JP7128239B2 - ゲル組成物、乳化組成物、及び、乳化組成物の製造方法 - Google Patents
ゲル組成物、乳化組成物、及び、乳化組成物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
そして、下記特許文献1には、これらの乳化組成物が、いずれも水中油型(o/w)であることが記載されている。
このような乳化組成物には、皮膚などに塗布されてから一定時間(例えば、3秒から5秒程度)は水を保持しておき、一定時間経過後に、外部に水を放出するという特性が要求される。
そのため、放出された水が、皮膚などに塗布した直後から皮膚の内部(皮膚角質層)などに急激に浸透することとなり、上記の要望に応えられるものではない。
しかしながら、油中水型の乳化組成物を、上記のような特性を有するものとすることについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
また、本発明者は、上記のような特性を有する乳化組成物の製造方法についても見出した。
そして、本発明を想到するに至った。
水と、
α-グルカンオリゴサッカリドと、
セラキルアルコールと、
前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤と、を含み、
前記油剤は、ホホバオイルを含む。
水と、
α-グルカンオリゴサッカリドと、
セラキルアルコールと、
前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤と、
ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種と、を含み、
前記油剤は、ホホバオイルを含む。
また、ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでいるので、前記乳化組成物は、程良い流動性を示すものとなる。すなわち、前記乳化組成物は、比較的ムラの少ない状態で、皮膚などに塗布することができる。
すなわち、前記乳化組成物は、比較的十分に水を抱え込むことができ、かつ、皮膚などに塗布してから徐々に水を放出して、皮膚の内部(皮膚角質層)などに徐々に水を浸透させることができることに加えて、皮膚などに塗布するときの塗布性にも優れるものとなる。
必須成分としての、水、α-グルカンオリゴサッカリド、セラキルアルコール、及び、前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤を混合して、ゲル組成物を調製するゲル組成物調製工程と、
前記ゲル組成物調製工程で調製された前記ゲル組成物に、ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を添加する添加工程と、を備え、
前記油剤は、ホホバオイルを含む。
本実施形態に係るゲル組成物は、水と、α-グルカンオリゴサッカリドと、セラキルアルコールと、油剤とを含む。
また、本実施形態に係るゲル組成物は、前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤を含む。
さらに、本実施形態に係るゲル組成物においては、前記油剤は、ホホバオイルを含む。
前記α-グルカンオリゴサッカリドの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ社製の商品名「BIOECOLIA」などが挙げられる。
α-グルカンオリゴサッカリドを含んでいることにより、本実施形態に係るゲル組成物は、適度な粘性を示すものとなる。
これにより、本実施形態に係るゲル組成物を用いて調製された乳化組成物は、皮膚などに塗布されてから徐々に水を放出することができるものとなる。
本実施形態に係るゲル組成物は、α-グルカンオリゴサッカリドを0.3質量%以上6質量%以下含んでいることが好ましく、0.3質量%以上2質量%以下含んでいることがより好ましい。
本実施形態に係るゲル組成物が、α-グルカンオリゴサッカリドを上記数値範囲で含んでいることにより、水をより一層適度な粘性を有するものとすることができる。
これにより、本実施形態に係るゲル組成物を用いて調製された乳化組成物は、皮膚などに塗布されてから徐々に水を放出することができるという効果をより一層奏し易いものとなる。
また、本実施形態に係るゲル組成物は、任意成分として、バチルアルコールまたはキミルアルコールの少なくとも一方を含んでいてもよい。
本実施形態に係るゲル組成物が、セラキルアルコールのみを含む場合、該ゲル組成物中では、やや緩やかなゲル構造が形成されるようになるものの、バチルアルコールまたはキミルアルコールの少なくとも一方をさらに含むことにより、前記ゲル組成物中において形成されるゲル構造をより堅牢なものとすることができる。これにより、より安定して、ゲル構造中に水を保持しておくことができる。
セラキルアルコール、キミルアルコール、及び、バチルアルコールは、サメ肝油などから抽出することができるものであり、水に含有させると、水中において液晶を形成する能力(液晶形成能)を示すことが知られている。
セラキルアルコール、キミルアルコール、及び、バチルアルコールとしては、市販されているものを用いることができる。
セラキルアルコールの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ社製の商品名「NIKKOL セラキルアルコール V」が挙げられ、キミルアルコールの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ社製の商品名「NIKKOL キミルアルコール 100」が挙げられ、バチルアルコールの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ社製の商品名「NIKKOL バチルアルコール 100」が挙げられる。
本実施形態に係るゲル組成物が、キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方をさらに含む場合、キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方の含有量は、0.1質量%以上4質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
また、本実施形態に係るゲル組成物が、キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方をさらに含む場合、キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方を、前記セラキルアルコールの含有量以下で含むことが好ましい。
ここで、本実施形態に係るゲル組成物に必須成分として含まれるセラキルアルコールは、常温において水と相互作用し、内部に水を抱え込むことにより、逆ヘキサゴナル液晶を形成することが知られている。
そのため、本実施形態に係るゲル組成物では、セラキルアルコールは、親水基を内側に向けて内部に水を抱え込むとともに、親油基を外側に向け、その親油基の近傍に油剤(ホホバオイルを含む)を存在させた状態になっていると考えられる(ホホバオイルを含む油剤が連続相を構成している油中水型(w/o)の構造を取っていると考えられる)。
このような油中水型の構造を有するゲル組成物において、比較的十分に水を抱え込んでおり(ゲル構造を維持できており)、乳化組成物とされた後においては、皮膚などに塗布されてから徐々に水を放出するものするためには、水と油剤との量比、及び、油剤種が重要となると考えられる。
そして、後述する実施例の項に示したように、本発明者の鋭意検討によれば、水の100質量部に対して油剤を8質量部以上含むようにし、かつ、前記油剤がホホバオイルを含むようにして得たゲル組成物では、比較的十分に水を抱え込んでおくことができ(ゲル構造を維持できており)、乳化組成物とされた後においては、皮膚などに塗布されてからは徐々に水を放出するものとなることが見出された。
すなわち、本実施形態に係るゲル組成物は、前記水の100質量部に対して前記油剤を8質量部以上含んでおり、かつ、前記油剤がホホバオイルを含んでいることにより、比較的十分に水を抱え込んでおくことができ(ゲル構造を維持できており)、乳化組成物とされた後においては、皮膚などに塗布されてから徐々に水を放出できるものとなる。
また、乳化組成物とされた後において、皮膚などに塗布されてから、徐々に水を放出させ易くなる観点から、本実施形態に係るゲル組成物は、前記水の100質量に対して前記油剤を12質量部以下含んでいることが好ましく、10質量部以下含んでいることがより好ましい。
ホホバオイルは、植物からの抽出油であるため、キャリアオイルに分類される。
前記ワックスエステルは、長鎖脂肪酸と脂肪族アルコールとがエステル結合された化合物である。前記脂肪酸としては、エイコセン酸、ドコセン酸、オレイン酸などが挙げられ、前記脂肪族アルコールとしては、エイコセノール、ドコセノールなどが挙げられる。
前記ワックスエステルの組成は、C38エステルが6質量%、C40エステルが30質量%、C42エステルが49質量%、及び、C44エステルが8質量%となっている。
ホホバオイルとしては、市販されているものを用いることができ、例えば、生活の木社製の商品名「ホホバオイルクリア」、香栄興業社製の精製ホホバ油等を用いることができる。
植物抽出油としては、アルガニアスピノサ核油、スイートアーモンド油、マカデミアナッツ油、アボガド油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、水添ヒマシ油、水添ホホバ油などが挙げられる。
炭化水素類としては、ワックス類、流動パラフィン(ミネラルオイル)、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ファルネセンなどが挙げられる。
合成エステル油としては、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸メチルヘプチル、ラウリン酸メチルヘプチル、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルなどが挙げられる。
さらに、本実施形態に係るゲル組成物は、油剤として、ラベンダー油、ベルガモット油、ローズ油、シダーウッド油、フランキンセンス油などのエッセンシャルオイル(精油)を含んでいてもよい。
前記油剤は、ホホバオイルを50質量%以上含んでいることが好ましい。
また、上記したように、本実施形態に係るゲル組成物は、水の100質量部に対して8質量部以上の油剤を含み、前記油剤がホホバオイルを含んでいることから、水中油型構造の内部に水を比較的十分に抱え込むことができると考えられる。
さらに、上記したように、α-グルカンオリゴサッカリドは水に対して強い親和性を示すことから水中に含まれており、これにより、水の粘性が適度に増大していると考えられる。
そのため、本実施形態に係るゲル組成物では、α-グルカンオリゴサッカリドを含むことにより粘性が適度に増大した水がセラキルアルコールによって形成される逆ヘキサゴナル液晶の内部に抱え込まれているとともに、ホホバオイルを含む油剤がセラキルアルコールの外部に存在する状態(油剤が連続相となって、α-グルカンオリゴサッカリドを含むことにより粘性が適度に増大した水が、連続相たる油剤の内部に抱え込まれた状態)になっていると考えられる。
上記のように、本実施形態に係るゲル組成物においては、α-グルカンオリゴサッカリドを含むことにより粘性が適度に増大した水が、セラキルアルコールによって形成された逆ヘキサゴナル液晶内に含まれているので、比較的十分に水を抱え込んでおくことができ(ゲル構造を維持することができ)、乳化組成物とされた後においては、皮膚などに塗布されてから徐々に水を放出するものとなっていると考えられる。
また、後述する実施例の項に示したように、本発明者の鋭意検討によれば、本実施形態に係るゲル組成物が、セラキルアルコールに加えて、バチルアルコールまたはキミルアルコールの少なくとも一方を含む場合でも、比較的十分に水を抱え込んでおくことができ(ゲル構造を維持することができ)、乳化組成物とされた後においては、皮膚などに塗布されてから徐々に水を放出できるものとなることが見出された。
このことから、本実施形態に係るゲル組成物が、セラキルアルコールに加えてバチルアルコールまたはキミルアルコールの少なくとも一方を含む場合でも、本実施形態に係るゲル組成物がセラキルアルコールのみを含む場合と同様の効果が奏されているといえる。
本実施形態に係る乳化組成物は、水と、α-グルカンオリゴサッカリドと、セラキルアルコールと、ホホバオイルと、ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種と、を含む。
また、本実施形態に係る乳化組成物は、前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤を含む。
さらに、本実施形態に係る乳化組成物においては、前記油剤は、ホホバオイルを含む。
すなわち、本実施形態に係る乳化組成物は、本実施形態に係るゲル組成物に、ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を加えることにより構成されている。
そのため、以下の本実施形態に係る乳化組成物についての説明においては、本実施形態に係るゲル組成物と説明が重複する部分においては、その説明を繰り返さない。
本実施形態に係る乳化組成物が、キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方をさらに含む場合、キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方を、前記セラキルアルコールの含有量以下で含むことが好ましい。
すなわち、上記のごときナトリウム塩は、本実施形態に係る乳化組成物が程良い流動性を有するものとなるように、剤形調整剤として加えられている。したがって、以下では、上記のごときナトリウム塩を総称して、剤形調整剤と呼ぶことがある。
上記のように、本実施形態に係る乳化組成物は、程良い流動性を有するものとなっているので、皮膚などに塗布するときに、比較的塗り広げやすいものとなっている。すなわち、本実施形態に係る乳化組成物は、皮膚などに塗布するときの塗布性にも優れている。
E型粘度計を用いた粘度の測定は、例えば、測定装置として、東機産業株式会社製のR100型粘度計(REタイプ)を用い、25℃に保った恒温室にて、コーン・ロータとして3°×R14を用い、回転数100rpmの条件を採用することにより行うことができる。
なお、前記剤形調整剤は、逆ヘキサゴナル液晶中に水を抱え込んだ構造を比較的十分に維持しつつ介在していると考えられるので、前記剤形調整剤を含む場合であっても、本実施形態に係る乳化組成物は、依然として水を比較的十分に抱え込んだ状態を維持できていると考えられる。
このような現象が生じる理由は定かではないものの、本発明者は、その理由として、以下のものを想定している。
本実施形態に係る乳化組成物を皮膚などに塗布すると、まず、セラキルアルコールの親油基側の近傍に存在する油剤(ホホバオイルを含む)が皮膚の内部(皮膚角質層)などに浸透することにより、セラキルアルコールが皮膚などと接触するようになり、次に、皮膚などと接触することによりセラキルアルコールによって形成された逆ヘキサゴナル液晶が徐々に壊れるようになって、内部から水が発出され易い状態になっているものの、α-グルカンオリゴサッカリドを含むことにより水の粘性が適度に増大している分だけ、水が、構造破壊が生じている逆ヘキサゴナル液晶中に保持され易くなっていることが主要因であると、本発明者は想定している。
一方で、本実施形態に係る乳化組成物は、皮膚などに塗布された後においては、セラキルアルコールによって形成された逆ヘキサゴナル液晶が徐々に壊れている状態においても、α-グルカンオリゴサッカリドが存在していることにより水の粘性が適度に増大されているので、構造破壊が生じている逆ヘキサゴナル液晶中においても、依然として、水が保持され易くなっていると考えられる。そのため、皮膚などに塗布した後において、比較的十分に水を保持した上で、水を放出させることができる。
すなわち、本実施形態に係る乳化組成物は、皮膚などに塗布された後においては、皮膚などに塗布してから徐々に水を放出させて、皮膚の内部(皮膚角質層)などに徐々に水を浸透させることができる。
そのため、これら3種のクリームは、皮膚に塗布された直後においては、水分を抱え込んだ瑞々しい状態にあるものの、経時的に水分が揮発して皮膜状になることによって、皮膚の内部からの水の放出を抑制して皮膚の保湿性を保っていると考えられる。すなわち、クリーム自体の内部に水を抱え込むことにより、皮膚などの保湿性を保っているものではないと考えられる。
これに対し、図1(c)に示したように、本実施形態に係る乳化組成物は、金属板に塗布した直後において、水分を十分に抱え込んだ瑞々しい状態にあり、また、図1(d)に示したように、金属板に塗布してから2週間経過した後においても、市販品の3種のクリームのように皮膜を形成せずに、十分に水を抱え込んだ瑞々しい状態を維持できていることが分かる。すなわち、本実施形態に係る乳化組成物は、経時的に水分が揮発することを十分に抑制できていると考えられる。そのため、本実施形態に係る乳化組成物は、皮膚などに塗布された場合、角質層に馴染み易いと考えられる。
また、本発明者は、本実施形態に係る乳化組成物では、油剤、セラキルアルコール、及び、水が、皮膚の内部(皮膚角質層)などに浸透した後で、油剤及びセラキルアルコールによって、皮膚の内部(皮膚角質層)などで水が保持され易くなって、その結果、皮膚などの保湿性が高められ得ると考えている。
したがって、本実施形態に係る乳化組成物は、皮膚などの保湿性を保ちつつ、老若男女を問わず、違和感なく心地よく使用できるものであると考えられる。
なお、図2には、本実施形態に係る乳化組成物を皮膚に塗布してから5秒後の状態を示しているが、図2から、乳化組成物から水が放出されて、徐々に皮膚の内部(皮膚角質層)などに浸透している様子が見て取れる。
そして、前記表皮ブドウ球菌は、α-グルカンオリゴサッカリドを資化する(栄養源として利用する)ことによって増殖される。
本実施形態に係る乳化組成物の製造方法は、
水、α-グルカンオリゴサッカリド、セラキルアルコール、及び、前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤を混合して、ゲル組成物を調製するゲル組成物調製工程(S1)と、
前記ゲル組成物調製工程(S1)で調製された前記ゲル組成物に、ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を添加する添加工程(S2)と、を備える。
また、本実施形態に係る乳化組成物の製造方法において、前記油剤は、ホホバオイルを含んでいる。
本実施形態に係る乳化組成物の製造方法について、以下により詳細に説明する。本実施形態に係る乳化組成物の製造方法の説明においても、本実施形態に係るゲル組成物、及び、本実施形態に係る乳化組成物と説明が重複する部分については、その説明は繰り返さない。
ゲル組成物調製工程S1では、セラキルアルコールに加えて、キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方を添加してもよい。
キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方を混合する場合、キミルアルコールまたはバチルアルコールの少なくとも一方の添加量は、セラキルアルコールの添加量以下であることが好ましい。
また、ゲル組成物調製工程S1では、ホホバオイルに加えて、他の油剤を添加してもよい。
水を含む水相と油剤を含む油相とをそれぞれ調製し、これらを混合することによりゲル組成物を調製する例としては、以下の手順にしたがったものが挙げられる。
(1)水にα-グルカンオリゴサッカリドを溶解させて水相を得る。この手順(1)は、例えば、室温(23±2℃)で行うことができる。
(2)油剤とセラキルアルコールとを混合して透明の油相を得る。この手順(2)は、例えば、油剤とセラキルアルコールとの混合液を所定の液温まで加温してから(例えば、液温70℃まで加温してから)行うことができる。
前記油相には、必要に応じて、セラキルアルコールに加えて、バチルアルコールまたはキミルアルコールの少なくとも一方を混合してもよい。
(3)前記水相と前記油相と混合することによりゲル組成物を得る。手順(3)は、前記油相の透明を維持した状態で行うことが好ましい。
前記水相と前記油相との混合は、汎用ホモミキサーなどを用いて、比較的高い回転数(例えば、8000rpm)で数分程度(例えば、2分程度)撹拌した上で、さらに、汎用撹拌機などを用いて、先の撹拌よりも低い回転数(例えば、700rpm。以下、比較的低い回転数ともいう)で数分程度(例えば、5分程度)撹拌することにより行うことが好ましい。比較的高い回転数(例えば、8000rpm)で前記水相と前記油相との混合液を撹拌した後で、比較的低い回転数(例えば、700rpm)で前記水相と前記油相との混合液を撹拌することにより、より十分な水を抱え込んだゲル組成物を得ることができる。すなわち、比較的高い回転数の撹拌では抱え込ませることができなかった水を、比較的低い回転数で撹拌することにより、ゲル組成物中に抱え込ませることができる。
なお、ゲル組成物が十分に水を抱え込んでいるか否かは、目視で観察することにより判断することができる。例えば、目視により、相分離している箇所が認められる場合には、ゲル組成物が十分に水を抱え込んでいないと判断することができる。
添加工程S2は、例えば、室温にて、前記ゲル組成物中において生じる剪断力を比較的小さくできるような回転数(例えば、150rpm以上700rpm以下)で撹拌することにより行うことができる。
本実施形態に係る乳化組成物の製造方法では、ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる一種(すなわち、剤形調整剤)を、ゲル組成物調製工程S1で得られたゲル組成物に添加すること、すなわち、ゲル組成物を得た後に、前記剤形調整剤を添加することが重要である。
ゲル組成物を得た後に、前記剤形調整剤を添加することにより、セラキルアルコールの外部に存在する油剤(ホホバオイルを含む)どうしの間に前記剤形調整剤を適度に介在させて、ゲル組成物のゲル状態をある程度緩和させることができると考えられるので、得らえる乳化組成物は、程良い流動性を有するものとなる。すなわち、得られる乳化組成物は、塗布性よく皮膚などに塗布することができるようになる。
また、前記剤形調整剤は、水を抱え込んだ構造を十分に維持しつつ、油剤(ホホバオイルを含む)どうしの間に介在していると考えられるので、添加工程において前記剤形調整剤を添加した場合であっても、得られる乳化組成物は、依然として水を十分に抱え込んだ状態を維持できていると考えられる。
さらに、得られる乳化組成物では、α-グルカンオリゴサッカリドを含むことにより粘性が適度に増大した水が、セラキルアルコールによって形成された逆ヘキサゴナル液晶内に含まれているので、皮膚などに塗布されてからは、徐々に水を放出して、皮膚の内部(皮膚角質層)などに徐々に水を浸透させることができる。
なお、本発明者の鋭意検討によれば、水、α-グルカンオリゴサッカリド、セラキルアルコール、前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤、及び、剤形調整剤を一度に混合して得られた、乳化組成物は、抱水性に劣り、皮膚などに塗布した後において、徐々に水を放出できるものとはなり得ないことが分かっている。
そのため、本実施形態に係る乳化組成物を得る上においては、ゲル組成物を調製した後に、剤形調整剤を添加することが極めて重要である。
ステアロイル乳酸ナトリウムの市販品としては、武蔵野化学研究所製のものが挙げられ、イソステアロイル乳酸ナトリウムの市販品としては、武蔵野化学研究所製のものが挙げられ、環状リゾホスファチジン酸ナトリウムの市販品としては、SANSHO株式会社製のものが挙げられ、トコフェリルリン酸ナトリウムの市販品としては、昭和電工社製のものが挙げられる。
まず、以下の表1に示すような組成で、処方例1~3に係るゲル組成物を作製して、水を抱え込む性能(抱水性)について評価した。
セラキルアルコールには、日光ケミカルズ社製の商品名「NIKKOL セラキルアルコール V」を用い、バチルアルコールには、日光ケミカルズ社製の商品名「NIKKOL バチルアルコール 100」を用い、キミルアルコールには、日光ケミカルズ社製の商品名「NIKKOL キミルアルコール 100」を用いた。
また、ホホバオイルには、生活の木社製の商品名「ホホバオイルクリア」を用いた。
さらに、α-グルカンオリゴサッカリドには、日光ケミカルズ社製の商品名「BIOECOLIA」を用いた。
また、水には、精製水を用いた。
抱水性の評価は、目視により、液相が確認できないものを水が十分に抱え込めているとして〇とし、目視により、液相が確認でき、液相中に凝集物が浮いた状態になっているものを水が十分に抱え込めていないとして×とした。
なお、処方例1~3に係るゲル組成物は、以下の手順にしたがって作製した。
(1)室温にて、水にα-グルカンオリゴサッカリドを溶解させて水相を得る。
(2)液温70℃にて、ホホバオイルと、セラキルアルコール、キミルアルコール、または、バチルアルコールのいずれかと、を混合して透明の油相を得る。
(3)前記油相の透明を維持した状態で、前記水相と前記油相とを混合する。前記水相と前記油相との混合は、回転数8000rpmにて2分程度撹拌した後、回転数700rpmにて5分程度撹拌を行う。
この結果から、セラキルアルコールを単独で含むゲル組成物は、十分な抱水性を示すものの、バチルアルコールまたはキミルアルコールを単独で含むゲル組成物は、十分な抱水性を示し得ないことが分かった。
処方例4~21に係るゲル組成物の各成分には、処方例1~3で示したものと同じものを用いた。
抱水性の評価は、上記と同様に行った。
処方例4~21に係るゲル組成物は、以下の手順にしたがって作製した。
(1)室温にて、水にα-グルカンオリゴサッカリドを溶解させて水相を得る。
(2)液温70℃にて、ホホバオイルと、セラキルアルコール及びバチルアルコールの組み合わせ、セラキルアルコール及びキミルアルコールの組み合わせ、または、セラキルアルコール、バチルアルコール、及び、キミルアルコールの組み合わせと、を混合して透明の油相を得る。
(3)前記油相の透明を維持した状態で、前記水相と前記油相とを混合する。前記水相と前記油相との混合は、回転数8000rpmにて2分程度撹拌した後、回転数700rpmにて5分程度撹拌を行う。
また、セラキルアルコールを含まずに、バチルアルコール及びキミルアルコールを含む処方例16に係るゲル組成物は、抱水性の評価が×であった。
一方で、上記に該当しない、処方例6~15、及び、17に係るゲル組成物は、いずれも、抱水性の評価が〇であった。
この結果から、ゲル組成物が十分な抱水性を示すためには、(1)水の100質量部に対して油剤が8質量部以上であり、油剤がホホバオイルを含んでいること、(2)セラキルアルコールを必須成分として含むこと、(3)セラキルアルコールに加えて、バチルアルコールまたはキミルアルコールの少なくとも一方を含む場合には、組成物におけるバチルアルコールまたはキミルアルコールの少なくとも一方の含有量が組成物におけるセラキルアルコールの含有量以下であること、という要件を具備する必要があることが分かった。
処方例18~25に係るゲル組成物の各成分には、処方例1~3で示したものと同じものを用いた。
抱水性については、目視により、液相が確認できないものを水が十分に抱え込めているとして〇と評価し(図3(b)参照)、目視により、液相が確認でき、液相中に凝集物が懸濁した状態となっているものを水の抱え込みがやや不十分として△と評価した(図3(a)参照)。
なお、上記した抱水性の評価×は、液相と凝集物とが分離している状態が明確に視認できる状態である。
処方例18~25に係るゲル組成物は、以下の手順にしたがって作製した。
(1)室温にて、水にα-グルカンオリゴサッカリドを溶解させて水相を得る。
(2)液温70℃にて、ホホバオイルと、セラキルアルコール及びバチルアルコールの組み合わせと、を混合して透明の油相を得る。
(3)前記油相の透明を維持した状態で、前記水相と前記油相とを混合する。前記水相と前記油相との混合は、回転数8000rpmにて2分程度撹拌した後、回転数700rpmにて5分程度撹拌を行う。
これに対し、組成物におけるα-グルカンオリゴサッカリドの含有量が0.30質量%以上5.75質量%である、処方例21~25に係るゲル組成物は、いずれも、抱水性の評価が〇であった。
この結果から、組成物におけるα-グルカンオリゴサッカリドの含有量を0.3質量%以上6質量%以下とすることにより、より十分な抱水性を得ることができることが分かった。
処方例26~28に係るゲル組成物において、セラキルアルコール、バチルアルコール、キミルアルコール、ホホバオイル、α-グルカンオリゴサッカリド、及び、水については、処方例1~3で示したものと同じものを用いた。
また、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルには、ミヨシ油脂社製の商品名「MファインオイルCCT-1」を用い、スクワランオイルには、生活の木社製の商品名「オリーブスクワラン」を用い、ミネラルオイル(流動パラフィン)には、自然化粧品研究所社製の商品名「ミネラルオイル」を用いた。
抱水性の評価は、上記と同様に行った。
処方例26~28に係るゲル組成物は、以下の手順にしたがって作製した。
(1)室温にて、水にα-グルカンオリゴサッカリドを溶解させて水相を得る。
(2)液温70℃にて、ホホバオイルと、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、スクワラン、または、ミネラルオイルのいずれかとの組み合わせに、セラキルアルコールとバチルアルコールとの組み合わせを加え、混合して透明の油相を得る。
(3)前記油相の透明を維持した状態で、前記水相と前記油相とを混合する。前記水相と前記油相との混合は、回転数8000rpmにて2分程度撹拌した後、回転数700rpmにて5分程度撹拌を行う。
この結果から、水の100質量部に対して油剤を8質量部以上含んでおり、かつ、油剤がホホバオイルを含んでいれば、十分な抱水性を得ることができることが分かった。
以下の表5に示すような組成で、処方例1’~12’に係る乳化組成物を作製して、皮膚に塗布してからの水の放出性、及び、皮膚に塗布した後の塗布感について評価した。
セラキルアルコール、バチルアルコール、キミルアルコール、ホホバオイル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、スクワランオイル、ミネラルオイル、α-グルカンオリゴサッカリド、及び、水については、上記したゲル組成物に用いたものと同じものを用いた。
ステアロイル乳酸ナトリウムには、武蔵野化学研究所社製の商品名「ステアロイル乳酸ナトリウム」を用い、イソステアロイル乳酸ナトリウムには、武蔵野化学研究所社製の商品名「イソステアロイル乳酸ナトリウム」を用い、環状リゾホスファチジン酸ナトリウムには、SANSHO社製の商品名「環状リゾホスファチジン酸ナトリウム」を用い、トコフェリルリン酸ナトリウムには、昭和電工社製の商品名「TPNa」を用いた。
皮膚に塗布してからの水の放出性の評価は、塗布直後から3秒後に水が放出されていることが感じられるものの、皮膚の内部に水が十分には浸透されていないように感じられるものを△と評価し、塗布直後から3秒後に水が放出されていることが十分に感じられ、かつ、皮膚の内部(皮膚角質層)に水が十分に浸透されていると感じられるものを〇と評価した。
また、皮膚に塗布した後の塗布感の評価は、塗布時に伸ばすことが極めて困難であり、塗布後の触感が極めて劣るものを×とし、塗布時に伸ばすことがやや困難であり、十分に伸ばした状態で塗布できず、塗布後の触感にも劣るものを△とし、塗布時に比較的容易に伸ばすことができ、塗布後の触感にも優れるものを〇とし、塗布時に極めて容易に伸ばすことができ、塗布後の触感にも極めて優れるものを◎とした。
上記の水の放出性の評価、及び、塗布感の評価は、3名のパネラーが行った。そのため、表5中には、パネラー1をパネ1と表記し、パネラー2をパネ2と表記し、パネラー3をパネ3と表記している。
なお、処方例1’~12’に係る乳化組成物は、ゲル調製工程によりゲル組成物を得た後、添加工程にて、前記ゲル組成物に剤形調整剤(ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、または、トコフェリルリン酸ナトリウムのいずれか)を添加することにより得た。
ゲル調製工程は、上記したゲル組成物を得るのと同様にして行った。
また、添加工程は、前記ゲル組成物に剤形調整剤を加えた後、回転数300rpmで30分間撹拌することにより行った。
なお、処方例1’~12’に係る乳化組成物について、東洋産業社製のR100型粘度系(REタイプ)を用い、25℃に保った恒温室にて、コーン・ロータとして3°×R14を用い、回転数100rpmの条件にて粘度を測定したところ、いずれの乳化組成物も6mPa・sを超える値を示していた。
なお、処方例5’及び10’に係る乳化組成物についての3名のパネラーによる水の放出性の評価は、やや劣る結果となっているものの、実用上は何ら問題のないレベルである。
上記の結果から、処方例1’~12’に係る乳化組成物は、皮膚などに塗布してから徐々に水を放出して、皮膚の内部(皮膚角質層)などに徐々に水を浸透させることができるものであると言える。
これに対し、処方例3’に係る乳化組成物の塗布感は、パネラー1の評価が△であり、パネラー2の評価が〇であり、パネラー3の評価が〇であるため、総合的に見て塗布感に比較的優れるものであり、また、処方例4’、7’、及び、8’に係る乳化組成物の塗布感は、パネラー1の評価が〇であり、パネラー2の評価が△であり、パネラー3の評価が〇であるため、総合的に見て、これらの乳化組成物は、総合的に見て、比較的塗布感に優れるものであることが分かった。
また、処方例2’及び10’に係る乳化組成物の塗布感は、パネラー1の評価が〇であり、パネラー2の評価が〇であり、パネラー3の評価が〇であるため、総合的に見て、これらの乳化組成物は、より塗布感に優れるものであることが分かった。
さらに、処方例1’、11’、及び、12’に係る乳化組成物の塗布感は、パネラー1の評価が◎であり、パネラー2の評価が◎であり、パネラー3の評価が〇であり、また、処方例9’に係る乳化組成物の塗布感は、パネラー1の評価が◎であり、パネラー2の評価が◎であり、パネラー3の評価が△であるため、総合的に見て、これらの乳化組成物は、特に塗布感に優れるものであることが分かった。
なお、水の放出性及び塗布感の観点から、処方例1’、9’、11’、及び、12’の乳化組成物の配合が特に好ましい配合であると考えられる。
Claims (3)
- 水と、
α-グルカンオリゴサッカリドと、
セラキルアルコールと、
前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤と、を含み、
前記油剤は、ホホバオイルを含む
ゲル組成物。 - 水と、
α-グルカンオリゴサッカリドと、
セラキルアルコールと、
前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤と、
ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種と、を含み、
前記油剤は、ホホバオイルを含む
乳化組成物。 - 水、α-グルカンオリゴサッカリド、セラキルアルコール、及び、前記水の100質量部に対して8質量部以上の油剤を混合して、ゲル組成物を調製するゲル組成物調製工程と、
前記ゲル組成物調製工程で調製された前記ゲル組成物に、ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、環状リゾホスファチジン酸ナトリウム、及び、トコフェリルリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を添加する添加工程と、を備え、
前記油剤は、ホホバオイルを含む
乳化組成物の製造方法。
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