JP7127505B2 - 薄肉鋳片の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、柱状晶組織の鋳片を圧延して再結晶させた場合には、板厚方向に(100)Cube方位が強く集積した鋼板を得ることができる。このような鋼板は、無方向性電磁鋼板として用いた場合には、板厚方向に磁力線をより透過させることができ、極めて高い磁気特性を発揮する製品を得ることが可能となる。
無方向性電磁鋼板としては、全長にわたって板厚方向に(100)Cube方位が強く集積していることが好ましい。このため、全長にわたって柱状晶率が高く安定した薄肉鋳片が望まれていた。
(1)溶鋼とドラム表面の接触部(メニスカス)において生成した凝固核が、溶融金属の流動によってドラム表面から剥離して結晶核となり、ドラム回転に伴って溶融金属プール部の下方に移動する。ここで、一対の冷却ドラムの押し付け力が一定値を上回ると、冷却ドラムの押し付けによる凝固シェルの圧着、絞り上げよって結晶核が滞留し、結晶核同士が合体して成長し、これが凝固シェル間に巻き込まれて等軸晶となる。
(2)冷却ドラムの押し付けによって凝固シェルが圧着される際に、押し付け力が過剰な場合には、圧下によって凝固シェルの先端が折損し、結晶核が発生する。そして、冷却ドラムの押し付けによる凝固シェルの圧着、絞り上げよって結晶核が滞留し、結晶核同士が合体して成長し、これが凝固シェル間に巻き込まれて等軸晶となる。
ここで、特許文献3に示すように、薄肉鋳片を上方に向けて引き抜く場合には、発生した結晶核が冷却ドラム近傍で滞留することがなくなり、等軸晶の発生を抑えることが可能となる。
また、湯面変動等によって、湯面の表面に浮遊するスカムが冷却ドラム間に巻き込まれてしまい、薄肉鋳片の表面欠陥が多発し、高品質の薄肉鋳片を鋳造することができなかった。
また、前記冷却ドラムの外周面の一部及び側面を覆う保護カバーを配置しているので、前記保護カバーの配置位置により、前記冷却ドラムと前記溶融金属との接触開始点が決定されることになり、冷却ドラムと溶鋼との接触弧長が確保されて冷却条件が安定し、薄肉鋳片を安定して製造することができる。
この場合、前記角度θをθ>90°とすることにより、前記接触開始点における冷却ドラムの回転方向が鉛直下方へ向かう成分を有するので、前記接触開始点で生成した結晶核が下方に排出され、冷却ドラム間に巻き込まれることを的確に抑制でき、等軸晶の生成をさらに抑制することができる。また、前記角度θを、θ<180°とすることにより、湯面高さや溶鋼温度の変動が生じても凝固開始点に大きく影響せず、安定して凝固シェルを形成することができる。
この場合、前記保護カバーの配置位置を変更することによって、前記冷却ドラムと前記溶融金属との接触開始点を調整することから、鋳造条件に応じて、溶融金属と冷却ドラムとの接触弧長を調整することができ、薄肉鋳片をさらに安定して鋳造することが可能となる。
本実施形態である薄肉鋳片の製造方法においては、溶融金属として溶鋼を用いており、鋼からなる薄肉鋳片1を製造するものとされている。
さらに具体的には、本実施形態において製造される薄肉鋳片1は、無方向性電磁鋼板として用いられるものである。
また、本実施形態では、製造される薄肉鋳片1の幅が300mm以上2000mm以下の範囲内、厚さが1mm以上5mm以下の範囲内とされている。
ここで、溶鋼貯留部15Bの湯面の波立ちによる、凝固への影響を抑制するためには、冷却ドラム21の軸線の浸漬深さhの下限は10mm以上とすることが好ましく、15mm以上とすることがさらに好ましい。一方、冷却ドラム21の軸線の浸漬深さhの上限は、冷却ドラム21の半径未満とすることが好ましい。
側面カバー部25Aは、図1に示すように、冷却ドラム21,21の軸部が挿通された構造とされている。
また、本実施形態においては、保護カバー25(外周面カバー部25B)の配置位置により、冷却ドラム21の外周面と溶鋼3との接触開始点Pが決定される構成とされている。すなわち、この保護カバー25(外周面カバー部25B)の配置位置によって、溶鋼3と冷却ドラム21との接触弧長が決定されることになる。
なお、凝固開始時点で生成した結晶核が下方に排出されて冷却ドラム21,21間に巻き込まれることを抑制し、等軸晶の生成をさらに安定して抑制するために、上述の角度θの下限は、95°以上とすることがさらに好ましく、100°以上とすることがより好ましい。一方、湯面高さや溶鋼温度の変動による、凝固への影響をより抑制するために、上述の角度θの上限は、170°以下とすることがさらに好ましく、160°以下とすることがより好ましい。
そして、冷却ドラム21の外周面の上で凝固シェル5が成長し、一対の冷却ドラム21,21にそれぞれ形成された凝固シェル5、5同士がドラムキス点KPで圧着されることにより、薄肉鋳片1が鋳造される。
以上のようにして、所定厚みの薄肉鋳片1が連続的に製造されることになる。
また、保護カバー25(外周面カバー部25B)の配置位置により、冷却ドラム21と溶鋼3との接触開始点Pが決定されるので、冷却ドラム21と溶鋼3との接触弧長が確保され、冷却条件が安定し、薄肉鋳片1を安定して製造することができる。
なお、保護カバー25の外周面カバー部25Bは、冷却ドラム21の外周面の一部を覆うことで、凝固開始点Pの位置を制御する機能を受け持ち、保護カバー25の側面カバー部25Aは、冷却ドラム21の側面を覆うことで、サイドシールの機能を受け持っている。保護カバー25の、冷却ドラム21の外周面の一部を覆う部分(外周面カバー部25B)と側面を覆う部分(側面カバー部25A)とは、一体で構成されてもよく、別体で構成されてもよいが、一体で構成されたほうが、冷却ドラム21の外周面の一部を覆う部分と側面を覆う部分との隙間が生じて、溶鋼3が差し込んで凝固するトラブルを、より安定的に防ぐことが可能となり好ましい。また、冷却ドラム21の側面を覆うに際しては、必ずしも側面全面を覆う必要はなく、溶鋼3が冷却ドラム21の側面に接しないように覆っていればよい。
一方、角度θを、θ<180°とした場合には、タンディッシュ15の溶鋼貯留部15Bにおいて湯面変動が生じても、凝固開始点Pに大きく影響せず、冷却ドラム21の外周面に、安定して凝固シェル5を形成することができる。
一方、冷却ドラム21の軸線の浸漬深さhを冷却ドラム21の半径未満とすることにより、保護カバー25を簡易な構成としても、鋳造を安定して行うことができる。
本実施形態では、タンディッシュに、一対の冷却ドラムを浸漬配置したものとして説明したが、これに限定されることはなく、複数の一対の冷却ドラムを浸漬配置し、複数の薄肉鋳片を鋳造する構成としてもよい。これにより、薄肉鋳片の製造効率を大幅に向上させることができる。
冷却ドラム:直径300mm、幅700mm、鉄鋼心材に銅合金スリーブ+Niめっき
サイドシール部材:窒化ボロン製
湯面制御:光学カメラでセンシングして溶鋼供給量を制御
引用文献1,2に示すように、一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶鋼プール部に溶鋼を供給し、一対の冷却ドラムに形成された凝固シェルを下方に引き下げるように、それぞれの冷却ドラムを回転させ、薄肉鋳片を下方に引き抜く構成の薄肉鋳片の製造装置を用いた。
なお、鋳造速度は、冷却ドラムと溶鋼との接触弧長を考慮して、40m/分とした。
引用文献3の第1図に示すように、タンディッシュの湯面上に一対の冷却ドラムを配設し、タンディッシュ内の上部位置で冷却ドラムの下方に配設した磁界発生装置を用いて溶鋼を一対の冷却ドラム間に下方から供給し、薄肉鋳片を上方に引き抜く構成の薄肉鋳片の製造装置を用いた。
なお、鋳造速度は、冷却ドラムと溶鋼との接触弧長を考慮して、80m/分とした。
本実施形態に記載された構成の製造装置を用いた。
なお、鋳造速度は、冷却ドラムと溶鋼との接触弧長を考慮して、80m/分とした。
また、得られた薄肉鋳片の板厚変動を評価した。評価結果を表1に示す。
ここで、板厚変動の評価方法について述べる。薄肉鋳片の全長にわたり、幅中央および1/4幅部の、鋳造長方向の板厚を、レーザー板厚計を用いて測定し、平均厚さ(2.0mm)に対する偏差を、板厚変動の評価指標とした。
得られた無方向性電磁鋼板について、JIS C 2550のエブスタイン法により、L/C方向の平均値をとって磁束密度を評価した。評価結果を表1に占めす。
3 溶鋼
5 凝固シェル
15 タンディッシュ
21 冷却ドラム
25 保護カバー
25A 側面カバー部
25B 外周面カバー部
Claims (3)
- 回転する一対の冷却ドラムの外周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
溶融金属が貯留されたタンディッシュ内に、一対の前記冷却ドラムを、前記冷却ドラムの軸線が前記溶融金属の湯面よりも下方に位置するように浸漬配置し、
前記タンディッシュ内に、前記冷却ドラムの外周面の一部及び側面を覆う保護カバーを配置し、
前記凝固シェルを上方に引き上げるように、それぞれの冷却ドラムを回転させ、一対の前記冷却ドラムの外周面にそれぞれ形成された凝固シェル同士をドラムキス点で圧着し、製造された薄肉鋳片を上方に向けて引き抜くことを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。 - 前記冷却ドラムと前記溶融金属との接触開始点と、前記冷却ドラムの回転軸心を結ぶ線をイとし、前記ドラムキス点と前記冷却ドラムの回転軸心を結ぶ線をロとし、線イと線ロのなす角度をθとして、90°<θ<180°の範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載の薄肉鋳片の製造方法。
- 前記保護カバーの配置位置を変更することにより、前記冷却ドラムと前記溶融金属との接触開始点を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄肉鋳片の製造方法。
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JP2018215613A JP7127505B2 (ja) | 2018-11-16 | 2018-11-16 | 薄肉鋳片の製造方法 |
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Country | Link |
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Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPS58159949A (ja) * | 1982-03-19 | 1983-09-22 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 薄板の連続鋳造装置 |
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