる。
制御装置50は、利用モードにおいて、熱媒体温度センサによって検出された熱媒体の温度が温度閾値以下の場合、蓄熱モードにおいて蓄えられた温熱を熱媒体に流して熱媒体の凍結を抑制する凍結抑制手段51bを更に有する。このように、空調が不要な空室に予め蓄熱されることによって、圧縮機10を起動させずに、蓄えられた温熱を利用して熱媒体の凍結を抑制することができる。また、冷熱を蓄えることによって、凍結防止、起動時間の短縮(冷房運転及び暖房運転の応答性の向上)が図れる。
従来、熱源機と複数の室内機との間に中継機が設けられ、熱源機と中継機との間を冷媒で熱搬送し、中継機と室内機との間を水で熱搬送する水空調システムが知られている。水空調システムは、冷媒制御により、起動時間の短縮、省エネ及び省施工を実現しつつ、水を利用して冷媒の量を削減している。このような水空調システムは、外気温度が低いと水配管が凍結するおそれがあるため、運転停止時にもポンプ、圧縮機又はボイラ等を起動させて水配管の凍結を抑制している。しかし、凍結防止運転時に圧縮機等を起動するため、消費電力が増加してしまう。また、バッファタンクに蓄えられた熱を凍結防止に使用する従来のチラーシステムは、バッファタンクを起動する際に時間がかかる。
これに対し、本実施の形態1は、凍結防止時に圧縮機10を起動させる必要がないため、消費電力を削減することができる。また、本実施の形態1は、空室に蓄熱するため、ポンプ21a,21bを起動させるだけで、蓄えた熱を使用することができる。従って、起動時間が短い。
また、そのほかの従来技術として、熱源装置と複数の室内機とを接続する中継ユニットを備える空気調和装置が知られている。熱源装置と中継ユニットとの間において冷媒が熱を搬送し、中継ユニットと各室内機との間において水が熱を搬送する。冷媒制御によって、起動時間の短縮、省エネ性及び省施工性を実現しつつ、水を利用することによって使用する冷媒の量を削減している。この従来技術は、熱媒体の凍結防止のためにポンプを動かし熱媒体配管内の熱媒体を攪拌することにより、熱媒体循環回路中の温度を均一化し、温度が下がった部分の熱媒体の温度を上げ、凍結を防止している。これに対し、本実施の形態1の空調システム100は、事前に、圧縮機10の運転時に空室に冷熱を蓄熱することが可能であり、熱媒体の温度が設定温度以下の場合に、蓄熱した冷熱を熱媒体に与える等の凍結防止運転を行うことにより、従来のようなポンプ21a,21bによる熱媒体の攪拌よりも凍結防止の効果を高くすることができる。
なお、本実施の形態1では、中間熱交換器15a,15bの入口側及び出口側に温度センサが設置されている場合について例示しているが、中間熱交換器15a,15bの入口側又は出口側のいずれか一方に温度センサが設置されていればよい。この場合も、ポンプ21a,21bを制御することができる。
(第2変形例)
図11は、本発明の実施の形態1の第2変形例に係る空調システム100を示す回路図である。図11に示すように、第2変形例では、流量調整弁25a,25b,25c,25dとして二方弁が使用されており、バイパス回路27a,27b,27c,27d及び止め弁24a,24b,24c,24dが省略されている。第2変形例では、流量調整弁25a,25b,25c,25dの開口面積が制御され、熱媒体の循環流路が確保された後に、ポンプ21a,21bが動作する。
二方弁の流量調整弁25a,25b,25c,25dは、ステッピングモータ等により開口面積を連続的に変化させることができる。この場合、三方弁と同様の制御が可能であり、制御装置50は、流量調整弁25a,25b,25c,25dの開度を調整して、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに流入させる熱媒体の流量を制御する。そして、制御装置50は、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口側と出口側との温度差が予め定められた目標値例えば5℃となるように制御する。その上で、中間熱交換器15a,15bの入口側又は出口側の温度が、予め定めた目標値になるようにポンプ21a,21bの回転数を制御すればよい。
第2変形例のように、流量調整弁25a,25b,25c,25dとして二方弁を用いると、流路の開閉にも用いることができるため、止め弁24a,24b,24c,24dが不要になり、安価に空調システム100を構築することができる。なお、第2変形例のように、流量調整弁25a,25b,25c,25dとして二方弁を用いた場合は、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33d、第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dを中継ユニット3の内部又は近傍に設置し、流量調整弁25a,25b,25c,25dを利用側ユニット2a,2b,2c,2dの内部又は近傍に設置するようにしてもよい。
実施の形態2.
図12は、本発明の実施の形態2に係る空調システム100を示す回路図である。本実施の形態2は、中継ユニット18が簡略化されている点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態2では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
中継ユニット18は、中間熱交換器15と膨張部16とポンプ21とを有している。中継ユニット3には、流路切替弁22a,22b,22c,22dが省略されており、冷暖混在運転ではなく、全冷房運転及び全暖房運転が可能である。なお、止め弁24a,24b,24c,24d、流量調整弁25a,25b,25c,25d、第3の熱媒体温度センサ33a,33b,33c,33d及び第4の熱媒体温度センサ34a,34b,34c,34dは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dに設けられている。本実施の形態2では、冷暖混在運転を行う構造を省略することにより、部品点数を減らし、熱媒体配管5の本数を減らすことができる。このため、実施の形態1の躯体蓄熱を利用する処理において、流路切替弁22a,22b,22c,22dの制御が不要となるため、ポンプ21の制御等が簡略化される。
(変形例)
図13は、本発明の実施の形態2の変形例に係る空調システム100を示す回路図である。図13に示すように、変形例では、流量調整弁25a,25b,25c,25dとして二方弁が使用されており、バイパス回路27a,27b,27c,27d及び止め弁24a,24b,24c,24dが省略されている。変形例では、流量調整弁25a,25b,25c,25dの開口面積が制御され、熱媒体の循環流路が確保された後に、ポンプ21a,21bが動作する。変形例においても、実施の形態2と同様の効果を奏する。
実施の形態3.
図14は、本発明の実施の形態3に係る制御装置50を示すブロック図である。本実施の形態3は、記憶手段55が履歴情報55c及び許可情報55dを記憶している点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態3では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
本実施の形態3では、室内空間7の温度上昇の履歴、冷房又は暖房の運転履歴等に基づいて、空間情報55bの空室等を推測してユーザによる設定の手間を省く。図14に示すように、記憶手段55は、履歴情報55c及び許可情報55dを記憶している。履歴情報55cは、冷房又は暖房の運転と停止の履歴、及び温度の時間変化の履歴等の情報を含む。冷房又は暖房の運転と停止の履歴とは、利用側ユニット2a,2b,2c,2d毎に冷房又は暖房が行われた回数の履歴であり、制御装置50は、冷房又は暖房が行われた頻度が少ない場合に空室であると推測する。ここで、頻度が少ないとは、例えば試運転のみ行っている場合又は運転していない場合のことをいう。温度の時間変化の履歴とは、外気温度の時間変化又は室内温度の時間変化等の履歴であり、制御装置50は、外気温度の時間変化と室内温度の時間変化とに相関性が見出せない場合、空室ではないと推測する。
例えば、人が在室する空間では、冷房又は暖房が停止中でも、人体の発熱及び人が操作するパソコン等の機器の発熱等によって室温は上昇する。このため、制御装置50は、室内温度の上昇が、外気温度の上昇の傾向と異なる場合、空室ではないと推測する。履歴情報55cは、時間情報の履歴を併せて保存していることによって、推測の精度を向上させることができる。例えば、空室となる時間帯又は季節等を推測することができる。制御装置50は、冷房又は暖房の使用頻度の傾向を分析することによって、特定の時間帯又は季節等に空室となることを推測することができる。
許可情報55dは、空室の自動認識の許可に関する情報である。許可情報55dは、ユーザが自ら設定せずに空室を自動認識することを許可するか禁止するかを、ユーザが設定する。許可の場合、空室が自動認識され、禁止の場合、自動認識されずユーザが手動で認識する。ユーザから許可情報55dが設定される場合、制御装置50は空間情報55bと関連付けて、空間毎に自動認識の許否を設定してもよく、利用側ユニット2a,2b,2c,2d毎に自動認識の許否を設定してもよく、全ての利用側ユニット2a,2b,2c,2dに対し一括で自動認識の許否を設定してもよい。
図15は、本発明の実施の形態3に係る空調システム100の空室の自動認識動作を示すフローチャートである。制御装置50は、空室の自動認識動作を常時又は一定の周期で実行する。図15に示すように、制御装置50は、ユーザから空間情報55bが設定されたかを判定する(ステップST51)。空間情報55bが設定されている場合、制御装置50は、記憶手段55に空間情報55bを格納する(ステップST52)。空間情報55bが設定されていない場合、又は制御装置50が空間情報55bを格納すると、制御装置50はユーザから自動認識が許可されているかを判定する(ステップST53)。許可されていれば、制御装置50は許可情報55dに許可であることを付加する(ステップST54)。
許可されていない場合、又は制御装置50が許可であることを付加すると、制御装置50はn=1とする(ステップST55)。ここで、nとは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dを識別するための識別子である。例えば、利用側ユニット(1)は2a、利用側ユニット(2)は2b、利用側ユニット(3)は2c、利用側ユニット(4)は2dとなり、このときのnの最大値は4である。そして、蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)の許可情報55dが許可とされているかを判定する(ステップST56)。許可とされている場合、蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)の暖房又は冷房の頻度が低いかを判定する(ステップST57)。このとき、蓄熱手段51aは、記憶手段55に記憶された履歴情報55cを参照する。暖房又は冷房の頻度が低い場合、蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)が設置された室内空間7の室内温度の上昇と、外気温度の上昇との傾向が同じであるかを判定する(ステップST58)。室内温度の上昇と、外気温度の上昇との傾向が同じである場合、蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)が設置された室内空間7を空室と自動認識する(ステップST59)。
一方、ステップST57において運転頻度が高い場合、又はステップST58において傾向が異なる場合、制御装置50は利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)の空室の設定を解除する(ステップST62)。ステップST59の後、nが最大値であるかが判定され(ステップST60)、nが最大値でない場合、n=n+1として(ステップST61)、ステップST56に戻る。ステップST60においてnが最大値である場合、制御が終了する。即ち、利用側ユニット2a,2b,2c,2dがn=1から順に最大値になるまで、各利用側ユニット2a,2b,2c,2dが設置された室内空間7が空室として認識されるかが検索される。
なお、空調システム100が導入されて間もない場合に、利用側ユニット2a,2b,2c,2dにおいて暖房又は冷房の運転履歴が存在しない場合、ステップST57においてNOとなりステップST62に移行してもよい。同様に、利用側ユニット2a,2b,2c,2dの温度上昇の傾向が不明の場合、ステップST57においてNOとなりステップST62に移行してもよい。また、ステップST57及びステップST58のいずれもがYESとなる場合のみに空間情報55bにおいて空室と認識する場合について例示しているが、ステップST57及びステップST58のいずれか一方がYESとなる場合に空室と認識してもよい。
本実施の形態3によれば、空調対象空間の温度を検出する室内温度センサ39を更に備え、制御装置50は、室内温度センサ39によって検出された温度の時間変化の履歴を記憶する記憶手段55を更に有し、蓄熱手段51aは、記憶手段55に記憶された履歴に基づいて、空調対象空間が空室であるかを判定する機能を有する。更に、制御装置50は、冷媒回路及び熱媒体回路の運転の履歴を記憶する記憶手段55を更に有し、蓄熱手段51aは、記憶手段55に記憶された履歴に基づいて、空調対象空間が空室であるかを判定する機能を有する。そして、制御装置50は、記憶手段55に記憶された履歴に基づいて、時間帯ごとに空調対象空間が空室であるかを判定する機能を有する。このように、空調システム100が把握する運転の履歴又は温度の時間変化の履歴に基づいて、簡易的に空室を自動認識することができる。このため、ユーザによる空室の設定の手間を省くことができる。
実施の形態4.
図16は、本発明の実施の形態4に係る空調システム100の躯体蓄熱の動作を示すフローチャートである。本実施の形態4は、熱媒体配管5を利用して蓄熱されている点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態4では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
本実施の形態4では、蓄熱手段51aが事前に熱交換が未実施の利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに接続される熱媒体配管5の内部に温熱を蓄え、凍結抑制手段51bが蓄えられた温熱を利用して凍結を抑制する。熱媒体流量制御手段51cは、空室に設置された利用側ユニット2a,2b,2c,2dに接続されているバイパス回路27a,27b,27c,27dに熱媒体が流れるように、流量調整弁25a,25b,25c,25dの開度をバイパス回路27a,27b,27c,27d側に全開する。流量調整弁25a,25b,25c,25dの開度は、(2)式を満たすように調整される。
なお、熱媒体流量制御手段51cは、ポンプ21a,21bの回転数を下げ、利用側ユニット2a,2b,2c,2dに接続される流量調整弁25a,25b,25c,25dの開度を調整することによって、(1)式及び(2)式で示すように、冷房能力又は暖房能力を調整することができる。これにより、バイパス回路27a,27b,27c,27dの出口側の熱媒体が中間熱交換器15a,15bによって再び冷熱を付加され、熱媒体の平均温度が目標温度にまで偏ることを抑制することができる。
蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが運転しているかを判定し、その後、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが空室に設置されているかを判定する。そして、蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが停止しており、且つ室内に人がいる場合、熱媒体配管5の内部に熱を蓄える。また、蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが停止しており、且つ室内に人がいない場合、その空室に熱を蓄える。
図16において、ステップST31~ステップST40は、図8に示すステップST31~ステップST40と同様であるため、説明を省略する。図16に示すように、ステップST33において、制御装置50がn=1とした後、蓄熱手段51aは利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)が運転しているかを判定する(ステップST71)。利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)が運転していない場合、蓄熱手段51aは利用側ユニット2a,2b,2c,2dが空室に設定されているかを判定する(ステップST34)。利用側ユニット2a,2b,2c,2dが空室に設定されていない場合、蓄熱手段51aは、熱媒体配管5の内部に熱を蓄える。
熱媒体流量制御手段51cは、ポンプ21a又は21bを動作させる。そして、熱媒体流量調整手段は、利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)に接続される流量調整弁25a,25b,25c,25dをバイパス回路27a,27b,27c,27d側に全開する(ステップST73)。なお、ステップST31においてYESの場合のステップST72及びステップST73では、蓄熱手段51aは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが設置された空調空間の室内温度を変化させずに、バイパス回路27a,27b,27c,27dの出口側の熱媒体配管5にバイパス回路27a,27b,27c,27dの入口側の冷熱を蓄える。また、ステップST32においてYESの場合のステップST72及びステップST73では、凍結抑制手段51bは、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが設置された空調空間の室内温度を変化させずに、バイパス回路27a,27b,27c,27dの出口側の熱媒体を利用する。
ここで、蓄熱手段51aは、空調空間が空室に設定されていない場合に蓄熱する場合について例示しているが、空室に設定されている場合にも熱媒体配管5の内部に冷熱を蓄えてもよく、熱媒体配管5の内部に蓄えられた冷熱を利用してもよい。なお、本実施の形態4は、図9及び図11に示すようなバイパス回路27a,27b,27c,27dを有しない構成にも適用することができる。この場合、制御装置50が利用側送風機20a,20b,20c,20dを停止して、且つ流量調整弁25a,25b,25c,25dの開度を開くことによって、室内温度を変化させることなく熱媒体配管5の内部に熱を蓄えることができる。
本実施の形態4によれば、制御装置50は、蓄熱モードにおいて、熱交換が未実施の利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに流れる熱媒体が有する温熱又は冷熱を、熱媒体配管5の内部に蓄える蓄熱手段51aを有する。更に、蓄熱手段51aは、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dが、人が在室している室内空間7に設置されている場合、熱交換が未実施の利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに流れる熱媒体が有する温熱又は冷熱を、熱媒体配管5の内部に蓄えるものである。これにより、空室だけではなく熱媒体配管5の内部にも蓄熱することができる。このため、蓄熱量が多くなり、熱媒体の凍結を更に抑制することができる。また、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに空気を送る利用側送風機20a,20b,20c,20dを更に備え、蓄熱手段51aは、熱交換が未実施の利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに流れる熱媒体が有する温熱又は冷熱を、利用側送風機20a,20b,20c,20dを停止させて熱媒体配管5の内部に蓄えるものであるように構成されてもよい。この場合、室内温度を変化させることなく熱媒体配管5の内部に熱を蓄えることができる。また、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの入口側と出口側とを接続し、ポンプ21a,21bが搬送する熱媒体をバイパスするバイパス回路27a,27b,27c,27dと、ポンプ21a,21bが搬送する熱媒体が利用側熱交換器26a,26b,26c,26d又はバイパス回路27a,27b,27c,27dに流れるように切り替える流量調整弁25a,25b,25c,25dと、を更に備え、蓄熱手段51aは、熱交換が未実施の利用側熱交換器26a,26b,26c,26dを有する熱媒体回路において、熱媒体がバイパス回路27a,27b,27c,27dに流れるように流量調整弁25a,25b,25c,25dを切り替えるものである。これにより、熱交換が未実施の利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに接続される熱媒体配管5に蓄熱することができる。
実施の形態5.
本実施の形態5は、蓄熱量が計算される点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態5では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
蓄熱手段51aは、熱媒体の温度に基づいて、蓄えられる熱量を求める。熱媒体の蓄熱量は、(1)式に示すように、熱媒体の質量、密度、定圧比熱及び温度の積から計算することができる。熱媒体の特性と熱媒体配管5の特性とは、空調システム100の施工時に既知であるため、熱媒体の質量、密度及び定圧比熱は既知である。
ここで、空室の蓄熱量は、熱媒体の温度上昇率に基づいて簡易的に推測することができる。例えば、制御装置50は、止め弁24a,24b,24c,24dが全閉の状態又は流量調整弁25a,25b,25c,25dが全閉の状態で、利用側送風機20a,20b,20c,20dを動作させる。これにより、熱媒体の流量が変化しないまま、熱媒体の温度が上昇し、熱媒体と室内温度との差が縮まる。熱媒体の温度が室内温度に変化するまでの時間が短い場合、空室の蓄熱量が大きいと推測することができる。従って、熱媒体の温度と時間との対応関係に基づいて、空室の蓄熱量を推測することができる。
本実施の形態5において、熱媒体の温度を検出する熱媒体温度センサを更に備え、制御装置50は、熱媒体温度センサによって検出された熱媒体の温度に基づいて、蓄えられる熱量を求める機能を有する。蓄熱量を計算することによって、凍結防止等に使用することができる熱量を予め把握することができる。このため、冷熱又は温熱を利用する際の利便性が向上する。
なお、制御装置50は、止め弁24a,24b,24c,24dが全開の状態且つ流量調整弁25a,25b,25c,25dが全開の状態で、圧縮機10を動作させて、熱媒体の流量を計測してもよい。この場合、制御装置50は、熱媒体の流量と、室内温度と目標温度との差分とに基づいて、空室の蓄熱量を推測することができる。
実施の形態6.
図17は、本発明の実施の形態6に係る空調システム100の省エネ制御の動作を示すフローチャートである。本実施の形態6は、空調能力を抑える場合の制御である点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態6では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
空調能力を抑えるために圧縮機10の回転数が低速化されると、圧縮機10の動力となるモータの力率が悪化する等の影響が生じる。このため、圧縮機10の回転数が低速の方が高速の場合よりも冷房能力又は暖房能力に対する消費エネルギが増加する。本実施の形態6では、圧縮機10の回転数が低速となることを回避しつつ、蓄熱及び蓄熱の利用を行う。
蓄熱手段51aは、熱媒体温度センサによって検出された温度と、室内温度センサ39によって検出された温度との差が温度差閾値以下の場合、熱媒体配管5の内部に冷熱又は温熱を蓄える。
図17において、ステップST31~ステップST40及びステップST71~ステップST73は、図14に示すステップST31~ステップST40及びステップST71~ステップST73と同じであるため、説明を省略する。図17に示すように、ステップST71において、利用側ユニット2a,2b,2c,2dが運転している場合、制御装置50は、圧縮機10の回転数が低速となる空調能力が必要であるかを判定する(ステップST81)。即ち、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dの出口側の温度と、室内温度との差が温度差閾値以下かが判定される。差が温度差閾値以下の場合、熱媒体の温度が目標温度であるかが判定される(ステップST82)。
熱媒体の温度が目標温度の場合、圧縮機10が停止されて、蓄えられた熱が利用され、運転が継続される(ステップST83)。一方、熱媒体の温度が目標温度でない場合、圧縮機10の回転数を維持したままとする(ステップST84)。そして、熱媒体流量制御手段51cは、利用側ユニット2a,2b,2c,2d(n)に接続された流量調整弁25a,25b,25c,25dの開度を絞る(ステップST85)。例えば、流量調整弁25a,25b,25c,25dの開度が中間開度とされ、利用側熱交換器26a,26b,26c,26dとバイパス回路27a,27b,27c,27dとのいずれにも熱媒体が流れるように調整される。これにより、空調能力を抑えつつ熱媒体配管5の内部に熱が蓄えられる(ステップST86)。
本実施の形態6によれば、熱媒体の温度を検出する熱媒体温度センサと、空調対象空間の温度を検出する室内温度センサ39と、を更に備え、蓄熱手段51aは、熱媒体温度センサによって検出された温度と室内温度センサ39によって検出された温度との差が温度差閾値以下の場合、熱媒体が有する温熱又は冷熱を蓄える。これにより、圧縮機10の効率が悪化する回転数にすることなく、空調能力を抑えることができる。即ち、空調能力を抑えつつ蓄熱を行うことができる。従って、エネルギ効率が高い。
実施の形態7.
図18は、本発明の実施の形態7に係る空調システム100の電算室保護制御の動作を示すフローチャートである。本実施の形態7は、電算室を保護する制御である点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態7では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
本実施の形態7は、電算室といった温度上昇を避ける必要がある空間を含む建物9等に設置された空調システム100について例示する。電算室の室内空間7の温度上昇率は、電算室以外の室内空間7の温度上昇率よりも高い。電算室は、コンピュータ等が発熱しているため、温度が上昇し易く、高温となってコンピュータ等が故障することを抑制するために、常時冷却されている。本実施の形態7は、熱源側ユニット1が故障する等の異常動作時に、予め熱媒体配管5の内部又は空室に蓄えられた冷熱を利用して、常時冷却されている電算室の温度上昇を抑える。即ち、電算室を冷却することができない場合、電算室の室内空間7よりも温度が低い傾向にある電算室以外の室内空間7の冷熱を利用して、電算室の温度上昇を抑える。なお、蓄熱されている冷熱があれば、更に電算室を冷やすことができる。
蓄熱手段51aは、空間情報55bに電算室が登録済みであるかを判定し、熱源側ユニット1が全て故障しているかを判定する。ここで、熱源側ユニット1が全て故障しているという状態は、熱源側ユニット1との通信が不可能になること、又は熱源側ユニット1がユーザの意図と異なる動作を行っていること等の正常動作時ではないことをいう。制御装置50は、電算室が登録済みで且つ熱源側ユニット1が全て故障している場合、電算室以外の室内空間7に設置された利用側ユニット2a,2b,2c,2dを停止させる。そして、制御装置50は、電算室以外の室内空間7を空室に設定し、電算室に設置された利用側送風機20a,20b,20c,20dを運転させる。これにより、躯体に蓄えられた冷熱が電算室に送り込まれ、電算室を冷却することができる。
図18に示すように、制御装置50は、空間情報55bに電算室が登録済みであるかを判定し、熱源側ユニット1が全て故障しているかを判定する(ステップST91)。電算室が登録済みで且つ熱源側ユニット1が全て故障している場合、制御装置50は、電算室以外の室内空間7に設置された利用側ユニット2a,2b,2c,2dを停止させる(ステップST92)。そして、制御装置50は電算室以外の室内空間7を空室に設定し(ステップST93)、電算室に設置された利用側送風機20a,20b,20c,20dを運転させる(ステップST94)。
これにより、制御装置50は躯体に蓄えられた冷熱を電算室に送り込み(ステップST95)、電算室を冷却することができる。具体的には、ステップST95において、躯体に蓄えられた冷熱が利用されると、図8に示すステップST35~ステップST38の処理によって、電算室以外の室内空間7に設置された利用側ユニット2a,2b,2c,2dにおいて熱媒体配管5の内部に冷熱が蓄えられる。そして、電算室に設置されている利用側ユニット2a,2b,2c,2dは、熱媒体配管5の内部に蓄えられた冷熱によって温度上昇を抑えることができる。
本実施の形態7によれば、制御装置50は、冷媒回路が異常動作した場合、蓄熱モードにおいて蓄熱された冷熱を、常時冷却されている電算室に設置された利用側熱交換器26a,26b,26c,26dに供給する機能を有する。このように、熱源側ユニット1の異常動作時に、電算室以外の室内空間7を空室に設定して、蓄熱を行うことによって、電算室の温度上昇を抑えることができる。