JP7133199B2 - パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液 - Google Patents

パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液 Download PDF

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Description

本発明は、パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液(以下、単に「電解パラジウム銅合金めっき液」、「パラジウム銅合金めっき液」又は「めっき液」という場合がある。)に関する。
パラジウム箔及びパラジウム合金箔は、装飾材料、歯科材料、電子材料、触媒材料等として工業的に広く使用されている。従来、パラジウム箔やパラジウム合金箔は、素材金属のインゴットを溶解し、圧延して箔状に加工することにより製造されている(圧延法)。
パラジウムは貴金属であるため、パラジウム単体よりも安価で、薄く柔軟性があり、銀色外観を有するパラジウム合金箔が所望されている。
しかしながら、0.5μm~20μm程度の薄い箔を得ようとする場合、従来の圧延法では均一な厚さで柔軟性を持ち、かつ欠陥の少ない箔を安定に製造するのは困難であった。また、圧延法では箔を薄膜化するほどコストが高くなるという致命的な欠点がある。
一方、パラジウム合金箔の製造方法としては、蒸着やスパッタ法による製膜で箔形成を行う方法も知られている。
しかし、これらの方法では、箔形成速度が非常に遅く、箔の機械的強度が不足するという課題があった。
そこで、パラジウム合金箔を電解めっき法で製造する試みが行われている。
特許文献1には、電解めっき法によって支持体上にパラジウムめっき皮膜を連続的に形成し、該パラジウムめっき皮膜を剥離後、その両面に電解銀めっき皮膜を施し、不活性ガス下の加熱処理によってパラジウム-銀合金箔を得るパラジウム合金箔の製造方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、めっき後に加熱処理で合金化しているため製造コストが高く、銀を含有するため箔自体のコストが依然高い。また、パラジウム-銀合金箔の場合、銀色外観を有するが、銀を含有するため硫黄ガスに対する耐変色性が乏しく、変色が起きやすいという課題が有った。
銀色外観を有するパラジウム合金皮膜を製造するためのパラジウム合金めっき液としては、パラジウムニッケル合金めっき液、パラジウムコバルト合金めっき液、パラジウム銀合金めっき液、パラジウムスズ合金めっき液、パラジウム銅合金めっき液、パラジウム亜鉛合金めっき液等が開発されている。
これらの合金で合金共析率が同じ質量%でコストを比較すると、銀が最も高く、コバルト、スズ、ニッケル、銅、亜鉛の順に安価となり、コストや耐食性の兼ね合いからパラジウム銅合金めっきが要求されている。
従来、装身具や殺菌部剤、水素精製の用途として、電解パラジウム銅合金めっき皮膜(被覆層)、電解パラジウム銅合金めっき液は公知である。
特許文献2には、パラジウム50~95%を含有するパラジウム銅合金めっき被覆層と、該パラジウム銅合金めっき被覆層を形成するための電解パラジウム銅合金めっき液が開示されており、黄銅やチタニウム基材上に白色外観のパラジウム銅合金めっき被覆層を有する装身具が記載されている。
しかしながら、特許文献2の実施例に記載のめっき液は、錯化剤にエチレンジアミン又はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いており、本発明者の追試によると、めっき皮膜の応力が高く、外観が赤みを帯びやすいという課題があった。
特許文献3には、可溶性パラジウム塩、可溶性銅塩、導電性化合物、ピリジン環含有化合物、及び可溶性半金属化合物を含有するパラジウム銅合金めっき液が開示され、該パラジウム銅合金めっき液を用いて基材表面の少なくとも一部に、パラジウム40~99重量%のパラジウム銅合金めっき層を被覆した殺菌性部材の製造を行う旨が記載されている。
本発明者らの検討によると、特許文献3の実施例記載のめっき浴を用いることで、銀色外観のパラジウム銅合金めっき被覆層を形成できる場合があるものの、そのような場合であっても、酸化膜を有する金属基体から該パラジウム銅合金めっき被覆層を剥離した際には、剥離性が悪く、割れが生じてしまった。また、金属基体から剥離でき、箔として得られた場合でも、反りが大きくカールしてしまう;基材側とめっき面側で合金比が異なるため、表裏でパラジウム銅合金箔の色調が異なる;という課題がある。
特許文献4には、パラジウム錯体と銅塩を含み、中性アミノ酸を含むパラジウム合金めっき液が開示され、パラジウムが60質量%の外観が均一なパラジウム銅合金めっき膜が得られる旨が記載されている(特許文献4の実施例7)。
しかしながら、本発明者らの追試によると、特許文献4のめっき液から得られたパラジウム-銅合金めっき皮膜は大部分が赤色であり、さらには外観のムラやクラックが多く、基材から剥離して箔として得るには柔軟性が著しく劣っていた。
特許文献5には、硫酸パラジウム、錯化剤、銅塩を含有するパラジウム銅合金めっき液が開示され、多孔性ステンレス基体上に中間層としてニッケルめっき層を形成後、パラジウム銅合金皮膜を形成した複合体が記載されている。
しかし、本発明者らが特許文献5のめっき液を用いて追試したところ、得られたパラジウム銅合金めっき皮膜は外観ムラが多く、色調が褐色を帯びてしまうことが判明した。
このように、基材上にパラジウム銅合金めっき皮膜(被覆層)を形成すること、及びそのための電解パラジウム銅合金めっき液自体は公知のものであるが、これらの公知技術により形成したパラジウム銅合金めっき皮膜を剥離して箔として使用する場合に、実用に耐える箔を得られるか検討(箔の性質を検討)した事例は無かった。
具体的には、基材からパラジウム銅合金めっき皮膜を剥離することによって、両面ともに均一な銀色外観であり、カールの無いパラジウム銅合金箔を得るには課題が多く、かかる課題を解決可能なパラジウム銅合金めっき液が要望されている。
特許第3316417号公報 特開平6-340983号公報 特開2000-303199号公報 特開2008-081765号公報 特開2008-261045号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、表面に酸化膜を有する金属基体からの剥離性が良好である;金属基体から剥離した後に、柔軟で反り(カール)が少ない;ピンホールやクラック等の欠陥が少ない;めっき後にアニール処理を行わなくとも箔厚み方向に対して均一な合金組成を有する;表裏の合金比率の差が少ない;といった特長を有するパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を提供することにある。
また、同時に、本発明の課題は、かかるめっき液を使用したパラジウム銅合金剥離箔の製造方法やパラジウム銅合金箔を提供することや、パラジウム(II)アンミン錯塩を添加することによってかかるめっき液を調製するためのめっき液調製用水溶液を提供することにもある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩、(B)銅(II)塩、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物、(D)四価のセレン化合物、並びに、(E)ピリジンスルホン酸化合物を含有するめっき液において、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物を特定の濃度範囲で含有させ、かつ、銅のモル濃度に対する(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物のモル濃度の比を特定の範囲にすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩、(B)銅(II)塩、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物、(D)四価のセレン化合物、並びに、(E)ピリジンスルホン酸化合物を含有し、
(C)に属する化合物のモル濃度が0.35mol/L以上1.1mol/L以下であり、(C)に属する化合物のモル濃度を銅のモル濃度で除した値が4.8以上23.2以下であり、pHが7.5以上9.5以下であることを特徴とするパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を提供するものである。
また、本発明は、上記のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を使用して、表面に酸化膜を有する金属基体上にパラジウム銅合金めっき皮膜を形成し、該パラジウム銅合金めっき皮膜を該金属基体から剥離することでパラジウム銅合金剥離箔を得ることを特徴とするパラジウム銅合金剥離箔の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、厚さ0.5μm以上20μm以下であり、パラジウムの平均比率が40質量%以上80質量%以下であるパラジウム銅合金箔であって、一方の面のパラジウムの比率をX、他方の面のパラジウムの比率をXとした場合に、|X-X|≦15質量%であることを特徴とするパラジウム銅合金箔を提供するものである。
また、本発明は、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩を添加することによって上記のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を調製するためのめっき液調製用水溶液であって、
(B)銅(II)塩、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物、(D)四価のセレン化合物、並びに、(E)ピリジンスルホン酸化合物を含有し、
(C)に属する化合物のモル濃度が0.35mol/L以上1.7mol/L以下であり、(C)に属する化合物のモル濃度を銅のモル濃度で除した値が4.8以上23.2以下であることを特徴とするめっき液調製用水溶液を提供するものである。
本発明によれば、表面に酸化膜を有する金属基体からの剥離性が良好であり、従来のめっき液では困難であった柔軟で反りが少なく表裏の合金比率の差が少ないパラジウム銅合金箔を形成するための電解パラジウム銅合金めっき液を提供することができる。
また、本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法によれば、従来の圧延法では困難であった厚さ0.5μm以上20μm以下のパラジウム銅合金箔を安定して歩留まり良く形成することができる。
また、本発明のパラジウム銅合金箔であれば、ピンホールやクラック等の欠陥が少なく、該パラジウム銅合金箔を利用した製品の歩留まりを向上させ、従来の圧延法では実現できなかった薄い合金箔を低コストに提供することができるため、産業上有用である。
例A10で得たパラジウム銅合金剥離箔の断面を示す電子顕微鏡写真である(倍率15,000倍)。 例B1で得たパラジウム銅合金剥離箔の断面を示す電子顕微鏡写真である。(倍率15,000倍) 例A10で得たパラジウム銅合金剥離箔の電子顕微鏡写真である。 (a)めっき面側(表面)から観察した写真(倍率500倍) (b)基体側(裏面)から観察した写真(倍率500倍) 例B1で得たパラジウム銅合金剥離箔の電子顕微鏡写真である。 (a)めっき面側(表面)から観察した写真(倍率500倍) (b)基体側(裏面)から観察した写真(倍率500倍) 例A10で得たパラジウム銅合金剥離箔の断面を、エネルギー分散型X線分析装置を使用して分析した、パラジウム及び銅の分布を示す図である。 例B1で得たパラジウム銅合金剥離箔の断面を、エネルギー分散型X線分析装置を使用して分析した、パラジウム及び銅の分布を示す図である。 例A10のめっき液の分極曲線を測定した図である。 例B1のめっき液(従来のめっき液)の分極曲線を測定した図である。
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
[パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液]
本発明のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液は、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩、(B)銅(II)塩、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物、(D)四価のセレン化合物、並びに、(E)ピリジンスルホン酸化合物を含有する。本発明の電解パラジウム銅合金めっき液では、(C)に属する化合物のモル濃度(以下、「Cp」という場合がある。)、(C)に属する化合物のモル濃度を銅のモル濃度で除した値(以下、「P比」という場合がある。)、pHが後述する特定範囲内となっている。
また、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、後述するその他の成分を含有してもよい。
<(A)パラジウム(II)アンミン錯塩>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、パラジウム(II)アンミン錯塩(パラジウム(Pd)イオンにアンモニア(NH)が配位した錯塩)を含有することが必須である。パラジウム(II)アンミン錯塩は、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液のパラジウム源として用いられる。
パラジウム(II)アンミン錯塩は、1種の使用に限定されず2種以上を併用することもできる。
パラジウム(II)アンミン錯塩の具体例としては、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)([Pd(NH]Cl)、テトラアンミンパラジウム(II)硫酸塩([Pd(NH]SO)、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩([Pd(NH](NO)、テトラアンミンパラジウム(II)スルファミン酸塩([Pd(NH](NHSO)、テトラアンミンパラジウム(II)メタンスルホン酸塩([Pd(NH](CHSO)、テトラアンミンパラジウム(II)水酸塩([Pd(NH](OH))、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩([Pd(NH]CO)、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩([Pd(NH](CHCOO))、テトラアンミンパラジウム(II)シュウ酸塩([Pd(NH]C)等のパラジウム(II)テトラアンミン錯塩(配位子として4つのアンモニア(NH)分子を有するパラジウム(II)アンミン錯塩);ジクロロジアンミンパラジウム(II)([PdCl(NH])、ジニトロジアンミンパラジウム(II)([Pd(NO(NH])等のパラジウム(II)ジアンミン錯塩(配位子として2つのアンモニア(NH)分子を有するパラジウム(II)アンミン錯塩);これらの水和物等が挙げられる。
これらのパラジウム(II)アンミン錯塩は、前記した本発明の効果を発揮しやすく、更に、良好な電解パラジウム銅合金めっき性能、めっき液への溶解のしやすさ、入手のしやすさ、コスト等の観点からも好ましい。
また、これらの中でも、上記の点から、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)(別名:テトラアンミンパラジウム(II)塩化物)、テトラアンミンパラジウム(II)硫酸塩、ジクロロジアンミンパラジウム(II)、ジニトロジアンミンパラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)水酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩;これらの水和物が特に好ましい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液中のパラジウム(II)アンミン錯塩の含有量(2種以上併用する場合は合計含有量)は、特に限定はなく、電解パラジウム銅合金めっき液全体に対して、金属パラジウムとして、1g/L~100g/Lであることが好ましく、2g/L~50g/Lであることがより好ましく、3g/L~30g/Lであることが特に好ましい。
電解パラジウム銅合金めっき液中のパラジウム(II)アンミン錯塩の含有量が少なすぎると、均一な色調の電解パラジウム銅合金皮膜の形成が困難になる場合がある。すなわち、電解パラジウム銅合金めっき皮膜の色や付き回りを目視で観察したときに、パラジウム銅合金めっき皮膜にヤケやムラといった析出異常が認められる場合がある。
また、形成したパラジウム銅合金皮膜を金属基体から剥離する際の剥離性が悪化する場合がある。すなわち、柔軟性が悪く、剥離した際に割れやすい合金めっき皮膜になり、箔として使用できない場合がある。
一方、電解パラジウム銅合金めっき液中のパラジウム(II)アンミン錯塩の含有量が多すぎる場合は、電解パラジウム銅合金めっき液の性能としては特に問題はないが、上記含有量を超えて含有させても、パラジウム銅合金皮膜を金属基体から剥離して得られるパラジウム銅合金箔の性能は向上しない。また、パラジウム(II)アンミン錯塩は高価であり、不経済となる場合がある。
<(B)銅(II)塩>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、銅(II)塩を含有することが必須である。銅(II)塩は、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液の銅源として用いられる。
銅(II)塩は、1種の使用に限定されず2種以上を併用することもできる。
銅(II)塩の具体例としては、硫酸銅(II)(CuSO)、塩化銅(II)(CuCl)、硝酸銅(II)(Cu(NO)、ピロリン酸銅(II)(Cu)、スルファミン酸銅(II)(Cu(SONH)、メタンスルホン酸銅(II)(Cu(CHSO)、炭酸銅(II)(CuCO)、水酸化銅(II)(Cu(OH))、ギ酸銅(II)(Cu(HCOO))、酢酸銅(II)(Cu(CHCOO))、シュウ酸銅(II)(CuC);これらの水和物等が挙げられる。
これらの銅(II)塩は、前記した本発明の効果を発揮しやすく、更に、良好な電解パラジウム銅合金めっき性能、めっき液への溶解のしやすさ、入手のしやすさ等の観点からも好ましい。
また、これらの中でも、上記の点から、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)、酢酸銅(II);これらの水和物が特に好ましい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液中の銅(II)塩の含有量(2種以上併用する場合は合計含有量)は、特に限定はなく、電解パラジウム銅合金めっき液全体に対して、金属銅として、0.3g/L~30g/Lであることが好ましく、0.5g/L~13g/Lであることがより好ましく、1g/L~10g/Lであることが特に好ましい。
電解パラジウム銅合金めっき液中の銅(II)塩の含有量が少なすぎると、均一な色調の電解パラジウム銅合金皮膜の形成が困難になる場合がある。すなわち、電解パラジウム銅合金めっき皮膜の色や付き回りを目視で観察したときに、パラジウム銅合金めっきの析出異常が認められる場合がある。
また、形成したパラジウム銅合金皮膜を金属基体から剥離する際の剥離性が悪化する場合がある。すなわち、柔軟性が悪く、剥離した際に割れやすい合金めっき皮膜になり、箔として使用できない場合がある。
一方、電解パラジウム銅合金めっき液中の銅(II)塩の含有量が多すぎる場合は、電解パラジウム銅合金めっき皮膜が赤味を帯びた皮膜になる場合がある。また、皮膜を金属基体から剥離して得られた箔のめっき面(表面)が赤みを帯びていなくても、基体側の面(裏面)が赤みを帯びてしまう場合がある。
<(C)ピロリン酸化合物、トリポリリン酸化合物>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物を含有することが必須である。
本明細書において「ピロリン酸化合物」とはピロリン酸(H)又はその塩、「トリポリリン酸化合物」とはトリポリリン酸(H10)又はその塩をいう。
ピロリン酸化合物、トリポリリン酸化合物は、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液の錯化剤として作用し、パラジウム銅合金めっき皮膜形成を可能にしていると推察される。
ピロリン酸化合物の具体例としては、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸水素ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸水素カリウム、ピロリン酸アンモニウム、ピロリン酸水素アンモニウム、ピロリン酸;これらの水和物等が挙げられる。
これらのピロリン酸化合物は、前記した本発明の効果を発揮しやすく、更に、良好な電解パラジウム銅合金めっき性能、めっき液への溶解のしやすさ、入手のしやすさ等の観点からも好ましい。
また、これらの中でも、上記の点から、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸アンモニウム、ピロリン酸;これらの水和物が特に好ましい。
ピロリン酸化合物は、1種の使用に限定されず2種以上を併用することもできる。
トリポリリン酸化合物の具体例としては、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、トリポリリン酸アンモニウム、トリポリリン酸;これらの水和物等が挙げられる。
また、これらの中でも、上記の点から、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム;これらの水和物が特に好ましい。
なお、トリポリリン酸カリウムは不純物として難溶性のメタリン酸カリウムを含有する場合があるが、メタリン酸カリウムを含まないものが特に好ましい。
トリポリリン酸化合物は、1種の使用に限定されず2種以上を併用することもできる。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、(C)として、ピロリン酸化合物とトリポリリン酸化合物のどちらか一方のみを含有してもよいし、両方を含有してもよいが、少なくともトリポリリン酸化合物を含有するのが好ましい。
更に、意外なことに、ピロリン酸化合物とトリポリリン酸化合物を併用することで、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液を使用して金属基体上に形成したパラジウム銅合金めっき皮膜を該金属基体から剥離して製造したパラジウム銅合金箔のカール(反り)を特に小さくすることができるので、ピロリン酸化合物とトリポリリン酸化合物の両方を含有するのが特に好ましい。
また、トリポリリン酸化合物のみをめっき液中に添加した場合であっても、めっき液中において、不純物としてピロリン酸化合物を生成するため、合金箔のカールを特に小さくすることができる。
ピロリン酸化合物とトリポリリン酸化合物を併用する場合、その比率は、ピロリン酸化合物1モルに対して、トリポリリン酸化合物は0.01モル以上であることが好ましく、0.1モル以上であることが特に好ましい。また、ピロリン酸化合物1モルに対して、トリポリリン酸化合物は5モル以下であることが好ましく、2モル以下であることが特に好ましい。
上記範囲内であると、特に合金箔のカールを小さくしやすい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液中のピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物の含有量は、そのモル濃度をCpとしたとき、0.35mol/L以上1.1mol/L以下であることが必須である。なお、Cpは、複数のピロリン酸化合物・トリポリリン酸化合物を併用する場合は、それらの合計のモル濃度(ピロリン酸化合物とトリポリリン酸化合物とを併用する場合には、全てのピロリン酸化合物と全てのトリポリリン酸化合物の合計のモル濃度)を意味する。
Cpの範囲を上記範囲にコントロールすることで、本発明の顕著な効果が奏される。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液中のCpの値が0.35mol/Lよりも小さいと、均一な色調の電解パラジウム銅合金皮膜の形成が困難になる。すなわち、ヤケやムラといったパラジウム銅合金めっきの析出異常が認められる場合がある。
また、そのような析出異常が目視で認められない場合でも、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液を使用して得られたパラジウム銅合金皮膜を基体から剥離して製造したパラジウム銅合金箔の金属基体側であった面のパラジウムの比率が小さくなり、赤味を帯びた外観となりやすくなる場合がある。
さらには、めっき液側であった面(表面)におけるパラジウム比率と金属基体側であった面(裏面)のパラジウムの比率の差が大きくなり、表面が銀色外観、裏面が赤みを帯びた外観となり、表裏で箔の外観が異なってしまうため好ましくない。このように表裏でパラジウム比率の差が大きくなると、箔のカール(反り)が発生しやすくなる場合がある。
一方、電解パラジウム銅合金めっき液中のCpの値が1.1mol/Lよりも大きい場合は、電解パラジウム銅合金めっき皮膜にヤケやムラが認められる場合がある。
また、めっき液中にザラツキやブツ、クラックといった欠陥が生じやすくなる場合がある。
さらに、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液を使用して得られたパラジウム銅合金皮膜を基体から剥離して製造したパラジウム銅合金箔のカール(反り)が大きくなる場合がある。
後述の実施例(例B1~B5、B7~B8)に示すように、Cpが0.3mol/L程度の従来のめっき液でも、基体にパラジウム銅合金めっき層を被覆するだけであれば、所望の目的に適うが、本発明のように酸化膜を有する金属基体上に均一に合金めっきを施し、該金属基体から剥離してパラジウム銅合金箔を製造する場合においては、表裏の合金比の差が大きく、箔がカールしてしまい、課題を克服できなかった。
上記のような効果を奏しやすくするために、Cpは、0.45mol/L以上であることが好ましく、0.55mol/L以上であることが特に好ましい。また、Cpは、0.9mol/L以下であることが好ましく、0.8mol/L以下であることが特に好ましい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物のモル濃度Cpを銅のモル濃度で除した値(P比)が、特定の範囲内である。具体的には、P比が、4.8以上23.2以下である。
P比を上記範囲にコントロールすることで、本発明の顕著な効果が奏される。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液中のP比が、4.8よりも小さい場合、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液を使用して得られたパラジウム銅合金皮膜を金属基体から剥離して製造したパラジウム銅合金箔の表裏のパラジウム比率の差が大きくなる場合がある。
また、合金箔のカール(反り)が大きくなる場合がある。
一方、P比が23.2よりも大きい場合は、電解パラジウム銅合金めっき皮膜にヤケやムラが認められる場合がある。
また、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液を使用して得られたパラジウム銅合金皮膜を金属基体から剥離して製造した合金箔のカール(反り)が大きくなる場合がある。
上記のような効果を奏しやすくするために、P比は、6以上であることが好ましく、8以上であることが特に好ましい。また、P比は、20以下であることが好ましく、17以下であることが特に好ましい。
CpとP比の両方を上記範囲にコントロールすることで、従来のめっき液では困難であった、パラジウム銅合金箔の製造に適したパラジウム銅合金めっき皮膜を製造することができる。すなわち、表裏のパラジウム比率の差が少なく、カール(反り)の少ない電解パラジウム銅合金箔を得ることができる。
<(D)四価のセレン化合物>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、四価のセレン化合物(Se(IV))を含有することが必須である。該四価のセレン化合物は、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液の電位調整剤として作用していると推察される。四価のセレン化合物によって、表面に酸化膜を有する金属基体上でも、安定してパラジウムと銅を合金化することができると考えられる。
四価のセレン化合物は、1種の使用に限定されず2種以上を併用することもできる。
四価のセレン化合物の具体例としては、亜セレン酸(HSeO)、二酸化セレン(SeO)、亜セレン酸ナトリウム(NaSeO)、亜セレン酸カリウム(KSeO)等が挙げられる。
これらの四価のセレン化合物は、前記した本発明の効果を発揮しやすく、更に、良好な電解パラジウム銅合金めっき性能、めっき液への溶解のしやすさ、入手のしやすさ等の観点からも好ましい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液中の四価のセレン化合物の含有量(2種以上併用する場合は合計含有量)は、特に限定はなく、電解パラジウム銅合金めっき液全体に対して、セレンとして、0.001g/L~1g/Lであることが好ましく、0.005g/L~0.5g/Lであることがより好ましく、0.01g/L~0.1g/Lであることが特に好ましい。
電解パラジウム銅合金めっき液中の四価のセレン化合物の含有量が少なすぎると、パラジウムと銅が合金化せず、偏析する場合がある。
一方、電解パラジウム銅合金めっき液中の四価のセレン化合物の含有量が多すぎる場合は、パラジウム銅合金めっき皮膜にヤケやムラといった析出異常が認められる場合がある。また、皮膜を金属基体から剥離して得られるパラジウム銅合金箔の剥離性が悪化する場合がある。
なお四価のセレン化合物が酸化されて生成する六価のセレン化合物は、本発明の効果を奏しないが、悪影響も与えないため、電解副生成物としてめっき液中に存在してもよい。
一方、二価のセレン化合物は、本発明の効果を阻害するので、本発明のめっき液に存在することは好ましくない。
<(E)ピリジンスルホン酸化合物>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、ピリジンスルホン酸化合物(ピリジン(CN)骨格とスルホ基(-SOH)を有する化合物)を含有することが必須である。ピリジンスルホン酸化合物は、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液の結晶調整剤として作用していると推察される。
ピリジンスルホン酸化合物は、1種の使用に限定されず2種以上を併用することもできる。
ピリジンスルホン酸化合物の具体例としては、ピリジン-3-スルホン酸、ピリジン-2-スルホン酸、ピリジン-4-スルホン酸、ピリジン-3-スルホン酸ナトリウム、ピリジン-2-スルホン酸ナトリウム、ピリジン-4-スルホン酸ナトリウム、ピリジン-3-スルホン酸カリウム、ピリジン-2-スルホン酸カリウム、ピリジン-4-スルホン酸カリウム、ピリジン-3-スルホン酸アンモニウム、ピリジン-2-スルホン酸アンモニウム、ピリジン-4-スルホン酸アンモニウム;これらの水和物等が挙げられる。
これらのピリジンスルホン酸化合物は、前記した本発明の効果を発揮しやすく、更に、良好な電解パラジウム銅合金めっき性能、めっき液への溶解のしやすさ、入手のしやすさ、コスト等の観点からも好ましい。
また、これらの中でも、上記の点から、ピリジン-3-スルホン酸、ピリジン-3-スルホン酸ナトリウム、ピリジン-3-スルホン酸カリウム、ピリジン-3-スルホン酸アンモニウム;これらの水和物が特に好ましい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液中のピリジンスルホン酸化合物の含有量(2種以上併用する場合は合計含有量)は、特に限定はなく、電解パラジウム銅合金めっき液全体に対して、ピリジンスルホン酸として、0.1g/L~100g/Lであることが好ましく、0.5g/L~50g/Lであることがより好ましく、1g/L~20g/Lであることが特に好ましい。
電解パラジウム銅合金めっき液中のピリジンスルホン酸化合物の含有量が少なすぎると、均一な色調の電解パラジウム銅合金皮膜の形成が困難になる場合がある。すなわち、電解パラジウム銅合金めっき皮膜にヤケやムラといった析出異常が認められる場合がある。また、形成したパラジウム銅合金皮膜を金属基体から剥離する際の剥離性が悪化する場合がある。すなわち、柔軟性が悪く、剥離した際に割れやすい合金めっき皮膜になり、箔として使用できない場合がある。
一方、電解パラジウム銅合金めっき液中のピリジンスルホン酸化合物の含有量が多すぎる場合は、皮膜を金属基体から剥離して得られたパラジウム銅合金箔のカール(反り)が大きくなる場合がある。
<pH>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液のpHは、7.5以上9.5以下であることが必須である。
pHが7.5よりも小さい場合は、パラジウム銅合金めっき皮膜にヤケやムラといった析出異常が認められる場合がある。また、形成したパラジウム銅合金皮膜を金属基体から剥離する際の剥離性が悪化する(すなわち、柔軟性が悪く、剥離する際に割れやすくなる)場合がある。
一方、pHが9.5よりも高い場合は、金属基体からめっき皮膜を剥離する際に残渣が付着しやすく、合金箔のカール(反り)が大きくなりやすくなる場合がある。
<その他の成分>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液には、上記(A)~(E)の成分以外に、必要に応じて、その他の成分を適宜含有させて用いることができる。その他の成分の具体例としては、めっき液の導電性を良好にするための補助電導塩、めっきのpHを一定に保つためのpH緩衝剤、めっき液の泡切れを良好にするための界面活性剤等が挙げられる。
<<補助電導塩>>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液に必要に応じて含有させることのできる補助電導塩としては、公知のものを使用することができる。具体的には、塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩等が挙げられる。
これらは、1種の使用に限定されず、2種以上を併用することができる。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液に用いる電導塩の含有量(2種以上併用する場合は合計含有量)は特に限定されないが、0.01~200g/Lが好ましく、0.1~150g/Lがより好ましく、1~100g/Lが特に好ましい。
めっき液中の補助電導塩の含有量が少なすぎると、めっき液の電導性が悪くめっき時の電圧が高くなる場合があり、一方、多すぎる場合は、パラジウム銅合金めっき皮膜にヤケやムラといった析出異常が認められる場合がある。
<<pH緩衝剤>>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液に必要に応じて含有されるpH緩衝剤としては、公知のpH緩衝剤であれば特に限定はない。好ましいものとして、ホウ酸、四ホウ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グリシン;これらの酸の塩(カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩)等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液中のpH緩衝剤の含有量(2種以上併用する場合は合計含有量)は特に限定はないが、めっき液全体に対して、0.1g/L~100g/Lが好ましく、1g/L~50g/Lが特に好ましい。
めっき液中のpH緩衝剤の含有量が少なすぎると、緩衝効果が発揮され難い場合があり、一方、多すぎる場合は、緩衝効果の上昇が見られず不経済の場合がある。
<<界面活性剤>>
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、必要に応じて界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、公知のものを適宜使用することができ、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が用いられる。
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルスルホベタイン等が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、系を跨いで2種以上の界面活性剤を併用してもよい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液に用いる界面活性剤の含有量(2種以上併用する場合は合計含有量)は特に限定されないが、0.001~10g/Lが好ましく、0.01~5g/Lがより好ましく、0.05~1g/Lが特に好ましい。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、表面に酸化膜を有する金属基体上にパラジウム銅合金めっき皮膜を形成し、それを剥離してパラジウム銅合金剥離箔を得るという用途に特に適した「パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液」である。
前述のように、めっきにより形成したパラジウム銅合金皮膜を剥離してパラジウム銅合金箔として使用する場合、皮膜としては十分な性能を有していたとしても、薄い箔として使用する場合、剥離性、カールのしやすさ、表裏での合金比率の均一性等の点において実用に耐えるかどうかが問題となるが、このような観点からパラジウム銅合金めっき液の組成等について検討した事例は従来無い。
本発明のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液は、前記(C)成分のモル濃度(Cp);前記(C)成分のモル濃度を銅のモル濃度で除した値(P比);溶液のpH等を調整することによって、上記した箔として使用する場合に重要となる物性を良好としたものである。
[パラジウム銅合金剥離箔の製造方法]
本発明は、パラジウム銅合金剥離箔の製造方法にも関する。
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法は、前記したパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を使用して、表面に酸化膜を有する金属基体上にパラジウム銅合金めっき皮膜を形成し、該パラジウム銅合金めっき皮膜を該金属基体から剥離することでパラジウム銅合金剥離箔を得る。
<金属基体>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法において使用される(本発明のパラジウム銅合金めっき液により、剥離箔の元となるパラジウム銅合金めっき皮膜をその上に形成される)金属基体は、表面に酸化膜を有する金属である。
表面に酸化膜を有する金属基体の例としては、ステンレス、チタン、アルミニウム、クロム;これらの金属のめっき面等が挙げられる。その中でも、良好な電解パラジウム銅合金めっき皮膜の剥離性能、入手のし易さ、低コスト等の観点から特に好ましいものとしては、ステンレスが挙げられる。
表面に均一な酸化膜を有しない、銅や黄銅等の基体では、めっき皮膜の密着性が強く、剥離箔を製造しにくくなるため好ましくない。
<パラジウムの平均比率>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法により製造されるパラジウム銅合金剥離箔のパラジウムの平均比率は、40質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
<表裏のパラジウム比率の差>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法により製造されるパラジウム銅合金剥離箔において、金属基体側であった面におけるパラジウムの比率をX、めっき液側であった面におけるパラジウムの比率をXとした場合に、|X-X|≦15質量%であることが好ましい。
<表裏のパラジウム比率の範囲>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法により製造されるパラジウム銅合金剥離箔において、上記した各面のパラジウム比率X、Xはともに40質量%以上80質量%以下である(40質量%≦X≦80質量%、かつ、40質量%≦X≦80質量%である)のが好ましい。
<陰極電流密度>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法は、前記した本発明のパラジウム銅合金めっき液を用いて、表面に酸化膜を有する金属基体上にめっきをするに際し、陰極電流密度を0.5A/dm以上10A/dm以下の範囲でめっき処理を行うものである。
陰極電流密度が上記下限以上であると、めっき析出速度が十分となり、生産性が向上する。上記下限未満の場合はめっき時間が長くなる場合や、赤味を帯びた箔となる場合がある。
一方、陰極電流密度が上記上限以下であると、析出皮膜の外観が良好となる。上記上限よりも大きい場合は、箔の柔軟性が乏しくなる場合や箔のカール(反り)が大きくなる場合がある。
特に、ラック式めっきで行う場合は、陰極電流密度は、0.5~3.0A/dmがより好ましい。
また、液中噴流式めっき等の液撹拌速度が大きい条件の場合は、0.7~10A/dmがより好ましい。
<箔の厚さ>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法は、0.5μm以上20μm以下となるようにパラジウム銅合金めっき皮膜を形成し、その後該金属基体から該パラジウム銅合金めっき皮膜を剥離して形成する。
箔の厚さが上記下限以上となるように製造すると、ハンドリングに耐えうる箔の強度が得られる。上記下限未満のときは、箔の強度が不足して破れる場合がある。
一方、箔の厚さが上記上限以下となるように製造すると、生産性が向上し製造コストを低く抑えることができる。上記上限よりも厚い場合は、箔の製造コストが高くなる場合や箔の柔軟性が乏しくなる場合がある。
<浴温>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法でめっきをする際の浴温(めっき液の温度)は、特に限定はないが、20~90℃が好ましい。
浴温が上記下限以上であると、めっき合金箔の外観が良好となる。また、上記上限以下であると、めっき液の分解が起こりにくい。
浴温は、より好ましくは、40~80℃であり、特に好ましくは50~70℃である。
<撹拌・搖動>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法において、パラジウム銅合金めっき処理を行う工程では、一般的なめっき処理の撹拌条件である無撹拌で行なってもよいし、撹拌しながら行ってもよい。撹拌を行う場合、機械的撹拌、空気撹拌、液中噴流撹拌等しながら、上記酸化膜を有する金属基体上に電解パラジウム銅合金めっきを施すことができる。
また、ラック方式でめっきを行う場合は、基体を搖動しながらめっき処理することが好ましい。
<陽極>
パラジウム銅合金めっき処理を行う工程において使用する陽極は、チタン、チタン白金、酸化イリジウム等の不溶性陽極であってもよいし、パラジウム陽極及び銅陽極を可溶性陽極として用いてもよい。ステンレス陽極は、めっき液中に鉄、ニッケル、クロム等の含有成分が溶出するため好ましくない。
メンテナンスが容易な点から、不溶性陽極を使用することが特に好ましい。
パラジウム陽極及び銅陽極を可溶性陽極として使用する場合は、所望するパラジウム銅合金剥離箔の合金比と等しくなるよう陽極の質量比を算出し、パラジウム陽極と銅陽極をそれぞれめっき液中に浸漬することが好ましい。
<金属基体の形状>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法において、パラジウム銅合金めっき処理を行う工程において陰極となる金属基体の形状は特に限定されない。例えば、板状、帯状等の平面な基体でもよいし、ドラム状の曲面の基体であってもよい。
<金属基体の表面粗さ>
金属基体の表面粗さは特に限定されないが、剥離性の観点から、Sa(算術平均粗さ)が0.5μm未満であるのが好ましく、0.2μm未満であるのが特に好ましい。
Saが0.5μmよりも大きいと、電解パラジウム銅合金箔の剥離性が悪化する場合がある。
<めっき前処理>
めっき処理の前処理として、金属基体に、脱脂処理、脱脂後の中和処理等、一般的なめっき前処理を行うことができる。
また、剥離性を向上させるために、バフ研磨、ケミカルポリッシング、電解研磨処理等の表面研磨処理を行い、金属基体の表面粗さを低減することができる。
<下地めっき処理>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法においては、上記前処理を施した金属基体上に、パラジウム銅合金めっきを直接施してもよいし、金属基体上に下地として電解パラジウムめっき皮膜を薄く形成してから、パラジウム銅合金めっき皮膜を形成してもよい。
一般的なパラジウム銅合金めっき皮膜の形成の際に行われるように、酸化膜を有する金属基体上でも密着性が得られるような下地めっき処理を行うことは、本発明の課題(良好なパラジウム銅合金剥離箔を形成すること)に反する場合がある。
パラジウム銅合金めっき皮膜の下地として電解パラジウムめっき皮膜を形成する場合、公知の電解パラジウムめっき液を使用することができる。所望するパラジウム銅合金めっき皮膜の厚さの10%以下となるように下地の電解パラジウムめっき皮膜を形成することが好ましく、5%以下となるように形成することが特に好ましい。
このようにすることで、電解パラジウム銅合金剥離箔の特性を損なうことなく、酸化膜を有する金属基体からの剥離性を一段と向上することができる。
下地の電解パラジウムめっき皮膜が10%よりも厚くなるように形成すると、剥離性は良好になるが箔のカール(反り)が大きくなる場合がある。
<剥離方法>
本発明のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法において、金属基体上に形成したパラジウム銅合金めっき皮膜を該金属基体から剥離する際には、機械的な剥離方法で行うのが好ましい。
例えば、カッター、ワイヤーソー、スタンピング等でめっき層から基体に達する切れ込みを入れ、めっき層を直接挟み込みこんで剥離するか、水流や水中超音波処理によって金属基体から箔を剥離させることが好ましい。基体が回転ドラムの場合は、公知の剥離用ベルト、ローラー等で押さえつけて箔のみを剥離する方法が好ましい。
[パラジウム銅合金箔]
本発明は、パラジウム銅合金箔にも関する。
本発明のパラジウム銅合金箔は、厚さが0.5μm以上20μm以下であり、パラジウムの平均比率が40質量%以上80質量%以下であって、一方の面のパラジウムの比率をX、他方の面のパラジウムの比率をXとした場合に、|X-X|≦15質量%である。
本発明のパラジウム銅合金箔は、表裏のパラジウム比率の差が少なく、表裏共に銀色外観を有し、箔としての諸性質(柔軟性等)に優れ、実用に耐える。また、本発明のパラジウム銅合金箔は、通常、箔中にセレンを含有する。
電解めっき法により、金属基体上にパラジウム銅合金皮膜を得て、それを剥離してパラジウム銅合金箔を得ようとする場合に、従来のめっき液を使用すると、皮膜として外見的に問題が無くても、皮膜を剥離して箔にした場合に、表裏の比率の差が大きい箔となってしまう場合があること(後述の実施例の例B1、B3~B4、B7~B8参照)は、本発明者らにより初めて得られた意外な知見である。
前記[パラジウム銅合金剥離箔の製造方法]の項で述べたように、本発明の「パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液」を使用して金属基体上にパラジウム銅合金めっき皮膜を得て、該パラジウム銅合金めっき皮膜を剥離することにより、表裏のパラジウム比率の差が少ないパラジウム銅合金箔(本発明のパラジウム銅合金箔)を得ることができるが、かかる方法は、本発明のパラジウム銅合金箔を得るための方法の一例に過ぎず、他の方法で製造したパラジウム銅合金箔が、「本発明のパラジウム銅合金箔」の範囲外となるものではない。
<厚さ>
本発明のパラジウム銅合金箔は、厚さが0.5μm以上20μm以下である。
箔の厚さが上記下限以上であると、ハンドリングに耐えうる箔の強度が得られる。上記下限未満のときは、破れやすくなる場合がある。
一方、箔の厚さが上記上限以下であると製造コストを低く抑えることができる。上記上限よりも厚い場合は、箔のコストが高くなる場合や箔の柔軟性が乏しくなる場合がある。
<パラジウムの平均比率>
本発明のパラジウム銅合金箔は、パラジウムの平均比率が、40質量%以上80質量%以下のものである。
ここで、「平均比率」とは、パラジウム銅合金めっき箔全体におけるパラジウムの含有比率を平均化したものであり、後述の実施例に記載の方法で測定される。すなわち、厚さ方向のパラジウムの平均比率である。
パラジウムの平均比率は、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。また、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
パラジウムの平均比率が上記下限以上であると銀色外観の箔となるため好ましい。上記下限未満のときは、赤味を帯びた外観となる場合がある。
一方、パラジウムの平均比率が上記上限以下であると柔軟性のある箔となるため好ましい。上記上限よりも大きい場合は、柔軟性が悪くなる場合がある。
(A)パラジウム(II)アンミン錯塩と、(B)銅(II)塩の含有比率(モル比)を(A):(B)=1:0.3~1:1.8程度にすることにより、パラジウムの平均比率を上記範囲にしやすい。
また、pHを7.5以上9.5以下とすることにより、パラジウムの平均比率を上記範囲にしやすい。
<表裏のパラジウム比率の差>
本発明のパラジウム銅合金箔は、一方の面のパラジウムの比率をX、他方の面のパラジウムの比率をXとした場合に、|X-X|≦15質量%である。
なお、前記[パラジウム銅合金剥離箔の製造方法]の項に記載の方法で本発明のパラジウム銅合金箔を製造する場合、Xは金属基体側であった面(裏面)のパラジウムの比率(X)、Xはめっき液側であった面(表面)のパラジウムの比率(X)である。
|X-X|≦15質量%であることで、表裏で外観の差が小さく、箔のカール(反り)が起こりにくくなる。|X-X|が15質量%より大きいと、表裏で外観が異なる場合や箔のカール(反り)が大きくなる場合がある。
|X-X|≦13質量%であることが好ましく、|X-X|≦10質量%であることが特に好ましい。
Cp、P比、pHが前記特定範囲に調整された本発明のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を使用して、前記[パラジウム銅合金剥離箔の製造方法]の項に記載の方法]を使用することで、このような表裏のパラジウム比率の差の少ないラジウム銅合金箔を製造しやすい。
<表裏のパラジウム比率の範囲>
本発明のパラジウム銅合金箔は、上記した表裏のパラジウム比率X、Xはともに40質量%以上80質量%以下である(40質量%≦X≦80質量%、かつ、40質量%≦X≦80質量%である)のが好ましい。
、Xが上記下限以上となるようにすることで、銀色外観のパラジウム銅合金箔が得られるため好ましい。上記下限未満となると赤味を帯びた箔となる場合がある。
一方、X、Xが上記上限以下であると、柔軟な箔となるため好ましい。上記上限よりも大きいと、箔の柔軟性が得られなくなる場合や箔のカール(反り)が大きくなる場合があり好ましくない。
<セレン>
本発明のパラジウム銅合金箔は、通常、箔中にセレンを含有する。セレンの含有量は、柔軟性のある箔が得られやすいことから、パラジウム銅合金箔に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。また、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
セレンの含有量が上記下限未満であるとパラジウムと銅が偏析し合金化が不十分となる場合がある。
一方、セレンの含有量が上記上限よりも多いと箔の外観が黒味を帯びる場合や箔の柔軟性が不十分となる場合がある。
セレンの含有量は、後述の実施例に記載の方法で測定されるものである。
<柔軟性>
本発明のパラジウム銅合金箔は、外径5mmのステンレス丸棒に沿ってU字型に180度折り曲げ可能である。折り曲げ後も箔が破断することはなく、柔軟性に優れている。
[めっき液調製用水溶液]
前記[パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液]の項で述べた、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液の成分のうち、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩は、貴金属(パラジウム)のため非常に高価であり、めっき液中に含有した状態で長期保管するのは不経済となる場合がある。
また、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物を水に溶解し、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩を加え室温で長期保管すると、ピロリン酸及び/又はトリポリリン酸とパラジウムアンミン錯塩の複塩が塩析する場合がある。
このため、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、「(A)パラジウム(II)アンミン錯塩以外の主成分を含有させた電解パラジウム銅合金めっき液調製用水溶液」として保存しておき、めっきを行う際にめっき液の使用者が(A)パラジウム(II)アンミン錯塩を別途添加して使用することも好ましい。
すなわち、本発明は、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩を添加することによって前記のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を調製するためのめっき液調製用水溶液にも関する。
本発明のめっき液調製用水溶液は、(B)銅(II)塩、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物、(D)四価のセレン化合物、(E)ピリジンスルホン酸化合物(すなわち、前記[パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液]の項で述べた本発明の電解パラジウム銅合金めっき液の成分のうち、(A)以外)を含有する。
本発明の本発明のめっき液調製用水溶液に、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩を添加してパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を調製する際には、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩を直接(固体のまま)添加してもよいし、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩を水に溶かして水溶液とし、水溶液同士を混合してもよい。
水溶液同士を混合する場合、希釈されて液量が増えるため、本発明のめっき液調製用水溶液の(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸に属する化合物のモル濃度(Cp)の上限は、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液よりも高濃度であることが好ましい。
具体的には、本発明のめっき液調製用水溶液のCpは0.35mol/L以上1.7mol/L以下である。
本発明のめっき液調製用水溶液の(C)に属する化合物のモル濃度を銅のモル濃度で除した値(P比)は、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液の場合と同じく、4.8以上23.2以下である。
本発明のめっき液調製用水溶液のpHは、7.5以上であることが好ましく、8.0以上であることが特に好ましい。また、10.0以下であることが好ましく、9.5以下であることが特に好ましい。
本発明のめっき液調製用水溶液に、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩を添加し、必要に応じてpHを7.5以上9.5以下に調整することにより、前記の本発明の電解パラジウム銅合金めっき液を調製することができる。
Cp、P比、pHが前記特定範囲に調整された本発明のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液により、優れた性能のパラジウム銅合金箔が得られる作用・原理は明らかではないが、以下のことが考えられる。ただし、本発明は、以下の作用効果の範囲に限定されるわけではない。
本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、特有の分極特性により、膜厚方向の合金比の均一性を向上させていると考えられる。これは、陰極電位がめっき初期(酸化膜を有する金属基体の電位)からめっき中に経時で変化しても(パラジウム銅合金めっき皮膜の電位)、分極曲線が変動しにくいからと考えられる。
後述の実施例で示すように、従来のめっき液では酸化膜を有する金属基体上では、黄銅上や銅上の場合に比べて分極曲線がシフトするのに対し、本発明の電解パラジウム銅合金めっき液は、下地金属種によらず分極曲線がほぼ一致する特性を有している。そのため、めっき中に下地金属が酸化膜を有する金属基体からパラジウム銅合金めっき皮膜に変化しても、合金比が変動せず、膜厚方向の均一性を維持しやすいと考えられる。
以下に、実施例等を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
例A1~16、例B1~19
<電解パラジウム銅合金めっき皮膜の形成>
50mm×70mm×0.1mmtのステンレス板(SUS304、株式会社ニラコ製)を試験片として、該試験片上に表1に示す工程でめっきを施した。
電解パラジウム銅合金めっき皮膜は、表2~表5に示す浴組成の電解めっき液1Lを使用して形成した。トリポリリン酸カリウムは、「KTP」(日本化学工業株式会社製)を使用した。ピロリン酸は、「二リン酸」(純正化学株式会社製、純度93%)を使用した。その他の成分は試薬グレードを使用した。
pHは特に指定がない限り、水酸化カリウム又は硫酸で調整した。断面膜厚が5~8μmとなるよう、浴温50℃、電流密度1A/dmで30分めっきした。陽極として白金コーティングチタンメッシュ2枚を使用し、陰極に対向させて設置した。スターラーにより、250rpmでめっき液を撹拌しながら、めっき中は陰極を陽極と平行な方向に約6m/minで往復搖動させた。
なお、表2~表5において、「パラジウム(II)アンミン錯塩」の欄、及び、「他のパラジウム(II)塩」の欄に記載された化合物の含有量は、パラジウム(Pd)としての含有量(g/L)を示す(106.4g/mol)。同様に、「銅(II)塩」の欄に記載された化合物の含有量は、銅(Cu)としての含有量(g/L)を示す(63.55g/mol)。「Se(IV)」の欄に記載された化合物の含有量は、四価のセレンとしての含有量(g/L)を示す。
これに対して、他の欄に記載された化合物の含有量は、その化合物としての含有量(g/L)を示す(例えば、「ピロリン酸カリウム」は330.34g/mol、「ピロリン酸ナトリウム10水和物」は446.05g/mol)。
Figure 0007133199000001
<パラジウム銅合金剥離箔の作製>
電解パラジウム銅合金めっき皮膜を形成した試験片を乾燥後、該試験片を40mm×60mm×0.1mmtとなるよう裁断した。裁断後の試験片を500mLトールビーカーに入れ、流水を勢いよく当てて電解パラジウム銅合金めっき皮膜を剥離させた。
<剥離性の評価>
得られたパラジウム銅合金剥離箔の柔軟性及び箔のカール(反り)、剥離後のステンレス基体表面に残渣が付着していないかの3点を以下のように評価した。
<<箔の柔軟性>>
上記のように剥離させたパラジウム銅合金剥離箔を80℃のオーブンで乾燥後、箔の基体(ステンレス基体)側の面を外径5mmのステンレス丸棒に沿わせてU字型に180度折り曲げた。折り曲げ後に小片化しなかった場合を「〇」、2つ以上に小片化した場合を「×」とした。
<<箔のカール(反り)>>
乾燥後の箔を水平な台上に置き、4つの角(コーナー)のカール(反り)高さを定規で測定した。4角全てのカール高さが5mm以内であれば「◎」、4角全てのカール高さが10mm以内であれば「〇」、いずれかの角のカール高さが10mm以上の場合又は箔が筒状に丸まった場合は「×」とした。
<<剥離後基体表面残渣>>
剥離後の試験片(ステンレス)の表面に目視で残渣が確認できない場合を「〇」、目視で箔残渣が付着していた場合は「×」とした。
<箔外観の評価>
得られたパラジウム銅合金剥離箔の外観のムラ及び色味を目視で評価した。表面側(めっき面側)と裏面側(ステンレス基体側)の両面を評価した。
<<外観のムラ>>
箔表面にムラがなく半光沢ないし光沢で均一な外観を有する場合は「〇」、ヤケやムラがあり不均一な外観を有する場合は「×」とした。
<<外観の色味>>
箔の色味を目視で評価した。
<共析比の評価>
得られたパラジウム銅合金剥離箔中のパラジウムの比率(共析比)を評価した。
<<平均共析比>>
得られたパラジウム銅合金剥離箔(約0.1g)の質量を精密天秤で測定した。その後、合金箔を濃硝酸10mLに溶解し、脱イオン水で定容後、常法によりICP発光分析装置(SPS3000、(株)日立ハイテクサイエンス製)でパラジウム濃度を測定した。測定値からパラジウム質量を算出し、合金箔の精密質量で割ることにより、パラジウム共析比を算出した。
<<箔の面の共析比>>
得られたパラジウム銅合金剥離箔の中央付近から10mm角を採取し、表面側(めっき面側)と裏面側(ステンレス基体側)それぞれについて、走査型電子顕微鏡(S-4300、(株)日立ハイテクノロジーズ製)で観察しながら、エネルギー分散型X線分析装置(EMAX EX-220、HORIBA製)にてパラジウムと銅の比率を分析した。加速電圧15kV、倍率1,000倍にて任意の約100μm角の矩形領域5カ所を分析し、その平均値をパラジウム共析比とした。
評価結果を表2~表5に示す。
Figure 0007133199000002
Figure 0007133199000003
Figure 0007133199000004
Figure 0007133199000005
<パラジウム銅合金剥離箔の剥離性・箔外観・共析比の評価結果>
例A1~A9では、Cpが0.35mol/L以上1.1mol/L以下、P比が4.8以上23.2以下となるよう、(C)ピロリン酸化合物(ピロリン酸カリウム及び/又はピロリン酸)、並びに(B)銅(II)塩の濃度を変動させてパラジウム銅合金剥離箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は、柔軟で剥離性が良好であり、表裏ともに均一な銀色外観を有していた。表裏のパラジウム共析比の差の絶対値は14質量%以内であり、カールの少ないパラジウム銅合金剥離箔が得られた。
例A10、A12、A13、A15、A16は、Cpが0.35mol/L以上1.1mol/L以下、P比が4.8以上23.2以下であり、(C)としてピロリン酸カリウムとトリポリリン酸カリウムの両方を加えためっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は、表裏ともに均一な銀色外観を有していた。トリポリリン酸カリウムを加えることで、カールがさらに少ないパラジウム銅合金剥離箔が得られた。
例A11は、Cpが0.35mol/L以上1.1mol/L以下、P比が4.8以上23.2以下であり、(C)としてトリポリリン酸カリウムのみを加えためっき液で合金箔を作製した。なお、めっき液中には、加えたトリポリリン酸カリウムの不純物として約10質量%のピロリン酸カリウムが含まれている。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は、表裏ともに均一な銀色外観を有していた。カールが非常に少ないパラジウム銅合金剥離箔が得られた。
例A14は、Cpが0.35mol/L以上1.1mol/L以下、P比が4.8以上23.2以下であり、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウムを加えためっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は、表裏ともに均一な銀色外観を有していた。カールが非常に少ないパラジウム銅合金剥離箔が得られた。
例B1は、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを使用し、Cpが0.35mol/L未満(Cp=0.30mol/L)、かつ、P比が4.8未満(P比3.2)であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔の柔軟性及び剥離性は良好であったが、基体から剥離した際に筒状にカーリングしてしまった。また、箔表面(めっき面側)は銀色外観を有していたが、箔裏面(基体側の面)がピンク色を帯び、箔の表裏で外観が異なっていた。
例B2は、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを使用し、Cpが0.35mol/L未満(Cp=0.30mol/L)、かつ、P比が4.8未満(P比1.3)であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は柔軟性良好で、カールが少ない箔であったが、表裏共にピンク色外観を有していた。また、パラジウムが平均比率で2%しか共析していなかった。
例B3は、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを使用し、Cpが0.35mol/L未満(Cp=0.30mol/L)であるが、P比は4.8以上(P比4.8)であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は柔軟性良好であったが、表裏のパラジウムの差が22%と大きく、箔のカールが大きく、筒状に丸まってしまった。
例B4は、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを使用し、Cpが0.35mol/L未満(Cp=0.30mol/L)であるが、P比は4.8以上(P比9.6)であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は柔軟性良好であったが、表裏のパラジウムの差が21%と大きく、箔のカールが大きく、筒状に丸まってしまった。
例B5は、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを使用し、Cpが0.35mol/L未満(Cp=0.30mol/L)であるが、P比が23.2を超えており(P比38.5)、(B)銅(II)塩濃度の低いめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は柔軟性良好であったが、箔のカールが大きく、筒状に丸まってしまった。
例B6は、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩にはジニトロジアンミンパラジウム(II)を使用し、ピロリン酸カリウムの代わりに硝酸アンモニウムを加え、さらに、(D)四価のセレン化合物の代わりに四価のテルル化合物を加え、(E)ピリジンスルホン酸化合物の代わりにニコチン酸アミドを加えためっき液で、電解めっきを試みた。
しかし、電解後、基体上にめっき皮膜は形成されず、合金箔を得ることはできなかった。
例B7は、(C)ピロリン酸化合物として、ピロリン酸カリウムを使用し、Cpが0.35mol/L未満(Cp=0.30mol/L)、かつ、P比が4.8未満(P比3.2)であるめっき液で合金箔を作製した。使用しためっき液の(A)パラジウム(II)アンミン錯塩にはジクロロジアンミンパラジウム(II)を使用し、アンモニアを加えて溶解した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔の柔軟性及び剥離性は良好であったが、基体から剥離した際に筒状にカーリングしてしまった。また、箔表面(めっき面側)は銀色外観を有していたが、箔裏面(基体側の面)がピンク色を帯び、箔の表裏で外観が異なっていた。
例B8は、(B)銅(II)塩として塩化銅(II)を用いた以外は、例B1と同様にして合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔の柔軟性及び剥離性は良好であったが、基体から剥離した際に筒状にカーリングしてしまった。また、箔表面(めっき面側)は銀色外観を有していたが、箔裏面(基体側の面)がピンク色を帯び、箔の表裏で外観が異なっていた。
例B9は、(C)ピロリン酸化合物の代わりに塩化アンモニウムを加えためっき液で、電解めっきを試みた。
しかし、電解後、基体上にめっき皮膜は形成されず、合金箔を得ることはできなかった。
例B10は、(E)ピリジンスルホン酸化合物の代わりに、ピコリン酸を加えためっき液で電解めっきを行った。
得られた皮膜はピンク色の外観であり、柔軟性が悪く、基体から剥離する際に割れてしまった。
例B11は、(D)四価のセレン化合物の代わりに、五価のアンチモン化合物(Sb(V))を加えためっき液で電解めっきを行った。
得られた皮膜は褐色の外観であり、柔軟性が悪く、基体から剥離する際に割れてしまった。
例B12は、(C)ピロリン酸化合物の代わりに塩化アンモニウムを加え、(D)四価のセレン化合物の代わりに五価のアンチモン化合物を加えためっき液で、電解めっきを試みた。
しかし、電解後、基体上にめっき皮膜は形成されず、合金箔を得ることはできなかった。
例B13は、(A)パラジウム(II)アンミン錯塩ではなく、硫酸パラジウムを用い、(C)ピロリン酸化合物の代わりに硝酸アンモニウムを加え、(D)四価のセレン化合物の代わりに五価のアンチモン化合物を加えためっき液で、電解めっきを試みた。
しかし、電解後、基体上にめっき皮膜は形成されず、合金箔を得ることはできなかった。
例B14では、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを加え、Cp=0.60mol/L、P比が4.3であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔の柔軟性及び剥離性は良好であり、基体から剥離した際のカール(反り)も少なかった。しかしながら、箔表面(めっき面側)は銀色外観を有していたが、箔裏面(基体側の面)がピンク色を帯び、箔の表裏で外観が異なり、表裏のパラジウム比率の差が大きかった。
例B15では、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを加え、Cp=1.18mol/L、P比が24.9であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔の柔軟性は良好で表裏のパラジウム比率も同じであったが、カール(反り)が大きかった。
例B16では、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを加え、Cp=0.60mol/L、P比が4.8で、pHが6.5であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔はヤケ気味で柔軟性が乏しく、基体から剥離した際に割れてしまった。
例B17では、(C)ピロリン酸化合物としてピロリン酸カリウムを加え、Cp=0.60mol/L、P比が38.5で、pHが10.5であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金剥離箔は、柔軟性は良好であったが、基体からの剥離性が悪く、パラジウム銅合金の残渣が斑上に付着していた。合金箔はカール(反り)が大きく筒状に丸まってしまった。
例B18では、(C)に属する化合物としてトリポリリン酸カリウムのみを加え、Cp=0.22mol/L、P比が2.4で、pHが8.0であるめっき液で合金箔を作製した。
得られたパラジウム銅合金箔は、柔軟性良好であり、カール(反り)が非常に少なかった。しかしながら、箔表面(めっき面側)がムラのあるピンク色外観を有し、箔裏面(基体側の面)はピンク色を帯びており、銀色外観の箔を得ることはできなかった。
例B19では、(C)に属する化合物としてトリポリリン酸カリウムのみを加え、Cp=0.44mol/L、P比が28.3で、四価のセレン化合物を2g/L含む、pHが8.0であるめっき液で合金箔を作製した。
得られた皮膜は銀色の外観であったが、柔軟性が悪く、基体から剥離する際に割れてしまった。
<電解パラジウム銅合金剥離箔の物性>
<<箔断面の状態>>
例A10および例B1で得られたパラジウム銅合金剥離箔の断面を、走査型電子顕微鏡(S-4300、(株)日立ハイテクノロジーズ製)で観察した。ステンレス基体から剥離したパラジウム銅合金剥離箔の上に、集束イオンビーム加工観察装置FB-2100((株)日立ハイテクノロジーズ製)でカーボン保護層を形成し、次いでエッチング加工で断面出しを行い観察用試料とした。該試料を45°傾斜させ、走査型電子顕微鏡で観察した。
図1は例A10、図2は例B1から得られた箔の断面である。どちらも箔の厚み方向に対してクラックやピンホール等の欠陥がない合金箔であった。
<<箔表裏の表面状態>>
例A10及び例B1で得られた、基体から剥離したパラジウム銅合金剥離箔の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を図3(例A10)、図4(例B1)に示す。図3(a)、図4(a)はめっき面側(表面)、図3(b)、図4(b)は基体側(裏面)である。
例A10で得た合金箔は、表面、裏面ともにクラックやピンホール等の欠陥がない合金箔であった。
同様に、例B1で得た合金箔も、表面、裏面ともにクラックやピンホール等の欠陥がない合金箔であった。
<<箔断面方向の共析比分布>>
例A10及び例B1で得られたパラジウム銅合金剥離箔を、断面が垂直方向になるよう電子顕微鏡観察用の樹脂で包埋し、機械研磨して断面観察用試料を得た。得られた試料表面に白金をスパッタコーティングし、走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分析装置でパラジウムと銅の比率を分析した。合金箔の断面の厚み方向でラインスキャンを行い、パラジウムと銅の分布を測定した結果を図5(例A10)、図6(例B1)に示す。パラジウム及び銅のカウント数のグラフにおいては、左側(0μmの位置)がステンレス基体側、右側がめっき面側である。
例A10の合金箔は、ステンレス基体側からめっき面側にかけてパラジウム及び銅は均一に分布していた。目視では表裏共に銀色外観であった。
一方、例B1の合金箔は、ステンレス基体側でパラジウムのカウント数が小さく、ステンレス基体側からめっき面側に1μmほどパラジウムが傾斜して分布していた。対して銅はステンレス基体側からめっき面側にかけて均一に分布していた。すなわち、ステンレス基体側でパラジウムに対して銅がリッチな状態になっており、合金箔断面方向の組成比が不均一であった。目視ではステンレス基体側の面がピンク色を帯びてしまっていた。
<<セレン(Se)共析比>>
例A10で得られたパラジウム銅合金剥離箔0.1389gを濃硝酸10mLに溶解し、脱イオン水で20mLに定容後、常法によりICP発光分析装置(SPS3000、(株)日立ハイテクサイエンス製)でセレン濃度を測定した。セレンの測定波長は、パラジウムピークとの干渉を避けるためλ=206.279nmを使用した。
結果、セレン濃度は28.5ppmであった。測定値からセレンの質量を算出し、合金箔の質量で割ることにより、セレン共析比を算出した。例A10で得られたパラジウム銅合金剥離箔は、セレンを0.4質量%含有していた。
例A1~9、例A11~16、例B1~5、B7~8、例B10~11、例B14~19で得られたパラジウム銅合金箔についても、例A10の場合と同様にしてセレン共析比を測定した。結果を表2~表5に示す。
例B16から得られたパラジウム銅合金箔からは、セレンが検出されず、柔軟性が乏しかった。一方で、例B19から得られたパラジウム銅合金箔は、セレンを2.7質量%含有していたが、箔の柔軟性が乏しかった。
<パラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液の分極挙動>
例A10及び例B1のめっき液について、電位を走査させながら電流値を測定し、分極曲線を測定した。作用極にはステンレス(SUS304)、黄銅、及び銅の3種類を用いた。対極は白金線を使用し、参照電極は銀/塩化銀電極を使用した。
測定条件を表6に、測定結果を図7、図8に示す。
Figure 0007133199000006
図7は例A10のパラジウム銅合金めっき液の分極曲線を、作用極の金属種を変えて測定した結果である。作用極をめっき液に浸漬して電位をマイナスに分極した際、電流曲線がほぼ重なっていることがわかる。
対して、図8は例B1(従来のめっき液)の分極曲線である。電流曲線が重なっておらず、特に酸化膜を有する金属基体(SUS304)で分極曲線のズレが大きいことがわかる。このように従来のめっき液では下地金属の酸化膜の影響を受けやすい。そのため、酸化膜を有する金属基体上に電流密度一定の条件でめっきした際に、パラジウム銅合金めっき皮膜で被覆されていく途中で陰極電位が変動しやすく、膜厚方向の合金比が不均一になりやすいと考えられる。
本発明のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を使用すれば、酸化膜を有する金属基体からの剥離性が良好であり、金属基体から剥離した後に、柔軟で反り(カール)が少なく、ピンホールやクラック等の欠陥が少ないパラジウム銅合金箔を得ることができる。特に、箔の厚み方向に対して均一な合金組成を有し、また、表裏の合金比率の差が少ないパラジウム銅合金剥離箔を得ることができる。
本発明のパラジウム銅合金めっき液は、装飾品、歯科材料、電子材料、触媒材料等で使用されるパラジウム銅合金箔の形成に広く利用されるものである。
1:パラジウム銅合金箔
2:めっき面側
3:基体側

Claims (19)

  1. (A)パラジウム(II)アンミン錯塩、(B)銅(II)塩、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物、(D)四価のセレン化合物、並びに、(E)ピリジンスルホン酸化合物を含有し、
    (C)に属する化合物のモル濃度が0.35mol/L以上1.1mol/L以下であり、(C)に属する化合物のモル濃度を銅のモル濃度で除した値が4.8以上23.2以下であり、pHが7.5以上9.5以下であることを特徴とするパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液。
  2. (C)として、少なくともトリポリリン酸化合物を含有する請求項1に記載のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液。
  3. 上記(A)パラジウム(II)アンミン錯塩が、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)硫酸塩、ジクロロジアンミンパラジウム(II)、ジニトロジアンミンパラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)スルファミン酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)メタンスルホン酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)水酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩及びテトラアンミンパラジウム(II)シュウ酸塩並びにこれらの水和物からなる群より選ばれる1種以上の化合物である請求項1又は請求項2に記載のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液。
  4. 上記(B)銅(II)塩が、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)、スルファミン酸銅(II)、メタンスルホン酸銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、ギ酸銅(II)、酢酸銅(II)及びシュウ酸銅(II)並びにこれらの水和物からなる群より選ばれる1種以上の化合物である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液。
  5. 表面に酸化膜を有する金属基体上に、陰極電流密度0.5A/dm以上10A/dm以下の範囲で、パラジウムの平均比率が40質量%以上80質量%以下で厚さが0.5μm以上20μm以下であるパラジウム銅合金めっき皮膜を形成し、該金属基体から該パラジウム銅合金めっき皮膜を剥離して得られるパラジウム銅合金剥離箔を形成するためのものである、請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液。
  6. 請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を使用して、表面に酸化膜を有する金属基体上にパラジウム銅合金めっき皮膜を形成し、該パラジウム銅合金めっき皮膜を該金属基体から剥離することでパラジウム銅合金剥離箔を得ることを特徴とするパラジウム銅合金剥離箔の製造方法。
  7. 上記金属基体が、ステンレス、チタン、アルミニウム若しくはクロム、又はこれらの金属のめっき面である請求項6に記載のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法。
  8. 上記パラジウム銅合金剥離箔のパラジウムの平均比率が40質量%以上80質量%以下である請求項6又は請求項7に記載のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法。
  9. 上記パラジウム銅合金剥離箔において、金属基体側であった面におけるパラジウムの比率をX、めっき液側であった面におけるパラジウムの比率をXとした場合に、|X-X|≦15質量%である請求項6ないし請求項8の何れかの請求項に記載のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法。
  10. 40質量%≦X≦80質量%、かつ、40質量%≦X≦80質量%である請求項9に記載のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法。
  11. 陰極電流密度0.5A/dm以上10A/dm以下の範囲で上記パラジウム銅合金めっき皮膜を0.5μm以上20μm以下の厚さで形成する請求項6ないし請求項10の何れかの請求項に記載のパラジウム銅合金剥離箔の製造方法。
  12. 厚さ0.5μm以上20μm以下であり、パラジウムの平均比率が40質量%以上80質量%以下であるパラジウム銅合金箔であって、一方の面のパラジウムの比率をX、他方の面のパラジウムの比率をXとした場合に、|X-X|≦15質量%であり、セレンを含有することを特徴とするパラジウム銅合金箔。
  13. 40質量%≦X≦80質量%、かつ、40質量%≦X≦80質量%である請求項12に記載のパラジウム銅合金箔。
  14. セレンの含有量が0.01質量%以上2質量%以下である請求項12又は請求項13に記載のパラジウム銅合金箔。
  15. 厚さ0.5μm以上20μm以下であり、パラジウムの平均比率が40質量%以上80質量%以下であるパラジウム銅合金箔であって、一方の面のパラジウムの比率をX、他方の面のパラジウムの比率をXとした場合に、|X-X|≦15質量%であることを特徴とするパラジウム銅合金電解めっき箔。
  16. 40質量%≦X≦80質量%、かつ、40質量%≦X≦80質量%である請求項15に記載のパラジウム銅合金電解めっき箔。
  17. セレンを含有する請求項15又は請求項16に記載のパラジウム銅合金電解めっき箔。
  18. セレンの含有量が0.01質量%以上2質量%以下である請求項17に記載のパラジウム銅合金電解めっき箔。
  19. (A)パラジウム(II)アンミン錯塩を添加することによって請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のパラジウム銅合金剥離箔形成用電解パラジウム銅合金めっき液を調製するためのめっき液調製用水溶液であって、
    (B)銅(II)塩、(C)ピロリン酸化合物及び/又はトリポリリン酸化合物、(D)四価のセレン化合物、並びに、(E)ピリジンスルホン酸化合物を含有し、
    (C)に属する化合物のモル濃度が0.35mol/L以上1.7mol/L以下であり、(C)に属する化合物のモル濃度を銅のモル濃度で除した値が4.8以上23.2以下であることを特徴とするめっき液調製用水溶液。
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