次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるガスセンサ100の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。図2は、制御装置90と各セルとの電気的な接続関係を示すブロック図である。このガスセンサ100は、例えば内燃機関の排ガス管などの配管に取り付けられている。ガスセンサ100は、内燃機関の排ガスを被測定ガスとして、被測定ガス中のNOxやアンモニアなどの特定ガスの濃度を検出する。本実施形態では、ガスセンサ100は特定ガス濃度としてNOx濃度を測定するものとした。ガスセンサ100は、長尺な直方体形状をしたセンサ素子101と、センサ素子101が備える各セル21,41,50,80~83と、可変電源24,46,52を有しガスセンサ100全体を制御する制御装置90と、を備えている。
センサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された積層体を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子101の先端部側(図1の左端部側)であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40と、第4拡散律速部60と、第3内部空所61とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40と、第3内部空所61とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。また、第4拡散律速部60は、第2固体電解質層6の下面との隙間として形成された1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第3内部空所61に至る部位を被測定ガス流通部とも称する。
また、被測定ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質セラミックスからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内,第2内部空所40内,及び第3内部空所61内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。基準電極42は、多孔質サーメット電極(例えば、PtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。
被測定ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの圧力変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの圧力変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力(電圧V0)を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、電圧V0が目標値となるように可変電源24のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整を行うための空間として設けられている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101の外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力(電圧V1)に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その電圧V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
第4拡散律速部60は、第2内部空所40で補助ポンプセル50の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所61に導く部位である。第4拡散律速部60は、第3内部空所61に流入するNOxの量を制限する役割を担う。
第3内部空所61は、あらかじめ第2内部空所40において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第4拡散律速部60を通じて導入された被測定ガスに対して、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、第3内部空所61において、測定用ポンプセル41の動作により行われる。
測定用ポンプセル41は、第3内部空所61内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第3内部空所61に面する第1固体電解質層4の上面に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。測定電極44は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を、内側ポンプ電極22よりも高めた材料にて構成された多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第3内部空所61内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力(電圧V2)に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部60を通じて第3内部空所61内の測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された電圧V2が一定となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42とを組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力(電圧Vref)によりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータコネクタ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74と、圧力放散孔75とを備えている。
ヒータコネクタ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータコネクタ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
ヒータ72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72は、スルーホール73を介してヒータコネクタ電極71と接続されており、該ヒータコネクタ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子101を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒータ72は、第1内部空所20から第3内部空所61の全域に渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔75は、第3基板層3及び大気導入層48を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
制御装置90は、上述した可変電源24,46,52と、制御部91と、を備えている。制御部91は、CPU92及び記憶部94などを備えたマイクロプロセッサである。記憶部94は、例えばHDDなどであり、各種データを記憶する装置である。制御部91は、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80にて検出される電圧V0、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される電圧V1、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出される電圧V2、センサセル83にて検出される電圧Vref、主ポンプセル21にて検出されるポンプ電流Ip0、補助ポンプセル50にて検出されるポンプ電流Ip1及び測定用ポンプセル41にて検出されるポンプ電流Ip2を入力する。また、制御部91は可変電源24,46,52へ制御信号を出力することで可変電源24,46,52が出力する電圧Vp0,Vp1,Vp2を制御し、これにより、主ポンプセル21,測定用ポンプセル41及び補助ポンプセル50を制御する。記憶部94には、後述する目標値V0*,V1*,V2*なども記憶されている。制御部91のCPU92は、これらの目標値V0*,V1*,V2*を参照して、各セル21,41,50の制御を行う。
制御部91は、電圧V0が目標値(目標値V0*と称する)となるように(つまり第1内部空所20の酸素濃度が目標濃度となるように)可変電源24のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御する。
また、制御部91は、電圧V1が一定値(目標値V1*と称する)となるように(つまり第2内部空所40の酸素濃度がNOxの測定に実質的に影響がない所定の低酸素濃度となるように)可変電源52の電圧Vp1をフィードバック制御する。これとともに、制御部91は、電圧Vp1によって流れるポンプ電流Ip1が一定値(目標値Ip1*と称する)となるように、ポンプ電流Ip1に基づいて電圧V0の目標値V0*を設定(フィードバック制御)する。これにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となる。また、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧が、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御される。目標値V0*は、第1内部空所20の酸素濃度が0%よりは高く且つ低酸素濃度となるような値に設定される。
さらに、制御部91は、電圧V2が一定値(目標値V2*と称する)となるように(つまり第3内部空所61内の酸素濃度が所定の低濃度になるように)可変電源46の電圧Vp2をフィードバック制御する。これにより、被測定ガス中のNOxが第3内部空所61で還元されることにより発生した酸素が実質的にゼロとなるように、第3内部空所61内から酸素が汲み出される。そして、制御部91は、特定ガス(ここではNOx)に由来して第3内部空所61で発生する酸素に応じた検出値としてポンプ電流Ip2を取得し、このポンプ電流Ip2に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を算出する。このように、センサ素子101内に導入された被測定ガス中の特定ガスに由来する酸素の汲み出しを行い、汲み出す酸素量に基づいて(本実施形態ではポンプ電流Ip2に基づいて)特定ガス濃度を検出する方式を、限界電流方式と称する。
記憶部94には、ポンプ電流Ip2とNOx濃度との対応関係として、関係式(例えば一次関数の式)やマップなどが記憶されている。このような関係式又はマップは、予め実験により求めておくことができる。
こうして構成されたガスセンサ100の使用例を以下に説明する。制御装置90のCPU92は、上述した各ポンプセル21,41,50の制御や、上述した各センサセル80~83からの各電圧V0,V1,V2,Vrefの取得を行っている状態とする。この状態で、被測定ガスがガス導入口10から導入されると、被測定ガスは、第1拡散律速部11,緩衝空間12及び第2拡散律速部13を通過し、第1内部空所20に到達する。次に、第1内部空所20及び第2内部空所40において被測定ガスの酸素濃度が主ポンプセル21及び補助ポンプセル50によって調整され、調整後の被測定ガスが第3内部空所61に到達する。そして、CPU92は、取得したポンプ電流Ip2と記憶部94に記憶された対応関係とに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を検出する。
次に、こうしたガスセンサ100の製造方法について以下に説明する。本実施形態のガスセンサ100の製造方法は、
センサ素子101を製造する製造工程と、
製造されたセンサ素子101の目標値V2*を決定する目標値決定工程と、
製造されたセンサ素子101と決定された目標値V2*とを対応付けておく対応付け工程と、
目標値V2*が対応付けられたセンサ素子101に、基準電極42と測定電極44との間の電圧V2が対応付けられた目標値V2*になるように測定用ポンプセル41をフィードバック制御する制御装置90が接続された状態にする接続工程と、
を含む。
製造工程では、例えば以下のようにセンサ素子101を製造する。まず、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含む6枚の未焼成のセラミックスグリーンシートを用意する。このグリーンシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いるシート穴や必要なスルーホール等を予め複数形成しておく。また、スペーサ層5となるグリーンシートには被測定ガス流通部となる空間を予め打ち抜き処理などによって設けておく。そして、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6のそれぞれに対応して、各セラミックスグリーンシートに種々のパターンを形成するパターン印刷処理・乾燥処理を行う。形成するパターンは、具体的には、例えば上述した各電極や各電極に接続されるリード線、大気導入層48,ヒータ部70,などのパターンである。パターン印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してグリーンシート上に塗布することにより行う。乾燥処理についても、公知の乾燥手段を用いて行う。パターン印刷・乾燥が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う。そして、接着用ペーストを形成したグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ所定の順序に積層して、所定の温度・圧力条件を加えることで圧着させ、一つの積層体とする圧着処理を行う。こうして得られた積層体は、複数個のセンサ素子101を包含したものである。その積層体を切断してセンサ素子101の大きさに切り分ける。そして、切り分けた積層体を所定の焼成温度で焼成し、センサ素子101を得る。
次に、製造された複数のセンサ素子101の各々に対して、目標値V2*を決定する目標値決定工程を行う。目標値決定工程を行うためには、まず、準備として、目標値V2*を決定するために用いる、ポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係を得る対応関係取得ステップを行う。この対応関係は、目標値V2*を決定したいセンサ素子101と同じ仕様の複数のセンサ素子101を用いて得ることができる。すなわち、対応関係取得ステップは、今回のセンサ素子101の製造工程より前に、予め行っておくこともできる。また、今回製造された、目標値V2*を決定したい複数のセンサ素子101そのものを用いて、この対応関係を得てもよい。すなわち、今回のセンサ素子101の製造工程の後に、対応関係取得ステップを行ってもよい。
対応関係取得ステップでは、複数のセンサ素子101の各々について、電圧V2とポンプ電流Ip2との関係を調べ、その結果に基づいて、ポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係を求める。
具体的には、まず、ヒータ72によりセンサ素子101を使用温度(例えば800℃)に加熱した状態で、センサ素子101の前端側を所定のモデルガスに晒し、センサ素子101の後端側を基準ガス(ここでは大気)に晒した状態とする。これにより、センサ素子101の使用時と同じように、モデルガスは被測定ガス流通部に導入されて測定電極44まで到達し、基準ガスは基準電極42まで到達する。所定のモデルガスとしては、酸素とNOxとの少なくとも一方を含み、酸素濃度及びNOx濃度が既知の一定の値であるガスを用いる。モデルガスは、例えばベースガスとして窒素を用いてもよい。本実施形態では、酸素を含まず、NOx濃度が500ppmであり、ベースガスが窒素であるモデルガスを用いるものとした。この状態で、可変電源46の電圧Vp2を所定の値にして、測定用ポンプセル41に測定電極44の周囲からの酸素の汲み出しを行わせる。このとき、測定用ポンプセル41のフィードバック制御を行う必要はなく、例えば測定用ポンプセル41のオープンループ制御を行えばよい。そして、ポンプ電流Ip2が安定したときのポンプ電流Ip2及び電圧V2の値を測定する。この電圧V2とポンプ電流Ip2との測定を、電圧Vp2の値を変更して複数回行う。あるいは、電圧Vp2を連続的に変化させて、電圧V2とポンプ電流Ip2とを連続的に測定してもよい。これにより、電圧V2とポンプ電流Ip2との関係が得られる。同様に、複数のセンサ素子101の各々について、電圧V2とポンプ電流Ip2との関係を取得する。
図3は、電圧Vp2とポンプ電流Ip2との関係、すなわち測定用ポンプセル41の電圧電流特性を示す説明図である。図4は、取得された複数のセンサ素子101の電圧V2とポンプ電流Ip2との関係を示す説明図である。図3に示すように、電圧Vp2が低い領域では、電圧Vp2の増加に伴ってポンプ電流Ip2が増加していく。電圧Vp2がある程度高い領域では、被測定ガス流通部が有する拡散抵抗の影響で、電圧Vp2が変化してもポンプ電流Ip2の増加は緩やかになり、ポンプ電流Ip2がほぼ一定の値になる。すなわちポンプ電流Ip2が限界電流になる。この領域はプラトー領域と呼ばれる。例えば図3の実線で示す電圧電流特性では、領域Rがプラトー領域である。プラトー領域よりもさらに電圧Vp2が高い領域では、例えばガス中に水分があればそれが分解されて酸素が発生するため、再び電圧Vp2の増加に伴ってポンプ電流Ip2が増加するようになる。ここで、図1からもわかるように、電圧Vref,Vp2,V2の間には、Vref=Vp2+V2(ただしこの式ではVp2とV2との正負は逆であり、絶対値で表すと|V2|=|Vp2|+|Vref|)の関係が成立する。そのため、電圧Vrefの変動を考えなければ、電圧Vp2が大きくなるほど電圧V2も大きくなる傾向にある。また、電圧Vrefが一定の値であれば、電圧Vp2に対応する電圧V2は1つの値に定まる。そのため、取得された電圧V2とポンプ電流Ip2との関係は図3と同様になる。具体的には、図4に示すように、電圧V2が低い領域では電圧V2の増加に伴ってポンプ電流Ip2も増加していくが、電圧V2が高くなるとポンプ電流Ip2が限界電流になるプラトー領域が表れ、さらに電圧V2が高くなると、再び電圧V2の増加に伴ってポンプ電流Ip2が増加するようになる。また、図4の曲線A1~A4に示すように、量産された互いに同じ仕様の複数のセンサ素子101であっても、電圧V2とポンプ電流Ip2との関係は互いに全く同一にはならず、ポンプ電流Ip2の流れやすさにばらつきが生じる。図4では、曲線A4が最もポンプ電流Ip2が流れやすい。例えば、センサ素子101の製造時には、第1~第3拡散律速部11,13,30すなわちスリットの大きさのわずかな製造誤差により、複数のセンサ素子101間で被測定ガス流通部の拡散抵抗に不可避的なばらつきが生じる。このばらつきに起因して、ポンプ電流Ip2の流れやすさにばらつきが生じ、例えば曲線A1~A4のようなばらつきとして表れていると考えられる。すなわち、図3では図示を省略しているが、図3に示す測定用ポンプセル41の電圧電流特性が複数のセンサ素子101間で不可避的にばらついており、そのばらつきが図4の曲線A1~A4のように表れていると考えられる。
そして、本発明者らは、ポンプ電流Ip2が流れやすいセンサ素子101ほど、使用に伴う特定ガス濃度の検出精度の低下(以下、「検出精度の劣化」と称する)が進みやすい傾向にあることを見いだした。例えば、図4では曲線A1の関係を有するセンサ素子101よりも曲線A4の関係を有するセンサ素子101の方が、検出精度の劣化が進みやすい傾向にあることを見いだした。
図5は、使用に伴う電圧V2とポンプ電流Ip2との関係の変化を示す説明図である。例えば使用開始時に電圧Vp2とポンプ電流Ip2とが図3の実線に示す関係にあり、電圧V2とポンプ電流Ip2とが図5の実線に示す関係にあったとする。この場合、図3に示す関係は、使用に伴って一点鎖線で示す関係に変化し、さらに使用すると2点鎖線で示すような関係に変化する。すなわち、使用に伴ってポンプ電流Ip2の立ち上がり部分がなだらかになっていき、プラトー領域がRからR’,R’’のように狭くなっていく。これに対応して、図5に示す関係も同様に変化し、プラトー領域がRからR’,R’’のように狭くなっていく。これにより、図5においてポンプ電流Ip2がほぼ一定の値になる電圧V2の下限値(プラトー領域となる電圧V2の下限値)が高くなっていく。例えば図5では、使用開始時は電圧V2≧値C1となる領域ではポンプ電流Ip2がほぼ一定の値であるのに対し、使用に伴ってポンプ電流Ip2がほぼ一定となる電圧V2の下限値が値C1から値C2,C3のように右側にずれていく。これは、例えば、使用に伴って測定電極44中の貴金属(ここではPt)が酸化して蒸発しやすくなり、結果的に貴金属が減少して測定電極44の触媒活性が低下し測定電極44の反応抵抗が高くなることが原因と考えられる。そして、このような使用に伴う電圧V2とポンプ電流Ip2との関係の変化により、センサ素子101のNOx濃度の検出精度が低下する。例えば、電圧Vrefがある値である場合に、電圧Vp2が図3に示す値D1であれば電圧V2が図5の目標値V2*になるとする。この場合、図3,図5に示す関係が一点鎖線の関係まで変化しても、値D1,目標値V2*はプラトー領域R’内にある(目標値V2*が値C2以上である)ため、同じNOx濃度に対応するポンプ電流Ip2の値はほとんど変化しない。一方で、図3,図5に示す関係が二点鎖線の関係まで変化すると、値D1,目標値V2*はプラトー領域R’’から外れる(目標値V2*が値C3よりも小さくなる)。この状態では、二点鎖線に変化する前とNOx濃度が同じであっても、ポンプ電流Ip2が限界電流にならないことでポンプ電流Ip2が低下してしまい、NOx濃度の検出精度が低下する。したがって、目標値V2*がポンプ電流Ip2の立ち上がり部分に近いほど、言い換えると、目標値V2*が図5の値C1に近いほど、検出精度が早期に劣化することになる。
そして、図4に示すように複数のセンサ素子101の製造ばらつきが存在する場合、目標値V2*を複数のセンサ素子101のいずれにおいても同じ値に設定しておくと、ポンプ電流Ip2が流れやすいセンサ素子101ほど、検出精度の劣化が進みやすくなる。例えば、図4では、曲線A1~A4の各々の、ポンプ電流Ip2がほぼ一定となる電圧V2(プラトー領域に対応する電圧V2)の下限値(図5の値C1に相当)を結んだ線として、直線L1を示している。仮に複数のセンサ素子101において目標値V2*を全て同じ値B1に設定すると、点P1,P2,P3,P4の順でこれらの点が直線L1に近くなる。そのため、曲線A4の関係を有するセンサ素子101が、検出精度が最も早期に劣化することになる。
そこで、本実施形態では、図4に示す右上がりの直線L2を設定し、直線L2と曲線A1~A4との交点の電圧V2の値B1~B4を、曲線A1~A4の関係を有するセンサ素子101の各々の目標値V2*として決定することとした。例えば曲線A1の関係を有するセンサ素子101であれば目標値V2*を値B1に決定し、曲線A4の関係を有するセンサ素子101であれば目標値V2*を値B4に決定する。この直線L2は、直線L1を値ΔVだけ右に平行移動させた直線である。この直線L2上で目標値V2*を定めれば、曲線A1~A4のいずれの関係のセンサ素子101であっても、目標値V2*が直線L1に対して同じ値ΔVだけ離れることになるから、検出精度の劣化の進み方が同程度となる。なお、目標値V2*は、プラトー領域に対応する電圧V2の範囲内で定める必要がある。すなわち、電圧V2が目標値V2*になったときの電圧Vp2によって流れるポンプ電流Ip2が限界電流になるように、目標値V2*を定める必要がある。そのため、目標値V2*は高すぎても不適切であり、例えば図5では値Cm以下の値、図4では値Bm以下の値としたり、さらにマージンを設けた小さい値として、目標値V2*を定める必要がある。したがって、値Bmも考慮して、図4の値ΔVが大きくなりすぎないように、直線L2を定める。
また、実際に直線L2上で目標値V2*を定めるためには、目標値V2*の決定対象のセンサ素子101のポンプ電流Ip2の流れやすさがどの程度なのかを知る必要がある。例えば、決定対象のセンサ素子101が図4の曲線A1~A4のいずれに当てはまる関係を有するのかを判定する必要がある。そこで、本実施形態では、測定用ポンプセル41のフィードバック制御の目標値V2*の仮の値Bs(=仮目標値)を予め定めておくこととした。値Bsは、目標値V2*と同じく、プラトー領域に対応する電圧V2の範囲内で定めることが好ましい。値Bsは、センサ素子101の製造ばらつきがあっても図4のポンプ電流Ip2の立ち上がり部分の領域を確実に避けることができるように、高めの値としておくことが好ましい。例えば、値Bsは,目標値V2*として使用する可能性のある値のうち最大値にマージンを加えた値としてもよい。本実施形態では、図4に示すように、ポンプ電流Ip2がほぼ一定となる電圧V2(プラトー領域に対応する電圧V2)の範囲内で且つ高めの値として、値Bsを定めるものとした。また、図4に示すように、値Bsは、直線L2と曲線A1~A4の交点を含む範囲である値B1~B4のうちの最大値である値B4にマージンを加えた値(値B4よりも大きい値)とした。この値Bsに対応するポンプ電流Ip2の値と、そのポンプ電流Ip2に対応する目標値V2*との対応関係を、予め求めておく。例えば、図4の例では、あるセンサ素子101が曲線A1の関係を有する場合、値Bsに対応するポンプ電流Ip2は値I1であり、定めるべき目標値V2*は値B1である。そこで、この値I1と値B1とを対応づけておく。同様に、曲線A2~A4についても、値I2~I4と値B2~B4とをそれぞれ対応づけておく。こうして得られた対応関係を、ポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係として、関係式(例えば一次関数の式)やマップなどの形で求めておく。図4では曲線A1~A4のみを例示したが、実際には多数のセンサ素子101で同様の曲線を測定し、それらの結果に基づいてポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係を決定しておく。
以上のように、複数のセンサ素子101の各々について、電圧V2とポンプ電流Ip2との関係を調べ、その結果に基づいて、ポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係を決定すると、対応関係取得ステップを終了する。
次に、目標値決定工程について説明する。本実施形態の目標値決定工程は、
(a)目標値V2*の決定対象のセンサ素子101の被測定ガス流通部に酸素と特定ガスとの少なくとも一方を含む所定のモデルガスを導入させた状態で、測定用ポンプセル41に酸素の汲み出しを行わせたときに測定用ポンプセル41に流れるポンプ電流Ip2を取得するステップと、
(b)ステップ(a)で取得されたポンプ電流Ip2の値が大きいセンサ素子101ほど目標値V2*の値が大きくなる傾向に、決定対象のセンサ素子101の目標値V2*を決定するステップと、
を含む。
ステップ(a)では、目標値V2*の決定対象のセンサ素子101について、まず、ヒータ72によりセンサ素子101を使用温度に加熱した状態で、センサ素子101の前端側を所定のモデルガスに晒し、センサ素子101の後端側を基準ガス(ここでは大気)に晒した状態とする。本実施形態では、対応関係取得ステップで取得した対応関係を用いて目標値V2*を決定するため、対応関係取得ステップで用いたモデルガスと、少なくとも酸素濃度及びNOx濃度が同じモデルガスを用いる。対応関係取得ステップで用いたモデルガスと同一の組成のモデルガスを用いることが好ましい。センサ素子101の温度や基準ガスの組成などのその他の条件についても、対応関係取得ステップにおける測定時と同じとすることが好ましい。この状態で、測定用ポンプセル41に酸素の汲み出しを行わせたときに測定用ポンプセル41に流れるポンプ電流Ip2を測定して、測定した値を取得する。本実施形態では、目標値V2*を上述した値Bs(=仮目標値)に設定して測定用ポンプセル41をフィードバック制御した状態で、ポンプ電流Ip2を測定する。すなわち、電圧V2が値Bsになるように測定用ポンプセル41をフィードバック制御したときの、ポンプ電流Ip2を測定する。本実施形態では、上述したように、値Bsはポンプ電流Ip2がほぼ一定となる電圧V2(プラトー領域に対応する電圧V2)の範囲内で定められているから、ステップ(a)では、ポンプ電流Ip2の限界電流値を取得することになる。ポンプ電流Ip2の測定は、ポンプ電流Ip2が十分安定してから行うことが好ましい。ステップ(a)では、測定用ポンプセル41をフィードバック制御するために、制御装置90と同様の装置をセンサ素子101に接続してもよい。
ステップ(a)でポンプ電流Ip2を取得すると、ステップ(b)では、上述した対応関係取得ステップで得た対応関係に基づいて、ステップ(a)で取得されたポンプ電流Ip2に対応する値を調べ、その値を目標値V2*の決定対象のセンサ素子101の目標値V2*として決定する。例えば、図4に示すように、ステップ(a)で得られたポンプ電流Ip2が値I1であった場合には目標値V2*を値B1に設定し、ステップ(a)で得られたポンプ電流Ip2が値I4であった場合には目標値V2*を値B4に設定する。これにより、ステップ(a)で取得されたポンプ電流Ip2の値(ここではポンプ電流Ip2の限界電流値)が大きいセンサ素子101ほど、目標値V2*の値が大きくなる傾向に、決定対象のセンサ素子101の目標値V2*が決定される。すなわち、ポンプ電流Ip2が流れやすいセンサ素子101ほど目標値V2*の値が大きくなる傾向に、決定対象のセンサ素子101の目標値V2*が決定される。
目標値V2*を決定すると、決定された値と、決定対象のセンサ素子101とを対応づけておく対応付け工程を行う。すなわち、センサ素子101の各々について、決定された目標値V2*がわかるようにしておく。例えば、目標値V2*の値が記載された紙などをセンサ素子101と共に運ぶようにするなど、直接的な対応付けを行ってもよい。あるいは、センサ素子101に付与された製造番号と目標値V2*の値との対応関係を記憶媒体に記憶しておいたり、製造工程のトレーサビリティをオンライン上のデータとして例えばサーバーに管理しておいたりするなど、間接的な対応付けを行ってもよい。
その後、接続工程では、センサ素子101に、制御装置90を接続する。また、対応付け工程でセンサ素子101に対応づけられた目標値V2*の値を、制御装置90の記憶部94に記憶させる。これにより、制御装置90は、基準電極42と測定電極44との間の電圧V2が目標値決定工程で決定された目標値V2*になるように測定用ポンプセル41をフィードバック制御できるようになる。接続工程において、制御装置90の接続と記憶部94への目標値V2*の値の記憶とは、どちらを先に行ってもよい。これにより、ガスセンサ100が製造される。このガスセンサ100では、目標値V2*の値が、上述した目標値決定工程で決定された値になっているから、検出精度の早期劣化が抑制される。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の第1基板層1,第2基板層2,第3基板層3,第1固体電解質層4,スペーサ層5及び第2固体電解質層6が本発明の素子本体に相当し、外側ポンプ電極23が外側測定電極に相当し、第3内部空所61が測定室に相当し、測定電極44が内側測定電極に相当し、測定用ポンプセル41が測定用ポンプセルに相当し、基準電極42が基準電極に相当する。また、制御装置90が制御装置に相当し、CPU92及び可変電源46が測定用ポンプセル制御手段に相当し、記憶部94が記憶部に相当する。また、上述した実施形態では、センサ素子101及びガスセンサ100の製造方法を説明することにより、本発明のセンサ素子の制御用の目標値の決定方法の一例も明らかにしている。
以上詳述した本実施形態のセンサ素子101の目標値V2*の決定方法では、まず、ステップ(a)において、測定用ポンプセル41に酸素の汲み出しを行わせたときのポンプ電流Ip2を取得する。そして、ステップ(b)では、取得されたポンプ電流Ip2の値が大きいセンサ素子101ほど目標値V2*の値が大きくなる傾向に、決定対象のセンサ素子101の目標値を決定する。これにより、センサ素子101の製造ばらつきに起因する検出精度の早期劣化を抑制できる。より具体的には、ポンプ電流Ip2が流れやすいセンサ素子101であっても、NOx濃度の検出精度の劣化を遅らせることができる。また、複数のセンサ素子101間で同じ値に設定していた従来の目標値V2*に基づく測定用ポンプセル41のフィードバック制御ではポンプ電流Ip2が限界電流にならないようなセンサ素子101であっても、本実施形態の目標値V2*の決定方法を行うことで、ポンプ電流Ip2が限界電流になるような適切な目標値V2*を決定できる。例えば従来よりも被測定ガス流通部の拡散抵抗が小さい(ポンプ電流Ip2が流れやすい)センサ素子101であっても、適切な目標値V2*を決定できる。したがって、センサ素子101の設計の自由度が高くなる。また、従来では許容されなかったセンサ素子101の製造ばらつきが許容できるようになるなど、量産品の製造ばらつきの許容幅を広くすることができる。
また、本実施形態のセンサ素子101の目標値V2*の決定方法では、ステップ(a)でポンプ電流Ip2の限界電流値を取得し、ステップ(b)ではその限界電流値が大きいセンサ素子101ほど目標値V2*の値が大きくなる傾向に、決定対象のセンサ素子101の目標値を決定する。ポンプ電流Ip2が限界電流になっている状態では、ポンプ電流Ip2はモデルガス中の酸素濃度及びNOx濃度以外の影響(例えば、モデルガス中の水分の影響)を受けにくいから、適切な目標値V2*をより精度よく決定できる。また、センサ素子101の実際の使用時にも、ポンプ電流Ip2が限界電流となるように測定用ポンプセル41が制御される。そのため、ステップ(a)でも限界電流値を取得して、限界電流値に基づいて目標値V2*を決定することで、目標値V2*をより適切に決定できる。
さらに、本実施形態のセンサ素子101の目標値V2*の決定方法では、ステップ(a)において、電圧V2が所定の仮目標値(ここでは値Bs)になるように測定用ポンプセル41をフィードバック制御することで測定用ポンプセル41に酸素の汲み出しを行わせたときのポンプ電流Ip2を取得する。このように、フィードバック制御を行ったときのポンプ電流Ip2を調べることで、センサ素子101の実際の使用時に近い状態でのポンプ電流Ip2の流れやすさを調べることができるから、目標値V2*をより適切に決定することができる。さらに、ポンプ電流Ip2と目標値V2*との予め用意した対応関係に基づいて、目標値V2*の値を決定するから、容易に適切な目標値を決定することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることは言うまでもない。
上述した実施形態では、図4の直線L2で示したように、ポンプ電流Ip2が流れやすいほど(ステップ(a)で取得されたポンプ電流Ip2の値が大きいほど)目標値V2*の値が直線的に増加するように、ポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係を定めたが、直線的な関係に限られない。例えば、曲線A1と曲線A4とでは、使用に伴う電圧V2とポンプ電流Ip2との関係の変化の仕方(図5参照)が異なる場合もあり得る。そのため、センサ素子101の製造ばらつきがあっても複数のセンサ素子101間の検出精度の劣化の進み方が同程度となるように、実験により適切なポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係を定めればよい。
上述した実施形態では、直線L2は直線L1を平行移動させた直線としたが、直線L2の傾きを直線L1の傾きとは異ならせてもよい。
上述した実施形態では、ポンプ電流Ip2と目標値V2*の値との対応関係を予め定めておいたが、これに限られない。対応関係を予め定めない場合でも、複数のセンサ素子101について、ステップ(a)で取得されたポンプ電流Ip2の値が大きいほど(ポンプ電流Ip2が流れやすいほど)目標値V2*の値が大きくなる傾向に、目標値V2*の値を決定すればよい。こうしても、少なくとも複数のセンサ素子101について目標値V2*を全て同じ値に決定する場合と比べれば、センサ素子101の製造ばらつきに起因する検出精度の早期劣化を抑制できる。
上述した実施形態では言及しなかったが、制御装置90は、使用に伴う特定ガス濃度の検出精度の低下を補正するように、駆動時間補正を行ってもよい。すなわち、使用に伴って、同じNOx濃度の被測定ガスに対して流れるポンプ電流Ip2の値が低下していくため、これを補うように駆動時間補正を行ってもよい。例えば、CPU92は、駆動時間が長くなるほど、記憶部94に記憶されたポンプ電流Ip2とNOx濃度との対応関係を変化させて、ポンプ電流Ip2に対応するNOx濃度の値を高めの値に補正するようにしてもよい。あるいは、CPU92は、駆動時間が長くなるほど、測定用ポンプセル41から検出したポンプ電流Ip2の値を補正して(値を大きくして)、補正後のポンプ電流Ip2と記憶部94に記憶された対応関係とに基づいてNOx濃度を導出してもよい。本実施形態のセンサ素子101は、センサ素子101の製造ばらつきがあっても複数のセンサ素子101間の検出精度の劣化の進み方が同程度となるように目標値V2*が定められているから、複数のセンサ素子101について同じ手法で駆動時間補正を行うだけで、使用に伴う特定ガス濃度の検出精度の低下を効果的に抑制できる。すなわち、駆動時間補正については、センサ素子101の製造ばらつきを考慮する必要がなくなる。
上述した実施形態では説明を省略したが、ステップ(a)では、主ポンプセル21及び補助ポンプセル50も動作させるなど、ガスセンサ100の使用時に制御装置90が行う制御となるべく同じ制御を行ったときの、ポンプ電流Ip2を取得することが好ましい。特に、モデルガスがNOxだけでなく酸素も含んでいる場合には、ガスセンサ100の使用時と同様に主ポンプセル21及び補助ポンプセル50を動作させて、被測定ガスの酸素濃度を主ポンプセル21及び補助ポンプセル50によって調整することが好ましい。同様に、上述した対応関係取得ステップにおいても、ガスセンサ100の使用時に制御装置90が行う主ポンプセル21及び補助ポンプセル50の制御となるべく同じ制御を行った状態で電圧V2とポンプ電流Ip2との関係を取得して、その結果に基づいてポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係を決定することが好ましい。
上述した実施形態では、目標値決定工程を行った後に接続工程を行ったが、これに限られない。例えば以下のようにしてガスセンサ100を製造してもよい。まず、製造工程でセンサ素子101を製造した後に、接続工程を行ってセンサ素子101に制御装置90を接続する。この状態では、記憶部94には目標値V2*が記憶されていなかったり、仮目標値(例えば値Bs)が記憶されていてもよい。次に、上述した目標値決定工程を行って目標値V2*を決定する。このとき、ステップ(a)では、センサ素子101に接続された制御装置90を用いて測定用ポンプセル41に酸素の汲み出しを行わせる。この目標値決定工程では、例えば記憶部94に一時的に目標値V2*として値Bsを記憶させてもよい。続いて、決定された目標値V2*の値を、測定用ポンプセル41を制御するための目標値V2*として記憶部94に記憶させる目標値記憶工程を行う。これにより、目標値V2*が設定されたガスセンサ100が製造される。このように、制御装置90を接続してから目標値V2*を決定してもよい。この場合は、上述した対応付け工程を省略できる。また、センサ素子101に制御装置90を接続して、この制御装置90を用いて目標値決定工程を行うから、センサ素子101の実際の使用時に近い状態でのポンプ電流Ip2を取得できる。したがって、目標値V2*をより適切に決定することができる。
上述した実施形態では、対応関係取得ステップにおいて、仮目標値である値Bsに対応するポンプ電流Ip2の値とそのポンプ電流Ip2に対応する目標値V2*との対応関係を求めておいたが、これに限られない。例えば、図4の曲線A1~A4のような複数の曲線と直線L2とをまとめて、ポンプ電流Ip2と目標値V2*との対応関係としてもよい。こうすれば、値Bsに限らず他の値を仮目標値としてステップ(a)を行った場合でも、同じ対応関係を用いてステップ(b)で目標値V2*を決定できる。
上述した実施形態では、ステップ(a)で測定用ポンプセル41をフィードバック制御したときのポンプ電流Ip2を取得したが、フィードバック制御を行わなくてもよい。例えば、電圧V2が仮目標値Bsになるようにオープンループ制御を行ったり作業者が電圧Vp2を調整したりして、ポンプ電流Ip2を取得してもよい。また、予め定められたポンプ電流Ip2と目標値V2*の値との対応関係をステップ(b)で用いない場合は、複数のセンサ素子101の各々について、ステップ(a)で所定の電圧Vp2に対応するポンプ電流Ip2を取得して、取得した値が大きいセンサ素子101ほど目標値V2*の値が大きくなる傾向に、目標値V2*を決定してもよい。上述したように、図3に示した電圧Vp2とポンプ電流Ip2との関係も、図4と同様にセンサ素子101の製造ばらつきによって異なる関係になるから、電圧Vp2に対応するポンプ電流Ip2の値の大小に基づいてセンサ素子101におけるポンプ電流Ip2の流れやすさを把握することはできる。ただし、より適切な目標値V2*を決定するためには、上述したように予めポンプ電流Ip2と目標値V2*の値との対応関係を求めておくことが好ましい。
上述した実施形態では、対応関係取得ステップにおいて図4に示すような電圧V2とポンプ電流Ip2との関係を取得したが、図4の一部のデータの取得を省略してもよい。例えば、図4のうち電圧V2が低い領域(電圧V2とポンプ電流Ip2との関係が右上がりの直線になっている領域)や、電圧V2が高い領域(例えば、仮目標値である値Bよりも電圧V2が高い領域,又はプラトー領域よりも電圧V2が高い領域)のデータの取得を省略してもよい。
上述した実施形態では、センサ素子101は被測定ガス中のNOx濃度を検出するものとしたが、被測定ガス中の特定ガスの濃度を検出するものであれば、これに限られない。例えば、NOxに限らず他の酸化物濃度を特定ガス濃度としてもよい。特定ガスが酸化物の場合には、上述した実施形態と同様に特定ガスそのものを第3内部空所61で還元したときに酸素が発生するから、測定用ポンプセル41はこの酸素に応じた検出値(例えばポンプ電流Ip2)を取得して特定ガス濃度を検出できる。また、特定ガスがアンモニアなどの非酸化物であってもよい。特定ガスが非酸化物の場合には、特定ガスを酸化物に変換(例えばアンモニアであればNOに変換)することで、変換後のガスが第3内部空所61で還元したときに酸素が発生するから、測定用ポンプセル41はこの酸素に応じた検出値(例えばポンプ電流Ip2)を取得して特定ガス濃度を検出できる。例えば、第1内部空所20の内側ポンプ電極22が触媒として機能することにより、第1内部空所20においてアンモニアをNOに変換できる。
上述した実施形態では、センサ素子101の素子本体は複数の固体電解質層(層1~6)を有する積層体としたが、これに限られない。センサ素子101の素子本体は、酸素イオン伝導性の固体電解質層を少なくとも1つ含んでいればよい。例えば、図1において第2固体電解質層6以外の層1~5は固体電解質層以外の材質からなる層(例えばアルミナからなる層)としてもよい。この場合、センサ素子101が有する各電極は第2固体電解質層6に配設されるようにすればよい。例えば、図1の測定電極44は第2固体電解質層6の下面に配設すればよい。また、基準ガス導入空間43を第1固体電解質層4に設ける代わりにスペーサ層5に設け、大気導入層48を第1固体電解質層4と第3基板層3との間に設ける代わりに第2固体電解質層6とスペーサ層5との間に設け、基準電極42を第3内部空所61よりも後方且つ第2固体電解質層6の下面に設ければよい。
上述した実施形態では、制御部91は、ポンプ電流Ip1が目標値Ip1*となるように、ポンプ電流Ip1に基づいて電圧V0の目標値V0*を設定(フィードバック制御)し、電圧V0が目標値V0*となるようにポンプ電圧Vp0をフィードバック制御したが、他の制御を行ってもよい。例えば、制御部91は、ポンプ電流Ip1が目標値Ip1*となるように、ポンプ電流Ip1に基づいてポンプ電圧Vp0をフィードバック制御してもよい。すなわち、制御部91は、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80からの電圧V0の取得や目標値V0*の設定を省略して、ポンプ電流Ip1に基づいて直接的にポンプ電圧Vp0を制御(ひいてはポンプ電流Ip0を制御)してもよい。
上述した実施形態において、外側ポンプ電極23を含むセンサ素子101の前側(被測定ガスに晒される部分)の表面が、アルミナなどのセラミックスからなる多孔質保護層で被覆されていてもよい。この多孔質保護層の拡散抵抗も、製造時に不可避的なばらつきが生じて、ポンプ電流Ip2の流れやすさに影響する場合がある。上述した実施形態のセンサ素子101の目標値V2*の決定方法では、多孔質保護層の製造ばらつきに起因する検出精度の早期劣化も抑制できる。
上述した実施形態では、ガスセンサ100のセンサ素子101は第1内部空所20,第2内部空所40,第3内部空所61を備えるものとしたが、これに限られない。例えば、図6のセンサ素子201のように、第3内部空所61を備えないものとしてもよい。図6に示した変形例のセンサ素子201では、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。また、測定電極44は、第2内部空所40内の第1固体電解質層4の上面に配設されている。測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。第4拡散律速部45は、アルミナ(Al2O3)などのセラミックス多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、上述した実施形態の第4拡散律速部60と同様に、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担う。また、第4拡散律速部45は、測定電極44の保護膜としても機能する。補助ポンプ電極51の天井電極部51aは、測定電極44の直上まで形成されている。このような構成のセンサ素子201であっても、上述した実施形態と同様に例えばポンプ電流Ip2に基づいてNOx濃度を検出できる。この場合、測定電極44の周囲が測定室として機能することになる。
上述した実施形態では、外側ポンプ電極23は、主ポンプセル21の外側主ポンプ電極,補助ポンプセル50の外側補助ポンプ電極,及び測定用ポンプセル41の外側測定電極を兼ねていたが、これに限られない。外側主ポンプ電極,外側補助ポンプ電極,及び外側測定電極のうちのいずれか1以上を、外側ポンプ電極23とは別に素子本体の外側に被測定ガスと接触するように設けてもよい。
上述した実施形態では、内側ポンプ電極22は、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極としたが、これに限られない。内側ポンプ電極22は、触媒活性を有する貴金属(例えばPt,Rh,Ir,Ru,Pdの少なくともいずれか)と、触媒活性を有する貴金属の特定ガスに対する触媒活性を抑制させる触媒活性抑制能を有する貴金属(例えばAu)と、を含んでいればよい。補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、触媒活性を有する貴金属と、触媒活性抑制能を有する貴金属と、を含んでいればよい。外側ポンプ電極23,基準電極42,測定電極44は、それぞれ、上述した触媒活性を有する貴金属を含んでいればよい。各電極22,23,42,44,51は、それぞれ、貴金属と酸素イオン導電性を有する酸化物(例えばZrO2)とを含むサーメットであることが好ましいが、これらの電極の1以上がサーメットでなくてもよい。各電極22,23,42,44,51は、それぞれ、多孔質体であることが好ましいが、これらの電極の1以上が多孔質体でなくてもよい。
上述した実施形態では、値Bs(=仮目標値)をポンプ電流Ip2がほぼ一定となる電圧V2(プラトー領域に対応する電圧V2)の範囲内で定めておき、ステップ(a)ではポンプ電流Ip2の限界電流値を取得したが、これに限られない。値Bsがプラトー領域から外れた電圧V2に相当する値であっても、すなわちステップ(a)で取得するポンプ電流Ip2が限界電流値でなくとも、図4の曲線A1~A4からわかるようにポンプ電流Ip2の流れやすさの違いは把握できる。そのため、値Bsがプラトー領域から外れていても、上述した実施形態と同様に目標値V2*を決定することはできる。