[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の一側面に係る光源装置は、基板と、上記基板に搭載されているレーザダイオードと、上記基板に接着剤によって固定されており、上記レーザダイオードからのレーザ光をコリメートするレンズと、上記基板上において上記レーザ光の光路とは異なる位置に配置されており、上記レンズの温度を均一化するための温度均一化部材と、を備え、上記温度均一化部材は、上記レンズの熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有し且つ上記基板と熱的に結合している。
この場合、温度均一化部材の温度は、レンズより基板の温度に近く、例えば実質的に基板と同じ温度になる。そのため、温度均一化部材によって、例えばレンズへの外部温度の影響を低減できるので、レンズの温度を均一化できる。
上記基板は、温度を調節する温調素子上に配置されていてもよい。この場合、基板の温度を所望の温度に調整し易い。
一実施形態に係る光源装置は、上記基板が搭載される底板と、上記底板に固定され、上記基板、上記レーザダイオード、上記レンズ及び上記温度均一化部材を覆うカバーと、を有してもよい。
このように、基板、レーザダイオード、レンズ及び温度均一化部材が、カバーで覆われている場合、レンズにおいて基板と反対側はカバーに近い。そのため、レンズにおいて基板と反対側は、カバーを介して外部温度の影響を受けやすく、レンズの温度が不均一になりやすい。よって、温度均一化部材によって、レンズの温度が均一化できる上記光源装置の構成が有効である。
上記温度均一化部材の上記レンズと対向する第1側面と、上記レンズにおける上記第1側面と対向する第2側面とは平行であり、上記第1側面と上記第2側面との間の距離は、上記基板の板厚方向において上記レンズの上記基板から最も遠い位置と、上記カバーの上記基板側の面との最短距離以下であってもよい。温度均一化部材の上記第1側面とレンズの上記第2側面との最短距離が上記関係を満たすことによって、レンズの温度を、より均一化できる。
一実施形態に係る光源装置は、2つの温度均一化部材を含み、2つの上記温度均一化部材は、上記レンズの光軸方向からみた場合に上記レンズの両側に位置してもよい。この場合、2つの温度均一化部材で、レンズが挟まれる。よって、レンズの温度を、より均一化できる。
上記温度均一化部材は、一対の側壁と、上記一対の側壁の上記基板と反対側の端部を連結する連結壁とを有し、上記レンズは、上記温度均一化部材が有する上記一対の側壁及び上記連結壁によって囲まれていてもよい。この場合、レンズにおいて基板と反対側も温度均一化部材で覆われるので、レンズが外部温度の影響を受けにくい。その結果、レンズの温度を、より均一化できる。
一実施形態に係る光源装置は、複数の上記レーザダイオードと、複数の上記レーザダイオードから出力された複数の上記レーザ光をそれぞれコリメートする複数の上記レンズと、 複数の上記レンズでコリメートされた複数の上記レーザ光を合波する合波光学系と、を備え、複数の上記レンズのうち少なくとも2つのレンズは、上記少なくとも2つのレンズの光軸方向が平行になるように一方向に沿って配置されており、上記少なくとも2つのレンズは、上記温度均一化部材が有する上記一対の側壁及び上記連結壁によって囲まれていてもよい。
この場合、複数のレーザダイオードから出力されたレーザ光を含む合波光を出力可能である。更に、少なくとも2つのレンズに対して一つの温度均一化部材が配置されるので、複数のレンズそれぞれに温度均一化部材を配置する場合より、温度均一化部材の数を低減できる。その結果、光源装置の低コスト化を図れる。
複数の上記レーザダイオードの中心波長は互いに50nm以上異なっていてもよい。この場合、中心波長の異なる複数のレーザ光の合波光を出力できる。光源装置が有する複数のレンズに温度不均一性が生じると、そのレンズの焦点距離が変動する場合がある。その場合、光源装置から出力された合波光を、例えばレンズなどで集光する際、合波光が有しており、中心波長の異なる複数のレーザ光間で集光位置がずれるおそれがある。これに対して、温度均一化部材によって、レンズの温度が均一化されていれば、上記集光位置のズレを防止できる。
一実施形態に係る光源装置は、複数の上記レーザダイオードと、複数の上記レーザダイオードから出力された複数の上記レーザ光をそれぞれコリメートする複数の上記レンズと、 複数の上記レンズでコリメートされた複数の上記レーザ光を合波する合波光学系と、を備え、複数の上記レーザダイオードの中心波長は互いに50nm以上異なっていてもよい。
この場合、複数のレーザダイオードから出力された中心波長の異なるレーザ光を含む合波光を出力可能である。光源装置が有する複数のレンズに温度不均一性が生じると、そのレンズの焦点距離が変動する場合がある。その場合、光源装置から出力された合波光を、例えばレンズなどで集光する際、合波光が有しており、中心波長の異なる複数のレーザ光間で集光位置がずれるおそれがある。これに対して、温度均一化部材によって、レンズの温度が均一化されていれば、上記集光位置のズレを防止できる。
上記レンズは、樹脂又はガラスの一体成形品であってもよい。レンズが、樹脂又はガラスの一体成形品である場合、熱伝導率の影響で、レンズの温度が不均一になりやすい。よって、温度均一化部材によって、レンズの温度を均一化できる上記光源装置の構成が有効である。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。説明中、「上」、「下」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1及び図2に示したように、光源装置10は、パッケージ12、基板14、3つのレーザダイオード(LD)16、3つのレンズ18及び合波光学系20を備える。本実施形態において、光源装置10は光モジュールである。光源装置10は、3つのLD16から出射される3本のレーザ光を合波光学系20で合波し、得られた合波光Lをパッケージ12から出力する。光源装置10は、例えば、自動車に搭載されるヘッドアップディスプレイ用の光源装置である。
パッケージ12は、底板22とカバー24とを有する。カバー24は底板22に接合されている。底板22とカバー24によって、基板14、LD16などを収容する空間が形成されている。
底板22は、基板14を支持するための板部材である。底板22は、例えばステムである。底板22の材料は例えば金属である。本実施形態において、底板22の材料は、Ni/Auめっきを施した鉄合金である。以下、説明の便宜のため、底板22の板厚方向をZ方向と称し、Z方向に直交する2つの方向をX方向及びY方向と称す。X方向及びY方向は直交している。
本実施形態では、基板14は、温度を調節する温調素子であるTEC(Thermo―Electric Cooler)26を介して底板22上に搭載されている。TEC26は、底板22に接合されている。TEC26は、例えば銀(Ag)ペーストで底板22に接合される。底板22には、パッケージ12内のLD16、TEC26等への電力供給、制御信号供給などの電気的な配線のための複数のリードピンが取り付けられるが、図示を省略している。同様に、LD16、TEC26等の電気配線の図示も省略している。
カバー24は、側壁部28と天板30とを有する。側壁部28は、枠状を有する。側壁部28の平面視形状(底板22の板厚方向からみた場合の形状)の例は、正方形又は矩形といった四角形、四角形以外の多角形及び円形を含む。側壁部28には、合波光学系20から出力される合波光Lを通す窓部32が設けられている。窓部32は、合波光Lが透過可能な窓部材32aを有し、窓部材32aは側壁部28に形成された開口28aに嵌められている。カバー24は、例えば溶接によって底板22に接合されている。
次に、図2及び図3を利用して、基板14と、基板14上の構成を説明する。
基板14は、3つのLD16、3つのレンズ18及び合波光学系20を支持する板部材である。基板14は、例えば、AgペーストによってTEC26に接合されている。基板14は、導電性材料からなる導電性基板であってもよいし、絶縁性材料からなる絶縁基板であってもよい。基板14の平面視形状(すなわち、底板22の厚さ方向からみた場合の形状)は、矩形又は正方形といった四角形形状である。基板14の平面視形状が矩形である場合、基板14の短辺の長さは例えば7mm程度であり、長辺の長さは例えば12mmである。基板14の平面視形状が正方形である場合、基板14の一辺の長さは、例えば、10mm程度である。基板14の材料の例は金属である。本実施形態において、基板14の材料は銅である。
3つのLD16は、可視域に波長を有するレーザ光を出射する。LD16はLDチップであり得る。3つのLD16のそれぞれが出力するレーザ光の中心波長は、互いに、50nm以上異なる。
3つのLD16を区別して説明する場合には、3つのLD16をLD16A、LD16B及びLD16Cとも称する。
例えば、LD16Aからのレーザ光の中心波長は、波長範囲610nm~670nm(赤色の波長領域)の何れかであり、LD16Bからのレーザ光の中心波長は、波長範囲500nm~550nm(緑色の波長領域)の何れかであり、LD16Cからのレーザ光の中心波長は、波長範囲435nm~465nm(青色の波長領域)の何れかの波長である。LD16A,16B,16Cと、上記3つの中心波長(又は3つの波長領域)との対応関係は、例示した関係に限定されない。
本実施形態において、3つのLD16はX方向に並列に配置され、3つのLD16の光軸(LD16のレーザ光の進行方向)はY方向に沿っている。3つのLD16の光軸は、互いに実質的に平行である。
3つのLD16のそれぞれは、対応する支持台34を介して基板14に搭載されている。本実施形態では、LD16と支持台34との間には中間板36が配置されている。支持台34の材料は、例えば基板14の材料と同じである。中間板36の材料の例は、LD16の半導体材料と熱膨張係数が近い材料である。中間板36の具体的な材料の例は、AlN、SiC、Si及びダイヤモンドを含む。支持台34の材料は、中間板36の材料と同じでもよいし、中間板36の材料が支持台34の材料と同じでもよい。
支持台34は、例えばAgペースト(導電性接着剤)によって基板14に接合されている。支持台34の材料が基板14と同じ材料である場合、支持台34は、基板14の一部であってもよい。中間板36も例えばAgペースト(導電性接着剤)によって基板14に接合されている。LD16は、AuSn半田といった半田又はAgペーストによって中間板36に接合されている。
本実施形態では、基板14の表面を基準とした場合における、3つのLD16のレーザ光出射点の高さは互いに等しくなるように支持台34及び中間板36の高さが設定されている。図2では、3つの支持台34を有する実施形態を例示している。しかしながら、3つのLD16が1つの支持台34(図2において、3つの支持台34が連結した支持台)に搭載されていてもよい。
3つのレンズ18は、3つのLD16に一対一に対応して配置されており、各レンズ18は、対応するLD16からのレーザ光をコリメート(平行化)するコリメートレンズである。レンズ18は、対応するLD16の光出射端面と光学的に結合されている。レンズ18の焦点距離の例は、5mm未満である。
レンズ18は、レーザ光が通過する位置にレーザ光をコリメートするレンズ機能を有するレンズ機能領域18aと、その周囲の保持領域18bとを有する。レンズ18は、コリメート機能を有すれば、その形状は限定されない。本実施形態において、レンズ18の外形は直方体である。レンズ18の外形は立方体でもよい。レンズ18は、レンズ機能領域18aと保持領域18bとが樹脂又はガラスによって一体成形された成形品である。レンズ18の材料が樹脂である場合、その樹脂の例は、シクロオレフィンポリマーである。レンズ18は、接着剤38によって基板14に直接固定されている。接着剤38の例は、樹脂硬化型接着剤である。樹脂硬化型接着剤に使用される樹脂の例は、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、及び、紫外線硬化と熱硬化とを併用する樹脂を含む。
3つのレンズ18それぞれの光軸と対応するLD16の光軸Cとは、互いに実質的に一致するように調整されている。よって、レンズ18の光軸も光軸Cと称する場合もある。3つのレンズ18はX方向に並列に配置されており、3つのレンズ18それぞれの光軸Cは互いに平行である。
3つのレンズ18を区別して説明する場合、LD16Aに対応するレンズ18をレンズ18Aと称し、LD16Bに対応するレンズ18をレンズ18Bと称し、LD16Cに対応するレンズ18をレンズ18Cと称する。
合波光学系20は、3つの波長選択性フィルタ40を有する。波長選択性フィルタ40は、例えばガラス基板上に形成された多層膜フィルタである。3つの波長選択性フィルタ40は、3つのレンズ18と一対一に対応している。よって、3つの波長選択性フィルタ40は、3つのLD16とも一対一に対応している。3つの波長選択性フィルタ40それぞれは、対応するLD16(及び対応するレンズ18)の光軸C上に配置されている。
3つの波長選択性フィルタ40を区別して説明する場合、LD16A及びレンズ18Aに対応する波長選択性フィルタ40を波長選択性フィルタ40Aと称し、LD16B及びレンズ18Bに対応する波長選択性フィルタ40を波長選択性フィルタ40Bと称し、LD16C及びレンズ18Cに対応する波長選択性フィルタ40を波長選択性フィルタ40Cと称する。
波長選択性フィルタ40Aは、レンズ18Aによりコリメートされたレーザ光を、波長選択性フィルタ40Bに向けて反射する。波長選択性フィルタ40Bは、LD16Aが出力するレーザ光を透過するとともに、レンズ18Bによりコリメートされたレーザ光を波長選択性フィルタ40Cに向けて反射する。波長選択性フィルタ40Cは、LD16A及びLD16Bが出力するレーザ光を透過するとともに、レンズ18Cによりコリメートされたレーザ光を窓部32に向けて反射する。よって、波長選択性フィルタ40A,40B,40Cを有する合波光学系20によって、LD16A,LD16B及びLD16Cから出力される3つのレーザ光の合波光Lが窓部32から出力される。
3つのレンズ18並びに3つの波長選択性フィルタ40は、合波光Lに含まれる各LD16からのレーザ光の光軸が一致するように、光軸調整された状態で基板14上に配置されている。
本実施形態では、基板14上に、サーミスタ42が配置されている。サーミスタ42は例えばAgペーストで基板14に接合される。
光源装置10は、各レンズ18の温度を均一化する(特に、Z方向の温度を均一化する)ために、複数の温度均一化部材44を有する。本実施形態では、図2及び図3に示したように、3つのレンズ18それぞれに対して2つの温度均一化部材44が配置された実施形態を説明する。3つのレンズ18それぞれに対する2つの温度均一化部材44の構成及び配置状態は同じであることから、一つのレンズ18と、それに対応する2つの温度均一化部材44を説明する。
温度均一化部材44は、レンズ18の熱伝導率より大きな熱伝導率を有する板部材である。本実施形態において、温度均一化部材44は平板である。一実施形態において、温度均一化部材44の熱伝導率は、レンズ18の熱伝導率の10倍以上が好ましく、50倍以上がより好ましい。一実施形態において、温度均一化部材44の熱伝導率は、基板14の熱伝導率の50%以上であることが好ましい。一実施形態において、基板14の温度を十分伝達可能とするため、温度均一化部材44の熱伝導率は、50W/(m・K)以上であることが好ましく、100W/(m・K)以上がより好ましい。温度均一化部材44の材料の例は銅である。温度均一化部材44の材料が銅である場合、温度均一化部材44の例は銅板である。X方向からみた場合、温度均一化部材44の平面視形状は長方形である。X方向からみた場合、温度均一化部材44の大きさは、例えばレンズ18の大きさとほぼ同じか、レンズ18の大きさ以上であり得る。
2つの温度均一化部材44は、レンズ18の光軸方向からみて、レンズ18の両側に配置されている。2つの温度均一化部材44はそれぞれ独立した部材である。2つの温度均一化部材44それぞれとレンズ18の間の距離dは、レンズ18の温度を均一化可能な距離であればよい。本実施形態では、レンズ18は直方体であり、温度均一化部材44は平板であるため、レンズ18の側面(第2側面)18cと、その側面18cに対向する温度均一化部材44の側面(第1側面)44aとは平行である。よって、距離dは、レンズ18の側面18cと、その側面18cに対向する温度均一化部材44の側面44aとの間の距離である。これは、レンズ18が立方体の場合も同様である。基板14の板厚方向(Z方向に相当)において、基板14を基準としてレンズ18の基板14から最も遠い位置(図3においてレンズ18の上面)と、カバー24の基板14側の面24a(図3において天板30の内面30a)との間の最短距離をDとした場合、レンズ18と温度均一化部材44の間の距離dは、例えばD以下である。レンズ18に対する天板30からの温度の影響より温度均一化部材44からの影響をより大きくするために、距離dは例えば0.4×D以下である。
温度均一化部材44は、基板14に熱的に結合するように、基板14に固定されている。例えば温度均一化部材44を基板14に熱的に結合可能な接着剤46によって、温度均一化部材44は、基板14に固定されている。接着剤46の例は、Agペースト、半田を含む。
光源装置10は、例えば次のように製造され得る。まず、3つのLD16(LD16A、LD16B及びLD16C)を基板14の所定位置に固定した後、TEC26を介して基板14を底板22に搭載する。次に、合波光学系20から出力される3つのLD16からのレーザ光の光軸が一致するように、3つのレンズ18、合波光学系20(3つの波長選択性フィルタ)が光軸調整された状態で、それらを基板14上に搭載する。
上記光軸調整は、例えば次のようにして実施され得る。
TEC26に基板14を搭載する前に基板14に固定されたLD16A、LD16B及びLD16Cからレーザ光を出力し、レンズ18A、レンズ18B及びレンズ18Cによって各レーザ光がコリメート光となるように、レンズ18A、レンズ18B及びレンズ18Cの位置調整した後、それらを固定する。
その後、LD16Aから出力され且つレンズ18Aでコリメートされたレーザ光が、合波光学系20が有する波長選択性フィルタ40Aによって、所望の方向(本実施形態では窓部32の方向或いはX方向)に反射されるように、波長選択性フィルタ40Aの位置を調整した後、固定する。波長選択性フィルタ40Aで反射されたレーザ光を基準にして、当該レーザ光の光軸に、LD16Bから出力され且つレンズ18Bでコリメートされたレーザ光の光軸が一致するように、波長選択性フィルタ40Bの位置を調整し、固定する。同様に、波長選択性フィルタ40Aで反射されたレーザ光を基準にして、当該レーザ光の光軸に、LD16Cから出力され且つレンズ18Cでコリメートされたレーザ光の光軸が一致するように、波長選択性フィルタ40Cの位置を調整し、固定する。
このように光軸調整を行うことによって、LD16A、LD16B及びLD16Cからのレーザ光の光軸が一致した合波光Lが得られるように、基板14上に、3つのレンズ18及び合波光学系20が搭載され得る。
次に、温度均一化部材44を基板14に固定した後、カバー24を底板22に接合することで、光源装置10が得られる。光源装置10において必要な配線は、製造過程において適宜実施すればよい。
光源装置10では、温度均一化部材44の代わりに、図4に示した温度均一化部材48を用いてもよい。温度均一化部材48の材料の例は、温度均一化部材44の場合と同様である。温度均一化部材48は、一対の側壁48a,48bと、側壁48a,48bの基板14と反対側の端部を連結する天壁(連結壁)48cと、を有する。温度均一化部材48は、レンズ18を、一対の側壁48a,48b及び天壁48cで囲むように、配置されている。温度均一化部材48は、一対の側壁48a,48bが接着剤46で基板14に接合されることによって、基板14に固定され得る。
温度均一化部材48は、例えば、レンズ18の両側に配置された温度均一化部材44を、天壁48cに相当する温度均一化部材で連結した部材に相当する。この場合、レンズ18の両側に配置された温度均一化部材44は、上記一対の側壁48a,48bに対応する。一対の側壁48a,48bとレンズ18との間の距離は、例えば、レンズ18の両側に配置された温度均一化部材44とレンズ18との距離dと同様とし得る。レンズ18と天壁48cとの間は隙間があってもよいし、無くてもよい。
光源装置10では、3つのLD16のそれぞれから出力されたレーザ光は、対応するレンズ18でコリメートされる。3つのレンズ18でコリメートされたレーザ光は、合波光学系20によって合波される。その結果、カバー24の窓部32から3つのレンズ18でコリメートされたレーザ光の合波光Lが出力される。
基板14は、TEC26に搭載されているので、TEC26によって基板14の温度が調整され得る。例えば、サーミスタ42が基板14に搭載されている場合、サーミスタ42の検出結果に応じて、TEC26によって基板14の温度を調整可能である。通常、基板14は、LD16が一定の温度を維持するように調整され得る。それによって、LD16から安定して所望の中心波長を有するレーザ光を出力可能である。
次に、温度均一化部材44の作用効果を、温度均一化部材44を備えない場合と比較して説明する。
温度均一化部材44が基板14上に配置されていない場合、レンズ18の温度は不均一になる。特にZ方向において温度が不均一になり易い。これは、レンズ18の基板14側は基板14の温度に近い一方、レンズ18の上側はカバー24に近いため、カバー24を介して外部温度の影響を受けやすいこと、及び、レンズ18の熱伝導率の影響で、基板14の温度がレンズ18の上側まで伝搬しにくいことに起因すると考えられる。カバー24の外部の温度環境の変化に応じてレンズ18の温度が不均一になると、それに応じて例えばレンズ18の屈折率が変化する。レンズ18の屈折率が変化すると、レンズ18の焦点距離が変化する。このようにレンズ18の焦点距離が変わると、レーザ光が適切にコリメートされない。その結果、例えば、光源装置から出力される合波光Lをレンズで集光した際に、集光位置が所望の位置からズレやすい。特に、LD16A、LD16B及びLD16Cから出力されるレーザ光の中心波長が50nm以上離れていると、LD16A、LD16B及びLD16Cからのレーザ光の集光位置が異なり易い。よって、例えば合波光Lを利用して画像を表示する場合、画像品質が低下する。
これに対して、光源装置10は、各レンズ18に対して配置された温度均一化部材44を備える。温度均一化部材44の熱伝導率は、レンズ18の熱伝導率より大きく、温度均一化部材44は、基板14に熱的に結合している。したがって、温度均一化部材44の温度は全体的に基板14と実質的に同じ温度であるか、基板14の温度に近い温度である。そのため、温度均一化部材44が配置されていない場合に比べて、レンズ18の周囲温度は、基板14と同じ温度(又は基板14の温度に近い温度)環境である。その結果、光源装置10の外部温度が変化しても、レンズ18の温度を均一化できる。特に、レンズ18の上部(天板30側)も、基板14の温度とほぼ同じか近い温度になる。
そのため、外部温度が変化しても、レンズ18における上記屈折率変化を抑制でき、結果として、カバー24の外部温度の変化によらず、レーザ光を正確にコリメートできる。このように、光源装置10では、外部環境の温度変化の影響が抑制されるので、安定した信頼性を実現可能である。
レンズ18の温度が均一化されていることから、3つのLD16から出力されるレーザ光の中心波長が互いに50nm以上離れている場合において、合波光Lを更にレンズで集光しても集光位置が所望の位置からズレにくい。その結果、例えば合波光Lを利用して画像を表示する場合、高い画像品質を維持できる。
レンズ18がカバー24内に収容されている場合、レンズ18において、基板14側は基板14の温度の影響を受ける一方、基板14と反対側はカバー24を介して外部温度の影響を受け易い。その結果、レンズ18の不均一性が生じやすい。しかしながら、温度均一化部材44を備えることで、レンズ18の温度の均一化を図れる。
レンズ18の両側に温度均一化部材44が配置されている場合、レンズ18の両側は、基板14と実質的に同じ温度又は基板14の温度に近い温度である。そのため、レンズ18の温度を、より均一化できる。
図4に示したように、レンズ18を温度均一化部材48で囲った場合には、レンズ18の上側も基板14と同じ温度(又は近い温度)になるとともに、カバー24を介して外部温度の影響を更に受けにくい。その結果、レンズ18の温度を、より均一化できる。
温度均一化部材44又は温度均一化部材48によって、レンズ18の温度を均一化できる点をシミュレーションによって検証した。シミュレーション結果を説明する。以下のシミュレーションでは、光源装置10が有する要素に対応する要素には、光源装置10の場合と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
[シミュレーションA]
シミュレーションAでは、図5に示した光源装置をシミュレーション用のモデルMとして採用した。図5では、カバー24内部の構成を示すため、カバー24の外形を破線で示している。図5に示したモデルMの構成は、図1~図3に例示した光源装置10の構成と同じである。モデルMでは、レンズ18は直方体の部材とした。底板11とカバー24とで形成されるパッケージ12内の内部ガスは空気とした。
レンズ18の横幅(X方向の長さ)を1.6mmとし、高さ(Z方向の長さ)を3.2mmとし、奥行き(Y方向の長さ)を1.4mmとした。レンズ18の材料は樹脂を想定し、レンズ18の熱伝導率を1W/(m・K)とした。レンズ18の上面とカバー24との間の距離Dを、1.0mmとした。
レンズ18を基板14に固定するための接着剤38で形成される接着剤層の厚さ(Z方向の長さ)を、50μmとし、接着剤層の横幅(X方向の長さ)を0.8mmとし、奥行き(Y方向の長さ)を0.6mmとした。上記接着剤38の熱伝導率を0.2W/(m・K)とした。
温度均一化部材44は、横幅が0.4mmであり、高さ及び奥行きの長さがレンズ18の場合と同じ平板とした。温度均一化部材44の材料は銅を想定し、熱伝導率を398W/(m・K)とした。レンズ18の両側に位置する温度均一化部材44とレンズ18との間の距離dを、0.2mmとした。
温度均一化部材44を基板14に固定するための接着剤で形成される接着剤層の厚さ(Z方向の長さ)を、50μmとし、接着剤層の横幅(X方向の長さ)を0.4mmとし、奥行き(Y方向の長さ)を1.4mmとした。上記接着剤38の熱伝導率を23W/(m・K)とした。
シミュレーションには、有限要素法を用いた。シミュレーションAでは、3つのLD18からレーザ光を出力した状態で、カバー24の温度を-40℃から90℃まで10℃間隔で上昇させながら、サーミスタ42の温度が40℃になるように、TEC26で温度調整をする場合を仮定した。3つのLD18の合計発熱量が1Wであると仮定した。カバー24の温度をー40℃、90℃及びそれらの間の上記10℃間隔の温度を測定温度とし、測定温度において、サーミスタ42の温度が40℃になった際のレンズ18Bの下部、中央及び上部での温度を、各測定温度でのレンズ18の温度とした。
レンズ18Bの「下部」の温度は、レンズ18Bの中心軸上においてレンズ18Bの底面(基板14に臨む面)の位置での温度である。レンズ18Bの「中央」の温度は、レンズ18Bの中心軸上においてレンズ18Bの底面と上面との真ん中の位置での温度である。レンズ18Bの「上部」の温度は、レンズ18Bの中心軸上においてレンズ18Bの上面(カバー24に臨む面)の位置での温度である。
図6は、シミュレーションAのシミュレーション結果を示すグラフである。図6の横軸はカバー温度(℃)を示し、縦軸は、レンズ温度(℃)を示している。図6では、各測定温度における上記レンズ18Bの下部、中央及び上部の温度をプロットしている。以下の説明において、図6に示した上記レンズ18Bの下部、中央及び上部のそれぞれでのカバー温度に対するレンズ温度の変化を温度依存係数と称する。温度依存係数は、図6に示したフィッティング直線の傾きに相当する。
[シミュレーションB]
シミュレーションBでは、図5に示したモデルMにおいて、温度均一化部材44を、図4に示した温度均一化部材48に変更した点以外は、シミュレーションAと同様の条件でシミュレーションを行った。温度均一化部材48の材料は銅であり、熱伝導率を398W/(m・K)とした。温度均一化部材48が有する一対の側壁48a,48bの配置及び基板14への固定状態は、モデルMで使用した、各レンズ18に対応する一対の温度均一化部材44の配置及び固定状態と同じである。温度均一化部材48の天壁48cの厚さを、0.4mmとし、レンズ18の上面と天壁48cとの距離を0.2mmとした。
図7は、シミュレーションBのシミュレーション結果を示すグラフである。図7の横軸はカバー温度(℃)を示し、縦軸は、レンズ温度(℃)を示している。図7では、各測定温度における上記レンズ18Bの下部、中央及び上部の温度をプロットしている。
[シミュレーションC]
シミュレーションCでは、図8に示したように、カバー24内側の構成において、モデルMから温度均一化部材44を削除した点以外は、シミュレーションAと同様の条件でシミュレーションを行った。シミュレーションCは、温度均一化部材を用いない場合のシミュレーションであることから、比較例に相当する。
図9は、シミュレーションCのシミュレーション結果を示すグラフである。図9の横軸はカバー温度(℃)を示し、縦軸はレンズ温度(℃)を示している。図9では、各測定温度における上記レンズ18Bの下部、中央及び上部の温度をプロットしている。
図9に示されているように、温度均一化部材を有しないモデルを使用したシミュレーションCでも、レンズ18の下部は、カバー24の温度が40℃から離れてもサーミスタ42の温度である40℃に近い温度を実現できる。一方、レンズ18の中央及び上部では、カバー24の温度が40℃から離れるにつれて、レンズ18の温度と40℃との差が大きくなる。この傾向は、レンズ18の上部でより顕著である。
これに対して、図6及び図7に示したように、温度均一化部材44,48を設けたシミュレーションA,Bでは、カバー24の温度が40℃から離れても、レンズ18の中央及び上部におけるレンズ18の温度と40℃との差は、シミュレーションCの場合より小さい。換言すれば、レンズ18の温度が均一化されている。図6及び図7を比較すれば、温度均一化部材48でレンズ18を囲った場合に、レンズ18の温度が更に均一化されていることがわかる。
レンズ18と温度均一化部材44との間の距離dが、レンズ18とカバー24との間の距離D以下(又は距離D未満)である場合、レンズ18の温度を、より均一化可能である。この点を検証したシミュレーションDを説明する。
[シミュレーションD]
シミュレーションDでは、シミュレーションAで使用したモデルMにおいて、温度均一化部材44とレンズ18との間の距離dを0mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、1.0mm、2mmと変更した場合それぞれに対してシミュレーションAと同様の条件でシミュレーションを行った。各距離dに対するシミュレーション結果に基づいて、シミュレーションAの場合と同様に、レンズ18Bの上部の温度依存係数を算出した。距離dが0mmの場合は、図10に示したように、各レンズ18の両側面に温度均一化部材44が接した状態でのシミュレーションである。距離dが0.2mmの場合は、シミュレーションAのモデルMと同じであることから、シミュレーションAの結果を使用した。距離dが2mmの場合は、図11に示したように、レンズ18A及びレンズ18Cにおいてレンズ18Bに臨む側面に接した温度均一化部材44を、レンズ18Bに対する一対の温度均一化部材44としてシミュレーションを行った。
図12は、シミュレーションDの結果を示す図面である。図12の横軸は距離d[mm]を示しており、縦軸は規格化温度係数を示している。規格化温度依存係数は、シミュレーションCの場合、すなわち、温度均一化部材を有しない場合のシミュレーションでのレンズ18Bの上部での温度依存係数で、シミュレーションDで得られた温度依存係数を規格化した場合の温度依存係数である。
シミュレーションDでは、カバー24とレンズ18の上部との距離Dは1.0mmであることから、図12に示した結果より、距離dが距離D以下である場合、規格化温度依存性がより小さくなり易いことがわかる。よって、距離dは、距離D以下(或いは距離D未満)であることが好ましい。更に、図12に示した結果より、距離dは、0.4mm以下(0.4×D以下に相当)になると規格化温度依存係数が一層小さくなり易い。すなわち、距離dは、0.4×D以下であれば、レンズ18の温度が一層均一化される。これは、距離dが0.4×D以下であれば、レンズ18に対する天板30からの温度の影響より温度均一化部材44からの影響がより大きいためと考えられる。図12より、距離dは、0.2mm以下(0.2×D以下に相当)になると、規格化温度係数が急激に減少する。よって、距離dは、0.2×D以下が更に好ましい。
レンズ18の材料が樹脂又はガラスである場合、熱伝導率の影響でレンズ18の温度が不均一になり易い。よって、レンズ18が、樹脂又はガラスで一体成形された成形品である場合に、光源装置10の構成は有効である。樹脂の熱伝導率はガラスの熱伝導率より小さいので、レンズ18が、樹脂で一体成形された成形品である場合に、光源装置10の構成がより有効である。レンズ18が樹脂製レンズである場合、レンズ18のコストも低下する。その結果、光源装置10の製造コストを低減可能である。
光源装置10が小型化、すなわち、パッケージ12が小型化される場合、レンズ18からカバー24(天板30や側壁部28)までの距離がより近づくため、レンズ18が外部温度の影響を受けやすい。よって、例えば、より小型の光源装置に対して、光源装置10の構成は有効である。
例えば、自動車に搭載されるヘッドアップディスプレイ用の光源に対しては、外部温度が-35℃~85℃のような温度環境の変化が想定されている。更に、そのような光源は、低コストであり且つ小型の製品であることが求められる。したがって、レンズ18が樹脂製レンズであり、光源装置の小型化が図られていても、レンズ18に対する外部温度の影響が抑制された光源装置10は、自動車に搭載されるヘッドアップディスプレイ用の光源装置に適している。
以上、本開示の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
3つのLDの配置関係は、例えば、一つのLDの光軸に対して、他の2つのLDの光軸が実質的に直交するような配置関係でもよい。この場合、合波光学系が有する波長選択性フィルタの数は2つである。
レーザダイオード(LD)の数は1つでもよいし、4つ以上でもよい。レンズの数は、LDの数に応じた数である。
光源装置は、合波光学系を備えなくてもよい。この場合、レンズによってコリメートされたレーザ光が光源装置から出力される。
光源装置は、TECといった温調素子を備えなくてもよい。この場合、例えば、光源装置の外部に配置された温調素子を利用してレーザダイオードが搭載される基板の温度を調整してもよいし、例えば、基板を冷却部材(例えばヒートシンク)に搭載してもよい。
光源装置は、基板が搭載される底板と、底板に接合されるカバーを備えなくてもよい。この場合でも、温度均一化部材を備えることで、レンズの温度が外部温度によって不均一になることを抑制できる。
光源装置は、一つの温度均一化部材を備えていればよい。例えば、図2では、隣接する2つのレンズの間に2つの温度均一化部材が配置されている。しかしながら、隣接する2つのレンズの間には、それらの2つのレンズに対して共通の(1つの)温度均一化部材を配置してもよい。この場合でも、1つのレンズは、2つの温度均一化部材で挟まれるので、レンズの温度が均一化され易い。例えば、図13に示した温度均一化部材50のように、温度均一化部材50が一対の側壁50a,50bと天壁(連結壁)50cとを有する場合、光軸Cの方向が互いに平行になるように一方向に配置された複数のレンズ(少なくとも2つのレンズ)18が、一つの上記温度均一化部材50で囲まれてもよい。すなわち、複数のレンズ18が一対の側壁50a,50b及び天壁50cで囲まれてもよい。光軸Cの方向が互いに平行な状態で複数のレンズ18が一対の側壁50a,50bの間に配置されるように構成されている点以外は、温度均一化部材50の構成は温度均一化部材48の構成と同様とし得る。このような構成であっても、温度均一化部材50で囲まれる複数のレンズ18の周囲は基板14の温度と実質的に同じ温度(又は近い温度)になりやすく、更に、光源装置の外部温度の影響を受けにくい。その結果、一対の側壁50a,50bと天壁50cで囲まれる複数のレンズ18の温度を均一化可能である。一つの温度均一化部材50が複数のレンズ18を囲む場合には、温度均一化部材50の数を低減できるので、光源装置の製造コストを低減できる。