以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態による炉頂装置を含む竪型炉システム1の概略を説明する説明図である。図1では、原料の装入方向を二点鎖線の矢印で示している。図2は、竪型炉システム1を上方から見た平面図である。
竪型炉システム1は、竪型炉10、櫓11、装入シュート12、切替シュート13、コンベアヘッドプーリ14、コンベア15、炉頂装置20、を含んで構成される。炉頂装置20は、ホッパ21および偏析防止装置22を含んで構成される。
竪型炉10は、例えば、鉄鉱石およびコークスなどの原料Mから鉄を生成する高炉である。なお、竪型炉10は、高炉に限らない。竪型炉10は、概ね円筒状に形成されている。竪型炉10の周囲には、櫓11が設置されている。竪型炉10は、櫓11によって支持されている。
竪型炉10の上方には、3個のホッパ21が配置されている。ホッパ21は、概ね円筒状に形成されている。各ホッパ21は、竪型炉10の炉芯に対して偏芯して配置される。各ホッパ21は、竪型炉10の周方向に120度間隔で並べられる。
各ホッパ21の下部は、集合されており、装入シュート12に接続されている。装入シュート12は、竪型炉10内における上部に配置されている。装入シュート12は、炉芯から炉壁側に進むにしたがって下方へ傾斜する。装入シュート12は、炉芯に沿った回転軸の周りに回転可能となっている。また、装入シュート12は、ホッパ21に接続される炉芯側を支点として傾動可能となっている。
ホッパ21の上方には、切替シュート13が配置される。切替シュート13は、概ね炉芯の延長線上に配置される。切替シュート13は、曲がった筒状に形成されている。切替シュート13は、炉芯の延長線に沿った回転軸の周りに回転可能となっている。切替シュート13の上方には、コンベアヘッドプーリ14が配置されている。コンベアヘッドプーリ14には、コンベア15が連結されている。コンベア15は、櫓11の外に延びている。
コンベア15は、竪型炉10へ装入する原料Mをコンベアヘッドプーリ14へ運搬する。コンベアヘッドプーリ14は、原料Mを切替シュート13へ投入する。切替シュート13は、投入された原料Mを、3個のホッパ21のうちのいずれかのホッパ21に振り分ける。ホッパ21は、切替シュート13を介して投入された原料Mを一時的に貯留する。ホッパ21は、貯留している原料Mを所定のタイミングで装入シュート12へ送出する。装入シュート12は、ホッパ21から送出された原料Mを、回転および傾動しつつ竪型炉10内に装入する。竪型炉10は、装入シュート12を介してホッパ21から装入された原料Mを加熱して鉄を生成する。
ホッパ21内には、偏析防止装置22が設けられている。偏析防止装置22は、ホッパ21の上部付近に設けられる。偏析防止装置22は、切替シュート13を介して投入される原料Mが自由落下する経路(以下、自由落下経路という)の途中に設けられる。偏析防止装置22は、偏析防止装置22以降の原料の落下経路を制御する。偏析防止装置22については、後に詳述する。
図3は、コンベア15の断面図である。コンベア15は、中央ローラ15A、左ローラ15B、右ローラ15Cおよびベルト15Dを含んで構成される。中央ローラ15Aは、コンベア15の中央に配置される。左ローラ15Bは、中央ローラ15Aに対して図3の左側に配置される。左ローラ15Bは、中央ローラ15Aとは反対側端が中央ローラよりも高くなるように傾斜して配置される。右ローラ15Cは、中央ローラ15Aに対して図3の右側に配置される。右ローラ15Cは、中央ローラ15Aとは反対側端が中央ローラ15Aよりも高くなるように傾斜して配置される。
ベルト15Dは、中央ローラ15A、左ローラ15Bおよび右ローラ15Cの上方に配置される。中央ローラ15A、左ローラ15Bおよび右ローラ15Cは、回転することでベルトを移動させる。ベルト15D上には、運搬する原料Mが積載される。
図4は、コンベア15の上流側を説明する説明図である。図5は、図4の矢印V方向からみた側面図である。図4および図5では、原料Mの移動方向を二点鎖線の矢印で示す。図4および図5で示すように、コンベア15における原料Mの流れの上流側には、原料槽16a、ゲート16b、スクリーン16c、計量ホッパ16d、ゲート16e、フィーダ16fが設けられる。
原料Mを貯留する原料槽16aの下部には、原料槽16aを開閉するゲート16bが設けられている。ゲート16bの下方には、ゲート16b付近から計量ホッパ16dに延びるスクリーン16cが設けられている。ゲート16bが開くと、原料槽16aからスクリーン16cに原料Mが送出される。スクリーン16cは、原料槽16aから供給された原料Mから粉状の原料Mを分離除去し、粉状の原料Mが除去された残りの原料Mを計量ホッパ16dに供給する。
計量ホッパ16dは、原料Mを計量しつつ貯留する。計量ホッパ16dの下部には、計量ホッパ16dを開閉するゲート16eが設けられている。ゲート16eの下方には、ゲート16e付近からコンベア15の上方に延びるフィーダ16fが設けられている。フィーダ16fの延在方向は、コンベア15の延伸方向に大凡一致している。
コンベア15を介して炉頂装置20に原料Mを供給する場合、ゲート16eが開かれる。ゲート16eが開くと、計量ホッパ16dからフィーダ16fに原料が送出される。フィーダ16fは、原料Mの切り出し量を制御しつつ、原料Mをコンベア15に供給する。例えば、フィーダ16fは、原料Mにおけるフィーダ16fの延在方向に垂直な幅方向の量を制御する。
このように、コンベア15に供給される原料Mの切り出し量がフィーダ16fによって制御されるため、コンベア15に積載される原料Mの積載幅は、フィーダ16fの幅と大凡一致する。
このため、図3に示すように、コンベア15では、原料Mの積載量が多くなるほど、ベルト15D上の原料Mの積載厚さが厚くなる。一方、コンベア15では、原料Mの積載量が多くなっても、ベルト15D上の原料Mの積載幅の変化が小さい。
図6は、炉頂装置20およびその近傍の拡大図である。図7は、ホッパ21内を上方から見たときの平面図である。図8は、偏析防止装置22の拡大図である。図6および図8では、原料Mが存在する範囲を二点鎖線で示し、原料Mの移動方向を二点鎖線の矢印で示している。図7では、切替シュート13から原料Mが落下する位置をハッチングで示している。
以後、竪型炉10の炉芯に近づく方向を炉芯方向と呼ぶことがある。また、竪型炉10の炉芯から遠ざかる方向を炉外方向と呼ぶことがある。また、竪型炉10の炉芯とホッパ21の軸芯とを通るホッパ21の径方向の芯(線)を径芯と呼ぶことがある。図7では、径芯を一点鎖線C1で示している。
図6に示すように、コンベアヘッドプーリ14と切替シュート13との間には、ガイド板17が設けられている。ガイド板17は、切替シュート13への原料Mの落下をガイドする。
切替シュート13は、原料Mを概ね炉芯から炉外方向へ向かって自由落下させる。また、切替シュート13は、原料Mを概ね径芯付近に自由落下させる。また、切替シュート13は、例えば、原料Mをホッパ21の軸芯よりも炉芯側に自由落下させる。
図6~図8に示すように、ホッパ21内の偏析防止装置22は、第1上段傾斜部30、アーム40、42、ビーム50、52、第2上段傾斜部60、下段傾斜部70を含んで構成される。
第1上段傾斜部30は、矩形の板状に形成されている。第1上段傾斜部30は、径芯に対して一方側(図7の下側)に配置される。第1上段傾斜部30は、板の表面が上を向くように配置される。第1上段傾斜部30は、表面が水平面に対して傾斜するように配置される。第1上段傾斜部30は、炉芯に近づく方向に進むにしたがって下方へ傾斜する。つまり、第1上段傾斜部30は、概ね炉芯方向に傾斜する斜面を有する。また、第1上段傾斜部30は、上端部31から下端部32に進むにしたがって径芯に近づくように配置される。
第1上段傾斜部30の上端部31側には、水平に延びるアーム40が連結されている。アーム40は、棒状のビーム50に連結されている。ビーム50は、水平に配置されている。ビーム50の両端はホッパ21の内壁に固定されている。つまり、第1上段傾斜部30は、アーム40およびビーム50を介してホッパ21に支持されている。なお、アーム40およびビーム50は、第1上段傾斜部30をホッパ21に支持する支持部に相当する。
第1上段傾斜部30は、切替シュート13から落下する原料Mの一部が第1上段傾斜部30の表面(斜面)に当たるように配置される。第1上段傾斜部30は、第1上段傾斜部30の表面に当たった原料Mを下端部32からホッパ21内に落下させる。これにより、第1上段傾斜部30は、第1上段傾斜部30の表面に当たった原料について、ホッパ21内における原料Mの落下位置を自由落下経路から炉芯方向へずらす。
第1上段傾斜部30の側面には、上方に突出するガイド部34が設けられる。ガイド部34は、第1上段傾斜部30の側方から原料Mが落ちることを防止する。これにより、第1上段傾斜部30は、効率よく下端部32から原料Mをホッパ21内に落下させることができる。
第1上段傾斜部30の表面およびガイド部34には、不図示の耐摩耗材が設けられている。耐摩耗材は、第1上段傾斜部30に当たる原料によって第1上段傾斜部30が摩耗することを防止する。
第2上段傾斜部60は、矩形の板状に形成されている。第2上段傾斜部60は、径芯に対して他方側(図7の上側)に配置される。第2上段傾斜部60は、第1上段傾斜部30と概ね水平に並んで配置される。第2上段傾斜部60は、板の表面が上を向くように配置される。第2上段傾斜部60は、表面が水平面に対して傾斜するように配置される。第2上段傾斜部60は、炉芯から遠ざかる方向に進むにしたがって下方へ傾斜する。つまり、第2上段傾斜部60は、概ね炉外方向に傾斜する斜面を有する。また、第2上段傾斜部60は、上端部61から下端部62に進むにしたがって径芯に近づくように配置される。
第2上段傾斜部60の上端部61側には、水平に延びるアーム42が連結されている。アーム42は、棒状のビーム52に連結されている。ビーム52は、水平に配置されている。ビーム52の両端はホッパ21の内壁に固定されている。つまり、第2上段傾斜部60は、アーム42およびビーム52を介してホッパ21に支持されている。なお、アーム42およびビーム52は、第2上段傾斜部60をホッパ21に支持する支持部に相当する。
第2上段傾斜部60は、切替シュート13から落下する原料Mの一部が第2上段傾斜部60の表面(斜面)に当たるように配置される。第2上段傾斜部60は、第2上段傾斜部60の表面に当たった原料Mを下端部62からホッパ21内に落下させる。これにより、第2上段傾斜部60は、第2上段傾斜部60の表面に当たった原料Mについて、ホッパ21内における原料Mの落下位置を自由落下経路から炉外方向へずらす。
第2上段傾斜部60の側面には、上方に突出するガイド部64が設けられる。ガイド部64は、第2上段傾斜部60の側方から原料Mが落ちることを防止する。これにより、第2上段傾斜部60は、効率よく下端部32から原料Mをホッパ21内に落下させることができる。
第2上段傾斜部60の表面およびガイド部64には、不図示の耐摩耗材が設けられている。耐摩耗材は、第2上段傾斜部60に当たる原料Mによって第2上段傾斜部60が摩耗することを防止する。
第1上段傾斜部30は、切替シュート13から落下する原料Mの約4分の1を第1上段傾斜部30が受けるように配置される。同様に、第2上段傾斜部60は、切替シュート13から落下する原料Mの約4分の1を第2上段傾斜部60が受けるように配置される。
第1上段傾斜部30および第2上段傾斜部60は、切替シュート13から落下する原料Mを受ける位置において各々離隔して配置される。つまり、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との間には、隙間が設けられている。図8では、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を両矢印Cで示している。
このため、切替シュート13から落下する原料Mの一部は、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通って落下する。具体的には、第1上段傾斜部30および第2上段傾斜部60は、切替シュート13から落下する原料の約半分が第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通るように配置される。
また、例えば、図2の右下のホッパ21のように、ホッパ21によっては、径芯の方向がコンベア15の延伸方向と大凡一致する。つまり、この場合、第1上段傾斜部30の延在方向および第2上段傾斜部60の延在方向がコンベア15の延伸方向と大凡一致する。
また、上述のように、コンベア15における原料Mの積載量が多くなると積載厚さが厚くなる。このため、第1上段傾斜部30の延在方向および第2上段傾斜部60の延在方向とコンベア15の延伸方向とが大凡一致するとき、切替シュート13から自由落下する原料Mは、径芯に沿って炉外方向に増加する。つまり、このとき、図7のハッチングで示す領域は、炉外方向に広くなる。
そこで、第1上段傾斜部30の上端部31側には、余長部35が設けられている。余長部35は、切替シュート13から落下する標準的な量の原料Mを受ける位置よりも斜め上方に延在する。余長部35は、標準的な量よりも増加した原料Mの一部を受ける。これにより、第1上段傾斜部30は、原料Mの投入量が増加しても、原料Mの一部について、落下位置を確実に炉芯方向へずらすことができる。
なお、第2上段傾斜部60の上端部61側にも、第1上段傾斜部30と同様に、切替シュート13から落下する標準的な量の原料Mを受ける位置よりも斜め上方に延在する余長部が設けられてもよい。
また、上述のように、コンベア15における原料Mの積載量が多くなってもコンベア15における積載幅はほとんど変わらない。このため、第1上段傾斜部30の延在方向および第2上段傾斜部60の延在方向とコンベア15の延伸方向とが大凡一致するとき、切替シュート13から落下する原料Mの径芯に垂直な方向の幅は、ほとんど変わらない。つまり、図7のハッチングで示す領域は、径芯に垂直な方向に広くならない。これにより、第1上段傾斜部30が受ける原料Mの量、第2上段傾斜部60が受ける原料Mの量、および、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通過する原料Mの量の関係は、原料Mの投入量が増加してもほとんど変わらない。
下段傾斜部70は、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間の下方に配置される。下段傾斜部70は、第1下段傾斜部80と第2下段傾斜部90とから構成される。
第1下段傾斜部80は、径芯に対して第1上段傾斜部30側(図7の下側)に配置される。一方、第2下段傾斜部90は、径芯に対して第2上段傾斜部60側(図7の上側)に配置される。
第1下段傾斜部80および第2下段傾斜部90は、矩形の板状に形成されている。第1下段傾斜部80および第2下段傾斜部90は、板の表面が上に向くように配置される。第1下段傾斜部80および第2下段傾斜部90は、表面が水平面に対して傾斜するように配置される。第1下段傾斜部80および第2下段傾斜部90は、各々、径芯から遠ざかるにしたがって下方に傾斜する。つまり、第1下段傾斜部80は、径芯に対して第1上段傾斜部30がある方向へ傾斜する斜面を有する。また、第2下段傾斜部90は、径芯に対して第2上段傾斜部60がある方向へ傾斜する斜面を有する。また、第1下段傾斜部80の上端部81および第2下段傾斜部90の上端部91は、径芯上に配置されて、互いに接続されている。
第1下段傾斜部80の下端部82側および第2下段傾斜部90の下端部92側には、水平に延びるアーム44が連結されている。アーム44は、アーム44から垂直上方に延びる支持柱46に連結されている。支持柱46は、ビーム50、52に連結されている。つまり、下段傾斜部70は、アーム44、支持柱46、ビーム50、52を介してホッパ21に支持されている。
第1下段傾斜部80は、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通った原料Mの約半分が第1下段傾斜部80の表面に当たるように配置される。第1下段傾斜部80は、第1下段傾斜部80の表面に当たった原料Mを下端部82からホッパ21内に落下させる。これにより、第1下段傾斜部80は、第1下段傾斜部80に当たった原料Mについて、ホッパ21内における原料Mの落下位置を自由落下経路からずらす。第1下段傾斜部80は、原料Mの落下位置を、径芯に対して第1上段傾斜部30がある方向へずらす。
第2下段傾斜部90は、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通った原料Mの残り半分が第2下段傾斜部90の表面に当たるように配置される。第2下段傾斜部90は、第2下段傾斜部90の表面に当たった原料Mを下端部92からホッパ21内に落下させる。これにより、第2下段傾斜部90は、第2下段傾斜部90に当たった原料Mについて、ホッパ21内における原料Mの落下位置を自由落下経路からずらす。第2下段傾斜部90は、原料Mの落下位置を、径芯に対して第2上段傾斜部60がある方向へずらす。
図9は、第1上段傾斜部30が連結されるアーム40およびその近傍の拡大図である。ビーム50には、複数のネジ穴50Aが設けられている。複数のネジ穴50Aは、ビーム50の長手方向に等間隔に設けられている。
アーム40は、第1アーム40A、第2アーム40B、ボルト40C、連結穴40D、回転部40Eおよび角度固定部40Fを含んで構成される。
第1アーム40Aは、ベース部40AAと突出部40ABとに区分される。ベース部40AAは、ビーム50に沿って配置される。突出部40ABは、ベース部40AAに対して垂直に突出する。つまり、第1アーム40Aは、概ねT字状に形成されている。
ベース部40AAには、ボルト40Cを挿入可能な複数の連結穴40Dが設けられている。複数の連結穴40Dは、ビーム50の複数のネジ穴50Aの間隔と同じ間隔で設けられている。ボルト40Cは、連結穴40Dに挿入されて、ビーム50の複数のネジ穴50Aのいずれかに締結される。これにより、アーム40は、ビーム50に連結される。
第1アーム40Aの突出部40ABは、回転部40Eを介して第2アーム40Bに連結されている。第2アーム40Bは、第1上段傾斜部30に接続されている。回転部40Eの回転軸は、ホッパ21の軸方向と同方向に延びている。回転部40Eは、第1アーム40Aに対して第2アーム40Bを回転軸の周りに回転可能に連結する。これにより、第1上段傾斜部30は、回転部40Eの回転軸の周りに回転可能である。つまり、第1上段傾斜部30は、水平方向の角度を変えることが可能となっている。
角度固定部40Fは、長さを変更可能な棒状部材で構成される。角度固定部40Fは、例えば、ターンバックルである。角度固定部40Fの一端は、第1アーム40Aのベース部40AAに連結される。角度固定部40Fの他端は、第1上段傾斜部30に連結される。角度固定部40Fは、第1上段傾斜部30の水平方向の角度を、角度固定部40Fの長さにしたがった所定角度に維持する。
なお、第1上段傾斜部30が連結されるアーム40について説明したが、第2上段傾斜部60が連結されるアーム42も同様の構成となっている。
第1上段傾斜部30は、ボルト40Cが締結されるネジ穴50Aの位置にしたがってビーム50の長手方向の位置が設定される。また、第1上段傾斜部30は、角度固定部40Fの長さにしたがって水平方向の角度が設定される。第2上段傾斜部60も同様である。このため、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙も、任意に設定可能である。これらの設定は、例えば、炉頂装置20の導入時に行われる。
ここで、図10は、比較例の炉頂装置120におけるホッパ21内の原料Mの堆積例を示す平面図である。図10では、ホッパ21内の原料の堆積高さを等高線で示している。
図10の比較例の炉頂装置120は、自由落下経路の途中に傾斜部122が設けられている。傾斜部122は、炉芯方向に傾斜する第1斜面130と、炉外方向に傾斜する第2斜面140とを有する。図10では、傾斜部122からホッパ21に落下する原料の落下方向を二点鎖線の矢印で示している。
第1斜面130は、落下位置P11に原料Mを落下させる。落下位置P11は、切替シュート13からの自由落下経路に対して炉芯方向にある。落下位置P11に落下した原料Mは、落下位置P11を頂上とする山状に堆積する。また、第2斜面140は、落下位置P12に原料Mを落下させる。落下位置P12は、切替シュート13からの自由落下経路に対して炉外方向にある。落下位置P12に落下した原料Mは、落下位置P12を頂上とする山状に堆積する。
この比較例の炉頂装置120では、原料Mが堆積された山が2個形成される。図10では、2個の山の境界を破線B11で示している。山の頂上には、相対的に細粒(粉状)の原料が堆積される。一方、山の麓には、相対的に大粒(塊状)の原料が堆積される。そして、ホッパ21内では、山の頂上と山の麓との距離が長いほど、細粒(粉状)の原料Mと大粒(塊状)の原料Mとがよく分離される。
この比較例の炉頂装置120では、山の頂上と、山の最も低い麓との距離D10が、比較的長い。これにより、この比較例の炉頂装置120では、細粒の原料Mと大粒の原料Mとがよく分離される。その結果、この比較例の炉頂装置120は、ホッパ21内における原料Mの粒の大きさ(粉塊)が比較的に偏っている。
これに対し、図11は、本実施形態の炉頂装置20におけるホッパ21内の原料Mの堆積例を示す平面図である。図11では、ホッパ21内の原料Mの堆積高さを等高線で示している。また、図11では、第1上段傾斜部30、第2上段傾斜部60、第1下段傾斜部80および第2下段傾斜部90からホッパ21に落下する原料Mの落下方向を二点鎖線の矢印で示している。
第1上段傾斜部30は、落下位置P21に原料Mを落下させる。落下位置P21は、切替シュート13からの自由落下経路に対して炉芯方向にある。また、落下位置P21は、径芯上にある。落下位置P21に落下した原料Mは、落下位置P21を頂上とする山状に堆積する。
第2上段傾斜部60は、落下位置P22に原料Mを落下させる。落下位置P22は、切替シュート13からの自由落下経路に対して炉外方向にある。また、落下位置P22は、径芯上にある。落下位置P22に落下した原料Mは、落下位置P22を頂上とする山状に堆積する。
第1下段傾斜部80は、落下位置P23に原料Mを落下させる。落下位置P23は、切替シュート13からの自由落下経路に対して第1上段傾斜部30側にある。落下位置P23に落下した原料Mは、落下位置P23を頂上とする山状に堆積する。
第2下段傾斜部90は、落下位置P24に原料Mを落下させる。落下位置P24は、切替シュート13からの自由落下経路に対して第2上段傾斜部60側にある。落下位置P24に落下した原料Mは、落下位置P24を頂上とする山状に堆積する。
このように、本実施形態の炉頂装置20では、原料Mが堆積された山が4個形成される。破線B21は、落下位置P21を頂上とする山と、落下位置P23を頂上とする山との境界を示す。破線B22は、落下位置P21を頂上とする山と、落下位置P24を頂上とする山との境界を示す。破線B23は、落下位置P22を頂上とする山と、落下位置P23を頂上とする山との境界を示す。破線B24は、落下位置P22を頂上とする山と、落下位置P24を頂上とする山との境界を示す。破線B25は、落下位置P23を頂上とする山と、落下位置P24を頂上とする山との境界を示す。
本実施形態の炉頂装置20では、山の頂上と、山の最も低い麓との距離D20が、上述の比較例の距離D10に比べ短い。これにより、本実施形態の炉頂装置20では、上述の比較例に比べ、細粒(粉状)の原料Mと大粒(塊状)の原料Mとの分離が抑制される。その結果、本実施形態の炉頂装置20は、上述の比較例に比べ、ホッパ21内における原料Mの粒の大きさ(粉塊)の偏りを抑制することができる。
図12は、竪型炉10内への原料Mの装入を説明する説明図である。竪型炉10には、ホッパ21に貯留された原料Mが、原料Mの種類毎に順次に装入される。
例えば、装入シュート12は、ホッパ21に貯留された鉄鉱石M1を竪型炉10内に層状に装入する。このとき、装入シュート12は、炉芯付近に堆積される鉄鉱石M1の堆積厚さよりも、炉壁付近に堆積される鉄鉱石M1の堆積厚さが厚くなるように鉄鉱石M1を装入する。
その後、装入シュート12は、ホッパ21に貯留されたコークスM2を竪型炉10内の鉄鉱石M1の上に層状に装入する。このとき、装入シュート12は、炉壁付近に堆積されるコークスM2の堆積厚さよりも、炉芯付近に堆積されるコークスM2の堆積厚が厚くなるようにコークスM2を装入する。
つまり、装入シュート12は、炉壁付近におけるコークスM2に対する鉄鉱石M1の比率(所謂、O/C)が、炉芯付近におけるコークスM2に対する鉄鉱石M1の比率に比べ大きくなるように各原料Mを装入する。原料M中を気体が通過することを妨げる通気抵抗は、コークスM2に対する鉄鉱石M1の比率が大きいほど大きい。
ここで、竪型炉10内の下部には、原料Mが溶融された溶融ゾーンZ1が形成される。溶融ゾーンZ1の周囲には、原料Mが溶融し始める半溶融ゾーンZ2が形成される。溶融ゾーンZ1では、高温のガスが生じる。この高温のガスは、半溶融ゾーンZ2を通って上方に移動する。図12では、生じたガスの流れの方向を概念的に破線の矢印で示している。
炉芯付近に堆積された原料Mは、コークスM2に対する鉄鉱石M1の比率が小さいため、生じたガスを通過させ易い。一方、炉壁付近に堆積された原料Mは、コークスM2に対する鉄鉱石M1の比率が大きいため、生じたガスが炉壁付近を通過することを抑制する。つまり、炉壁付近に堆積された原料Mは、高温のガスによって炉壁が損傷することを防止することができる。
ここで、上述の比較例の炉頂装置120のように、ホッパ21に貯留される原料Mの粒の大きさの偏りが大きいと、竪型炉10内の原料M毎の層の厚さ、層の形状、溶融ゾーンZ1の形状、および、半溶融ゾーンZ2の形状の制御が難しい。
これに対し、本実施形態の炉頂装置20は、上述の比較例の炉頂装置120に比べ、ホッパ21に貯留される原料Mの粒の大きさの偏りが抑制される。このため、本実施形態の炉頂装置20は、上述の比較例の炉頂装置120に比べ、竪型炉10内の原料M毎の層の厚さ、層の形状、溶融ゾーンZ1の形状、および、半溶融ゾーンZ2の形状を制御し易い。その結果、本実施形態の炉頂装置20は、上述の比較例の炉頂装置120に比べ、竪型炉10の炉壁の損傷を容易に防止することができる。
以上のように、本実施形態の炉頂装置20は、ホッパ21内への自由落下経路の途中に第1上段傾斜部30および第2上段傾斜部60が設けられている。第1上段傾斜部30および第2上段傾斜部60は、各々異なる方向に傾斜しつつ、第1上段傾斜部30および第2上段傾斜部60における原料Mを受ける位置において各々離隔して配置される。
これにより、ホッパ21内には、第1上段傾斜部30を通って堆積される山と、第2上段傾斜部60を通って堆積される山と、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通って堆積される山とが形成される。本実施形態の炉頂装置20は、ホッパ21内の山の数が2個よりも多くなるため、ホッパ21内の山の数が2個以下の場合に比べ、山の頂上から山の麓までの距離が短くなる。
したがって、本実施形態の炉頂装置20によれば、貯留する原料Mの粒の大きさの偏りを抑えることが可能となる。
また、本実施形態の炉頂装置20において、ホッパ21は、炉芯に対して偏芯して設けられている。また、第1上段傾斜部30は、炉芯方向に傾斜しており、第2上段傾斜部60は、炉外方向に傾斜している。
これにより、本実施形態の炉頂装置20は、ホッパ21内の山の頂上から山の麓までの距離をより短くすることができる。したがって、本実施形態の炉頂装置20は、ホッパ21内の原料Mの粒の大きさの偏りをより抑えることが可能となる。
また、本実施形態の炉頂装置20は、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間の下方に下段傾斜部70が設けられている。これにより、本実施形態の炉頂装置20は、下段傾斜部70が設けられない態様に比べ、原料Mの山の数を多くすることができる。したがって、本実施形態の炉頂装置20は、ホッパ21内の原料Mの粒の大きさの偏りをより抑えることが可能となる。
また、本実施形態の炉頂装置20において、第1上段傾斜部30および第2上段傾斜部60は、水平方向の位置および角度を調整することができる。このため、本実施形態の炉頂装置20は、適用される竪型炉システム1に応じて、ホッパ21内への原料Mの自由落下経路が異なるとしても、偏析防止装置22を自由落下経路の途中に設置することができる。したがって、本実施形態の炉頂装置20は、より確実にホッパ21内の原料の粒の大きさの偏りを抑えることが可能となる。
(第1変形例)
図13は、第1変形例による炉頂装置220の構成を示す平面図である。第1変形例の炉頂装置220は、偏析防止装置22に代えて偏析防止装置222を有する点において上記実施形態の炉頂装置20と異なる。偏析防止装置222は、下段傾斜部70が設けられていない点において偏析防止装置22と異なる。
第1変形例において、第1上段傾斜部30および第2上段傾斜部60は、第1上段傾斜部30を通る原料Mの量と、第2上段傾斜部60を通る原料Mの量と、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通る原料Mの量とが、三等分されるように配置される。
第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通る原料は、落下位置P25に落下する。落下位置P25は、自由落下経路に位置する。また、落下位置P25は、落下位置P21と落下位置P22との間にある。また、落下位置P25は、径芯上にある。
第1変形例の炉頂装置220は、ホッパ21内の原料Mの山が3個形成される。このため、第1変形例の炉頂装置220は、ホッパ21内に2個以下の山が形成される態様に比べ、ホッパ21内の原料Mの粒の大きさの偏りを抑えることが可能となる。
ただし、第1変形例の炉頂装置220は、上記実施形態の炉頂装置20に比べ、ホッパ21内の原料Mの山の数が少ない。このため、上記実施形態の炉頂装置20は、第1変形例の炉頂装置220よりも好ましい。
(第2変形例)
図14は、第2変形例による炉頂装置320の構成を示す平面図である。第2変形例の炉頂装置320は、偏析防止装置222に代えて偏析防止装置322を有する点において第1変形例の炉頂装置220と異なる。偏析防止装置322は、第1上段傾斜部30の傾斜方向および第2上段傾斜部60の傾斜方向が偏析防止装置222と異なる。
第2変形例において、第1上段傾斜部30は、炉外方向であり、かつ、図14の下方向に傾斜する。第1上段傾斜部30は、落下位置P26に原料Mを落下させる。また、第2上段傾斜部60は、炉外方向であり、かつ、図14の上方向に傾斜する。第2上段傾斜部60は、落下位置P27に原料Mを落下させる。第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通る原料Mは、落下位置P25に落下する。
第2変形例の炉頂装置320は、第1変形例と同様に、ホッパ21内の原料Mの山が3個形成される。このため、第2変形例の炉頂装置320は、第1変形例と同様に、ホッパ21内の原料Mの粒の大きさの偏りを抑えることが可能となる。
(第3変形例)
図15は、第3変形例による炉頂装置420の偏析防止装置422の部分拡大図である。第3変形例の偏析防止装置422は、下段傾斜部70に代えて下段傾斜部470を有する点において上記実施形態の偏析防止装置22と異なる。
下段傾斜部470は、径芯を挟んだ両側ともに、径芯に対して第1上段傾斜部30がある方向(図15の右方向)のみに傾斜する。これにより、下段傾斜部470は、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通った原料Mのすべてを下端部482からホッパ21内に落下させる。つまり、下段傾斜部470は、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通った原料Mのすべてについて、原料Mの落下位置を、径芯に対して第1上段傾斜部30がある方向のみにずらす。
第3変形例の炉頂装置420は、第1変形例および第2変形例と同様に、ホッパ21内の原料Mの山が3個形成される。このため、第3変形例の炉頂装置420は、第1変形例および第2変形例と同様に、ホッパ21内の原料Mの粒の大きさの偏りを抑えることが可能となる。
(第4変形例)
図16は、第4変形例による炉頂装置520の偏析防止装置522の部分拡大図である。第4変形例の偏析防止装置522は、下段傾斜部70に代えて下段傾斜部570を有する点において上記実施形態の偏析防止装置22と異なる。下段傾斜部570は、第2下段傾斜部90が設けられておらず、第1下段傾斜部80のみが設けられている点において下段傾斜部70と異なる。
第1下段傾斜部80(下段傾斜部570)は、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通った原料Mの約半分について、原料Mの落下位置を、径芯に対して第1上段傾斜部30がある方向にずらす。一方、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60との隙間を通った原料Mのうち第2上段傾斜部60側の約半分については、下段傾斜部570に当たらず、そのまま自由落下する。
第4変形例の炉頂装置520は、上記実施形態と同様に、ホッパ21内の原料Mの山が4個形成される。このため、第4変形例の炉頂装置520は、上記実施形態と同様に、ホッパ21内の原料Mの粒の大きさの偏りを抑えることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態および各変形例では、第1上段傾斜部30と第2上段傾斜部60とが設けられていた。しかし、上段傾斜部の数は、2個に限らない。上段傾斜部の数は、複数個であればよく、3個以上であってもよい。複数の上段傾斜部は、各々異なる方向に傾斜しつつ、複数の上段傾斜部における原料Mを受ける位置において各々離隔して配置されてもよい。