JP7109039B2 - 抗線維症剤およびリン酸化Smad核内移行阻害剤 - Google Patents
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ピルフェニドンは、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6等)の産生抑制と抗炎症性サイトカイン(IL-10)の産生亢進を示す。また、線維化形成に関与する増殖因子(TGFβ1、b-FGF、PDGF)に対する産生抑制作用を有する。さらに、線維芽細胞増殖抑制作用やコラーゲン産生抑制作用も有する。ピルフェニドンは、これらの複合的な作用に基づき抗線維化作用を示すと考えられるが、ピルフェニドンの標的分子は明らかになっていない。
ニンテダニブは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)α、β、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1、2、3、及び血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)を標的とする低分子量チロシンキナーゼ阻害薬であり、線維芽細胞の増殖および遊走を阻害することで、抗線維化作用を示す。
しかし、ピルフェニドン及びニンテダニブは、特発性肺線維症患者において努力肺活量の改善を示すが、生存期間を延長することはできないことが報告されている(非特許文献2)。
そこで、新たなアプローチによる治療薬の開発が望まれている。
特発性肺線維症等で見られる組織線維化において、TGFβ1が重要な役割を果たしていると指摘されている(非特許文献1、3)。TGFβ1は、創傷治癒に深く関わる分子としても知られているが、組織における過剰なTGFβ1の作用が線維化に深く関わると考えられている。肺間質においても、TGFβ1は、線維芽細胞を筋線維芽細胞へと分化させ、コラーゲンやフィブロネクチン等の細胞外マトリクスや、筋線維芽細胞に特徴的なタンパク質であるα平滑筋アクチン(αSMA:α-smooth muscle actin)の発現を誘導することが知られている。なお、αSMAは、線維化のマーカータンパク質である。
ラクトシルセラミドが豊富な脂質ラフト領域は、炎症性のシグナル伝達を担うことが報告されている(非特許文献6-10)。
しかしながら、ラクトシルセラミドが、TGFβ1シグナルを担う分子として機能するかは報告されておらず、ラクトシルセラミドとTGFβ1シグナルとの関与は知られていない。
る抗線維症剤を提供することを課題とする。
2.前記グルコシルセラミド合成酵素阻害剤が、1-フェニル-2-ヘキサデカノイルアミノ-3-モルフォリノ-1-プロパノール(PPMP)、1-フェニル-2-デカノイルアミノ-3-モルフォリノ-1-プロパノール(PDMP)、N-ブチルデオキシノジリマイシン(ミグルスタット、NB-DNJ)、N-ブチルデオキシガラクトノジリマイシン(NB-DGJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)、N―[(lR,2R)-1-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-1-ヒドロキシ-3-(ピロリジン-1-イル)プロパン-2-イル]オクタンアミドヘミ-(2R,3R)-酒石酸塩(エリグルスタット酒石酸塩)から選択される1以上であることを特徴とする1.に記載の抗線維症剤。
3.前記ラクトシルセラミド合成酵素阻害剤が、N-ドデシルデオキシノジリマイシン、ノジリマイシン亜硫酸付加物、ノジリマイシン亜硫酸付加物疎水性誘導体及びこれらの塩から選択される1以上であることを特徴とする1.に記載の抗線維症剤。
4.特発性肺線維症の治療剤、または予防剤であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の抗線維症剤。
5.グルコシルセラミド合成酵素阻害剤、ラクトシルセラミド合成酵素阻害剤のいずれか、または両方を有効成分とするリン酸化Smad核内移行阻害剤。
本発明の抗線維症剤は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤、またはラクトシルセラミド合成酵素阻害剤を有効成分とし、リン酸化Smadの核内移行を阻害することにより、線維症の原因となるαSMAやコラーゲンの合成を抑制する。本発明の抗線維症剤は、組織の線維化関連タンパク質の発現プロセスを抑制するものであり、肺、腎臓、肝臓、心臓、皮膚、骨髄、膵臓、眼等の多様な組織での線維症の治療と予防に用いることができ、特に、特発性肺線維症の治療剤、予防剤への応用が期待される。
グルコシルセラミド合成酵素阻害剤であるN-ブチルデオキシノジリマイシン(ミグルスタット、NB-DNJ)は、ゴーシェ病、ニーマンピック病C型の経口治療薬として認可されている。他の疾患の治療薬として既に使用されている薬剤は、副作用のおそれが小さく、安全性が高いことから、ミグルスタットを有効成分とする抗線維症剤は、臨床研究への応用が期待される。
図1に、このメカニズムの経路の模式図を示す。
「細胞培養」
ヒト肺線維芽細胞(HFL1)(ATCC CCL-153)は、10%ウシ胎児血清(FBS)、100μg/mLストレプトマイシン、66.7μg/mLペニシリンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いて、95%air-5%CO2、37℃の条件下で培養した。
6ウェルプレートにHFL1細胞を、1.0×105cells/wellとなるように播種し、10%FBSを含む2.0mLのDMEMで70%コンフルエントとなるよう培養した。0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むハンクス平衡塩溶液(HBSS)(4.2mM NaHCO3、137mM NaCl、5.36mM KCl、0.4mM MgSO4・7H2O、0.34mM Na2HPO4・12H2O、5.55mM グルコース、0.44mM KH2PO4、0.72mM CaCl2・H2O、pH=7.4)で洗浄し、0.1%BSAを含むDMEMで48時間無血清培養した。
その後、0.1%BSAを含むDMEMに培地交換し、各試薬で一定時間刺激を行った後(各阻害剤は刺激剤の30分前処置)、プロテアーゼ阻害剤として10μg/mLアプロチニン、10μg/mLロイペプチン、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含む100μL RIPAバッファー(150mM NaCl、50mM Tris-HCl、5mM EDTA、5mM NaF、10mM ピロリン酸ナトリウム二塩基性、1% Nonidet P-40、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、pH8.0)で氷上回収した。
その後、PVDF膜をECL液に浸し、画像撮影解析システム(Bio-Rad社製、装置名:ChemiDocMPシステム)にて蛍光を検出した。検出されたバンドの数値化は、画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いて行った。
3.5cmガラスボトムディッシュにHFL1細胞を、1.0×104cells/dishとなるように播種し、10%FBSを含む2.0mLのDMEMで70%コンフルエントとなるように培養した。0.1%BSAを含むHBSSで洗浄し、0.1%BSAを含むDMEMで48時間無血清培養した。
その後、0.1%BSAを含むDMEMに培地交換し、各試薬で一定時間刺激を行った後(各阻害剤は、刺激剤の30分前処置)、各サンプルを4%パラホルムアルデヒド(PFA)で、4℃、15分間固定した。その後、適宜透過化(0.3%サポニン、室温、1時間)ブロッキング(3%BSA、室温、1時間)、1次抗体を4℃、オーバーナイト、2次抗体を室温、1時間の条件で施した。Smad、リン酸化Smad免疫染色時は、その後、リボヌクレアーゼA(RNase、Worthington Biochemical)(200μg/mL、室温、30分間)、プロピジウムイオダイド(PI、Cayman Chemical)(20μg/mL、室温、30分間)を施して核を染色し、染色像を共焦点顕微鏡(オリンパス株式会社製、装置名:FV500)で観察した。
実験は、Chatterjee S, Pandey A. The Yin and Yang of lactosylceramide metabolism: implications in cell function. Biochim Biophys Acta. 2008 Mar; 1780 (3): 370-82.を参考に行った。
10cmディッシュにHFL1細胞を5×105cells/dish播種し、10%FBSを含む8mLのDMEMで70%コンフルエントとなるよう培養した。0.1%BSAを含むHBSSで洗浄し、0.1%BSAを含むDMEMで48時間無血清培養した。その後、0.1%BSAを含むDMEMに培地交換し、各試薬で一定時間刺激を行った後(各阻害剤は刺激剤の30分前処置)、細胞をリン酸緩衝生理食塩水1mL/dishで回収し遠心(4℃、3000rpm、10分間)、得られたペレットを反応バッファー(1mM MgCl2、1mM MnCl2、20mM カコジル酸ナトリウム三水和物、0.0067% Triton X-100、0.0125% NP-40)100μL/tubeで懸濁し、超音波で細胞を破砕した。
平均値±標準誤差は、異なる3回以上の実験から求めた。2群間の有意差検定は、スチューデントの両側t検定により行い、危険率5%未満のものを有意とみなした。
TGFβ1処置により、ラクトシルセラミド合成が増大するかについてin vitroで検討した。結果を図2に示す。
HFL1細胞に、TGFβ1(10ng/mL)を処置すると、刺激30分でラクトシルセラミド合成酵素の活性が増大した。また、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤であるPPMP(3μM)、NB-DNJ(100μM)を、TGFβ1刺激の30分前に処置することにより、ラクトシルセラミド合成酵素の活性が有意に抑制された。
TGFβ1が、ラクトシルセラミド合成活性の増大を引き起こすこと、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤によりその活性上昇が抑制されることが確かめられた。
TGFβ1によるラクトシルセラミド合成活性の増大が、組織線維化に与える影響について、線維化のマーカータンパクであるαSMAの発現量を元に検討した。結果を図3に示す。
HFL1細胞に、TGFβ1(10ng/mL)を24時間処置すると、αSMA発現量は有意に増大した。
グルコシルセラミド合成酵素阻害剤であるPPMP(3μM)、NB-DNJ(100μM)を、TGFβ1刺激の30分前に処置することにより、αSMAの発現量の増大が抑制された。さらにラクトシルセラミド(10μM)とPPMP、またはNB-DNJを併用することにより、αSMA発現量の抑制作用が回復した(図3A、B)。PPMPとラクトシルセラミドを併用した場合、TGFβ1単独処置に比べ95%ほどまで回復した。なお、ラクトシルセラミドに変えて、グルコシルセラミドを併用した場合も、αSMAの発現量は80%ほどまで回復した(図4)。
また、ラクトシルセラミドの前駆体であるグルコシルセラミド合成酵素(GCS)をノックダウンすることにより、TGFβ1刺激によるαSMA発現量の増大は有意に抑制された(図3C)。
以上の結果から、TGFβ1には、ラクトシルセラミドの合成増大を介したシグナル経路が存在し、このシグナル経路により組織線維化(αSMAの発現)が促進されることが確かめられた。また、このシグナル伝達は、細胞内ラクトシルセラミド量の増大を伴なうことが確かめられた。
Smad2/3は、転写因子であり、活性化TGF-β受容体によって直接リン酸化を受け、核内移行することで、線維化に関わる分子の転写活性を促すことが知られている(非特許文献4)。
ラクトシルセラミドのSmadシグナルに対する影響を検討した。結果を図5、6に示す。
一方、Smad2/3の局在を観察したところ、TGFβ1(10ng/mL)単独刺激後3時間でSmad2/3が核に集積した。しかし、PPMP(3μM)、NB-DNJ(100μM)を前処置することで、Smad2の核への集積が抑制された。さらに、ラクトシルセラミド(10μM)とPPMPを併用することにより、PPMPによる抑制作用が回復し、Smad2が核に集積した(図6A)。また、Smad3に対しても同様の作用効果を示した(図6B)。
以上の結果から、ラクトシルセラミドは、Smadのリン酸化には影響を及ぼさないこと、TGFβ1によるSmad2/3の核局在化を正に制御することが確認できた。
ラクトシルセラミドがどのような細胞内シグナルを介しSmadの局在を制御するか検討した。
細胞膜上のラクトシルセラミドが引き起こす細胞内シグナルの一つに、PKCα/εの活性化が知られている(Chatterjee S, Pandey A. The Yin and Yang of lactosylceramide metabolism: implications in cell function. Biochim Biophys Acta. 2008 Mar; 1780 (3): 370-82.)。PKCは、タンパク質をリン酸化する酵素であり、全身の組織で発現しており、遺伝子発現、細胞増殖、細胞死等、多様な生物活性に関与している。PKCは、活性化にジアシルグリセロールとCa2+とを必要とする「conventional PKC」、ジアシルグリセロールのみを必要とする「nobel PKC」、その他の機構により活性化する「atypical PKC」の三種に分類される。哺乳類のPKCは、α、βI、βII、γ、δ等、10種類のアイソフォームが知られている。
一般的に、PKCの活性化は、細胞膜への移行により観察されるため、PKCδの細胞膜への移行を指標としてラクトシルセラミドの関与を検討した。
細胞にTGFβ1(10ng/mL)を処置すると、2時間後にPKCδの細胞膜への移行が生じた。しかし、PPMP(3μM)やPKCδ阻害剤であるRottlerin(1μM)を前処置することにより、PKCδの細胞膜への移行が抑制された(図7A)。加えて、ラクトシルセラミド(10μM)の単独刺激においても、刺激後5分でPKCδの細胞膜への移行が観察され、PKCδの細胞膜上における局在は少なくとも30分持続した(図7B)。
以上の結果から、TGFβ1によりPKCδが活性化すること、この活性化にはラクトシルセラミドが介在することが確かめられた。
PKCδのTGFβ1シグナルに対する関与を検討した。結果を図8~11に示す。
まずαSMA発現に対するPKCδの関与を検討した。PMA(ホルボールミリスタートアセテート)をovernightで処置することにより、conventional PKC、novel PKCのダウンレギュレーションを引き起こすことが知られてい
る。
PMA(100nM)処置により、TGFβ1(10ng/mL)によるαSMAの発現量の増大が抑制された(図8)。
続いて、PKCδのSmad2に与える影響を検討したところ、TGFβ1(10ng/mL)によるSmad2の核局在化は、GF109203X(10μM)およびRottlerin(1μM)の処置で有意に抑制されたが、GO6976(OはOウムラウトである)(1μM)の処置では変化がなかった(図10)。
また、TGFβ1(10ng/mL)処置によるSmad2のリン酸化レベルについては、GF109203X(10μM)、Rottlerin(1μM)を処置しても変化が確認されなかった(図11)。
以上の結果より、ラクトシルセラミドによるSmad核局在化の制御にはPKCδが介在していることが確認できた。また、PKCδがSmad2のリン酸化に関与しないことが確かめられた。
PKCδがSmadを制御する機序として、ROCK経路を介しSmadの脱リン酸化酵素を負に制御することが報告されている(Lin X, Duan X, Liang YY, Su Y, Wrighton KH, Long J, Hu M, Davis CM, Wang J, Brunicardi FC, Shi Y, Chen YG, Meng A, Feng XH. PPM1A functions as a Smad phosphatase to terminate TGFbeta signaling. Cell. 2006 Jun 2; 125 (5): 915-28)。
本研究でも同様の経路が存在すると仮定し、ROCK阻害剤のY27632やROCK下流のアクチン重合を阻害するCytochalasin Bを用い、αSMA発現量を検討した。結果を図12、13に示す。
また、Y27632(20μM)、Cytochalasin B(2μM)のSmad2に対する影響を検討したところ、TGFβ1(10ng/mL)によるSmad2の核内移行は抑制されたが、リン酸化レベルには変化が見られなかった(図13)。
このことから、ROCKがSmad核局在化に介在していることが確認できた。また、ROCKがSmad2のリン酸化に関与しないことが確かめられた
「患者由来肺繊維芽細胞」
重篤な上葉限局型肺線維症(pleuroparenchymal fibroelastosis)のために肺移植を受けた19歳の男性患者の肺組織を手術後に得た。
肺組織を細断し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)ですすいだ後、1mg/mlコラゲナーゼI型(Worthington、Lakewood、NJ、USA)、0.5mg/mlディスパーゼ(Life Technologies)、2U/ml DNアーゼ(QIAGEN、Valencia、CA、USA)、0.1mg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリンで、37℃で15分間穏やかに振とうしながらインキュベートした。
DMEMで2回洗浄した後、80cm2培養フラスコに移し、37℃、5%CO2で培養した。
細胞の増殖は、培養培地を4日毎に交換しながら、毎週確認した。フラスコがコンフルエントに達した後、継代0の細胞として採取し、3回継代した細胞を患者由来肺繊維芽細胞として実験に使用した。
患者由来肺線維芽細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、100μg/mLストレプトマイシン、66.7μg/mLペニシリンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いて、95%air-5%CO2、37℃の条件下で培養した。
6ウェルプレートに患者由来肺線維芽細胞を1.0×105cells/wellとなるように播種し、10%FBSを含む2.0mLのDMEMで90-95%コンフルエントとなるよう培養した。その後、PPMP(0.5μM、1.0μM)、またはNB-DNJ(100μM、200μM)を加えて48時間培養し、プロテアーゼ阻害剤として10μg/mLアプロチニン、10μg/mLロイペプチン、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含む100μL RIPAバッファー(150mM NaCl、50mM Tris-HCl、5mM EDTA、5mM NaF、10mM ピロリン酸ナトリウム二塩基性、1% Nonidet P-40、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、pH8.0)で氷上回収した。
その後、PVDF膜をECL液に浸し、画像撮影解析システム(Bio-Rad社製、装置名:ChemiDocMPシステム)にて蛍光を検出した。検出されたバンドの数値化は、画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いて行った。結果を図14に示す。
「モデルマウスの作製」
エーテル・アベルチン麻酔下においてC57BL/6Jマウス(雄、8~12週齢)の気管支から3mg/kgブレオマイシン塩酸塩/生理食塩水(日本化薬株式会社)を50μL投与することにより、肺線維症モデルマウスを作製した。ブレオマイシン塩酸塩を処置しない群にはコントロールとして生理食塩水を50μL同様に投与した。
ブレオマイシン投与後7、8、9日後にエーテル・アベルチン麻酔下のマウスの気管内に20mg/kgのNB-DNJ/生理食塩水を50μL経気管投与した。NB-DNJを投与しないマウスにはコントロールとして生理食塩水を50μL経気管投与した。
ブレオマイシン投与後7~13日にかけて、600mg/kgのNB-DNJ/生理食塩水を0.2mL連日経口投与した(1日1回)。NB-DNJを投与しないマウスにはコントロールとして生理食塩水を0.2mL経口投与した。
ブレオマイシン投与後14日目に、エーテル深麻酔下において、マウスを開胸し、注射針を用いてPBSを左心室から全身灌流したのち、同様に右心室から肺の脱血を行い、肺を摘出した。
経気管投与群のマウスについて、肺をフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含む250μL RIPAバッファー(150mM NaCl、50mM Tris-HCl、5mM EDTA、5mM NaF、10mM ピロリン酸ナトリウム二塩基性、1% Nonidet P-40、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、pH8.0)中で細断した。その後、ホモジナイザーによりさらに組織を細かくし、15000rpm、4℃、30min遠心した。
その後、PVDF膜をECL液に浸し、画像撮影解析システム(Bio-Rad社製、装置名:ChemiDocMPシステム)にて蛍光を検出した。検出されたバンドの数値化は、画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いて行った。結果を図15に示す。
肺を4%パラホルムアルデヒドに浸し、4℃で一晩固定した。その後、30%スクロース/PBS溶液中で4℃で2日間脱水した。組織を取り出し、OCTコンパウンドを用いて包埋し、-80℃で保存した。クライオスタットを用いて5μmの厚さの切片を作製し、切片をAPSコートスライドガラスに貼付した。十分に乾燥させた後、スライドガラスはアッセイに用いるまで4℃で保存した。
切片を貼付したスライドガラスをPBSに10min浸すことで、OCTコンパウンドを洗い流した。2g/L マイヤー・ヘマトキシリン溶液に30min浸漬したのち、水道水で5min流水水洗することで色出しを行った。その後、0.2% エオシンY/エタノール溶液に30min浸漬した。染色の分別の為、80%エタノール、90%エタノール、100%エタノール、50%エタノール/50%キシレン、100%キシレンで5回ずつ脱色を行い、Eukit液を用いてカバーガラスで封入した。なお、ヘマトキシリン・エオジン染色は、組織の形態を観察する方法であり、ヘマトキシリンは細胞の核を染色し、エオジンは細胞質を染色する。経気管投与群について、染色した肺切片の顕微鏡画像とAshcroft scoreを、図16に示す。また、経口投与群について、染色した肺切片の顕微鏡画像を、図17に示す。
Claims (3)
- グルコシルセラミド合成酵素阻害剤、ラクトシルセラミド合成酵素阻害剤のいずれか、または両方を有効成分とし、
前記グルコシルセラミド合成酵素阻害剤が、1-フェニル-2-ヘキサデカノイルアミノ-3-モルフォリノ-1-プロパノール(PPMP)、1-フェニル-2-デカノイルアミノ-3-モルフォリノ-1-プロパノール(PDMP)、N-ブチルデオキシノジリマイシン(ミグルスタット、NB-DNJ)、N-ブチルデオキシガラクトノジリマイシン(NB-DGJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)、N-[(lR,2R)-1-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-1-ヒドロキシ-3-(ピロリジン-1-イル)プロパン-2-イル]オクタンアミドヘミ-(2R,3R)-酒石酸塩(エリグルスタット酒石酸塩)から選択される1以上であり、
前記ラクトシルセラミド合成酵素阻害剤が、N-ドデシルデオキシノジリマイシン、ノジリマイシン亜硫酸付加物、ノジリマイシン亜硫酸付加物疎水性誘導体及びこれらの塩、1-フェニル-2-ヘキサデカノイルアミノ-3-モルフォリノ-1-プロパノール(PPMP)、N-ブチルデオキシノジリマイシン(ミグルスタット、NB-DNJ)から選択される1以上であり、
前記有効成分が、リン酸化Smadの核内移行を阻害することにより突発性肺線維症を治療または予防することを特徴とする抗線維症剤(但し、前記線維症として、心肥大に附随する線維症と、高血糖に由来する線維症を除く)。 - 前記有効成分が、1-フェニル-2-ヘキサデカノイルアミノ-3-モルフォリノ-1-プロパノール(PPMP)、N-ブチルデオキシガラクトノジリマイシン(NB-DGJ)のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の抗線維症剤。
- 前記リン酸化Smadが、リン酸化Smad2及び/又はリン酸化Smad3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗線維症剤。
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Am J Physiol Renal Physiol,2015年,309,F204-F215 |
Biochemical and Biophysical Research Communications,2015年,465,159-164 |
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JP2018012691A (ja) | 2018-01-25 |
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