JP7120881B2 - セメント質硬化体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セメント組成物、及び、該セメント組成物を用いたセメント質硬化体の製造方法に関する。
近年、硬化前には良好な流動性を有し、かつ硬化後には高い圧縮強度を発現することのできるセメント組成物が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、セメント、BET比表面積が15~25m/gのシリカフューム、50%累積粒径が0.8~5μmの無機粉末、最大粒径が1.2mm以下の骨材A、高性能減水剤、消泡剤及び水を含むセメント組成物であって、上記セメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計量100体積%中、上記セメントの割合が55~65体積%、上記シリカフュームの割合が5~25体積%、上記無機粉末の割合が15~35体積%であることを特徴とするセメント組成物が記載されている。
また、特許文献1には、該セメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る成形工程と、上記未硬化の成形体を、10~40℃で24時間以上、封緘養生または気中養生した後、上記型枠から脱型し、硬化した成形体を得る常温養生工程と、上記硬化した成形体について、70℃以上100℃未満で1時間以上の、蒸気養生もしくは温水養生と、100~200℃で1時間以上のオートクレーブ養生のいずれか一方または両方を行い、加熱養生後の硬化体を得る加熱養生工程と、上記加熱養生後の硬化体を、150~200℃で24時間以上、加熱(ただし、オートクレーブ養生による加熱を除く。)して、上記セメント質硬化体を得る高温加熱工程、を含むことを特徴とするセメント質硬化体の製造方法が記載されている。
特許文献1に記載されたセメント質硬化体は、硬化前には優れた流動性(例えば、0打ちフロー値として200mm以上)を有し、かつ、硬化後には、大きな強度(例えば、圧縮強度として300N/mm以上でかつ曲げ強度として40N/mm以上)を有するものである。
特開2017-24968号公報
特許文献1のセメント質硬化体の製造方法は、加熱養生後、硬化体を150~200℃で24時間以上加熱して、セメント質硬化体を得るものである。例えば、特許文献1の実施例1等では、蒸気養生を行った後、180℃で48時間の加熱乾燥(具体的には、水や水蒸気を人為的に供給しない条件下での加熱)を行って、セメント質硬化体を製造している。
しかし、150℃以上の温度での加熱乾燥が可能な設備を持つコンクリート製品工場は少なく、また、150℃以上の温度での加熱乾燥はエネルギーコストを増大させるという事情を考慮すると、上述の養生後の加熱乾燥の温度(150~200℃)を低減させつつ、硬化前には優れた流動性を有し、かつ、硬化後には大きな強度を有するセメント組成物を得ることのできる技術が、求められている。
本発明の目的は、硬化前には優れた流動性を有し、かつ、養生後の加熱乾燥の温度が低い(例えば、90℃以上150℃未満)場合であっても、硬化後には大きな強度(圧縮強度及び曲げ強度)を発現することができるセメント組成物、及び、該セメント組成物を用いたセメント質硬化体の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の鉱物組成を有するポルトランドセメント、BET比表面積が15~25m/gのシリカフューム、50%累積粒径が0.8~5μmの無機粉末、最大粒径が1.2mm以下の骨材A、直径が0.01~1.0mmでかつ長さが2~30mmの金属繊維、高性能減水剤、消泡剤及び水を含むセメント組成物であって、ポルトランドセメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、ポルトランドセメント、シリカフューム及び無機粉末の各割合が特定の数値範囲内であるセメント組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1] ポルトランドセメント、BET比表面積が15~25m/gのシリカフューム、50%累積粒径が0.8~5μmの無機粉末、最大粒径が1.2mm以下の骨材A、直径が0.01~1.0mmでかつ長さが2~30mmの金属繊維、高性能減水剤、消泡剤及び水を含むセメント組成物であって、上記ポルトランドセメント中、ビーライトの割合が50.0~65.0質量%、アルミネート相(3CaO・Al)の割合が1.0~2.4質量%であり、上記ポルトランドセメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計量100体積%中、上記ポルトランドセメントの割合が55~65体積%、上記シリカフュームの割合が5~25体積%、上記無機粉末の割合が15~35体積%であることを特徴とするセメント組成物。
[2] 上記セメント組成物が、直径が0.005~1.0mm、長さが2~30mm、及びアスペクト比(繊維長/繊維直径)が20~500の有機繊維を含み、上記セメント組成物中の上記有機繊維の割合が0.01~0.5体積%である前記[1]に記載のセメント組成物。
[3] 上記セメント組成物が、最小粒径が1.2mmを超え、かつ、最大粒径が13mm以下の骨材Bを含む前記[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメント組成物からなるセメント質硬化体を製造するための方法であって、上記セメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る成形工程と、上記未硬化の成形体を、10~40℃で24時間以上、封緘養生または気中養生した後、上記型枠から脱型し、硬化した成形体を得る常温養生工程と、上記硬化した成形体について、70℃以上100℃未満で1時間以上の、蒸気養生もしくは温水養生と、100~200℃で1時間以上のオートクレーブ養生のいずれか一方または両方を行い、加熱養生後の硬化体を得る加熱養生工程と、上記加熱養生後の硬化体を、90℃以上150℃未満で24時間以上、加熱(ただし、蒸気養生、温水養生及びオートクレーブ養生のいずれかによる加熱を除く。)して、上記セメント質硬化体を得る加熱乾燥工程、を含むことを特徴とするセメント質硬化体の製造方法。
[5] 上記常温養生工程と上記加熱養生工程の間に、上記硬化した成形体に吸水させる吸水工程を含む前記[4]に記載のセメント質硬化体の製造方法。
本発明のセメント組成物は、硬化前には高い流動性を有し、かつ、硬化後には大きな強度(圧縮強度及び曲げ強度)を発現することができる。
また、本発明のセメント質硬化体の製造方法によれば、養生後の加熱乾燥の温度が、90℃以上150℃未満と比較的低いにもかかわらず、大きな強度(圧縮強度及び曲げ強度)を有するセメント質硬化体を製造することができる。
本発明のセメント組成物は、ポルトランドセメント、BET比表面積が15~25m/gのシリカフューム(以下、「シリカフューム」と略すことがある。)、50%累積粒径が0.8~5μmの無機粉末(以下、「無機粉末」と略すことがある。)、最大粒径が1.2mm以下の骨材A、直径が0.01~1.0mmでかつ長さが2~30mmの金属繊維、高性能減水剤、消泡剤及び水を含むセメント組成物であって、ポルトランドセメント中、ビーライト(2CaO・SiO;以下、「CS」と略すことがある。)の割合が50.0~65.0質量%、アルミネート相(3CaO・Al;以下、「CA」と略すことがある。)の割合が1.0~2.4質量%であり、ポルトランドセメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、ポルトランドセメントの割合が55~65体積%、シリカフュームの割合が5~25体積%、無機粉末の割合が15~35体積%のものである。
ポルトランドセメント中のCSの割合は、50.0~65.0質量%、好ましくは52.0~64.5質量%、より好ましくは54.0~64.0質量%、さらに好ましくは54.5~63.5質量%、特に好ましくは55.0~63.0質量%である。該割合を上記数値範囲内にすることで、硬化前には良好な流動性を有し、かつ、加熱乾燥温度が90℃以上150℃未満であっても、硬化後には高い圧縮強度を発現することができるセメント組成物とすることができる。
また、ポルトランドセメント中のCAの割合は、1.0~2.4質量%、好ましくは1.1~2.2質量%、より好ましくは1.2~2.0質量%、特に好ましくは1.3~1.8質量%である。該割合を上記数値範囲内にすることで、硬化前には良好な流動性を有し、かつ、加熱乾燥温度が90℃以上150℃未満であっても、硬化後には高い圧縮強度を発現することができるセメント組成物とすることができる。なお、該割合が1.0質量%未満であると、ポルトランドセメントの製造が困難となる。
また、ポルトランドセメント中のエーライト(3CaO・SiO;以下、「CS」と略すことがある。)の割合は、セメント組成物の強度発現性や硬化前の流動性等の観点から、好ましくは20.0~34.0質量%、より好ましくは21.0~33.0質量%である。
さらに、ポルトランドセメント中のフェライト相(4CaO・Al・Fe;以下、「CAF」と略すことがある。)は、ポルトランドセメントの製造の容易性の観点から、好ましくは8.0~10.0質量%、より好ましくは8.5~9.5質量%である。
ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、好ましくは3,200~3,700cm/g、より好ましくは3,250~3,650cm/g、特に好ましくは3,300~3,600cm/gである。該ブレーン比表面積が3,200cm/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。該ブレーン比表面積が3,700cm/g以下であれば、セメント組成物の硬化前の流動性がより向上する。
ポルトランドセメント中の全SO量の割合は、セメント組成物の強度発現性や硬化前の流動性等の観点から、好ましくは2.0~2.5質量%、より好ましくは2.1~2.45質量%、特に好ましくは2.2~2.4質量%である。
なお、本明細書において、ポルトランドセメント中、CS、C2S、CA、及びC4AFの各割合は、ポルトランドセメント(100質量%)中の化学成分に基づき、下記のボーグの計算式を用いて算出することができる。
3S(質量%)=(4.07×CaO(質量%))-(7.60×SiO2(質量%))-(6.72×Al23(質量%))-(1.43×Fe23(質量%))-(2.85×SO(質量%))
2S(質量%)=(2.87×SiO2(質量%))-(0.754×C3S(質量%))
3A(質量%)=(2.65×Al23(質量%))-(1.69×Fe23(質量%))
4AF(質量%)=3.04×Fe23(質量%)
シリカフュームのBET比表面積は、15~25m/g、好ましくは17~23m/g、特に好ましくは18~22m/gである。該比表面積が15m/g未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。該比表面積が25m/gを超える場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。
50%累積粒径が0.8~5μmの無機粉末としては、例えば、石英粉末(珪石粉末)、火山灰、フライアッシュ(分級または粉砕したもの)、スラグ粉末、石灰石粉末、長石類粉末、ムライト類粉末、アルミナ粉末、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末、エメリー砂(人工または天然)の粉砕物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、セメント組成物の強度発現性や硬化前の流動性を向上させる観点から、石英粉末またはフライアッシュを使用することが好ましい。
なお、本明細書中、50%累積粒径が0.8~5μmの無機粉末には、セメントは含まれないものとする。
上記無機粉末の50%累積粒径は、0.8~5μm、好ましくは1~4μm、より好ましくは1.1~3.5μm、特に好ましくは1.2μm以上、3μm未満である。該粒径が0.8μm未満の場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。該粒径が5μmを超える場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。
なお、本明細書中、無機粉末の50%累積粒径は、体積基準である。
無機粉末の50%累積粒径は、市販の粒度分布測定装置(例えば、日機装社製、製品名「マイクロトラックHRA モデル9320-X100」)を用いて求めることができる。
具体的には、粒度分布測定装置を用いて、累積粒度曲線を作成し、該累積粒度曲線から50%累積粒径を求めることができる。この際、試料を分散させる溶媒であるエタノール20cmに対して、試料0.06gを添加し、90秒間、超音波分散装置(例えば、日本精機製作所社製、製品名「US300」)を用いて超音波分散したものを測定する。
上記無機粉末の最大粒径は、セメント組成物の強度発現性を向上させる観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは14μm以下、特に好ましくは13μm以下である。
上記無機粉末の95%累積粒径は、セメント組成物の強度発現性を向上させる観点から、好ましくは8μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下である。
上記無機粉末としては、SiOを主成分とするものが好ましい。上記無機粉末中のSiOの含有率は、セメント組成物の強度発現性をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
本発明のセメント組成物において、ポルトランドセメント、シリカフューム及び上記無機粉末の合計量100体積%中、ポルトランドセメントの割合は55~65体積%(好ましくは、57~63体積%)、シリカフュームの割合は5~25体積%(好ましくは、7~23体積%)、上記無機粉末の割合は15~35体積%(好ましくは17~33体積%)である。
ポルトランドセメントの割合が55体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。セメントの割合が65体積%を超える場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。
シリカフュームの割合が5体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。シリカフュームの割合が25体積%を超える場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。
上記無機粉末の割合が15体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。上記無機粉末の割合が35体積%を超える場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。
骨材Aとしては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、天然エメリー砂、人工細骨材(例えば、スラグ細骨材や、フライアッシュ等を焼成してなる焼成細骨材や、人工エメリー砂や、アルミナまたは炭化物(例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素)の粗砕物等)、再生細骨材またはこれらの混合物等が挙げられる。
中でも、珪砂は、強度(特に、圧縮強度)をより高める観点から、本発明において好ましく用いられる。珪砂中のSiOの含有率は、強度(特に、圧縮強度)をより高める観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
骨材Aの最大粒径は、1.2mm以下、好ましくは1.1mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。該最大粒径が1.2mm以下であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができ、300N/mm以上(好ましくは360N/mm以上)の圧縮強度を発現することができる場合がある。
骨材Aの粒度分布は、セメント組成物の強度発現性や硬化前の流動性を向上させる観点から、0.6mm以下の粒径の骨材の割合が、95質量%以上、0.3mm以下の粒径の骨材の割合が、40~50質量%、及び、0.15mm以下の粒径の骨材の割合が、6質量%以下であることが好ましい。
セメント組成物中の骨材Aの割合は、好ましくは20~40体積%、より好ましくは22~39体積%、さらに好ましくは25~38体積%、さらに好ましくは30~37体積%、特に好ましくは32~36体積%である。該割合が20体積%以上であれば、セメント組成物の硬化前の流動性をより向上させることができると共に、セメント組成物の発熱量を小さくし、かつ、セメント質硬化体の収縮量を小さくすることができる。該割合が40体積%以下であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
金属繊維の例としては、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、鋼繊維は、強度に優れており、また、コストや入手のし易さの観点から好適である。
金属繊維の寸法は、セメント組成物中における金属繊維の材料分離の防止や、硬化体の曲げ強度の向上の観点から、直径が0.01~1.0mm、長さが2~30mmであることが好ましく、直径が0.05~0.5mm、長さが5~25mmであることがより好ましく、直径が0.1~0.4mm、長さが8~20mmであることが特に好ましい。また、金属繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20~200、より好ましくは40~150である。
さらに、金属繊維の形状は、直線状よりも、何らかの物理的付着力を付与する形状(例えば、螺旋状や波形)であることが好ましい。螺旋状等の形状であれば、金属繊維とマトリックスとが、引き抜けながら応力を担保するため、硬化体の曲げ強度が向上する。
セメント組成物中の金属繊維の割合は、好ましくは3体積%以下、より好ましくは0.3~2.8体積%、さらに好ましくは0.4~2.6体積%、さらに好ましくは0.5~2.4体積%、さらに好ましくは1.0~2.2体積%、特に好ましくは1.5~2.0体積%である。該割合が3体積%以下であれば、セメント組成物の硬化前の流動性や作業性を低下させることなく、セメント質硬化体の曲げ強度や破壊エネルギー等を向上させることができる。
高性能減水剤としては、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の高性能減水剤を使用することができる。中でも、セメント組成物の強度発現性や硬化前の流動性を向上させる観点から、ポリカルボン酸系の高性能減水剤が好ましい。
高性能減水剤の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.2~1.5質量部であり、より好ましくは0.4~1.2質量部である。該量が0.2質量部以上であれば、減水性能が向上し、セメント組成物の硬化前の流動性が向上する。該量が1.5質量部以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。
消泡剤としては、市販品を使用することができる。
消泡剤の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001~0.1質量部、より好ましくは0.005~0.07質量部、特に好ましくは0.01~0.05質量部である。該量が0.001質量部以上であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。該量が0.1質量部を超えると、セメント組成物の強度発現性の向上効果が頭打ちとなる。
水としては、水道水等を使用することができる。
水の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、好ましくは10~20質量部、より好ましくは12~18質量部、特に好ましくは14~16質量部である。該量が10質量部以上であれば、セメント組成物の硬化前の流動性が向上する。該量が20質量部以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。
本発明のセメント組成物は、有機繊維を含むことができる。有機繊維を含むことにより、セメント質硬化体の耐火性を向上することができる。
有機繊維の例としては、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリート繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維等が挙げられる。中でも、入手の容易性及びセメント質硬化体の耐火性の向上の観点から、ポリプロピレン繊維が好ましい。
有機繊維の寸法は、セメント組成物中における有機繊維の材料分離の防止や、セメント質硬化体の耐火性の向上の観点から、直径が0.005~1.0mmでかつ長さが2~30mmであることが好ましく、直径が0.008~0.5mmでかつ長さが3~25mmであることがより好ましく、直径が0.01~0.03mmでかつ長さが4~10mmであることがさらに好ましく、直径が0.012~0.02mmでかつ長さが4~8mmであることが特に好ましい。
また、有機繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20~500、より好ましくは30~490、さらに好ましくは200~480、さらに好ましくは230~470、特に好ましくは300~450である。
中でも、セメント質硬化体の耐火性のさらなる向上の観点から、直径が0.01~0.03mm、長さが4~10mm、及びアスペクト比(繊維長/繊維直径)が230~480のポリプロピレン繊維が好ましく、直径が0.01~0.02mm、長さが4~8mm、及びアスペクト比(繊維長/繊維直径)が300~470のポリプロピレン繊維がより好ましく、直径が0.012~0.02mm、長さが4~8mm、及びアスペクト比(繊維長/繊維直径)が300~450のポリプロピレン繊維が特に好ましい。
セメント組成物中の有機繊維の割合は、好ましくは0.01~0.5体積%、より好ましくは0.03~0.4体積%、さらに好ましくは0.05~0.3体積%、さらに好ましくは0.07~0.25体積%、特に好ましくは0.09~0.2体積%である。該割合が0.01体積%以上であれば、セメント質硬化体の耐火性がより向上する。該割合が0.5体積%以下であれば、セメント質硬化体の強度(圧縮強度及び曲げ強度)や耐衝撃性がより高くなる。
なお、本発明のセメント組成物は、長期強度の低下を避ける等の観点から、ガラス繊維を含まないものが好適である。
上記セメント組成物からなるモルタル(後述する骨材Bを含まないもの)の硬化前のフロー値は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において15回の落下運動を行わないで測定した値(以下、「0打ちフロー値」ともいう。)として、好ましくは200mm以上、より好ましくは210mm以上、さらに好ましくは220mm以上、さらに好ましくは240mm以上、さらに好ましくは250mm以上、特に好ましくは260mm以上である。該フロー値が200mm以上であれば、セメント質硬化体を製造する際の作業性を向上させることができる。
また、上記セメント組成物からなるモルタル(後述する骨材Bを含まないもの)を硬化してなるセメント質硬化体の圧縮強度は、好ましくは290N/mm以上、より好ましくは300N/mm以上、さらに好ましくは310N/mm以上、さらに好ましくは320N/mm以上、さらに好ましくは340N/mm以上、さらに好ましくは360N/mm以上、特に好ましくは370N/mm以上である。
本明細書中、圧縮強度は、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した値である。
本発明のセメント組成物は、最小粒径が1.2mmを超え、かつ、最大粒径が13mm以下の骨材Bを含むことができる。
骨材Bの例としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、天然エメリー砂、人工細骨材(例えば、スラグ細骨材や、フライアッシュ等を焼成してなる焼成細骨材や、人工(人造)エメリー砂)、再生細骨材、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材(例えば、スラグ粗骨材や、フライアッシュ等を焼成してなる焼成粗骨材)、再生粗骨材、アルミナまたは炭化物(例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素等)の粗砕物、又はこれらの混合物等が挙げられる。
骨材Bの最大粒径は、13mm以下、好ましくは12mm以下、より好ましくは11mm以下、特に好ましくは10mm以下である。該最大粒径が13mm以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上し、例えば、250N/mm以上の圧縮強度及び45N/mm以上の曲げ強度を発現することができる。
また、骨材Bの最小粒径は、コストの低減等の観点から、1.2mmを超える値であり、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上(この場合、粗骨材に該当する。)、特に好ましくは7mm以上である。
なお、本明細書中、骨材Bの「最大粒径」とは、骨材B全体の90質量%以上が通るふるいのうち、最小寸法のふるいの呼び寸法で示される骨材Bの粒径(一般に、粗骨材の最大粒径の定義として知られているもの)をいう。
本発明において、セメント組成物中の骨材Aと骨材Bの合計量の割合は、好ましくは25~40体積%、より好ましくは28~38体積%、特に好ましくは30~36体積%である。該割合が25体積%以上であれば、セメント組成物の発熱量が小さくなり、かつ、セメント質硬化体の収縮量が小さくなる。該割合が40体積%以下であれば、セメント質硬化体の強度(圧縮強度及び曲げ強度)や耐衝撃性をより高くすることができる。
骨材Aと骨材Bの合計量に対する骨材Bの割合は、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下、特に好ましくは25体積%以下である。該割合が40体積%以下であれば、セメント組成物の強度(圧縮強度及び曲げ強度)や耐衝撃性をより高くすることができる。
骨材Bを含むセメント組成物(例えば、コンクリート)を硬化してなるセメント質硬化体の圧縮強度は、好ましくは250N/mm以上、より好ましくは260N/mm以上、さらに好ましくは270N/mm以上、さらに好ましくは280N/mm以上、特に好ましくは290N/mm以上である。
以下、本発明のセメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体の製造方法について詳しく説明する。
本発明のセメント質硬化体の製造方法の一例は、セメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る成形工程と、未硬化の成形体を、10~40℃で24時間以上、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した成形体を得る常温養生工程と、硬化した成形体について、70℃以上100℃未満で1時間以上の、蒸気養生もしくは温水養生と、100~200℃で1時間以上のオートクレーブ養生のいずれか一方または両方を行い、加熱養生後の硬化体を得る加熱養生工程と、加熱養生後の硬化体を、90℃以上150℃未満で24時間以上、加熱(ただし、オートクレーブ養生による加熱を除く。)して、セメント質硬化体を得る加熱乾燥工程を含むものである。
[成形工程]
本工程は、セメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る工程である。
打設を行う前に、本発明のセメント組成物を混練する方法としては、特に限定されるものではない。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。さらに、打設(成形)方法も特に限定されるものではない。
なお、本工程における未硬化の成形体は、セメント組成物中の気泡を低減又は除去したセメント組成物からなるものであってもよい。セメント組成物中の気泡を低減又は除去することで、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
セメント組成物中の気泡を低減又は除去する方法としては、(1)セメント組成物の混練を減圧下で行う方法、(2)混練後のセメント組成物を、型枠内に打設する前に減圧して脱泡させる方法、(3)セメント組成物を型枠内に打設した後、減圧して脱泡させる方法等が挙げられる。
[常温養生工程]
本工程は、未硬化の成形体を、10~40℃(好ましくは15~30℃)で24時間以上(好ましくは24~72時間、より好ましくは24~48時間)、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した成形体を得る工程である。
養生温度が10℃以上であれば、養生時間を短くすることができる。養生温度が40℃以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
養生時間が24時間以上であれば、脱型の際に、硬化した成形体に欠けや割れ等の欠陥が生じにくくなる。
また、本工程において、硬化した成形体が、好ましくは20~100N/mm、より好ましくは30~80N/mmの圧縮強度を発現した時に、硬化した成形体を型枠から脱型することが好ましい。該圧縮強度が20N/mm以上であれば、脱型の際に、硬化した成形体に欠けや割れ等の欠陥が生じにくくなる。該圧縮強度が100N/mm以下であれば、後述する吸水工程において、少ない労力で、硬化した成形体に吸水させることができる。
[加熱養生工程]
本工程は、前工程で得られた硬化した成形体について、70℃以上100℃未満(好ましくは75~95℃、より好ましくは80~92℃)で1時間以上の、蒸気養生もしくは温水養生と、100~200℃(好ましくは160~190℃)で1時間以上のオートクレーブ養生のいずれか一方または両方を行い、加熱養生後の硬化体を得る工程である。 本工程において、蒸気養生または温水養生のみを行う場合、その養生時間は、好ましくは12時間以上、より好ましくは24~96時間、特に好ましくは36~72時間である。オートクレーブ養生のみを行う場合、その養生時間は、好ましくは2時間以上、より好ましくは3~60時間、特に好ましくは4~48時間である。蒸気養生もしくは温水養生とオートクレーブ養生の両方を行う場合(例えば、蒸気養生もしくは温水養生を行った後、さらにオートクレーブ養生を行う場合)、蒸気養生もしくは温水養生における養生時間は、好ましくは1~72時間、より好ましくは2~48時間であり、オートクレーブ養生における養生時間は、好ましくは1~24時間、より好ましくは2~18時間である。
本工程において、養生温度が前記範囲内であれば、養生時間を短くすることができ、また、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
また、本工程において、養生時間が前記範囲内であれば、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
[加熱乾燥工程]
本工程は、加熱養生後の硬化体を、90℃以上150℃未満(好ましくは95~145℃、より好ましくは100~140℃、特に好ましくは105~135℃)で24時間以上(好ましくは30~90時間、より好ましくは36~72時間、さらに好ましくは38~60時間、特に好ましくは40~54時間)、加熱(ただし、蒸気養生、温水養生及びオートクレーブ養生のいずれかによる加熱を除く。)して、セメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体を得る工程である。
本工程における加熱は、乾燥雰囲気下(換言すると、水や水蒸気を人為的に供給しない状態)で行われる。
加熱温度が90℃以上であれば、加熱時間をより短くすることができる。加熱温度が150℃未満であれば、汎用の乾燥機を用いての加熱乾燥が可能となり、工場において新たな設備投資を行わなくても、本発明のセメント質硬化体の製造方法を実施することができる。
加熱時間が24時間以上であれば、セメント質硬化体の強度(圧縮強度及び曲げ強度)をより高くすることができる。
[吸水工程]
常温養生工程と加熱養生工程の間に、常温養生工程において得られた硬化した成形体に吸水させる吸水工程を含んでもよい。
硬化した成形体に吸水させる方法としては、該成形体を水中に浸漬させる方法が挙げられる。また、該成形体を水中に浸漬させる方法において、短時間で吸水量を増やし、セメント質硬化体の圧縮強度を大きくする観点から、(1)該成形体を、減圧下の水の中に浸漬させる方法、(2)該成形体を、沸騰している水の中に浸漬させた後、該成形体を浸漬させたまま、水温を40℃以下に低下させる方法、(3)該成形体を、沸騰している水の中に浸漬させた後、該成形体を沸騰している水から取り出して、次いで、40℃以下の水に浸漬させる方法、(4)該成形体を、加圧下の水の中に浸漬させる方法、又は(5)該成形体への水の浸透性を向上させる薬剤を溶解させた水溶液の中に、該成形体を浸漬させる方法、が好ましい。
上記成形体を、減圧下の水の中に浸漬させる方法としては、真空ポンプや大型の減圧容器等の設備を利用する方法が挙げられる。
上記成形体を、沸騰している水の中に浸漬させる方法としては、高温高圧容器や熱温水水槽等の設備を利用する方法が挙げられる。
硬化した成形体を、減圧下の水または沸騰している水の中に浸漬させる時間は、吸水率を高めて、圧縮強度を増大させる観点から、好ましくは3分間以上、より好ましくは8分間以上、特に好ましくは20分間以上である。該時間の上限は、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くする観点から、好ましくは60分間、より好ましくは45分間である。
吸水工程における吸水率は、セメント組成物が粗骨材を含まない場合(セメント組成物が骨材Bを含まない、あるいは、セメント組成物中が骨材Bを含むものの、骨材Bが粗骨材に該当しない場合)、φ50×100mmの硬化した成形体100体積%に対する水の割合として、好ましくは0.2体積%以上、より好ましくは0.3~2.0体積%、特に好ましくは0.35~1.7体積%であり、セメント組成物が粗骨材を含む場合(セメント組成物が骨材Bを含み、かつ、骨材Bが、粗骨材に該当する粒径のものを含む場合)、φ100×200mmの硬化した成形体100体積%に対する水の割合として、好ましくは0.2体積%以上、より好ましくは0.3~2.0体積%、特に好ましくは0.35~1.7体積%である。
これらの吸水率が0.2体積%以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度をより高めることができる。
本発明のセメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体は、高い圧縮強度を有するため、ひび割れが発生しにくく、かつ、壊れにくいものである。
また、得られたセメント質硬化体は、大きな曲げ強度を有する。上記セメント質硬化体の「土木学会基準 JSCE-G 552-2010(鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法)」に準拠して測定した曲げ強度は、好ましくは40N/mm以上、より好ましくは42N/mm以上、さらに好ましくは43N/mm以上、さらに好ましくは44N/mm以上、さらに好ましくは45N/mm以上、特に好ましくは46N/mm以上である。
また、本発明のセメント組成物が有機繊維を含む場合、該セメント組成物が硬化してなるセメント質硬化体は、耐火性に優れている。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)ポルトランドセメント;低熱ポルトランドセメントL1~L5(詳細は、表1参照)、太平洋セメント社製
(2)シリカフューム;BET比表面積:20m/g
(3)無機粉末;珪石粉末、50%体積累積粒径:2μm、最大粒径:12μm、95%体積累積粒径:5.8μm、SiOの含有率:95質量%以上
(4)骨材A(細骨材);珪砂(最大粒径:1.0mm、0.6mm以下の粒径のもの:98質量%、0.3mm以下の粒径のもの:45質量%、0.15mm以下の粒径のもの:3質量%、SiOの含有率:95質量%以上)
(5)ポリカルボン酸系高性能減水剤;固形分量:27.4質量%、フローリック社製、商品名「フローリックSF500U」
(6)消泡剤;BASFジャパン社製、商品名「マスターエア404」
(7)水;水道水
(8)金属繊維;鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm)
Figure 0007120881000001
[実施例1]
ポルトランドセメントとして、低熱ポルトランドセメントL2を使用し、ポルトランドセメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、ポルトランドセメントの割合が60体積%、シリカフュームの割合が10体積%、無機粉末の割合が30体積%となるように、ポルトランドセメントとシリカフュームと無機粉末を混合し、粉体原料(混合物)を得た。得られた粉体原料と、セメント組成物中の骨材Aの割合が35.5体積%となる量の骨材Aを、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、粉体原料100質量部に対して、水15質量部、ポリカルボン酸系高性能減水剤0.76質量部(固形分換算)、及び消泡剤0.02質量部を、オムニミキサに投入して、2分間混練した。
混練後、オムニミキサ内の側壁に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った。
その後、セメント組成物中の金属繊維の割合が2.0体積%となる量の金属繊維を、オムニミキサに投入して、さらに2分間混錬を行い、セメント組成物を作製した。
混練後のセメント組成物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。なお、本明細書中、該フロー値を「0打ちフロー値」という。
得られたセメント組成物(混錬物)を、φ50×100mmの円筒形の型枠に打設して、未硬化の成形体を得た(成形工程)。打設後、未硬化の成形体について、20℃で48時間、封緘養生を行い、次いで、脱型して、硬化した成形体を得た(常温養生工程)。脱型時の圧縮強度は45N/mmであった。
この成形体を、減圧したデシケーター内で、30分間、水に浸漬した(吸水工程)。なお、減圧は、アズワン社製の「アスピレーター(AS-01)」を使用して行った。浸漬前後の成形体の質量を測定し、得られた測定値から、吸水率を算出した。
浸漬後、この成形体を90℃で48時間蒸気養生を行った(加熱養生工程)。次いで、20℃まで降温した後、水や水蒸気を人為的に供給せずに、110℃で40時間加熱を行った(加熱乾燥工程)。
加熱後の成形体(セメント質硬化体)の圧縮強度を、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した。
また、加熱後の成形体(セメント質硬化体)の曲げ強度を、「土木学会基準 JSCE-G 552-2010(鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法)」に準拠して測定した。
[実施例2]
加熱乾燥工程において、110℃で72時間加熱を行った以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[実施例3]
成形体を、減圧したデシケーター内で、30分間、水に浸漬する吸水工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[実施例4]
加熱乾燥工程において、130℃で35時間加熱を行った以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[実施例5]
ポルトランドセメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、ポルトランドセメントの割合が60体積%、シリカフュームの割合が20体積%、無機粉末の割合が20体積%となるように、ポルトランドセメントとシリカフュームと無機粉末を混合した以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[実施例6]
ポルトランドセメントとして、低熱ポルトランドセメントL2の代わりに低熱ポルトランドセメントL1を用いた以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[実施例7]
ポルトランドセメントとして、低熱ポルトランドセメントL2の代わりに低熱ポルトランドセメントL3を用いた以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[実施例8]
ポルトランドセメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、ポルトランドセメントの割合が60体積%、シリカフュームの割合が20体積%、無機粉末の割合が20体積%となるように、ポルトランドセメントとシリカフュームと無機粉末を混合した以外は、実施例7と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[実施例9]
加熱乾燥工程において、130℃で35時間加熱を行った以外は、実施例7と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[実施例10]
ポルトランドセメントとして、低熱ポルトランドセメントL2の代わりに低熱ポルトランドセメントL4を用いた以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[参考例1]
加熱乾燥工程において、180℃で24時間加熱を行った以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
なお、参考例1は、加熱乾燥工程における加熱を180℃という高温で行っているため、実施例ではなく、参考例として記載したものである。
[比較例1]
ポルトランドセメントとして、低熱ポルトランドセメントL2の代わりに低熱ポルトランドセメントL5を用いた以外は、実施例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
[比較例2]
加熱乾燥工程において、130℃で35時間加熱を行った以外は、比較例1と同様にしてセメント質硬化体を得た。
実施例2~10、参考例1、及び、比較例1~2で得られた、混練後のセメント組成物のフロー値、並びに、加熱後の成形体(セメント質硬化体)の圧縮強度及び曲げ強度を、実施例1と同様にして測定した。それぞれの結果を表2に示す。
Figure 0007120881000002
表2から、本発明のセメント組成物(実施例1~10)の0打ちフロー値(258~270mm)は、アルミネート相の割合が3.2質量%である低熱ポルトランドセメントを用いた比較例1~2の0打ちフロー値(254mm)よりも大きいことがわかる。
また、本発明のセメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体(実施例1~10)の圧縮強度(368~393N/mm)は、アルミネート相の割合が3.2質量%である低熱ポルトランドセメントを用いた比較例1~2の圧縮強度(353~367N/mm)よりも大きいことがわかる。特に、実施例1~10のセメント質硬化体は、加熱乾燥工程における加熱温度が110~130℃と低いものであるにもかかわらず、高い圧縮強度(368~393N/mm)を発現していることがわかる。
さらに、実施例1~10のセメント質硬化体の曲げ強度(45~47N/mm)は、アルミネート相の割合が3.2質量%である低熱ポルトランドセメントを用いた比較例1~2の圧縮強度(45~46N/mm)と同程度であることがわかる。
なお、実施例4(加熱乾燥の温度:130℃)と参考例1(加熱乾燥の温度:180℃)を比較すると、実施例4では、参考例1に比べて加熱乾燥の温度が50℃も小さいにもかかわらず、参考例1に比べて大差のない優れた物性(フロー値、圧縮強度、曲げ強度)を得ていることがわかる。

Claims (4)

  1. ポルトランドセメント、BET比表面積が15~25m/gのシリカフューム、50%累積粒径が0.8~5μmの無機粉末、最大粒径が1.2mm以下の骨材A、直径が0.01~1.0mmでかつ長さが2~30mmの金属繊維、高性能減水剤、消泡剤及び水を含むセメント組成物であって、
    上記ポルトランドセメント中、ビーライトの割合が50.0~65.0質量%、アルミネート相(3CaO・Al)の割合が1.0~2.4質量%であり、
    上記ポルトランドセメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計量100体積%中、上記ポルトランドセメントの割合が55~65体積%、上記シリカフュームの割合が5~25体積%、上記無機粉末の割合が15~35体積%であるセメント組成物からなるセメント質硬化体を製造するための方法であって、
    上記セメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る成形工程と、
    上記未硬化の成形体を、10~40℃で24時間以上、封緘養生または気中養生した後、上記型枠から脱型し、硬化した成形体を得る常温養生工程と、
    上記硬化した成形体について、70℃以上100℃未満で1時間以上の、蒸気養生もしくは温水養生と、100~200℃で1時間以上のオートクレーブ養生のいずれか一方または両方を行い、加熱養生後の硬化体を得る加熱養生工程と、
    上記加熱養生後の硬化体を、90℃以上150℃未満で24時間以上、乾燥雰囲気下で加熱して、上記セメント質硬化体を得る加熱乾燥工程、
    を含むことを特徴とするセメント質硬化体の製造方法。
  2. 上記セメント組成物が、直径が0.005~1.0mm、長さが2~30mm、及びアスペクト比(繊維長/繊維直径)が20~500の有機繊維を含み、上記セメント組成物中の上記有機繊維の割合が0.01~0.5体積%である請求項1に記載のセメント質硬化体の製造方法。
  3. 上記セメント組成物が、最小粒径が1.2mmを超え、かつ、最大粒径が13mm以下の骨材Bを含む請求項1又は2に記載のセメント質硬化体の製造方法。
  4. 上記常温養生工程と上記加熱養生工程の間に、上記硬化した成形体に吸水させる吸水工程を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント質硬化体の製造方法。
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