JP7112012B2 - 1,1,2-トリフルオロエタン(r-143)及び/又は(e,z)-1,2-ジフルオロエチレン(r-1132(e,z))を含む反応ガスの製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法に関する。
1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)はそれを脱フッ化水素反応に供することにより(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(以下、「R-1132(E,Z)」とも表記する)を合成するための中間体として知られている。上記(E)-1,2-ジフルオロエチレン(以下、「R-1132(E)」とも表記する)は、地球温暖化係数(GWP)が小さいため、温室効果ガスであるジフルオロメタン(R-32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R-125)を代替する冷媒として注目されている。
特許文献1には1,2-ジフルオロエタン及び1,1,2-トリフルオロエタンの製造方法が開示されており、3頁左上欄には、1,1,2-トリフルオロエタンの選択的製造方法として1-クロロトリフルオロエチレン(CTFE)と水素とを水素化触媒の存在下、気相で100~220℃範囲の温度において反応させる方法が記載されている。
特開平1-287044号公報
本開示は、従来法よりも入手が容易な原料を用いて1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスを製造する方法を提供することを目的とする。
本開示は、例えば、以下の項に記載の発明を包含する。
1.1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを、0.9MPaG以上2.0MPaG以下の圧力条件下、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
製造方法。
2.1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
0.1MPaG以上2.0MPaG以下の圧力に事前加圧されたジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを、前記事前加圧の圧力よりも低い圧力条件下の反応器に供給し、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有し、前記反応ガス中の前記R-143の選択率が30~60モル%である、
製造方法。
3.1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスと600℃以上1000℃以下の温度の熱媒体とを反応器に供給し、前記原料ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有し、前記熱媒体は無水フッ化水素を含有する、
製造方法。
4.1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを反応器に供給する前に、前記ジフルオロメタン(R-32)の体積の0.01%以上10%以下のR-31と合流させて混合ガスとし、前記混合ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
製造方法。
5.前記反応は、0MPaG以上2.0MPaGの範囲の圧力で行う、上記項2~4のいずれかに記載の製造方法。
6.前記反応は、鉄含有量が10質量%以下の金属製反応容器を用いて行う、上記項1~5のいずれかに記載の製造方法。
7.前記原料ガスは、前記ジフルオロメタン(R-32)の含有量が10体積%以上100体積%以下である、上記項1~6のいずれかに記載の製造方法。
8.前記反応は、700℃以上900℃以下の温度で行う、上記項1~7のいずれかに記載の製造方法。
9.前記原料ガスを前記反応に供する時間(滞留時間)が0.01秒以上10秒以下の範囲である、上記項1~8のいずれかに記載の製造方法。
10.上記項1~9のいずれかに記載の製造方法において、前記反応ガスに1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)が含まれおり、前記反応ガスに含まれる1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)を脱フッ化水素反応に供する工程を有する、(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))の製造方法。
本開示の1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法によれば、従来法よりも入手が容易な原料を用いて当該反応ガスを製造することができる。
以下、本開示の1,1,2-トリフルオロエタン(「R-143」ともいう)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(「R-1132(E,Z)」ともいう)を含む反応ガスの製造方法について詳細に説明する。なお、上記(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))は、E-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E))及び/又はZ-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(Z))を意味する。
本明細書において、「事前加圧」とは、原料ガスを反応器に供給する前に反応器外において予め所定圧力に加圧することを意味するものとする。
本明細書において、「事前加熱」とは、原料ガス、熱媒体、添加ガス等を反応器に供給する前に反応器外において予め所定温度に加熱(いわゆる予熱)することを意味するものとする。
本明細書において、「転化率」とは、反応器に供給されるジフルオロメタン(「R-32」ともいう)のモル量に対する、反応器出口からの流出ガス(=反応ガス)に含まれる、R-32以外の化合物の合計モル量の割合(モル%)を意味するものとする。
本明細書において、「選択率」とは、反応器出口からの流出ガス(=反応ガス)に含まれる、R-32以外の化合物の合計モル量に対する当該流出ガスに含まれる目的化合物(例えばR-143)のモル量の割合(モル%)を意味するものとする。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示の1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法は、ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを特定の条件下で熱分解を含む反応(R32の熱分解を伴う合成反応)に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有することを特徴とし、具体的には下記の実施形態1~4に大別することができる。
(実施形態1)
1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを、0.6MPaG以上2.0MPaG以下の圧力条件下、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
製造方法。
(実施形態2)
1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
0.1MPaG以上2.0MPaG以下の圧力に事前加圧されたジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを、前記事前加圧の圧力よりも低い圧力条件下の反応器に供給し、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
製造方法。
(実施形態3)
1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスと600℃以上1000℃以下の温度の熱媒体とを反応器に供給し、前記原料ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
製造方法。
(実施形態4)
1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを反応器に供給する前に、前記ジフルオロメタン(R-32)の体積の10%以下のハイドロフルオロカーボンガス及び/又はハイドロクロロフルオロカーボンガスと合流させて混合ガスとし、前記混合ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
製造方法。
上記特徴を有する本開示の1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法によれば、従来法よりも入手が容易な原料を用いて当該反応ガスを製造することができる。従来法の原料であるCTFEは入手が困難であるが、本開示で用いるジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスは入手が容易である。
なお、本願には、前記実施形態1~4のいずれかに記載の製造方法のうち、前記反応ガスに1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)が含まれる場合において、前記反応ガスに含まれる1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)を脱フッ化水素反応に供する工程を有する、(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))の製造方法の発明も包含されている。
以下、前述の実施形態1~4について説明する。
(実施形態1)
実施形態1は、R-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスの製造方法であって、
R-32を含む原料ガスを、0.6MPaG以上2.0MPaG以下の圧力条件下、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
ことを特徴とする。
実施形態1では、R-32を含む原料ガスを、0.6MPaG以上2.0MPaG以下の圧力条件下、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応(以下、単に「反応」ともいう。)に供することにより、目的化合物であるR-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスを合成できる。なお、原料ガスを所定圧力に加圧する操作、及び所定温度で反応に供する操作は反応器内で行うことができる。
実施形態1では、原料ガスはR-32のみを反応器にそのまま供給してもよく、又は窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して供給してもよい。原料ガス中のR-32の含有量は限定的ではないが、10体積%以上100体積%以下の範囲で調整することが好ましく、90体積%以上100体積%以下の範囲がより好ましい。かかる範囲に希釈することにより、R-32が完全に脱フッ化水素されてカーボンが生じる副反応(コーキング)を抑制する効果が得られ易い。
原料ガスを上記反応に供する圧力(反応圧力)は、0.6MPaG以上2.0MPaG以下であればよいが、その中でも1.2MPaG以上2.0MPaG以下が好ましく、1.5MPaG以上2.0MPaG以下が更に好ましい。圧力をかかる範囲内に設定することにより、R-32の転化率、並びにR-143及び/又はR-1132(E,Z)の選択率の双方を向上させることができる。
なお、原料ガスは、反応器に供給する前に上記反応圧力を超える圧力に事前加圧されていることが好ましい。事前加圧の圧力条件は、0.6MPaGを超える圧力範囲(例えば、0.6MPaG超過2.1MPaG以下)から適宜選択することができる。事前加圧は公知のコンプレッサー等を用いて行うことができる。なお、事前加圧の圧力条件の下限値は0.7MPaG以上、0.8MPaG以上等と設定することができる。
原料ガスを上記反応に供する温度(反応温度)は、600℃以上1000℃以下であればよいが、その中でも700℃以上900℃以下がより好ましく、800℃以上850℃以下が更に好ましい。反応温度をかかる範囲内に設定することにより、R-32の転化率、並びにR-143及び/又はR-1132(E,Z)の選択率の双方を向上させることができる。
原料ガスを上記反応に供する際の加熱方法としては、公知の方法を使用できる。反応器(反応容器)を電気炉内で加熱する方法、電気ヒータ又は熱媒体が流通するジャケットで反応器を加熱する方法、反応器をマイクロウェーブにより加熱する方法、希釈ガスとしての上記不活性ガスを加熱した上でR-32と混合する方法等、並びにこれらを任意の組み合わせる方法が挙げられる。
原料ガスを上記反応に供する時間(滞留時間)は、反応温度、反応圧力等によって一概ではないが、0.01秒以上10秒以下が好ましく、0.10秒以上1秒以下がより好ましい。滞留時間を上記範囲の下限値以上にするとR-32の熱分解が促進されてR-143及び/又はR-1132(E,Z)が効率よく得られる。また、上記範囲の上限値以下にすることで副反応が抑制され且つR-32の熱分解が促進されて生産性が良好となる。
原料ガスを上記反応に供する反応器の形態は特に限定されるものではなく、上記反応温度及び反応圧力に耐え得る公知の反応器を広く使用できる。例えば、触媒を充填した管型の流通型反応器を用いることができる。触媒としては、例えば、Al、CoOなどの金属酸化物触媒;Fe、Zn、Coなどの金属触媒;Pd/C、Pd/TiOなどの酸化物又はカーボン担体に金属粒子を担持した触媒が挙げられる。また、触媒の不存在下に反応を行う場合には、空塔の断熱反応器、原料ガスの混合状態を向上させるための多孔質又は非多孔質の金属又は媒体を充填した断熱反応器等を用いてもよい。それ以外にも、熱媒体を用いて除熱及び/又は反応器内の温度分布を均一化した多管型反応器等を用いることもできる。
空塔の反応器を使用する場合、内径の小さい反応器を用いて伝熱効率を良くする方法では、例えば、原料ガスの流量と、反応器の内径の関係は、線速度が大きくかつ伝熱面積が大きくなるようにすることが好ましい。
反応器としては、具体的には、ハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)、モネル(MONEL)、インコロイ(INCOLLOY)、ステンレス系材質(SUS316等)等をはじめとする腐食作用に抵抗性がある材料によって構成されるものを用いることが好ましい。なお、上記反応器の中でもハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)等の鉄含有量が10質量%以下の金属製反応容器を用いる場合には、反応器内壁へのコーキングの発生を抑制することもできる。
実施形態1により得られたR-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスは、適宜精製工程に供することによりR-143及び/又はR-1132(E,Z)の純度を高めて取り出すことができる。精製方法については蒸留などの公知の精製方法が利用できる。なお、実施形態1では、反応条件にもよるが、好適な実施態様ではR-143の選択率は20モル%以上(特に30~60モル%)であり、R-1132(E)の選択率は2モル%以上(特に2~7モル%)であり、R-1132(Z)の選択率は3モル%以上(特に3~11モル%)であり、これらの合計の選択率は25モル%以上(特に30~70モル%)であることが好ましい。
実施形態1の反応ガスがR-143を含む場合において、反応ガスに含まれるR-143を新たな原料ガスとし、R-143を脱フッ化水素することによりR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得ることができる。ここで、R-1132(E,Z)は、R-32を含む原料ガスを熱分解を含む反応に供することにより直接に合成することもできるが(R-32を脱フッ化水素することにより得られるCHFカルベン(CHF・)どうしの反応によるR-1132(E,Z)の合成)、実施形態1を経て一旦R-143を含む反応ガスを得、R-143を新たな原料ガスとし、R-143を脱フッ化水素することによりR-1132(E,Z)を得る方が副生物が少なくという特徴がある。つまり、実施形態1の反応ガスに含まれるR-143は、R-1132(E,Z)を高い選択率で得るための新たな原料ガスとして有用である。
(実施形態2)
実施形態2は、R-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスの製造方法であって、
0.1MPaG以上2.0MPaG以下の圧力に事前加圧されたジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを、前記事前加圧の圧力よりも低い圧力条件下の反応器に供給し、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
ことを特徴とする。
実施形態2では、0.1MPaG以上2.0MPaG以下の圧力に事前加圧されたジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを、前記事前加圧の圧力よりも低い圧力条件下の反応器に供給し、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応(以下、単に「反応」ともいう。)に供することにより、目的化合物であるR-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスを合成できる。なお、原料ガスを所定圧力に事前加圧する操作は反応器に供給する前に公知のコンプレッサー等を用いて行うことができ、所定圧力及び所定温度で反応に供する操作は反応器内で行うことができる。また、原料ガスは必要に応じて事前加圧と同時又は別に事前加熱することもできる。ここで、事前加圧の下限値は、0.5MPaG以上(又は0.5MPaG超過)、1.0MPaG以上(又は1.0MPaG超過)、1.5MPaG以上(又は1.5MPaG超過)等と設定することができる。
実施形態2では、原料ガスはR-32のみを反応器にそのまま供給してもよく、又は窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して供給してもよい。原料ガス中のR-32の含有量は限定的ではないが、10体積%以上100体積%以下の範囲で調整することが好ましく、90体積%以上100体積%以下の範囲がより好ましい。かかる範囲に希釈することにより、R-32が完全に脱フッ化水素されてカーボンが生じる副反応(コーキング)を抑制する効果が得られ易い。
原料ガスを上記反応に供する圧力(反応圧力)は、0MPaG以上2.0MPaG未満(又は1.9MPa以下)の範囲で且つ前記事前加圧の圧力よりも低い圧力条件下であればよいが、その中でも1.2MPaG以上2.0MPaG未満(又は1.9MPa以下)が好ましく、1.5MPaG以上2.0MPaG未満(又は1.9MPa以下)が更に好ましい。圧力をかかる範囲内に設定することにより、R-32の転化率、並びにR-143及び/又はR-1132(E,Z)の選択率の双方を向上させることができる。
実施形態2では、原料ガスの反応圧力を事前加圧の圧力よりも低い圧力条件に設定することで原料ガスを反応器に供給し易くするとともに、反応器に供給された原料ガスに局所的にR-32の濃度が濃い部分を生じさせることでR-32の分解により生じたCHFカルベン(CHF・)とR-32とが反応し易くなりR-143が得られ易くなる。
原料ガスを上記反応に供する温度(反応温度)は、600℃以上1000℃以下であればよいが、その中でも700℃以上900℃以下がより好ましく、800℃以上850℃以下が更に好ましい。反応温度をかかる範囲内に設定することにより、R-32の転化率、並びにR-143及び/又はR-1132(E,Z)の選択率の双方を向上させることができる。
原料ガスを上記反応に供する際の加熱方法としては、公知の方法を使用できる。反応器(反応容器)を電気炉内で加熱する方法、電気ヒータ又は熱媒体が流通するジャケットで反応器を加熱する方法、反応器をマイクロウェーブにより加熱する方法、希釈ガスとしての上記不活性ガスを加熱した上でR-32と混合する方法等、並びにこれらを任意の組み合わせる方法が挙げられる。
原料ガスを上記反応に供する時間(滞留時間)は、反応温度、反応圧力等によって一概ではないが、0.01秒以上10秒以下が好ましく、0.10秒以上1秒以下がより好ましい。滞留時間を上記範囲の下限値以上にするとR-32の熱分解が促進されてR-143及び/又はR-1132(E,Z)が効率よく得られる。また、上記範囲の上限値以下にすることで副反応が抑制され且つR-32の熱分解が促進されて生産性が良好となる。
原料ガスを上記反応に供する反応器の形態は特に限定されるものではなく、上記反応温度及び反応圧力に耐え得る公知の反応器を広く使用できる。例えば、触媒を充填した管型の流通型反応器を用いることができる。触媒としては、例えば、Al、CoOなどの金属酸化物触媒;Fe、Zn、Coなどの金属触媒;Pd/C、Pd/TiOなどの酸化物又はカーボン担体に金属粒子を担持した触媒が挙げられる。また、触媒の不存在下に反応を行う場合には、空塔の断熱反応器、原料ガスの混合状態を向上させるための多孔質又は非多孔質の金属又は媒体を充填した断熱反応器等を用いてもよい。それ以外にも、熱媒体を用いて除熱及び/又は反応器内の温度分布を均一化した多管型反応器等を用いることもできる。
空塔の反応器を使用する場合、内径の小さい反応器を用いて伝熱効率を良くする方法では、例えば、原料ガスの流量と、反応器の内径の関係は、線速度が大きくかつ伝熱面積が大きくなるようにすることが好ましい。
反応器としては、具体的には、ハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)、モネル(MONEL)、インコロイ(INCOLLOY)、ステンレス系材質(SUS316等)等をはじめとする腐食作用に抵抗性がある材料によって構成されるものを用いることが好ましい。なお、上記反応器の中でもハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)等の鉄含有量が10質量%以下の金属製反応容器を用いる場合には、反応器内壁へのコーキングの発生を抑制することもできる。
実施形態2により得られたR-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスは、適宜精製工程に供することによりR-143及び/又はR-1132(E,Z)の純度を高めて取り出すことができる。精製方法については蒸留などの公知の精製方法が利用できる。なお、実施形態2では、反応条件にもよるが、好適な実施態様ではR-143の選択率は20モル%以上(特に30~60モル%)であり、R-1132(E)の選択率は2モル%以上(特に2~7モル%)であり、R-1132(Z)の選択率は3モル%以上(特に3~11モル%)であり、これらの合計の選択率は25モル%以上(特に30~70モル%)であることが好ましい。
実施形態2の反応ガスがR-143を含む場合において、反応ガスに含まれるR-143を新たな原料ガスとし、R-143を脱フッ化水素することによりR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得ることができる。ここで、R-1132(E,Z)は、R-32を含む原料ガスを熱分解を含む反応に供することにより直接に合成することもできるが(R-32を脱フッ化水素することにより得られるCHFカルベン(CHF・)どうしの反応によるR-1132(E,Z)の合成)、実施形態2を経て一旦R-143を含む反応ガスを得、R-143を新たな原料ガスとし、R-143を脱フッ化水素することによりR-1132(E,Z)を得る方が副生物が少なくという特徴がある。つまり、実施形態2の反応ガスに含まれるR-143は、R-1132(E,Z)を高い選択率で得るための新たな原料ガスとして有用である。
(実施形態3)
実施形態3は、R-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスの製造方法であって、
ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスと600℃以上1000℃以下の温度の熱媒体とを反応器に供給し、前記原料ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
ことを特徴とする。
実施形態3では、R-32を含む原料ガスと600℃以上1000℃以下の温度の熱媒体とを反応器に供給し、前記原料ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応(以下、単に「反応」ともいう。)に供することにより、目的化合物であるR-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスを合成できる。ここで、実施形態3では、少なくとも熱媒体は反応器に供給する前に600℃以上1000℃以下の温度に事前加熱されているが、原料ガスは反応器に供給する前に必ずしも事前加熱されている必要はない。しかしながら、原料ガスは反応器に供給する前に熱媒体とともに又は熱媒体とは別に600℃以上1000℃以下の温度に事前加熱されていてもよく、原料ガスと熱媒体はそれぞれ反応器に供給する前のいずれかの場所(好ましくは反応器入口)で合流して反応器に供給される。
なお、熱媒体を所定温度に事前加熱する操作は反応器外で行い、任意で原料ガスを事前加熱する場合の操作は反応器外で行い、次いで原料ガスを所定温度で反応に供する操作は反応器内で行う。
実施形態3では、原料ガスはR-32のみを反応器にそのまま供給してもよく、又は窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して供給してもよい。原料ガス中のR-32の含有量は限定的ではないが、10体積%以上100体積%以下の範囲で調整することが好ましく、90体積%以上100体積%以下の範囲がより好ましい。かかる範囲に希釈することにより、R-32が完全に脱フッ化水素されてカーボンが生じる副反応(コーキング)を抑制する効果が得られ易い。
熱媒体としては、常温で液体であって熱輸送能力及び熱保持能力が高い物質であり、熱媒体を用いる場合には反応器内で所定の反応温度を効率的に維持し易くなる。熱媒体としては原料ガスと直接反応しないものであればよく、例えば、水、無水フッ化水素等が挙げられる。これらの熱媒体は、反応器外において加圧下又は非加圧下で600℃以上1000℃以下の温度に加熱した後に反応器に供給すればよい。熱媒体の使用量は限定的ではないが、反応時の原料ガスと熱媒体との合計量(モル濃度)を100モル%とした場合に熱媒体の含有量は10~90モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましい。
反応器中で原料ガスを上記反応に供する温度(反応温度)は、600℃以上1000℃以下であればよいが、その中でも700℃以上900℃以下がより好ましく、800℃以上850℃以下が更に好ましい。反応温度をかかる範囲内に設定することにより、R-32の転化率、並びにR-143及び/又はR-1132(E,Z)の選択率の双方を向上させることができる。
原料ガスを上記反応に供する圧力(反応圧力)は、0.1MPaG以上2.0MPaG以下が好ましい。その中でも1.2MPaG以上2.0MPaG以下がより好ましく、1.5MPaG以上2.0MPaG以下が更に好ましい。圧力をかかる範囲内に設定することにより、R-32の転化率、並びにR-143及び/又はR-1132(E,Z)の選択率の双方を向上させることができる。
なお、原料ガス及び/又は熱媒体(これらの混合ガスである場合も含む)は、反応器に供給する前に上記反応圧力を超える圧力に事前加圧されていることが好ましい。事前加圧の圧力条件は、0.1MPaGを超える圧力範囲(例えば、0.1MPaG超過2.1MPaG以下)から適宜選択することができる。事前加圧は公知のコンプレッサー等を用いて行うことができる。なお、事前加圧の圧力条件の下限値は0.2MPaG以上、0.3MPaG以上等と設定することができる。
原料ガスを上記反応に供する時間(滞留時間)は、反応温度、反応圧力等によって一概ではないが、0.01秒以上10秒以下が好ましく、0.10秒以上1秒以下がより好ましい。滞留時間を上記範囲の下限値以上にするとR-32の熱分解が促進されてR-143が効率よく得られる。また、上記範囲の上限値以下にすることで副反応が抑制され且つR-32の熱分解が促進されて生産性が良好となる。
原料ガスを上記反応に供する際の加熱方法としては、公知の方法を使用できる。反応器(反応容器)を電気炉内で加熱する方法、電気ヒータ又は熱媒体が流通するジャケットで反応器を加熱する方法、反応器をマイクロウェーブにより加熱する方法、希釈ガスとしての上記不活性ガスを加熱した上でR-32と混合する方法等、並びにこれらを任意の組み合わせる方法が挙げられる。
原料ガスを上記反応に供する時間(滞留時間)は、反応温度、反応圧力等によって一概ではないが、0.01秒以上10秒以下が好ましく、0.10秒以上1秒以下がより好ましい。滞留時間を上記範囲の下限値以上にするとR-32の熱分解が促進されてR-143及び/又はR-1132(E,Z)が効率よく得られる。また、上記範囲の上限値以下にすることで副反応が抑制され且つR-32の熱分解が促進されて生産性が良好となる。
原料ガスを上記反応に供する反応器の形態は特に限定されるものではなく、上記反応温度及び反応圧力に耐え得る公知の反応器を広く使用できる。例えば、触媒を充填した管型の流通型反応器を用いることができる。触媒としては、例えば、Al、CoOなどの金属酸化物触媒;Fe、Zn、Coなどの金属触媒;Pd/C、Pd/TiOなどの酸化物又はカーボン担体に金属粒子を担持した触媒が挙げられる。また、触媒の不存在下に反応を行う場合には、空塔の断熱反応器、原料ガスの混合状態を向上させるための多孔質又は非多孔質の金属又は媒体を充填した断熱反応器等を用いてもよい。それ以外にも、熱媒体を用いて除熱及び/又は反応器内の温度分布を均一化した多管型反応器等を用いることもできる。
空塔の反応器を使用する場合、内径の小さい反応器を用いて伝熱効率を良くする方法では、例えば、原料ガスの流量と、反応器の内径の関係は、線速度が大きくかつ伝熱面積が大きくなるようにすることが好ましい。
反応器としては、具体的には、ハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)、モネル(MONEL)、インコロイ(INCOLLOY)、ステンレス系材質(SUS316等)等をはじめとする腐食作用に抵抗性がある材料によって構成されるものを用いることが好ましい。なお、上記反応器の中でもハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)等の鉄含有量が10質量%以下の金属製反応容器を用いる場合には、反応器内壁へのコーキングの発生を抑制することもできる。
実施形態3により得られたR-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスは、適宜精製工程に供することによりR-143及び/又はR-1132(E,Z)の純度を高めて取り出すことができる。精製方法については蒸留などの公知の精製方法が利用できる。なお、実施形態3では、反応条件にもよるが、好適な実施態様ではR-143の選択率は20モル%以上(特に30~60モル%)であり、R-1132(E)の選択率は2モル%以上(特に2~7モル%)であり、R-1132(Z)の選択率は3モル%以上(特に3~11モル%)であり、これらの合計の選択率は25モル%以上(特に30~70モル%)であることが好ましい。
実施形態3の反応ガスがR-143を含む場合において、反応ガスに含まれるR-143を新たな原料ガスとし、R-143を脱フッ化水素することによりR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得ることができる。ここで、R-1132(E,Z)は、R-32を含む原料ガスを熱分解を含む反応に供することにより直接に合成することもできるが(R-32を脱フッ化水素することにより得られるCHFカルベン(CHF・)どうしの反応によるR-1132(E,Z)の合成)、実施形態3を経て一旦R-143を含む反応ガスを得、R-143を新たな原料ガスとし、R-143を脱フッ化水素することによりR-1132(E,Z)を得る方が副生物が少なくという特徴がある。つまり、実施形態3の反応ガスに含まれるR-143は、R-1132(E,Z)を高い選択率で得るための新たな原料ガスとして有用である。
(実施形態4)
実施形態4は、R-143及び/又はR-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
R-32を含む原料ガスを反応器に供給する前に、前記R-32の体積の10%以下のハイドロフルオロカーボンガス及び/又はハイドロクロロフルオロカーボンガスと合流させて混合ガスとし、前記混合ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
ことを特徴とする。
実施形態4では、R-32を含む原料ガスを反応器に供給する前に、前記R-32の体積の10%以下のハイドロフルオロカーボンガス及び/又はハイドロクロロフルオロカーボンガス(「HFCガス等」ともいう)と合流させて混合ガスとし、前記混合ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応(以下、単に「反応」ともいう。)に供することにより、目的化合物であるR-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスを合成できる。なお、原料ガスとHFCガス等を合流する操作は好ましくは反応器入口で行い、次いで混合ガスを所定温度で反応に供する操作は反応器内で行う。また、原料ガスは必要に応じてHFCガス等とともに又は別に事前加熱することもできる。
実施形態4では、原料ガスとしてはR-32のみを反応器にそのまま供給してもよく、又は窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して供給してもよい。原料ガス中のR-32の含有量は限定的ではないが、10体積%以上100体積%以下の範囲で調整することが好ましく、90体積%以上100体積%以下の範囲がより好ましい。かかる範囲に希釈することにより、R-32が完全に脱フッ化水素されてカーボンが生じる副反応(コーキング)を抑制する効果が得られ易い。
原料ガスは、好ましくは反応器入口において、R-32の体積の10%以下のHFCガス等と合流して混合ガスとなり、次いで混合ガスが熱分解を含む反応に供される。ここで、HFCガス等としては、ハイドロフルオロカーボンガス及び/又はハイドロクロロフルオロカーボンガスであればよいが、具体的には、R-134、R-134a、R-31、R-125、R-143a、R-143、R-23、R-41、R1123等の単独又は2種以上の混合ガスが挙げられる。これらのHFCガス等は原料ガスと新規に混合してもよく、実施形態4を繰り返し実施する際に副生物として生じたものをリサイクルして混合してもよい。これらのHFCガス等を混合することにより、R-32の熱分解速度を向上させ、R-32単独と比較して反応時に同温度且つ同滞留時間において高い転化率が得られ易い。HFCガス等の混合割合は前記R-32の体積の10%以下であればよいが、この中でも5体積%以下の範囲が好ましい。HFCガス等の混合割合の下限値は限定的ではないが、前記R-32の体積の0.01%以上とすることが好ましい。
原料ガスとHFCガス等とを合流し、反応器中で混合ガスを上記反応に供する温度(反応温度)は、600℃以上1000℃以下であればよいが、その中でも700℃以上900℃以下がより好ましく、800℃以上850℃以下が更に好ましい。反応温度をかかる範囲内に設定することにより、混合ガスに含まれるR-32及びHFCガス等の転化率、並びにR-143及び/又はR-1132(E,Z)の選択率の双方を向上させることができる。
混合ガスを上記反応に供する圧力(反応圧力)は、0.1MPaG以上2.0MPaG以下が好ましい。その中でも1.2MPaG以上2.0MPaG以下がより好ましく、1.5MPaG以上2.0MPaG以下が更に好ましい。圧力をかかる範囲内に設定することにより、混合ガスに含まれるR-32及びHFCガス等の転化率、並びにR-143及び/又はR-1132(E,Z)の選択率の双方を向上させることができる。
なお、原料ガス及び/又はHFCガス等(これらの混合ガスである場合も含む)は、反応器に供給する前に上記反応圧力を超える圧力に事前加圧されていることが好ましい。事前加圧の圧力条件は、0.1MPaGを超える圧力範囲(例えば、0.1MPaG超過2.1MPaG以下)から適宜選択することができる。事前加圧は公知のコンプレッサー等を用いて行うことができる。なお、事前加圧の圧力条件の下限値は0.2MPaG以上、0.3MPaG以上等と設定することができる。
混合ガスを上記反応に供する際の加熱方法としては、公知の方法を使用できる。反応器(反応容器)を電気炉内で加熱する方法、電気ヒータ又は熱媒体が流通するジャケットで反応器を加熱する方法、反応器をマイクロウェーブにより加熱する方法、希釈ガスとしての上記不活性ガスを加熱した上でR-32と混合する方法等、並びにこれらを任意の組み合わせる方法が挙げられる。
混合ガスを上記反応に供する時間(滞留時間)は、反応温度、反応圧力等によって一概ではないが、0.01秒以上10秒以下が好ましく、0.10秒以上1秒以下がより好ましい。滞留時間を上記範囲の下限値以上にするとR-32の熱分解が促進されてR-143及び/又はR-1132(E,Z)が効率よく得られる。また、上記範囲の上限値以下にすることで副反応が抑制され且つR-32の熱分解が促進されて生産性が良好となる。
混合ガスを上記反応に供する反応器の形態は特に限定されるものではなく、上記反応温度及び反応圧力に耐え得る公知の反応器を広く使用できる。例えば、触媒を充填した管型の流通型反応器を用いることができる。触媒としては、例えば、Al、CoOなどの金属酸化物触媒;Fe、Zn、Coなどの金属触媒;Pd/C、Pd/TiOなどの酸化物又はカーボン担体に金属粒子を担持した触媒が挙げられる。また、触媒の不存在下に反応を行う場合には、空塔の断熱反応器、混合ガスの混合状態を向上させるための多孔質又は非多孔質の金属又は媒体を充填した断熱反応器等を用いてもよい。それ以外にも、熱媒体を用いて除熱及び/又は反応器内の温度分布を均一化した多管型反応器等を用いることもできる。
空塔の反応器を使用する場合、内径の小さい反応器を用いて伝熱効率を良くする方法では、例えば、原料ガスの流量と、反応器の内径の関係は、線速度が大きくかつ伝熱面積が大きくなるようにすることが好ましい。
反応器としては、具体的には、ハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)、モネル(MONEL)、インコロイ(INCOLLOY)、ステンレス系材質(SUS316等)等をはじめとする腐食作用に抵抗性がある材料によって構成されるものを用いることが好ましい。なお、上記反応器の中でもハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)等の鉄含有量が10質量%以下の金属製反応容器を用いる場合には、反応器内壁へのコーキングの発生を抑制することもできる。
実施形態4により得られたR-143及び/又はR-1132(E,Z)を含む反応ガスは、適宜精製工程に供することによりR-143及び/又はR-1132(E,Z)の純度を高めて取り出すことができる。精製方法については蒸留などの公知の精製方法が利用できる。なお、実施形態4では、反応条件にもよるが、好適な実施態様ではR-143の選択率は20モル%以上(特に30~60モル%)であり、R-1132(E)の選択率は2モル%以上(特に2~7モル%)であり、R-1132(Z)の選択率は3モル%以上(特に3~11モル%)であり、これらの合計の選択率は25モル%以上(特に30~70モル%)であることが好ましい。
実施形態4の反応ガスがR-143を含む場合において、反応ガスに含まれるR-143を新たな原料ガスとし、R-143を脱フッ化水素することによりR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得ることができる。ここで、R-1132(E,Z)は、R-32を含む原料ガスを熱分解を含む反応に供することにより直接に合成することもできるが(R-32を脱フッ化水素することにより得られるCHFカルベン(CHF・)どうしの反応によるR-1132(E,Z)の合成)、実施形態4を経て一旦R-143を含む反応ガスを得、R-143を新たな原料ガスとし、R-143を脱フッ化水素することによりR-1132(E,Z)を得る方が副生物が少なくという特徴がある。つまり、実施形態4の反応ガスに含まれるR-143は、R-1132(E,Z)を高い選択率で得るための新たな原料ガスとして有用である。
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示はこれらの例に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
以下、実験例に基づき、本開示の製造方法の実施形態1~4をより具体的に説明する。但し、本開示の製造方法は実験例の範囲に限定されるものではない。
以下の実験例1~4において、各成分の組成はガスクロマトグラフィー(MS検出器)を用いて分析した。
実験例1(実施形態2:加圧条件による反応成績への影響)
表1に示す反応条件にて、R-32のみを含む原料ガスを熱分解を含む反応に供することによりR-143及びR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得た。
Figure 0007112012000001
表1の結果から明らかな通り、実施形態2の製造方法により、従来法に比して、入手が容易な原料を用いて目的物(R-143、R-1132(E)及びR-1132(Z))を高い選択率(これらの合算の選択率)で得ることができることが分かる。
実験例2(実施形態3:熱媒体の有無の反応成績への影響)
表2に示す反応条件にて、R-32のみを含む原料ガスを熱媒体を用いて熱分解を含む反応に供することによりR-143及びR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得た。
Figure 0007112012000002
表2の結果から明らかな通り、実施形態3の製造方法により、従来法に比して、入手が容易な原料を用いて目的物(R-143、R-1132(E)及びR-1132(Z))を高い選択率(これらの合算の選択率)で得ることができることが分かる。
実験例3(実施形態4:添加ガスの有無の反応成績への影響)
表3に示す反応条件にて、R-32のみを含む原料ガスを添加ガスと混合し、熱分解を含む反応に供することによりR-143及びR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得た。
Figure 0007112012000003
表3の結果から明らかな通り、実施形態4の製造方法により、従来法に比して、入手が容易な原料を用いて目的物(R-143、R-1132(E)及びR-1132(Z))を高い選択率(これらの合算の選択率)で得ることができることが分かる。
実験例4(原料ガスの違いによる反応成績への影響)
表4に示す反応条件にて、R-32、R143のそれぞれを原料ガスとしてR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得た。
Figure 0007112012000004
表4の結果から明らかな通り、R-32を原料ガスとしてR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得る場合に比して、R-143を原料ガスとしてR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得る場合の方が目的物の選択率が大きい(副生物が少ない)ことが分かる。
実験例5(反応圧力の違いによる反応成績への影響)
R-32のみを含む原料ガスを熱分解を含む反応に供することによりR-143及びR-1132(E,Z)を含む反応ガスを得た。なお、反応条件として、R-32転化率が5モル%となるように滞留時間を調整し、反応温度は800℃で固定とした。反応圧力の違いによる反応成績への影響を表5に示す。
Figure 0007112012000005
表5の結果から明らかな通り、目的物(R-143、R-1132(E)及びR-1132(Z))を高い選択率(これらの合算の選択率)で得るためには、反応圧力は0.5MPaG以上2.0MPa以下が好ましく、1.0MPaG以上2.0MPa以下がより好ましく、1.5MPaG以上2.0MPa以下が更に好ましいことが分かる。

Claims (10)

  1. 1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
    ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを、0.9MPaG以上2.0MPaG以下の圧力条件下、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
    製造方法。
  2. 1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
    0.1MPaG以上2.0MPaG以下の圧力に事前加圧されたジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを、前記事前加圧の圧力よりも低い圧力条件下の反応器に供給し、600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有し、前記反応ガス中の前記R-143の選択率が30~60モル%である、
    製造方法。
  3. 1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
    ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスと600℃以上1000℃以下の温度の熱媒体とを反応器に供給し、前記原料ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有し、前記熱媒体は無水フッ化水素を含有する、
    製造方法。
  4. 1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)及び/又は(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))を含む反応ガスの製造方法であって、
    ジフルオロメタン(R-32)を含む原料ガスを反応器に供給する前に、前記ジフルオロメタン(R-32)の体積の0.01%以上10%以下のR-31と合流させて混合ガスとし、前記混合ガスを600℃以上1000℃以下の温度で熱分解を含む反応に供することにより、前記反応ガスを得る工程を有する、
    製造方法。
  5. 前記反応は、0MPaG以上2.0MPaGの範囲の圧力で行う、請求項2~4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記反応は、鉄含有量が10質量%以下の金属製反応容器を用いて行う、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記原料ガスは、前記ジフルオロメタン(R-32)の含有量が10体積%以上100体積%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記反応は、700℃以上900℃以下の温度で行う、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記原料ガスを前記反応に供する時間(滞留時間)が0.01秒以上10秒以下の範囲である、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載の製造方法において、前記反応ガスに1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)が含まれおり、前記反応ガスに含まれる1,1,2-トリフルオロエタン(R-143)を脱フッ化水素反応に供する工程を有する、(E,Z)-1,2-ジフルオロエチレン(R-1132(E,Z))の製造方法。
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