JP7109783B2 - 優れた免疫賦活能を有する新規の乳酸菌 - Google Patents

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NPMD NITE P-02751
本発明は、優れた免疫学的特性を有する新規の乳酸菌およびその使用方法に関する。
乳酸菌は、腸内細菌叢を良好な状態に保つことに寄与し、また、乳酸菌を用いて乳を発酵させて得られる乳酸発酵食品は、健康志向の飲食品として広く食されている。また、乳酸菌を加熱した菌体もまた、食品ないし食品添加物として有用である。乳酸菌の中には、OK432株(非特許文献1)のように、免疫賦活等の免疫学的特性や生理活性効果を有しているものが知られているが、その効果は十分ではない。
リンパ球、マクロファージ等が産生するサイトカインのなかで、IL-12は、ヘルパーT前駆細胞(Th0)からヘルパーT細胞タイプ1(Th1)への分化誘導やナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性化等の作用を有する。ヘルパーT細胞には、Th1細胞とTh2細胞があり、Th1細胞は、インターロイキン-2(IL-2)、インターフェロン-γ(IFN-γ、IgE抗体の産生を抑制する)、TNF-α、TNF-β、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-3を産生することで、T細胞や単球等の貪食細胞の活性を高め、細菌等の感染に対する抵抗を高める。また、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、がん細胞やウイルス感染細胞等を特異的に殺傷する能力を有する。したがって、IL-12の産生増強により、ウイルス感染への抵抗力増強やがんの予防等が期待できる。これらの作用は、白血球やリンパ球等の免疫細胞が直接病原体を殺傷、貪食するもので、細胞性免疫と呼ばれ、抗体産生による免疫作用(液性免疫)とは区別される。
一方、細胞性免疫と液性免疫はバランス関係にあり、細胞性免疫が活性化すると液性免疫が抑制される現象がみられる。現代の人間は、抗体産生(液性免疫)側にバランスが傾いているといわれ、花粉症、アレルギーの増加の一因とされている。IL-12の増強により、これらの症状の緩和も期待できる。したがって、IL-12産生誘導活性が高い乳酸菌は多くの用途を有する。
また、望まれる免疫学的特性を有しつつ、かつ、抗IgEを低下することができれば、抗炎症という点においてさらに有用であることが予測される。
日本口腔科学会雑誌、2003年52巻2号p.51-62
本発明は、従来の乳酸菌と比較して、免疫学的性質が優れた(例えば、より高いIL-12産生誘導活性、IgE産生抑制活性、および/または、抗がん活性を有する)新規の乳酸菌を提供することを課題とする。さらに、本発明は、そのような新規の乳酸菌を利用する方法を提供する。
本発明の発明者らは、新規の乳酸菌であるLeuconostoc mesenteroidesに属する「つる5」株を提供することによって、上記課題を解決した。このつる5株は、図1に示す核酸配列を含む16S rDNA遺伝子(配列番号1)を有する。このLeuconostoc mesenteroidesに属する「つる5」株は、2018年7月11日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)に寄託された(受託番号 NITE P-02751)。
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
Leuconostoc mesenteroidesに属するつる5株(受託番号 NITE P-02751)。
(項目2)
Leuconostoc mesenteroidesに属するつる5株(受託番号 NITE P-02751)の変異株であって、該変異株は、配列番号1に示される核酸配列からなる16S rDNA遺伝子を有し、かつ、IL-12産生誘導活性を有する、変異株。
(項目3)
Leuconostoc mesenteroidesに属するつる5株(受託番号 NITE P-02751)の変異株であって、該変異株は、配列番号1に示される核酸配列からなる16S rDNA遺伝子を有し、かつ、IgE抑制活性を有する、変異株。
(項目4)
Leuconostoc mesenteroidesに属するつる5株(受託番号 NITE P-02751)の変異株であって、該変異株は、配列番号1に示される核酸配列からなる16S rDNA遺伝子を有し、かつ、抗がん活性を有する、変異株。
(項目5)
項目1~4のいずれか一項に記載のつる5株(受託番号 NITE P-02751)またはその変異株を培養する工程を包含する、乳酸菌加熱菌体を生産する方法。
(項目6)
項目1~4のいずれか一項に記載のつる5株(受託番号 NITE P-02751)またはその変異株を用いて製造された、乳酸菌加熱菌体。
(項目7)
項目1~4のいずれか一項に記載のつる5株(受託番号 NITE P-02751)またはその変異株を、葛由来デキストリンを含む培地で培養する工程を包含する、乳酸菌加熱菌体を生産する方法。
(項目8)
項目7に記載の方法で製造された、乳酸菌加熱菌体。
(項目9)
項目6または8に記載の乳酸菌加熱菌体を含む、IL-12産生を誘導するための組成物。
(項目10)
項目6または8に記載の乳酸菌加熱菌体を含む、IgEを抑制するための組成物。
(項目11)
項目6または8に記載の乳酸菌加熱菌体を含む、癌を処置または予防するための組成物。
(菌学的特徴)
本発明のLeuconostoc mesenteroidesに属する新規のつる5株(受託番号 NITE P-02751)は、Leuconostoc mesenteroidesに特徴的な以下の菌学的特徴を有し、ザワークラウトなどの発酵食品に用いられる。この菌は、以下の菌学的特徴を備えていた。
・グラム陽性の球菌で連鎖状ないし双球菌の形態である。
・糖を分解して乳酸菌と乳酸菌以外の短鎖脂肪酸の酢酸、エタノール、COなどを生成するヘテロ乳酸菌に分類される。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される用語「加熱菌体」とは、培養後に加熱殺菌した菌体をいう。限定されることはないが、代表的には、20~40℃で10~40時間培養した後に、70~121℃で10~60分間加熱殺菌した菌体をいう。
本明細書において使用される用語「抗がん活性」とは、無秩序な細胞成長の阻止(部分的もしくは全体的)または抑止、および/あるいは本明細書において定義されるがんの阻止(部分的もしくは全体的)または抑止をいう。抗がん活性には、例えば、遺伝子損傷を低減、抑止もしくは修復する能力、望ましくない細胞増殖を調節する能力、細胞死の誤制御を調節する能力、または転移の機構(例えば、移動能)を調節する能力が含まれる。本発明が対象とするがんは、限定されることはないが、例えば、転移性脳腫瘍、神経内分泌腫瘍、黒色腫、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、泌尿生殖器癌、胃癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、絨毛腫、膵臓癌、網膜芽腫、多発性骨髄腫、および他の種類の癌を包含する。
本発明は、免疫学的性質が優れた新規の乳酸菌、特に、Leuconostoc mesenteroidesに属する乳酸菌を提供する。本発明の乳酸菌は、例えば、より高いIL-12産生誘導活性、IgE産生抑制活性、および/または、抗がん活性を有する。
図1は、「つる5」株の16S rDNA遺伝子の核酸配列を示す。 図2は、「つる5」株の16S rDNA遺伝子(上段のSIID23149-01の配列)と比較対象であるLeuconostoc mesenteroidesに属するRIB.9186株(酒類総合研究所より入手、下段のSIID23149-02の配列)とを比較したアラインメントである。1243番目の核酸は、SIID23149-01では「G」であるのに対して、SIID23149-02では「A」である。 図2は、「つる5」株の16S rDNA遺伝子(上段のSIID23149-01の配列)と比較対象であるLeuconostoc mesenteroidesに属するRIB.9186株(酒類総合研究所より入手、下段のSIID23149-02の配列)とを比較したアラインメントである。1243番目の核酸は、SIID23149-01では「G」であるのに対して、SIID23149-02では「A」である。 図2は、「つる5」株の16S rDNA遺伝子(上段のSIID23149-01の配列)と比較対象であるLeuconostoc mesenteroidesに属するRIB.9186株(酒類総合研究所より入手、下段のSIID23149-02の配列)とを比較したアラインメントである。1243番目の核酸は、SIID23149-01では「G」であるのに対して、SIID23149-02では「A」である。 図3は、「つる5」株の16S rDNA遺伝子の核酸配列に基づく簡易分子系統樹である。 図4は、「つる5」株とOK432株のIL-12産生誘導活性を比較したグラフである。 図5は、葛由来デキストリンを用いて培養した「つる5」株による優れたIL-12産生誘導活性を示したグラフである。 図6は、異なる濃度の葛由来デキストリンを用いて培養した「つる5」株による優れたIL-12産生誘導活性を示したグラフである。 図7は、「つる5」株を用いた場合(被験物質投与群)と用いない場合(無処置群)での腫瘍重量を比較したグラフである。 図8は、加熱菌体の作製のための代表的なスキームを示す。
(1.「つる5」株の培養法)
「つる5」株の代表的な培養条件は、MRS培地にて静置培養25~37℃で24~48時間であるが、これに限定されない。
(2.変異株の作製)
前記変異株は、例えば、一般的な突然変異処理を施すこと、又は経代培養による適応若しくは自然変異により作製される。
前記突然変異処理は、一般的な変異原を用いて行われ得る。変異原としては、例えば、変異原作用を有する薬剤、紫外線などが挙げられる。変異原作用を有する薬剤としては、例えば、ストレプトマイシン、オフロキサシン、エチルメタンスルホネート、N-メチル-N′-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、ブロモウラシル等のヌクレオチド塩基類似体、又は、アクリジン類などが挙げられる。
本発明の変異株は、好ましくは、「つる5」株と同程度のIL-12産生誘導活性を有する。例えば、本発明の変異株は、「つる5」株と比較して70%~130%、80%~120%、または、90%~110%のIL-12産生誘導活性を有する。本発明の変異株は、OK432株(例えば、「ピシバニール」として中外製薬株式会社から市販されているストレプトコックス・ピオゲネス(A群3型)Su株ペニシリン処理凍結乾燥粉末)よりも優れたIL-12産生誘導活性、少なくとも1.2倍の、少なくとも1.3倍の、少なくとも1.4倍の、少なくとも1.5倍の、少なくとも1.6倍の、または、少なくとも1.7倍のIL-12産生誘導活性を有する。
本発明の変異株は、好ましくは、「つる5」株と同様にIgE抑制活性を有する。本発明の変異株は、好ましくは、「つる5」株と同様に抗がん活性を有する。
(3.葛由来デキストリンの調製方法)
葛由来デキストリンの製造には、植物からデキストリンを調製する任意の方法を使用することができる。代表的な好ましい葛由来デキストリンの製造工程は、以下のとおりである。
・葛根を粉砕→もみだし→さらし布で濾す→不純物除去→沈殿→乾燥→0.1%~0.3%酵素を添加し炊き上げと同時に液化(液化条件:pH5.0~7.0、50~75℃)→滅菌(90~112℃、10~60分)→乾燥を行う。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
(実施例1:「つる5」株の単離)
Leuconostoc mesenteroidesに属する「つる5」株を、以下の手順で単離した。
・クズの蔓を、抗生物質を添加した乳酸菌用の液体培地にて25℃~37℃で24~48時間集積培養
・得られた培養液をBCP加プレートカウントアガール培地に塗抹培養して、Leuconostoc mesenteroidesに属する新規のつる5株を選択した。
上記のようにして得られたLeuconostoc mesenteroidesに属する「つる5」株は、2018年7月11日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)に寄託された(受託番号 NITE P-02751)。
(実施例2:「つる5」株の特徴付け(1) 16S rDNA遺伝子解析)
単離した「つる5」株の16S rDNA遺伝子の塩基配列を決定した。その結果を図1に示す(配列番号1)。図2は、「つる5」株の16S rDNA遺伝子(上段のSIID23149-01、配列番号1)と比較対象であるLeuconostoc mesenteroidesに属するRIB.9186株(酒類総合研究所より入手、下段のSIID23149-02、配列番号2)とを比較したアラインメントである。
図3は、「つる5」株の16S rDNA遺伝子の核酸配列に基づく簡易分子系統樹である。左上の線はスケールバーであり、系統枝の分岐に位置する数値はブーストラップ値であり、株名の末尾の「T」はその種の基準株(Type strain)を示す。
(実施例3:「つる5」株の特徴付け(2) IL-12産生誘導活性)
BALB/cマウスより脾臓細胞を調製し、2.5×10/mlの濃度の細胞培養液に被験乳酸菌の重量濃度が1μg/mlおよび10μg/mlになるように乾燥した乳酸菌を加え、96穴培養プレートに200μL/well分注し、5% CO、37℃下で2日間培養後、サンドイッチELISA法により培養液中のIL-12濃度を測定した。なお、使用したBALB/cマウスの週齢は11週齢であり、脾臓細胞培養液は10%FBS(ウシ胎児血清)-RPMI1640+100μg/mlストレプトマイシン+100U/mlペニシリン+50μM 2-メルカプトエタノールを用いた。1サンプルおよび1濃度について6wellを使用した。統計学的解析は一元配置の分散分析を行い、陽性対照との比較はDunnettの検定を行い、各サンプル間の対比較はTukeyの検定を行い、有意差の有無を検定した。また、個々のサンプルの1μg/mlと10μg/mlの比較はWelchのt-testにより検定した。
乳酸菌を中和培養し、集菌し、洗浄後加熱殺菌した後にサンプルとして用い、OK432の結果と比較した。
IL-12の測定は、特異抗体を用いたサンドイッチELISA法により行った。一次抗体および二次抗体ともに、BioLegend Inc.のラット抗マウスモノクローナル抗体を用いた。
結果を図4に示す。この結果は、本発明の「つる5」株のIL-12産生誘導活性が、OK432株と比較して著しく優れていることを示す。
(実施例4:「つる5」株の特徴付け(3) 葛由来デキストリンを用いた培養)
本発明の「つる5」株の培養培地(MRS培地)中のグルコースを葛由来デキストリンに代えて、「つる5」株を培養し、脾臓細胞におけるIL-12産生誘導活性を試験した。
葛由来デキストリンは、以下の手順で作製した。
・葛根を粉砕→もみだし→さらし布で濾す→不純物除去→沈殿→乾燥→0.1%~0.3%酵素を添加し炊き上げと同時に液化(液化条件:pH5.0~7.0、50~75℃)→滅菌(90~112℃、10~60分)→乾燥。
この実施例4では、Bacillus subtilisを起源とする液化酵素T(エイチビィアイ株式会社)を使用する酵素として選択した。使用する酵素としては、例えば、α-アミラーゼのようなアミラーゼが挙げられるがこれらに限定されない。また、β-アミラーゼおよびグルコアミラーゼもまた使用可能である。代表的には、ノボザイムズジャパン株式会社の「BAN」、天野エンザイム株式会社の「クライスターゼE5CC」、ナガセケムテックス株式会社の「スピターゼCP40-FG」、および、ヤクルト薬品工業株式会社の「ユニアーゼBM8」が挙げられるがこれらに限定されない。酵素の添加量は、当業者が適宜選択することができ、例えば、0.003~1%の酵素濃度で使用することができる。酵素反応条件は、限定されることはないが、代表的には、pH5.0~7.0であり、50~75℃である。
実施例3と同様の条件でグルコース(5%)を用い「つる5」株を培養し、実施例3と同様に細胞培養培地1mlあたり1μgの乳酸菌を添加した細胞培養培地を用いてIL-12産生誘導活性を試験した。さらに、この試験で使用した乳酸菌の培養において使用した培養培地(MRS培地)中のグルコース(5%)を上記方法で調製した葛由来デキストリン(5%)に代えた培養培地を用いて乳酸菌を増殖させ、その菌体懸濁液を用いて、実施例3と同様の実験を行った。葛由来デキストリンを乳酸菌の培養に用いると不溶性残渣が多くなる。そのため、脾臓細胞培養液に添加する乳酸菌としては、乳酸菌培養培地全体を加熱後に撹拌した直後の懸濁液を用いた場合(図5に「葛由来デキストリン(全体)」として示した)、あるいは、乳酸菌培養培地での培養が完了し加熱した後にしばらく静置して上清にある菌体層のみを用いた場合(図5に「葛由来デキストリン(菌体)」として示した)を比較した。また、比較対象として、グルコースを含む培養培地で培養したOK432株を用いた結果も図5に示した。
図5の結果から明らかなように、グルコースの代わりに葛由来のデキストリンを用いた場合には、さらに、IL-12産生誘導活性が上昇した。この上昇は、菌体以外の培養培地中の成分に起因するというよりもむしろ乳酸菌の加熱菌体に起因することも明らかとなった。
上記の実験を、使用する乳酸菌の重量濃度を変えて行った結果を図6に示す。脾臓細胞培養培地1mlあたりの菌体懸濁液量を10μg/mlとした場合に、OK432株と比較した「つる5」株のIL-12産生誘導活性の増強効果が一層顕著になり、グルコースに代えて葛由来デキストリンを使用した場合には、「つる5」株のIL-12産生誘導活性の増強効果がさらに一層優れたものとなった。
(実施例5:「つる5」株の特徴付け(4) IgE抑制活性)
『レビス(登録商標)IgE-ELISAキット(マウス)』((株)シバヤギ)を用い測定検体中のIgEを測定した。マイクロプレート分光光度計はBio-rad社製品を用い、標準曲線は3次多項式を用い測定値を算出した。なお、測定は1検体あたり2点測定し平均値を採用した。統計処理は、F検定により分散の検定を行ない、等分散の場合はStudent’s t-test、不等分散の場合はWelch’s t-testにより比較を行なった。
マウスの各々の種における「つる5」株の非投与と投与における血漿中のIgEを表1す。
Figure 0007109783000001
いずれのマウス種においても「つる5」株投与でやや低下傾向を示した。また、マウス種に注目すると、C57BL/6Nマウスが他のマウス種に対し有意に低値であった。
(実施例6:「つる5」株の特徴付け(5) 抗がん活性)
マウス乳がん4T1細胞株を皮下に移植した担癌マウスモデルに、被験物質を移植の7日前から28日間経口投与した場合の抗腫瘍効果を、腫瘍体積及び腫瘍重量を指標にして検討した。本試験は、株式会社ケー・エー・シーの動物実験規程、動物実験委員会規定及び動物実験承認規定を遵守して適正に実施した(承認番号:17-1107)。
腫瘍表面の状態について、無処置群及び被験物質投与群において、Day18に痂皮形成が各群1例で認められた。Day20以降、全ての動物で痂皮形成が認められた。体重について、群分け日からサンプリング日まで各群ともに増加した。腫瘍体積について、Day17及びDay24において、無処置群に対して被験物質投与群は有意な低値を示した。腫瘍重量について、無処置群における平均腫瘍重量は1.341gであるのに対して、被験物質投与群における平均腫瘍重量は1.014gと有意な低値を示した。肺重量について、無処置群は0.202gであるのに対して、被験物質投与群は0.186gであり、有意な差は認められなかった。結果を以下の表2に示す。
Figure 0007109783000002
図7は腫瘍重量を示すグラフである。
以上の結果より、平均腫瘍体積及び平均腫瘍重量において、被験物質投与群が無処置群よりも低値を示す傾向が認められたことから、被験物質を移植7日前から28日間経口投与することで抗腫瘍効果を有することが示された。
(実施例7:加熱菌体の作製)
加熱菌体の作製は、代表的には、図8のスキームに従う。具体的には、20~40℃で10~40時間培養した後に、70~121℃で10~60分間加熱殺菌した。本発明の加熱菌体は、免疫賦活能を有する組成物、癌を処置および/または予防するための組成物の有効成分として利用可能である。
従来の乳酸菌と比較して、免疫学的特性が優れた(例えば、より高いIL-12産生誘導活性、IgE産生抑制活性、および/または、抗がん活性を有する)新規の乳酸菌を提供する。
Leuconostoc mesenteroidesに属する「つる5」株は、2018年7月11日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)に寄託された(受託番号 NITE P-02751)。
配列番号1:「つる5」株の16S rDNA遺伝子の核酸配列
配列番号2:Leuconostoc mesenteroidesに属するRIB.9186株の16S rDNA遺伝子の核酸配列

Claims (11)

  1. Leuconostoc mesenteroidesに属するつる5株(受託番号 NITE P-02751)。
  2. Leuconostoc mesenteroidesに属するつる5株(受託番号 NITE P-02751)の変異株であって、該変異株は、配列番号1に示される核酸配列からなる16S rDNA遺伝子を有し、かつ、IL-12産生誘導活性を有する、変異株。
  3. Leuconostoc mesenteroidesに属するつる5株(受託番号 NITE P-02751)の変異株であって、該変異株は、配列番号1に示される核酸配列からなる16S rDNA遺伝子を有し、かつ、IgE抑制活性を有する、変異株。
  4. Leuconostoc mesenteroidesに属するつる5株(受託番号 NITE P-02751)の変異株であって、該変異株は、配列番号1に示される核酸配列からなる16S rDNA遺伝子を有し、かつ、抗がん活性を有する、変異株。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のつる5株(受託番号 NITE P-02751)またはその変異株を培養する工程を包含する、乳酸菌加熱菌体を生産する方法。
  6. 請求項1~4のいずれか一項に記載のつる5株(受託番号 NITE P-02751)またはその変異株を用いて製造された、乳酸菌加熱菌体。
  7. 請求項1~4のいずれか一項に記載のつる5株(受託番号 NITE P-02751)またはその変異株を、葛由来デキストリンを含む培地で培養する工程を包含する、乳酸菌加熱菌体を生産する方法。
  8. 請求項7に記載の方法で製造された、乳酸菌加熱菌体。
  9. 請求項6または8に記載の乳酸菌加熱菌体を含む、IL-12産生を誘導するための組成物。
  10. 請求項6または8に記載の乳酸菌加熱菌体を含む、IgEを抑制するための組成物。
  11. 請求項6または8に記載の乳酸菌加熱菌体を含む、癌を処置または予防するための組成物。
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