JP7126186B2 - 封止用樹脂組成物、その硬化物、及び半導体装置 - Google Patents

封止用樹脂組成物、その硬化物、及び半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、封止用樹脂組成物、その硬化物、及び前記封止用樹脂組成物の硬化物を含む封止材を備える半導体装置に関する。
従来、トランジスタ、IC等の半導体素子と、半導体素子を封止する封止材とを備える半導体装置に関し、生産性の向上、コスト低減等の観点から封止材を樹脂組成物から作製することが行われている。樹脂組成物は、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂系硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填剤を含有する。
例えば、特許文献1では、樹脂組成物に難燃性を付与するために、難燃剤にメラミンシアヌレート、及び金属水酸化物の両方を含有させることが提案されている。
また、近年では、半導体装置として、SiC/GaNから作製された基板を備える次世代パワーデバイスの研究開発が盛んに行われている。SiC/GaNから基板を作製すると、Siから作製する場合と比べ、半導体装置を高温で安定的に動作させることが可能であるため、半導体装置に、より高電圧を印加することができ、半導体装置の高性能化、省エネ化を達成することができる。
このような半導体装置を高温で動作させるにあたっては、半導体素子を封止する封止材が難燃性だけでなくこれまでよりも高い耐熱性を有することが要求されている。
特許第4870928号公報
本発明の目的は、その硬化物が難燃性を有するとともに、高い物理的耐熱性と化学的耐熱性をも有しうる封止用樹脂組成物、この封止用樹脂組成物の硬化物、及びこの封止用樹脂組成物の硬化物を含む封止材を備える半導体装置を提供することである。
本発明の一態様に係る封止用樹脂組成物は、
エポキシ化合物(A)と、
フェノール樹脂(B)と、
メラミンシアヌレート(C)と、を含有し、
前記エポキシ化合物(A)は、下記式(1)で示される部分構造(a)と、グリシジルエーテル基を少なくとも二つ有する部分構造(b)とを有するエポキシ樹脂(A1)、及び下記式(4)で示されるエポキシ樹脂(A2)の少なくとも一方であり、
前記フェノール樹脂(B)は、下記式(7)で示される部分構造(e)と、ヒドロキシル基を少なくとも二つ有する部分構造(f)とを有する。
Figure 0007126186000001
Figure 0007126186000002
Figure 0007126186000003
本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材と、を備え、前記封止材は、前記封止用樹脂組成物の硬化物である。
本発明の一態様によれば、その硬化物が難燃性を有するとともに、高い物理的耐熱性と化学的耐熱性をも有しうる封止用樹脂組成物、この封止用樹脂組成物の硬化物、及びこの封止用樹脂組成物の硬化物を用いて作製された半導体装置が得られる。
半導体装置が備える封止材に要求される耐熱性を向上させるにあたり、本発明者らは、物理的耐熱性と化学的耐熱性という2つの要素に着目した。物理的耐熱性は、物質が加熱された場合に物性が変化しにくいことをいい、例えばその指標にはガラス転移温度(Tg)がある。化学的耐熱性は、物質が加熱による熱分解などの化学変化を起こしにくいことをいい、例えばその指標には加熱重量減少率がある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、封止用樹脂組成物の硬化物が物理的耐熱性と化学的耐熱性のいずれをも有しうるエポキシ化合物とフェノール樹脂との組合わせを見出すとともに、物理的耐熱性と化学的耐熱性のいずれをも損ないにくい難燃剤の組合わせに想到し、本発明に至った。
本発明の一実施形態に係る封止用樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、フェノール樹脂(B)と、メラミンシアヌレート(C)と、を含有する。エポキシ化合物(A)と、フェノール樹脂(B)とを反応させて生成する封止用樹脂組成物は、熱分解しにくいため化学的安定性が高く、しかも架橋密度が高いことで物理的安定性が高い。このため、封止用樹脂組成物の硬化物は、高い物理的耐熱性、及び化学的耐熱性を有しうる。さらに封止用樹脂組成物がメラミンシアヌレート(C)を含有することで、硬化物は良好な難燃性を有しうる。しかもメラミンシアヌレート(C)は、硬化物の物理的耐熱性、及び化学的耐熱性を阻害しにくい。このため、硬化物は、難燃性を有するとともに、高い物理的耐熱性と化学的耐熱性のいずれをも有しうる。
以下、本実施形態に係る樹脂組成物について、具体的に説明する。
まず、本実施形態に係る封止用樹脂組成物に含有されるエポキシ化合物(A)について説明する。
エポキシ化合物(A)は、下記式(1)で示される部分構造(a)と、グリシジルエーテル基を少なくとも二つ有する部分構造(b)とを有するエポキシ樹脂(A1)、及び下記式(4)で示されるエポキシ樹脂(A2)の少なくとも一方である。
Figure 0007126186000004
Figure 0007126186000005
上述のように、エポキシ樹脂(A1)は、部分構造(a)と、グリシジルエーテル基を少なくとも二つ有する部分構造(b)とを有する。したがって、エポキシ化合物(A)がエポキシ樹脂(A1)を含有する場合、エポキシ化合物(A)とフェノール樹脂(B)との反応で得られる生成物は、エポキシ樹脂(A1)に由来するビフェニル骨格である部分構造(a)を有するため、生成物は剛直な構造を有しうる。これにより、生成物は熱分解を起こしにくくなる。さらに、エポキシ樹脂(A1)は、グリシジルエーテル基を少なくとも二つ有する部分構造(b)を有するため、生成物は、高い架橋密度を有しうる。このため、硬化物は高いガラス転移温度を有しうる。したがって、封止用樹脂組成物の硬化物は、高い物理的耐熱性と化学的耐熱性とを有しうる。
エポキシ樹脂(A2)は、上記式(4)で示される樹脂である。したがって、エポキシ化合物(A)がエポキシ樹脂(A2)を含有する場合、エポキシ化合物(A)とフェノール樹脂(B)との反応で得られる生成物は、エポキシ樹脂(A2)に由来する強固なトリフェニルメタン骨格を有するため、生成物は熱的に安定であり、熱分解を起こしにくくなる。さらに、エポキシ樹脂(A2)は、分子内にグリシジルエーテル基を3つ有するため、生成物は、高い架橋密度を有しうる。このため、硬化物は高いガラス転移温度を有しうる。したがって、封止用樹脂組成物の硬化物は高い物理的耐熱性と化学的耐熱性とを有しうる。
エポキシ樹脂(A1)の部分構造(a)と部分構造(b)とは、例えばアルキレン基を介して結合している。アルキレン基の炭素数は、例えば1~5であり、好ましくは1である。
エポキシ樹脂(A1)は、エポキシ樹脂(A11)を含有することも好ましい。エポキシ樹脂(A11)は、下記式(2)で示される部分構造(b1)を有する。すなわち、エポキシ樹脂(A11)は、部分構造(a)と、グリシジルエーテル基を少なくとも二つ有する(b1)とを有する。
Figure 0007126186000006
式(2)中の「―(R1n」は、ベンゼン環上のn個の水素の各々が置換基R1で置換されていることを示す。R1はグリシジルエーテル基である。nは整数値であり、nは2~4の範囲内である。換言すれば、部分構造(b1)では、n個のグリシジルエーテル基がベンゼン環に結合し、部分構造(b1)は少なくとも二つのグリシジルエーテル基を有する。nは、例えば2である。この場合、生成物の架橋密度を高くすることができ、硬化物はより高いガラス転移温度を有しうる。このため、硬化物は、より高い物理的耐熱性と、部分構造(a)に由来する高い化学的安定性による高い化学的耐熱性とを有しうる。
エポキシ樹脂(A1)の部分構造(a)と部分構造(b1)とは、例えばアルキレン基を介して結合している。アルキレン基の炭素数は、例えば1~5であり、好ましくは1である。
エポキシ樹脂(A11)は、下記式(5)で示される繰り返し単位(c)を有することも好ましい。この場合、封止用樹脂組成物の硬化物は特に優れた物理的耐熱性と、化学的耐熱性を有する。
Figure 0007126186000007
式(5)中の「―(R1n」は、ベンゼン環上のn個の水素の各々が置換基R1で置換されていることを示す。R1はグリシジルエーテル基である。nは整数値であり、nは2~4の範囲内である。換言すれば、繰り返し単位(c)では、n個のグリシジルエーテル基がベンゼン環に結合し、繰り返し単位(c)は、少なくとも二つのグリシジルエーテル基を有する。例えば、nは2である。この場合、生成物の熱分解を抑制することができるため、生成物はより高い化学的安定性を有しうる。さらに、生成物の架橋密度を高くすることができるため、硬化物はより高いガラス転移温度を有しうる。したがって、硬化物は、さらに高い物理的耐熱性と化学的耐熱性を有しうる。
エポキシ樹脂(A11)に対するエポキシ樹脂(A11)中の繰り返し単位(c)の量は30質量%以上であることが好ましく、35~95質量%の範囲内であればより好ましい。この場合、硬化物は、特に優れた物理的耐熱性と化学的耐熱性を有しうる。
エポキシ樹脂(A1)は、エポキシ樹脂(A12)を含有することも好ましい。ポキシ樹脂(A12)は、下記式(3)で示される部分構造(b2)を有する。すなわち、エポキシ樹脂(A12)は、部分構造(a)と、グリシジル基を少なくとも二つ有する部分構造(b2)とを有する。
Figure 0007126186000008
式(3)中の「―(R2n」は、ベンゼン環上のn個の水素の各々が置換基R2で置換されていることを示し、「―(R3m」は、ベンゼン環上のm個の水素の各々が置換基R3で置換されていることを示す。R2、及びR3はグリシジルエーテル基である。n、及びmは整数値であり、nは0~3の範囲内、mは0~5の範囲内、n+mは2~8の範囲内である。例えば、n=1、及びm=1である。この場合、生成物の架橋密度を高くすることができ、硬化物はより高いガラス転移温度を有しうる。このため、硬化物は、より高い物理的耐熱性と、部分構造(a)に由来する高い化学的安定性による高い化学的耐熱性とを有しうる。
エポキシ樹脂(A12)の部分構造(a)と部分構造(b2)とは、例えばアルキレン基を介して結合している。アルキレン基の炭素数は、例えば1~5の範囲内であり、好ましくは1である。
エポキシ樹脂(A12)は、下記式(6)で示される繰り返し単位(d)を有することが好ましい。この場合、封止用樹脂組成物の硬化物は、特に優れた物理的耐熱性と、化学的耐熱性とを有する。
Figure 0007126186000009
式(6)中の「―(R2n」は、ベンゼン環上のn個の水素の各々が置換基R2で置換されていることを示し、「―(R3m」は、ベンゼン環上のm個の水素の各々が置換基R3で置換されていることを示す。R2、及びR3はグリシジルエーテル基である。n、及びmは整数値であり、nは0~3の範囲内、mは0~5の範囲内、n+mは2~8の範囲内である。例えば、n、mは、n=1、及びm=1である。この場合、生成物の熱分解を抑制することができるため、より高い化学的安定性を有しうる。さらに、生成物の架橋密度を高くすることができるため、硬化物はより高いガラス転移温度を有しうる。したがって、硬化物は、さらに高い物理的耐熱性と化学的耐熱性を有しうる。
エポキシ化合物(A)の5%重量減少温度は、250℃以上であることが好ましい。エポキシ化合物(A)の5%重量減少温度は、エポキシ化合物(A)を、昇温速度20℃/minの条件で加熱した場合、エポキシ化合物(A)の重量減少率が5%に達した時点の温度をいう。重量減少温度は熱重量測定装置で測定される。5%重量減少温度が250℃以上であれば、封止用樹脂組成物の硬化物はさらに高い化学的耐熱性を有しうる。5%重量減少温度が350℃以上であればさらに好ましい。
エポキシ化合物(A)のエポキシ当量は100~300の範囲内であることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(A)とフェノール樹脂(B)との反応によって得られる生成物は、より高い架橋密度を有しうる。このため、硬化物は、さらに高い物理的耐熱性、化学的耐熱性を有しうる。より好ましくは、エポキシ当量は150~250の範囲内である。
エポキシ化合物(A)の5%重量減少温度が250℃以上であるとともに、エポキシ化合物(A)のエポキシ当量が100~300であれば特に好ましい。この場合、硬化物が特に優れた物理的耐熱性と化学的耐熱性を有しうる。
エポキシ化合物(A)の重量平均分子量は、例えば300~3000の範囲内である。重量平均分子量は、エポキシ化合物(A)をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィで測定した結果から算出される。
なお、本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物(以下、エポキシ化合物(A3)という)を含有していてもよい。エポキシ化合物(A3)は、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のアルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ビスフェノールA型ブロム含有エポキシ樹脂等のブロム含有エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタンやイソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;並びにフタル酸やダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の成分である。エポキシ化合物(A3)を含有する場合、エポキシ化合物(A)に対するエポキシ化合物(A3)の量は50質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物に含有されるフェノール樹脂(B)について、具体的に説明する。
フェノール樹脂(B)は、下記式(7)で示される部分構造(e)とヒドロキシル基を少なくとも二つ有する構造(f)とを有する。したがって、フェノール樹脂(B)とエポキシ化合物(A)との反応で得られる生成物は、フェノール樹脂(B)に由来するビフェニル骨格である部分構造(e)を有するため、生成物は剛直な構造を有しうる。これにより、生成物は熱分解を起こしにくくなる。さらに、フェノール樹脂(B)は、ヒドロキシル基を少なくとも二つ有する部分構造(f)を有するため、生成物は、高い架橋密度有しうる。このため、硬化物は高いガラス転移温度を有しうる。したがって、封止用樹脂組成物の硬化物は高い物理的耐熱性と化学的耐熱性とを有しうる。
Figure 0007126186000010
フェノール樹脂(B)の部分構造(e)と部分構造(f)とは、例えばアルキレン基を介して結合している。アルキレン基の炭素数は、例えば1~5の範囲内である。好ましくは1である。
フェノール樹脂(B)はフェノール樹脂(B1)を含有することが好ましい。フェノール樹脂(B1)は、下記式(8)で示される部分構造(g)を有する。すなわちフェノール樹脂(B1)は、部分構造(e)とヒドロキシル基を少なくとも二つ有する部分構造(g)とを有する。
Figure 0007126186000011
式(8)中の「―(R4n」は、ベンゼン環上のn個の水素の各々が置換基R4で置換されていることを示す。R4はヒドロキシル基である。nは整数値であり、nは2~4の範囲内である。換言すれば、部分構造(g)では、n個のヒドロキシル基がベンゼン環に結合し、部分構造(g)は、少なくとも二つのヒドロキシル基を有する。nは、例えば2である。この場合、生成物の架橋密度を高くすることができ、硬化物はより高いガラス転移温度を有しうる。
フェノール樹脂(B1)は、下記式(9)で示される繰り返し単位(h)を有することも好ましい。
Figure 0007126186000012
式(9)中の「―(R4n」は、ベンゼン環上のn個の水素の各々が置換基R4で置換されていることを示す。R4はヒドロキシル基である。nは整数値であり、nは2~4の範囲内である。換言すれば、繰り返し単位(h)では、n個のヒドロキシル基がベンゼン環に結合し、繰り返し単位(h)は、少なくとも二つのヒドロキシル基を有する。nは、例えば2である。この場合、生成物の熱分解を抑制することができるため、より高い化学的安定性を有しうる。さらに、生成物の架橋密度を高くすることができるため、硬化物はより高いガラス転移温度を有しうる。
フェノール樹脂(B)の5%重量減少温度は、300℃以上であることが好ましい。フェノール樹脂(B)の5%重量減少温度は、フェノール樹脂(B)を、昇温速度20℃/minの条件で加熱した場合、フェノール樹脂(B)の重量減少率が5%に達した時点の温度をいう。重量減少温度は熱重量測定装置で測定される。5%重量減少温度が300℃以上であれば、封止用樹脂組成物の硬化物はさらに高い化学的耐熱性を有しうる。5%重量減少温度が400℃以上であればさらに好ましい。
フェノール樹脂(B)の水酸基当量は、70~200の範囲内であることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(A)とフェノール樹脂(B)との反応によって得られる生成物は、より高い架橋密度を有しうる。このため、硬化物は、さらに高い物理的耐熱性、化学的耐熱性を有しうる。より好ましくは、水酸基当量は100~150の範囲内である。
フェノール樹脂(B)の5%重量減少温度が250℃であるとともに、フェノール樹脂(B)の水酸基当量は60~200の範囲内であれば特に好ましい。この場合、硬化物が特に高い物理的耐熱性と化学的耐熱性を有しうる。
フェノール樹脂(B)の重量平均分子量は、例えば300~3000の範囲内である。なお、重量平均分子量は、フェノール樹脂(B)をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィで測定した結果から算出される。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、フェノール樹脂(B)以外のフェノール樹脂(以下、フェノール樹脂(B2)という)を含有してもよい。フェノール樹脂(B2)は、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール型樹脂;並びにトリアジン変性ノボラック樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分である。フェノール樹脂(B2)を含有する場合、フェノール樹脂(B)に対するフェノール樹脂(B2)の量は50質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物中に含有されるメラミンシアヌレート(C)について、具体的に説明する。
上述の通り、封止用樹脂組成物はメラミンシアヌレート(C)を含有する。このため、封止用樹脂組成物の硬化物が有しうる高い物理的耐熱性と化学的耐熱性とを阻害することなく、封止用樹脂組成物の硬化物に高い難燃性を付与することができる。
封止用樹脂組成物に対するメラミンシアヌレート(C)の量は、0.01質量%以上であることが好ましい。メラミンシアヌレート(C)の量が、0.01質量%以上であれば、封止用樹脂組成物の硬化物に高い難燃性を付与することができる。メラミンシアヌレート(C)の量は、0.1質量%以上であればより好ましく、0.5質量%以上であれば更に好ましく、1質量%以上であれば特に好ましい。封止用樹脂組成物に対するメラミンシアヌレート(C)の量は、15質量%以下であることが好ましい。メラミンシアヌレート(C)の量が、15質量%以下であれば、封止用樹脂組成物の硬化物の流動性を損ないにくく、特に良好な難燃性を付与することができる。メラミンシアヌレート(C)の量は、10質量%以下であればより好ましく、5質量%以下であれば更に好ましい。また、これらの範囲内にあれば、封止用樹脂組成物の硬化物の高い物理的耐熱性と化学的耐熱性とを阻害することなく、硬化物が難燃性を有しうる。
メラミンシアヌレート(C)の塩素イオン含有量は、20ppm以下であることが好ましい。塩素イオン含有量は、メラミンシアヌレートとイオン交換水とを混合し、温度95℃で15時間加熱処理して得られた抽出水をイオンクロマト装置で測定し、その結果から算出される。塩素イオン含有量が20ppm以下であると、封止用樹脂組成物中にイオン不純物が発生しにくくなるため、硬化物の化学的耐熱性も損ないにくい。さらに、硬化物の耐湿信頼性も確保することができる。
封止用樹脂組成物中の塩素イオン含有量は15ppm以下であることが好ましい。この場合、封止用樹脂組成物の硬化物中にもイオン不純物が発生しにくくなるため、硬化物が耐熱性も損ないにくい。さらに、その硬化物は耐湿信頼性を有しうる。なお、封止用樹脂組成物中の塩素イオン含有量は、耐圧容器に封止用樹脂組成物とイオン交換水とを入れて混合し、121℃で24時間加熱処理して得られた抽出水をイオンクロマト装置で測定し、その結果から算出される。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、メラミンシアヌレート(C)以外の難燃剤を含有してもよいが、含有しない又はそれらの含有量は少ないことが好ましい。難燃剤は例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを含む金属水酸化物、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分である。
難燃剤が金属水酸化物を含有する場合、封止用樹脂組成物に対する金属水酸化物の量は10質量%以下であることが好ましい。その場合、硬化物の物理的耐熱性が特に高く維持され得る。さらに、硬化物の高い耐湿信頼性も維持されうる。
難燃剤がリン系難燃剤を含有する場合、封止用樹脂組成物に対するリン系難燃剤の量は5質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物の高い物理的耐熱性が維持されうる。さらに、封止用樹脂組成物を成形するにあたって、封止用樹脂組成物が特に良好な流動性を有しうる。
封止用樹脂組成物は、無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤は、例えば溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素からなる群から選択される一種以上の材料を含有できる。特に、無機充填時が溶融シリカを含有すると、封止用樹脂組成物、及び硬化物中の無機充填剤の充填性を向上できるとともに、封止用樹脂組成物の溶融性、及び溶融時の流動性を向上できる。
無機充填材は、アルミナ、結晶シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することも好ましく、この場合、封止用樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導性を有しうる。
無機充填材の平均粒径は、例えば0.2~70μmの範囲内である。平均粒径が0.5~20μmの範囲内であれば、封止用樹脂組成物の成形時に特に良好な流動性が得られる。なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布の測定値から算出される体積基準のメディアン径であり、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて得られる。
無機充填材は、成形時の封止用樹脂組成物の粘度、封止材の物性等の調整のために、平均粒径の異なる二種以上の成分を含有してもよい。
封止用樹脂組成物中の無機充填剤の割合は適宜設定されるが、封止用樹脂組成物全量に対して65~95質量%の範囲内であることが好ましい。
封止用樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)を硬化させるための硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、例えば2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン類;2-(ジメルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとパラベンゾキノンの付加反応物、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ボレート以外の対アニオンを持つ4級ホスホニウム塩;並びに2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することができる。硬化促進剤がイミダゾールを含有すると、イミダゾールは硬化剤としても機能することができる。
封止用樹脂組成物はシランカップリング剤を含有してもよい。この場合、封止用樹脂組成物からなる硬化物に密着性を付与することができる。シランカップリング剤は、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシドキシシラン;N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γアミノプロピルエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;メルカプトアルキルメトキシシラン;アルキルシラン;ウレイドシラン;並びにビニルシランからなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
封止用樹脂組成物は、シランカップリング剤以外のカップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤は、例えばチタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、及びアルミニウム/ジルコニウムカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することができる。
封止用樹脂組成物は低応力化剤を含有してもよい。低応力化剤は、例えばシリコーンエラストマー、シリコーンレジン、シリコーンオイル、及びブタジエン系ゴムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することができる。ブタジエン系ゴムは、例えばアクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、及びメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体のうち少なくとも一方の成分を含有することができる。
封止用樹脂組成物は、離型剤を含有してもよい。離型剤は、カルナバワックス、ステアリン酸、モンタン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィン、エステルワックス、参加ポリエチレン、及び金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することができる。
封止用樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。着色剤は、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、フタロシアニン、及びペリレンブラックからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
封止用樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、封止用樹脂組成物の液状化、又はワニス化、粘度調整などの目的で使用される。
封止用樹脂組成物中の成分の量は、封止用樹脂組成物が難燃性を有し、物理的耐熱性と化学的耐熱性とを有しうるように、適宜調整される。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物に対するエポキシ化合物(A)の量は、5~35質量%の範囲内であることが好ましい。
エポキシ化合物(A)中のエポキシ基1当量に対するフェノール樹脂(B)中の水酸基は、0.2~1.8当量の範囲内であることが好ましい。
上記のような封止用樹脂組成物の構成成分を混合することで、封止用樹脂組成物を得ることができる。より具体的には、エポキシ化合物(A)、フェノール樹脂(B)、及びメラミンシアヌレート(C)を含む構成成分を、ミキサー、ブレンダーなどで十分に均一になるまで混合し、続いて、熱ロールやニーダーなどの混練機により加熱されている状態で溶融混合してから、室温に冷却する。これにより得られた混合物を公知の手段で粉砕することで、粉体上の封止用樹脂組成物を製造することができる。封止用樹脂組成物は粉体上でなくてもよく、例えばタブレット状であってもよい。タブレット状である場合の樹脂組成物は成形条件に適した寸法と質量を有することが好ましい。
封止用樹脂組成物は、25℃で固体であることが好ましいが、液体であってもよい。特に封止用樹脂組成物が25℃において固体である場合、封止用樹脂組成物を射出成形法、トランスファ成形法、圧縮成形法等の加圧成形法で成形することで封止材を得ることができる。
封止用樹脂組成物の、金型温度が175℃、注入圧力が6.9MPa、硬化時間が120秒における、スパイラルフロー長さは60cm以上であることが好ましい。スパイラルフロー長さが60cm以上である場合、封止用樹脂組成物の成形時の流動性が良好になる。より好ましくは、スパイラルフロー長さは80cm以上である。なお、封止用樹脂組成物のスパイラルフロー長さは、封止用樹脂組成物の組成を本実施形態の範囲内で適宜設定することで制御できる。
封止用樹脂組成物のゲルタイムは、60秒以下であることが好ましい。ゲルタイムが60秒以下であれば、封止用樹脂組成物からなる硬化物を成形する場合の成形サイクルが特に短くなり、半導体装置の生産性が特に高くなる。より好ましくは、ゲルタイムは40秒以下である。なお、ゲルタイムは、株式会社テイ・エスエンジニアリング社製「キュラストメータ モデルV」を用いて、封止用樹脂組成物を温度175℃で加熱しながらトルクを測定した場合に、加熱開始時からトルクの測定値(トルク値)が4.9N/m(0.5kgf・cm)に達するまでに要する時間と定義される。
封止用樹脂組成物の硬化物は、封止用樹脂組成物を公知の方法により硬化することにより得られる。封止用樹脂組成物の硬化方法は例えば、射出成形法、トランスファ成形法、圧縮成形法等の加圧成形法である。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物の硬化物は、その厚みが3.2mmである場合のUL94垂直法の規格で難燃性V-0を満たすことが好ましい。
封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は200℃以上であることが好ましく、230℃以上であればより好ましい。この場合、封止用樹脂組成物の硬化物は特に高い物理的耐熱性を有する。
封止用樹脂組成物の硬化物の大気雰囲気下200℃、1000時間処理時の重量減少率は0.40%以下であることが好ましい。この場合、封止用樹脂組成物の硬化物は、特に高い化学的耐熱性を有する。
封止用樹脂組成物の硬化物が、その厚みが3.2mmである場合にUL94垂直法の規格で判定基準のV-0の難燃性を満たし、硬化物のガラス転移温度が230℃以上であり、かつ硬化物の重量減少率が0.5%以下であることがより好ましい。この場合、封止用樹脂組成物の硬化物は、V-0の非常に高い難燃性を有するとともに、非常に高い物理的耐熱性と化学的耐熱性とを有しうる。なお、上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定により得られた結果から、導出される値である。動的粘弾性は、測定装置として例えばセイコーインスツル株式会社製の「DMS6100」を用いて、測定することができる。
上述のように、本実施形態に係る封止用樹脂組成物の硬化物は、非常に高い難燃性を有するとともに、高い物理的耐熱性、化学的耐熱性をも有しうるため、半導体素子を封止する封止材、及びこの封止材を備える半導体装置に好適に用いることができる。さらに、硬化物の成形時の流動性にも優れるため、硬化物を含む封止材、及びこの封止材を備える半導体装置の生産性を向上させることもできる。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物の硬化物を含む封止材、及びこの封止材を備える半導体装置の例について説明する。
半導体装置のパッケージ形態は、例えばMini、Dパック、D2パック、To220、TO3P、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)等の挿入型パッケージ、又はクワッド・フラット・パッケージ(QFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)等の表面実装型のパッケージである。
本実施形態における半導体装置は、半導体素子と、半導体素子を封止する封止材とを備える。半導体素子は、例えば集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、又は固体撮像素子である。半導体素子は、新規のパワーデバイスであってもよい。半導体素子は、例えばリードフレーム、配線板等の基材に搭載される。
封止用樹脂組成物を成形することで、半導体素子を封止する封止材を形成する。封止材は封止用樹脂組成物を加圧成形法で成形することで封止材を作製することが好ましい。加圧成形法は、例えば射出成形法、トランスファ成形法、及び圧縮成形法である。
封止材をトランスファ成形法で作製する方法の一例を示す。半導体素子が搭載された基材をトランスファ成形用の金型内に配置する。この状態で封止用樹脂組成物を加熱して溶融させてから金型内に射出する。金型内で封止用樹脂組成物を更に加熱することで、封止用樹脂組成物を硬化させる。これにより、封止用樹脂組成物の硬化物を含む封止材が得られる。続いて、金型を開いて金型から半導体装置を取り出すことで半導体装置を得る。
トランスファ成形法では、金型内で封止材を作製した後、金型を閉じたままで封止材を加熱することにより後硬化(ポストキュア)を行ってから、金型を開いて半導体装置を取り出すことが好ましい。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物をトランスファ成形法で成形する場合、例えば注入圧力は2.7~10.3MPaの範囲内であり、金型温度は150~220℃の範囲内であり、加熱時間は30秒~10時間の範囲内である。また、金型内で封止材を作製した後、金型を閉じたままで封止材を加熱することにより後硬化(ポストキュア)してもよい。封止材をポストキュアする場合、加熱条件は、例えば加熱温度が80~250℃、加熱時間は15秒~10時間である。ポストキュアを行った後、金型を開いて半導体装置を取り出すことができる。
以下、本発明を実施例によって、さらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[封止用樹脂組成物の調製]
次のようにして、封止用樹脂組成物である実施例1~14、及び比較例1~11を調製した。まず、後掲の表1に示す成分を配合し、ミキサーで均一に混合分散してから、ミキシングロールを使って約110℃で、約10分間加熱混練した。続いて、混練して得られた混合物を冷却してから粉砕した。これにより、得られた粉体を打錠することで、タブレット状の封止用樹脂組成物を得た。
なお、表1に示す成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ樹脂A:日本化薬株式会社製、品番NC3500、エポキシ当量207、5%重量減少温度:384℃。式(5)で示される繰り返し単位(c)を有し、繰り返し単位(c)は、式(5)中、nが2である繰り返し単位と、nが1である繰り返し単位との両方からなる
・エポキシ樹脂B:新日鉄住金化学株式会社製、品番TC-5500E-50A、エポキシ当量:194、5%重量減少温度:340℃。式(6)で示される繰り返し単位(d)を有し、式(6)中、n=1、m=1である。
・エポキシ樹脂C:株式会社プリンテック製、品番VG3101L、エポキシ当量210、5%重量減少温度:391℃。式(4)に示す構造を有する。
・エポキシ樹脂D:日本化薬株式会社製、品番EPPN502H、エポキシ当量167、5%重量減少温度:357℃。
・エポキシ樹脂E:日本化薬株式会社製、品番NC-3000、エポキシ当量275。
5%重量減少温度:391。
・フェノール樹脂A:明和化成株式会社製、品番MEHC-7403H、水酸基当量136、5%重量減少温度:375℃。式(9)で示される繰り返し単位(h)を有し、繰り返し単位(h)は、式(9)中、nが2である繰り返し単位と、nが1である繰り返し単位との両方からなる
・フェノール樹脂B:群栄化学株式会社製、品番TPM-100、水酸基当量98、5%重量減少温度:293℃。
・フェノール樹脂C:明和化成株式会社製、品番MEH-7851SS、水酸基当量203、5%重量減少温度:403℃。
・難燃剤A:メラミンシアヌレート、日産化学工業株式会社製、品番MC-4000(塩素含有量1ppm)。
・難燃剤B:メラミンシアヌレート、日産化学工業株式会社製、品番MC-6000(塩素含有量2ppm)。
・難燃剤C:メラミンシアヌレート、堺化学工業株式会社製、品番MC2010N(塩素含有量18ppm)。
・難燃剤D:ホスファゼン、株式会社伏見製薬所製、品番FP-100。
・難燃剤E:水酸化アルミニウム、昭和電工株式会社製、品番HP360STE。
・無機充填剤:球状溶融シリカ、電気化学工業株式会社製、品番FB910。
・硬化促進剤:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシ-メチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製、品番2PHZ-PW。
・シランカップリング剤:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、品番KBM803。
・低応力化剤:東レ・ダウコーニング株式会社製、品番EP2601。
・離型剤:天然カルナバワックス。
・着色剤:カーボンブラック、三菱化学株式会社製、品番MA600。
[封止用樹脂組成物の硬化物]
封止用樹脂組成物を、株式会社神藤金属工業所製のトランスファ成型機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で成形してから、200℃で、4時間加熱した。これにより、幅10mm、長さ80mm、厚み4mmの寸法のテストピースを得た。
[評価試験]
封止用樹脂組成物、及びテストピースに対し、次の評価試験を実施した。これらの結果は後掲の表に示す。
(1)ガラス転移温度(Tg)
テストピースの動的粘弾性をJIS K 7244-3に準拠してセイコーインスツル株式会社製の「DMS6100」を用いて、昇温速度5℃/min、周波数10Hz、の条件で測定し、その測定結果からtanδピーク温度をガラス温度として読み取った。
(2)重量減少率
テストピースを125℃で6時間加熱することで乾燥させてから、室温まで冷却させた時の重量を測定し、その重量を「初期重量」とした。次に、大気雰囲気下200℃の乾燥機にそのテストピースを入れて、1000時間加熱処理を行った後、室温まで冷却させた。冷却後のテストピースの重量を測定し、その重量を「処理後重量」とした。これらの結果から、重量減少率を、下記の計算式に基づき算出した。
重量減少率(%)={(初期重量)-(処理後重量)}/(初期重量)×100
(3)難燃性
テストピースについて、UL94垂直法の規格に準拠し、難燃性試験を行った。難燃性試験の結果、V-0の燃焼性クラスを満たすものを「V-0」、V-0の燃焼性クラスを満たさないものを「×」とした。なお、難燃性の評価が「×」である、比較例1、4、7、10及び11は(4)~(8)の評価を行っていない。
(4)スパイラルフロー評価
トランスファー成型機(株式会社神藤金属工業所製)を用いて、ASRM D 3123に基づいて作製されたスパイラルフロー専用金型に金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で封止用樹脂組成物を注入し、封止用樹脂組成物が流動した長さを測定した。
(5)ゲルタイム評価
キュラストメータ(株式会社テイエスエンジニアリング製)を用いて、封止用樹脂組成物を実温175℃で加熱しながらトルク値を測定した。このトルク値が4.9N/m(0.5kgf・cm)に達するまでの時間をゲルタイムとした。
(6)温度サイクル試験(TC)
封止用樹脂組成物の硬化物からなる封止材を備え、半導体素子を備えないTO-3P型の半導体装置を作製した。半導体装置の作製時には、封止用樹脂組成物を175℃で2分間、成形してから、ポストキュアを200℃で4時間行った。この硬化物を低温時温度-65℃、高温200℃で保持時間15分の条件で1000時間実施した。その後、超音波映像装置(日立パワーソリューションズ株式会社製「FineSAT」)を用いて、処理をした半導体装置のリードフレームと封止用樹脂組成物との剥離を観察し、リードフレームと封止材との剥離が観察された時間を評価した。なお、リードフレームと封止用樹脂組成物との剥離が観察されなかったものは「1000<」とした。
(7)高温放置試験(HTS)
上記温度サイクル試験と同様にTO-3P型の半導体装置を作成した。硬化物を高温200℃で1000時間、加熱処理した。その後、超音波映像装置を用いて、処理をした半導体装置のリードフレームと封止用樹脂組成物との剥離を観察し、リードフレームと封止材との剥離が観察された時間を評価した、なお、リードフレームと封止用樹脂組成物との剥離が観察されなかったものは「1000<」とした。
(8)耐湿信頼性(HAST)
銅合金(株式会社神戸製鋼所製、品名KFC-H)製で部分的にAgめっき層を備えるリードフレームに半導体チップを搭載し、リードフレームと半導体チップとを金製のワイヤで接続した。続いて、封止用樹脂組成物を金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でトランスファ成型を行った。これにより、半導体装置としてDIP 16pinを製作した。この半導体装置に、130℃、85%RH、25Vの条件でバイアス有り高度加速ストレス試験(HAST)を200時間実施しながら、半導体装置の端子間の電気抵抗を測定し、電気抵抗の測定値の抵抗増加率が20%を超えるのに要した時間を測定した。
Figure 0007126186000013
以上の結果から、実施例1~14は、難燃性V-0を満たすとともに、高いガラス転移温度、抑制された重量減少率が得られた。すなわち、実施例1~14では優れた難燃性を有するとともに、高い物理的耐熱性と高い化学的耐熱性をも有する封止用樹脂組成物の硬化物が得られた。これは、硬化物が高い架橋密度を有し、剛直な骨格を有するため高いガラス転移温度と低い熱分解性を達成できたためと考えられる。さらに、この組成物がメラミンシアヌレートを含有することで、硬化物の高い物理的耐熱性、及び化学的耐熱性を阻害することなく、硬化物に非常に高い難燃性を付与することが可能である。
また、実施例1~14は、いずれもゲルタイムは60秒以下、スパイラルフローは60cm以上であり、高い流動性を有する。さらに、実施例1~10、及び12~14は、温度サイクル特性、高温保存安定性、耐熱信頼性に優れている。
これに対し、比較例1、4、7、及び10の物理的耐熱性と化学的耐熱性は、従来封止材に用いられてきた樹脂よりも優れているが、難燃剤を含有していないとV-0の難燃性を達成することができない。比較例4は多官能型のエポキシ化合物とフェノール樹脂を含有し、その硬化物は、高い物理的耐熱性を有するが、化学的耐熱性に劣る。これは、架橋点に起因する熱分解が起こりやすく、重量減少率が大きくなるためであると考えられる。比較例11は化学的耐熱性を有するものの、物理的耐熱性が非常に低くなる。これは、架橋密度が低くなり、ガラス転移温度が低くなったためであると考えられる。
比較例2、3、5、6、8、及び9は、リン系難燃剤、または金属水酸化物を含有することで難燃性V-0を達成したが、難燃剤がリン系難燃剤のみである場合には、物理的耐熱性が低下し、金属水酸化物のみである場合には、化学的耐熱性が低下した。
メラミンシアヌレートと、リン系難燃剤(ホスファゼン)とを併用した実施例2、5、8は、比較例2、5、8と比較しても、難燃性V-0を有するとともに高い物理的耐熱性を維持しながら、高い化学的耐熱性を有する。さらに、これらは高い温度サイクル特性を有する。これは、リン系難燃剤のみの場合よりも、メラミンシアヌレートが添加されていることで、硬化物に難燃性を付与するだけでなく、ガラス転移温度の向上に寄与し、さらに硬化物の熱膨張や収縮が抑制されたためと考えられる。
また、メラミンシアヌレートと、金属水酸化物(水酸化アルミニウム)とを併用した実施例3、6、9は、比較例3、6、9と比較しても、難燃性V-0を有するとともに、高い化学的耐熱性を維持しながら、高い物理的耐熱性を有する。さらに、これらは高い耐湿信頼性を有する。これは、難燃剤が水酸化アルミニウムのみの場合よりも少ない量で難燃性を付与することができるため、水酸化アルミニウムの熱分解や、それに伴い発生する水等による耐湿信頼性に与える影響を軽減できたものと考えられる。

Claims (12)

  1. エポキシ化合物(A)と、
    フェノール樹脂(B)と、
    メラミンシアヌレート(C)と、を含有する封止用樹脂組成物であり、
    前記エポキシ化合物(A)は、下記式(1)で示される部分構造(a)と、グリシジルエーテル基を少なくとも二つ有する部分構造(b)とを有するエポキシ樹脂(A1)、及び下記式(4)で示されるエポキシ樹脂(A2)の少なくとも一方であり、
    前記フェノール樹脂(B)は、下記式(7)で示される部分構造(e)と、ヒドロキシル基を少なくとも二つ有する部分構造(f)とを有し、
    Figure 0007126186000014
    Figure 0007126186000015
    Figure 0007126186000016
    前記エポキシ樹脂(A1)は、エポキシ樹脂(A11)を含有し、
    前記エポキシ樹脂(A11)は、下記式(2)で示される部分構造(b1)を有し、前記部分構造(b1)は、下記式(2)中、nが2である部分構造と、nが1である部分構造との両方からなり、
    下記式(2)中のR1はグリシジルエーテル基であり
    Figure 0007126186000017
    前記フェノール樹脂(B)は、フェノール樹脂(B1)を含有し、
    前記フェノール樹脂(B1)は、下記式(8)で示される部分構造(g)を有し、前記部分構造(g)は、下記式(8)中、nが2である部分構造と、nが1である部分構造との両方からなり、
    式(8)中、R4は、ヒドロキシル基であり
    Figure 0007126186000018
    前記封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が230℃以上であり、
    前記硬化物の大気雰囲気下200℃で1000時間処理時の重量減少率が0.5%以下であり、
    前記硬化物は、その厚みが3.2mmである場合のUL94垂直法の規格でV-0の難燃性を満たす、
    封止用樹脂組成物。
  2. 前記エポキシ樹脂(A11)は、下記式(5)で示される繰り返し単位(c)を有し、前記繰り返し単位(c)は、下記式(5)中、nが2である繰り返し単位と、nが1である繰り返し単位との両方からなり、
    下記式(5)中のR1は、グリシジルエーテル基である、
    請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
    Figure 0007126186000019
  3. エポキシ化合物(A)と、
    フェノール樹脂(B)と、
    メラミンシアヌレート(C)と、を含有する封止用樹脂組成物であり、
    前記エポキシ化合物(A)は、下記式(1)で示される部分構造(a)と、グリシジルエーテル基を少なくとも二つ有する部分構造(b)とを有するエポキシ樹脂(A1)であるか、又は前記エポキシ樹脂(A1)と下記式(4)で示されるエポキシ樹脂(A2)であり、
    前記フェノール樹脂(B)は、下記式(7)で示される部分構造(e)と、ヒドロキシル基を少なくとも二つ有する部分構造(f)とを有し、
    Figure 0007126186000020
    Figure 0007126186000021
    Figure 0007126186000022
    前記エポキシ樹脂(A1)は、エポキシ樹脂(A12)を含有し、
    前記エポキシ樹脂(A12)は、下記式(3)で示される部分構造(b2)を有し、
    下記式(3)中、R2、及びR3はグリシジルエーテル基であり、n=1、m=1であり、
    Figure 0007126186000023
    前記フェノール樹脂(B)は、フェノール樹脂(B1)を含有し、
    前記フェノール樹脂(B1)は、下記式(8)で示される部分構造(g)を有し、前記部分構造(g)は、下記式(8)中、nが2である部分構造と、nが1である部分構造との両方からなり、
    式(8)中、R 4 は、ヒドロキシル基であり、
    Figure 0007126186000024
    前記封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が230℃以上であり、
    前記硬化物の大気雰囲気下200℃で1000時間処理時の重量減少率が0.5%以下であり、
    前記硬化物は、その厚みが3.2mmである場合のUL94垂直法の規格でV-0の難燃性を満たす
    封止用樹脂組成物。
  4. 前記エポキシ樹脂(A12)は、下記式(6)で示される繰り返し単位()を有し、
    下記式(6)中、R2、及びR3はグリシジルエーテル基であり、n=1、m=1である、
    請求項3に記載の封止用樹脂組成物。
    Figure 0007126186000025
  5. 前記フェノール樹脂(B1)は、下記式(9)で示される繰り返し単位(h)を有し、前記繰り返し単位(h)は、下記式(9)中、nが2である繰り返し単位と、nが1である繰り返し単位との両方からなり、
    式(9)中、R4は、ヒドロキシル基であ
    請求項1~4のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
    Figure 0007126186000026
  6. 前記封止用樹脂組成物に対する前記メラミンシアヌレート(C)の量は、0.01~15質量%の範囲内である、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
  7. 前記エポキシ化合物(A)の5%重量減少温度が250℃以上であり、
    前記エポキシ化合物(A)のエポキシ当量が100~300の範囲内である、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
  8. 前記フェノール樹脂(B)の5%重量減少温度が300℃以上であり、
    前記フェノール樹脂(B)の水酸基当量が70~200の範囲内である、
    請求項1~7のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
  9. 金型温度が175℃、注入圧力が6.9MPa、硬化時間が120秒におけるスパイラルフロー長さは60cm以上である、
    請求項1~8のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
  10. 60秒以下のゲルタイムを有し、
    前記ゲルタイムは、前記封止用樹脂組成物を攪拌しながら、175℃で加熱した場合にトルク値が0.5kgf・cmに達するまでの時間と定義される、
    請求項1~9のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物。
  12. 半導体素子と、
    前記半導体素子を封止する封止材と、を備え、
    前記封止材は、請求項1~10のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物を含む、
    半導体装置。
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