JP7117374B2 - 灌流培地 - Google Patents

灌流培地 Download PDF

Info

Publication number
JP7117374B2
JP7117374B2 JP2020520619A JP2020520619A JP7117374B2 JP 7117374 B2 JP7117374 B2 JP 7117374B2 JP 2020520619 A JP2020520619 A JP 2020520619A JP 2020520619 A JP2020520619 A JP 2020520619A JP 7117374 B2 JP7117374 B2 JP 7117374B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cell
perfusion
culture
cells
medium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020520619A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020536567A (ja
Inventor
リン,ヘンリー
ワン,サマンサ
チェン,リリ
Original Assignee
ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング filed Critical ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
Publication of JP2020536567A publication Critical patent/JP2020536567A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7117374B2 publication Critical patent/JP7117374B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/0018Culture media for cell or tissue culture
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
    • C12P21/02Preparation of peptides or proteins having a known sequence of two or more amino acids, e.g. glutathione
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2500/00Specific components of cell culture medium
    • C12N2500/30Organic components
    • C12N2500/36Lipids
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2501/00Active agents used in cell culture processes, e.g. differentation
    • C12N2501/02Compounds of the arachidonic acid pathway, e.g. prostaglandins, leukotrienes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2511/00Cells for large scale production

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Description

関連出願への相互参照
本願は、2017年10月13日に出願された米国仮出願第62/571,915号の優先利益を主張し、その全体を参照により本明細書中に組み入れる。
技術分野
本発明は、最先端の方法と比較し、より大きな細胞特異的な生産性ならびにより良好な持続された及び/又は維持された生存率を達成する、改善された細胞培養培地及び方法に関する。本発明はさらに、部分的には、細胞培養の間に、例えば、灌流細胞培養の生産段階の間に細胞成長を効果的に抑制することを通じて、細胞培養の生存率をより効果的に維持し、細胞特異的な生産性を増加させる新たな改善された細胞培養培地の脂質ベース添加剤の使用に関する。特に、本発明は、灌流細胞培養方法の間(例、生産段階の間)での有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物添加剤(リノール酸、アラキドン酸、プロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む)の使用に関し、それによって、同時に細胞ブリードの低下、高い細胞生存率の維持、及び/又は生産の間での細胞特異的産物の力価の増加を伴う成長抑制がもたらされる。特に、本発明は、灌流細胞培養方法の間での、特に生産段階の間での使用のための有効量の1つ以上のリノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む細胞培養培地に関し、それによって、細胞生存率の改善及び/又は維持ならびに/あるいは細胞特異的な生産性の増加がもたらされる。本発明はまた、遺伝的及び/又は生化学的手段によりリノール酸、アラキドン酸、及び/又はプロスタグランジンE2の合成を増加させることにより、灌流状態において細胞の成長を抑制するための方法に関する。
背景
3つの方法が典型的には、哺乳動物細胞培養による組換えタンパク質の生産のための商業的プロセスにおいて使用される:バッチ培養、流加培養、及び灌流培養。
灌流ベースの方法によって、バッチ方法及び流加方法を上回る潜在的な改善(産物の品質及び安定性の改善、拡張性の改善、細胞特異的な生産性の増加を含む)が提供される。バッチ及び流加バイオリアクターとは異なり、灌流システムには使用済み培地の連続的な除去が含まれる。使用済み培地を継続的に除去し、それを新たな培地と交換することにより、栄養素のレベルがより良く維持され、それによって、同時に成長条件が最適化され、細胞廃棄物が除去される。廃棄物の低減によって、細胞及び発現産物への毒性が低下する。このように、灌流バイオリアクターによって、典型的には、有意に少ないタンパク質分解、ひいてはより高い品質の産物がもたらされる。産物はまた、ずっと急速かつ継続的に収集及び精製することができ、それによって、不安定である産物を生産する場合に特に効果的である。
灌流バイオリアクターはまた、より簡単に拡張できる。伝統的なバッチシステム又は流加システムと比較し、灌流バイオリアクターによって、拡張性及び/又は増加する需要に関していくつかの利点が提供される。1つには、灌流バイオリアクターはサイズがより小さく、同じ生産性(即ち、産物の収量)をより少ない容積で生産することができる。灌流バイオリアクターは、流加バイオリアクターと比較して5~20倍の濃度で機能することができることが受け入れられている。例えば、100リットルの灌流バイオリアクターにより、1,000リットルの流加バイオリアクターと同じ産物収量を生産することができる。従って、1,000リットルの灌流バイオリアクターの使用によって、全体的な生産性に負の影響を与えることなく、典型的な10,000リットルの伝統的な流加バイオリアクターを恐らくは置き換えることができる。この重要な利点は、生産を拡大する際での空間要件が小さくなると言い換えることができる。これはまた、より低い操作ユーティリティ、より少ないインフラ、より少ない労力、低下した機器の複雑さ、継続的な収集、及び増加した産物収量に関連する一連の利点と言い換えることができる。
高い細胞培養密度を達成することは、灌流システムのより大きな生産性の一部を構成する。典型的な大規模な流加商業用細胞培養プロセスでは、10~50×10個細胞/mLの細胞密度に達することができる。しかし、灌流ベースのバイオリアクターでは、>1×10個細胞/mLの極端な細胞密度が達成されている。また、灌流モードでは、高い細胞数が、使用済み培地の連続的な補充を通じて、ずっと長い時間にわたり維持される。灌流バイオリアクター中での増加期間にわたるより高い細胞密度は、それらのより効率的な性能の主要因の一部である。
典型的な灌流培養は、1日又はそれ以上にわたり続くバッチ培養の開始で始まり、迅速な初期細胞成長及びバイオマス蓄積を可能にし、培養への新鮮な灌流培地の連続的、段階的、及び/又は断続的な添加ならびに培養の成長段階及び生産段階を通した細胞の保持を伴う使用済み培地の同時除去が続く。種々の方法、例えば沈降、遠心、ろ過などを使用し、細胞を維持しながら使用済み培地を除去することができる。1日当たりの作業容積の一部分から、最大で1日当たり多くの複数の作業容積の灌流速度が利用されてきた。
連続灌流システムは、伝統的な流加及びバッチシステムを上回る多数の利点を有するが、灌流バイオリアクターが生物製剤製造業界においてより広く受け入れられ利用されるまでには多くの課題が依然として残っている。例えば、灌流バイオリアクターは、培地の除去及び補充の連続サイクルのため、伝統的な流加システムよりも有意に大きな容積の培地を消費する。また、産物品質、例えばタンパク質の折り畳み、凝集、グリコシル化、酸化、及び汚染などのリアルタイムで直接的な評価のための妥当なセンサー技術が一般的に欠如している(それは現在、サンプリング及び分析によってのみ決定することができる)。そのような技術能力を有することは、長期の定常状態灌流の操作を大いに支持するであろう。別の制限は、入手可能な灌流バイオプロセッシングモデリングソフトウェアの一般的な欠如であり、それは、大部分が、灌流ベースのシステムに関する堅牢なデータソースの欠如によるものである。E. Langer and R. Rader, “Continuous Bioprocessing and Perfusion: Wider Adoption Coming as Bioprocessing Matures,” BioProcess J, 2014; 13(1): 43-49を参照のこと。これを参照により本明細書中に組み入れる。
改善を要求する1つの極めて重要な分野は、より良い灌流バイオリアクター培地を開発することである。バッチ培養中で成長させた細胞の十分に確立された知識と比較し、灌流において成長させた細胞の栄養要件に関しては、比較的わずかな科学的データしか入手可能ではない。BSargent, “Are Perfusion Cell Culture Systems the Future for Cell-Culture Based Biomanufacturing,” The Cell Culture Dish, February 3, 2012(オンラインで入手可能)を参照のこと。ある程度まで、最近の培地における改善によって、灌流プロセスにおけるより高い生細胞密度、及び次に高い力価が達成されている。しかし、より高い生細胞密度によって他の問題が起こりうる。特に、これらの生細胞密度の上昇は持続不可能になり、低下した培養の生存率、短縮した灌流培養稼働、及び同時に低下した生産性を招きうる。このように、細胞培養培地の設計は、灌流細胞培養を実施しながら、より大きな細胞の健康、生存率、及び生産性を達成する際に非常に重要である。灌流細胞培養培地の設計及び培養方法に対する改善が、当技術分野の欠陥及び課題を克服するために必要とされる。
連続灌流細胞培養システムが直面する別の問題は、一定の生細胞密度、結果として、より健康的でより生産的な細胞培養を維持するという課題である。これは典型的には、「細胞ブリード」を可能にすることにより対処されてきた。細胞ブリーディングの間に、細胞が、定常状態の灌流細胞培養を可能にするために十分な速度で除去され、廃棄物として廃棄される。次に、これによって生細胞密度が一定に保たれる。しかし、除去された細胞は、それらが目的の産物を含んでいいても廃棄されるため、細胞ブリーディングには無駄が多い。従って、任意の量の細胞ブリーディングは、プロセス効率、産物回収、及び最も重要なことには産物損失に負の影響を及ぼす。細胞ブリード速度は、細胞成長の速度により決定される。より速い倍加時間はまた、一定の細胞密度を維持するためにより高い細胞ブリードを必要とし、結果的に、より多くの無駄がある。
細胞ブリーディングの代替物として、他は、細胞成長の速度を遅くするために化学添加剤を試してきた。例えば、Duら(Biotechnology and Bioengineering, Vol. 112, No. 1, January 2015)は、成長を制御し、細胞培養の生産性を改善させるために、小分子細胞周期阻害剤の使用を報告した。同様の開示がWO 2014/109858において見出され、細胞培養、例えばバッチ培養、流加培養、及び灌流培養などにおけるCDK4阻害剤の使用が開示されている。Duらは、CDK4/6阻害剤が、他の細胞標的に影響を及ぼすことなく、細胞周期を特異的に阻害することをさらに教示している。他の細胞成長阻害剤は開示されていない。
このように、灌流状態において細胞成長を抑制し、細胞ブリーディングについての必要性を回避するために有効な追加の方法及び薬剤は、当技術分野を進歩させるために有意に役立つであろう。
灌流バイオリアクターが直面しているさらに別の問題は、栄養補助剤に関する知識の全体的な欠如である。バッチ細胞培養培地は、栄養補助剤又は添加剤の使用を長い間含んでおり、細胞培養の種々の側面(細胞の生存率、成長、及び生産性を含む)を改善するのに役立ってきた。Gorfien et al., “Optimized Nutrient Additives for Fed-Batch Cultures,” BioPharm International, April 2003, pp. 34-40を参照のこと。しかし、上記のように、連続灌流培養システム用の培地設計はほとんど開発されていない。
脂質ベースの補助剤に関しては、脂質成分及びリポソームが細胞培養中での使用について以前に記載されているが、しかし、成功は限定されている。例えば、Hamsら(Proc Natl Acad Sci USA 78:5588-92, 1981)は、異なる脂質成分(例、コレステロール、レシチン又は精製ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、及びビタミンEを含むリポソーム)を含む培地中でのヒト線維芽細胞の培養を開示している。しかし、Hamsらは、リポソームが、使用の24時間以内に作製される必要があるという点で安定していないことを記載しており、完全培地中でリポソームを使用するだけでは細胞成長は促進されないことを示している。さらに、培養システムは灌流ベースではない。
脂質ベースの補助剤がSpensら(Biotechnol Prog 21:87-95, 2005)において記載されている。Spensらは、とりわけ、コレステロール、シクロデキストリン、ホスファチジルコリン、ビタミンE、クエン酸第二鉄、プルロニック、及びアミノ酸などをさらに含む無タンパク質培地中でのNS0骨髄腫細胞の培養を記載している。しかし、Spensらは、高レベルでは脂質が溶液から沈殿することを記載している。さらに、培養システムは灌流ベースではない。
WO 94/23572 A2(「細胞培養方法及び培地」)は、他の種類の動物細胞の間でも、肝細胞の細胞培養物を生産するための方法に関する。この参考文献は、組織サンプルを細かく刻み、リノール酸を含みうる培地中での組織培養中で細胞を成長させることにより細胞を調製することに関する。しかし、この参考文献における細胞培養の目的は、細胞を増殖させることであり、細胞増殖を阻害することではない。細胞培養はまた、灌流培養ではない。このように、この参考文献では、灌流培養中での使用のための栄養補助剤としてのリノール酸の使用を教示又は示唆しておらず、また、灌流状態において細胞成長を抑制するためのリノール酸の使用を教示又は示唆していない。
WO 98/04681A2(「軟骨細胞培地製剤及び培養手順」)は、動物から単離された軟骨細胞の培養物を調製、増殖するための成長培地及び手順に関する。この参考文献では、リノール酸を含むことができる種々の無血清の定義された細胞培養培地を開示している。しかし、この参考文献における細胞培養の目的は、細胞を増殖させることであり、細胞増殖を阻害することではない。細胞培養はまた、灌流培養ではない。このように、この参考文献では、灌流培養中での使用のための栄養補助剤としてのリノール酸の使用を教示又は示唆しておらず、また、灌流状態において細胞成長を抑制するためのリノール酸の使用を教示又は示唆していない。
WO 2000/027996(「軟骨細胞様細胞用の無血清培地」)は、培養中の軟骨細胞及び間葉系幹細胞の成長及び増殖のための無血清培地に関する。この参考文献では、リノール酸を含むことができる種々の無血清の定義された細胞培養培地を開示している。しかし、この参考文献における細胞培養の目的は、細胞を増殖させることであり、細胞増殖を阻害することではない。細胞培養はまた、灌流培養ではない。このように、この参考文献では、灌流培養中での使用のための栄養補助剤としてのリノール酸の使用を教示又は示唆しておらず、また、灌流状態において細胞成長を抑制するためのリノール酸の使用を教示又は示唆していない。
WO 2003/064598(「軟骨細胞用の無血清培地及び使用方法」)は、培養中の軟骨細胞の成長及び増殖のための無血清培地に関する。この参考文献では、リノール酸及びアラキドン酸を含むことができる種々の無血清の定義された細胞培養培地を開示している。しかし、この参考文献における細胞培養の目的は、細胞を増殖させることであり、細胞増殖を阻害することではない。細胞培養はまた、灌流培養ではない。このように、この参考文献では、灌流培養中での使用のための栄養補助剤としてのリノール酸又はアラキドン酸の使用を教示又は示唆しておらず、また、灌流状態において細胞成長を抑制するリノール酸の使用を教示又は示唆していない。
当技術分野において注目されている灌流細胞培養での課題を考慮すると、灌流状態において細胞増殖を抑制し、細胞ブリーディングについての必要性を回避する際に効果的である追加の培地補助剤又は添加剤は、当技術分野を進歩させるために有意に役立つであろう。
発明の概要
本発明は、特定の脂質及び脂質代謝物ならびに/あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体が、細胞培養培地中に単独で又は組み合わせて(例、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体)含まれる場合、細胞特異的な生産性における増加を起こすのに効果的である、ならびに/あるいは高い細胞生存率を維持又は持続させる及び/又は細胞培養の細胞成長を抑制する際に効果的であるとの発見に部分的に関する。これらの薬剤は、任意の種類の細胞培養システム(バッチ、流加、及び連続灌流細胞培養システムを含む)に関連して使用することができる。特定の実施形態では、細胞培養システムは連続灌流細胞培養システムである。
本明細書中に記載する脂質及び脂質代謝物(例、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体)が、細胞成長を抑制する際に効果的であること、及びこの成長抑制が、細胞特異的な生産性における増加に導き、細胞培養において高い生存率を維持する際に役立つことが見出された。
灌流細胞培養に関して、本明細書中に記載する脂質及び/又は脂質代謝物(例、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体)による細胞成長抑制は、他の方法で細胞を定常状態の成長に維持するために灌流状態の間に細胞ブリーディング技術を用いる必要性を低下又は排除しながら、灌流細胞培養中での細胞特異的な生産性における増加及び高い細胞生存率の持続に導くだけではない。言い換えれば、本発明の脂質及び脂質代謝物による灌流状態における細胞成長の抑制は、全体的な細胞特異的な生産性を増加させ、無駄で望ましくない細胞ブリーディング技術を最小化又は排除しながら、高い細胞生存率を維持するのに役立つ。
上に示すように、無駄な細胞ブリードを利用し、連続的な細胞培養プロセスに関連して、持続可能な生細胞密度を維持し、生存率を保つことができる。連続的なプロセスでは、バイオリアクター内で一定の持続可能な生細胞密度を維持するために増殖中の細胞及び培地を吸い上げる細胞ブリーディングの技術に起因して、培養培地の大部分、ひいては産物が失われうる。収集可能な材料の最大3分の1が、細胞ブリーディング技術に起因して失われうる。細胞ブリーディングを使用することで、従って、細胞ブリーディングにより除去された部分内の産物が収集されないため、稼働当たりの産物収量が減少する。細胞ブリーディングにより除去される培養物の容積を減少させ、このように、収集のためにより多くの上清を保持するために、一度、望ましい生細胞密度に生産段階において達したら細胞増殖を阻害することが有利である。無駄な細胞ブリーディング技術を利用することなく、一度、最適な可変細胞密度が得られたら、細胞増殖を制御する必要があり、それにより、灌流の稼働当たりに回収される産物が増加し、灌流プロセスを操作するためのより効率的な方法が生成される。
本明細書中の実施例の特定の実施形態において実証するように、本発明は、リノール酸、アラキドン酸、又はプロスタグランジンE2の1つ以上を含む灌流培養培地を提供する。本発明はさらに、前記培地を使用した哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培養する方法を提供する。特定の実施形態では、細胞培養方法は流加方法又はバッチ方法でありうる。他の実施形態では、細胞培養方法は連続灌流培養方法でありうる。実施例によって、リノール酸、アラキドン酸、及びプロスタグランジンE2の単独で又は組み合わせが、細胞培養(例、灌流細胞培養)中の哺乳動物細胞に対して同じ効果を有することが実証され、そこで、前記効果は、無駄な細胞ブリーディングについての必要性を伴わない、産物の生産における同時増加を伴う成長抑制である。
このように、本開示の以下の態様を本明細書中で提供する。
本開示の第1の態様では、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む、細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供する。特定の実施形態では、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせは、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加をもたらす。灌流細胞培養に関する特定の他の実施形態では、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加によって、定常状態を維持又は達成するための細胞ブリーディングについての必要性が低下又は排除されうる。
本開示の第2の態様では、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される1つ以上の有効量の脂質又は脂質代謝物を含む灌流培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供する。
本開示の第3の態様では、有効量のリノール酸を含む灌流培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供する。
本開示の第4の態様では、有効量のアラキドン酸を含む灌流培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供する。
本開示の第5の態様では、有効量のプロスタグランジンE2を含む灌流培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供する。
本開示の第6の態様では、(a)目的のタンパク質をコードする組換え哺乳動物細胞を、所望の細胞密度に達するまで灌流増殖培地中で培養すること、及び(b)リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を成長培地中に導入することを含む、灌流細胞培養の特異的な生産性を増強する方法を提供する。特定の実施形態では、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせは、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加をもたらす。灌流細胞培養に関連する特定の他の実施形態では、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加は、定常状態を維持又は達成するための細胞ブリーディングについての必要性を低下又は排除しうる。
本開示の第7の態様では、哺乳動物細胞を培養し、改善された生産性を伴う治療用タンパク質を生産するための細胞培養培地を提供する。細胞培養培地は、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される1つ以上の有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む。特定の実施形態では、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせは、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加をもたらす。灌流細胞培養に関連する特定の他の実施形態では、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加は、定常状態を維持又は達成するための細胞ブリーディングについての必要性を低下又は排除しうる。細胞培養培地は、任意の細胞培養プラットフォーム[バッチ培養、流加培養、及び連続培養(連続灌流培養を含む)を含む]において使用することができる。
上の態様の種々の実施形態では、細胞培養は特に限定せず、細胞培養の全ての形態及び技術(流加培養、バッチ培養、灌流培養、連続培養、有限培養、懸濁培養、付着培養、又は単層培養、足場依存性培養、及び3D培養を含むがこれらに限定しない)を包含しうる。細胞培養の任意の配置を本明細書中で検討する。好ましい実施形態では、細胞培養は連続灌流細胞培養である。
種々の実施形態では、細胞培養中で成長される哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。種々の他の実施形態では、哺乳動物細胞は特に限定しない。それらは、ハムスター(例、CHO細胞又はCHO-S細胞)、ヒト(例、Jurkat細胞、293細胞、HeLa細胞)、サル(例、CV-1細胞)、又はマウス(例、3T3細胞)からの任意の一般に使用される細胞株を含みうる。細胞は、任意の組織からでありうる[例えば、卵巣細胞(例、CHO-SのCHO)又は腎臓細胞(例、293細胞)]。本明細書中の方法のいずれかにおいて使用される細胞はまた、商業的な供給源、例えば、THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)から入手されうる任意の細胞を包含しうる。
種々の実施形態では、リノール酸の有効量は約1800~2000μMからである。他の実施形態では、リノール酸の有効量は約1~5000μMから、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μMである。一実施形態では、リノール酸は500~2000μMの濃度中である。
他の実施形態では、アラキドン酸の有効量は約150~500μMからである。さらに他の実施形態では、アラキドン酸の有効量は約1~5000μMから、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μMである。一実施形態では、アラキドン酸は100~600μMの濃度中である。
他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は約0.001μM~60μMからである。さらに他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は0.000001μM又はそれ以上、0.00001μM又はそれ以上、0.0001μM又はそれ以上、0.001μM又はそれ以上、0.01μM又はそれ以上、0.1μM又はそれ以上、1μM又はそれ以上、10μM又はそれ以上、20μM又はそれ以上、30μM又はそれ以上、40μM又はそれ以上、50μM又はそれ以上、60μM又はそれ以上、70μM又はそれ以上、80μM又はそれ以上、90μM又はそれ以上、100μM又はそれ以上、150μM又はそれ以上、200μM又はそれ以上であり、ここで、各々の範囲の上限は1000μM又はそれ以下であってもよい。さらに他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は約1~5000μM、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μM、又は約0.0001~0.001μMから、約0.0005~0.01μMまで、約0.005~0.1μMまで、約0.05~1.0μMまで、約0.5~100μMまで、約50~1000μMまで又はそれ以上である。一実施形態では、プロスタグランジンE2は0.0001~100μMの濃度中である。
一部の実施形態では、培養培地は、少なくとも2つの脂質又は脂質代謝物を含む。一実施形態では、培養培地は、100~300μMの濃度のアラキドン酸及び500~1800μMの濃度のリノール酸を含む。別の実施形態では、培養培地は、500~1800μMの濃度のリノール酸又は100~150μMの濃度のアラキドン酸のいずれかとの組み合わせにおいて、0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む。
さらに別の実施形態では、培養培地は3つ全ての脂質又は脂質代謝物を含む。一実施形態では、培養培地は、500~2000μMの濃度中のリノール酸、100~300μMの濃度のアラキドン酸、及び0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む。
種々の実施形態では、異種タンパク質は特に限定せず、例えば、治療用タンパク質(例えば、限定しないが、抗体、融合タンパク質、サイトカイン、もしくは成長因子、又はそれらの断片など)でありうる。抗体はモノクローナル抗体でありうるが、(a)抗原結合構成要素(例、単一可変ドメイン結合部位;2つの可変ドメイン結合部位;ダイアボディ)、(b)二重特異性抗体断片(例 、タンデムscFv、タンデムscFv-Fc、scFv-Fcノブイントゥホール、scFv-Fc-scFv、F(ab′)、Fab-scFv、(Fab′scFv)、ダイアボディ、scダイアボディ、scダイアボディ-Fc、scダイアボディ-C3)、(c)IgGベースの二重特異性抗体(例、ハイブリッドハイブリドーマ、共通軽鎖を伴うノブイントゥホール、ツーインワンIgG、二重VドメインIgG、IgG-scFv、scFv-IgG、IgG -V、及びV-IgG)を含む任意の代替分子形式でありうる。Chan et al., Nature Reviews Immunology, Vol. 10, pp. 301-316 (May 2010)を参照のこと(参照により本明細書中に組み入れる)。
種々の実施形態では、1つ以上の脂質又は脂質代謝物は、細胞培養中の細胞が特定の密度に達した場合にだけ加える又は開始する。特定の実施形態では、細胞密度は10×10個細胞/mLから約120×10個細胞/mL又はさらに高い。脂質開始のための細胞密度はまた、少なくとも10×10個細胞/mL、少なくとも20×10個細胞/mL、少なくとも30×10個細胞/mL、少なくとも40×10個細胞/mL、又は少なくとも50×10個細胞でありうる。
特定の実施形態では、細胞が所望の生存細胞密度に達するまで、無血清灌流培地を用いた灌流により、成長段階の間に哺乳動物細胞を培養する;及び次に、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの有効な誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む無血清灌流培地中で生産段階の間に細胞を成長させるための方法を提供する。特定の実施形態では、アラキドン酸は、存在する場合、100~300μMの濃度であり、リノール酸は、存在する場合、500~1800μMの濃度であり、プロスタグランジンE2は、存在する場合、0.0001~0.0009μMの濃度である。特定の他の実施形態では、成長段階は、所望の生細胞密度(VCD)が10×10個細胞/mLから約120×10個細胞/mL又はさらに高くまで達するまで、あるいは約10×10個細胞/mL、又は約20×10個細胞/mL、又は約30×10個細胞/mL、又は約40×10個細胞/mLもしくは約50×10個細胞に達するまで継続する。
灌流細胞培養に関する特定の実施形態では、細胞培養の方法は、細胞ブリーディングのさらなる工程を含みうる。しかし、細胞ブリーディングの使用は、同じ灌流培地を使用するが、しかし、本明細書中に記載する脂質又は脂質代謝物を含まない灌流細胞培養と比較し、本明細書中に記載する方法の脂質含有培地を用いて低下又は排除されうる。
灌流培地の浸透圧は、300~1400mOsmol/kgの間、好ましくは300~500mOsmol/kgの間、より好ましくは330~450mOsmol/kgの間、さらにより好ましくは360~390mOsmol/kgの間の範囲中でありうる。
灌流培地は無血清であってもよく、ならびに、それはさらに化学的に定義され、及び/又は加水分解物を含まなくてもよい。好ましくは、灌流培地は、無タンパク質あるいは組換えインスリン及び/又はインスリン様成長因子を除く無タンパク質であることができ、より好ましくは、無血清灌流培地は化学的に定義され、無タンパク質あるいは組換えインスリン及び/又はインスリン様成長因子を除く無タンパク質である。
さらなる態様では、本発明の方法を使用して治療用タンパク質を生産する方法を提供し、場合により、治療用タンパク質を医薬的に許容可能な製剤に精製及び製剤化するさらなる工程を含む。
特定のさらなる実施形態では、本開示は、本開示の範囲を限定することを任意の方法で意図するものではない以下の実施形態を提供する。
一実施形態では、本開示は、細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供し、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む。特定の実施形態では、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせは、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加をもたらす。灌流細胞培養に関連する特定の他の実施形態では、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加は、定常状態を維持又は達成するための細胞ブリーディングについての必要性を低下又は排除しうる。
別の実施形態では、本発明は、細胞培養から治療用タンパク質を生産する方法を提供し、以下を含む:
(a)リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養すること、
(b)細胞培養から異種タンパク質を収集すること。
特定の実施形態では、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせは、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加をもたらす。灌流細胞培養に関連する特定の他の実施形態では、成長抑制及び/又は細胞特異的な生産性の増加は、定常状態を維持又は達成するための細胞ブリーディングについての必要性を低下又は排除しうる。
種々の実施形態では、灌流細胞培養培地は、リノール酸、アラキドン酸、及びプロスタグランジンE2、ならびにそれらの機能的に等価な誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む。
種々の実施形態では、リノール酸又はその誘導体は500~2000μMの濃度中である。
種々の実施形態では、アラキドン酸又はその誘導体は100~600μMの濃度中である。
種々の実施形態では、プロスタグランジンE2又はその誘導体は0.0001~100μMの濃度中である。
種々の実施形態では、培養培地は、2つの脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む。
種々の実施形態では、培養培地は、100~300μMの濃度のアラキドン酸及び500~1800μMの濃度のリノール酸を含む。
種々の実施形態では、培養培地は、500~1800μMの濃度のリノール酸又は100~150μMの濃度のアラキドン酸のいずれかとの組み合わせにおいて、0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む。
種々の実施形態では、培養培地は、3つ全ての脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む。
種々の実施形態では、リノール酸は500~2000μMの濃度中であり、アラキドン酸は100~300μMの濃度であり、及びプロスタグランジンE2は0.0001~0.0009μMの濃度である。
種々の実施形態では、細胞培養は、バッチ、流加、又は連続灌流細胞培養である。
種々の実施形態では、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ジャーカット細胞、293細胞、HeLa細胞、CV-1細胞、又は3T3細胞、あるいはこれらの細胞のいずれかの誘導体であり、ここで、前記CHO細胞は、CHO-DG44細胞、CHO-K1細胞、CHO DXB11細胞、CHO-S細胞、及びCHO GS欠損細胞又はこれらの細胞のいずれかの誘導体からなる群よりさらに選択することができる。
種々の実施形態では、異種タンパク質は、治療用タンパク質、抗体、又はそれらの治療的に有効な断片である。
種々の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体又はその断片である。
種々の実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。
種々の実施形態では、培養培地は無血清灌流培地である。
種々の実施形態では、培養培地は、場合により(a)化学的に定義され、(b)加水分解物を含まない、又は(c)タンパク質を含まないが、しかし、場合によりインスリン及び/又はインスリン様成長因子を含む。
種々の実施形態では、細胞培養により生産される異種タンパク質の総生産が、脂質又は脂質代謝物を含まない対照細胞培養中での総生産のレベルと比べて、少なくとも5%、又は少なくとも6%、又は少なくとも7%、又は少なくとも8%、又は少なくとも9%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%増加する場合、生産性の増加が達成される。
種々の実施形態では、細胞培養の細胞特異的な生産性(pg/細胞/日)が、脂質又は脂質代謝物を含まない対照細胞培養中での特定の生産性と比べて、少なくとも5%、又は少なくとも6%、又は少なくとも7%、又は少なくとも8%、又は少なくとも9%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200% 又は少なくとも5~10%、又は少なくとも7.5~20%、又は少なくとも10~30%、又は少なくとも12.5~40%、又は少なくとも15~50%、又は少なくとも5~50%増加する場合、生産性の増加が達成される。
種々の実施形態では、成長抑制は、脂質又は脂質代謝物を含まない対照細胞培養と比べて、少なくとも50%低い、少なくとも40%低い、少なくとも30%低い、少なくとも20%低い、少なくとも15%低い、又は少なくとも10%低い、又は少なくとも5%低い、又は少なくとも2.5%低い、又は1%もしくはより低い生細胞密度を有する定常状態に細胞を維持するために十分である。
種々の実施形態では、2日目の細胞培養は灌流細胞培養に変化される。
種々の実施形態では、灌流速度は、灌流が開始した後に増加する。
種々の実施形態では、灌流速度は、1日当たり0.5容器容積以下から1日当たり5容器容積まで増加する。
種々の実施形態では、灌流速度は、1日当たり0.5容器容積以下から1日当たり2容器容積まで増加する。
種々の実施形態では、細胞培養物から異種タンパク質を連続的な様式で収集することをさらに含む。
種々の実施形態では、1つ以上の脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体は、一度、細胞密度が10×10個細胞/mL~約120×10個細胞/mLに達したら細胞培地に加える。一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、500μMのリノール酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にリノール酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが6~10%減少する。
別の実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、900μMのリノール酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にリノール酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが11~14%減少する。
さらに別の実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、1350μMのリノール酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にリノール酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが11~25%減少する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、1800μMのリノール酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にリノール酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが23~39.8%減少する。
別の実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、500μMのアラキドン酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にアラキドン酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが15~36%減少する。
別の実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、0.001μMのプロスタグランジンE2、あるいはその誘導体及び/又は前駆体を含み、それによって、その成長培地中にアラキドン酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが17%減少する。
別の実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、10μMのプロスタグランジンE2、あるいはその誘導体及び/又は前駆体を含み、それによって、その成長培地中にアラキドン酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが28%減少する。
別の実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、20μMのプロスタグランジンE2、あるいはその誘導体及び/又は前駆体を含み、それによって、その成長培地中にアラキドン酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが39%減少する。
別の実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、60μMのプロスタグランジンE2、あるいはその誘導体及び/又は前駆体を含み、それによって、その成長培地中にアラキドン酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが30%減少する。
別の実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、10μMのプロスタグランジンE2、あるいはその誘導体及び/又は前駆体を含み、それによって、その成長培地中にアラキドン酸を含まない細胞培養物と比べて、VCDが28%減少する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、500μMのリノール酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にリノール酸を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大10%増加する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、900μMのリノール酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にリノール酸を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大14%増加する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、1350μMのリノール酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にリノール酸を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大14%増加する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、1800μMのリノール酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にリノール酸を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大30%増加する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、500μMのアラキドン酸、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にアラキドン酸を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大52%増加する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、0.001μMのプロスタグランジンE2、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にプロスタグランジンE2を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大13.5%増加する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、10μMのプロスタグランジンE2、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にプロスタグランジンE2を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大34.4%増加する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、20μMのプロスタグランジンE2、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にプロスタグランジンE2を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大31%増加する。
一実施形態では、本明細書中に開示する方法及び/又は成長培地は、60μMのプロスタグランジンE2、又はその誘導体を含み、それによって、その成長培地中にプロスタグランジンE2を含まない細胞培養物と比べて、細胞特異的な生産性が最大31%増加する。
灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現するCHO細胞株の(A)%パーセント生存率、(B)生細胞密度(e個細胞/mL)、及び(C)特異的な生産性(pg/細胞/日)に対する温度シフトの効果。灌流を細胞培養の2日目に開始し、1日当たり2容器容積(2VVD)の交換まで徐々に増やした。矢印は、温度が37℃から説明文中の示されている値(29℃-正方形又は28℃-三角形)にシフトした日を示す。さらなる詳細を実施例1に見出すことができる。 灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現するCHO細胞株の(A)%パーセント生存率、(B)生細胞密度(e個細胞/mL)、及び(C)特異的な生産性(pg/細胞/日)に対する温度シフトの効果。灌流を細胞培養の2日目に開始し、1日当たり2容器容積(2VVD)の交換まで徐々に増やした。矢印は、温度が37℃から説明文中の示されている値(29℃-正方形又は28℃-三角形)にシフトした日を示す。さらなる詳細を実施例1に見出すことができる。 灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現するCHO細胞株の(A)%パーセント生存率、(B)生細胞密度(e個細胞/mL)、及び(C)特異的な生産性(pg/細胞/日)に対する温度シフトの効果。灌流を細胞培養の2日目に開始し、1日当たり2容器容積(2VVD)の交換まで徐々に増やした。矢印は、温度が37℃から説明文中の示されている値(29℃-正方形又は28℃-三角形)にシフトした日を示す。さらなる詳細を実施例1に見出すことができる。 リノール酸代謝の代謝経路を示す。高濃度の外因性遊離リノール酸が、細胞膜を通じて拡散し、次にアラキドン酸に変換されることを描写する。アラキドン酸は次に、他の下流代謝物の間で、PGEへの多段階反応を通じて代謝される。 リノール酸を灌流培地に加えた場合、CHO灌流細胞培養中で細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。種々の濃度500μM、900μM、1350μM、及び1800μMのリノール酸を細胞培養培地に加えて、(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)特異的な生産性(qp)を決定した。さらなる詳細を実施例2に見出すことができる。 リノール酸を灌流培地に加えた場合、CHO灌流細胞培養中で細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。種々の濃度500μM、900μM、1350μM、及び1800μMのリノール酸を細胞培養培地に加えて、(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)特異的な生産性(qp)を決定した。さらなる詳細を実施例2に見出すことができる。 リノール酸を灌流培地に加えた場合、CHO灌流細胞培養中で細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。種々の濃度500μM、900μM、1350μM、及び1800μMのリノール酸を細胞培養培地に加えて、(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)特異的な生産性(qp)を決定した。さらなる詳細を実施例2に見出すことができる。 アラキドン酸を灌流培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。(A)生細胞密度(e個細胞/ml)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)細胞培養の特異的な生産性(q)に対するアラキドン酸の効果を決定した。通常の灌流培地中に加えた500μMのアラキドン酸濃度によって、細胞成長が最大31%抑制され、細胞特異的な生産性が46%又はそれより高く増加した。さらなる詳細を実施例3に見出すことができる。 アラキドン酸を灌流培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。(A)生細胞密度(e個細胞/ml)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)細胞培養の特異的な生産性(q)に対するアラキドン酸の効果を決定した。通常の灌流培地中に加えた500μMのアラキドン酸濃度によって、細胞成長が最大31%抑制され、細胞特異的な生産性が46%又はそれより高く増加した。さらなる詳細を実施例3に見出すことができる。 アラキドン酸を灌流培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。(A)生細胞密度(e個細胞/ml)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)細胞培養の特異的な生産性(q)に対するアラキドン酸の効果を決定した。通常の灌流培地中に加えた500μMのアラキドン酸濃度によって、細胞成長が最大31%抑制され、細胞特異的な生産性が46%又はそれより高く増加した。さらなる詳細を実施例3に見出すことができる。 アラキドン酸を灌流「k-pop」培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。この例におけるk-pop培地は、約34mMのナトリウム濃度及び約94mMの上昇したカリウム濃度、即ち、0.4mol Na/mol Kの低下したナトリウム対カリウム比率を有する。(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)特異的な生産性(q)に関するk-popベースラインにおける150μM、300μM、及び500μMのアラキドン酸濃度の効果を決定した。さらなる詳細を実施例4に見出すことができる。 アラキドン酸を灌流「k-pop」培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。この例におけるk-pop培地は、約34mMのナトリウム濃度及び約94mMの上昇したカリウム濃度、即ち、0.4mol Na/mol Kの低下したナトリウム対カリウム比率を有する。(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)特異的な生産性(q)に関するk-popベースラインにおける150μM、300μM、及び500μMのアラキドン酸濃度の効果を決定した。さらなる詳細を実施例4に見出すことができる。 アラキドン酸を灌流「k-pop」培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。この例におけるk-pop培地は、約34mMのナトリウム濃度及び約94mMの上昇したカリウム濃度、即ち、0.4mol Na/mol Kの低下したナトリウム対カリウム比率を有する。(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)特異的な生産性(q)に関するk-popベースラインにおける150μM、300μM、及び500μMのアラキドン酸濃度の効果を決定した。さらなる詳細を実施例4に見出すことができる。 プロスタグランジンE2を灌流培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。図6は、(A)生細胞密度(VCD)(e5個細胞/mL)、(B)細胞の生存率(パーセント)、及び(C)特異的な生産性(pg/細胞/日)に対する灌流培地に加えられた500μMのアラキドン酸、PGE2 0.001μM、10μM、20μM、及び60μMの濃度の効果を実証する。さらなる詳細を実施例5に見出すことができる。 プロスタグランジンE2を灌流培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。図6は、(A)生細胞密度(VCD)(e5個細胞/mL)、(B)細胞の生存率(パーセント)、及び(C)特異的な生産性(pg/細胞/日)に対する灌流培地に加えられた500μMのアラキドン酸、PGE2 0.001μM、10μM、20μM、及び60μMの濃度の効果を実証する。さらなる詳細を実施例5に見出すことができる。 プロスタグランジンE2を灌流培地に加えた場合、細胞成長が抑制され、細胞特異的な生産性(q)が増加することを実証する。図6は、(A)生細胞密度(VCD)(e5個細胞/mL)、(B)細胞の生存率(パーセント)、及び(C)特異的な生産性(pg/細胞/日)に対する灌流培地に加えられた500μMのアラキドン酸、PGE2 0.001μM、10μM、20μM、及び60μMの濃度の効果を実証する。さらなる詳細を実施例5に見出すことができる。 500μMのアラキドン酸を伴う灌流培地中での(A)生細胞密度、(B)パーセント生存率、及び(C)特異的な生産性に対するアセチルサリチル酸(ASA)の効果を実証する。さらなる詳細を実施例6に見出すことができる。 500μMのアラキドン酸を伴う灌流培地中での(A)生細胞密度、(B)パーセント生存率、及び(C)特異的な生産性に対するアセチルサリチル酸(ASA)の効果を実証する。さらなる詳細を実施例6に見出すことができる。 500μMのアラキドン酸を伴う灌流培地中での(A)生細胞密度、(B)パーセント生存率、及び(C)特異的な生産性に対するアセチルサリチル酸(ASA)の効果を実証する。さらなる詳細を実施例6に見出すことができる。
詳細な説明
本発明は部分的には、特定の脂質及び脂質代謝物が、細胞培養培地中に単独で又は組み合わせて含まれる場合(例、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体)、細胞培養の生存細胞密度及び細胞特異的な生産性における増加を起こすのに有効であるとの発見に関連する。これらの薬剤は、任意の種類の細胞培養システム(バッチ、流加、及び連続灌流細胞培養システムを含む)に関連して使用することができる。灌流細胞培養の場合では、脂質及び/又は脂質代謝物の使用によって、細胞培養の定常状態を維持するための手段としての細胞ブリーディングについての必要性を低下又は排除することができ、即ち、脂質及び/又は脂質代謝物単独によって、生細胞密度を減少させ、細胞成長を抑制することにより、細胞培養の定常状態を維持又は持続することが可能である。
理論にとらわれることなく、及び実施例で実証しているように、プロスタグランジンE2は、細胞成長抑制及び細胞特異的な生産性の増加を引き起こす中心的な重要因子である。リノール酸及びアラキドン酸は、プロスタグランジンE2合成の前駆体であり、同じ代謝経路の一部である(図2を参照のこと)。このように、別の態様では、本開示は、プロスタグランジンE2の細胞内濃度を直接的又は間接的な手段[外因性プロスタグランジンE2を細胞培養培地に加えること、及び外因性プロスタグランジンE2代謝前駆体(リノール酸及び/又はアラキドン酸を含む)を細胞培養培地に加えることを含むが、これらに限定しない]
により効果的に増加させるための幅広いアプローチを検討する。
定義
特定の用語の定義を以下に提供する。一般的に、本開示で提示する任意の用語には、他に明記又は定義しない限り、当技術分野におけるそれらの通常の意味を与えるべきである。
一般的な実施形態「含む」又は「含まれる」は、より具体的な実施形態「からなる」を包含する。さらに、単数形及び複数形は、限定的な方法では使用しない。本明細書中で使用するように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、単数だけを指定するようにはっきりと明記しない限り、単数及び複数の両方を指定する。
本明細書中で使用する用語「灌流」は、細胞がリアクター中で保持されながら、等容積の培地が同時に加えられ、リアクターから除去される細胞培養バイオリアクターを維持することを指す。灌流培養はまた、連続培養としても言及しうる。これは、新鮮な栄養素の定常供給源及び細胞廃棄物の一定除去を提供する。灌流は一般に、従来のバイオリアクターバッチ条件又は流加バッチ条件よりもずっと高い細胞密度、ひいてはより高い容積生産性に達するために使用される。分泌タンパク質産物は、例えば、ろ過、交互接線流(ATF)、細胞沈降、超音波分離、ハイドロサイクロン、又は当業者に公知の任意の他の方法、あるいはKompala及びOzturk(Cell Culture Technology for Pharmaceutical and Cell-Based Therapies, (2006), Taylor & Francis Group, LLC, pages 387-416)に記載されているように、リアクター中に細胞を保持しながら連続的に収集することができる。哺乳動物細胞は、懸濁培養中で成長させる(均一培養)、又は表面に付着させる、もしくは異なるデバイス中に封入する(不均一培養)。バイオリアクター中の作業容積を一定に保つために、収集速度及び細胞ブリード(液体除去)は、予め決められた灌流速度に等しくなければならない。培養は典型的には、バッチ培養により開始し、灌流は、細胞が依然として指数関数成長期にある接種後2~3日、及び栄養制限が生じる前に開始する。
灌流ベースの方法は、新鮮な培地を加え、同時に使用済み培地を除去することにより、バッチ方法及び流加方法を上回る潜在的な改善を提供する。大規模な商業的な細胞培養戦略は、60~90×10個細胞/mLの高い細胞密度に達しうるが、その時点でリアクター容積の約3分の1から半分以上がバイオマスでありうる。灌流ベースの培養を用いて、>1×10個細胞/mLの極端な細胞密度が達成されている。典型的な灌流培養は、1日又はそれ以上にわたり続くバッチ培養の開始で始まり、迅速な初期細胞成長及びバイオマス蓄積を可能にし、培養への新鮮な灌流培地の連続的、段階的、及び/又は断続的な添加ならびに培養の成長段階及び生産段階を通した細胞の保持を伴う使用済み培地の同時除去が続く。種々の方法、例えば沈降、遠心、ろ過などを使用し、細胞を維持しながら使用済み培地を除去することができる。1日当たりの作業容積の一部分から、最大で1日当たり多くの複数の作業容積の灌流速度が利用されてきた。
本明細書中で使用する用語「灌流速度」は、加える及び除去される容積であり、典型的には1日当たりで測定する。それは細胞密度及び培地に依存する。それは、目的の産物の希釈、即ち、収集力価を低下させるために、栄養素の追加及び副産物の除去の妥当な速度を確保しながら最小化すべきである。灌流は、典型的には、細胞が依然として指数関数成長期にあり、それ故に灌流速度が培養にわたり増加しうる場合、接種後2~3日目に開始する。灌流速度における増加は漸増的又は連続的でありうる、即ち、細胞密度又は栄養消費に基づきうる。それは、典型的には、1日当たり0.5又は1容器容積(VVD)で始まり、最大で約5VVDまで行きうる。好ましくは、灌流速度は0.5~2VVDの間である。増加は0.5~1VVDでありうる。灌流における継続的な増加のために、バイオマスプローブは、灌流速度が、所望の細胞特異的な灌流速度(CSPR)に基づき、バイオマスプローブにより決定される細胞密度の線形関数として増加するように、収集ポンプと接続してもよい。CSPRは細胞密度当たりの灌流速度に等しく、理想的なCSPRは細胞株及び細胞培地に依存する。理想的なCSPRは、最適な成長速度及び生産性をもたらすはずである。1日当たり50~100pL/細胞のCSPRは、合理的な開始範囲でありうるが、特定の細胞株についての最適な速度を見出すために調整することができる。
本明細書中で使用する用語「定常状態」は、細胞密度及びバイオリアクター環境が比較的一定のままである状態を指す。これは、細胞ブリーディング、栄養制限、及び/又は温度低下により達成することができる。大半の灌流培養中では、栄養供給及び廃棄物除去によって、一定の細胞成長及び生産性が可能になり、細胞ブリーディングが、一定の生細胞密度を維持する、又は細胞を定常状態に維持するために要求される。定常状態での典型的な生細胞密度は10~50e6個細胞/mLである。生細胞密度は、灌流速度に依存して変動しうる。より高い細胞密度が、灌流速度を増加させることにより、又は灌流での使用のために培地を最適化することにより達することができる。非常に高い生細胞密度では、灌流培養をバイオリアクター内で制御することが困難になる。
用語「細胞ブリード」及び「細胞ブリーディング」は、本明細書中で互換的に使用し、バイオリアクター内で一定の持続可能な生細胞密度を維持するための、バイオリアクターからの細胞及び培地の除去を指す。一定の持続可能な生細胞密度はまた、標的細胞密度として言及しうる。この細胞ブリードは、定められた流速でディップチューブ及び蠕動ポンプを使用して行いうる。チューブは正しいサイズを有するべきであり、狭すぎるチューブでは細胞の凝集及び詰まりが起こりやすくなり、大きすぎる場合には細胞が沈みうる。細胞ブリードは成長速度に基づいて決定することができ、このように、生細胞密度は連続的な様式で所望の容積に限定することができる。あるいは、細胞を特定の頻度(例、1日1回)で除去し、培地で置き換え、細胞密度を予測可能な範囲内に維持してもよい。理想的には、細胞ブリード速度は、定常の細胞密度を維持するために成長速度に等しい。
典型的には、細胞ブリードを用いて除去された目的の産物は廃棄され、従って、収集物についても失われる。透過物とは逆に、細胞ブリードは細胞を含み、それによって精製前の産物の保存がより困難になり、産物の品質に有害な効果を有しうる。このように、細胞を、保存及び産物精製前に連続的に除去しなければならないであろうし、これは労力を要し、費用効率が悪いであろう。遅く成長する細胞については、細胞ブリードは除去した液体の約10%でありうるが、速く成長する細胞については、細胞ブリードは除去した液体の約30%でありうる。このように、細胞ブリードを通じた産物の損失は、全体で生成される産物の約30%になりうる。本明細書中で使用する「透過物」は、培養容器中に保持されるために、細胞が分離された収集物を指す。
用語「培養」又は「細胞培養」は互換的に使用し、細胞集団の生存及び/又は成長を可能にするために適切な条件下で培地中に維持される細胞集団を指す。本発明は、哺乳動物細胞培養だけに関する。哺乳動物細胞は、懸濁液中で、又は固体支持体に付着させて培養してもよい。当業者には明らかであるように、細胞培養は、細胞集団及び、集団が懸濁されている培地を含む組み合わせを指す。特定の種類の細胞培養は特に限定しないが、細胞培養の全ての形態及び技術(流加培養、バッチ培養、灌流培養、連続培養、有限培養、懸濁培養、接着又は単層培養、足場依存性培養、及び3D培養を含むが、これらに限定しない)を包含しうる。
本明細書中で使用する用語「培養する」は、哺乳動物細胞が、制御された条件下で、ならびに細胞の成長及び/又は生存を支持する条件下で成長又は維持されるプロセスを指す。本明細書中で使用する用語「細胞を維持する」は、「細胞を培養する」と互換的に使用する。「培養する」はまた、培養培地中に細胞を接種する工程を指しうる。
本明細書中で使用する用語「バッチ培養」は、細胞を一定容積の培養培地中で短時間にわたり成長させ、十分な収集が続く不連続方法である。バッチ方法を使用して成長させた培養では、最大細胞密度に達するまで細胞密度における増加を経験し、培地成分が消費されて代謝副産物(例えば乳酸及びアンモニアなど)のレベルが蓄積するにつれて、生細胞密度における減少が続く。収集は、典型的には、最大細胞密度が達成された時点(典型的には、培地製法、細胞株などに依存して5~10×10個細胞/mL)(典型的には3~7日前後)又はその直後に生じる。
本明細書中で使用するように、用語「流加培養」によって、消費された培地成分を補充するためにボーラス又は連続培地供給を提供することにより、バッチプロセスが改善される。流加培養は、培養プロセスを通して追加の栄養素を受け取るため、それらは、バッチ方法と比較した場合、より高い細胞密度(培地製法、細胞株などに依存して>10~30×10個/ml)及び増加した産物の力価を達成する可能性を有する。バッチプロセスとは異なり、二相培養は、供給戦略及び培地製法を操作し、細胞増殖の期間を区別することにより作製及び維持し、懸濁の又は遅い細胞成長(生産段階)の期間から所望の細胞密度(成長段階)を達成することができる。そのようなものとして、流加培養は、バッチ培養と比較し、より高い産物の力価を達成する可能性を有する。バッチ方法と同様に、代謝副産物の蓄積は、これらが細胞培養培地内に徐々に蓄積するにつれて、経時的に細胞生存率の低下に導き、それによって生産段階の期間が約1.5~3週間に制限される。流加培養は不連続であり、収集は、典型的には、代謝副産物レベル又は培養生存率が予め決められたレベルに達する際に生じる。
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、本明細書中では「アミノ酸残基配列」と互換的に使用し、アミノ酸のポリマーを指す。これらの用語はまた、限定しないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、又はタンパク質プロセシングを含む反応を通じて翻訳後修飾されたタンパク質を含む。修飾及び変化、例えば、他のタンパク質への融合、アミノ酸配列の置換、欠失、又は挿入を、ポリペプチドの構造において、分子がその生物学的機能活性を維持しながら作ることができる。例えば、特定のアミノ酸配列置換をポリペプチド又はその基礎となる核酸コード配列中で作ることができ、同じ特性を伴うタンパク質を得ることができる。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の類似体又は模倣物であるアミノ酸ポリマーに適用される。用語「ポリペプチド」は、典型的には、10を上回るアミノ酸を伴う配列を、用語「ペプチド」は、最大10のアミノ酸長を伴う配列を指す。
本明細書中で使用する用語「異種タンパク質」は、宿主細胞とは異なる生物又は異なる種から由来するポリペプチドを指す。異種タンパク質は、そのタンパク質を自然で発現しない宿主細胞中に実験的に入れられる異種ポリヌクレオチドによりコード化される。異種ポリヌクレオチドはまた、導入遺伝子として言及しうる。このように、それは、異種タンパク質をコードする遺伝子又はオープンリーディングフレーム(ORF)でありうる。タンパク質に関して使用する場合の用語「異種」はまた、タンパク質が、互いに同じ関係で又は自然で同じ長さで見出されないアミノ酸配列を含むことを示しうる。このように、それはまた、組換えタンパク質を包含する。異種はまた、ポリヌクレオチド配列、例えば遺伝子もしくは導入遺伝子、又はその一部などを指し、典型的には見出されない場所において哺乳動物細胞のゲノム中に挿入されている。本発明では、異種タンパク質は好ましくは治療用タンパク質である。
用語「培地」、「細胞培養培地」、及び「培養培地」は、本明細書中で互換的に使用し、細胞、特に哺乳動物細胞に栄養を与える栄養素の溶液を指す。細胞培養培地製法は当技術分野で周知である。典型的には、細胞培養培地は、最小限の成長及び/又は生存のために細胞により要求される必須及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、及び微量元素、ならびに緩衝剤、及び塩を提供する。培地はまた、成長及び/又は生存を、最小限の速度を上回って増強する補助成分を含みうるが、ホルモン及び/又は他の成長因子、特定のイオン(例えばナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸)、緩衝剤、ビタミン、ヌクレオシド又はヌクレオチド、微量元素(通常、非常に低い最終濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、及び/又はグルコースあるいは他のエネルギー源を含むが、これらに限定しない(本明細書に記載するとおり)。特定の実施形態では、培地を、細胞の生存及び増殖のために最適なpH及び塩濃度に有利に製剤化する。本発明による培地は、細胞培養の開始後に加えられる灌流培地である。特定の実施形態では、細胞培養培地は、出発栄養溶液(基礎培地又は接種培地)及び細胞培養の開始後に加えられる任意の培地の混合物である。一部の細胞培養システム、例えば、灌流細胞培養は、異なる培養段階(成長段階及び生産段階を含む)を有しうる。成長段階及び生産段階の間に使用される特定の培地は、前記特定の段階における実施のために特に設計してもよい。一部の実施形態では、脂質及び/又は脂質代謝物を、生産段階だけ、もしくは成長段階だけにおいて、又は成長段階及び生産段階の両方において加える又は含めてもよい。
本明細書中で使用する用語「無血清」は、動物又はヒトの血清(例えばウシ胎児血清など)を含まない細胞培養培地を指す。好ましくは、無血清培地は、任意の動物又はヒト由来の血清から単離されたタンパク質を含まない。種々の組織培養培地(定義された培養培地を含む)が商業的に入手可能であり、例えば、とりわけ、以下の細胞培養培地の任意の1つ又は組み合わせを使用することができる:RPMI-1640培地、RPMI-1641培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須イーグル培地、F-12K培地、ハムF12培地、イスコーブ改変ダルベッコ培地、マッコイ5A培地、ライボビッツL-15培地、及び無血清培地、例えばEX-CELL(商標)300シリーズ(JRH Biosciences、カンザス州レネックサ)など。そのような培養培地の無血清バージョンも入手可能である。細胞培養培地は、培養する細胞の要件及び/又は所望の細胞培養パラメーターに依存して、追加又は増加濃度の成分(例えばアミノ酸、塩、糖、ビタミン、ホルモン、成長因子、緩衝剤、抗生物質、脂質、微量元素など)で補充してもよい。
本明細書中で使用する用語「無タンパク質」は、任意のタンパク質を含まない細胞培養培地を指す。このように、それは、動物又はヒトから単離された、血清から由来するタンパク質、又は組換え生産タンパク質、例えば哺乳動物細胞、細菌細胞、昆虫細胞、又は酵母細胞中で生産された組換えタンパク質などを欠く。無タンパク質培地は、単一の組換えタンパク質、例えばインスリン又はインスリン様成長因子などを含みうるが、この添加がはっきりと明記されている場合だけである。
本明細書中で使用する用語「化学的に定義された」は、無血清であり、加水分解物、例えば酵母、植物、又は動物から由来するタンパク質加水分解物などを含まない培養培地を指す。好ましくは、化学的に定義された培地はまた、タンパク質を含まないか、あるいは選択された組換え生産された(動物由来ではない)タンパク質、例えばインスリン又はインスリン様成長因子などだけを含む。化学的に定義された培地は、特徴付けされ、精製された物質の混合物からなる。化学的に定義された培地の例は、例えば、Invitrogen(米国カリフォルニア州カールスバッド)からのCD-CHO培地である。
本明細書中で使用する用語「懸濁細胞」又は「非付着細胞」は、液体培地中の懸濁において培養される細胞に関する。付着細胞(例えばCHO細胞など)は、懸濁中で成長するように適応され、それにより、容器又は組織培養皿の表面に付着するその能力を失いうる。
本明細書中で使用するように、用語「バイオリアクター」は、細胞培養の成長のために有用な任意の容器を意味する。バイオリアクターは、それが細胞の培養のために有用である限り、任意のサイズであることができる;典型的には、バイオリアクターは、その内部で成長する細胞培養の容積に適したサイズである。典型的には、バイオリアクターは少なくとも1リットルであり、2、5、10、50、100、200、250、500、1,000、1,500、2,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットル又はそれ以上、あるいはその間の任意の容積でありうる。バイオリアクターの内部条件(pH及び温度を含むが、これらに限定しない)を培養期間の間に制御することができる。当業者は、関連する考慮事項に基づいて本発明を実行する際での使用のための適切なバイオリアクターを認識し、選択することができるであろう。本発明の方法において使用される細胞培養物は、灌流培養のための適切な任意のバイオリアクター中で成長させることができる。特定の種類のバイオリアクターは特に限定せず、全ての種類のバイオリアクター(流加培養、バッチ培養、灌流培養、連続培養、有限培養、懸濁培養、付着又は単層培養、足場依存性培養、及び3D培養を含むが、これらに限定しない)を包含しうる。
本明細書中で使用する「細胞密度」は、所定容積の培養培地中での細胞の数を指す。「生細胞密度」は、標準的な生存アッセイ(例えばトリパンブルー色素排除法など)により決定される、所定容積の培養培地中での生細胞の数を指す。
本明細書中で使用するように、用語「細胞生存率」は、培養中の細胞が所定の一連の培養条件又は実験的変動の下で生存する能力を意味する。本明細書中で使用するこの用語はまた、特定の時点で生きている細胞の、その時点の培養物中での細胞(生細胞及び死細胞)の総数に関連する部分を指す。
本明細書中で使用するように、用語「力価」は、所定量の培地容積中での細胞培養により生産される目的のポリペプチド又はタンパク質(目的の天然タンパク質又は組換えタンパク質でありうる)の総量を意味する。力価は、培地1ミリリットル当たりのポリペプチド又はタンパク質のミリグラム又はマイクログラムの単位(又は容積の他の測定値)で表すことができる。
本明細書中で使用するように、用語「収量」は、特定の期間にわたって灌流培養中で生産される異種タンパク質の量を指す。「総収量」は、稼働全体にわたって灌流培養中で生産される異種タンパク質の量を指す。
用語「低下」、「低下した」、又は「低下する」は、本明細書中で使用するように、一般的に、参照レベルと比較し、少なくとも10%の減少、例えば、本発明の灌流培地中で使用される濃度の脂質又は脂質代謝物を伴わない同じ無血清灌流培地を使用した同じ条件下で培養される対照哺乳動物細胞培養と比較し、少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の減少、又は最大で100%を含む減少、あるいは10~100%の間の任意の整数の減少を意味する。
用語「増強」、「増強した」、「増強した」、「増加する」、又は「増加した」は、本明細書中で使用するように、一般的に、対照細胞と比較し、少なくとも10%の増加、例えば、本発明の灌流培地中で使用される濃度の脂質又は脂質代謝物を伴わない同じ無血清灌流培地を使用した同じ条件下で培養される哺乳動物細胞培養と比較し、少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約100%、又は少なくとも約200%、又は少なくとも約300%の増加、あるいは10~300%の間の任意の整数の増加を意味する。
本明細書中で使用するように、「対照細胞培養」又は「対照哺乳動物細胞培養」は、灌流培地が本発明の灌流培地のFeイオン濃度及びレチノイド濃度を有さないことを除き、それが比較される細胞培養と同じである細胞である。
本明細書中で使用する用語「哺乳動物細胞」は、異種タンパク質、好ましくは治療用タンパク質、より好ましくは分泌された組換え治療用タンパク質の生産のために適切な細胞株である。本発明による好ましい哺乳動物細胞は齧歯類細胞(例えばハムスター細胞など)である。哺乳動物細胞は、単離された細胞又は細胞株である。哺乳動物細胞は、好ましくは、形質転換細胞株及び/又は不死化細胞株である。それらは細胞培養中での連続継代に適応されており、主要な非形質転換細胞又は臓器構造の一部である細胞を含まない。好ましい哺乳動物細胞は、BHK21細胞、BHK TK細胞、CHO細胞、CHO-K1細胞、CHO-S細胞、CHO-DXB11(また、CHO-DUKX又はDuxB11として言及する)細胞、及びCHO-DG44細胞又はそのような細胞株のいずれかの誘導体/後代である。特に好ましいのは、CHO-DG44細胞、CHO-K1細胞、及びBHK21細胞であり、さらにより好ましいのはCHO-DG44細胞及びCHO-K1細胞である。最も好ましいのはCHO-DG44細胞である。哺乳動物細胞、特にCHO-DG44細胞及びCHO-K1細胞のグルタミンシンテターゼ(GS)欠損誘導体も包含される。哺乳動物細胞は、異種タンパク質、好ましくは組換え分泌治療用タンパク質をコードする1つ以上の発現カセットをさらに含んでもよい。哺乳動物細胞はまた、マウス細胞、例えばマウス骨髄腫細胞など(例えばNS0細胞及びSp2/0細胞など)、又はそのような細胞株のいずれかの誘導体/後代でありうる。しかし、それらの細胞の誘導体/後代、他の哺乳動物細胞(ヒト、マウス、ラット、サル、及び齧歯類細胞株を含むが、これらに限定しない)も、特に生物医薬品タンパク質の生産のために本発明において使用することができる。
本明細書中で使用する用語「成長段階」は、細胞が指数関数的に増殖し、バイオリアクター中の生細胞密度が増加している細胞培養の段階を指す。培養中の細胞は通常、標準的な成長パターンに従って増殖する。培養物を播種した後の成長の最初の段階は遅滞段階であり、それは、細胞が培養環境に適応し、急速な成長のために準備をしている遅い成長の期間である。遅滞段階には、成長段階(また、対数段階又は対数的段階として言及する)が続き、細胞が指数関数的に増殖し、成長培地の栄養素を消費する期間である。本明細書中の特定の実施形態では、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の1つ以上の添加剤を、成長段階の開始時、又は成長段階の間のある時点で加えてもよい。他の実施形態では、初期成長培地は、成長段階の開始時、即ち、細胞培養の開始時でのリノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の1つ以上の添加剤を含みうる。
用語「生産段階」は、一度、標的細胞密度に到達する及び/又は収集が開始されると始まる細胞培養の段階を指す。典型的な標的細胞密度は、10×10個細胞/mLから約120×10個細胞/mLの範囲中にあるが、しかし、さらに高くてもよい。このように、本発明による標的細胞密度は、少なくとも10×10個細胞/mL、少なくとも20×10個細胞/mL、少なくとも30×10個細胞/mL、少なくとも40×10個細胞/mL、又は少なくとも50×10個細胞/mLである。最も好ましくは、標的細胞密度は約30~約50×10個細胞/mLである。生細胞密度は灌流速度に依存し、規則的又は連続的な細胞ブリードを使用して一定レベルに維持することができる。本明細書中の特定の実施形態では、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の1つ以上の添加剤は、生産段階の開始時に、又は生産段階の間のある時点に加えられうる。
本明細書中で使用する用語「成長停止」は、数における増加から、即ち、細胞分裂から停止する細胞を指す。細胞周期は間期及び有糸分裂期を含む。間期は3つの段階からなる:DNA複製はS期に限定される;GはM期とS期の間のギャップであり、GはS期とM期の間のギャップである。M期では、核及び次に細胞質が分裂する。増殖するための分裂促進的シグナルの非存在では、又は成長停止を誘導する化合物の存在では、細胞周期は停止する。細胞は、それらの細胞周期制御システムを部分的に分解し、周期から、特殊化した非分裂状態(Gと呼ぶ)に出ることがある。
本明細書中で使用する用語「ボーラス添加」は、細胞培養物中の濃度を所望の濃度に直ちに調整する添加を指す。本発明によれば、それは、細胞培養物中のレチノイド濃度が本発明のレチノイド濃度に瞬時に調整されることを意味する。これは、細胞が不必要な増殖活性をもたらしうるより低いレチノイド濃度で培養される移行段階を回避するためである。
種々の態様では、本発明は、本開示の方法及び細胞培養培地に関連し、「リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2あるいはその誘導体及び/又は前駆体の1つ以上」を指しうる。語句「1つ以上」は、本明細書中に開示する方法及び培地に関連して使用される以下のいずれかを検討する:リノール酸あるいはその誘導体及び/又は前駆体単独;アラキドン酸あるいはその誘導体及び/又は前駆体単独;プロスタグランジンE2あるいはその誘導体及び/又は前駆体単独;リノール酸ならびにアラキドン酸あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の二重の組み合わせ;リノール酸ならびにプロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の二重の組み合わせ;アラキドン酸ならびにプロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の二重の組み合わせ;及び、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の三重の組み合わせ。組み合わせにおいて使用される場合での添加剤の相対量、濃度、及び/又は比率は、本明細書中の他の箇所に記載している。
化合物の「誘導体及び/又は前駆体」への言及、例えばリノール酸、アラキドン酸、又はプロスタグランジンE2への言及などは、「誘導体」及び「前駆体」を指す。誘導体は、化学反応により出発化合物から誘導され、構造的及び/又は機能的類似体である、即ち、出発化合物と同じ又はほぼ同じ構造及び機能を有する化合物である。本発明の場合では、リノール酸、アラキドン酸、及びプロスタグランジンE2の誘導体は、出発化合物の構造又は原子組成を変化又は修飾(例、官能基の加算又は減算)する化学反応を通じて、これら3つの化合物のいずれかから由来する、及び構造的に類似し(即ち、構造類似体)、同じ又は類似の機能(即ち、機能類似体)を有する化合物である。前駆体は、代謝経路において別のものに(直接的に又は間接的に)先行する化合物である。本発明では、リノール酸はアラキドン酸の前駆体であり、それは同じ代謝経路上のプロスタグランジンE2(「PGE」)の前駆体である(図2を参照のこと)。図2を参照すると、プロスタグランジンE2の追加の前駆体はPGG(プロスタグランジンG)及びPGH(プロスタグランジンH)を含み、それらは細胞中でCOX-1酵素及びCOX-2酵素により変換され、PGEを形成する。このように、本発明はまた、リノール酸、アラキドン酸、及び/又はプロスタグランジンH2の各々の代謝前駆体も本明細書中の方法及び培地において使用されうることを検討する。本明細書中で使用する用語「約」は、提供される実際の値の前後での変動を指し、値のプラス及びマイナス10%を包含する。
細胞培養方法
理解する目的のために、ただし限定することなく、タンパク質生産のための細胞培養及び培養の稼働は少なくとも3つの一般的な種類を含むことができることを当業者は理解するであろう;すなわち、灌流培養、バッチ培養、及び流加培養。他のバイオリアクターシステムも確かに検討され、即ち、本発明は確かに、灌流培養、バッチ培養、及び流加細胞培養のシステムに限定されない。灌流培養中では、例えば、新鮮な培養培地補助剤を培養期間の間に細胞に供給し、古い培養培地を毎日除去し、産物を、例えば、毎日又は連続的に収集する。灌流培養中では、灌流培地を毎日加えることができ、連続的に、即ち、点滴又は注入として加えることができる。灌流培養については、細胞は、細胞が生きたままであり、環境条件及び培養条件が維持されている限り、所望の間は培養中に残すことができる。細胞は連続的に成長するため、典型的には、一定の生細胞密度を維持するために、細胞を稼働の間に除去することが要求され、それは細胞ブリードとして言及される。細胞ブリードは、細胞とともに除去される培養培地中に産物を含んでおり、それは典型的には廃棄され、それ故に無駄になる。このように、最小限の細胞ブリーディングだけを伴わない又は伴う生産段階の間に生細胞密度を維持することは有利であり、稼働毎の総収量が増加する。
バッチ培養中では、細胞を最初に培地中で培養し、この培地は除去、交換、又は補充しない、即ち、細胞には培養の終了の間又は前に新しい培地を「供給」しない。所望の産物を培養稼働の終了時に収集する。
流加培養については、培養稼働時間を、稼働の間に新鮮な培地を毎日(又は連続的に)1回又は複数回培養培地に補充することにより増加させる、即ち、細胞に新たな培地(「供給培地」)を培養期間の間に供給する。流加培養は、上に記載する種々の供給レジメン及び時間、例えば、毎日、1日おき、2日おきなど、1日1回以上、又は1日1回未満などを含みうる。さらに、流加培養に流加培地を連続的に供給することができる。所望の産物を次に、培養/生産稼働の終了時に収集する。
本発明の特定の実施形態によれば、哺乳動物細胞を灌流培養中で培養することができる。異種タンパク質の生産の間に、細胞が所望の生細胞密度まで成長し、次に細胞が成長停止した高生産性状態に切り替えられ、細胞がエネルギー及び基質を使用し、細胞成長及び細胞分裂よりも目的の異種タンパク質を生産する制御されたシステムを有することが望ましい。この目標を達成する方法(例えば温度シフト及びアミノ酸飢餓など)は、常に成功するわけではなく、産物の品質に対して望ましくない効果を有しうる。本明細書中に記載するように、生産段階の間での生細胞密度は、規則的な細胞ブリードを実施することにより望ましいレベルで維持することができる。しかし、これによって、目的の異種タンパク質の破棄を招く。生産段階の間での細胞成長停止によって、細胞ブリードについての低下した必要性がもたらされ、細胞をより生産的な状態に維持することさえありうる。
本開示の一態様では、細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供し、以下からなる群より選択される有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む:リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体。ここで、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせは、細胞ブリーディングについての必要性を伴わずに、成長抑制及び生産性の増加をもたらす。
本開示の別の態様では、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供し、以下からなる群より選択される有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む灌流培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む:リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体。
本開示のさらに別の態様では、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供し、有効量のリノール酸を含む灌流培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む。
本開示のさらに別の態様では、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供し、有効量のアラキドン酸を含む灌流培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む。
本開示の別の態様では、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供し、有効量のプロスタグランジンE2を含む灌流培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含む。
本開示の別の態様によれば、灌流細胞培養の特異的な生産性を増強する方法を提供し、(a)所望の細胞密度に達するまで灌流成長培地中で目的のタンパク質をコードする組換え哺乳動物細胞を培養すること、及び(b)リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはその誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を成長培地中に導入することを含む。一部の実施形態では、加えられた脂質及び/又は脂質代謝物は、定常状態に達するように細胞成長の抑制をもたらし、それにより灌流細胞培養の増強された特異的な生産性が達成される。
本開示のさらに別の態様によれば、哺乳動物細胞を培養し、改善された生産性を伴い治療用タンパク質を生産するための細胞培養培地を提供する。細胞培養培地は、リノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体からなる群より選択される1つ以上の有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む。一部の実施形態では、加えられた脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせは、成長抑制及び生産性の増加をもたらす。一部の実施形態では、成長抑制は、特に灌流細胞培養に関して細胞ブリーディングについての必要性の低下又は排除をもたらしうる。細胞培養培地は、任意の細胞培養プラットフォーム[バッチ培養、流加培養、及び連続培養(連続灌流培養を含む)を含む]において使用することができる。
上の態様の種々の実施形態では、「細胞培養」は特に限定せず、細胞培養の全ての形態及び技術(流加培養、バッチ培養、灌流培養、連続培養、有限培養、懸濁培養、付着又は単層培養、足場依存性培養、及び3D培養を含むが、これらに限定しない)を包含しうる。細胞培養の任意の配置を本明細書中で検討する。好ましい実施形態では、細胞培養は連続灌流細胞培養である。
種々の実施形態では、リノール酸の有効量は約1800~2000μMからである。他の実施形態では、リノール酸の有効量は約1~5000μMから、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μMである。一実施形態では、リノール酸は500~2000μMの濃度中である。
他の実施形態では、アラキドン酸の有効量は約150~500μMからである。さらに他の実施形態では、アラキドン酸の有効量は約1~5000μMから、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μMである。一実施形態では、アラキドン酸は100~600μMの濃度中である。
他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は約0.001μM~60μMからである。さらに他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は0.000001μM又はそれ以上、0.00001μM又はそれ以上、0.0001μM又はそれ以上、0.001μM又はそれ以上、0.01μM又はそれ以上、0.1μM又はそれ以上、1μM又はそれ以上、10μM又はそれ以上、20μM又はそれ以上、30μM又はそれ以上、40μM又はそれ以上、50μM又はそれ以上、60μM又はそれ以上、70μM又はそれ以上、80μM又はそれ以上、90μM又はそれ以上、100μM又はそれ以上、150μM又はそれ以上、200μM又はそれ以上であり、ここで各々の範囲の上限は1000μM又はそれ以下でありうる。さらに他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は約1~5000μM、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μM、又は約 0.0001~0.001μMから、約0.0005~0.01μMまで、約0.005~0.1μMまで、約0.05~1.0μMまで、約0.5~100μMまで、約50~1000μMまで又はそれ以上である。一実施形態では、プロスタグランジンE2は0.0001~100μMの濃度中である。
一部の実施形態では、培養培地は少なくとも2つの脂質又は脂質代謝物を含む。一実施形態では、培養培地は、100~300μMの濃度のアラキドン酸及び500~1800μMの濃度のリノール酸を含む。別の実施形態では、培養培地は、500~1800μMの濃度のリノール酸又は100~150μMの濃度のアラキドン酸のいずれかとの組み合わせにおいて、0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む。
さらに別の実施形態では、培養培地は3つ全ての脂質又は脂質代謝物を含む。一実施形態では、培養培地は、500~2000μMの濃度中のリノール酸、100~300μMの濃度のアラキドン酸、及び0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む。
本開示の別の態様では、細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供し、有効量の1つ以上の500~2000μMの濃度中のリノール酸、100~300μMの濃度中のアラキドン酸、及び0.0001~0.0009μMの濃度中のプロスタグランジンE2を含む培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養することを含み、ここで、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせは、細胞ブリーディングについての必要性を伴わずに成長抑制及び生産性の増加をもたらす。
他の実施形態では、本発明は、モル比又は重量比で表す、以下の量のリノール酸、アラキドン酸、及び/又はプロスタグランジンE2を包含する。これらの比率を使用し、リノール酸、アラキドン酸、又はプロスタグランジンE2の少なくとも2つ、あるいは3つ全ての添加剤を細胞培養培地中で組み合わせてもよい。当業者は、これらの成分を、加えられる総重量の比率として決定される以下の比率で、又はそれらのモル比に基づいて、2つ又は3つの添加剤の組み合わせで加えうる。成分は、同時に、又は異なる時間に加えてもよい。以下の比率のリノール酸とアラキドン酸とプロスタグランジンE2(リノール酸:アラキドン酸:プロスタグランジンE2)を使用してもよい: (1)1:1:1;(2)5-1:1:1;(3)10-1:1:1;(4)100-1:1:1;(5)1000-1:1:1;(6)1:5-1:1;(7)1:10-1:1;(8)1:100-1:1;(9)1:1000-1:1;(10)1:1:0.1-0.01;(11)1:1:0.1-0.001;(12)1:1:0.1-0.0001;(13)1:1:0.1-0.00001;(14)1:1:0.1-0.0000001;(15)1-1000:1-1000:1-0.1;(16)1-1000:1-1000:0.1-0.01;(17)1-1000:1-1000:0.1-0.001;(18)1-1000:1-1000:0.1-0.0001;(19)1-1000:1-1000:0.1-0.00001;(20)1-1000:1-1000:0.1-0.0000001;(16)0.1-1000:1-1000:1-0.1;(17)0.01-1000:1-1000:0.1-0.01;(18)0.001-1000:1-1000:0.1-0.001;(19)1-1000:0.1-1000:0.1-0.0001;(20)1-1000:0.01-1000:0.1-0.00001;(21)1-1000:0.001-1000:0.1-0.0000001;(22)1:1:0.1-0.0000001;(23)5-1:1:0.1-0.0000001;(24)10-1:1:0.1-0.0000001;(25)100-1:1:0.1-0.0000001;(26)1000-1:1:0.1-0.0000001;(27)1:5-1:0.1-0.0000001;(28)1:10-1:0.1-0.0000001;(29)1:100-1:0.1-0.0000001;(30)1:1000-1:0.1-0.0000001。特定の実施形態では、本発明は、5:1:0.000001から2:0.6:0.1までの比率の範囲中に入る特定の比率を利用してもよく、それは500~2000μMのリノール酸の濃度、100~600μMのアラキドン酸の濃度、及び0.0001~100μMのプロスタグランジンE2を使用することに対応する比率である。他の比率を検討し、上の比率の列挙は、本発明を任意の方法で限定することを意図しない。
他の実施形態では、本開示は、以下を含む、灌流細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法を提供する:(a)無血清培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養すること;(b)無血清灌流培地を用いた灌流により成長段階の間に哺乳動物細胞を培養すること;及び(c)500~2000μMの濃度中のリノール酸、100~300μMの濃度中のアラキドン酸、及び0.0001~0.0009μMの濃度中のプロスタグランジンE2の1つ以上を含む無血清灌流培地を用いた灌流することにより、生産段階の間に哺乳動物細胞を維持すること、ここで工程(b)は任意である。工程(c)の前の方法の一実施形態では、脂質又は脂質代謝物はボーラスにより加える。
また、本明細書中では、以下を含む、灌流細胞培養中での細胞ブリーディングを低下させる、及び/又は異種タンパク質を発現する灌流細胞培養中でタンパク質生産を増加させる方法を提供する:(a)異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を無血清培養培地中で培養すること;(b)無血清灌流培地を用いた灌流により成長段階の間の哺乳動物細胞を培養すること;及び(c)1つ以上の500~2000μMの濃度中のリノール酸、100~300μMの濃度中のアラキドン酸、及び0.0001~0.0009μMの濃度中のプロスタグランジンE2を含む無血清灌流培地を用いた灌流により生産段階の間の哺乳動物細胞を維持すること、ここで工程(b)は任意である。工程(c)の前の方法の一実施形態では、脂質又は脂質代謝物はボーラスにより加える。
灌流培養物に非常に高い細胞密度を用いて接種し、灌流を、無血清培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞の接種の直後又は少し後に開始することも本発明により包含する。さらに、無血清灌流培地を用いた灌流による成長段階の間に哺乳動物細胞を培養する工程(b)は、500~2000μMの濃度中のリノール酸、100~300μMの濃度中のアラキドン酸、及び0.0001~0.0009μMの濃度中のプロスタグランジンE2の1つ以上を含む無血清灌流培地を用いた灌流による生産段階の間の工程(c)に従って、哺乳動物細胞が直ちに培養されるように任意でありうる。好ましくは、工程(c)の前に、哺乳動物細胞培養物中の脂質の濃度は、好ましくはボーラス添加により所望の濃度に調整する。
このように、本明細書中ではまた、以下を含む、異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養し、及び/又は灌流細胞培養中で細胞ブリーディングを低下させ、及び/又は異種タンパク質を発現する灌流細胞培養中でタンパク質生産を増加させる方法を提供する:(a)無血清培地中で異種タンパク質を発現している哺乳動物細胞に接種すること;(b)場合により、無血清灌流培地を用いた灌流により、成長段階の間に哺乳動物細胞を培養すること;及び(c)500~2000μMの濃度中のリノール酸、100~300μMの濃度中のアラキドン酸、及び0.0001~0.0009μMの濃度中のプロスタグランジンE2の1つ以上を含む無血清灌流培地を用いた灌流により、生産段階の間に哺乳動物細胞を維持すること。好ましくは、工程(c)の前に、哺乳動物細胞培養物中の脂質の濃度を、好ましくはボーラス添加により所望の濃度に調整する。タンパク質生産を増加させることは、灌流稼働にわたる又は特定の期間にわたるタンパク質産物収量の増加を包含する。それはまた、細胞当たりの特定のタンパク質生産の増加を包含する。
本発明の方法によれば、工程(a)において哺乳動物細胞を培養することは、無血清培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞に接種することに限定されうるが、それ故に、灌流の開始の前に実際の培養工程を含む必要はない。さらに、本発明の方法によれば、灌流による生産段階の間に哺乳動物細胞を維持することは、一定の生細胞密度での灌流による生産段階の間に哺乳動物細胞を培養することを含む。
生産段階は、一度、標的細胞密度に達したら開始する。好ましくは、工程(c)は、一度、標的細胞密度に到達すると開始する。それは、10×10個細胞/mLから約120×10個細胞/mL又はさらにそれより高いの細胞密度で開始しうる。好ましくは、工程(c)は、少なくとも10×10個細胞/mL、少なくとも20×10個細胞/mL、少なくとも30×10個細胞/mL、少なくとも40×10個細胞/mL、又は少なくとも 50×10個細胞/mLの細胞密度で開始する。最も好ましくは、工程(c)は、約30から約50×10個細胞/mLの細胞密度で開始する。
既に上で説明したように、本発明の方法は、工程(c)において、細胞密度が細胞ブリーディングにより維持されることをさらに含みうる。この文脈において言及する細胞密度は、生細胞密度であり、それは、当技術分野で公知の任意の方法により決定しうる。例えば、細胞のブリード率を規定する計算は、標的VCDに対応するINCYTE(商標)生細胞密度プローブ(HAMILTON(登録商標)COMPANY)又はFUTURA(商標)バイオマス容量プローブ値(ABER(登録商標)機器)を維持することに基づきうる、あるいは、毎日の細胞及び生存率の算定は、任意の細胞計数デバイス、例えば血球計、VI-CELL XR(商標)(BECKMANCOULTER(登録商標))、CEDEX HI-RES(商標)(ROCHE(登録商標))、又はVIACOUNT(商標)アッセイ(EMD MILLIPORE(登録商標)GUAVA EASYCYTE(登録商標)など)を介してオフラインで取ることができる。本発明の方法を使用し、細胞ブリーディングは、対照灌流細胞培養と比較して低下し、ここで対照灌流細胞培養は、本発明による脂質の添加を伴わない同じ無血清灌流培地を使用して同じ条件下で培養される灌流細胞培養である。より具体的には、細胞ブリーディングは、対照灌流細胞培養と比較して低下し、ここで対照灌流細胞培養は、所望の濃度の脂質の添加を伴う同じ無血清灌流培地を使用して同じ条件下で培養される灌流細胞培養である。
同じ理由のため、及び成長段階の間に成長を可能にするために、特定の実施形態では、本発明の無血清灌流培地の脂質濃度は、接種培地中で、及び成長段階の間に回避すべきである。このように、工程(a)の無血清培地及び工程(b)の無血清灌流培地は脂質を含むべきではない(即ち、リノール酸、アラキドン酸、又はプロスタグランジンE2を含まない)。好ましくは、工程(a)の無血清培養培地及び工程(b)の無血清灌流培地は脂質を含まない(即ち、リノール酸、アラキドン酸、又はプロスタグランジンE2を含まない)。
本発明の無血清灌流培地の浸透圧は、300~1400mOsmol/kgの間、好ましくは300~500mOsmol/kgの間、より好ましくは330~450mOsmol/kgの間、及びさらにより好ましくは360~390mOsmol/kgの間の範囲中にあるべきである。ここで浸透圧はmOsmol/kg水として提供する。
灌流培養は典型的には、バッチ培養としての接種培養で開始する。灌流は直ぐに又は1日以上後に開始してもよい。典型的には、灌流は細胞培養の2日目又はその後に開始する。一実施形態では、工程(b)中の灌流は、細胞培養の2日目又はその後に始まる。一度、標的細胞密度に達したら、成長停止を、細胞培養液中のリノール酸、アラキドン酸、又はプロスタグランジンE2の1つ以上の濃度を所望の濃度に増加させることにより誘導する。好ましくは、所望の濃度への脂質/脂質代謝物濃度におけるこの増加は、瞬時に(例えばボーラス添加による、など)である。一実施形態では、細胞培養物中でのリノール酸、アラキドン酸、及び/又はプロスタグランジンE2の濃度におけるこの調整は、一実施形態では、一度、特定の所望の細胞濃度に達したら、即ち、成長段階を終えると生じうる。次の段階、即ち、生産段階の間に、哺乳動物細胞を、外因的に加えられたリノール酸、アラキドン酸、又はプロスタグランジンE2の1つ以上を所望の濃度で含む無血清灌流培地を用いた灌流により培養することができる。脂質/脂質代謝物はまた、開始から培養物に加えてもよく、それ故に成長停止を、上に記載するようにボーラス添加により誘導する前に、及びそれ故に標的細胞密度に達する前に、接種のために使用する無血清培地に又は無血清灌流培地に加えてもよい。遅くとも、脂質/脂質代謝物を、一度、標的細胞密度に達したら、無血清灌流培地とともに加えなければならない。別の実施形態では、標的細胞密度に達する前に、及び哺乳動物細胞培養物中の脂質/脂質代謝物を増加させることにより成長停止を誘導する前に、哺乳動物細胞培養物中の所望の脂質/脂質代謝物濃度に達する。
典型的には、本発明による哺乳動物細胞培養は、細胞培養の連続灌流を含む。灌流速度は、灌流が開始した後に増加しうる。典型的には、より高い灌流速度は、より高い生細胞密度を支持し、従って、より高い標的細胞密度を可能にする。灌流速度は、1日当たり0.5容器容積以下から1日当たり5容器容積に増加しうる。好ましくは、灌流速度は、1日当たり0.5容器容積以下から1日当たり2容器容積まで増加する。
バイオリアクター
本発明の方法によれば、任意の細胞培養システム、種類、又は形式を利用してもよい(バッチ、流加、及び連続灌流を含むが、これらに限定しない)。
任意の細胞灌流バイオリアクター及び細胞保持デバイスを灌流培養のために使用してもよい。灌流のために使用されるバイオリアクターは、それらがサイズにおいてよりコンパクトであり、細胞保持デバイスに接続されていることを除き、バッチ/流加培養のために使用されるバイオリアクターとそれほど違わない。バイオリアクター内で細胞を保持するための方法は、主に、細胞が表面に付着して成長しているか、あるいは単細胞懸濁液又は細胞凝集物のいずれかにおいて成長しているかにより決定する。大半の哺乳動物細胞は歴史的には表面又はマトリックスに付着して成長していたが(異種培養)、主に懸濁培養のスケールアップがより簡単であるため、多くの産業用哺乳動物細胞株を懸濁液中で成長させるように(均一培養)適応させるための努力を行ってきた。このように、本発明の方法において使用する細胞は、好ましくは懸濁液中で成長する。これに限定しないが、懸濁液中で成長させた細胞の例示的な保持システムは、スピンフィルター、外部ろ過、例えば接線流ろ過(TFF)など、交互接線流(ATF)システム、細胞沈降(垂直沈降及び傾斜沈降)、遠心分離、超音波分離、及び液体サイクロンである。灌流システムは、2つのカテゴリー、ろ過ベースのシステム(例えばスピンフィルター、外部ろ過、及びATFなど)及び開放型灌流システム(例えば重力沈降槽、遠心分離機、超音波分離デバイス、及びハイドロクローンなど)に分類することができる。ろ過ベースのシステムは高度な細胞保持を示し、それは流速によって変化しない。しかし、フィルターが目詰まりすることがあり、それ故に培養稼働の長さが限定される、又はフィルターを交換する必要がある。ATFシステムについての例は、REPLIGEN(商標)からのXCELL(商標)ATFシステムであり、TFFシステムについての例は、遠心ポンプを使用したLEVITRONIX(登録商標)からのTFFシステムである。クロスフローフィルター(例えば中空糸(HF)又は平板フィルターなど)をATFシステム及びTFFシステムと使用してもよい。具体的には、修飾ポリエーテルスルホン(mPES)、ポリエーテルスルホン(PES)、又はポリスルホン(PE)で作製された中空繊維をATFシステム及びTFFシステムと使用することができる。HFの孔径は、数百kDaから15μMの範囲でありうる。開放灌流システムは詰まらない、それ故に少なくとも理論的には無期限に操作することができうる。しかし、細胞保持の程度は、より高い灌流速度で低下する。現在、工業規模で使用することができる3つのシステムがあり、交互接線フィルター(ATF)、重力(特に傾斜沈降槽)、及び遠心分離機である。異種培養又は同種培養のための適切な細胞保持デバイスは、Kompala及びOzturk(Cell Culture Technology for Pharmaceutical and Cell-Based Therapies, (2006), Taylor & Francis Group, LLC, pages 387-416)により詳細に記載されており、それを参照により本明細書中に組み入れる。灌流培養は真の定常状態プロセスではなく、細胞ブリード流動がバイオリアクターから除去された場合にだけ、総及び生細胞濃度が定常状態に達する。
灌流バイオリアクター中の物理的パラメーター(例えばpH、溶存酸素、及び温度など)をオンラインで監視し、リアルタイムで制御すべきである。細胞密度、生存率、代謝物、及び産物濃度の決定は、オフライン又はオンラインサンプリングを使用して実施してもよい。灌流操作が連続収集及び供給とともに開始する場合、灌流速度は典型的には収集流速を指し、それは手動で所望の値に設定してもよい。例えば、バイオリアクターについての重量制御によって、バイオリアクター中の一定容積を維持できるように、供給ポンプを活性化しうる。あるいは、レベル制御を、予め決められたレベルを上回る培養容積を汲み出すことにより達成することができる。バイオリアクター中での灌流速度は、細胞に十分な栄養素を送達するために調整しなければならない。細胞密度がバイオリアクター中で増加するにつれて、灌流速度を増加させなければならない。
灌流速度は、例えば、細胞密度測定、pH測定、酸素消費、又は代謝物測定を使用して制御しうる。細胞密度は、灌流速度の調整のために使用される最も重要な測定値である。細胞密度をどのように測定するのかに依存して、灌流速度を毎日又はリアルタイムで調整することができる。いくつかのオンラインプローブが細胞密度の推定のために開発されており、当業者に公知であり、例えば容量プローブなど、例えば、INCYTE(商標)生細胞密度プローブ(HAMILTON(登録商標)COMPANY)又はFUTURA(商標)バイオマス容量プローブ値(ABER(登録商標)機器)などである。これらの細胞密度プローブはまた、バイオリアクターから過剰な細胞、即ち、細胞ブリードを除去することにより、所望の設定点で細胞密度を制御するためにも使用することができる。このように、細胞ブリードは、培養中の哺乳動物細胞の特定の成長速度により決定する。細胞ブリードは典型的には収集せず、従って廃棄物と見なす。
本発明の方法は、灌流細胞培養から異種タンパク質を収集することをさらに含む。本発明では、目的のタンパク質を収集及び精製するための任意の適切な方法を検討する。収集はまた、細胞培養ライフサイクルを通して断続的に、又は細胞培養の終了時に生じうる。収集は、好ましくは、透過液(細胞が細胞保持デバイスにより回収された後に生産される上清である)から連続的に行う。流加と比較して、灌流バイオリアクター内の細胞培養中での産物タンパク質の低い産物滞留時間のため、プロテアーゼ、シアリダーゼ、及び他の分解タンパク質への曝露が最小限になり、それによって、灌流培養中で生産される異種タンパク質のより良好な産物品質がもたらされうる。
細胞培養培地
本発明では、任意の適切な細胞培養培地(商業的に入手可能な培地などを含む)の使用を検討する。本明細書中で検討する培地はいずれも、本発明の脂質及び/又は脂質代謝物(例、本明細書中で定義する所望の及び有効な濃度のリノール酸、アラキドン酸、ならびにプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体)の添加により改変することが可能であるべきである。使用する基礎細胞培養培地の種類は、使用する細胞培養の種類又は形式(例、バッチ、流加、又は灌流)に依存しうる。当業者は、適切な基礎培地を選択することができるであろう。
一実施形態では、無血清灌流培地を使用することができる。本発明の方法において使用する無血清灌流培地は、化学的に定義され、及び/又は加水分解物を含まなくてもよい。加水分解物を含まないことは、培地が動物、植物(大豆、ジャガイモ、米)、酵母、又は他の供給源からのタンパク質加水分解物を含まないことを意味する。典型的には、化学的に定義された培地は加水分解物を含まない。いずれの場合でも、無血清灌流培地は、動物供給源から由来する化合物、特に動物から由来及び単離されたタンパク質又はペプチドを含むべきではない(これは、細胞培養により生産された組換えタンパク質は含まない)。好ましくは、無血清灌流培地は、タンパク質を含まない、あるいは組換えインスリン及び/又はインスリン様成長因子を除いて、タンパク質を含まない。より好ましくは、無血清灌流培地は、化学的に定義され、タンパク質を含まない、あるいは組換えインスリン及び/又はインスリン様成長因子を除いて、タンパク質を含まない。これはまた、工程(a)の無血清培地及び工程(b)の無血清灌流培地に適用される。
さらに別の態様では、本開示は、生産段階の間に灌流培養中で哺乳動物細胞を培養するため、又は灌流培養中で総細胞ブリード容積を減少させるための、本発明の無血清灌流培地の使用を提供する。あるいは、本開示は、灌流細胞培養中でのタンパク質生産を増加させるための本発明の無血清灌流培地の使用を提供する。
種々の実施形態では、加えられた際での培地中のリノール酸の有効量は約1800~2000μMから(培地中の最終濃度当たり)である。他の実施形態では、培地に加えられた際でのリノール酸の有効量は、約1~5000μMから(培地中の最終濃度当たり)、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μMである。一実施形態では、リノール酸は500~2000μMの濃度である。
他の実施形態では、アラキドン酸の有効量は約150~500μMからである。さらに他の実施形態では、アラキドン酸の有効量は、約1~5000μMから、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μMである。一実施形態では、アラキドン酸は100~600μMの濃度である。
他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は約0.001μM~60μMからである。さらに他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は0.001μM、10μM、20μM、又は60μMである。さらに他の実施形態では、プロスタグランジンE2の有効量は、約1~5000μMから、又は約1~2500μMから、又は約1~1250μMから、又は約1~1000μMから、又は約1~800μMから、又は約1~600μMから、又は約1~400μMから、又は約1~200μMから、又は約1~100μMから、又は約1~50μMから、又は約1~25μM、あるいは約0.0001~0.001μMから、約0.0005~0.01μMまで、約0.005~0.1μMまで、約0.05~1.0μMまで、約0.5~100μMまで、約50~1000μMまで又はそれ以上である。一実施形態では、プロスタグランジンE2は0.0001~100μMの濃度である。
一部の実施形態では、培地は、上の濃度又は濃度範囲のいずれかの組み合わせにおいて、少なくとも2つの脂質又は脂質代謝物を含む。一実施形態では、培養培地は、100~300μMの濃度のアラキドン酸及び500~1800μMの濃度のリノール酸を含む。別の実施形態では、培養培地は、500~1800μMの濃度のリノール酸又は100~150μMの濃度のアラキドン酸といずれかとの組み合わせにおいて、0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む。
さらに別の実施形態では、培養培地は、上の濃度又は濃度範囲のいずれかの組み合わせにおいて、3つ全ての脂質又は脂質代謝物を含む。一実施形態では、培養培地は、500~2000μMの濃度中のリノール酸、100~300μMの濃度のアラキドン酸、及び0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む。
特定の実施形態では、本発明の細胞培養培地又は方法は、ナトリウム対カリウム比率における減少を含む細胞培養培地を利用し、細胞成長を減少させ、細胞特異的な生産性を改善する(即ち、カリウム濃度の増加;別名「K-pop」培地、図5中に列挙)。例えば、米国仮出願第62/479,422号(2017年3月31日に出願)に記載されている培地は、本明細書中に記載する脂質及び/又は脂質代謝物を組み入れることにより利用してもよく、参照により本明細書中に組み入れる。本明細書中に記載する方法及び脂質添加剤を使用し、生細胞密度、細胞成長をさらに低下させ、細胞特異的な生産性を改善してもよい。
他の実施形態では、本発明による細胞培養培地又は方法では、ビタミン添加剤(例、ビタミンA又は酢酸レチニル)を利用し、灌流細胞培養中での細胞成長を遅らせてもよい。本明細書中に記載する方法及び脂質添加剤を使用し、生細胞密度、細胞成長をさらに低下させ、そのような培地中での細胞特異的な生産性を改善させてもよい。そのような培地の例は、米国仮出願第62/479,414号(2017年3月31日に出願)において見出すことができ、その全体を参照により本明細書中に組み入れる。
本明細書中に記載する細胞培養方法では、本発明の脂質及び/又は脂質代謝物(例、リノール酸、アラキドン酸、及び/又はプロスタグランジンE2、あるいはその誘導体及び/又は前駆体)を含む特定の細胞培地を加える、混合する、組み合わせる、又は他の方法で得るための任意の適切な様式及びタイミングを検討する。例えば、本発明の脂質及び/又は脂質代謝物は、細胞培養の開始前又は開始時に、それらの所望の及び/又は有効な濃度で初期培養培地中に混合してもよい。別の実施形態では、本発明の脂質及び/又は脂質代謝物は、細胞培養接種の下流のある時点で活発に成長している細胞培養物中に加える、あるいは他の方法で混合する又は組み合わせてもよい。さらに別の実施形態では、一度、加えると、本発明の脂質及び/又は脂質代謝物の最適な有効濃度は、脂質及び/又は脂質代謝物の追加の増分を細胞培養培地に加え続けることにより、有効な所望の濃度で維持されうることが想定される。種々の実施形態では、脂質及び/又は脂質代謝物は、最初のより高い濃度(「ストック濃度」又は「ストック材料」として言及することができる)で、液体培地(それは細胞培養培地と同じである、もしくは異なりうる、及び/又は適切な有効量の脂質溶媒、例えばエタノール、アセトンベンゼン、又は他の脂質溶解溶媒などを含みうる)中で調製することができる。細胞培養培地を脂質及び/又は脂質代謝物の所望の「作業」濃度に調整するために、当業者は次に、適した容積又は量のストック材料を細胞培養培地に移し、所望の作業濃度を達成するであろう。一部の場合では、細胞培養に加えられているストック材料の一時的な局所高濃度と接触しうる細胞に恐らくは有害となりうる脂質及び/又は脂質代謝物(又はストック培地中で使用される脂質溶解溶媒)の高過ぎる局所濃度の導入を回避する速度でストック材料を加えることが望ましいであろう。他の実施形態では、本発明では、細胞培養へのストック材料のボーラス添加を単に加えることを検討する。
また、本発明の脂質及び/又は脂質代謝物(例、ストック濃縮材料として)を加えることに関する細胞培養バイオリアクターの配置に関して、脂質及び/又は脂質代謝物は、細胞培養培地と同じバルブ又はエントリーポイントを通じて加えてもよい。他の実施形態では、脂質及び/又は脂質代謝物は、独立したバルブ又はエントリーポイントを通して加えてもよい。細胞培養バイオリアクターは、細胞培養サイクルの任意の時点(細胞培養の開始時、細胞培養の成長段階の間、及び細胞培養の生産段階の間を含む)で脂質及び/又は脂質代謝物を加える工程に順応するように配置してもよい。バイオリアクターはまた、共有バルブ又はポートを通じた、あるいは別々の又は独立したバルブ又はポートを通じた脂質及び/又は脂質代謝物の単一ボーラス添加用に配置してもよい。バイオリアクターはまた、共有バルブ又はポートを通じた、あるいは別々の又は独立したバルブ又はポートを通じた細胞培養培地への脂質及び/又は脂質代謝物の断続的な一連の添加又は連続的な添加のストリームに順応するように配置してもよい。本発明の脂質及び/又は脂質代謝物のストック濃度の入力は、任意の公知の手段により手動、自動、又は半自動で加えるように配置してもよい。
発現産物
本発明の方法及び使用により生産される異種タンパク質は、任意の分泌タンパク質でありうるが、好ましくは治療用タンパク質である。大半の治療用タンパク質が組換え治療用タンパク質であるため、それは最も好ましくは組換え治療用タンパク質である。治療用タンパク質についての例は、抗体、融合タンパク質、サイトカイン、及び成長因子であるが、それらに限定しない。
本発明の方法により哺乳動物細胞中で生産される治療用タンパク質は、抗体又は融合タンパク質(例えばFc融合タンパク質など)を含むが、これらに限定しない。他の分泌された組換え治療用タンパク質は、例えば、酵素、サイトカイン、リンフォカイン、接着分子、受容体及びそれらの誘導体又は断片、ならびにアゴニスト又はアンタゴニストとして機能し、及び/又は治療的又は診断的用途を有することができる任意の他のポリペプチド及び骨格でありうる。
目的の組換えタンパク質は、例えば:インスリン、インスリン様成長因子、hGH、tPA、サイトカイン、例えばインターロイキン(IL)など(例、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、インターフェロン(IFN)アルファ、IFNベータ、IFNガンマ、IFNオメガ又はIFNタウ、腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNFアルファ及びTNFベータなど、TNFガンマ、TRAIL;G-CSF、GM-CSF、M-CSF、MCP-1、及びVEGFであるが、これらに限定しない。また、含まれるのは、エリスロポエチン又は任意の他のホルモン成長因子ならびにアゴニスト又はアンタゴニストとして機能し、及び/又は治療的又は診断的用途を有することができる他のポリペプチドの生産である。
好ましい治療用タンパク質は、抗体又はその断片もしくは誘導体であり、より好ましくはIgG1抗体である。このように、本発明は、抗体、例えばモノクローナル抗体、多特異性抗体、又はそれらの断片、好ましくはモノクローナル抗体、二重特異性抗体、又はその断片などの生産のために有利に使用することができる。本発明の範囲内の例示的な抗体は、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD40抗体、抗CD44抗体、抗CD44v6抗体、抗CD49d抗体、抗CD52抗体、抗EGFR1(HER1)抗体、抗EGFR2(HER2)抗体、抗GD3抗体、抗IGF抗体、抗VEGF抗体、抗TNFアルファ抗体、抗IL2抗体、抗IL-5R抗体、又は抗IgE抗体を含むが、それらに限定せず、及び好ましくは抗CD20抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD40抗体、抗CD44抗体、抗CD52抗体、抗HER2/neu(erbB2)抗体、抗EGFR抗体、抗IGF抗体、抗VEGF抗体、抗TNFアルファ抗体、抗IL2抗体、及び抗IgE抗体からなる群より選択する。
抗体断片は、例えば、「Fab断片」(断片抗原結合=Fab)を含む。Fab断片は、両方の鎖の可変領域からなり、それらは隣接する定常領域により一緒に保持されている。これらは、プロテアーゼ(例、パパイン)消化により従来の抗体から形成されうるが、しかし、同様にFab断片はまた、遺伝子工学により生成されうる。さらなる抗体断片はF(ab′)2断片を含み、それは、ペプシンを用いたタンパク質分解切断により調製されうる。
遺伝子工学的方法を使用し、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域だけからなる短縮抗体断片を生産することが可能である。これらはFv断片として言及する(断片可変=可変部分の断片)。これらのFv断片は、定常鎖のシステインによる2つの鎖の共有結合を欠くため、Fv断片はしばしば安定化される。重鎖及び軽鎖の可変領域を短いペプチド断片(例、10~30のアミノ酸、好ましくは15のアミノ酸)により連結することが有利である。この方法では、単一のペプチド鎖が得られ、ペプチドリンカーにより連結されたVH及びVLからなる。この種類の抗体タンパク質は、単鎖Fv(scFv)として公知である。scFv-抗体タンパク質の例は、当業者に公知である。
本発明による好ましい治療用抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は典型的には、1つの分子中で標的細胞(例、悪性B細胞)及びエフェクター細胞(例、T細胞、NK細胞、又はマクロファージ)についての抗原結合特異性を組み合わせる。例示的な二重特異性抗体は、ダイアボディ、BiTE(Bi特異的T細胞Engager)形式及びDART(二重親和性再標的化)形式であるが、それらに限定しない。ダイアボディ形式によって、2つの別々のポリペプチド鎖上の2つの抗原結合特異性の重鎖及び軽鎖の同族可変ドメインが分離され、2つのポリペプチド鎖が非共有結合的に会合される。DART形式はダイアボディ形式に基づくが、しかし、それは、C末端ジスルフィド架橋を通じて追加の安定性を提供する。
別の好ましい治療用タンパク質は、融合タンパク質(例えばFc融合タンパク質など)である。このように、本発明は、融合タンパク質(例えばFc融合タンパク質など)の生産のために有利に使用することができる。さらに、本発明によるタンパク質生産を増加させる方法は、融合タンパク質(例えばFc融合タンパク質など)の生産のために有利に使用することができる。
融合タンパク質のエフェクター部分は、天然又は修飾異種タンパク質の完全配列又はその配列の任意の部分、あるいは天然又は修飾異種タンパク質の完全配列又はその配列の任意の部分でありうる。免疫グロブリン定常ドメイン配列は、免疫グロブリンサブタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、又はIgA2サブタイプなど)又はクラス(例えばIgA、IgE、IgD、又はIgMなど)から得られうる。優先的には、それらはヒト免疫グロブリンから、より好ましくはヒトIgGから、さらにより好ましくはヒトIgG1及びIgG2から由来する。Fc融合タンパク質の非限定的な例は、N連結グリコシル化部位を含む重鎖免疫グロブリン定常領域のCH2ドメインに共役されたMCP1-Fc断片、ICAM-Fc断片、EPO-Fc断片、及びscFv断片などである。Fc融合タンパク質は、N連結グリコシル化部位を含む重鎖免疫グロブリン定常領域のCH2ドメインを、例えば他の免疫グロブリンドメイン、酵素活性タンパク質部分、又はエフェクタードメインを含む別の発現構築物中に導入することにより、遺伝子工学的アプローチにより構築することができる。このように、本発明によるFc融合タンパク質はまた、例えば、N連結グリコシル化部位を含む重鎖免疫グロブリン定常領域のCH2ドメインに連結された単鎖Fv断片を含む。
発現産物の回収及び製剤化
さらなる態様では、治療用タンパク質を生産する方法を提供し、本発明の方法を使用し、及び、場合により、治療用タンパク質を医薬的に許容可能な製剤に精製及び製剤化する工程をさらに含む。
治療用タンパク質、特に抗体、抗体断片、又はFc融合タンパク質は、好ましくは、分泌されたポリペプチドとして培養培地から回収/単離される。他の組換えタンパク質及び宿主細胞タンパク質から治療用タンパク質を精製し、治療用タンパク質の実質的に均一な調製物を得ることが必要である。最初の工程として、細胞及び/又は粒子状細胞細片を培養培地から除去する。さらに、治療用タンパク質は、例えば、免疫親和性カラム又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、セファデックスクロマトグラフィー、及びシリカ上又は陽イオン交換樹脂(例えばDEAEなど)上でのクロマトグラフィーにより、混入する可溶性タンパク質、ポリペプチド、及び核酸から精製する。哺乳動物細胞により発現される異種タンパク質を精製するための方法は、当技術分野で公知である。
発現ベクター
一実施形態では、本発明の方法を使用して発現される異種タンパク質は、異種タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む1つ以上の発現カセットによりコードされる。異種タンパク質は、増幅可能な遺伝子選択マーカー、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、グルタミンシンテターゼ(GS)などの制御下に置いてもよい。増幅可能な選択マーカー遺伝子は、異種タンパク質発現カセットと同じ発現ベクター上にあることができる。あるいは、増幅可能な選択マーカー遺伝子及び異種タンパク質発現カセットは、異なる発現ベクター上にあることができるが、しかい、宿主細胞のゲノム中に近接して組み込まれる。同時に同時トランスフェクトされる2つ以上のベクターは、例えば、しばしば、宿主細胞のゲノム中に近接して組み込まれる。分泌された治療用タンパク質発現カセットを含む遺伝子領域の増幅は次に、増幅薬剤(例、DHFRについてはMTX又はGSについてはMSX)を培養培地中に加えることにより媒介される。
哺乳動物細胞により発現される異種タンパク質の十分に高い安定レベルはまた、例えば、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドの複数のコピーを発現ベクター中にクローニングすることにより達成されうる。異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドの複数のコピーを発現ベクター中にクローニングすること及び異種タンパク質発現カセットを増幅すること(上に記載するとおり)を、さらに組み合わせてもよい。
哺乳動物細胞株
本明細書中で使用する哺乳動物細胞は、分泌された組換え治療用タンパク質の生産のための適切な哺乳動物細胞株であり、それ故に「宿主細胞」としても言及されうる。本発明による好ましい哺乳動物細胞は、齧歯類細胞(例えばハムスター細胞など)である。哺乳動物細胞は、単離された細胞又は細胞株である。哺乳動物細胞は、好ましくは、形質転換された及び/又は不死化された細胞株である。それらは細胞培養中の連続継代に適応されており、主な非形質転換細胞又は臓器構造の一部である細胞を含まない。好ましい哺乳動物細胞は、BHK21、BHK TK、CHO、CHO-K1、CHO-DXB11(またCHO-DUKX又はDuxB11として言及される)、CHO-S細胞及びCHO-DG44細胞、又はそのような細胞株のいずれかの誘導体/後代である。特に好ましいのはCHO細胞(例えばCHO-DG44、CHO-K1、及びBHK21など)であり、さらにより好ましいのはCHO-DG44細胞及びCHO-K1細胞である。最も好ましいのはCHO-DG44細胞である。哺乳動物細胞の、特にCHO-DG44細胞及びCHO-K1細胞のグルタミンシンテターゼ(GS)欠損誘導体も包含される。本発明の一実施形態では、哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、好ましくはCHO-DG44細胞、CHO-K1細胞、CHO DXB11細胞、CHO-S細胞、CHO GS欠損細胞又はその誘導体である。
哺乳動物細胞は、異種タンパク質、例えば治療用タンパク質など、好ましくは組換え分泌治療用タンパク質をコードする1つ以上の発現カセットをさらに含んでもよい。宿主細胞はまた、マウス細胞、例えばマウス骨髄腫細胞など(例えばNS0細胞及びSp2/0細胞など)又はそのような細胞株のいずれかの誘導体/後代でありうる。本発明の意味において使用することができる哺乳動物細胞の非限定的な例も表1中に要約している。しかし、それらの細胞の誘導体/後代、他の哺乳動物細胞(ヒト、マウス、ラット、サル、及び齧歯類の細胞株を含むが、それらに限定しない)はまた、特に生物医薬品タンパク質の生産のために、本発明において使用することができる。
Figure 0007117374000001
哺乳動物細胞は、樹立され、適応され、無血清条件下で完全に培養されている、及び、場合により、動物起源の任意のタンパク質/ペプチドを含まない培地中である場合、最も好ましい。商業的に入手可能な培地、例えばHam´s F12(Sigma、ドイツ、ダイゼンホーフェン)、RPMI-1640(Sigma)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Sigma)、最小必須培地(MEM;Sigma)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM;Sigma)、CD-CHO(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)、CHO-S(Invitrogen)、無血清CHO培地(Sigma)、及び無タンパク質CHO培地(Sigma)などが例示的な適した栄養溶液である。培地のいずれかに、必要に応じて、種々の化合物を補充してもよく、それらの非限定的な例は、組換えホルモン及び/又は他の組換え成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、上皮成長因子、インスリン様成長因子など)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸など)、緩衝剤(例えばHEPESなど)、ヌクレオシド(例えばアデノシン、チミジンなど)、グルタミン、グルコース又は他の等価のエネルギー供給源、抗生物質、及び微量元素である。他の必要な添加剤もまた、当業者に公知であろう適した濃度で含まれうる。選択可能な遺伝子を発現する遺伝子改変細胞の成長及び選択のために、適切な選択薬剤を培養培地に加える。
実施例
方法及び材料
以下の実施例は、他に特定しない限り、灌流細胞培養のための以下の一般化されたプロトコール及び装置を使用して行った。灌流培養プロセスの2つの異なる形式を、実施例において記載する実験のために用いた。1つはバイオリアクターモデルにおいて実行し、他はディープウェルプレートモデルにおいてである。
バイオリアクターモデルを、2Lの作業容積を伴う3Lのガラス製撹拌タンクバイオリアクターを使用して設定する。バイオリアクター用の保持デバイスは、TFFモードで稼働される磁気浮上遠心ポンプにより再循環される0.2μMの中空糸である。開始細胞密度は0.5~1.0e個細胞/mLである。ピーク時の灌流速度は2VVDである。設定のさらなる詳細は、Linら(Biotechnol. Prog., 2017, Vol. 33, No. 4、参照により本明細書中に組み入れる)により記載されている。
ディープウェルプレートモデルは、8日間の稼働持続時間を伴う24ディープウェルプレートを使用して行う。20e個細胞/mLの開始細胞密度が、ディープウェルプレートモデルについて標的化される。ウェル当たりの作業容積は3mlで、細胞を、軌道直径5.0cmを伴うインキュベーター中で、5%CO、湿度80%、及び200rpmで、33℃で成長させる。培地交換は、プレートを1800rpmで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去し、細胞を新鮮な培地中に1日当たり70%容積(VVD)の交換率で再懸濁することにより毎日実施する。設定の詳細は、Linら(Biotechnol. Prog., 2017, Vol. 33, No. 4)により記載されている。
実施例1.生存率、生存細胞密度、及び特異的な生産性に対する温度シフトの効果。
この実施例では、バイオリアクターモデルを使用する。低い温度シフトを一般に細胞培養中で用いて、細胞成長を限定又は阻害する。
この実施例では、従って、(A)パーセント生存率(%)、(B)生細胞密度(e個細胞/mL)、及び(C)特異的な生産性(pg/細胞/日)に対する温度シフトの効果を研究する。図1を参照のこと。灌流を細胞培養の2日目に開始し、1日当たり2容器容積(2VVD)の交換まで徐々に増やした。矢印は、温度が37℃から示された値(図の説明文中)(29℃-正方形又は28℃-三角形)に(低に)シフトした日(7日目)を示す。
この実施例では、この方法によって成長が遅れることが見出されているが、しかし、細胞の特異的な生産性には影響を及ぼさないことが見出されている。1つの細胞株(データは示さず)では、温度シフトが産物の品質に負の影響を及ぼし、軽鎖及び基本種が増加した。図1(C)中に示すように、7日目後の温度シフト(28℃及び29℃へ)(黒色矢印)はVCDを低下させるが、低い温度シフトは細胞特異的な生産性に正の効果を示さない(図1(B))。対照的に、本発明の脂質添加物の使用は、細胞特異的な生産性を同時に増加させながら、VCDを減少させる。
実施例2.外因性リノール酸による細胞成長の抑制及び細胞生産性における増加。
この実施例では、ディープウェルプレートモデルを使用する。この実施例は、リノール酸が、灌流培地に加えられた場合、CHO灌流細胞培養中で細胞成長を抑制し、細胞特異的な生産性(qp)を増加させることを実証する。図3を参照のこと。
種々の濃度(500μM、900μM、1350μM、及び1800μM)のリノール酸を細胞培養培地に加え、(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)特異的な生産性(q)に対する効果を決定した。より高い濃度のリノール酸は、細胞成長の抑制及び特異的な生産性の増加に対してより有意な影響示した。例えば、7日目に、500、900、及び1350μMのリノール酸では、ほぼ同じであり、通常の灌流培地と比べて有意に増加した細胞特異的な生産性が実証された。1800μMのリノール酸は、生細胞密度、生存率、及び特異的な生産性に関して、500μMのアラキドン酸と類似しており、それは、通常の灌流培地と比べて最も有意な差を有する。
この図はまた、濃度500μMのアラキドン酸が灌流細胞培養中の細胞成長及びqに影響を及ぼしうることを示す。
実施例3.外因性アラキドン酸による細胞成長の抑制及び細胞生産性における増加。
この実施例では、ディープウェルプレートモデルを使用する。この実施例では、灌流培地に加えられた場合でのアラキドン酸の効果を分析する。図4を参照のこと。
細胞培養の(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント細胞生存率(%)、及び(C)特異的な生産性(q)に対するアラキドン酸の効果を決定した。
通常の灌流培地中に加えられた500μMのアラキドン酸濃度によって、細胞成長が最大31%抑制され、細胞特異的な生産性が46%又はそれ以上増加することを見ることができる。そのため、アラキドン酸によって、細胞成長が抑制され、灌流細胞培養中での細胞特異的な生産性(q)が増加する。
実施例4.カリウム濃度の上昇に加えて、外因性アラキドン酸による細胞成長の抑制及び細胞生産性における増加。
この実施例では、ディープウェルプレートモデルを使用する。この実験では、既に高いカリウム濃度(即ち、「K-pop」培地)に加えて、灌流培地に加えられた場合でのアラキドン酸の効果を分析する。図5を参照のこと。
約34mMのナトリウム濃度及び約94mMの既存の高カリウム濃度、即ち、約0.4の低いナトリウム対カリウム比率を有する細胞培養培地に150μM、300μM、及び500μMで加えられたアラキドン酸の濃度の効果を、(A)生細胞密度(e個細胞/mL)、(B)パーセント(%)細胞生存率、及び(C)特異的な生産性(qp)に関して決定した。
高カリウム濃度に加えて、150μM~500μMの濃度のアラキドン酸を伴う細胞培養培地によって、細胞成長が減少し、高カリウム濃度単独の効果をさらに超えて、細胞特異的な生産性が改善する。
この実験では、アラキドン酸が、灌流培地に加えられた場合、例えば、カリウム濃度の上昇による同等の効果に加えて、細胞成長を抑制し、細胞特異的な生産性(q)を増加させることを実証する。
低いナトリウム対カリウム培地(即ち、カリウム濃度の増加)は、例えば、米国仮出願第62/479,422号に記載されており、それを参照により本明細書中に組み入れる。
実施例5.外因性プロスタグランジンE2(PGE2)による細胞成長の抑制及び細胞生産性における増加。
この実施例では、ディープウェルプレートモデルを使用する。この実験では、灌流培地に加えられた場合でのプロスタグランジンE2の効果を分析する。図6を参照のこと。
図6は、(A)生細胞密度(VCD)(e個細胞/mL)、(B)細胞生存率のパーセント、及び(C)特異的な生産性(pg/細胞/日)に対する灌流培地に加えられた500μMのアラキドン酸、PGE2 0.001μM、10μM、20μM、及び60μMの濃度の効果を実証する。各々の濃度で、VCD及び特異的な生産性(即ち、特異的な力価)、細胞成長が抑制され、特異的な生産性が、通常の灌流培地中での細胞培養と比べて、6日目前に増加した。
データはまた、生存率が6日目に減少し始めたため、0.001μMを上回る濃度のプロスタグランジンE2が、細胞にある程度毒性があることを実証しているように思われる。いくつかの毒性が0.001μMを上回る濃度で観察されうるが、これ自体によって、この閾値を上回る濃度のプロスタグランジンE2の使用は妨げられない。
この実施例は、プロスタグランジンE2が、灌流培地に加えられた場合、細胞成長を抑制し、細胞の特異的な生産性(q)が増加させることを実証する。
実施例6.プロスタグランジンE2は、成長抑制及び細胞生産性の増加の調節因子である。
この実施例では、ディープウェルプレートモデルを使用する。ASAはCOX-1及びCOX-2の阻害剤であり、それらは、アラキドン酸を変換してプロスタグランジンE2を合成する代謝酵素である(図2を参照のこと)。この実験では、従って、灌流培地に加えられた場合でのアセチルサリチル酸(ASA)の効果を分析する。図7を参照のこと。
阻害剤を伴う培地は、通常の灌流培地よりも高い生細胞密度(A)を示し、通常の灌流培地と同じ特異的な生産性(C)に対する効果を伴った。プロスタグランジンE2は、シクロオキシゲナーゼ酵素1及び2(COX-1及びCOX-2)によりアラキドン酸から合成され、そのため、アセチルサリチル酸(ASA)を用いたCOX-1及びCOX-2の阻害によって、恐らくはアラキドン酸からのプロスタグランジンE2の合成が阻止される。
この理論にとらわれることを望まないが、データは、アラキドン酸(他の方法で、ASA阻害剤の非存在において細胞成長を抑制し、生産性を増加させうる)が、プロスタグランジンE2(活性薬剤である)を形成するためにCOX-1及びCOX-2に対して最初に代謝されることにより細胞培養に対するその効果を課すことを示唆する(図2を参照のこと)。COX-1及びCOX-2がASAにより阻害された場合、プロスタグランジンE2は生産されず、アラキドン酸は、細胞成長の抑制及び生産性の増加に対する効果を有さない。
この実験は、500μMのアラキドン酸を伴う灌流培地中での(A)生細胞密度、(B)パーセント生存率、及び(C)特異的な生産性に対するアセチルサリチル酸(ASA)の効果を実証する。データは、プロスタグランジンE2が細胞成長抑制を引き起こし、及び細胞特異的な生産性を増加させる際に効果的であることの証拠を提供する。
項目
上記を考慮して、本発明はまた、以下の項目にも関連することが理解されるであろう:
1.有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む培養培地中で哺乳動物細胞を培養することを含み、ここで、1つ以上の脂質又は脂質代謝物は500~2000μMリノール酸、100~600μMアラキドン酸、0.0001~100μMプロスタグランジンE2、又はそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む、細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法。
2.培養培地が少なくとも2つの脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む、項目1の方法。
3.培養培地が100~300μMの濃度のアラキドン酸及び500~1800μMの濃度のリノール酸を含む、項目1~2の1つ以上の方法。
4.培養培地が、500~1800μMの濃度のリノール酸又は100~150μMの濃度のアラキドン酸のいずれかとの組み合わせにおいて、0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む、項目1~3の1つ以上の方法。
5.培養培地が、3つの脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む、項目1~4の1つ以上の方法。
6.細胞培養がバッチ、流加、又は灌流細胞培養である、項目1~5の1つ以上の方法。
7.哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ジャーカット細胞、293細胞、HeLa細胞、CV-1細胞、又は3T3細胞、あるいはこれらの細胞のいずれかの誘導体を含み、ここで、前記CHO細胞は、CHO-DG44細胞、CHO-K1細胞、CHO DXB11細胞、CHO-S細胞、及びCHO GS欠損細胞あるいはそれらの変異体からなる群よりさらに選択することができる、項目1~6の1つ以上の方法。
8.異種タンパク質が、治療用タンパク質、抗体、又はそれらの治療的に有効な断片である、項目1~7の1つ以上の方法。
9.抗体がモノクローナル抗体もしくはその断片又は二重特異性抗体である、項目8の方法。
10.脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの組み合わせが成長抑制及び生産性の増加をもたらす、項目1~9の1つ以上の方法。
11.培養培地が無血清灌流培地である、項目1~10の1つ以上の方法。
12.培養培地が場合により(a)化学的に定義され、(b)加水分解物を含まない、又は(c)タンパク質を含まないが、しかし、場合によりインスリン及び/又はインスリン様成長因子を含む、項目11の方法。
13.細胞培養により生産される異種タンパク質の総生産が、脂質又は脂質代謝物を含まない対照細胞培養中の総生産のレベルと比べて少なくとも5~50%増加している、項目1~12の1つ以上の方法。
14.細胞培養の細胞特異的な生産性(pg/細胞/日)が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又はその前駆体を含まない対照細胞培養中の細胞特異的な生産性と比べて、少なくとも5~50%増加している、項目1~13の1つ以上の方法。
15.細胞成長が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含まない対照細胞培養と比べて、少なくとも5~50%低い生細胞密度を有する定常状態に細胞を維持するために十分であるレベルで抑制される、項目1~14の1つ以上の方法。
16.2日目の細胞培養を灌流細胞培養に変化させる、項目1~15の1つ以上の方法。
17.灌流速度が、灌流が開始した後に増加する、項目6及び16の1つ以上の方法。
18.灌流速度が、1日当たり0.5容器容積以下から1日当たり5容器容積まで、又は1日当たり0.5容器容積以下から1日当たり2容器容積まで増加する、項目17の方法。
19.細胞培養物から異種タンパク質を収集することをさらに含む、項目1~18の1つ以上の方法。
20.1つ以上の脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体が、一度、細胞密度が10×10個細胞/mL~約120×10個細胞/mLに達したら細胞培地に加えられる、項目1~19の1つ以上の方法。
21.項目1~20のいずれか1つの方法を使用して治療用タンパク質を生産する方法。22.細胞培養から治療用タンパク質を生産する方法であって、
(a)有効量の1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養すること、ここで、1つ以上の脂質又は脂質代謝物は500~2000μMリノール酸、100~600μMアラキドン酸、0.0001~100μMプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む、
(b)細胞培養物から異種タンパク質を収集すること、
を含む方法。
23.培養培地が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の少なくとも2つを含む、項目22の方法。
24.培養培地が100~300μMの濃度のアラキドン酸及び500~1800μMの濃度のリノール酸を含む、項目22~23の1つ以上の方法。
25.培養培地が、500~1800μMの濃度のリノール酸又は100~150μMの濃度のアラキドン酸のいずれかとの組み合わせにおいて、0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2を含む、項目22-24の1つ以上の方法。
26.培養培地が、少なくとも3つの脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む、項目22~25の1つ以上の方法。
27.細胞培養がバッチ、流加、又は灌流細胞培養である、項目22~26の1つ以上の方法。
28.哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ジャーカット細胞、293細胞、HeLa細胞、CV-1細胞、又は3T3細胞、あるいはこれらの細胞のいずれかの誘導体であり、ここで、前記CHO細胞が、CHO-DG44細胞、CHO-K1細胞、CHO DXB11細胞、CHO-S細胞、及びCHO GS欠損細胞又はこれらの細胞のいずれかの誘導体からなる群よりさらに選択することができる、項目22~27の1つ以上の方法。
29.異種タンパク質が治療用タンパク質、抗体、又はそれらの治療的に有効な断片である、項目22~28の1つ以上の方法。
30.抗体がモノクローナル抗体もしくはその断片又は二重特異性抗体である、項目29の方法。
31.1つ以上の脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体の有効量が細胞培養の間に一定のままである、項目22~30の1つ以上の方法。
32.培養培地が無血清灌流培地である、項目22~31の1つ以上の方法。
33.培養培地が場合により(a)化学的に定義され、(b)加水分解物を含まない、又は(c)タンパク質を含まないが、しかし、場合によりインスリン及び/又はインスリン様成長因子を含む、項目32の方法。
34.細胞培養により生産された異種タンパク質の総生産が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含まない対照細胞培養中での総生産のレベルと比べて少なくとも5~50%増加している、項目22~33の1つ以上の方法。
35.細胞培養の細胞特異的な生産性(pg/細胞/日)が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含まない対照細胞培養中での細胞特異的な生産性と比べて少なくとも5~50%増加している、項目22~34の1つ以上の方法。
36.生存細胞密度が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含まない対照細胞培養と比べて少なくとも5~50%低い、項目22~35の1つ以上の方法。
37.2日目の細胞培養を灌流細胞培養に変化させる、項目22~36の1つ以上の方法。
38.灌流速度が、灌流が開始された後に増加する、項目27及び37の1つ以上の方法。
39.灌流速度が、1日当たり0.5容器容積以下から1日当たり5容器容積まで増加する、項目38の方法。
40.灌流速度が、1日当たり0.5容器容積以下から1日当たり2容器容積まで増加する、項目38の方法。
41.細胞培養物から異種タンパク質を連続的な様式で収集することをさらに含む、項目22~40の1つ以上の方法。
42.1つ以上の脂質又は脂質代謝物あるいはその誘導体が、一度、10×10個細胞/mL~約120×10個細胞/mLの細胞密度に達したら、細胞培地に加えられる、項目22~41の1つ以上の方法。
43.500~2000μMリノール酸、100~600μMアラキドン酸、0.0001~100μMプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含む1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む、灌流細胞培地。
44.100~300μMの濃度のアラキドン酸及び500~1800μMの濃度のリノール酸を含む、項目43の灌流細胞培養培地。
45.500~1800μMの濃度のリノール酸又はその誘導体あるいは100~150μMの濃度のアラキドン酸又はその誘導体のいずれかとの組み合わせにおいて、0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2又はその誘導体を含む、項目43~44の1つ以上の灌流細胞培地。
46.500~2000μMの濃度のリノール酸又はその誘導体、100~300μMの濃度のアラキドン酸又はその誘導体、及び0.0001~0.0009μMの濃度のプロスタグランジンE2又はその誘導体を含む、項目43~45の1つ以上の灌流細胞培養培地。
47.培養培地が無血清灌流培地である、項目43~46の1つ以上の灌流細胞培養培地。
48.培養培地が場合により(a)化学的に定義され、(b)加水分解物を含まない、又は(c)タンパク質を含まないが、しかし、インスリン及び/又はインスリン様成長因子を含む、項目43~47の1つ以上の灌流細胞培養培地。
49.灌流培養中で哺乳動物細胞を培養するための、項目43~48の1つ以上の灌流細胞培養培地の使用。
50.培養物の成長を抑制し、生産性を増加させるための、項目43~48の1つ以上の灌流細胞培養培地の使用。
51.細胞培養により生産される異種タンパク質の総生産が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含まない対照細胞培養中での総生産レベルと比べて、少なくとも5~50%増加している、項目50の使用。
52.細胞培養の細胞特異的な生産性(pg/細胞/日)が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含まない対照細胞培養中での細胞特異的な生産性と比べて、少なくとも5~50%増加している、項目50~51の1つ以上の使用。
53.増殖抑制が、脂質又は脂質代謝物あるいはそれらの誘導体及び/又は前駆体を含まない対照細胞培養と比べて、少なくとも5~50%低い生細胞密度を有するために十分である、項目50~52の1つ以上の使用。

Claims (8)

  1. 有効量の脂質又は脂質代謝物を含む培養培地中で哺乳動物細胞を培養することを含み、ここで、脂質又は脂質代謝物が500~1800μMリノール酸、150~500μMアラキドン酸、及び/又は0.001~60μMプロスタグランジンE2を含む、細胞培養中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養する方法であって、
    細胞培養が、灌流細胞培養であり、
    哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含み、
    細胞培養の細胞特異的な生産性(pg/細胞/日)が、脂質又は脂質代謝物を含まない対照細胞培養中での細胞特異的な生産性と比べて、5~50%増加しており、
    細胞成長が、脂質又は脂質代謝物を含まない対照細胞培養と比べて、5~50%低い生存細胞密度を有する定常状態で細胞を維持するために十分なレベルで抑制される、前記方法。
  2. 培養培地が、2つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む、請求項1記載の方法。
  3. 細胞培養物から異種タンパク質を収集することをさらに含む、請求項1又は2記載の方法。
  4. 請求項1~3のいずれか一項記載の方法を使用して治療用タンパク質を生産する方法。
  5. (a)有効量の脂質又は脂質代謝物を含む培養培地中で異種タンパク質を発現する哺乳動物細胞を培養し、ここで、脂質又は脂質代謝物は500~1800μMリノール酸、150~500μMアラキドン酸、及び/又は0.001~60μMプロスタグランジンE2を含み、
    (b)細胞培養物から異種タンパク質を収集することを含む、細胞培養から異種タンパク質を生産する方法であって、
    細胞培養が、灌流細胞培養であり、
    哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含み、
    細胞培養の細胞特異的な生産性(pg/細胞/日)が、脂質又は脂質代謝物を含まない対照細胞培養中での細胞特異的な生産性と比べて、5~50%増加しており、
    細胞成長が、脂質又は脂質代謝物を含まない対照細胞培養と比べて、5~50%低い生存細胞密度を有する定常状態で細胞を維持するために十分なレベルで抑制される、前記方法。
  6. 請求項5記載の方法を使用して治療用タンパク質を生産する方法。
  7. 500~1800μMリノール酸、150~500μMアラキドン酸、及び/又は0.001~60μMプロスタグランジンE2を含む1つ以上の脂質又は脂質代謝物を含む、灌流培養でCHO細胞を培養し、培養物の成長を抑制し、生産性を増加させるための、培養培地。
  8. 培養培地が無血清灌流培地であり、ここで、培養培地が(a)化学的に定義されており、(b)加水分解物を含まず、又は(c)タンパク質を含まないが、しかし、インスリン及び/又はインスリン様成長因子を含む、請求項7記載の培養培地。
JP2020520619A 2017-10-13 2018-10-10 灌流培地 Active JP7117374B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201762571915P 2017-10-13 2017-10-13
US62/571,915 2017-10-13
PCT/EP2018/077555 WO2019072889A1 (en) 2017-10-13 2018-10-10 MEDIUM OF INFUSION

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020536567A JP2020536567A (ja) 2020-12-17
JP7117374B2 true JP7117374B2 (ja) 2022-08-12

Family

ID=63862123

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020520619A Active JP7117374B2 (ja) 2017-10-13 2018-10-10 灌流培地

Country Status (9)

Country Link
US (1) US20200332251A1 (ja)
EP (1) EP3673045B1 (ja)
JP (1) JP7117374B2 (ja)
KR (1) KR20200064131A (ja)
CN (1) CN111201315B (ja)
AU (1) AU2018348712B2 (ja)
CA (1) CA3078759A1 (ja)
SG (1) SG11202003354VA (ja)
WO (1) WO2019072889A1 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10704021B2 (en) 2012-03-15 2020-07-07 Flodesign Sonics, Inc. Acoustic perfusion devices
US9725710B2 (en) 2014-01-08 2017-08-08 Flodesign Sonics, Inc. Acoustophoresis device with dual acoustophoretic chamber
US11708572B2 (en) 2015-04-29 2023-07-25 Flodesign Sonics, Inc. Acoustic cell separation techniques and processes
US11377651B2 (en) 2016-10-19 2022-07-05 Flodesign Sonics, Inc. Cell therapy processes utilizing acoustophoresis
SG11202004273YA (en) * 2017-12-11 2020-06-29 Amgen Inc Continuous manufacturing process for bispecific antibody products
WO2019118921A1 (en) 2017-12-14 2019-06-20 Flodesign Sonics, Inc. Acoustic transducer drive and controller
WO2021058713A1 (en) * 2019-09-27 2021-04-01 Boehringer Ingelheim International Gmbh Concentrated perfusion medium
CN111690057B (zh) * 2020-06-24 2021-04-23 哈尔滨元亨生物药业有限公司 一种重组犬细小病毒单克隆抗体生产方法
JPWO2022203051A1 (ja) * 2021-03-25 2022-09-29
CN115287251A (zh) * 2022-08-25 2022-11-04 无锡药明生物技术股份有限公司 间歇性灌流联合分批流加培养

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003534791A (ja) 2000-05-29 2003-11-25 カントンスピタル バーゼル 組織エンジニアリングのためのエイコサノイドの使用方法
JP2013524817A (ja) 2010-04-23 2013-06-20 ライフ テクノロジーズ コーポレーション 小ペプチドを含む細胞培養培地
WO2015095651A1 (en) 2013-12-20 2015-06-25 Essential Pharmaceuticals, Llc Media for cell culture

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2813467B2 (ja) 1993-04-08 1998-10-22 ヒューマン・セル・カルチャーズ・インコーポレーテッド 細胞培養法および培地
JPH0870859A (ja) * 1994-06-27 1996-03-19 Takeda Chem Ind Ltd 動物細胞培養用の無血清培地、および生理活性ペプチドまたは蛋白質の製造法
WO1998004681A2 (en) 1996-07-25 1998-02-05 Genzyme Corporation Chondrocyte media formulations and culture procedures
JP2002529071A (ja) 1998-11-09 2002-09-10 コンソルツィオ・ペール・ラ・ジェスティオーネ・デル・チェントロ・ディ・ビオテクノロジー・アヴァンツァテ 軟骨細胞様細胞のための無血清培地
WO2003064598A2 (en) 2002-01-25 2003-08-07 Genzyme Corporation Serum-free media for chondrocytes and methods of use thereof
FI20096288A0 (fi) * 2009-12-04 2009-12-04 Kristiina Rajala Formulations and methods for culturing stem cells
WO2014062535A1 (en) * 2012-10-15 2014-04-24 Bristol-Myers Squibb Company Mammalian cell culture processes for protein production
US20150353542A1 (en) 2013-01-14 2015-12-10 Amgen Inc. Methods of using cell-cycle inhibitors to modulate one or more properties of a cell culture

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003534791A (ja) 2000-05-29 2003-11-25 カントンスピタル バーゼル 組織エンジニアリングのためのエイコサノイドの使用方法
JP2013524817A (ja) 2010-04-23 2013-06-20 ライフ テクノロジーズ コーポレーション 小ペプチドを含む細胞培養培地
WO2015095651A1 (en) 2013-12-20 2015-06-25 Essential Pharmaceuticals, Llc Media for cell culture

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019072889A1 (en) 2019-04-18
CN111201315A (zh) 2020-05-26
AU2018348712B2 (en) 2024-05-30
AU2018348712A1 (en) 2020-03-26
US20200332251A1 (en) 2020-10-22
EP3673045B1 (en) 2024-01-17
CA3078759A1 (en) 2019-04-18
EP3673045A1 (en) 2020-07-01
SG11202003354VA (en) 2020-05-28
CN111201315B (zh) 2023-10-03
KR20200064131A (ko) 2020-06-05
JP2020536567A (ja) 2020-12-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7117374B2 (ja) 灌流培地
KR102604988B1 (ko) 관류 배지
JP2022126811A (ja) 哺乳類細胞培養物を回収するための方法
KR102604992B1 (ko) 관류 배지
TWI771890B (zh) 用於增加重組蛋白質之甘露糖含量之方法
JP7495483B2 (ja) 濃縮灌流培地

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200507

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210427

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210727

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211130

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220428

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220712

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220801

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7117374

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150