JP7126237B2 - 果実ペースト含有モッツァレラチーズ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、果実成分を含有するモッツァレラチーズ及びその製造方法に関する。
モッツァレラチーズは、原料の乳をレンネットで凝固して凝乳を得て、得られた凝乳をカードとホエイとに分離し、ホエイを排出し、カードを熱水中や水蒸気中で加熱しながら混練することなどによって製造されるチーズであり、熟成工程を含まないフレッシュチーズの1つである(非特許文献1)。
モッツァレラチーズは、あっさりとしたくせの無い味わいで、独特の弾力ある歯ごたえがあるという性質を有する。その性質のために、モッツァレラチーズは、インサラータ・カプレーゼやマルゲリータといった料理に代表されるように、一般的には他の食材と合わせて食される。
日本では、欧米食の定着によりチーズの消費量は年々増加している。しかし、チーズは動物性の脂質を多く含む食品の1つであり、近年の健康志向から、動物性の脂質の過剰摂取が問題とされている。チーズの脂質にも多く含まれる動物由来の飽和脂肪酸は、体内で悪玉のLDLコレステロールを増やす作用があり、心臓の健康面では飽和脂肪酸の摂取量を減らすことが良いとされている。
一方、チーズの製造で使用されるレンネットについて、一般的には動物由来のレンネットや微生物由来のレンネットが使用されているが、植物由来のレンネットを使用したチーズも報告されている。例えば、植物由来のレンネットとしては、イチジク(Ficus carica)の乳汁から得られるフィチン(ficin)、パパイヤに含まれるパパイン(papain)、パイナップルに含まれるブロメラインといったタンパク質分解酵素が知られている(非特許文献1及び2)。
NPO法人チーズプロフェッショナル協会、「チーズを科学する」、2016年 岩崎慎二郎ら、「化学と生物」、3巻2号(1965)p67~71
モッツァレラチーズは、あっさりとしたくせの無い味わいである反面、風味が乏しく、モッツァレラチーズそのものの嗜好性は低い。また脂質の多い食品であることから、脂質の過剰摂取が懸念されている。すなわち、心臓の健康面では低脂肪のチーズが有用である。
一方、非特許文献2に記載があるように、植物由来のレンネットを用いて得られるモッツァレラチーズは、収率が悪く、一般的に使用されている動物由来や微生物由来のレンネットを用いて製造される場合と同じく嗜好性が乏しい。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来のモッツァレラチーズと同程度の収量でありながら、従来のモッツァレラチーズよりも風味が良好であり、かつ、脂質の含有量が小さいモッツァレラチーズ及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねたところ、驚くべきことに、タンパク質分解酵素を含む果実のペーストをレンネット成分として使用し、さらに製造条件について試行錯誤することによって、果実に由来する香り、甘味及び酸味といった風味を有しつつ、脂質の含有量が小さいモッツァレラチーズを創作することに成功した。本発明はこのような成功例に基づいて完成するに至った発明である。
したがって、本発明の一態様のモッツァレラチーズ及び製造方法によれば、以下の[1]~[5]の態様のものが提供される。
[1]レンネット成分としてタンパク質分解酵素を含む果実のペーストを含有する、モッツァレラチーズ。
[2]タンパク質の含有量が20wt%以上であり、及び/又は、脂質の含有量が15wt%以下である、[1]に記載のモッツァレラチーズ。
[3]前記果実が、イチジク、キウイ、マンゴー、パイナップル及びパパイヤからなる群から選ばれる果実である、[1]又は[2]に記載のモッツァレラチーズ。
[4]下記(1)~(4)の工程を含む、モッツァレラチーズの製造方法。
(1)乳酸菌により発酵させた発酵乳又は酸によりpHを4.9~5.5に調整したpH調整乳とタンパク質分解酵素を含む果実のペーストとの混合物を静置することにより、凝乳を得る工程
(2)前記凝乳をカッティングすることにより、カード及びホエイの混合物を得る工程
(3)前記カード及びホエイの混合物を、ホエイの滲出が可能な容器に入れて加熱することにより、カードを得る工程
(4)前記カードを加熱することにより、モッツァレラチーズを得る工程
[5]前記工程(3)が、前記カード及びホエイの混合物を、ホエイの滲出が可能な容器に入れて80~90℃の熱水を用いた湯煎によって加熱することにより、カードを得る工程である、[4]に記載のモッツァレラチーズの製造方法。
本発明の一態様であるモッツァレラチーズは、従来のモッツァレラチーズよりも風味が良好であり、かつ、脂質の含有量が小さいモッツァレラチーズであることから、従来のモッツァレラチーズを用いる料理をより嗜好性の高いものとすることができ、さらにそのような料理を脂質の摂取量を抑えて愉しむことができる。
本発明の一態様である製造方法によれば、従来のモッツァレラチーズと同程度の収量で製造することができることから、本発明の一態様のモッツァレラチーズを工業的規模での生産が可能である。
図1は、後述する実施例に記載されているとおりのモッツァレラチーズの製造において使用した果実及び果実のペーストの状態並びに該モッツァレラチーズの外観及び加熱後の伸びを示した撮影写真である。
以下、本発明の一態様であるモッツァレラチーズ及び製造方法の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
本発明の一態様のモッツァレラチーズは、レンネット成分としてタンパク質分解酵素を含む果実のペーストを少なくとも含有する。
モッツァレラチーズは、通常知られているとおりの意味のモッツァレラチーズであれば特に限定されないが、例えば、原料である乳の凝固にレンネットを用い、チーズとして成形後に熟成をせずに得られるフレッシュチーズということができる。また、モッツァレラチーズは、ソフトな弾力があり、加熱するとよく伸びるという性質を有する。
レンネットは、通常知られているとおりの意味のレンネットであれば特に限定されないが、例えば、乳を凝固する機能を有したタンパク質分解酵素である凝乳酵素及び該凝乳酵素を含有する組成物ということができる。レンネット成分とは、レンネットとして機能する成分を意味する。
タンパク質分解酵素を有する果実は、通常知られているとおりの意味の植物体の果実であって、タンパク質分解酵素を有するものであれば特に限定されず、例えば、イチジク、キウイ、マンゴー、パパイヤ、パイナップル、メロン、梨、リンゴ、プルーン、アボカド、ゴーヤ、パプリカなどが挙げられ、モッツァレラチーズの風味の観点からイチジク、キウイ、マンゴー、パパイヤ、パイナップル、メロン、梨、リンゴ、プルーン、アボカドなどが好ましく、イチジク、キウイ、マンゴー、パイナップル及びパパイヤがより好ましい。タンパク質分解酵素を有する果実は、上記に例示したものの1種類を単独で、又は2種類以上を組合せて使用できる。
果実のペーストは柔らかく滑らかな状態に果実を加工したものであれば特に限定されず、目視で固まりが見えない程度にまで流動性を有する状態に果実を加工したものであることが好ましい。
果実のペーストを得る方法は特に限定されないが、例えば、ミキサー、フードプロセッサー、すり鉢及びすりこぎ、裏ごし器などの道具や機械を用いて、又は手動で果実をすりつぶし、柔らかく滑らかな状態に加工する方法などを挙げることができる。
使用する果実は、ペーストに加工可能なものであれば、果肉だけであっても、外皮や種子を含むものであってもどちらでもよいが、モッツァレラチーズの風味や食感の観点から外皮を取り除いたものであることが好ましい。使用する果実は、含有するタンパク質分解酵素の分解を防ぐために、冷暗又は冷凍するなどして保存されたものであることが好ましい。
本発明の一態様のモッツァレラチーズは、タンパク質分解酵素を含む果実のペーストをレンネット成分として用いて得られるものであることにより、使用する果実に依拠する風味を有しながらも、脂質の含有量が小さく、かつ、タンパク質の含有量が大きいものである。
本発明の一態様のモッツァレラチーズにおいて、脂質の含有量は特に限定されないが、例えば、レンネット成分として微生物由来のレンネットを用いて製造されたモッツァレラチーズよりも低く、好ましくは脂質の含有量が15wt%以下であり、より好ましくは10wt%以下である。
本発明の一態様のモッツァレラチーズにおいて、タンパク質の含有量は特に限定されないが、例えば、レンネット成分として微生物由来のレンネットを用いて製造されたモッツァレラチーズよりも高く、好ましくはタンパク質の含有量が20wt%以上であり、より好ましくは22wt%以上である。
本発明の一態様のモッツァレラチーズのその他の物理化学的性質、例えば、水分、弾力性、加熱時の伸びなどについては、微生物由来のレンネットを用いて製造されたモッツァレラチーズと同程度である。
本発明の一態様の製造方法は、下記(1)~(4)の工程を含む、モッツァレラチーズの製造方法である。
(1)乳酸菌により発酵させた発酵乳又は酸によりpHを4.9~5.5に調整したpH調整乳とタンパク質分解酵素を含む果実のペーストとの混合物を静置することにより、凝乳を得る工程
(2)前記凝乳をカッティングすることにより、カード及びホエイの混合物を得る工程
(3)前記カード及びホエイの混合物を、ホエイの滲出が可能な容器に入れて加熱することにより、カードを得る工程
(4)前記カードを加熱することにより、モッツァレラチーズを得る工程
工程(1)において、乳酸菌による発酵は、原料の乳に乳酸菌を添加して均一に混合し、原料の乳の温度を一定に保ったまま静置して行うことができる。原料に用いる乳は、動物性の乳であれば特に限定されず、例えば、哺乳動物の乳であり、好ましくはウシ由来の乳である。乳は殺菌されたものであることが好ましく、乳の殺菌方法は特に限定されない。
乳酸菌は、従来のモッツァレラチーズの製造方法において乳酸菌スターターとして用いられているものを特に制限無く使用することができる。乳酸菌は、乳酸菌のみからなるものでも、乳酸菌を含む組成物であってもどちらでもよい。乳酸菌を含む組成物としては、例えば、ヨーグルト、乳酸菌飲料、チーズなどの乳酸菌を含む食品を挙げることができる。
乳酸菌の添加量は、従来のチーズ製造で用いられる乳酸菌の添加量であれば特に限定されない。例えば、乳酸菌を含む食品であるヨーグルトを添加する場合は、風味の点から原料の乳に対して0.5~2.0w/v%とすることが好ましい。
乳の乳酸菌による発酵の温度は、用いる乳酸菌に適した温度で行うことができる。中温乳酸菌スターターの場合は20~30℃、高温乳酸菌スターターの場合は34~45℃が適しているが、作業時間や風味の観点で調整することができる。乳酸菌を含む食品を用いる場合は、用いる食品及び食品に含まれる乳酸菌に合わせて適宜温度を調整することができる。例えばヨーグルトを添加した場合は乳の温度は33℃~40℃で発酵を行うことができる。温度維持の方法は、一般的なチーズの加温及び温度維持方法を用いることができ特に限定されない。
乳酸菌による発酵は、発酵乳のpHが5.5~7.0程度になるように行う。pHの測定方法は特に限定されないが、定期的な間隔で、例えば15分おきなどでpHを確認してもよい。また経時モニタリング可能な装置を容器内に設置して経時的にpHを測定する方法を用いてもよい。乳酸菌による発酵の時間は、目的のpHになるように所定時間発酵させることができれば、特に限定されず、例えば1~3時間発酵することができる。作業環境によっては、発酵後、一度冷蔵(4℃)保存し、その後再度加温して次の果実のペーストを添加する工程に進んでもよい。
発酵乳の代わりに、乳酸菌を添加することなく原料の乳に乳酸、クエン酸又は酢酸などの通常食品製造においてpH調整に用いられる酸を添加してpHを調整し、pH調整乳を得てもよい。pH調整乳のpHは得られるモッツァレラチーズの食感の観点から好ましくは4.9~5.5の範囲内、さらに好ましくは5.0~5.4の範囲内である。なお、発酵乳についても、pHが5.5付近になるように酸を加えてpHを調整してもよい。
発酵乳又はpH調整乳と果実のペーストを混合する際、均一になるよう混合して、これらの混合物を得る。発酵乳又はpH調整乳に果実のペーストを添加する際、果実のペーストがダマになりやすい場合は、容器中の発酵乳又はpH調整乳を一部取り出し、その一部と果実のペーストを混ぜ合わせてから容器中の残りの発酵乳又はpH調整乳に添加してもよい。果実のペーストの添加量は、凝乳が得られる添加量であれば特に限定されないが、得られるモッツァレラチーズの風味と食感の点から原料の乳に対して1~10w/v%が好ましい。
果実のペーストの添加による発酵乳又はpH調整乳の凝固の温度は、35℃~45℃、好ましくは38℃~42℃の範囲で行う。
凝固の時間は、凝乳を得られる時間であれば特に限定されず、乳のpHと果実のペーストの添加量の条件などに応じて適宜所定の時間行うことができる。果実のペーストを含有する場合は、例えば、pHが6.5の発酵乳に5w/v%の果実のペーストを添加した場合、モッツァレラチーズに適した凝乳の硬さを得る点から1時間以上行うことが好ましい。また、例えばpH5.3のpH調整乳に5w/v%の果実のペーストを添加する場合は、凝固の時間は20分程度で行うことができる。
果実のペーストによる凝固の確認は、製造条件により適宜、ホエイの滲出や色の具合又は凝乳の硬さで判断することができる。特に限定されないが、例えば、直接凝乳に触れて硬さを確認する方法で判断してもよい。または、数分間隔で、例えば15分ごとに、容器中の発酵乳の一部をシリンジで別の容器に取り出し、静置して固まるのを待って、発酵乳がホエイとカードとに分離することを確認する方法で判断してもよい。その他には、凝乳にナイフで切れ目を入れ、持ち上げた時に切れ目に滲出するホエイの澄み具合と凝乳の硬さで判断してもよい。
工程(2)において、工程(1)で得られた凝乳をカッティングすることにより、カード及びホエイの混合物を得ることができる。
凝乳のカッティングは、従来のチーズのカッティング方法を用いることができ、特に限定されない。カッティングの大きさは、特に限定されず、モッツァレラチーズに好ましい弾力と歯ごたえを得る点で2~3cm四方の大きさにカッティングするのが好ましい。
凝乳をカッティング後は、静置してホエイとカードの分離を行い、カードとホエイの混合物を得る。静置後のホエイのpHは4.9~5.5の範囲、好ましくは5.0~5.4の範囲である。pHが4.8以下又はpHが5.6以上になると、最終的に得られるモッツァレラチーズが、ぼろぼろ崩れて纏まらないものとなり、ボソボソとした食感となり、モッツァレラチーズ特有の加熱による伸びを有さなくなるからである。
カッティング後の凝乳の静置時間は、pHが4.9~5.5の範囲となる時間であれば、特に限定されず、発酵乳に果実のペーストを添加して得られた凝乳の場合は例えば10分程度である。例えば発酵乳のかわりにpHを4.9~5.5に調整したpH調整乳を用いた場合は、既にpHが4.9~5.5の範囲になっていることから、カッティング後、すぐに次のカード及びホエイの混合物をホエイの滲出が可能な容器に入れて加熱する工程に進んでもよい。
工程(3)において、得られたカード及びホエイの混合物を、ホエイの滲出が可能な容器に入れて加熱することにより、カードを得ることがきる。
カード及びホエイの混合物を入れる容器は、ホエイの滲出が可能であれば特に限定されず、例えばチーズ製造で用いられるモールドやフープ又は布若しくは布袋を用いることができる。布又は布袋は一般的な食品用ろ過で用いられる材質と形状であれば特に限定されず、例えば綿、ナイロン、テトロン又はパイレンの材質からなる、シート状、筒状又は袋状のものを用いることができる。
カード及びホエイの混合物を入れた容器の加熱方法は、カード及びホエイの混合物を加熱することが可能であれば特に限定されないが、例えば、シャワーリングによる加熱の方法、容器にジャケットを付けて熱湯を循環させる方法、蒸気を吹き込む方法及び熱水を用いた湯煎による方法などを単独で又は組合せて行うことができる。特にホエイ滲出の点から、容器を熱水で湯煎する方法が好ましい。
カード及びホエイの混合物を入れた容器を湯煎により加熱する方法を用いる場合、容器を熱水に浸漬後、容器を熱水から取り出し、容器中の液体成分を滲出させる。容器を浸漬する熱水の温度は、80℃~90℃の温度が好ましい。浸漬時間は10秒~20秒程度が好ましい。容器中の液体成分の滲出は、液体成分の半分から7割程度を押圧して滲出させる。その後、再度容器を80℃~90℃の温度の熱水に浸漬し、今度は容器中の液体成分の9割程度を押圧して滲出させる。容器中の液体成分を滲出させる際、容器として布又は布袋を用いる場合はねじって絞ると得られるモッツァレラチーズが固くなるため、ねじって絞らず、押圧することが好ましい。
工程(4)において、工程(3)で得られたカードを加熱することにより、モッツァレラチーズを得ることができる。加熱の方法は、カードを加熱することができれば特に限定されないが、モッツァレラチーズの成形方法の点から、熱水に浸漬して加熱するのが好ましい。熱水の温度は80℃~90℃が好ましい。浸漬する回数は、得られるモッツァレラチーズの硬さの点から1~2回が好ましい。得られたカードを熱水で加熱しながら、球状に成形することで、果実のペーストを含有するモッツァレラチーズを得ることができる。
本発明のモッツァレラチーズは、様々な食材と一緒に食することができる。それだけでなく、含有した果実のペースト由来の風味と甘みをほんのり有していることから、それ単独でおいしく喫食することができる。また、料理に用いた場合は、本発明が有する風味によって、余分な油や塩を使用しなくても高い嗜好性で喫食することができる。
さらに通常のモッツァレラチーズと同等の量を食しても、脂質の摂取量を低減することができることからも健康面に良好な食材である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
[例1.イチジクペースト含有モッツァレラチーズの製造]
1-1.原材料
原料の乳として、低温殺菌した牛乳(ノンホモジナイズ品)を用いた。牛乳は、冷凍保存して、使用時に解凍して用いた。
イチジクは、冷凍品の皮を剥いて解凍したものを用いた。解凍後のイチジクを、目視で固まりが見られない程度に家庭用ミキサーにかけて、イチジクペーストを得た。
乳酸菌スターターとして、「明治ブルガリアヨーグルト」(明治社製)を用いた。
1-2.製造方法
容器に牛乳 1,000ml及び乳酸菌スターター 10gを入れて混合し、次いでその容器を恒温水層に漬けて容器内の牛乳の温度を35.0℃に維持した。牛乳と乳酸菌スターターとを混合して1時間後から15分ごとに、容器中の牛乳のpHを測定した。牛乳のpHが6.5~6.55程度になるまで容器を恒温水層中に静置して発酵を行い、発酵乳を得た。
得られた発酵乳に、イチジクペーストを牛乳に対して5w/v%となるように添加して均一になるまで混合した。恒温水層によって発酵乳の温度を40℃に維持して静置した。イチジクペースト添加の際、イチジクペーストはそのまま添加するとダマになりやすいため、容器中の発酵乳を一部取り出し、その発酵乳の一部とイチジクペーストとを混ぜ合わせてから容器中の残りの発酵乳に添加した。
発酵乳にイチジクペーストを添加して、発酵乳の凝固を確認することにより凝乳を得た。発酵乳の凝固は、イチジクペースト添加1時間後から15分ごとに容器中の発酵乳の一部をシリンジで別の容器に取り出し、静置して固まるのを待って、発酵乳がホエイとカードとに分離することを確認することにより判断した。凝乳は、発酵乳にイチジクペーストを添加してから2時間程度で得た。
得られた凝乳を2~3cm四方にカッティングし、10分間静置してホエイを分離させ、カード及びホエイの混合物を得た。このときのホエイのpHは概ね5.00~5.10であった。その後、得られたカードとホエイの混合物を綿生地の布袋に移し、85℃の熱水に15秒間浸漬した。
浸漬した布袋を熱水から取り出し、布袋を押圧して絞ることによって、布袋中の液体成分の半分から7割程度を滲出させた。この際、布袋をねじって絞ると得られるチーズが固くなるため、ねじって絞らないように注意した。再度布袋を85℃の熱水に浸漬し、布袋を押圧して絞ることによって、布袋中の液体成分の9割程度を滲出させた。
布袋中のカードをかき集めて回収し、85℃の熱水に1~2回浸漬しながら成形して、イチジクペースト含有モッツァレラチーズを得た(実施例1)。
下記に記載する方法によって、イチジクペーストの代わりに、市販のレンネット「Vallren」(MAYASAN A.S.製)を用いて、果実非含有モッツァレラチーズを作製した。
発酵乳に、市販のレンネットを牛乳に対して0.001w/v%となるように添加して均一に混合し、恒温水層によって発酵乳の温度を35℃にして静置した。静置30~40分後、発酵乳が凝固しているのを確認し、凝乳を得た。
得られた凝乳を2~3cm四方にカッティングし、40℃で加熱しながら撹拌してホエイを分離させ、カードとホエイの混合物を得た。さらにpHが5.3になるまで発酵を行い、ホエイを除去してカードを回収した。回収したカードを熱水の中で混練し、成形して、微生物由来レンネット含有モッツァレラチーズを得た(参考例1)。
1-3.評価
実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズ及び参考例1の果実非含有モッツァレラチーズについて、タンパク質及び脂質の含有量、水分並びに収量をまとめたものを表1とする。なお、タンパク質、脂質及び水分は、常法にしたがって、それぞれケルダール法、エーテル抽出法(ソックスレー法)及び105℃の温風乾燥による常圧加熱乾燥法により測定した。また、収量は、牛乳1,000mLから得られるモッツァレラチーズの量を表わす。
Figure 0007126237000001
表1に示すとおり、得られたモッツァレラチーズは、ともに水分及び収量が同程度であった。しかし、実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズは、参考例1の果実非含有モッツァレラチーズに比して、タンパク質量が多く、脂質量が少ないものであった。
また、得られたモッツァレラチーズについて、喫食時の風味及び食感を評価した。その結果、風味については、実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズは、ほんのりとイチジクペーストに由来する香りを有し、くどさはなく、あっさりしていながら、甘味及び酸味がうっすらとした風味でありつつ、参考例1の果実非含有モッツァレラチーズと比べてチーズ臭さが低減したものであった。食感については、実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズは、歯ごたえがあって鳥のささみのような食感であり、イチジクに含まれる種のプチプチとした食感を有するものであった。
さらに得られたモッツァレラチーズを5mm角の小片に切断し、アルミホイルに載せて180℃のオーブンで1分加熱したところ、図1に示すとおり、実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズは、参考例1の果実非含有モッツァレラチーズと同様によく伸びるという性質を有していた。
以上のとおり、イチジクペースト含有モッツァレラチーズは、従来のモッツァレラチーズと同様の水分、収量及び加熱時に伸びるという性質を有しながらも、従来のモッツァレラチーズでは得られない風味及び食感を有するモッツァレラチーズであることが確認された。
[例2.果実ペースト含有モッツァレラチーズの製造]
イチジクの代わりにキウイ、パイナップル及びマンゴーを用いて得たキウイペースト、パイナップルペースト及びマンゴーペーストを使用したことを除いては、例1と同様にして、キウイペースト含有モッツァレラチーズ(実施例2)、パイナップルペースト含有モッツァレラチーズ(実施例3)及びマンゴーペースト含有モッツァレラチーズ(実施例4)の果実ペースト含有モッツァレラチーズを得た。
実施例2のキウイペースト含有モッツァレラチーズ、実施例3のパイナップルペースト含有モッツァレラチーズ及び実施例4のマンゴーペースト含有モッツァレラチーズの収量は、それぞれ78.3g、72.6g及び73.8gと、実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズと同程度であった。
また、風味及び食感についても、これらの果実ペースト含有モッツァレラチーズは、実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズと同様であった。特に実施例2のキウイペースト含有モッツァレラチーズは、実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズと同様に、キウイに含まれる種のプチプチとした食感を有するものであった。
実施例2のキウイペースト含有モッツァレラチーズ、実施例3のパイナップルペースト含有モッツァレラチーズ及び実施例4のマンゴーペースト含有モッツァレラチーズの加熱時の伸びを調べた結果を図1に示す。図1に示すとおり、これらの果実ペースト含有モッツァレラチーズは、加熱することによってよく伸びるという性質を有していた。
以上のとおり、果実ペースト含有モッツァレラチーズは、従来のモッツァレラチーズと同様の収量及び加熱時に伸びるという性質を有しながらも、従来のモッツァレラチーズでは得られない風味及び食感を有するモッツァレラチーズであることが確認された。
[例3.イチジクペースト含有モッツァレラチーズの製造(2)]
乳酸菌スターターの代わりにクエン酸によりpHを5.3に調整したpH調整牛乳を用いた以外は、例1と同様にしてイチジクペースト含有モッツァレラチーズ(実施例5)を作製した。
実施例5のイチジクペースト含有モッツァレラチーズは、実施例1のイチジクペースト含有モッツァレラチーズと同様の風味及び食感、収量並びに加熱時の伸びを有するものであった。
[例4.凝乳取得時間の検討]
イチジクペーストの添加量及びpHによる凝乳の取得時間に与える影響を調べた。結果を表2に示す。
Figure 0007126237000002
クエン酸によりpHを5.3に調整したpH調整牛乳を用いた場合は、いずれの添加量のイチジクペーストを用いても、最大1.5時間程度で凝乳を得ることができた。一方、クエン酸によりpHを5.9以上に調整したpH調整牛乳を用いた場合は、イチジクペーストの添加量を10w/v%としても、凝乳を得るまでに5時間以上を要した。
また、クエン酸によりpHを4.8又は5.6に調整したpH調整牛乳を用いて得た凝乳からカードを得て、例1と同様にしてモッツァレラチーズを得ようとしたところ、該カードは加熱しても伸びが悪く、ボロボロと崩れるまとまりの悪い固まりのものになり、モッツァレラチーズとしては品質が劣悪なものとなった。
以上の結果から、pH調整牛乳を用いる場合は、そのpHを4.9~5.5程度に調整することが好ましいことがわかった。
なお、イチジクペーストの添加量を多くしても、得られたモッツァレラチーズの固さや加熱時の伸びといった物性について大きな影響を与えなかった。一方で、イチジクペーストの添加量に応じて、イチジクに由来する風味、甘み、色が得られたモッツァレラチーズに付加され、さらにイチジク由来の種や繊維質が感じるようになった。したがって、イチジクペーストの添加量を変えることにより、モッツァレラチーズの風味、外観、食感などを所望のものに制御できることがわかった。

Claims (1)

  1. 下記(1)~(4)の工程を含む、モッツァレラチーズの製造方法。
    (1)乳酸菌により発酵させた発酵乳又は酸によりpHを4.9~5.5に調整したpH調整乳とタンパク質分解酵素を含む果実のペーストとの混合物を静置することにより、凝乳を得る工程
    (2)前記凝乳をカッティングすることにより、カード及びホエイの混合物を得る工程
    (3)前記カード及びホエイの混合物を、ホエイの滲出が可能な容器に入れて80~90℃の熱水を用いた湯煎によって加熱することにより、カードを得る工程
    (4)前記カードを加熱することにより、モッツァレラチーズを得る工程
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