以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
図1は、実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1を模式的に示す構成図である。図2は、図1に示すタイヤ接地形状解析装置1の機能を示すブロック図である。これらの図において、図1は、タイヤ接地形状解析装置1の全体構成を模式的に示し、図2は、タイヤ接地形状解析装置1の主たる機能を示している。
本実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1は、空気入りタイヤ60の接地面61の画像を取得することにより、接地面61の解析を行うシステムに適用される。タイヤ接地形状解析装置1は、タイヤ試験機2と、撮影装置10と、タイヤ接地面解析装置20とを備える。
タイヤ試験機2は、解析対象である空気入りタイヤ60(以下、タイヤ60と呼ぶ)に試験条件を付与する装置である。図1の構成では、タイヤ試験機2は、支持装置3と、駆動装置5と、透明板11とを有する。支持装置3は、タイヤ60を回転可能に支持する装置であり、タイヤ60を装着するリム4を有する。駆動装置5はタイヤ60および透明板11に駆動力を付与する装置である。駆動装置5は、タイヤ60および透明板11を駆動するモータ6と、モータ6を制御するモータ制御装置7とから構成される。なお、駆動装置5は、図示せぬギヤなどを含み、透明板11を水平に駆動する。
このタイヤ試験機2では、支持装置3がリム4に装着されたタイヤ60を支持し、タイヤ60が透明板11の一主面である上面11Uに押圧されてタイヤ60に荷重を付与する。透明板11は、フラットな路面を再現する。透明板11に押圧されたタイヤ60は、フラットな路面を走行している状態と同様に接地面61が変形する。透明板11を水平に駆動することにより、車両走行時におけるタイヤ60の転動状態が、透明板11の表面を路面として再現され、動的接地特性を解析できる。また、支持装置3が、リム4を変位させてタイヤ60と透明板11との位置関係を調整することにより、タイヤ60にスリップ角又はアングル角を付与する。また、駆動装置5は、モータ制御装置7によりモータ6を駆動してリム4を所定角度回転させることができる。また、支持装置3及び駆動装置5が、荷重、回転速度、スリップ角、アングル角などを調整することにより、試験条件を変更できる。
透明板11は、光を透過する性質を有する光透過板である。透明板11は光を100%透過しなくてもよく、透明板11を介してタイヤ60の表面を撮影することができる光透過率を有していればよい。透明板11は、例えば、アクリル樹脂製の平面板又はガラス製の平面板である。タイヤ60と平面板との接触状態を撮影して画像解析するので、タイヤ60の、より現実に近い接地状態を解析できる。
撮影装置10は、タイヤ60を撮影する撮影部であるカメラ15と、光源である照明用ランプ16と、トリガー装置17とを有する。カメラ15は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成される。カメラ15は、撮影装置10内に固定されている。カメラ15は、透明板11を介してタイヤ60を撮影することにより、透明板11に押し付けられているタイヤ60の接地面61を撮影する。詳しくは、カメラ15は、透明板11の他主面である下面11D側に、光軸が下面11D側に対して直交する向きで配設され、下面11D側から、透明板11を介してタイヤ60を撮影する。これにより、カメラ15は、少なくとも接地面61を含んでタイヤ60を撮影し、接地面61を含んだタイヤ60のデジタル画像データを生成する。
照明用ランプ16は、カメラ15の撮影範囲を照らすランプであり、例えば、ハロゲンランプにより構成される。この照明用ランプ16は、後述するように複数設けられているランプ161~170の総称である。照明用ランプ16は、透明板11に押し付けられているタイヤ60の接地面61に、光を照射する。照明用ランプ16は、光を、透明板11の下面11D側から透明板11を介して、または透明板11の上面11U側とタイヤ60との間から照射する。複数の照明用ランプ16は、透明板11が移動する位置以外の位置に、それぞれ配置されている。なお、撮影装置10の移動に伴い、撮影装置10内のカメラ15と照明用ランプ16とが一緒に移動する。
なお、これらの照明用ランプ16は、タイヤ試験機2での試験の条件に応じて数を異ならせてもよい。例えば、透明板11に対してタイヤ60を押し付ける際の荷重が小さい場合は、接地領域が狭くなるため、接地面61と非接地面との輝度差が明確になる。このため、この場合は、照明用ランプ16は、比較的数が少なくてもよく、透明板11の移動方向に対して斜め方向になる2箇所に配置する程度でもよい。これに対し、透明板11に対してタイヤ60を押し付ける際の荷重が大きい場合は、接地領域が広くなるため、接地面61に対してより多くの方向から光を照射する必要がある。このため、この場合は、照明用ランプ16は接地面61を囲んだ4箇所以上に配置する。また、これらの照明用ランプ16は、常時点灯タイプであってもよく、フラッシュ点灯タイプであってもよい。
トリガー装置17は、カメラ15による撮影のタイミングを示すトリガー信号を出力する装置である。トリガー装置17は、半導体レーザを出力し、その反射光を検出した時にトリガー信号を出力する。本例では、透明板11の側面に再帰性反射シート18が貼付されており、トリガー装置17が出力した半導体レーザが再帰性反射シート18によって反射され、トリガー装置17の検出部171がその反射光を検出した時にトリガー信号を出力する。再帰性反射シート18の貼付位置とカメラ15の位置との関係が固定されていれば、撮影を複数回行った場合でもタイヤ60の同じ位置の接地面61を撮影することができる。
タイヤ接地面解析装置20は、例えば、所定の解析プログラムをインストールしたPC(Personal Computer)であり、撮影装置10から入力されるタイヤ60の画像を処理してタイヤ60の接地面61を解析する処理を行う。タイヤ60の接地面61を解析する処理は、撮影したタイヤ60の画像に基づき、接地面61を算出する処理を含む。タイヤ接地面解析装置20は、接地面61の解析等の演算処理やデータの保存等を行う処理装置30と、オペレータがタイヤ接地面解析装置20への入力操作を行う入力部21と、解析結果や各種情報を表示する表示部22と、を有している。入力部21には、キーボードや、マウス等のポインティングデバイスが用いられており、表示部22には、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置が用いられている。入力部21と表示部22とは、処理装置30に電気的に接続されており、これによりタイヤ接地面解析装置20は、オペレータが表示部22を視認しながら入力部21で入力操作をすることが可能になっている。また、カメラ15は、タイヤ接地面解析装置20の処理装置30に接続されており、これによりタイヤ接地面解析装置20は、カメラ15で撮影した画像を取得することが可能になっている。
タイヤ接地面解析装置20が有する処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部31や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部50を備えて構成されている。このように構成される処理部31と記憶部50とは、同一筐体内に設けられていてもよく、異なる筐体内に設けられていてもよく、或いは、複数の記憶部50が双方の形態で設けられていてもよい。
処理装置30が有する処理部31は、接地面画像取得部32と、補助画像取得部33と、接地特性解析部34と、刻印抽出部40と、を機能的に有している。このうち、接地面画像取得部32は、解析対象であるタイヤ60の接地面61を撮影した撮影画像を取得する。また、補助画像取得部33は、接地面画像取得部32により取得された撮影画像の解析結果を補正するための画像である補助画像を取得する。接地特性解析部34は、補助画像に基づいて撮影画像を補正して、タイヤ60の接地域を示す接地域画像を作成する。
接地特性解析部34は、接地域抽出部341と、溝画像作成部342と、補正部343とを含んでいる。接地域抽出部341は、撮影画像からタイヤ60の接地域を示す接地域画像を抽出する。撮影画像はカメラ15によって撮影された、タイヤ60の接地面61のデジタル画像である。
溝画像作成部342は、第1補助画像および第2補助画像からタイヤ60の溝の部分を示す溝画像を作成する。ここで、タイヤ60の溝とは、タイヤ60のトレッド面に設けられた、主溝、サブ溝、および、それらの溝の開口部に設けられた面取りの総称である。溝画像作成部342は、第1補助画像および第2補助画像において、ある輝度を基準として、低輝度の部分を主溝およびサブ溝として抽出し、高輝度の部分を面取りとして抽出し、重ね合せる。
補正部343は、溝画像に基づいて接地域画像を補正する。補正部343が行う補正は、接地域画像から溝画像を差し引く減算処理である。より具体的には、接地域画像と溝画像との対応する各画素について、接地域画像を構成する画素から溝画像を構成する画素を差し引く。重ね合わせる前の2つの画像の各画素は、いずれも黒(階調255)または白(階調0)の2階調で構成されており、同一画素位置について、階調を減算する。なお、減算処理後の階調が「-255」の場合は「0」に置換する。
タイヤ接地面解析装置20で用いられる解析プログラムは、予め記憶部50に記憶されており、タイヤ60の接地面61の解析を行う際には、記憶部50に記憶されているプログラムを処理部31で呼び出し、プログラムに沿った動作を処理部31で実行することにより、各機能を実行する。
本実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1は、以上のような構成からなる。以下、タイヤ接地形状解析装置1の作用について説明する。タイヤ接地形状解析装置1によってタイヤ60の接地面61の解析を行う際には、タイヤ60をタイヤ試験機2の支持装置3に装着し、タイヤ60を透明板11に押し付けた状態で回転させながら、カメラ15によって接地面61を撮影する。その際に、タイヤ60に対しては、複数の方向から複数の照明用ランプ16によって光を照射した状態で撮影する。このため、カメラ15は、接地面61と接地面61以外の部分とで、輝度差をつけてタイヤ60を撮影することができる。撮影した画像は、タイヤ接地面解析装置20で取得し、タイヤ接地面解析装置20は、取得した画像に基づいて、接地面61の解析を行う。
タイヤ60の溝部分の抽出については、三角測量法を利用して高さ(深さ)の違いを検出する距離センサーを用いることもできる。しかしながら、接地面61の全体について溝部分を検出するには、距離センサーの検出範囲を走査する必要がある。したがって、距離センサーを用いるだけでは、タイヤ60が転動する状態での動的接地特性を解析することが困難である。
(撮影における照明条件)
ところで、接地面画像取得部32によって接地面画像を取得する際の照明条件と、補助画像取得部33によって補助画像を取得する際の照明条件とは異なる。異なる照明条件で撮影することにより、接地面画像では抽出できなかった主溝、サブ溝および面取りを、補助画像では抽出できるようになる。このため、接地面画像の解析結果を補正するのに役に立ち、解析精度が向上する。
より具体的な照明条件は、以下のとおりである。すなわち、接地面画像取得部32によって画像を取得する際は、第1主面である上面11U側の照明からタイヤ60に光を照射して上面11Uの表面とタイヤ60との接触部分を撮影する。また、補助画像取得部33によって画像を取得する際は、第2主面である下面11D側の照明から透明板11を介してタイヤ60に光を照射して上面11Uの表面とタイヤ60との接触部分を撮影する。
透明板11の上面11U側だけに照明用ランプ16を配置した場合、タイヤ60の接地面61の接地域の画像を取得できる。しかしながら、透明板11の上面11U側だけに照明用ランプ16を配置した場合、タイヤ60の接地面61の溝部分をすべて抽出するには取得する画像の数を多くする必要がある。すなわち接地面61の溝部分をすべて抽出できるよう、照明用ランプ16の配置を色々変えてそれぞれ撮影する必要がある。したがって、取得する画像の数を多くすると、撮影時間が長くなるとともに撮影する画像のデータ量が多くなり、好ましくない。
一方、透明板11の下面11D側だけに照明用ランプ16を配置した場合、タイヤ60の接地面61の溝部分の画像を良好に抽出できる。しかしながら、透明板11の下面11D側だけに照明用ランプ16を配置した場合、タイヤ60の接地面61の接地域の画像を取得することができない。
このため、本実施形態では、透明板11の上面11U側および下面11D側に照明用ランプ16を配置し、透明板11の上面11U側の照明から照射する光を利用してタイヤ60の接地面61の接地域の画像を取得し、透明板11の下面11D側の照明から照射する光を利用してタイヤ60の接地面61の溝部分の画像を取得する。撮影に用いる照明条件を上記のようにすれば、接地特性解析に必要な撮影枚数を最小限に抑制でき、試験全体の所要時間を短縮できる。
また、タイヤ60の接地面61の接地域の画像を取得する場合、透明板11の上面11U側において、接地面61を包囲するように透明板11の上面11U側に照明用ランプ16を配置することが好ましい。タイヤ60の接地面61の接地域の画像を取得する場合、上面11U側に接触部分を包囲するように配置された照明用ランプ16によってタイヤ60に光を照射して画像を取得することが好ましい。一方、タイヤ60の接地面61の補助画像を取得する場合、透明板11の下面11D側において、タイヤ60の回転軸に対して垂直な方向に離れた位置およびタイヤ60の回転軸の方向に離れた位置に照明用ランプ16を配置することが好ましい。タイヤ60の接地面61の補助画像を取得する場合、タイヤ60の回転軸に対して垂直な方向からタイヤに向けて光を照射して第1補助画像を取得し、タイヤ60の回転軸方向からタイヤに向けて光を照射して第2補助画像を取得することが好ましい。このようにタイヤ60に対して別の方向からそれぞれ光を照射するように配置された照明用ランプ16を用いる。これにより、解析に好適な接地面画像および補助画像を取得でき、解析精度が向上する。
(透明板の移動とトリガー装置の動作)
図3および図4は、透明板11の移動とトリガー装置17の動作とを説明する図である。図3は、透明板11が移動する前の状態であり、かつ、トリガー装置17が再帰性反射シート18による反射光を検出する前の状態を示す。図4は、透明板11が移動した後の状態であり、かつ、トリガー装置17が再帰性反射シート18による反射光を検出した時の状態を示す。
図3において、透明板11の上面11Uは平らであり、上面11Uはタイヤ60が転動するためのフラットな路面となる。図3において、タイヤ60は透明板11の上面11Uに接した状態で支持装置3のリム4に固定されている。このため、透明板11の移動に伴い、タイヤ60は回動する。タイヤ接地形状解析装置1は、透明板11を矢印Y1の方向に移動させる。透明板11が矢印Y1の方向に移動することにより、タイヤ60は矢印Y2の方向に回動する。図3に示す状態では、トリガー装置17の検出部171は再帰性反射シート18による反射光を検出していない。トリガー装置17が再帰性反射シート18による反射光を検出しない限り、透明板11は矢印Y1の方向に移動し続ける。撮影装置10は透明板11に固定されているため、透明板11の移動に伴って撮影装置10も移動する。透明板11の移動速度は、例えば時速0.5kmである。なお、透明板11の代わりに、外周面が透明な回転ドラムを用いてもよい。
透明板11が矢印Y1の方向に移動し、図4に示す状態になると、トリガー装置17の検出部171は再帰性反射シート18による反射光を検出する。トリガー装置17の検出部171が反射光を検出した時、タイヤ接地形状解析装置1は、カメラ15に撮影指示の信号を出力する。これにより、タイヤ60の接地面61を撮影することができる。なお、透明板11は、カメラ15の撮影範囲に対応する部分110が透明であれば良く、部分110以外の部分が不透明であってもよい。つまり、透明板11は、全体が透明であってもよいし、撮影範囲に対応する部分110だけが透明であってもよい。
(タイヤ接地形状解析装置の動作)
図5は、タイヤ接地形状解析装置1の動作を示すフロー図である。タイヤ接地形状解析装置1は、タイヤ60の解析を行う場合、透明板11に押し付けられているタイヤ60に、照明用ランプ16から光を照射する(ステップS201)。次に、タイヤ接地形状解析装置1は、モータ制御装置7によって、モータ6の駆動を開始する(ステップS202)。タイヤ接地形状解析装置1は、モータ6の駆動を継続しているとき(ステップS203)、トリガー装置17が再帰性反射シート18を検出したか否か判定する(ステップS204)。タイヤ接地形状解析装置1は、トリガー装置17が再帰性反射シート18を検出していない場合、モータ6の駆動を継続する(ステップS204,No→S203)。
タイヤ接地形状解析装置1は、トリガー装置17が再帰性反射シート18を検出した場合、タイヤ60をカメラ15によって撮影する(ステップS204,Yes→S205)。その後、タイヤ接地形状解析装置1は、モータ6の駆動および光の照射を停止する(ステップS206)。
本実施形態において、タイヤ接地形状解析装置1は、以上の動作を同じ装置において3回行い、照明条件を変えて撮影した3つの画像データを取得する。すなわち、タイヤ接地形状解析装置1はタイヤ60の接地面61を撮影した撮影画像(撮影1回目)、撮影画像の解析結果を補正するための画像である第1補助画像(撮影2回目)、撮影画像の解析結果を補正するための画像である第2補助画像(撮影3回目)、を取得する。トリガー装置17を用いることにより、タイヤ60の同じ部分を3回撮影することができる。タイヤ接地形状解析装置1が上記の動作を行うことにより、動的接地特性についての自動解析が可能となり、タイヤの生産性が向上する。
(具体的な配置の例および撮影画像の例)
次に、カメラ15および照明用ランプ16の具体的な配置の例について説明する。図6から図8は、接地面画像取得部32によって接地面画像を取得する場合のカメラ15および照明用ランプ16の具体的な配置の例を示す図である。図6は、タイヤ60の回転軸に沿った方向から各照明用ランプ16の配置を見た図である。図7は、透明板11の上面11U側から各照明用ランプ16の配置を見た図である。図8は、タイヤ60の回転軸に対して垂直に離れた方向から各照明用ランプ16の配置を見た図である。以下の説明において、タイヤ60の回転軸に沿った方向をタイヤ幅方向、回転軸に対して垂直な方向をタイヤ周方向と呼ぶ。
3回の撮影において、解析対象であるタイヤ60は、空気圧を230kPa、荷重を6kN、回転速度を0.5km/h、スリップ角を0°とした。カメラ15については、F値を4、露光時間を1msとした。3回の撮影のうち1回目および2回目についてはカメラゲインを3dBとし、3回目についてはカメラゲインを8dBとした。3回の撮影において、カメラゲインが同じ値でないのは、照明の条件が異なるためである。撮影によって取得できる画像のコントラストが良ければ、3回の撮影のカメラゲインを同じ値にしてもよい。
3回の撮影のうち1回目の撮影において、ランプ161から164にはスポット照明用ランプを使用し、ランプ165および166にはライン照明用ランプを使用した。接地面61への明るさは60万ルクス程度である。3回の撮影のうち2回目の撮影において、ランプ169および170にはライン照明用ランプを使用した。接地面61への明るさは120万ルクス程度である。3回の撮影のうち3回目の撮影において、ランプ167および168にはライン照明用ランプを使用した。接地面61への明るさは60万ルクス捏度である。
図6から図8を参照すると、透明板11の上面11Uにタイヤ60が接触している。透明板11の下面11D側にカメラ15が設けられている。カメラ15は、その光軸151がタイヤ60の接地面61の中心点の法線上に位置するように配置される。カメラ15の光軸151が接地面61の中心点を通るように配置されることにより、接地面61の中心点の法線方向から接地面61を撮影することができる。これにより、安定した解析精度を確保することができる。撮影画像の端部に近づくほどレンズ収差の影響が大きくなり、空間分解能が変動し、解析精度が不安定になる。このようにカメラ15を配置することによって、レンズ収差の影響を最小限に抑えることができる。
図6から図8を参照すると、透明板11の上面11U側にランプ161、162、163、164、165および166が配置されている。ランプ161、162、163および164は、タイヤ60に対し、タイヤ周方向に離れた位置に配置されている。ランプ161および162と、ランプ163および164とは、タイヤ60を挟んで互いに異なる側に設けられている。ランプ165およびランプ166は、タイヤ60に対し、タイヤ幅方向に離れた位置に配置されている。ランプ165とランプ166とは、タイヤ60を挟んで互いに異なる側に設けられている。このように、ランプ161~166は、タイヤ60の接地面61を包囲するように配置される。タイヤ60の接地面61の四方にわたって照射しないと、接地形状の輪郭を出すのが難しくなり、解析精度が低下する可能性がある。これに対し、タイヤ60の接地面61を包囲するようにランプ161~166を配置し、接地面61の四方にわたって光を照射することにより、接地形状の輪郭を明確にすることができ、解析精度を向上させることができる。
ここで、図6および図8において、各ランプ161~166の発光面中心から透明板11の上面11Uまでの高さをH1~H6とする。図6および図8において、各ランプ161~166の傾斜角度、すなわち透明板11の上面11Uに対する、光照射方向のなす角度をθ1~θ6とする。図7において、各ランプ161~164の発光面中心からタイヤ60の中心までのタイヤ周方向の距離を距離D1~D4とする。図7において、各ランプ165、166の発光面中心からタイヤ60の中心までのタイヤ幅方向の距離をD5、D6とする。図7において、各ランプ161~164の発光面中心からタイヤ中心までのタイヤ幅方向の距離をA1~A4とする。
高さH1からH6については、0mm以上201mm以下であることが好ましい。高さH1からH6の最低値は0mmである。照明用ランプ16を透明板11の上に置くためである。高さH1からH6が201mmを超えると、照明からの光が接地面61に上手く入り込まず、接地面の輪郭が不正確となって解析精度が低下するため好ましくない。
タイヤ周方向の距離D1からD4は、タイヤ60の最大接地長の半分より大きく、1345mmより小さいことが好ましい。ただし、各照明用ランプ16がタイヤ60に接触しないようにする必要がある。距離D1からD4の最小値を、タイヤ60の最大接地長の半分より小さくすることは好ましくない。照明用ランプ16がタイヤ60に接触しないようにするためである。距離D1からD4が1345mmを超えると、接地面61に当たる照明の光量が不足し、接地面61の輪郭が不正確となって解析精度が低下するため好ましくない。
タイヤ幅方向の距離D5、D6は、タイヤ60の最大接地幅の半分より大きく、300mmより小さいことが好ましい。ただし、各照明用ランプ16がタイヤ60に接触しないようにする必要がある。距離D5からD6の最小値を、タイヤ60の最大接地幅の半分より小さくすることは好ましくない。各照明用ランプ16がタイヤ60に接触しないようにするためである。距離D5、D6が300mmを超えると、接地面61に当たる照明の光量が不足し、接地面61の輪郭が不正確となって解析精度が低下するため好ましくない。
各照明用ランプ16の傾斜角度θ1からθ6については、Atan(Hn/Dn)/π*180-0.6°以上Atan(Hn/Dn)/π*180+0.6°以下であることが好ましい(n=1~6)。θ1からθ6について、各照明用ランプ16は接地面61の中心に向けて光を照射するのが好ましい。このように光を照射すれば、接地面61に光が上手く入り込む。このため、照明用ランプ16の傾斜角度θ1からθ6は、Atan(Hn/Dn)/π*180が好ましい(n=1~6)。ただし、計測誤差を±0.6°を許容範囲とした。
タイヤ幅方向距離A1からA4については、100mm以上、タイヤ60の最大接地長の半分以下であることが好ましい。タイヤ幅方向の距離A1からA4については、100mmより小さいと、タイヤ60の外側ショルダーブロックに光が行き届かない場合があり、接地面61の輪郭が不鮮明となって解析精度が低下するため好ましくない。距離A1からA4がタイヤ60の最大接地長の半分より大きい場合は、逆にトレッドセンター付近に光が行き届かない場合があり、接地面61の輪郭が不鮮明となって解析精度が低下するため好ましくない。
本実施形態では、H1=H2=H3=H4=120mm、H5=H6=13mm、D1=D4=1340mm、D2=D3=1260mm、D5=D6=280mm、θ1=5.0°、θ2=4.8°、θ3=5.1°、θ4=5.5°、θ5=θ6=0°、A1=A2=A3=A4=100mmとした。
図6から図8を参照して説明したようにランプ161から166を配置することにより、タイヤ60の接地面61を囲むように光が照射され、図9に示すような接地面画像を取得することができる。図9は、接地面画像の例を示す図である。図9に示す接地面画像は、接地形状の輪郭を明確にした、大まかな接地域である。
図10から図12は、補助画像取得部33によって補助画像を取得する場合のカメラおよび照明用ランプ16の具体的な配置の一例を示す図である。図10は、タイヤ60のタイヤ幅方向から各照明用ランプ16の配置を見た図である。図11は、透明板11の下面11D側から各照明用ランプ16の配置を見た図である。図12は、タイヤ60のタイヤ周方向から各照明用ランプ16の配置を見た図である。
図10から図12を参照すると、透明板11の上面11Uにタイヤ60が接触している。透明板11の下面11D側にカメラ15が設けられている。図6から図8の場合と同様に、カメラ15の光軸151がタイヤ60の接地面61の中心上に位置するように配置される。これにより、安定した解析精度を確保することができる。
図10から図12を参照すると、透明板11の下面11D側にランプ167、168が配置されている。ランプ167、168は、ともに、タイヤ幅方向を長手方向とするライン照明である。ランプ167、168は、タイヤ60のタイヤ周方向に離れた位置に配置されている。ランプ167とランプ168とは、タイヤ60を挟んで互いに異なる側に設けられている。このようにランプ167、168は、タイヤ60の接地面61にタイヤ周方向に光を照射するように配置される。
ここで、図10において、ランプ167、168の発光面中心から下面11Dまでの高さをH7、H8とする。図10において、ランプ167、168の傾斜角度、すなわち透明板11の下面11Dに対する、光照射方向のなす角度をθ7、θ8とする。図11において、ランプ167、168の発光面中心からタイヤ中心までのタイヤ周方向の距離をD7、D8とする。本実施形態では、H7=H8=15mm、D7=D8=240mm、θ7=θ8=0°とした。
図10から図12を参照して説明したようにランプ167および168を配置することにより、タイヤ周方向からタイヤ60に光が照射され、サブ溝を低輝度、サブ溝の面取りを高輝度とすることができる。図13は、補助画像の例を示す図である。図14は、図13の部分200を拡大して示す図である。
図13において、矢印Y20Aおよび矢印Y20Bは、光の照射方向である。タイヤ周方向からタイヤ60に光を照射することにより、図13および図14に示すような補助画像を取得できる。図13および図14を参照すると、輝度の違いに基づき、サブ溝と、サブ溝の面取りとを抽出するための補助画像を取得できる。すなわち、所定輝度を基準として輝度の低い低輝度部分をサブ溝、輝度の高い高輝度部分をサブ溝の面取りとして抽出することができる。このように、タイヤ周方向から照射した光によって取得できる補助画像を第1補助画像とする。
図15から図17は、補助画像取得部33によって補助画像を取得する場合のカメラおよび照明用ランプ16の具体的な配置の他の例を示す図である。図15は、タイヤ60のタイヤ幅方向から各照明用ランプ16の配置を見た図である。図16は、透明板11の下面11D側から各照明用ランプ16の配置を見た図である。図17は、タイヤ60のタイヤ周方向から各照明用ランプ16の配置を見た図である。
図15から図17を参照すると、透明板11の上面11Uにタイヤ60が接触している。透明板11の下面11D側にカメラ15が設けられている。図6から図8の場合と同様に、カメラ15の光軸151がタイヤ60の接地面61の中心上に位置するように配置される。これにより、安定した解析精度を確保することができる。
図15から図17を参照すると、透明板11の下面11D側にランプ169、170が配置されている。ランプ169、170は、ともに、タイヤ周方向を長手方向とするライン照明である。ランプ169、170は、タイヤ60のタイヤ幅方向に離れた位置に配置されている。ランプ169とランプ170とは、タイヤ60を挟んで互いに異なる側に設けられている。このようにランプ169、170は、タイヤ60の接地面61にタイヤ幅方向に光を照射するように配置される。
ここで、図17において、ランプ169、170の発光面中心から下面11Dまでの高さをH9、H10とする。図17において、ランプ169、170の傾斜角度、すなわち透明板11の下面11Dに対する、光照射方向のなす角度をθ9、θ10とする。図16において、ランプ169、170の発光面中心からタイヤ中心までのタイヤ幅方向の距離をD9、D10とする。本実施形態では、H9=H10=15mm、D9=D10=190mm、θ9=θ10=0°とした。
図15から図17を参照して説明したようにランプ169および170を配置することにより、タイヤ幅方向からタイヤ60に光が照射され、主溝を低輝度、主溝の面取りを高輝度とすることができる。図18は、補助画像の例を示す図である。図19は、図18の部分250を拡大して示す図である。
図18において、矢印Y25Aおよび矢印Y25Bは、光の照射方向である。タイヤ幅方向からタイヤ60に光を照射することにより、図18および図19に示すような補助画像を取得できる。図18および図19を参照すると、輝度の違いに基づき、主溝と、主溝の面取りとを抽出するための補助画像を取得できる。すなわち、所定輝度を基準として輝度の低い低輝度部分を主溝、輝度の高い高輝度部分を主溝の面取りとして抽出することができる。このように、タイヤ幅方向から照射した光によって取得できる補助画像を第2補助画像とする。
図10から図18を参照して説明したように、タイヤ周方向、タイヤ幅方向にそれぞれ光を照射することにより、第1補助画像、第2補助画像を取得し、全ての溝を抽出でき、解析精度を向上させることができる。
(接地特性解析部の処理)
接地特性解析部34による処理およびその処理によって取得または作成される画像の例について説明する。図20は、接地特性解析部34による処理の例を示すフロー図である。図21から図25は、接地特性解析部34による処理によって取得または作成される画像の例を示す図である。
図20において、ステップS301からS303までは、主として接地域抽出部341によって行われる処理である。ステップS301からS303までの処理(撮影1回目)により、タイヤ60の接地面61を撮影した撮影画像を取得できる。ステップS304からS312までは、主として溝画像作成部342によって行われる処理である。ステップS304からS307までの処理(撮影2回目)により、撮影画像の解析結果を補正するための画像である第1補助画像を取得できる。ステップS308からS311までの処理(撮影3回目)により、撮影画像の解析結果を補正するための画像である第2補助画像を取得できる。ステップS313は、主として補正部343によって行われる処理である。
図20において、タイヤ60の接地面61をカメラ15で撮影することにより、撮影画像のデータを取得する(ステップS301)。ステップS301の処理により、例えば、図9に示す画像を抽出できる。接地域抽出部341は、撮影画像のデータの低輝度部分を接地域画像として抽出する(ステップS302)。ステップS302の処理により、例えば、図21に示す接地域画像を抽出できる。接地域抽出部341は、抽出した接地域画像のデータを記憶する(ステップS303)。
タイヤ60の接地面61をカメラ15で撮影することにより、第1補助画像を取得する(ステップS304)。ステップS304の処理により、例えば、図22に示す画像を取得できる。溝画像作成部342は、第1補助画像の低輝度部分および高輝度部分をそれぞれ抽出する(ステップS305)。
溝画像作成部342は、第1補助画像の低輝度部分と第1補助画像の高輝度部分とを重ね合せた第1画像を作成する(ステップS306)。溝画像作成部342は、第1画像を記憶部50に記憶する(ステップS307)。
さらに、タイヤ60の接地面61をカメラ15で撮影することにより、第2補助画像を取得する(ステップS308)。ステップS308の処理により、例えば、図23に示す画像を取得できる。溝画像作成部342は、第2補助画像の低輝度部分および高輝度部分をそれぞれ抽出する(ステップS309)。
溝画像作成部342は、第2補助画像の低輝度部分と第2補助画像の高輝度部分とを重ね合せた第2画像を作成する(ステップS310)。溝画像作成部342は、第2画像を記憶部50に記憶する(ステップS311)。
溝画像作成部342は、第1画像と第2画像とを重ね合せた溝画像を作成する(ステップS312)。ステップS312の処理により、例えば、図24に示す溝画像を作成できる。補正部343は、図21に示す接地域画像から図24に示す溝画像の部分を差し引き、補正済接地域画像を作成する(ステップS313)。ステップS313の処理により、例えば、図25に示す画像を作成できる。
(接地域抽出部の処理)
図20のステップS301からS303までの、主として接地域抽出部341によって行われる処理において、接地域を抽出する際、大域的二値化処理を用いることが好ましい。大域的二値化処理は、画像を構成する画素について、輝度閾値を一律に設定して二値化する処理である。非接地領域の輝度はほぼ一様になっているため、画素ごとに一律の輝度閾値を設けて大域的二値化処理を行うことが好ましい。接地領域は低輝度であるため、接地領域を大まかに抽出する際は、大域的二値化処理が有効である。
また、局所的二値化処理を用いることもできる。局所的二値化処理は、接地面画像について、弱い平滑化処理および強い平滑化処理をそれぞれ行い、両画像を用いて結果を得る処理である。図26は、接地面画像の例を示す図である。図26に示す接地面画像について弱い平滑化処理を行って図27に示す基準画像を得る。図27は、基準画像の例を示す図である。弱い平滑化処理は、例えば、注目画素から半径4画素以内にある領域を周辺画素として利用するメディアン処理を適用することができる。
また、図26に示す接地面画像について強い平滑化処理を行って図28に示す対比画像を得る。図28は、対比画像の例を示す図である。強い平滑化処理は、例えば、注目画素から半径50画素以内にある領域を周辺画素として利用するメディアン処理を適用することができる。
最後に、図27に示す基準画像および図28に示す対比画像の同一画素位置において、基準画像の輝度値が対比画像の輝度値に定数を加えた閾値を超える場合は黒画素、超えない場合は白画素に置き換えることによって、図29に示す画像を得ることができる。図29は、図26に示す画像に局所的二値化処理を行った結果の例を示す図である。なお、例えば、「30」を上記の定数とする。また、図29に示す画像にはノイズ除去の結果が反映されている。例えば、占有面積500画素以下の黒画素集合体は除去されている。
大域的二値化する処理において、接地面61の撮影画像のデータについて平滑化処理を行った後、低輝度部分を抽出することが好ましい。平滑化処理を行うのは、安定した解析を行うためである。平滑化処理により、タイヤ60の表面に付着している微細なゴミやカメラ15に起因する各種ノイズ(熱ノイズなど)による画像への影響を除去することができる。
撮影画像のデータが256階調(0から255までの階調)を採用する場合、大域的二値化処理では、輝度閾値を例えば230とする。輝度閾値を230とすることにより、0から230までの輝度の部分を低輝度部分として抽出できる。平滑化処理には、例えば、メディアンフィルタ、平均化フィルタ、ガウシアンフィルタを用いることができる。メディアンフィルタは、注目画素とその周辺画素について輝度の大きい順に並び替え、その中間値を注目画素の輝度値に置換する処理である。平均化フィルタは、注目画素とその周辺画素の輝度とを取り込んで、算術平均を求める処理である。ガウシアンフィルタは、注目画素の輝度とその周辺画素の輝度とを取り込んで、重み付き平均を求める処理である。なお、注目画素から半径4画素以内の領域に含まれる画素を周辺画素として利用することができる。
図30は、図9の画像から低輝度部分を抽出した画像の例を示す図である。図9に示す画像について、上記の平滑化処理を行った後、輝度閾値230で二値化処理することにより、図30に示す画像が得られた。なお、図30において、画像の端にくっついている黒画素の集合体は除去している。
図30に示す画像は、大まかな実接地面積画像(Actual Contact Area、以下ACAと略称する)である。ACAは、路面に接地しているブロックの全面積である。図30に示す大まかなACAに基づき、例えば、図31に示す総接地面積画像(Ground Contact Area、以下GCAと略称する)を得ることができる。
GCAは、ACAについて、溝を埋めたときの、外輪線で囲まれた全面積である。図31は、GCAの例を示す図である。図30に示す大まかなACAについて、例えば、占有面積5000画素以下の黒画素集合体を除去、収縮処理5回、膨張処理10回、収縮処理15回、膨張処理20回、収縮処理10回、膨張処理80回、収縮処理80回の順序で処理を行うことにより、図31に示すGCAを得ることができる。
図32は、膨張処理の説明図である。図33は、収縮処理の説明図である。膨張処理は、図32に示すように、注目画素の周辺に1画素でも黒画素があれば、注目画素を黒画素に置き換える処理である。つまり、膨張処理は、白画素をそれぞれ中心画素とし、その周辺の8画素(中心画素から最も近い左上、上、右上、右、右下、下、左下、左の各1画素)のうち1つでも黒画素が存在すれば、その中心画素を黒画素に置き換える処理である。反対に収縮処理は、例えば注目画素を黒画素とする場合に、図33に示すように、注目画素の周辺に1画素でも白画素があれば、注目画素を白画素に置き換える処理である。つまり、収縮処理は、黒画素をそれぞれ中心画素とし、その周辺の8画素(中心画素から最も近い左上、上、右上、右、右下、下、左下、左の各1画素)のうち1つでも白画素が存在すれば、その中心画素を白画素に置き換える処理になっている。
接地域抽出部341は、図30に示す二値化処理画像と図31に示すGCAとについて、黒画素の論理積をとることにより、二値化処理画像をGCAの範囲内で抽出する。この場合の論理積は、図30に示す二値化処理画像と図31に示すGCAとの間で、同一画素位置がともに黒であれば黒画素とし、それ以外は白画素とする処理である。この処理を行うことにより図34に示す接地域画像が得られる。図34は、接地域抽出部341によって抽出される接地域画像の例を示す図である。ここで、図34に示す接地域画像には、刻印の一部が、接地していない部分290として含まれている。刻印は輝度が高く、二値化処理において低輝度と判定されないためである。
(溝画像作成部の処理)
図20のステップS304からS311までの、主として溝画像作成部342によって行われる処理において、溝すなわち主溝、サブ溝および面取りを抽出する際、大域的二値化処理もしくは局所的二値化処理を用いることが好ましい。局所的二値化処理は、画像を構成する画素について、画素ごとに別々の輝度閾値を設定して二値化する処理である。接地面には輝度のムラがある。特に、トレッド部のブロックの面取りの輝度は場所によって異なり、画素ごとに一律の輝度閾値を用いた大域的二値化処理では、面取りを全て抽出するのは困難である。一方、局所的二値化処理は、注目画素がその周辺画素に比べて大きな輝度差を有する場合に、その注目画素を有効に抽出できる。接地しているブロックと面取りとでは輝度差が大きいため、輝度のムラがあっても面取りを正しく抽出できる。
溝画像作成部342は、ステップS304からS307までの処理によって第1画像を作成する。溝画像作成部342は、図22に示す第1補助画像の低輝度部分および高輝度部分をそれぞれ抽出する。図35は、図22に示す第1補助画像の低輝度部分の画像の例を示す図である。図35は、図22に示す第1補助画像から抽出した、主溝およびサブ溝の部分を示す。図36は、図22に示す第1補助画像の高輝度部分の画像の例を示す図である。図36は、図22に示す第1補助画像から抽出した、面取りの部分を示す。ただし、図36に示す画像は、図22に含まれている刻印部分を面取りの部分として抽出している。
溝画像作成部342は、図22に示す第1補助画像について平滑化処理(メディアン処理)を行った。このとき、注目画素から半径4画素以内にある領域を周辺画素として利用した。その後、階調0から階調40程度を低輝度部分として抽出する大域的二値化処理を行うことにより、図35に示す画像を得る。本実施形態では輝度閾値40以下を低輝度部分として抽出する大域的二値化処理を行った。そのあと、ノイズ除去を目的として収縮処理1回、膨張処理1回、占有面積200画素以下の黒集合体を除去の順序で処理を行った。最後に、図31に示すGCAとの黒画素の論理積をとることにより、図35をGCAの範囲内で表示した。
さらに、溝画像作成部342は、図22に示す第1補助画像について局所的二値化処理を行うことによって図36に示す画像を得る。溝画像作成部342は、例えば、基準画像の注目画素の階調が、対比画像の周辺画素の平均階調より30以上大きい場合、その注目画素を高輝度部分として抽出する局所的二値化処理を行って図36に示す画像を得る。なお、ノイズを除去するため、本実施形態では占有面積100画素以下の黒集合体を除去している。さらに図31に示すGCAとの黒画素の論理積をとることにより、図36をGCAの範囲内で表示している。
溝画像作成部342は、図35に示す主溝およびサブ溝の部分の画像と図36に示す面取りの部分の画像とを重ね合せる。このとき、溝画像作成部342は、両画像の同じ位置の画素について輝度を加算することによって、図37に示す画像を作成する。図37は、溝画像作成部342が作成する、第1画像の例を示す図である。本実施形態では図35に示す主溝およびサブ溝の部分の画像と図36に示す面取りの部分の画像とを重ね合せたあと、膨張処理2回、収縮処理4回、膨張処理7回、収縮処理5回、占有面積600画素以下の黒集合体を除去の順序で処理を行い、図37に示す画像を得ている。
また、溝画像作成部342は、ステップS308からS311までの処理によって第2画像を作成する。溝画像作成部342は、図23に示す第2補助画像の低輝度部分および高輝度部分をそれぞれ抽出する。図38は、図23に示す第2補助画像の低輝度部分の画像の例を示す図である。図38は、図23に示す第2補助画像から抽出した、主溝およびサブ溝の部分を示す。図39は、図23に示す第2補助画像の高輝度部分の画像の例を示す図である。図39は、図23に示す第1補助画像から抽出した、面取りの部分を示す。ただし、図39に示す画像は、図23に含まれている刻印部分を面取りの部分として抽出している。
溝画像作成部342は、図23に示す第2補助画像について平滑化処理(メディアン処理)を行った。このとき、注目画素から半径4画素以内にある領域を周辺画素として利用した。その後、階調0から階調7程度を低輝度部分として抽出する大域的二値化処理を行うことにより、図38に示す画像を得る。本実施形態では輝度閾値7以下を低輝度部分として抽出する大域的二値化処理を行った。そのあと、ノイズ除去を目的として膨張処理10回、収縮処理10回の順序で処理を行った。最後に、図31に示すGCAとの黒画素の論理積をとることにより、図38をGCAの範囲内で表示している。
さらに、溝画像作成部342は、図23に示す第2補助画像について、階調0~階調80程度を高輝度部分として抽出する大域的二値化処理を行うことにより、図39に示す画像を得る。本実施形態では、溝画像作成部342は、第2補助画像を平滑化した後、輝度閾値80を基準として大域的二値化処理を行った。そのあと、ノイズ除去を目的として収縮処理1回、膨張処理1回の順所で処理を行った。最後に、図31に示すGCAとの黒画素の論理積をとることにより、図39をGCAの範囲内で表示している。図23に示す第2補助画像から図39に示す画像を得る際、局所的二値化処理を行うことによって高輝度部分を抽出してもよい。その場合、例えば、基準画像の注目画素の階調が、対比画像の周辺画素の平均階調より30以上大きい場合、その注目画素を高輝度部分として抽出する局所的二値化処理を行えばよい。
なお、溝画像作成部342は、図35および図36に示す画像を抽出する際、図22に示す第1補助画像についてのGCA範囲内において画像を抽出する。また、溝画像作成部342は、図38および図39に示す画像を抽出する際、図23に示す第2補助画像についてのGCA範囲内において画像を抽出する。
溝画像作成部342は、図38に示す主溝およびサブ溝の部分の画像と図39に示す面取りの部分の画像とを重ね合せる。このとき、溝画像作成部342は、両画像の対応する画素の輝度を加算することによって、図40に示す画像を作成する。図40は、溝画像作成部342が作成する、第2画像の例を示す図である。本実施形態では図38に示す主溝およびサブ溝の部分の画像と図39に示す面取りの部分の画像とを重ね合せたあと、膨張処理6回、収縮処理6回の順に行い、図40に示す画像を得ている。
溝画像作成部342は、図37に示す第1画像と図40に示す第2画像とを重ね合せて、図41に示す溝画像を作成する。このとき、溝画像作成部342は、両画像の同じ位置の画素について輝度を加算することによって、図41に示す画像を作成する。図41は、溝画像作成部342によって作成される溝画像の例を示す図である。図41に示す画像を得る際、本実施形態では膨張処理、収集処理は行っていない。
補正部343は、図34に示す接地域画像について、図41に示す溝画像で補正を行うことにより、図42に示す画像が得られる。図42は、補正済の接地域画像の例を示す図である。図42に示す画像を得る際、本実施形態では収縮処理4回、膨張処理4回、占有面積500画素以下の黒集合体を除去の順序で処理を行っている。溝画像作成部342は、図34に示す接地域画像から、図41に示す画像を差し引く減算処理を行う。より具体的には、図34に示す接地域画像と図41に示す溝画像との対応する各画素について、接地域画像を構成する画素から溝画像を構成する画素を差し引く。つまり、補正部343は、図34に示す接地面画像と図41に示す溝画像との間で、同一画素位置の輝度の差分を求めることによって、図42に示す画像を得る。ここで、図41に示す溝画像、図42に示す補正済の接地域画像には、刻印の一部分380、381、400、401が含まれている。刻印は輝度が高く、面取りと判定されるためである。
(刻印抽出部の処理)
ところで、タイヤ60のトレッド面に刻印が設けられていることがある。刻印とは、識別線、アーティクル番号である。タイヤ60のトレッド面に刻印がある場合、輝度が高く、接地画像に影響を与えて解析誤差が生じることがある。
タイヤ60のトレッド面に刻印がある場合には、刻印抽出部40による以下の処理を行うことが好ましい。図43は、刻印抽出部40による処理の例を示すフロー図である。図44から図47は、刻印抽出部40による処理によって取得または作成される画像の例を示す図である。
刻印抽出部40は、図36に示す第1補助画像の高輝度部分と図39に示す第2補助画像の高輝度部分とに基づき、刻印画像を作成する(ステップS401)。本実施形態では、図36に示す画像と、図39に示す画像を刻印候補としている。
刻印抽出部40は、図36に示す第1補助画像の高輝度部分と図39に示す第2補助画像の高輝度部分とについて、黒画素の論理積をとることにより、刻印画像を作成する。この場合の論理積は、図36に示す第1補助画像の高輝度部分と図39に示す第2補助画像の高輝度部分との間で、同一画素位置がともに黒であれば黒画素とし、それ以外は白画素とする処理である。この処理を行うことにより図44に示す刻印画像が得られる。図44は、刻印画像の例を示す図である。ここではノイズ除去のため、膨張処理2回、収縮処理3回、膨張処理1回の順序で処理を行い、図44を表示している。図44に示す刻印画像は、トレッド面に表示された識別線の部分410およびアーティクル番号の部分411を含む。
次に、刻印抽出部40は、刻印画像に基づき、接地域画像を修正する(ステップS402)。刻印抽出部40は、例えば、図44に示す刻印画像を、図34に示す接地域画像に重ね合わせて修正する。このとき、刻印抽出部40は、両画像の同じ位置の画素について輝度を加算することによって、図45に示す画像を作成する。図45は、修正された接地域画像の例を示す図である。図45を参照すると、刻印部分は溝ではなく、接地している部分として修正されていることがわかる。
また、刻印抽出部40は、刻印画像に基づき、溝画像を修正する(ステップS403)。刻印抽出部40は、例えば、図44に示す刻印画像を、図41に示す溝画像から差し引いて修正する。より具体的には、刻印抽出部40は、図44に示す刻印画像と図41に示す溝画像との対応する各画素について、溝画像を構成する画素から刻印画像を構成する画素を差し引くことによって、図46に示す画像を作成する。図46は、修正された溝画像の例を示す図である。なおノイズを除去するため、溝画像を構成する画素から刻印画像を構成する画素を差し引いた後、収縮処理2回、膨張処理2回、占有面積100画素以下の黒集合体を除去の順序で処理を行っている。図46を参照すると、溝画像から刻印部分が除去されていることがわかる。
刻印抽出部40は、修正された接地域画像から修正された溝画像の部分を差し引き、補正済接地域画像を作成する(ステップS404)。例えば、刻印抽出部40は、図45に示す修正された接地域画像から、図46に示す修正された溝画像の部分を差し引くことによって、図47に示す画像を作成する。図47は、補正済接地域画像の例を示す図である。なお、ノイズ除去を行うため、収縮処理4回、膨張処理4回、占有面積500画素以下の黒集合体を除去、膨張処理1回、収集処理1回の順序で処理を行い、図47を表示している。以上の処理により、タイヤ60のトレッド面に刻印がある場合においても、接地面画像から刻印を除去する修正を行い、接地特性を精度良く解析できる。
(比較例)
上述した特許文献1では、シートを用いるため、タイヤの動的接地特性の解析が困難である。シートを用いない比較例として、タイヤの溝に白色塗料などを塗布することでシートを用いずに溝部分を明確にする手法が考えられる。しかし、その場合、塗料の塗布の手間がかかり、かつ、塗布に長時間を要するため、好ましくない。
上記の手法に対し、本実施形態のタイヤ接地形状解析装置1によれば、シートや塗料を用いないため、より短い時間で動的接地特性を精度良く解析することができる。
(タイヤ接地形状解析方法)
以上説明したタイヤ接地形状解析装置1は、図48に示す以下のタイヤ接地形状解析方法を実現する。図48は、上記タイヤ接地形状解析装置によって実現されるタイヤ接地形状解析方法を示すフロー図である。
図48において、タイヤ接地形状解析装置1は、解析対象である空気入りタイヤの接地面を撮影した撮影画像を取得する(ステップS101)。タイヤ接地形状解析装置1は、取得された上記撮影画像の解析結果を補正するための画像である補助画像を取得する(ステップS102)。タイヤ接地形状解析装置1は、上記補助画像に基づいて上記撮影画像を補正して、上記タイヤの接地域を示す接地域画像を作成する(ステップS103)。このタイヤ接地形状解析方法を採用することにより、タイヤの動的接地特性を精度良く解析することができる。