JP3061192B2 - 電磁界を有する鋳型による鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

電磁界を有する鋳型による鋼の連続鋳造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、電磁界を有する鋳型による鋼の連続鋳造方
法に関するものである。
〔従来の技術と発明が解決しようとする課題〕 高周波磁界の電磁力を利用して鋳型を構成し、この鋳
型内に溶湯を注湯し前記電磁力によって溶湯の外周面を
自立保持させるとともにその下部で冷却しながら連続鋳
造することが行われている。
〔特公平1−60337号公報,鉄と鋼 第71年(1985)第1
6号 19〜20頁参照〕 上記の鋳型による連続鋳造は、軽く且つ熱伝導率の良
いアルミニウム等の金属には適用されているが、鋼のよ
うに比較的重く且つ熱伝導率の悪い金属の場合は、上記
鋳型のみで溶鋼を自立保持して連続鋳造するには鋳造速
度を極めて遅いものとしなければならず、未だ実用され
ていない。
一方、鋼に対しては、従来より使用されている水冷鋳
型のメニスカスを形成する位置近傍の外周に電磁コイル
を設け、この電磁コイルによる電磁界の電磁力を利用し
鋳型内のメニスカス近傍の溶鋼および凝固殻を自立保持
しながら連続鋳造することが行われつつあり、例えば、
技術文献〔材料とプロセスVol13(1990)−918〕には、
水冷鋳型の外周に設けた電磁コイルによる電磁力を利用
した場合の、連続鋳造におけるオシレーションマークと
初期凝固との関係が研究発表されている。また本出願人
もこの種の技術の研究を重ねてきており、メニスカス下
50mm乃至150mmの部位より上部の鋳型壁に、所定間隔の
縦方向スリットを有する上広がりのテーパ部を形成し、
このテーパ部の外周に電磁コイルを設けた連続鋳造用鋳
型を提案〔特願昭63−303721号(特開平2−147150号公
報〕している。この提案した連続鋳造用鋳型では、鋳型
と凝固殻との間にスラグ化したパウダが浸入し易くなる
ので、鋳型と凝固殻との間の潤滑が充分に行き渡り、拘
束性ブレークアウトが起こり難くなり高速鋳造が可能と
なる。
ところで、本出願人は、その後も研究を重ね、メニス
カス下50mm乃至150mmの部位より上部の鋳型壁に所定間
隔の縦方向スリットを形成し且つその外周に電磁コイル
を設けてなる電磁界を有する鋳型を用いて鋼の連続鋳造
を試みてきた。その研究過程において、鋳造された鋳片
の中に鋳型潤滑剤を巻き込んだ介在物欠陥を有する鋳片
が見つかり、その原因を追求してきたところ、鋳造中の
鋳型内において電磁力により発生する溶鋼流動により湯
面変動を生じ、このためメニスカスが不安定になり鋳型
潤滑剤を巻き込むことが起こり介在物欠陥が発生するこ
とを知見した。
そこで、上記問題を解決することを目的としてさらに
研究を重ね、鋳造中の鋳型内の湯面変動を抑制した電磁
界を有する鋳型による鋼の連続鋳造方法を開発するに到
ったものである。
〔課題を解決するための手段〕
上記の事情により開発された本発明の要旨は、メニス
カス下50mm乃至150mmの部位より上部の鋳型壁に所定間
隔の縦方向スリットを形成し且つその外周に電磁コイル
を設けてなる電磁界を有する鋳型による鋼の連続鋳造方
法において、前記縦方向スリット16〜140mmの間隔で設
ける一方、前記電磁コイルに周波数5〜20kHzの電流を
流し、鋳型内のメニスカス近傍の溶鋼および凝固殻を電
磁力によって自立保持しながら連続鋳造する電磁界を有
する鋳型による鋼の連続鋳造方法である。
〔作用〕
以下、本発明を詳細に説明する。
第1図は、本発明方法に適用される電磁界を有する鋳
型の説明図であって、図において、(1)は水冷鋳型、
(2)は電磁コイル、(5)は浸漬ノズルを示し、水冷
鋳型(1)のメニスカス下50mm乃至150mmの部位より上
部の鋳型壁(3)には、35mm間隔に縦方向スリット
(4)が形成され、その外周に電磁コイル(2)が設け
られている。
本出願人は、従来より、上記電磁界を有する鋳型を用
い、電磁コイル(2)に流す電流の周波数として3kHzを
使用し、鋳型と凝固殻との間の潤滑性能について調査し
てきた。そしてその過程において、鋳造された鋳片の中
に鋳型潤滑剤を巻き込んだ介在物欠陥を有する鋳片が時
々見つかりその原因を追求してきた。
その結果、原因は、鋳造中の鋳型内において電磁力に
より発生する溶鋼流動により湯面変動が生じており、こ
のためメニスカスが不安定になり鋳型潤滑剤を巻き込む
ものと考え、電磁コイル(2)に流す電流の周波数を変
化させ実験を行った結果、第2図に示すように、周波数
が増加するにつれメニスカスの変動量が減少することが
分かった。特に周波数を5kHz以上に増加すると変動量が
1mm以下となり、これにより鋳型潤滑剤の巻き込みが抑
制できる。一方、このように周波数を増加するとメニス
カスの変動量は減少するが、鋳型内表面付近に磁力線が
集中しやすくなり、このため鋳型内で形成された凝固殻
が加熱され凝固が遅れる。凝固殻が鋳型からの引き抜き
に耐え得る限界としては鋳片表面温度が鋼の固相線温度
直下のゼロダクティリティー温度以下であることが必要
であるが、電磁コイル(2)に流す電流の周波数が20kH
zを超えると、鋳片表面温度がこれを上回り凝固殻の破
断が起こり、第2図に併せて示すようにブレークアウト
の発生率が高くなる。而して、本発明では、電磁コイル
に流す電流の周波数を5〜20kHzの範囲に特性し、これ
により、鋳型潤滑剤の巻き込みおよびブレークアウトの
トラブルを抑制した、電磁界を有する鋳型による鋼の連
続鋳造を可能にしたものである。
一方、上述したように電磁コイルに流す電流の周波数
が5〜20kHzであっても、水冷鋳型(1)のメニスカス
下50mm乃至150mmの部位より上部の鋳型壁(3)に形成
される縦方向スリット(4)の間隔が影響し、第3図に
示すように、5〜20kHzの範囲内の各周波数域において
縦方向スリット(4)の間隔が小さくなると磁束密度の
減衰率が減少し、間隔が140mm以下であれば50%以下の
減衰率となり、上記周波数を、電源等の機器の規模が小
さなもので有効に作用させることができる。しかし、間
隔が16mm以下になると、鋳型壁内の水冷構造が構成し難
くなり水冷鋳型の製作が困難となる。従って、縦方向ス
リット(4)の間隔は、好ましくは30〜75mmの範囲内で
形成するとよい。
また、縦方向スリットの幅は、鋳型内の溶鋼がスリッ
トから流れ出ない程度の幅であればよく、特に特定する
ものではないが、0.2〜0.5mmであればスリットの加工
性、溶鋼の流出防止および磁束密度の減衰抑制の点で好
ましい。
〔実 施 例〕
短辺鋳型壁のメニスカス下100mmの部位より上部に46m
m間隔に約0.3mm幅のスリットを、また長辺鋳型壁のメニ
スカス下100mmの部位より上部に50mm間隔に約0.3mm幅の
スリットをそれぞれ形成した鋳片寸法230×1250mm用の
スラブ連鋳鋳型の外周に、メニスカス上50mm〜メニスカ
ス下100mmの範囲を覆うようにして電磁コイルを設けて
なるで電磁界を有する鋳型(第1図参照)を用い、鋼
種:低炭素(C:0.08wt%)アルミキルド鋼を、タンディ
ッシュ内溶鋼温度を1550〜1560℃に保持しながら1.6m/m
inの鋳造速度で連続鋳造した。この時の電磁コイルに流
した電流の周波数は10kHzで、鋳型内表面における最大
磁束密度は600〜1000ガウスであった。
この鋳造中、目視観察した結果では、鋳型内の湯面の
揺れは殆ど無い状態で鋳造が行え、また得られた鋳片の
内部品質において鋳型潤滑剤を巻き込んだ介在物欠陥は
見当たらなかった。
〔発明の効果〕
上述したように、本発明に係わる電磁界を有する鋳型
による鋼の連続鋳造方法によれば、水冷鋳型の外周に設
けた電磁コイルにより鋳造中の鋳型内の湯面変動を抑制
した鋳造ができるとともに、湯面変動が抑制されること
から鋳片内に鋳型潤滑剤が巻き込まれることが防止でき
る。また、鋳型内のメニスカス近傍の溶鋼および凝固殻
が電磁力によって自立保持されるので、内外品質に優れ
た鋳片が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明方法に適用される電磁界を有する鋳型
の説明図、第2図は、周波数とメニスカスの変動量およ
びブレークアウト率との関係を示すグラフ図、第3図
は、スリット間隔と磁束密度減衰率との関係を示すグラ
フ図である。 (1)……水冷鋳型、(2)……電磁コイル (3)……鋳型壁、(4)……縦方向スリット (5)……浸漬ノズル
フロントページの続き (72)発明者 福元 裕彦 兵庫県神戸市東灘区北青木2―10―2104 (56)参考文献 特開 平2−147150(JP,A) 特開 昭63−33161(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/04 311

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】メニスカス下50mm乃至150mmの部位より上
    部の鋳型壁に所定間隔の縦方向スリットを形成し且つそ
    の外周に電磁コイルを設けてなる電磁界を有する鋳型に
    よる鋼の連続鋳造方法において、前記縦方向スリットを
    16〜140mmの間隔で設ける一方、前記電磁コイルに周波
    数5〜20kHzの電流を流し、鋳型内のメニスカス近傍の
    溶鋼および凝固殻を電磁力によって自立保持しながら連
    続鋳造することを特徴とする電磁界を有する鋳型による
    鋼の連続鋳造方法。
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