以下、図面を参照し、本発明の各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による混合燃料供給装置10の構成を説明する図である。本実施形態の混合燃料供給装置10は、第1燃料成分としてのエタノールと、第2燃料成分としての水が混合されてなる液体の混合燃料としてのエタノール混合水を燃料貯留部としての車両の燃料タンク100に供給する装置である。特に、本実施形態の混合燃料供給装置10は、タンク搭載装置としての車両等に搭載された燃料タンク100にエタノール混合水を供給するための定置型の燃料ディスペンサ内に構成される。
混合燃料供給装置10は、第1燃料成分導入路としてのエタノール導入路12と、第2燃料成分導入路としての水導入路14と、第1導入量調節装置としての第1流量調整弁16と、第2導入量調節装置としての第2流量調整弁18と、燃料混合部としてのミキサ20と、燃料送出路21と、を有している。
エタノール導入路12は、一端が混合燃料供給装置10の外部の所定のエタノール供給源に接続されている。すなわち、エタノール導入路12は、外部のエタノール供給源から混合燃料供給装置10内にエタノールを導入するための通路である。また、エタノール導入路12の他端はミキサ20に接続されている。これにより、エタノール導入路12は、外部のエタノール供給源から導入されたエタノールをミキサ20に供給可能に構成されている。
エタノール導入路12には、上流(一端側)から順に、上述の第1流量調整弁16、第1流量センサ22、及び第1燃料成分遮断弁23が設けられている。
第1流量調整弁16は、その開度に応じてエタノール導入路12を流れるエタノールの流量、すなわちミキサ20へ供給されるエタノールの流量を任意に調節する弁である。そして、第1流量センサ22は、このエタノール流量QEを検出するセンサである。また、第1燃料成分遮断弁23は、ミキサ20、燃料タンク100、又は燃料タンク100を搭載する装置の要求に応じて、ミキサ20へのエタノールの供給を遮断する弁である。例えば、第1燃料成分遮断弁23は、ノーマルオープンタイプの弁で構成され、緊急時等に閉塞(遮断)される。
水導入路14は、一端が混合燃料供給装置10の外部の所定の水供給源に接続されている。すなわち、水導入路14は、外部の水供給源から混合燃料供給装置10内に水を導入する通路である。また、水導入路14の他端はミキサ20に接続されている。これにより、水導入路14は、外部の水供給源から導入された水をミキサ20に供給可能に構成されている。
水導入路14には、上流(一端側)から順に、上述の第2流量調整弁18、第2流量センサ24、及び第2燃料成分遮断弁25が設けられている。
第2流量調整弁18は、その開度に応じて水導入路14を流れる水の流量、すなわちミキサ20へ供給される水の流量を任意に調節する弁である。そして、第2流量センサ24は、この水流量QHを検出するセンサである。また、第2燃料成分遮断弁25は、ミキサ20、燃料タンク100、又は燃料タンク100を搭載する装置の要求に応じて、ミキサ20への水の供給を遮断する弁である。例えば、第2燃料成分遮断弁25は、ノーマルオープンタイプの弁で構成され、緊急時等に閉塞(遮断)される。
ミキサ20は、エタノール導入路12を介して供給されるエタノールと水導入路14を介して供給される水を混合してエタノール混合水を生成する。ミキサ20は、例えば、静的ミキサにより構成される。さらに、ミキサ20の下流には燃料送出路21が接続されている。
さらに、ミキサ20には、生成されたエタノール混合水における濃度、特にエタノール混合水中のエタノールの濃度を検出する濃度検出センサとしての生成燃料濃度センサ50が設けられている。なお、生成燃料濃度センサ50としては、光屈折率、水晶振動子、超音波、又はIRスペクトル等を利用した種々のタイプのセンサを用いることができる。
燃料送出路21は、ミキサ20による混合で生成されたエタノール混合水を、車両等に搭載された燃料貯留部としての燃料タンク100に供給する通路である。なお、本実施形態の燃料送出路21には、ミキサ20から燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を任意に遮断可能な供給遮断弁26が設けられている。
さらに、本実施形態の混合燃料供給装置10は、制御装置としてのコントローラ30を有している。
コントローラ30は、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)から構成されており、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の開度調節を含む混合燃料供給装置10の各種制御を実行可能となるようにプログラムされている。
特に、本実施形態のコントローラ30は、少なくとも第1流量センサ22で検出されるエタノール流量検出値QE_d、第2流量センサ24で検出される水流量検出値QH_d、及び生成燃料濃度センサ50で検出される生成エタノール濃度検出値CE_dに基づいて、第1流量調整弁16の開度及び第2流量調整弁18の開度を制御するようにプログラムされている。コントローラ30の制御についてより詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係るコントローラ30の制御を説明するブロック図である。図示のように、コントローラ30は、該コントローラ30が有する各ハードウェア及びプログラムにより実現される各機能ブロックを備えている。
具体的に、コントローラ30は、実流量比演算ブロックB110と、目標流量比演算ブロックB120と、流量比差演算ブロックB130と、目標流量演算ブロックB140と、流量弁開度調節ブロックB150と、を有している。
実流量比演算ブロックB110には、第1流量センサ22からのエタノール流量検出値QE_d、及び第2流量センサ24からの水流量検出値QH_dが入力される。そして、実流量比演算ブロックB110は、エタノール流量検出値QE_dから水流量検出値QH_dを除算してエタノール流量QEと水流量QHとの間の実流量比QE/QH_rを演算する。さらに、実流量比演算ブロックB110は、演算した実流量比QE/QH_rを流量比差演算ブロックB130に出力する。
目標流量比演算ブロックB120には、生成燃料濃度センサ50からの生成エタノール濃度検出値CE_d、及びミキサ20で生成されるエタノール混合水におけるエタノール濃度(生成エタノール濃度CE)の目標値としての目標生成エタノール濃度CE_tが入力される。
ここで、目標生成エタノール濃度CE_tは、エタノール混合水の供給先である燃料タンク100の要求などに基づいて任意に設定される。例えば、車載の燃料タンク100の場合、エタノール混合水を燃料として作動するシステム(固体酸化物型燃料電池システム等)において、当該システムの起動のために確保すべき熱量を得る観点から定まる下限濃度又は当該下限濃度に所定のマージンを持たせた濃度範囲に含まれる任意の濃度に設定することができる。例えば、目標生成エタノール濃度CE_tは、エタノール混合水中の水成分の体積に対するエタノール成分の体積の比として定められる体積濃度で40%程度又はその周辺の値に設定することができる。
そして、目標流量比演算ブロックB120は、生成エタノール濃度検出値CE_dと目標生成エタノール濃度CE_tの偏差をゼロに近づけるように、エタノール流量QEと水流量QHとの間の目標流量比QE/QH_tを演算する。そして、目標流量比演算ブロックB120は、演算した目標流量比QE/QH_tを流量比差演算ブロックB130に出力する。
流量比差演算ブロックB130には、実流量比演算ブロックB110からの実流量比QE/QH_r、及び目標流量比演算ブロックB120からの目標流量比QE/QH_tが入力される。そして、流量比差演算ブロックB130は、実流量比QE/QH_rから目標流量比QE/QH_tを演算して得られる流量比差ΔQE/QH_Rを目標流量演算ブロックB140に出力する。
目標流量演算ブロックB140には、流量比差演算ブロックB130から流量比差ΔQE/QH_Rが入力される。そして、目標流量演算ブロックB140は、流量比差ΔQE/QH_Rに基づいて目標エタノール流量QE_t及び目標水流量QH_tをそれぞれ演算する。
より詳細には、目標流量演算ブロックB140は、流量比差ΔQE/QH_Rをゼロに近づけるように、エタノール流量QE及び水流量QHの少なくとも一方を適宜増減させる観点から目標エタノール流量QE_t及び目標水流量QH_tを定める。
特に、流量比差ΔQE/QH_R>0の場合には、エタノール流量QEを減少させるか、又は水流量QHを増加させるように目標エタノール流量QE_t及び目標水流量QH_tを定める。一方、流量比差ΔQE/QH_R<0の場合には、エタノール流量QEを増加させるか、又は水流量QHを減少させるように目標エタノール流量QE_t及び目標水流量QH_tを定める。
流量弁開度調節ブロックB150には、目標流量演算ブロックB140から目標エタノール流量QE_t及び目標水流量QH_tが入力される。そして、流量弁開度調節ブロックB150は、目標エタノール流量QE_t及び目標水流量QH_tに所定のゲインを乗じて、第1流量調整弁16の開度目標値である第1開度目標値O1_t、及び第2流量調整弁18の開度目標値である第2開度目標値O2_tを演算する。さらに、流量弁開度調節ブロックB150は、第1流量調整弁16の開度及び第2流量調整弁18の開度が、それぞれ、第1開度目標値O1_t及び第2開度目標値O2_tに近づくように第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18を制御する。
次に、本実施形態に係る混合燃料供給装置10の背景技術において生じていた課題について、一例となる具体的なシーン、特にエタノール混合水を車両に搭載された燃料タンク100に供給する定置型の燃料ディスペンサで生じていた問題を例に挙げつつ説明する。
燃料ディスペンサにおいては、車両の燃料として使用するために好適な所定の要求濃度に調節されたエタノール混合水が所定の定置貯蔵タンクに貯留される。そして、定置貯蔵タンクに接続されている燃料充填ノズルによって、車両の燃料供給ポートから燃料タンク100にエタノール混合水を供給する。
このような燃料ディスペンサでは、既に車両に使用する観点から定まる要求濃度に調節された状態のエタノール混合水が、車両に供給されることなく比較的長期間に亘って定置貯蔵タンク内に保存される場合が想定される。
このようにエタノール混合水を定置貯蔵タンク内で比較的長期間保存すると、エタノール混合水の燃料成分であるエタノールと水の揮発性の違いに起因して、エタノール混合水中のエタノール濃度が変化する。より詳細には、水に比べて揮発性の高いエタノールがエタノール混合水中からより気化しやすいため、気化したエタノールが定置貯蔵タンクの排気口を介して外部空気と交換されることがある。これにより、定置貯蔵タンク内に侵入する外部空気が、エタノール混合水中から気化したエタノールに代わり、当該エタノール混合水に混入してエタノール濃度が低下する現象が生じる。
特に、比較的温度が高い日中においては、定置貯蔵タンク内の蒸気圧が高くなるため、液体のエタノール混合水から当該定置貯蔵タンク内の気相中にエタノールが蒸発し易い傾向にある。このエタノールの蒸発によって定置貯蔵タンク内の圧力が上昇しやすくなるため、これを抑制すべく定置貯蔵タンクから内部の気体をパージすべく、定置貯蔵タンクに設けられるパージ通路を開放するパージ弁の開弁が行われる。
これにより、定置貯蔵タンク内の気相状態のエタノールが外部に放出されることとなる。一方で、夜間等の比較的気温が低くなると定置貯蔵タンク内の圧力が低下するため、外部に放出されたエタノールに代わって空気がパージ通路を介して定置貯蔵タンク内に侵入することがある。そして、定置貯蔵タンク内に侵入した空気がエタノール混合水に混ざり、当該エタノール混合水のエタノール濃度の低下が助長されることとなる。
このような定置貯蔵タンク内のエタノール混合水中のエタノール濃度の低下によって、車両に要求される要求濃度を満たさない状態となることが懸念される。そして、この要求濃度を満たさないエタノール混合水が、車両の燃料タンク100に供給されて当該車両の燃料として使用されると、本来想定される車両の走行性能に影響を及ぼす懸念がある。したがって、このようにエタノール濃度の低下したエタノール混合水は廃棄されることとなり、無駄となる。
特に、エタノール混合水は、いわゆる固体酸化物型燃料電池(SOFC: solid oxide fuel cell)システムを搭載した車両において、このSOFCシステムにおける発電のための燃料として使用されることが想定される。そして、本発明は、このSOFCシステムにおいて濃度が変化したエタノール混合水を用いると、SOFCシステムの出力電力特性の低下が引き起こされることを見出している。なお、このような定置貯蔵タンク内に一定期間保存されて濃度変化したエタノール混合水は、車両の燃料タンク100に供給する場合に限らず、当該エタノール混合水を後に使用するために携行缶等の燃料貯留部に供給する場合にも同様に問題となる。
このような問題に対して、本実施形態の混合燃料供給装置10では、各燃料成分としてのエタノール及び水を適切なエタノール濃度(目標生成エタノール濃度CE_t)となるように混合された状態のエタノール混合水を燃料タンク100に供給することができるので、定置貯蔵タンク内でエタノール混合水を保存することによってエタノール濃度が低下することに起因する不利益に回避することができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、2種類の燃料成分であるエタノールと水が混合されてなる液体の混合燃料としてのエタノール混合水を所定の燃料貯留部としての燃料タンク100に供給する混合燃料供給装置10が提供される。
この混合燃料供給装置10は、エタノールと水の内の第1燃料成分としてのエタノールを導入する第1燃料成分導入路としてのエタノール導入路12と、エタノール以外の第2燃料成分である水を導入する第2燃料成分導入路としての水導入路14と、エタノール導入路12によるエタノールの導入量としてのエタノール流量QEを調節する第1導入量調節装置としての第1流量調整弁16と、水導入路14に配置されて水の導入量としての水流量QHを調整する第2導入量調節装置としての第2流量調整弁18と、エタノール導入路12及び水導入路14を介してそれぞれ導入されたエタノールと水を混合してエタノール混合水を生成するミキサ20と、生成されたエタノール混合水を燃料タンク100に送り出す燃料送出路21と、を有する。
さらに、混合燃料供給装置10は、ミキサ20で生成されるエタノール混合水の濃度である生成エタノール濃度CEの目標値である目標生成燃料濃度としての目標生成エタノール濃度CE_tに基づいて第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18を制御する制御装置としてのコントローラ30を有する。
これによれば、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18により、目標生成エタノール濃度CE_tに基づいて、各燃料成分としてのエタノール及び水のミキサ20への供給量を個別に適宜調節して、当該供給量に応じて決まる生成エタノール濃度CEを好適に調節することが可能となる。すなわち、燃料供給先の燃料タンク100へ供給すべきエタノール混合水のエタノール濃度が所望の濃度になるようにエタノール及び水を混合してエタノール混合水を生成しつつ、これを燃料タンク100に供給することができる。
これにより、混合燃料であるエタノール混合水の状態で所定の定置貯蔵タンク等において長期間貯留しておくことに起因するエタノール濃度の変化による不利益、例えばエタノール濃度が低下したエタノール混合水を廃棄することによる無駄な燃料の消費などを回避することができる。
特に、本実施形態の混合燃料供給装置10は、ミキサ20で生成されるエタノール混合水の濃度を検出する濃度検出センサとしての生成燃料濃度センサ50をさらに有する。そして、コントローラ30は、生成燃料濃度センサ50で検出される生成エタノール濃度検出値CE_dが目標生成エタノール濃度CE_tに近づくように、エタノール導入路12を流れるエタノールと水導入路14を流れる水の間の流量比QE/QH(実流量比QE/QH_r)を調節する(図2参照)。
このように、燃料タンク100へ供給されるエタノール混合水のエタノール濃度に相当する生成エタノール濃度検出値CE_dを目標生成エタノール濃度CE_tに近づけるように制御することで、燃料タンク100に供給するエタノール混合水のエタノール濃度の調節をより好適に実行することができる。
さらに、本実施形態の混合燃料供給装置10は、エタノール導入路12に設けられてエタノール流量QEを検出する第1流量センサ22と、水導入路14に設けられて水流量QHを検出する第2流量センサ24と、をさらに有する。
そして、コントローラ30は、第1燃料成分の目標流量である第1目標流量としての目標エタノール流量QE_t及び第2燃料成分の目標流量である第2目標流量としての目標水流量QH_tを設定する(流量比差演算ブロックB130及び目標流量演算ブロックB140)。さらに、コントローラ30は、第1流量センサ22で検出される第1流量検出値としてのエタノール流量検出値QE_d及び第2流量センサ24で検出される第2流量検出値としての水流量検出値QH_dが、それぞれ、目標エタノール流量QE_t及び目標水流量QH_tに近づくように、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18を制御する(流量弁開度調節ブロックB150)。
これにより、燃料タンク100に供給するエタノール混合水を生成するミキサ20への各燃料成分の量に相当するエタノール流量QE及び水流量QHをパラメータとして、生成エタノール濃度CE、すなわち燃料タンク100に供給するエタノール混合水のエタノール濃度を調節する具体的な制御態様が提供されることとなる。
さらに、本実施形態の混合燃料供給装置10では、燃料タンク100が車両(特に自動車)に搭載されるタンクとして構成される。そして、混合燃料供給装置10は、燃料タンク100にエタノール混合水を供給する定置型の燃料ディスペンサ内に構成される。
これにより、車両のユーザー等によって燃料ディスペンサを用いて燃料タンク100にエタノール混合水を供給する場面において、混合燃料供給装置10によって燃料成分であるエタノール及び水を好適なエタノール濃度となるように混合して生成しつつ、燃料タンク100に供給することができる。したがって、エタノール混合水の状態で燃料ディスペンサ内に一定以上の期間保存しておくことによるエタノール混合水の濃度変化、及びこれに起因する車両の走行性能への影響を抑制することができる。
さらに、以上説明した本実施形態によれば、2種類の燃料成分であるエタノール及び水の内の第1燃料成分としてのエタノール、及びエタノール以外の第2燃料成分としての水の導入を受けてエタノール及び水を混合して混合燃料としてのエタノール混合水を生成し、生成したエタノール混合水を所定の燃料貯留部としての燃料タンク100に供給する混合燃料供給方法が提供される。そして、この混合燃料供給方法では、エタノールの導入量及び水の導入量を、生成するエタノール混合水の濃度の目標値である目標生成燃料濃度としての目標生成エタノール濃度CE_tに基づいて調節する。
これによれば、目標生成エタノール濃度CE_tに基づいて、各燃料成分としてのエタノール及び水の導入量(ミキサ20への供給量)を個別に適宜調節して、当該導入量に応じて決まる生成エタノール濃度CEを好適に調節することが可能となる。すなわち、燃料供給先の燃料タンク100へ供給すべきエタノール混合水のエタノール濃度が所望の濃度になるようにエタノール及び水を混合してエタノール混合水を生成しつつ、これを燃料タンク100に供給することができる。
したがって、混合燃料であるエタノール混合水の状態で所定の定置貯蔵タンク等において長期間貯留しておくことに起因するエタノール濃度の変化による不利益、例えばエタノール濃度が低下したエタノール混合水を廃棄することによる無駄な燃料の消費などを回避することができる。
なお、本実施形態の混合燃料供給装置10においては、第1燃料成分遮断弁23、第2燃料成分遮断弁25、及び供給遮断弁26の開閉制御は必ずしも要求されるものではない。しかしながら、種々の理由により、ミキサ20へのエタノール若しくは水の供給、又は燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を遮断することが要求される場合には、当該要求に応じてコントローラ30がこれら弁を適宜遮断することができるように、当該コントローラ30がプログラムされていても良い。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図3は、第2実施形態の混合燃料供給装置10の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態の混合燃料供給装置10は、第1実施形態で説明した各構成に加えて、コントローラ30が貯留部情報取得部としての通信装置60を備えている。
通信装置60は、エタノール混合水の供給先である燃料タンク100を搭載した車両等のタンク搭載装置200が備える所定の通信手段との間で通信可能に構成されている。なお、通信装置60は、例えば、無線又は有線により通信が可能な既存の通信規格に準拠するように、各種ハードウェア及び各種ソフトウェア(プログラム)を備えた装置である。
そして、本実施形態では、通信装置60は、タンク搭載装置200から燃料タンク100に関する情報である燃料貯留部情報としてのタンク情報を受信する。そして、コントローラ30は、受信したタンク情報に基づいて目標生成エタノール濃度CE_tを演算し、演算された目標生成エタノール濃度CE_tに基づいて図2の制御ロジックにしたがって第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の制御(以下、単に「燃料濃度制御」とも記載する)を実行する。以下では、本実施形態のコントローラ30による燃料濃度制御についてより詳細に説明する。
図4は、本実施形態のコントローラ30による燃料濃度制御の流れを説明するフローチャートである。なお、以下で説明する各ステップで表される一連の制御ルーチンは、コントローラ30によって所定の演算周期で繰り返される。
ステップS210において、コントローラ30は、通信装置60により燃料タンク100を搭載したタンク搭載装置200からタンク情報を取得する。本実施形態のタンク情報には、全タンク容量Vta、タンク内エタノール濃度CEta、タンク内エタノール混合水量Vre、及び燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を許可されているか否かを示す供給受け入れ可否判断信号が含まれる。
ステップS220において、コントローラ30は、全タンク容量Vta、タンク内エタノール濃度CEta、タンク内エタノール混合水量Vre、及び目標タンク内エタノール濃度CEta_tに基づいて目標生成エタノール濃度CE_tを演算する。具体的に、コントローラ30は、下記の式(1)に取得したこれらの値を適用して目標生成エタノール濃度CE_tを演算する。
ここで、タンク内エタノール混合水量Vreは、制御ルーチンの実行時において燃料タンク100内の貯留されているエタノール混合水の残量に相当する。また、全タンク容量Vtaは、燃料タンク100内の全容量、すなわち燃料タンク100に貯留し得るエタノール混合水の最大量に相当する。したがって、式(1)中の(Vta-Vre)は、燃料タンク100が満杯になるまでに供給可能なエタノール混合水の量に相当する。なお、式(1)から明らかなように、左辺の分母は全タンク容量Vtaに等しい。
また、タンク内エタノール濃度CEtaは、制御ルーチンの実行時において燃料タンク100内に残存しているエタノール混合水のエタノール濃度に相当する。したがって、式(1)の左辺の分子第1項は、燃料タンク100内に残存しているエタノール混合水中の正味のエタノールの量に相当する。
そして、式(1)の左辺の分子第2項は、ミキサ20で生成されるエタノール混合水の濃度(生成エタノール濃度CE)が目標生成エタノール濃度CE_tに調節された状態で燃料タンク100が満杯になるまでに供給可能な量のエタノール混合水を供給したと仮定した場合において、燃料タンク100内における正味のエタノール量の増加分に相当する。
したがって、式(1)の左辺の分子、残存しているエタノール混合水中の正味のエタノールの量と燃料タンク100へのエタノール混合水の供給後における貯留エタノール増加量の和、すなわち本制御ルーチンにより混合燃料供給装置10から燃料タンク100にエタノール混合水の供給が行われた後の当該燃料タンク100内におけるエタノール混合水中のエタノール量に相当する。
必然的に、式(1)の左辺は、本制御ルーチンにより混合燃料供給装置10から燃料タンク100へのエタノール混合水の供給された後におけるタンク内エタノール濃度CEtaの値に相当する。
したがって、式(1)の右辺の目標タンク内エタノール濃度CEta_tに所望の値を設定することで、燃料タンク100内が満杯になったタイミングで、タンク内エタノール濃度CEtaが所望の目標タンク内エタノール濃度CEta_tをとる目標生成エタノール濃度CE_tを演算することができる。
次に、ステップS230において、コントローラ30は、上述の供給受け入れ可否判断信号に基づいて、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給が可能であるか否かを判断する。ここで、供給受け入れ可否判断信号とは、燃料タンク100を搭載したタンク搭載装置200の作動状態などに応じて、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給が許可されているか否かを示す情報を含む信号である。
例えば、タンク搭載装置200の作動状態によって、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給が実行されることが好ましくない場合、又は禁止する必要がある場合には、タンク搭載装置200は、上記供給受け入れ可否判断信号に燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を停止する指令を含ませる。
なお、本実施形態では、コントローラ30は、本制御ルーチンの実行中、すなわち混合燃料供給装置10によって燃料タンク100へのエタノール混合水の供給が行われている間に亘ってタンク情報に含まれる供給受け入れ可否判断信号を取得する。
そして、コントローラ30は、ステップS230において燃料タンク100へのエタノール混合水の供給が可能であると判断すると、ステップS240の処理を実行する。
ステップS240において、コントローラ30は、ステップS220で演算した目標生成エタノール濃度CE_tに基づいて、図2で説明した制御ロジックにしたがい、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18を制御する。
一方、コントローラ30は、上記ステップS230において燃料タンク100へのエタノール混合水への供給が可能であると判断すると、ステップS250の処理を実行する。
ステップS250において、コントローラ30は、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を停止する。より具体的に、コントローラ30は、供給遮断弁26の閉塞処理を実行して、混合燃料供給装置10から燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を遮断する。なお、当該供給遮断弁26の閉塞処理に伴い、ミキサ20へのエタノール及び水の供給を遮断すべく、コントローラ30が第1燃料成分遮断弁23及び第2燃料成分遮断弁25を併せて遮断することが好ましい。
また、上記閉塞処理は、図2で説明した制御ロジックに対する割り込み処理として実行する。すなわち、コントローラ30は、タンク搭載装置200により燃料タンク100へのエタノール混合水の供給が許可されていない場合には、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の制御にかかわらず、又はこれをキャンセルして本閉塞処理を実行する。
特に、本実施形態では。コントローラ30は、上述のステップS230において説明したように本制御ルーチンの実行中において継続的に供給受け入れ可否判断信号を受信しているので、タンク搭載装置200が停止指令信号を生成したら速やかに燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を停止することができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の混合燃料供給装置10において、コントローラ30は、燃料タンク100に関する情報であるタンク情報を取得する貯留部情報取得部としての通信装置60をさらに備える。そして、コントローラ30は、取得したタンク情報に基づいて、目標生成エタノール濃度CE_tを演算する(図4のステップS220)。
これにより、エタノール混合水の供給先である燃料タンク100に関するタンク情報からを考慮して目標生成エタノール濃度CE_tを定めることができる。すなわち、目標生成エタノール濃度CE_tを定めるにあたり、タンク情報を加味することができるので、より好適に濃度調節された状態のエタノール混合水を燃料タンク100に供給することができる。
特に、本実施形態では、貯留部情報取得部が、タンク情報を燃料タンク100から受信する貯留部情報受信装置として機能する通信装置60により構成されている。
これにより、コントローラ30は、混合燃料供給装置10によって燃料タンク100へのエタノール混合水の供給時などにおいて、通信装置60を用いて容易にタンク情報を取得することができる。
また、本実施形態では、タンク情報は、燃料タンク100の容量としての全タンク容量Vta、燃料タンク100に貯留されている貯留混合燃料としての貯留エタノール混合水の濃度であるタンク内エタノール濃度CEta、及び該貯留エタノール混合水の量としてのタンク内エタノール混合水量Vreを含む。そして、コントローラ30は、全タンク容量Vta、タンク内エタノール濃度CEta、及びタンク内エタノール混合水量Vre、タンク内エタノール濃度CEtaの目標値である目標貯留混合燃料濃度としての目標タンク内エタノール濃度CEta_tから目標生成エタノール濃度CE_tを演算する(図4のステップS220)。
これによれば、ミキサ20で生成するエタノール混合水の濃度(生成エタノール濃度CE)を、供給先の燃料タンク100に既に貯留されているエタノール混合水の量及び濃度等を考慮して好適に設定することができる。したがって、さらに適切に濃度調節されたエタノール混合水を燃料タンク100に供給することができる。
さらに、本実施形態では、上記目標タンク内エタノール濃度CEta_tとして、燃料タンク100が搭載された装置であるタンク搭載装置200が要求する要求燃料濃度を設定する。
これにより、タンク内エタノール濃度CEtaをタンク搭載装置200において要求される濃度に好適に調節しつつ、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を実行することができる。
すなわち、タンク搭載装置200の種類等に応じて燃料タンク100におけるタンク内エタノール濃度CEtaとして、法令又は規格等により要求される要求燃料濃度に目標タンク内エタノール濃度CEta_tを設定することで、燃料タンク100内のタンク内エタノール濃度CEtaをこの規格等で定まる要求燃料濃度に調節しつつ、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を実行することができる。
特に、タンク搭載装置200が車両(特に自動車)である場合などにおいては、車両走行性能や耐久性の向上の観点からタンク内エタノール濃度CEtaに対して要求される基準が高い傾向にある。これに対して、本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、このような高いタンク内エタノール濃度CEtaの基準をより確実に満たしつつ、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を実行することができる。
一方で、目標タンク内エタノール濃度CEta_tを、タンク搭載装置200に応じた要求燃料濃度以外の値に設定するようにしても良い。例えば、タンク内エタノール濃度CEtaとしてある程度の幅(レンジ)の許容されている場合、タンク搭載装置200の種類によっては車両のように要求燃料濃度の基準が高くない場合などにおいては、目標タンク内エタノール濃度CEta_tを必ずしもタンク搭載装置200の要求に基づくことなく、任意に設定できるようにしても良い。
また、本実施形態のコントローラ30は、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給後におけるタンク内エタノール濃度CEtaが目標タンク内エタノール濃度CEta_tになるように、目標生成エタノール濃度CE_tを演算する(図4のステップS220及び式(1))。
ここで、本実施形態の混合燃料供給装置10によって燃料タンク100へのエタノール混合水の供給が実行された後には、供給前に燃料タンク100内に貯留されていたエタノール混合水と、混合燃料供給装置10によって供給されるエタノール混合水が混ざることとなる。
したがって、ミキサ20で生成されるエタノール混合水におけるエタノール濃度の目標である目標生成エタノール濃度CE_tを、燃料タンク100又はタンク搭載装置200の要求などに応じたエタノール濃度に直接調節すると、混合燃料供給装置10によるエタノール混合水の供給後におけるタンク内エタノール濃度CEtaが実際に要求されるエタノール濃度(目標タンク内エタノール濃度CEta_t)に対してずれることが想定される。
これに対して、本実施形態では、混合燃料供給装置10から燃料タンク100へエタノール混合水を供給した後におけるタンク内エタノール濃度CEtaが、所望の目標タンク内エタノール濃度CEta_tとなるように目標生成エタノール濃度CE_tを演算するため、エタノール混合水を燃料タンク100に供給した後のタンク内エタノール濃度CEtaをより確実に要求される目標タンク内エタノール濃度CEta_tに調節することができる。
さらに、本実施形態のより具体的な制御として、コントローラ30は、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給後におけるタンク内エタノール混合水量Vreが所定貯留量としての全タンク容量Vtaとなったときに、タンク内エタノール濃度CEtaが目標タンク内エタノール濃度CEta_tになるように、目標生成エタノール濃度CE_tを演算する(図4のステップS220及び式(1))。
これにより、燃料タンク100内にエタノール混合水が供給されて満杯に貯留された状態でタンク内エタノール濃度CEtaが所望の目標タンク内エタノール濃度CEta_tとなるように、目標生成エタノール濃度CE_tを調節することができる。すなわち、混合燃料供給装置10による燃料タンク100へのエタノール混合水の供給前におけるタンク内エタノール混合水量Vre及びタンク内エタノール濃度CEtaにかかわらず、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給後の満杯状態で所望のタンク内エタノール濃度CEtaを実現することができる。
さらに、本実施形態では、コントローラ30は、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給が実行されている間に亘ってタンク情報の取得を係属する(ステップS230)。
これにより、タンク搭載装置200の作動状態に応じた燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を停止する要求に対して、速やかに混合燃料供給装置10による燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を停止することができる。
(変形例)
以下では、第2実施形態の変形例について説明する。なお、第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5は、本変形例による混合燃料供給装置10の構成を説明する図である。図示のように、本変形例では、コントローラ30は、第2実施形態で説明した通信装置60に代えて、貯留部情報取得部としての入力装置70を有している。入力装置70は、ボタン式、タッチパネル式、及び音声入力式等のタンク情報を入力可能な任意の入力インターフェースで構成することができる。
すなわち、本変形例によれば、タンク情報を取得する貯留部情報取得部が、当該タンク情報を入力する貯留部情報入力装置である入力装置70として構成されている。
混合燃料供給装置10によって燃料タンク100へのエタノール混合水の供給時においては、タンク搭載装置200との通信を行わずとも、タンク情報を取得することができる。
なお、上記第2実施形態で説明した通信装置60によってタンク搭載装置200からのタンク情報を受信する構成、及び上記変形例で説明した入力装置70によりタンク情報を入力する構成を混合燃料供給装置10に備えるようにしても良い。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、図5で説明した第2実施形態の変形例に係る混合燃料供給装置10と同様の構成を有する。さらに、本実施形態では。コントローラ30の入力装置70が、指定貯留量Vdeg又は全タンク容量Vtaから指定貯留量Vdegを減じて得られる燃料タンク100へのエタノール混合水の供給予定量を入力可能に構成されている。
ここで、上記第2実施形態において、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給後におけるタンク内エタノール混合水量Vreが全タンク容量Vtaとなったときに、タンク内エタノール濃度CEtaが目標タンク内エタノール濃度CEta_tになるように、目標生成エタノール濃度CE_tを演算した。
これに対して、本実施形態では、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給後におけるタンク内エタノール混合水量Vreが予め指定される指定貯留量Vdegとなったときに、タンク内エタノール濃度CEtaが目標タンク内エタノール濃度CEta_tになるように、目標生成エタノール濃度CE_tを演算する例について説明する。
具体的に、本実施形態では、図4で説明したステップS220における目標生成エタノール濃度CE_tを、上記式(1)に代えて下記の式(2)に基づいて行う。
ここで、式(2)中のΔVは、指定貯留量Vdegからタンク内エタノール混合水量Vreを減算した値である。すなわち、タンク内エタノール混合水量Vreが指定貯留量Vdegとなるまでに燃料タンク100に供給されるべきエタノール混合水の量(エタノール混合水の供給予定量)に相当する。なお、指定貯留量Vdeg=全タンク容量Vtaとすれば、式(2)は実質的に式(1)と一致することとなる。
これにより、コントローラ30がステップS220において式(2)を用いることで、燃料タンク100におけるタンク内エタノール混合水量Vreが予め指定される指定貯留量Vdegになったタイミングで、タンク内エタノール濃度CEtaが所望の目標タンク内エタノール濃度CEta_tをとることのできる目標生成エタノール濃度CE_tを演算することができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の混合燃料供給装置10において、コントローラ30は、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給後におけるタンク内エタノール混合水量Vreが所定貯留量としての任意に設定される指定貯留量Vdegとなったときに、タンク内エタノール濃度CEtaが目標タンク内エタノール濃度CEta_tになるように、目標生成エタノール濃度CE_tを演算する(図4のステップS220及び式(2))。
これにより、燃料タンク100内にエタノール混合水が供給されて指定貯留量Vdegとなった状態でタンク内エタノール濃度CEtaが所望の目標タンク内エタノール濃度CEta_tとなるように、目標生成エタノール濃度CE_tを調節することができる。すなわち、混合燃料供給装置10による燃料タンク100へのエタノール混合水の供給前におけるタンク内エタノール混合水量Vre及びタンク内エタノール濃度CEtaにかかわらず、燃料タンク100へのエタノール混合水の供給後において燃料タンク100内のエタノール混合水の量が指定貯留量Vdegとなったタイミングで所望のタンク内エタノール濃度CEtaを実現することができる。
特に本実施形態では、コントローラ30の入力装置70が、指定貯留量Vdeg又は全タンク容量Vtaから指定貯留量Vdegを減じて得られる燃料タンク100へのエタノール混合水の供給予定量を入力可能に構成されている。
したがって、エタノール混合水の供給後においてタンク内エタノール濃度CEtaを好適に調節する機能を維持しつつも、燃料タンク100内へのエタノール混合水の供給を実行する者に所望の指定貯留量Vdegを選択させることができる。
さらに、入力装置70が、全タンク容量Vtaから指定貯留量Vdegを減じて得られる燃料タンク100へのエタノール混合水の供給予定量を入力可能に構成されることが好ましい。
これにより、燃料タンク100内へのエタノール混合水の供給を実行する者は、エタノール混合水の供給後のタンク内エタノール混合水量Vreである指定貯留量Vdegを認識せずとも、自らが希望するエタノール混合水の供給予定量を入力装置70に対して入力するだけで、当該希望の供給予定量及びエタノール混合水の供給後の好適なタンク内エタノール濃度CEtaを実現することが可能となる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明する。なお、第1~第3実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6は、本実施形態の混合燃料供給装置10の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態の混合燃料供給装置10は、第2実施形態で説明した混合燃料供給装置10の構成をベースとする。
一方で、燃料タンク100には、内部の貯留エタノール混合水を適宜排出するための排出路110が設けられている。また、排出路110には、排出される貯留エタノール混合水の流量(以下では、「排出流量Qex」とも記載する)を検出する排出路流量センサ120が設けられている。
さらに、本実施形態では、排出路流量センサ120で検出される排出流量検出値Qex_dがタンク情報に含まれている。すなわち、混合燃料供給装置10による燃料タンク100へのエタノール混合水の供給の際には、排出流量検出値Qex_dが、タンク内エタノール濃度CEta等の他のタンク情報とともに通信装置60を介してコントローラ30に送信される。以下では、本実施形態のコントローラ30による混合燃料供給装置10における制御についてより詳細に説明する。
図7は、本実施形態のコントローラ30による混合燃料供給装置10における制御の流れを説明するフローチャートである。なお、以下で説明する各ステップで表される一連の制御ルーチンは、コントローラ30によって所定の演算周期で繰り返される。
図示のように、コントローラ30は、ステップS410及びステップS420において、図4のステップS210及びステップS220と同様の処理を実行して、目標生成エタノール濃度CE_tを演算する。
次に、ステップS430において、コントローラ30は、演算した目標生成エタノール濃度CE_tを実現可能か否か判定する。具体的に、コントローラ30は、式(1)に基づいて演算した目標生成エタノール濃度CE_tが100を越えているか否かを判定する。
すなわち、演算された目標生成エタノール濃度CE_tが100を越える場合とは、仮に燃料タンク100が満杯になるまで水を供給することなくエタノールのみを供給したとしても、タンク内エタノール濃度CEtaが目標生成エタノール濃度CE_tに到達しないことを意味する。この場合には、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18によるエタノール流量QE及び水流量QHの制御では目標生成エタノール濃度CE_tを実現することができない。
したがって、この場合、コントローラ30は、目標生成エタノール濃度CE_tを実現可能では無いと判断してステップS440の処理を実行する。
そして、ステップS440において、コントローラ30は、供給遮断弁26を閉塞するとともに、燃料タンク100に対して貯留しているエタノール混合水の一部を排出路110から排出させる貯留混合燃料排出指令を生成する。なお、生成された貯留混合燃料排出指令は、通信装置60等を介して燃料タンク100又はタンク搭載装置200に送信される。
具体的、コントローラ30は、式(1)に基づいて演算される目標生成エタノール濃度CE_tが100未満となる程度までタンク内エタノール混合水量Vreが減少するように、燃料タンク100に貯留混合燃料の排出を実行させる。特に、コントローラ30は、排出路流量センサ120により取得する排出流量Qexの積算値が、所望のタンク内エタノール混合水量Vreの減少分に達するまで燃料タンク100に貯留混合燃料の排出を実行させる。
これにより、供給前の燃料タンク100におけるタンク内エタノール濃度CEtaが低くタンク内エタノール混合水量Vreが多いなどの、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18によるエタノール流量QE及び水流量QHの制御では目標生成エタノール濃度CE_tを実現することができない場合であっても、適宜、燃料タンク100に対して貯留されているエタノール混合水を排出させることにより、目標生成エタノール濃度CE_tを実現できる状態とすることができる。
一方、上記ステップS430において、コントローラ30が演算した目標生成エタノール濃度CE_tを実現可能と判定した場合、すなわち目標生成エタノール濃度CE_t≦100である場合には、供給遮断弁26を開放して(又は開放状態を維持して)、ステップS450以降の処理を実行する。
なお、ステップS450~ステップS470の処理は、図4で説明したステップS230~ステップS250の処理と同様である。
以上説明した構成を有する本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、コントローラ30は、燃料タンク100へのエタノール混合水を供給した後におけるタンク内エタノール濃度CEtaが、目標タンク内エタノール濃度CEta_tとならない場合に(ステップS430のNo)、貯留混合燃料の少なくとも一部を燃料タンク100から排出させる処理を実行し(ステップS440)、該処理の後に燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を実行する(ステップS450)。
これにより、混合燃料供給装置10による燃料タンク100へのエタノール混合水の供給前におけるタンク内エタノール濃度CEtaが低い、又はタンク内エタノール混合水量Vreが多いなどの、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18によるエタノール流量QE及び水流量QHの制御では目標生成エタノール濃度CE_tを実現することができない場合であっても、燃料タンク100に貯留されているエタノール混合水を適宜排出させてタンク内エタノール混合水量Vreを減少させることで、目標生成エタノール濃度CE_tを実現し得る状態とすることができる。
したがって、燃料供給前における燃料タンク100内のエタノール混合水の貯留量又は濃度にかかわらず、より確実に混合燃料供給装置10によるタンク内エタノール濃度CEtaの調節を実行することができる。
なお、本実施形態では、第2実施形態で説明した式(1)から演算される目標生成エタノール濃度CE_tに基づくステップS430及びステップS440の処理、すなわち燃料タンク100内を満杯にするまで燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を行う場合に説明した。
しかしながら、本実施形態のステップS430及びステップS440を含む各ステップの処理は、第3実施形態で説明した式(2)から演算される目標生成エタノール濃度CE_t、すなわち燃料タンク100におけるタンク内エタノール混合水量Vreが指定貯留量Vdegとなるまで燃料タンク100へのエタノール混合水の供給を行う場合についても同様に適用可能である。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について説明する。なお、第1~第3実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図8は、第5実施形態の混合燃料供給装置10の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態の混合燃料供給装置10は、第2実施形態で説明した混合燃料供給装置10の構成をベースとする。
一方で、燃料タンク100には、内部の貯留部エタノール混合水の温度を検出するタンク温度センサ130が設けられている。
さらに、本実施形態ではタンク温度センサ130で検出されるタンク内温度検出値Tta_dがタンク情報に含まれている。すなわち、混合燃料供給装置10による燃料タンク100へのエタノール混合水の供給の際には、タンク内温度検出値Tta_dが、タンク内エタノール濃度CEta等の他のタンク情報とともに通信装置60を介してコントローラ30に送信される。
そして、本実施形態において、コントローラ30は、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の制御に用いるパラメータであるエタノール流量QE及び水流量QHを、タンク内温度検出値Tta_dに基づいて体積流量から質量流量に変換(補正)する。以下では、エタノール流量QEを質量流量に変換した値を「エタノール質量流量QEm(Tta)」及び水流量QHを質量流量に変換した値を「水質量流量QHm(Tta)」と記載する。
図9は、本実施形態によるコントローラ30の制御を説明するブロック図である。図示のように、本実施形態のコントローラ30は、第1実施形態による図2の制御ブロックに加えて、第1流量センサ22からのエタノール流量検出値QE_d及び第2流量センサ24からの水流量検出値QH_dを、それぞれ通信装置60で受信したタンク情報に含まれるタンク内温度検出値Tta_dに基づいて、エタノール質量流量検出値QEm(Tta)_d及び水質量流量検出値QHm(Tta)_dに変換する流量単位変換ブロックB210を有している。
具体的に、流量単位変換ブロックB210は、コントローラ30における所定の記憶手段に予め記憶された温度とエタノールの密度、及び温度と水の密度の関係を示す所定のマップを用いて、タンク内温度検出値Tta_dにおけるエタノール密度ρE(Tta_d)[kg/m3]及び水密度ρH(Tta_d)[kg/m3]を取得する。さらに、流量単位変換ブロックB210は、第1流量センサ22からのエタノール流量検出値QE_d[m3/s]及び第2流量センサ24からの水流量検出値QH_d[m3/s]に、取得したエタノール密度ρE(Tta_d)[kg/m3]及び水密度ρH(Tta_d)[kg/m3]を乗じて、エタノール質量流量検出値QEm(Tta)_d[kg/s]及び水質量流量検出値QHm(Tta)_d[kg/s]を得る。
また、本実施形態の目標流量比演算ブロックB120は、第1実施形態と同様の方法で演算した目標流量比QE/QH_tに対して、タンク内温度検出値Tta_dに応じた所定のゲインを乗じて質量流量基準の目標質量流量比QE/QH_tm(Tta)_tを演算し、この目標質量流量比QE/QH_tm(Tta)_tを流量比差演算ブロックB130に出力する。結果として、本実施形態では、タンク内温度Ttaで補正された流量比QE/QHが、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の制御パラメータとして用いられることとなる。
なお、実流量比演算ブロックB110、流量比差演算ブロックB130、目標流量演算ブロックB140、及び流量弁開度調節ブロックB150における処理については、入力パラメータであるエタノール流量検出値QE_d、及び水流量検出値QH_dが、エタノール質量流量検出値QEm(Tta)_d及び水質量流量検出値QHm(Tta)_dに変更されたことにより必要となる各ゲインなどの変更を除いて図2で説明した処理を同様である。
以上説明した構成を有する本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、タンク情報は、燃料タンク100の温度であるタンク内温度検出値Tta_dを含む。そして、コントローラ30は、流量比QE/QHをタンク内温度検出値Tta_dで補正する(流量単位変換ブロックB210)。
すなわち、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の制御におけるパラメータである流量比QE/QHを、エタノール及び水のそれぞれの温度によって値が変化する可能性がある体積流量基準のエタノール流量検出値QE_d及び水流量検出値QH_dに代えて、実質的に温度変化の影響を受けないエタノール質量流量検出値QEm(Tta)_d及び水質量流量検出値QHm(Tta)_dに基づいて定めることができる。したがって、目標生成エタノール濃度CE_tに基づく第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の制御をより高精度に実行することができる。
なお、本実施形態のタンク内温度検出値Tta_dに代えて、又はこれに加えて、エタノール導入路12の第1流量センサ22の近傍及び水導入路14の第2流量センサ24の近傍に温度センサを設け、これら温度センサによる温度検出値を用いてエタノール密度ρE及び水密度ρHを求めるようにしても良い。これにより、より高精度なエタノール質量流量検出値QEm(Tta)_d及び水質量流量検出値QHm(Tta)_dを得ることができ、結果として混合燃料供給装置10における生成エタノール濃度CEの制御精度がより高くなる。
特に、このようにエタノール導入路12及び水導入路14にそれぞれ温度センサを設ける場合には、図1のようにコントローラ30に燃料タンク100等と通信する通信装置60が設けられていなくとも、本実施形態による質量流量基準のエタノール質量流量検出値QEm(Tta)_d及び水質量流量検出値QHm(Tta)_dに基づく第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の制御を実行することが可能となる。
一方で、一定の精度を保ちつつ、混合燃料供給装置10のハードウェア構成を簡略化する観点からは、本実施形態のように通信装置60により取得したタンク内温度検出値Tta_dからエタノール密度ρE(Tta_d)及び水密度ρH(Tta_d)を求めるようにすることが好ましい。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について説明する。なお、第1~第3実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図10は、第6実施形態の混合燃料供給装置10の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態の混合燃料供給装置10は、第1実施形態で説明した混合燃料供給装置10の構成をベースとする。
そして、本実施形態の混合燃料供給装置10において、水導入路14の入口には、水道管300が接続されている。これにより、混合燃料供給装置10は、水導入路14には水道管300から第2燃料成分である水が導入される構成となっている。なお、水導入路14には水道管300から供給される水中の不純物を取り除くフィルタ80が設けられている。すなわち、本実施形態の混合燃料供給装置10では、第2燃料成分である水を、既存の水供給インフラを利用して水導入路14に供給することができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の混合燃料供給装置10によれば、第2燃料成分が水であり、水導入路14は、既存の水道水供給系統としての水道管300を接続可能に構成されている。
これにより、本実施形態の混合燃料供給装置10において、第2燃料成分である水を既存の水供給インフラである水道管300を用いて確保することができる。
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上述した一実施形態及びその変形例に限定されることはない。
例えば、上記各実施形態及び変形例においては、混合燃料であるエタノール混合水の濃度として、エタノール混合水中の第1燃料成分であるエタノールの濃度を制御パラメータとして第1流量調整弁16の開度及び第2流量調整弁18の制御を行った。しかしながら、第2燃料成分である水のエタノール混合水中の濃度を制御パラメータとして第1流量調整弁16の開度及び第2流量調整弁18の制御を行っても良い。
また、上記各実施形態及び変形例の混合燃料供給装置10には、混合燃料はエタノール混合水に限られず、少なくとも2種以上の燃料成分を混合してなる任意の液体の混合燃料に採用することができる。すなわち、2種以上の燃料成分を混合してなる混合燃料であれば、各燃料成分の性質の相違に起因した混合燃料における成分濃度の変化が生じ所望の濃度からずれるという問題が想定されるところ、上記各実施形態又は変形例で説明した構成を適宜適用すれば当該問題の解消に寄与することができる。
具体的には、上記各実施形態及び変形例で説明した第1燃料成分をエタノール及び第2燃料成分を水とする例に、エタノールを越える炭素数を有する種々のアルコール成分をさらに混合する混合燃料を採用しても良い。
例えば、図11において、n種類(n≧3)の燃料成分である1番目燃料成分、2番目燃料成分、・・・及びn番目燃料成分を混合して混合燃料を生成し、燃料タンク100に供給する混合燃料供給装置10の構成の例を示す。
図示のように、燃料成分の種類がn種類に増えた場合には、各燃料成分に対応させて1番目燃料成分導入路90‐1、2番目燃料成分導入路90‐2、・・・k番目燃料成分導入路90‐k、・・・及びn番目燃料成分導入路90‐nが設けられる。そして、これら各導入路にそれぞれ、1番目流量調整弁92‐1、2番目流量調整弁92‐2、・・・k番目流量調整弁92‐k、・・・及びn番目流量調整弁92‐n、並びに1番目流量センサ94‐1、2番目流量センサ94‐2、・・・k番目流量センサ94‐k、・・・及びn番目流量センサ94‐nが設けられる。そして、生成燃料濃度センサ50は、ミキサ20で生成される混合燃料の濃度として着目すべきk番目燃料成分の濃度であるk番目燃料成分濃度Ck_dを検出する。
そして、図11に示す混合燃料供給装置10において、コントローラ30は、図2の制御ロジックにおける制御パラメータである「エタノール流量QE」を「k番目燃料成分の流量」、「水流量QH」を「k番目燃料成分以外の燃料成分の流量の和」、「エタノール濃度CE」を「k番目燃料成分濃度Ck」、及び「目標生成エタノール濃度CE_t」を「目標k番目燃料成分濃度Ck_t」にそれぞれ置き換えて当該ロジックを同様に実行することで、1番目流量調整弁92‐1~n番目流量調整弁92‐nの開度を適宜調節することができる。すなわち、図11の形態では、「k番目燃料成分」を「第1燃料成分」、及び「k番目燃料成分以外の各燃料成分」を「第2燃料成分」とみなして本発明を適用することができる。
なお、この場合において、k番目流量調整弁92‐k以外の流量調整弁の目標開度が一意に定まらない場合には、k番目燃料成分以外の各燃料成分の中から新たに混合燃料の濃度として着目すべき燃料成分を第1燃料成分として抽出し、当該第1燃料成分とそれ以外の燃料成分(第2燃料成分)に関して、同様に制御パラメータを適宜置き換えつつ、図2の制御ロジックを実行する。同様の処理を順次繰り返すことで、全ての1番目流量調整弁92‐1~n番目流量調整弁92‐nの目標開度を定めることができる。
したがって、図11に示す混合燃料供給装置10によれば、3種類以上の燃料成分を混合する場合においても生成される混合燃料の濃度を好適に調節することができる。
さらに、上記第2実施形態等においては、燃料貯留部がタンク搭載装置200に搭載される燃料タンク100である例について説明した。しかしながら、燃料貯留部は燃料タンク100に限られない。例えば、燃料貯留部は、特定の装置に搭載される用途ではないものの、内部に一定期間に亘って混合燃料を貯留しておくことが想定される携行缶等であっても良い。
また、上記実施形態及び変形例は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。