JP7120576B2 - 金属表面の濡れ性の制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は,ナノ秒パルスレーザーを照射することにより,金属表面の濡れ性を制御する方法に関する。
従来,基材表面の撥水性を高めるための手段として,シリコーンやフッ素系化学物質などの撥水剤を含む皮膜を塗布することが行われている。しかし,この方法では,水との接触角を140°以上の撥水表面とすることは困難である。
このため,基材表面に細かい凹凸を形成して,撥水性を良くすることも提案されている。これは,ハスの葉が,表面の凹凸構造によって水をはじくというロータス効果を応用したものである。例えば,特許文献1では,表面に微細な凹凸構造を有するスタンパによって樹脂を成型して樹脂表面に微細凹凸構造を転写し,さらにその表面をフッ素樹脂でコーティングすることにより,超撥水性の表面とすることが記載されている。また,このような微細な凹凸構造を超短パルスレーザーによるアブレーションを用いて形成することも考えられる。
さらには,微細な凹凸構造を,ミクロン領域程度の比較的大きな微細周期構造と,ナノメートル領域程度の小さな微細周期構造とからなる階層状にすると,親水性を著しく向上できる場合があることが知られている。
特開2003-172808号公報
しかし,超短パルスレーザー照射によるアブレーションを利用して金属表面に微細な凹凸を形成する場合には,逐一その凹凸形状に合わせてレーザーを制御しなければならず,複雑な制御となるという問題があった。ましてや,微細な凹凸構造に階層性を持たせることは,制御が複雑となりすぎて,実用化が困難となっていた。
本発明は,上記従来の実情に鑑みてなされたものであり,レーザーの照射によって凹部と凸部を同時に,しかも階層性を持たせて形成することにより,金属の表面の濡れ性を容易に制御することができる方法を提供することを解決すべき課題としている。
本発明者らは,金属表面にナノ秒パルスレーザーを照射して表面加工を行うことにより,レーザーの照射部にアブレーションに基づく凹部が形成されると同時に,凹部の周縁に熱加工による凸部が形成されるという現象を見出した。この凹凸構造によって金属表面の濡れ性を制御する方法を見出し,本発明を完成するに至った。
すなわち,本発明の金属表面の濡れ性制御方法では,金属表面にナノ秒パルスレーザーを照射して表面加工を行う工程において,金属の材質や形状や寸法に応じて1ショットのエネルギー,ピークパワー及びフルエンスの少なくとも一つを制御する。そして,この制御によりアブレーション加工と熱加工を同時に行い,レーザー照射箇所に凹部を形成すると同時に該凹部の周縁に凸部を形成させることにより,濡れ性を制御することを特徴とする。
本明細書において「ナノ秒パルスレーザー」とは,パルス幅が0.1ナノ秒以上1マイクロ秒以下のパルスレーザーのことをいう。本発明者らの試験結果によれば,ナノ秒パルスレーザーを金属表面に照射すると,照射箇所に凹部が形成され,同時に,凹部周縁に凸部が形成される。これは,ナノ秒パルスレーザーによって照射箇所におけるアブレーション加工とその周縁における熱加工が同時に起こった結果であると考えられる。すなわち,ナノ秒パルスレーザーのパルス幅が0.1ナノ秒未満になると,レーザー照射部において金属表面のアブレーションは起こるが,熱はほとんど発生しない。このため,凹部周縁において熱加工による凸部の形成が行われず,凹部と凸部をレーザー照射と同時に形成することができない。一方,ナノ秒パルスレーザーのパルス幅が1マイクロ秒を超えると,レーザー照射部における金属表面のアブレーションが生じないため,金属表面に深い凹部を形成することができなくなるため,やはり,凹部と凸部をレーザー照射と同時に形成することができない。本明細書において「ナノ秒パルスレーザー」とは,パルス幅が0.1ナノ秒以上1マイクロ秒以下のパルスレーザーの範囲では,アブレーション加工と熱加工とが同時に起こるため,凹部と凸部をレーザー照射と同時に形成させることができるのである。こうして形成された凹凸形状が濡れ性に大きく影響する。
さらに好ましいパルス幅の範囲は1ナノ秒以上100ナノ秒以下である。
濡れ性に大きく影響する凹凸の形状は,ナノ秒パルスレーザーの1ショットのエネルギーやピークパワーやフルエンスによって変化する。このため,1ショットのエネルギー,ピークパワー及びフルエンスの少なくとも一つを制御することにより,アブレーション加工と熱加工を同時に行う。これにより,ナノ秒パルスレーザーの照射箇所に凹部が形成されると同時に,該凹部の周縁に凸部が形成される。さらには,凹凸形状を,比較的大きな微細周期構造と,それよりも小さな微細周期構造とからなる階層状とすることができる。凹凸の形状は金属の材質や形状や寸法によっても変化するため,必要に応じ,金属の材質や形状や寸法も考慮して1ショットのエネルギーやピークパワーやフルエンスを制御する。
本発明の形態として,レーザー照射を間欠的に行うパーカッション加工法を用い,かつ2次元平面上の照射パターンを変化させることによって所望の3次元形状を得ることにより,金属表面の濡れ性を制御することができる。この方法として,レーザー照射箇所とレーザー照射される金属とを相対移動させつつパーカッション加工を行うことにより,金属表面に周期構造を形成させることができる。さらには,ナノ秒パルスレーザーの照射ピッチをマイクロメートルオーダー(すなわち1マイクロメートル以上100マイクロメートル以下)で制御しながらパーカッション加工法を併用することで,マイクロメートルオーダーよりも周期の短いピッチの,異なる2つの微細周期構造を同時に形成させることができる。
これらの方法により,金属の表面の均質な濡れ性をきめ細かく制御することが可能となる。
また,本発明の形態として,レーザー照射前に金属表面を清浄化することにより,レーザー照射後の金属表面を撥水性にすることができる。一方,レーザー照射前の金属表面に対して,薄い酸化被膜が生ずる程度の加熱処理(大気中150~200℃で1時間程度)(以下「アニーリング」という)をしておけば,レーザー照射後の金属表面を安定的に親水性とすることができる。こうして,本発明によれば,金属表面の撥水性から親水性に至る幅広い制御が可能となる。
本発明では,金属表面にナノ秒パルスレーザーを照射することにより,レーザー照射箇所において凹部が形成されるとともに,レーザー照射箇所の周縁では熱加工によって凸部が形成される。このため,金属表面に細かい凹凸が形成され,これにより金属表面の濡れ性を制御することができる。さらには凹凸形状を比較的大きな微細周期構造と,それよりも小さな微細周期構造とからなる階層状とすることができる。このため,金属表面を親水性にすることが可能となる。
金属の表面にナノ秒パルスレーザーを照射して表面加工を行う場合の模式断面図である。 凹凸が形成された金属の表面に水滴を載せた場合の模式断面図である。 金型鋼及び転写された工程紙の断面を示す模式図である。 測定結果から作成した条件1~4で作製した試料の断面形状及び3Dマッピング画像である。 測定結果から作成した条件5~8で作製した試料の断面形状及び3Dマッピング画像である。 測定結果から作成した条件9~12で作製した試料の断面形状及び3Dマッピング画像である。 測定結果から作成した条件13~16で作製した試料の断面形状及び3Dマッピング画像である。 ナノ秒パルスレーザーのピークパワーと接触角との関係を示すグラフである。 測定結果から作成した条件4で作製した試料の3Dマッピング画像(斜視図)である。 測定結果から作成した条件1~5で作製した試料の断面形状及び3Dマッピング画像である。 測定結果から作成した条件6~8で作製した試料の断面形状及び3Dマッピング画像である。 測定結果から作成した条件9~12で作製した試料及びレーザー加工をしていないブランクの断面形状及び3Dマッピング画像である。 実施例3におけるパーカッション加工による微細周期構造のレイアウトを示す図である。 実施例4における微細周期構造のレイアウトを示す図である。 実施例4におけるサンプル1~6の測定結果から作成した断面形状及び3Dマッピング画像である。
以下,本発明を具体化した実施例について説明する。ただし,本発明はこの実施例に限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず,当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
(本発明において濡れ性が制御可能となるメカニズム)
超短パルスレーザーによる金属表面の加工においては,単位面積あたりのエネルギー量(すなわちフルエンス)が極めて大きいため,図1(a)(b)に示すように,レーザー照射箇所において瞬時に金属1が昇華し,その部分のみに凹部2が形成されるが,熱は発生しないために熱加工はおこなわれず,凹部2の周縁において変化はない。
これに対して,ナノ秒パルスレーザーを金属表面に照射した場合は,フルエンスが超短パルスレーザーほどは大きくないため,アブレーション加工と熱加工とが同時に起こる。このため,図1(c)(d)に示すように,ナノ秒パルスレーザーが照射された箇所でアブレーション加工が起こり,凹部2が形成されるとともに,凹部2の周縁では熱加工が起こり凸部3が形成される。凹部2の深さや凸部3の高さはナノ秒パルスレーザーの1ショットのエネルギーやピークパワーやフルエンスによって適宜に制御することが可能である。
また,パーカッション加工法によりレーザー照射を同じ箇所で間欠的に何度も行うことによっても凹部2をより深くすることもできる。
こうして,ナノ秒パルスレーザーを照射することによって凹凸が形成された金属の表面に,図2に示すように,水滴4を載せた場合,水滴4は凸部3と接触し,その他の部分は凹部2に存在する空気と接触することとなり,いわゆるロータス効果によって撥水性を示すことが予測される。事実,金属表面を硫酸-過酸化水素水の混合溶液などで清浄化してからナノ秒パルスレーザーを照射すれば,撥水性の表面となる。
しかしながら,金属表面をアニーリングしてからナノ秒パルスレーザーを照射した場合には,金属表面は逆に親水性を示す結果となる。この原因は次のように推測される。すなわち,金属表面をアニーリングしてからナノ秒パルスレーザーを照射した場合,金属表面に微細な凹凸が形成される。このため,ナノ秒パルスレーザーの照射による孔の形成という比較的大きな構造との間で階層的な構造が形成され,微細な凹凸構造による毛細管現象によって金属表面に載せられた水滴が吸引されて,親水性を示すようになると考えられる。
以上のように,本発明では,金属表面の前処理を適宜選択したり,金属の材質や形状や寸法に応じてナノ秒パルスレーザーの1ショットのエネルギーやピークパワーやフルエンスを調節することにより,金属表面の濡れ性を制御することができる。
(ナノ秒パルスレーザーについて)
本発明において用いられるナノ秒パルスレーザーは,パルス幅が0.1ナノ秒以上1マイクロ秒以下のパルスレーザーである。パルス幅が0.1ナノ秒未満の場合,レーザー照射箇所における金属のアブレーションによって凹部が形成されるが,熱の発生が少なくなり,熱加工による凹部周縁での凸部の形成がされ難くなる。一方,パルス幅が1マイクロ秒を超えると,レーザー照射箇所における金属のアブレーションによる凹部の形成がされ難くなる。パルス幅のさらに好ましい範囲は,1ナノ秒以上100ナノ秒以下であ。
(パーカッション加工法について)
本発明の形態として,レーザー照射において間欠的にレーザー照射を行うパーカッション加工法を用いることができる。パーカッション加工法を採用することにより,金属表面により深い凹部を形成することができる。
また,レーザー照射を間欠的に行うパーカッション加工法を用い,かつ2次元平面上の照射パターンを変化させることによって所望の3次元形状を得ることもできる。2次元平面上の照射パターンを変化させるためには,ナノ秒パルスレーザーを照射箇所と照射される金属とを相対移動させることが必要となる。このための方法としては,照射される金属を移動させたり,ナノ秒パルスレーザーの照射位置を鏡によって移動させたりする方法や,金属及び超ナノ秒パルスレーザーの照射位置の双方を移動させたりする方法を採用することができる。
ナノ秒パルスレーザーの照射ピッチをマイクロメートルオーダーで制御しながらパーカッション加工法を併用することで,マイクロメートルピッチとナノメートルピッチの異なる周期の微細周期構造を同時に形成させることが可能となり,これにより,均質で,きめの細かい濡れ性の制御を行うことができる。
(金属の種類について)
本発明の金属表面の濡れ性制御方法で適用可能な金属としては,特に限定はされないが,鉄,アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,ステンレス等の金属全般の濡れ性を制御することができる。また,本明細書において金属とはシリコンなどの半導体も含む概念であり,これらの表面の濡れ性を制御することも可能である。
<実施例>
(実施例1)
実施例1では,金型鋼の表面に,ナノ秒パルスレーザーによるパーカッション加工を行うことにより,微細周期構造を形成し,表面の濡れ性を制御した。以下にその詳細を示す。
1)被加工金属
表面処理の対象となった金属は炭素鋼(表面粗さRa = 0.3 μm,日立金属株式会社製)であり,これを20mm×20mmの大きさに切り出した。そして,表面粗さRa=0.3,0.1,0.05及び0.05ミガキの4種類の研磨片を用意した。
2)前処理
上記の金属試料片を濃硫酸3に対し30%過酸化水素水1の容量比で混合したピラニア溶液に浸漬した後,引上げ,イオン交換水で洗浄し,乾燥させた。
3)ナノ秒パルスレーザー照射
上記の前処理を行った金属試料片について,同じ大きさの正方形となるように4分割した箇所を,表1に示す照射条件でパーカッション加工を行った。レーザー加工はナノ秒レーザー加工装置 (発振波長 532 nm,最大出力 10 W) を使用した(以下,他の実施例でも同様)。レーザー加工の光学系としては,ガルバノスキャナーとエキスパンダーとf-θレンズを組み合わせた走査型光学系を採用した。また,レーザー出力を制御するために減衰板を2個使用した。掃引方法としてはガルバノミラーを用いた。レーザースポット径はエキスパンダー8倍,レンズは焦点距離100mmのf-θレンズを用い,直径16μmとした。
照射条件の詳細を表1に示す。ここで,パルス周波数とはパルスの繰返し周波数のことをいい,パルス幅とはパルスの時間幅のことをいう。また,ピークパワーとは(1shotのエネルギー)/(パルス幅)の値をいい,フルエンスとは,単位面積あたりのエネルギー量をいう。また,被測定対象物表面におけるレーザーの径は16μmとし(以下,他の実施例においても同様である。),レーザー光の掃引スピードを変化させることでピッチを40μmとなるように制御した。また,パーカッション加工は1箇所当たりのレーザー照射のshot回数が80回となるように行った。
Figure 0007120576000001
-表面形状の測定-
ナノ秒パルスレーザー照射を行った各金属試料片について,形状測定及びうねり分析を行った。測定は3Dレーザー顕微鏡OLS4100(オリンパス株式会社製)を用い(以下,他の実施例でも同様),拡大倍率1080倍で測定した。ただし,ナノ秒パルスレーザーが照射された箇所は金属のアブレーションによって深い孔となっているため,測定のためのレーザー光が反射できないため乱反射等によってノイズが発生し,測定することができなかった。
このため,小型プレス機 H300-15 (アズワン株式会社製) を用いて転写法によって表面形状を測定した。すなわち,レーザー加工を行った金型鋼を2枚の工程紙(リンテックEV130TPG 40mm×40 mm)で下面がレーザー加工面となるように挟み,さらにこれを2枚の加熱した鋼板の間に挟み,温度150℃,圧力20MPaで90秒間プレスした。その後,工程紙が重ねられた金属試料片を取り出し,冷蔵庫で5分間冷却してから工程紙をゆっくりと剥がした。こうして金型の表面形状が転写された工程紙についての表面形状を3Dレーザー顕微鏡OLS4100(オリンパス株式会社製)を用い(以下,他の実施例でも同様),拡大倍率1080倍で測定した。
図3に金型鋼及び転写された工程紙の断面モデルを示す。図3において,h1=加工により形成された孔の深さ,h2=孔の周縁に形成された凸部の高さ,f1=凸部の直径,f2=レーザー照射されていない箇所の長さを示す。測定結果を表1に示す。また,測定結果から作成した断面形状及び3Dマッピング画像を図4~図7に示す。これらの図から,図3に示した転写された工程紙の断面モデルの形状は,測定結果から得られた工程紙の断面及び3Dマッピング画像をよく表わしている。また,レーザー照射によって開けられた孔は縦横に整列しておりピッチはおよそ40μmであった。
Figure 0007120576000002
表1,表2及び図4~図7から,フルエンスを高くするとh1(=加工により形成された孔の深さ)が深くなり,h2(=孔の周縁に形成された凸部の高さ)は高くなることが分かった。
(濡れ性の評価)
濡れ性の評価として,全自動接触角計DM-701(協和界面科学株式会社製)を用いて,平行接触角及び滑落角を測定した(以下,他の実施例でも同様)。測定条件については表3に示す。なお,測定に際しては,直前にピラニア溶液に浸漬した後,蒸留水で洗浄し,窒素ガスを吹き付けて乾燥させてから測定を行った。静的接触角は5回の測定の平均値を採用した。結果を表4及び図8に示す。
Figure 0007120576000003
Figure 0007120576000004
表4及び図8から,レーザー照射前においては小さかった静的接触角がレーザー照射後において大きくなることが分かった。また,レーザー照射のパルスエネルギーが大きいほど静的接触角が大きくなり,撥水性が増すことが分かった。以上の結果から,パルスエネルギーを制御することにより,金属表面の濡れ性を制御できることが分かった。パルスエネルギーはピークパワーと比例するため,ピークパワーを制御することにより,金属表面の濡れ性を制御することができる。図8の結果においても,ピークパワーが大きくなると静的接触角が大きくなり,撥水性が増す結果となっている。一方,表面粗さは静的接触角にそれほど影響しないことが分かる。
(実施例2)
実施例2では,金属試料片をナノ秒パルスレーザーによるパーカッション加工をピッチを替えて行うことにより,様々なピッチを有する微細周期構造を形成し,表面の濡れ性を制御した。以下にその詳細を示す。
1)被加工金属
表面処理の対象となった金属は,アニーリングしてから20mm×20mmの大きさに切り出した炭素鋼であり,表面粗さRa = 0.3のものを3枚用意した。
2)ナノ秒パルスレーザー照射
上記の金型鋼の金属試料片について,同じ大きさの正方形となるように4分割した箇所を,ナノ秒パルスレーザーによってパーカッション加工を行った。また,レーザー光の掃引スピードを変化させることでピッチを30~80μmとなるように様々に制御した。パーカッション加工は1箇所当たりのレーザー照射のshot回数が80回となるように行った。照射条件の詳細を表5に示す。
Figure 0007120576000005
-表面形状の測定-
ナノ秒パルスレーザー照射を行った各金属試料片について,形状測定及びうねり分析を行った。測定は3Dレーザー顕微鏡を用い,拡大倍率1080倍で測定した。形状測定は5箇所の平均値を採用した。結果を表6に示す。表6におけるピッチτ,凸の幅f1,凹の幅f2及び突起高さhの意味については,図3において示した通りである。こうして得られた測定値から求められた断面形状及び3Dマッピング画像を図10~12に示す。レーザーによって開けられた孔が整列して並んでいるのが分かる。ただし,孔部分はレーザー光の乱反射等によるノイズのために正確な形状は表現されていない。
Figure 0007120576000006
表5,表6及び図9~図12から,ピークパワーを高くするとh(=孔の周縁に形成された凸部の高さ)が高くなることが分かった。
-濡れ性の評価試験-
(濡れ性の評価)
濡れ性の評価として,実施例1の場合と同様にして,平行接触角及び滑落角を測定した。測定は5回の測定の平均値を採用した。測定条件を表7に示す。また,結果を表8に示す。
Figure 0007120576000007
Figure 0007120576000008
表8から,ナノ秒パルスレーザー照射前においては静的接触角が96.4°であったのが,ナノ秒パルスレーザー照射後においては28.4~43.6°となり,親水性が大幅に増すことが分かった。このことからも,ナノ秒パルスレーザー照射により親水性が増すことが分かった。
(実施例3)
1)被加工金属
表面処理の対象となった金属は20mm×20mmの大きさに切り出した炭素鋼であり,表面粗さRa = 0.285のものである。この金属試料片に対してアニーリングしてから,ナノ秒パルスレーザーによるパーカッション加工を様々なピッチで行うことにより様々な微細周期構造を形成し,表面の濡れ性を制御した。以下にその詳細を示す。
レーザー加工では10 mm角の範囲について微細周期構造の加工を行った。パーカッション加工による微細周期構造のレイアウト(レーザーのスポットが4列×4行の場合)を図13に示す。また,表9にレーザー加工の条件を示す。
Figure 0007120576000009
-表面形状の測定-
ナノ秒パルスレーザー照射を行った各金属試料片の形状測定及びうねり分析を3Dレーザー顕微鏡を用い,拡大倍率432倍で測定した。その結果、パーカッション加工による、規則正しい微細周期構造のレイアウトが形成されていることが分かった(表10参照)。
Figure 0007120576000010
(濡れ性の評価)
濡れ性の評価として,実施例3と同様にして静的接触角を測定した。測定条件を表11に示す。
Figure 0007120576000011
その結果,全てのサンプルにおいて加工前の静的接触角が98.5°であったのに対して,レーザー加工後には0°となり,超親水性の表面になることが分かった。
(実施例4)
1)被加工金属
表面処理の対象となった金属は20mm×20mmの大きさに切り出した炭素鋼であり,表面粗さRa = 0.302のものである。この金属試料片に対してアニーリングをしてから,後述するナノ秒パルスレーザーによるハッチング処理を行った。その後,ハッチング処理を行った周縁にパーカッション加工を様々なピッチで行うことにより,様々な微細周期構造を形成し,表面の濡れ性を制御した。以下にその詳細を示す。
上記の金型鋼の金属試料片の表面に,ナノ秒パルスレーザーによるパーカッション加工を5mm四方の正方形に行った。表12にレーザー加工の条件を示す。レーザー加工のレイアウトは,図14に示す網目で示した四角の領域にハッチング加工(すなわち,特にピッチを決めずに間欠的なパーカッション加工を行いながら連続的にレーザーをスキャンする加工)を行った後,その上から表12に示す様々なピッチでパーカッション加工を施した。
Figure 0007120576000012
-表面形状の測定-
ナノ秒パルスレーザー照射を行った各金属試料片の形状測定を、3Dレーザー顕微鏡を用い,拡大倍率432倍で測定した。結果を表13に示す。また,こうして得られた測定値から求められた断面形状及び3Dマッピング画像を図15に示す。図15からパーカッション加工による規則正しい微細周期構造のレイアウトが観察された。ただし,図15における凹部については,レーザー光の乱反射等によるノイズのために正確な形状は表現されていない。
Figure 0007120576000013
(濡れ性の評価)
実施例4の各金属試料片の濡れ性の評価として,実施例3と同様にして静的接触角を測定した。測定条件を表14に示す。
Figure 0007120576000014
その結果,全てのサンプルにおいて加工前の静的接触角が96.7°であったのに対して,レーザー加工後には0°となり,超親水性となること分かった。

Claims (3)

  1. 金属表面にナノ秒パルスレーザーを照射して表面加工を行う工程において、金属の材質や形状や寸法に応じて1ショットのエネルギー、ピークパワー及びフルエンスの少なくとも一つを制御することによりアブレーション加工と熱加工を同時に行い、レーザー照射箇所に凹部を形成すると同時に該凹部の周縁に凸部を形成させ、
    レーザー照射を間欠的に行うパーカッション加工法を用い、かつ2次元平面上の照射パターンを変化させることによって所望の3次元形状を得る金属表面の濡れ性制御方法であって、
    前記ナノ秒パルスレーザーの照射ピッチをマイクロメートルオーダーで制御しながら前記パーカッション加工法を併用することで、マイクロメートルオーダーのピッチと、形成された1つのマイクロメートルオーダーのピッチよりも周期の短いピッチの、異なる2つの周期の微細周期構造を同時に形成させることを特徴とする金属表面の濡れ性制御方法。
  2. 金属表面にナノ秒パルスレーザーを照射して表面加工を行う工程において、金属の材質や形状や寸法に応じて1ショットのエネルギー、ピークパワー及びフルエンスの少なくとも一つを制御することによりアブレーション加工と熱加工を同時に行い、レーザー照射箇所に凹部を形成すると同時に該凹部の周縁に凸部を形成させ、
    前記レーザー照射箇所とレーザー照射される金属とを相対移動させつつパーカッション加工法を行い、金属表面に周期構造を形成させる金属表面の濡れ性制御方法であって、
    前記ナノ秒パルスレーザーの照射ピッチをマイクロメートルオーダーで制御しながら前記パーカッション加工法を併用することで、マイクロメートルオーダーのピッチと、形成された1つのマイクロメートルオーダーのピッチよりも周期の短いピッチの、異なる2つの周期の微細周期構造を同時に形成させることを特徴とする金属表面の濡れ性制御方法。
  3. 前記ナノ秒パルスレーザーのパルス幅は、1ナノ秒以上100ナノ秒以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属表面の濡れ性制御方法。
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