以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1から図3は、本発明の一実施形態に係る記録装置の主要な構成および重ね連送の動作を模式的に示す側断面図である。まず、図1を参照して、本実施形態の記録装置の概略構成について説明する。
図1のST1において、1は記録シートである。複数枚の記録シート1は給送トレイ11(積載部)に積載されている。2は給送トレイ11に積載された最上位の記録シート1に当接してこの記録シートをピックアップするピックアップローラである。3はピックアップローラ2によってピックアップされた記録シート1をシート搬送方向の下流側へ給送するための給送ローラである。4は給送ローラ3へ付勢され給送ローラ3とともに記録シート1を挟持して給送する給送従動ローラである。
5は給送ローラ3及び給送従動ローラ4によって給送された記録シート1を記録ヘッド7と対向する位置へ搬送する搬送ローラである。6は搬送ローラ5へ付勢され搬送ローラ5とともに記録シートを挟持して搬送するピンチローラである。
7は搬送ローラ5及びピンチローラ6によって搬送された記録シート1に対して記録を行う記録ヘッドである。本実施形態では記録ヘッドからインクを吐出して記録シート1に記録を行うインクジェット記録ヘッドであるとして説明する。8は記録ヘッド7と対向する位置で記録シート1の裏面を支持するプラテンである。10は記録ヘッド7を搭載してシート搬送方向と交差する方向へ移動するキャリッジである。
9は記録ヘッド7によって記録が行われた記録シートを装置外に排出するための排出ローラである。12、13は記録ヘッド7によって記録が行われた記録シートの記録面と接触して回転する拍車である。ここで下流側にある拍車13は排出ローラ9へ付勢されており、上流側にある拍車12は対向する位置に排出ローラ9が配されていない。拍車12は記録シート1の浮き上がりを防止するためのものであり押え拍車とも呼ぶ。
給送ローラ3及び給送従動ローラ4で形成される給送ニップ部と、搬送ローラ5及びピンチローラ6で形成される搬送ニップ部との間では、記録シート1は搬送ガイド15及びフラッパ20によって案内される。フラッパ20は給送ローラ3により搬送される記録シート1の反力によって回動可能である。16は記録シート1の先端及び後端を検知するためのシート検知センサである。シート検知センサ16はシート搬送方向において給送ローラ3の下流に設けられている。17は後続シートの先端を先行シートの後端に重ねるためのシート押えレバーである。シート押えレバー17は図1のST1の状態を中立点として、第1のレバー部17Aが回転軸17bの回りに図中反時計回り方向にバネで付勢され、第1のレバー部17Aの先端部に第2のレバー部17B、つまり記録シート1に接触する第2のレバー部17Bの先端部17cが回転軸17aの回りに図中時計回りにバネで付勢されている。22は記録シート1の先端部及び後端部を検知するためのシート検知センサである。シート検知センサ22は、搬送ローラ5及びピンチローラ6で形成される搬送ニップ部への記録シート1の先端部の突入タイミング、及び記録動作中の記録シート1の後端部の抜けるタイミングを検出する。21は記録シート1の表裏を反転させるための反転機構を構成する反転ガイド部材である。反転ガイド部材21は、搬送ローラ5によって逆送された記録シート1を給送ローラ3及び給送従動ローラ4の給送ニップ部へ案内する。
図4はピックアップローラ2の構成を説明する図である。前述のようにピックアップローラ2は給送トレイ11に積載されている最上位の記録シートに当接して当該記録シートをピックアップする。19は後述する給送モータの駆動をピックアップローラ2に伝達するための駆動軸である。記録シートをピックアップするときに、駆動軸19及びピックアップローラ2は図中矢印A方向に回転する。駆動軸19には突起19aが設けられている。ピックアップローラ2には突起19aが嵌まり込む凹部2cが形成されている。図4(a)に示すように、突起19aがピックアップローラ2の凹部2cの第1の面2aに当接している場合は、駆動軸19の駆動がピックアップローラ2に伝達され、駆動軸19を駆動するとピックアップローラ2も回転される。一方、図4(b)に示すように、突起19aがピックアップローラ2の凹部2cの第2の面2bに当接している場合は、駆動軸19の駆動がピックアップローラ2に伝達されず、駆動軸19を駆動してもピックアップローラ2は回転されない。突起19aが第1の面2a及び第2の面2bのいずれにも当接せず、第1の面2aと第2の面2bの間にある場合も、駆動軸19を駆動してもピックアップローラ2は回転されない。
図5は、本実施形態の記録装置のブロック図である。201は、各部動作やデータの処理などを制御するMPUである。MPU201は、後述するように、先行する記録シートの後端と後続シートの先端とが重なるように記録シートの搬送を制御可能な搬送制御手段としても機能する。202は、MPU201によって実行されるプログラムやデータを格納するROMである。203は、MPU201によって実行される処理データ及びホストコンピュータ214から受信したデータを一時的に記憶するRAMである。
記録ヘッド7は記録ヘッドドライバ207によって制御される。キャリッジ10を駆動するキャリッジモータ204は、キャリッジモータドライバ208によって制御される。搬送ローラ5及び排出ローラ9は搬送モータ205によって駆動される。搬送モータ205は搬送モータドライバ209によって制御される。ピックアップローラ2及び給送ローラ3は給送モータ206によって駆動される。給送モータ206は給送モータドライバ210によって制御される。
ホストコンピュータ214には、ユーザによって記録動作の実行が命令された場合に、記録画像や記録画像品位等の記録情報を取りまとめて記録装置と通信するためのプリンタドライバ2141が設けられている。MPU201は、I/F部213を介してホストコンピュータ214と記録画像等のやり取りを実行する。
図1のST1から図3のST9を参照して、片面(表面)のみの連続印刷における重ね連送の動作について時系列に説明する。ホストコンピュータ214からI/F部213を介して記録データが送信されると、MPU201で処理された後、RAM203に展開される。MPU201が展開されたデータに基づいて記録動作を開始する。
図1において、ST1では、最初に、給送モータドライバ210によって給送モータ206が低速駆動される。これにより、ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転される。ピックアップローラ2が回転すると、給送トレイ11に積載された最上位の記録シート(先行シート1-A)がピックアップされる。ピックアップローラ2によってピックアップされた先行シート1-Aは、ピックアップローラ2と同方向に回転している給送ローラ3によって搬送される。給送ローラ3も給送モータ206によって駆動される。本実施形態は、ピックアップローラ2及び給送ローラ3を備える構成で説明する。しかしながら、積載部に積載された記録シートを給送する給送ローラのみ備える構成であってもよい。
給送ローラ3の下流側に設けられたシート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端が検知されると、給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。
ST2では、給送ローラ3を回転し続けることによって先行シート1-Aの先端部は、フラッパ20をその自重に抗して押し上げ、さらにバネの付勢力に抗してシート押えレバー17を回転軸17bの回りに時計回り方向に回転させる。さらに給送ローラ3を回転し続けると、先行シート1-Aの先端は搬送ローラ5とピンチローラ6で形成される搬送ニップ部に突き当たる。このとき搬送ローラ5は停止状態である。先行シート1-Aの先端が搬送ニップ部に突き当たった後も給送ローラ3を所定量回転させることによって、先行シート1-Aの先端が搬送ニップ部に突き当たった状態で整列し斜行が矯正される。斜行矯正動作をレジ取り動作ともいう。
ST3では、先行シート1-Aの斜行矯正動作が終了すると、搬送モータ205が駆動されることによって搬送ローラ5が回転を開始する。搬送ローラ5は15inch/secでシートを搬送する。先行シート1-Aは記録ヘッド7と対向する位置まで頭出しされた後に、記録データに基づいて記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作が行われる。なお、頭出し動作は、記録シートの先端が搬送ニップ部に突き当てられることにより搬送ローラ5の位置に一旦位置決めされ、その後搬送ローラ5の位置を基準として搬送ローラ5の回転量を制御することにより行われる。
本実施形態の記録装置は、記録ヘッド7がキャリッジ10に搭載されているシリアルタイプの記録装置であり、搬送ローラ5によって記録シートを所定量ずつ間欠搬送する搬送動作と、搬送ローラ5が停止しているときに記録ヘッド7を搭載したキャリッジ10を移動させながら記録ヘッド7からインクを吐出する画像形成動作と、を繰り返すことによって記録シートに対する記録動作が行われる。
先行シート1-Aが頭出しされると、給送モータ206を低速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。搬送ローラ5によって記録シートを所定量ずつ間欠搬送しているときに、給送モータ206によって給送ローラ3も間欠駆動される。すなわち搬送ローラ5が回転しているときは給送ローラ3も回転し、搬送ローラ5が停止しているときは給送ローラ3も停止している。搬送ローラ5の回転速度に対して、給送ローラ3の回転速度は小さい。そのため、搬送ローラ5と給送ローラ3の間でシートは張った状態になる。また、給送ローラ3は搬送ローラ5によって搬送される記録シートによって連れ回りさせられる。
給送モータ206を間欠的に駆動するため、駆動軸19も駆動される。前述のように、ピックアップローラ2の回転速度は搬送ローラ5の回転速度よりも小さい。そのため、ピックアップローラ2は搬送ローラ5で搬送される記録シートによって連れ回りさせられる。すなわち、ピックアップローラ2は駆動軸19に対して先回りした状態になっている。具体的には、駆動軸19の突起19aは第1の面2aから離間し第2の面2bに当接した状態になっている。したがって、先行シート1-Aの後端がピックアップローラ2を通過しても2枚目の記録シート(後続シート1-B)はすぐにピックアップされない。駆動軸19が所定時間駆動されると、突起19aが第1の面2aと当接するようになり、ピックアップローラ2が回転を開始する。
図2において、ST4では、ピックアップローラ2が回転を開始し、後続シート1-Bをピックアップした状態を示す。シート検知センサ16は、センサの応答性等の要因により記録シートの端部を検知するためにはシート間に所定以上の間隔が必要になる。すなわち、シート検知センサ16によって先行シート1-Aの後端を検知した後、後続シート1-Bの先端を検知するまでに所定の時間間隔をもたせるために、先行シート1-Aの後端と後続シート1-Bの先端との間を所定距離離す必要がある。そのために、ピックアップローラ2の凹部2cの角度範囲θは約70度に設定されている。
ST5では、ピックアップローラ2によってピックアップされた後続シート1-Bは、給送ローラ3によって搬送される。このときに、先行シート1-Aは、記録データに基づいて記録ヘッド7によって画像形成動作が行われている。シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知されると、給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。
ST6では、先行シート1-Aの後端部は、図2のST5に示すようにシート押えレバー17の第2のレバー部17Bの先端部17cによって下方に押し下げられている。記録ヘッド7による記録動作によって先行シート1-Aが下流に移動する速度に対して、後続シート1-Bを高速に移動させることによって先行シート1-Aの後端上に後続シート1-Bの先端が重なった状態を形成することができる(図2のST6)。先行シート1-Aは記録データに基づいて記録動作が行われているため、先行シート1-Aは搬送ローラ5によって間欠搬送される。一方、後続シート1-Bはシート検知センサ16によって先端部が検知された後、給送ローラ3を20inch/secで連続的に回転させることによって先行シート1-Aに追いつくことができる。
図3において、ST7では、先行シート1-Aの後端上に後続シート1-Bの先端が重なった重なり状態を形成した後、後続シート1-Bは先端が搬送ニップの上流の所定位置で停止するまで給送ローラ3によって搬送される。後続シート1-Bの先端の位置は、後続シート1-Bの先端がシート検知センサ16によって検知されてからの給送ローラ3の回転量から算出され、この算出結果に基づいて制御される。このとき、先行シート1-Aは、記録データに基づいて記録ヘッド7によって画像形成動作が行われている。
ST8では、先行シート1-Aの最終行の画像形成動作(インク吐出動作)を行うために搬送ローラ5が停止しているときに、給送ローラ3を駆動することによって後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行う。
ST9では、先行シート1-Aの最終行の画像形成動作が終了すると、搬送ローラ5を所定量回転させることによって先行シート1-Aの上に後続シート1-Bが重なった状態を維持して後続シート1-Bの頭出しを行うことができる。後続シート1-Bには、記録データに基づいて記録ヘッド7によって記録動作が行われる。後続シート1-Bが記録動作のために間欠搬送されると、先行シート1-Aも間欠搬送され、やがて先行シート1-Aは排出ローラ9によって記録装置外に排出される。
後続シート1-Bが頭出しされると、給送モータ206を低速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。後続シート1-Bの後にも記録データがある場合は、図2のST4に戻り3枚目のピックアップ動作が行われる。
図6は、片面のみの連続印刷における重ね連送給送シーケンスを示している。
ステップS1で、I/F部213を介してホストコンピュータ214から記録データが送信されると記録動作を開始する。ステップS2では、先行シート1-Aの給送動作を開始する。具体的には、給送モータ206を低速駆動する。ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転する。ピックアップローラ2によって先行シート1-Aをピックアップし、給送ローラ3によって先行シート1-Aを記録ヘッド7に向けて給送する。
ステップS3では、シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端部が検知されるのを待ち、シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端部が検知されると、ステップS4で給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。また、シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端部が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御することによって、ステップS5で先行シート1-Aの先端部を搬送ニップ部に突き当てて先行シート1-Aの斜行矯正動作を行う。
ステップS6では、記録データに基づいて先行シート1-Aを頭出しする。すなわち、搬送ローラ5の回転量を制御することによって、記録データに基づいた搬送ローラ5の位置を基準とした記録開始位置まで先行シート1-Aを搬送する。ステップS7では、給送モータ206を低速駆動に切り替える。ステップS8では、先行シート1-Aに対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。具体的には、搬送ローラ5によって先行シート1-Aを間欠搬送する搬送動作と、キャリッジ10を移動させて記録ヘッド7からインクを吐出する画像形成動作(インク吐出動作)とを繰り返すことによって、先行シート1-Aに対する記録動作を行う。搬送ローラ5によって先行シート1-Aを間欠搬送する動作と同期して、給送モータ206を間欠的に低速駆動する。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで間欠的に回転する。
ステップS9では次ページの記録データがあるか判定し、次ページの記録データが無い場合はステップS27に進む。ステップS27では、先行シート1-Aに対する記録動作が完了したら、ステップS28で先行シート1-Aを排出し記録動作を終了する。
一方、ステップS9で次ページの記録データがある場合は、ステップS10で後続シート1-Bの給送動作を開始する。具体的には、ピックアップローラ2によって後続シート1-Bをピックアップし、給送ローラ3によって後続シート1-Bを記録ヘッド7に向けて給送する。ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転する。前述のように、駆動軸19の突起19aに対して、ピックアップローラ2の凹部2cが大きく設けられているため、後続シート1-Bは先行シート1-Aの後端と所定の間隔をもった状態で給送される。
ステップS11では、シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端部が検知されるのを待ち、シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知されると、ステップS12で給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端部が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御することによって、ステップS13では、後続シート1-Bの先端が搬送ニップ部の所定量手前の位置となるように後続シート1-Bを搬送する。先行シート1-Aは記録データに基づいて間欠搬送される。後続シート1-Bは給送モータ206を連続的に高速駆動することによって、先行シート1-Aの後端上に後続シート1-Bの先端が重なる重ね状態が形成される。
ステップS14では、後続シート1-Bの先端が規定位置(後述する図8のST5のP3)まで到達しているかを判定し、到達していない場合、重ね状態を解消して後続シート1-Bを頭出しする。具体的には、ステップS29で先行シート1-Aの最終行の画像形成動作が終了すると、ステップS30で先行シート1-Aの排出動作を行う。この間、給送モータ206は駆動されないため、後続シート1-Bはその先端部が搬送ニップ部の所定量手前の位置のまま停止している。先行シート1-Aは排出されるため、重ね状態は解消する。ステップS31では、後続シート1-Bの先端部を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行い、ステップS35で後続シート1-Bの頭出しを行う。
一方、ステップS14で後続シート1-Bが規定位置まで到達している場合は、ステップS15で重ね量の算出を行う。以降、重ね量算出処理で算出する重ね削減量の有無によって処理が異なる。ステップS16では、重ね削減量の有無の判定を行い、重ね削減量がない場合は先行シート1-Aの最終行の画像形成動作中に後続シート1-Bの斜行矯正動作を行うことが可能であるため、ステップS32に進む。ステップS32では、先行シート1-Aの画像形成動作が開始されるのを待つ。ステップS33では、重ね状態を維持したまま後続シート1-Bの先端部を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行う。ステップS34では、先行シート1-Aの最終行の画像形成動作が終了したかを判定し、終了した場合は、ステップS35で重ね状態を維持したまま後続シート1-Bの頭出しを行う。
一方、ステップS16で重ね削減量がある場合は、ステップS17で先行シート1-Aの最終行画像形成動作の終了を待つ。先行シート1-Aの最終行画像形成動作が終了するとステップS18へ進み、後述する重ね量となるよう、搬送ローラ5により先行シート1-Aを所定位置まで搬送する。ステップS19では、後続シート1-Bの先端部を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行った後、ステップS35で後続シート1-Bの頭出しを行う。
ステップS36で給送モータ206を低速駆動に切り替える。ステップS37で後続シート1-Bに対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。具体的には、搬送ローラ5によって後続シート1-Bを間欠搬送する搬送動作と、キャリッジ10を移動させて記録ヘッド7からインクを吐出する画像形成動作(インク吐出動作)とを繰り返すことによって、後続シート1-Bに対する記録動作を行う。搬送ローラ5によって後続シート1-Bを間欠搬送する動作と同期して、給送モータ206を間欠的に低速駆動する。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで間欠的に回転する。
ステップS38では、次ページの記録データがあるかを判定し、次ページの記録データが有る場合はステップS10に戻り、次ページの記録データが無い場合はステップS39で後続シート1-Bの画像形成動作が完了するのを待つ。画像形成動作が完了すると、ステップS40で後続シート1-Bの排出動作を行い、ステップS41で記録動作を終了する。
図7及び図8は、本実施形態における先行シートに後続シートを重ねる動作を説明する図である。図6のステップS12及びS13で説明した、先行シートの後端上に後続シートの先端を重ねる重ね状態を形成する動作について説明する。
図7及び図8は、給送ローラ3と給送ピンチローラ4で形成される給送ニップ部と、搬送ローラ5とピンチローラ6で形成される搬送ニップ部の間の拡大図である。
搬送ローラ5及び給送ローラ3により記録シートが搬送される過程を、3つの状態として順に説明する。
まず、後続シートが先行シートを追いかける動作を行う第1の状態を図7のST1、ST2を参照して説明する。次に、後続シートを先行シートに重ねる動作を行う第2の状態を図8のST3、ST4を参照して説明する。そして、重ね状態を維持して後続シートの斜行矯正動作を行うか否かを判定する第3の状態を図8のST5を参照して説明する。
図7において、ST1では、給送ローラ3を制御し後続シート1-Bを搬送し、シート検知センサ16で後続シート1-Bの先端部を検知する。シート検知センサ16から後続シート1-Bを先行シート1-Aの上に重ねることが可能となる位置P1までを第1の区間A1と定義する。第1の区間A1において、後続シート1-Bの先端が先行シート1-Aの後端を追いかける動作を行う。P1は、機構の構成により決定されるものである。
第1の状態では、第1の区間A1において、追いかける動作を停止する場合が存在する。図7のST2のように、後続シート1-Bの先端が、P1より手前で先行シート1-Aの後端を追い越してしまう場合は、後続シートを先行シートに重ねる動作を行わない。
図8において、ST3では、前述のP1からシート押えレバー17が設けられた位置P2までを第2の区間A2と定義する。第2の区間A2において、後続シート1-Bを先行シート1-Aに重ねる動作を行う。
第2の状態では、第2の区間A2において、後続シートを先行シートに重ねる動作を停止する場合が存在する。図8のST4のように、第2の区間A2内で後続シート1-Bの先端が先行シート1-Aの後端に追いつくことができない場合は、後続シートに先行シートを重ねる動作ができない。
ST5では、前述のP2からP3までを第3の区間A3と定義する。P3は図6のステップS13で後続シートが停止したときの先端の位置である。後続シート1-Bを先行シート1-Aに重ねた状態で、後続シート1-Bの先端がP3に到達するまで搬送する。第3の区間A3において、重ね状態を維持したまま後続シート1-Bを搬送ニップ部に突き当てて頭出しをするか否かを判断する。すなわち、重ね状態を維持して斜行矯正動作を行い頭出しをするか、重ね状態を解除して斜行矯正動作を行い頭出しをするかの判定を行う。
次に、図9から図15を参照して、先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を決定する処理について説明する。
図9は図6のステップS15における重ね量算出処理、図10および図11は図9のステップS908における後続シート1-Bに依存する重ね削減量Y(B)を算出する処理を示している。また、図12は記録シートの重ね領域を示す模式図、図13は先行シートに重ねた後続シートのコックリングの様子を示す模式図、図14は後続シート1-Bにおける記録濃度検出領域分割の説明図である。
ホストコンピュータ214より送信された先行シート1-Aの記録情報から先行シート1-Aの用紙サイズを取得し、先行シート1-Aの搬送方向の長さLp(A)を取得する(ステップS901)。さらに記録情報から先行シート1-Aに記録するデータの書き出し位置Lu(A)、及びデータ長Ld(A)を取得する(ステップS902、S903)。図12に示すように、先行シート1-Aの長さLp(A)、書き出し位置Lu(A)、及び記録データ長Ld(A)から先行シート1-Aの後端余白Lmax(A)が算出できる。この後端余白Lmax(A)から給送ローラ3および搬送ローラ5の重ね精度を考慮した所定の重ねマージンX(0)を減算したものを先行シート1-Aに依存する重ね量(先行シート起因重ね量)Lb(A)とする(ステップS904)。ここでは説明の容易化の観点から、先行シート1-Aの記録開始時に記録データ長Ld(A)を取得するとしたが、先行シート1-Aの記録開始時に不明でも、記録動作中に記録データ長Ld(A)を取得しても良い。
一方、搬送ガイド15によって挟まれた搬送路及び搬送ローラ5と給送ローラ3の配置により、機構上、重ねられる距離の上限LMがある。そのため、記録データから算出された先行シート起因重ね量Lb(A)と重ねられる距離の上限LMとを比較し、上限LMの方が小さい場合は先行シート起因重ね量Lb(A)をLMの値に置き換える(ステップS905、S906)。
次に、後続シート1-Bに依存する重ね削減量(後続シート起因重ね削減量)Y(B)の算出処理を行う。
ステップS907では、ホストコンピュータ214から送信された後続シート1-Bの記録情報から後続シート1-Bに記録するデータの書き出し位置Lu(B)を取得する。
ステップS908では、後続シート起因削減量Y(B)を算出する。先行シート1-A上に後続シート1-Bを重ねて記録動作(重ね印字)を行う場合、図13に示すように、後続シート1-Bはプラテンリブ8aの直上ではなく、余白領域とプラテンリブ8aの間に先行シート1-Aが存在している。後続シート1-Bは、プラテンリブ8aではなく先行シート1-Aによってシート裏面が拘束されているため、後続シート先端の記録濃度が高い場合には、コックリングによる変形高さ分、後続シート1-Bが記録ヘッド7に近づくこととなる。そのため、コックリングによる変形高さが大きく、後続シート1-Bと記録ヘッド7が擦れる可能性がある場合、重ね印字を避けるよう、後続シート起因重ね削減量Y(B)を設定する必要がある。
ここで、図9のステップS908における後続シート起因重ね削減量Y(B)を算出する処理の詳細について、図10を参照して説明する。
ステップS1001では、すでに算出されている先行シート起因重ね量Lb(A)と、後続シート1-Bに記録するデータの書き出し位置Lu(B)から、後続シート1-Bの記録濃度検出領域LDA(B)を求める。
ステップS1002では、記録濃度検出処理の容易化のため、記録濃度検出領域LDA(B)が、単位領域の搬送方向の距離L0のm倍(mは整数)となるように切り上げ処理を行う。ここではm=3であるとして説明する。図14に示すように、記録濃度検出領域をa(1)、a(2)、a(3)に3分割する(ステップS1003)。そして、記録領域a(i)の記録濃度da(i)を算出する(ステップS1004)。
記録濃度da(i)は、所定の記録濃度検出領域内において、単位領域内のインク吐出ドットカウント数により求める。インクの吐出量はノズル径によって異なるが、カラー(シアン、マゼンタ、イエロー)の大ドットを基準(=1)とし、カラーの小ドットは基準×1/8、ブラックは基準×2と定義する。本実施形態では、600dpiを1ピクセルとし、1ピクセルあたりのインク量が基準×2のときの記録濃度を100%と定義する。図14に示すように、本実施形態では、単位領域の搬送方向(副走査方向)の距離をL0、搬送方向に直交する記録ヘッド7の走査方向(主走査方向)の距離をW0とし、L0は256ピクセル、W0は640ピクセルとする。この単位領域における、1ピクセル×1ピクセルのブロック当たりの平均インク量から記録濃度Dを算出する。
図11は、図10のステップS1004における記録濃度検出処理の詳細を示している。まず、記録濃度の最大値Dmaxを初期値に設定し(S1101)、記録濃度検出領域a(1)において、検出した単位領域での記録濃度Dを順次取得する(ステップS1102)。次に、すでに取得した記録濃度Dの最大値Dmaxと比較し(ステップS1103)、最大値Dmaxを更新する(ステップS1104)。そして、ステップS1102~ステップS1104の処理を検出領域ごとに繰り返し(ステップS1105)、最終的に残った記録濃度Dmaxを記録濃度検出領域a(1)における記録濃度da(1)とする(ステップS1106)。領域a(2)、a(3)においても同様に、それぞれ記録濃度da(2)、da(3)の検出を行う。
また、所定の記録濃度のしきい値をd0とし、しきい値d0と記録濃度da(1)~da(3)とを比較する。図15は記録濃度のしきい値d0を示したものであり、画像形成における印刷パス数(記録ヘッドの走査回数)が増加するほどしきい値d0が減少するように設定されている。これは印刷パス数により記録時間が異なり、記録時間が長くなるほど記録シートのコックリングによる変形量が大きくなるためである。
図10に戻り、先端側の領域a(1)から比較していき、しきい値d0を超えた場合にはその領域から重ね不可とする。まず、領域a(1)が重ね可か否かを判定するため、記録濃度da(1)としきい値d0とを比較する(ステップS1005)。記録濃度da(1)がしきい値d0を超えている場合は、領域a(1)は重ね不可となり、後続シート起因重ね削減量Y(B)を
Y(B)=m・L0=3×L0
と設定し(ステップS1006)、本処理を終了する。
一方、ステップS1005で記録濃度da(1)がしきい値d0以下の場合は領域a(1)が重ね可となり、領域a(2)の重ね可否判定処理へ移行する。ステップS1007では、領域a(1)と同様に領域a(2)の重ね可否判定を行い、重ね不可ならば後続シート起因重ね削減量Y(B)を算出し(ステップS1008)、処理を終了する。重ね可の場合は、領域a(3)の重ね可否判定へ移行する。ステップS1009では、同様に領域a(3)の重ね可否判定を行い、重ね不可ならば後続シート起因重ね削減量Y(B)を算出し(ステップS1010)、処理を終了する。重ね可の場合は、判定領域の全てが重ね可であるため、後続シート起因重ね削減量Y(B)をゼロに設定し(ステップS1011)、処理を終了する。
以上のようにして求めた後続シート起因重ね削減量Y(B)と、すでに算出されている先行シート起因重ね量Lb(A)から、最終的な重ね量Lt(B)を算出する(図9のステップS909)。
また、図9の重ね量Lt(B)を算出する処理では、図10および図11で説明したように後続シート起因削減量Y(B)を記録濃度da(1)~da(3)を元に算出したが、各記録濃度da(1)~da(3)と、その他の記録条件(印刷パス数あるいは記録にかかる時間)を元に後続シート1-Bの変形量を推定し、推定された変形量を元にY(B)を求めても良い。
また、上述の重ね量Lt(B)を算出する処理では画像形成における印刷パス数に応じて記録濃度のしきい値を変更したが、印刷パス数が多い場合は、画質優先モードであるため、重ね動作を実施しないようにしても良い。
また、後続シート起因重ね削減量Y(B)がゼロの場合、結果的に先行シート1-Aの所定の重ねマージンX(0)を除く後端余白量を重ねることになるが、常に一定量の重ねマージンを考慮して後端余白量を重ねる場合は、本発明に包含されないものとする。
また、本実施形態では先行シートの後端と後続シートの先端において記録を行わない領域を余白と定義しているが、記録可能範囲内の余白を記録データがない領域として定義した場合も、本発明に含まれるものとする。
上述した実施形態によれば、先行シートに後続シートを重ねて搬送して高濃度印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[実施形態2]次に、図16から図23を参照して、実施形態2による先行シート起因重ね量Lb(A)を決定する処理について説明する。
なお、本実施形態の装置構成は、実施形態1と同一であるため説明は省略する。
図16は、本実施形態による先行シート起因重ね量Lb(A)を算出する処理を示している。
図9のステップS901~S903と同様に、ホストコンピュータ214から送信された先行シート1-Aの記録情報から先行シート1-Aの長さLp(A)、記録データの書き出し位置Lu(A)、及びデータ長Ld(A)を取得する(ステップS1601~S1603)。
ステップS1604では、取得した先行シート1-Aの長さLp(A)、書き出し位置Lu(A)、及びデータ長Ld(A)から先行シート1-Aの後端余白を算出し、最大重ね量Lmax(A)とする。
ステップS1605では、先行シート1-Aに依存する重ね削減量(先行シート起因重ね削減量)X(A)を算出する。先行シート1-A後端の記録濃度が高い場合、図17に示すように余白領域も含めた後端近傍にコックリングによる変形が生じ、図18に示すように変形した余白領域はプラテンリブ8aからやや浮く可能性がある。この場合、先行シート1-A上に後続シート1-Bを重ねると、重ねない場合の後続シート1-Bの姿勢1-B-aと比較して後続シート1-Bが記録ヘッド7に近づくことになる。この先行シート1-Aの後端近傍の変形の影響を受けないよう、先行シート起因重ね削減量X(A)を設定する必要がある。
図19は、図16のステップS1605における先行シート起因重ね削減量X(A)を算出する処理の詳細を示している。
先行シート起因重ね削減量X(A)は、図20に示すように、先行シート1-Aの記録濃度に応じて設定される、先行シート1-Aの記録データの最終位置から次の後続シート1-Bのシート先端位置までに設けられる余白距離である。最終的な、先行シート1-Aの記録データの最終位置から次の後続シート1-Bのシート先端位置までに設けられる余白距離に、実施形態1で述べた後続シート起因重ね削減量Y(B)を加算しても良い。本実施形態では、所定の記録濃度検出領域の記録濃度Dに応じて必要な先行シート起因重ね削減量X(A)を決定するものである。
記録濃度Dは所定の記録濃度検出領域内において、単位領域内のインク吐出ドットカウント数により求められる。図21に示すように、本実施形態では、単位領域の搬送方向の距離をL0、主走査方向の距離をW0とし、600dpiを1ピクセルとして、L0は256ピクセル、W0は640ピクセルとする。また、記録濃度検出領域は先行シート後端から搬送方向に1028ピクセル以内の領域とされる。この記録濃度検出領域内で、1ピクセル×1ピクセルのブロック当たりの平均インク量から記録濃度Dを算出する。
図19において、記録濃度の最大値Dmaxを初期値に設定し(S1901)、上述のように求めた単位領域での記録濃度Dを順次取得し(ステップS1902)、すでに求めた記録濃度Dの最大値Dmaxとを比較し(ステップS1903)、最大値Dmaxを更新する(ステップS1904)。そして、記録濃度検出領域ごとにステップS1902~ステップS1905の処理を繰り返し、最終的に残った記録濃度をDmaxとする。
先行シート起因重ね削減量X(A)は、図22に示す関数F1から、検出した記録濃度Dmaxを元に求める(ステップS1906)。図22に示すD1、D2は画像形成における印刷パス数に応じて図23に示す値に設定されている。なお、先行シート起因重ね削減量X(A)は、給送ローラ3および搬送ローラ5の重ね精度を元に下限値X0が設けられている。
以上のようにして求めた先行シート起因重ね削減量X(A)と最大重ね量Lmax(A)から、先行シート起因重ね量Lb(A)を算出する(ステップS1606)。
一方、搬送ガイド15によって挟まれた搬送路及び搬送ローラ5と給送ローラ3の配置により、機構上、重ねられる距離の上限LMがある。そのため、記録データから算出された先行シート起因重ね量Lb(A)と重ねられる距離の上限LMとを比較し、上限LMの方が小さい場合は先行シート起因重ね量Lb(A)をLMの値に置き換える(ステップS1607、S1608)。
以上のように、先行シート起因重ね量Lb(A)を算出する。
本実施形態によれば、先行シートに後続シートを重ねて搬送して高濃度印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[実施形態3]次に、図24から図27を参照して、実施形態3による先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を決定する処理について説明する。
本実施形態は、上述した実施形態1、2に対して、温度、湿度の環境条件の差も考慮した最終的な重ね量Lt(B)を決定するため、先行シート起因重ね削減量X(A)、後続シート起因重ね削減量Y(B)の算出方法が異なる。
本実施形態の装置構成は、不図示の温度センサ及び湿度センサが設けられている以外、実施形態1と同一である。
図24は、本実施形態による重ね量Lt(B)を算出する処理を示している。
図9や図16と同様に、ホストコンピュータ214から送信された先行シート1-Aの記録情報から先行シート1-Aの長さLp(A)、記録データの書き出し位置Lu(A)、及びデータ長Ld(A)を取得する(ステップS2401~S2403)。取得した先行シート1-Aの長さLp(A)、書き出し位置Lu(A)、及びデータ長Ld(A)から先行シート1-Aの後端余白を算出し、最大重ね量Lmax(A)とする(ステップS2404)。
次に、先行シート起因重ね削減量X(A)を算出する(ステップS2405)。先行シート起因重ね削減量X(A)を算出する処理の詳細は、図19とほぼ同様である。すなわち、先行シート起因重ね削減量X(A)は、先行シート1-Aの記録濃度に応じて設定される、先行シート1-Aの記録データの最終位置から次の後続シート1-Bのシート先端位置までに設ける余白距離である(図25参照)。最終的な、先行シート1-Aの記録データの最終位置から次の後続シート1-Bのシート先端位置までに設けられる余白距離は、後述する後続シート起因重ね削減量Y(B)も加算される。本実施形態では、所定の記録濃度検出領域の記録濃度に応じて、必要な先行シート起因重ね削減量X(A)を決定する。
図19で説明したように、記録濃度検出領域ごとにステップS1902~S1905の処理を繰り返し行い、最終的な記録濃度Dmaxを求める。先行シート起因重ね削減量X(A)は、図22に示した関数F1から記録濃度Dmaxを元に求める(ステップS1906)。図26は図22に示した変数D1、D2を算出する際に使用するパラメータt1、t2、h1、h2、p1、p2を求めるテーブルを示している。図26において、各パラメータは記録装置の環境温度、環境湿度、画像形成における1回の1パス印刷や複数回のマルチパス印刷の印刷パス数ごとに設けられており、これらの記録条件に基づいて該当する各パラメータを選定する。D01、D02は基準となる記録条件においての変数D1、D2の値であり、各記録条件での変数D1、D2はこの基準値を元に以下の式から算出される。
D1=t1*h1*p1*D01
D2=t2*h2*p2*D02
つまり、環境温度、環境湿度、印刷パス数の記録条件に応じて、先行シート起因重ね削減量X(A)を求める関数が変更可能である。なお、先行シート起因重ね削減量X(A)は、給送ローラ3および搬送ローラ5の重ね精度を元に下限値X0が設けられている。
以上のようにして求めた先行シート起因重ね削減量X(A)と最大重ね量Lmax(A)から、先行シート起因重ね量Lb(A)を算出する(ステップS2406)。
一方、搬送ガイド15によって挟まれた搬送路及び搬送ローラ5と給送ローラ3の配置により、機構上、重ねられる距離の上限LMがある。そのため、記録データから算出された先行シート起因重ね量Lb(A)と重ねられる距離の上限LMとを比較し、上限LMの方が小さい場合は先行シート起因重ね量Lb(A)をLMの値に置き換える(ステップS2407、S2408)。
次に、後続シート起因重ね削減量Y(B)の算出処理を行う。
ステップS2409では、ホストコンピュータ214から送信された後続シート1-Bの記録情報から後続シート1-Bに記録するデータの書き出し位置Lu(B)を取得する。
ステップS2410では、後続シート起因重ね削減量Y(B)を算出する。後続シート起因重ね削減量Y(B)を算出する処理の詳細は、図10とほぼ同様である。すなわち、図10で説明したステップS1001~S1004で記録濃度検出領域a(1)~a(3)の記録濃度da(1)~da(3)を検出する。
また、所定の記録濃度のしきい値をd0とし、記録濃度da(1)~da(3)と比較する。図27は記録濃度のしきい値d0の算出に使用する、環境温度、環境湿度、及び画像形成における印刷パス数に応じたパラメータt3、h3、p3を求めるテーブルを示している。d00は基準となる記録条件においてのd0の基準値であり、各記録条件でのd0はこの基準値を元に以下の式から算出される。
d0=t3*h3*p3*d00
次に、図10のステップS1005~S1011で求めた、後続シート起因重ね削減量Y(B)と、すでに算出されている先行シート起因重ね量Lb(A)から、最終的な重ね量Lt(B)を算出する(ステップS2411)。
上述した実施形態によれば、先行シート1-Aに後続シート1-Bを重ねて搬送して高濃度印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[実施形態4]次に、図28を参照して、実施形態4の後続シート起因重ね削減量Y(B)の算出方法について説明する。
本実施形態は、実施形態3において、先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を決定する際の後続シート起因重ね削減量Y(B)の算出方法が異なる。
本実施形態の装置構成、先行シート1-Aと後続シート1-Bの最終的な重ね量Lt(B)を決定する処理、及び、先行シート起因重ね削減量X(A)を算出する処理は、実施形態1と同一であるため、説明は省略する。
図28は、本実施形態の後続シート起因重ね削減量Y(B)を算出する処理を示している。
ステップS2801~S2803では、図10のステップS1001~S1003と同様に、後続シート1-Bの記録濃度検出領域LDA(B)を求め、記録濃度検出領域LDA(B)が、単位領域の搬送方向の距離L0のm倍(mは整数)となるように切り上げ処理を行う(ステップS1002)。ここで説明の便宜上、m=4とし、記録濃度検出領域をa(1)、a(2)、a(3)、a(4)に4分割する(ステップS2803)。そして、領域a(1)~a(4)について、主走査方向に幅W0で分割された単位領域ごとに記録濃度を検出し、この最大値を記録濃度da(1)~da(4)とする(ステップS2804)。
ステップS2805では、領域a(1)~a(4)が重ね可能か否かを判定する重ね可否判定値として、それぞれDA(1)~DA(4)を定義し、算出する。そして、該当する領域が重ね可能かどうかを判定するために、該当する領域の2つ上流の領域の記録濃度まで遡って重ね可否判定値を以下の式から算出する。
DA(n)=0.25*da(n-2)+0.5*da(n-1)+1*da(n)
また、所定の記録濃度のしきい値をDA0とし、これと算出した重ね可否判定値と比較する。記録濃度のしきい値DA0は、実施形態3のしきい値d0と同様に、環境温度、環境湿度、及び画像形成における印刷パス数に応じたパラメータと、基準しきい値から算出する。
先端側の領域a(1)から比較を行い、しきい値DA0を超えた場合にはその領域から重ね不可とするものである。まず、領域a(1)が重ね可か否かを判定するため、重ね可否判定値DA(1)としきい値DA0とを比較する(ステップS2806)。重ね可否判定値DA(1)がしきい値DA0を超えている場合は、領域a(1)は重ね不可となり、後続シート起因重ね削減量Y(B)を
Y(B)=m・L0=4×L0
と設定し(ステップS2807)、後続シート起因重ね削減量Y(B)算出処理を終了する。
一方、重ね可否判定値DA(1)がしきい値DA0以下の場合は領域a(1)が重ね可となり、領域a(2)の重ね可否判定へ移行する。以下、領域a(1)と同様に領域a(2)から順に重ね可否判定を行い、重ね不可ならば後続シート起因重ね削減量Y(B)を算出し(S2807)、重ね可の場合は、次の領域の重ね可否判定へ移行する(ステップS2808)。これらの処理を領域a(2)以降も繰り返し行うことで、最終的な後続シート起因重ね削減量Y(B)算出する(ステップS2808~S2814)。
以上のようにして求めた後続シート起因重ね削減量Y(B)と、すでに算出されている先行シート起因重ね量Lb(A)から、最終的な重ね量Lt(B)を算出する。
上述した実施形態によれば、先行シートに後続シートを重ねて搬送して高濃度印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[実施形態5]次に、図29から図35を参照して、両面印刷における重ね連送の動作および実施形態5による先行シート起因重ね量Lb(A)を決定する処理について説明する。
本実施形態の装置構成は実施形態1と同一であるため、説明を省略する。
図29のST11から図30のST16を参照して両面印刷モードにおける記録シートの反転動作について時系列に説明する。なお、両面印刷モードにおける片面の印刷動作は図1のST1からST3の動作と同一である。
図29において、ST11では、先行シート1-Aの記録動作が終了すると、搬送ローラ5及び排出ローラ9の回転が停止する。先行シート1-Aの後端が搬送ローラ5とピンチローラ6の搬送ニップ部から距離LAの位置まで搬送ローラ5及び排出ローラ9を回転し、搬送ニップ部を抜けている先行シート1-Aを排出ローラ9と拍車13で保持する。このとき、フラッパ20は自重により図のように下方に下がる位置にあり、反転ガイド部材21へ先行シート1-Aを案内する。
ST12では、搬送ローラ5及び排出ローラ9は記録動作時とは反対方向(図中時計回り)に逆回転し、先行シート1-Aを搬送ローラ5とピンチローラ6の搬送ニップ部へ再突入させ、搬送ガイド15及びシート押えレバー17方向へ搬送する。このとき搬送ローラ5は8inch/secで回転する。
ST13では、搬送ローラ5が図中時計回り回転を続けると、先行シート1-Aの端部(表面印刷時の後端)はバネの付勢力に抗してシート押えレバー17の先端部17cを回転軸17aの回りに反時計回りに回転させる。ここでシート押えレバー17は、先行シート1-Aの端部がシート押えレバー17の先端部17cの下方を接触することなく通過するよう構成してもよい。さらに搬送ローラ5が回転を続けると先行シート1-Aの端部は反転ガイド部材21へと案内される。
図30において、ST14では、さらに搬送ローラ5が回転を続けると先行シート1-Aの端部(表面印刷時の後端)は反転ガイド部材21に案内され、給送ローラ3と給送従動ローラ4の給送ニップ部に突入する。さらにシート検知センサ16によって先行シート1-Aの端部(表面印刷時の後端)が検知されると、搬送ローラ5が所定量回転したところで搬送ローラ5及び給送ローラ3の回転が一度停止する。このとき、先行シート1-Aの他端(表面印刷時の先端)が搬送ニップ部は確実に抜けるように、搬送ガイド15及び反転ガイド部材21による搬送路が構成されている。さらに、先行シート1-Aの端部(表面印刷時の後端)がシート押えレバー17の先端部17cに到達するときには先行シート1-Aの他端(表面印刷時の先端)がシート押えレバー17の先端部17cを抜けるように、構成されている。
ST15では、給送ローラ3を回転し続けることによって先行シート1-Aの端部(表面印刷時の後端)は、自重及び先行シート1-Aの反力に抗してフラッパ20を押し上げ、再び搬送ガイド15へ合流する。このとき、先行シート1-Aの他端(表面印刷時の先端)はシート押えレバー17に接触していないため、先行シート1-Aの端部(表面印刷時の後端)がフラッパ20を押し上げるときの先行シート1-Aの反力を最小限に抑えることができる。さらに給送ローラ3を回転し続けると、片面印刷時の図1のST2と同様に、先行シート1-Aの端部は搬送ローラ5とピンチローラ6で形成される搬送ニップ部に突き当たり、斜行矯正を行う。
ST16では、先行シート1-Aの斜行矯正動作が終了すると、搬送モータ205が駆動されることによって搬送ローラ5が回転を開始する。搬送ローラ5は15inch/secでシートを搬送する。先行シート1-Aは記録ヘッド7と対向する位置まで頭出しされるが、このとき先行シート1-Aの記録ヘッド7に対向する面は既に記録が行われた表面とは反対の白紙である裏面となっている。頭出しが完了した先行シート1-Aの裏面に対して、記録データに基づいて記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作が行われる。
先行シート1-Aの裏面の記録動作が開始されると、後続シート1-Bのピックアップ動作が開始される。これは実施形態1において、図2のST4で説明した片面連続印刷における重ね連送の動作と同一である。
以降、図3のST9まで先行シート1-Aの裏面と後続シート1-Bの重ね連送動作は実施形態1と同一である。
次に、図31及び図32を参照して、両面印刷における重ね連送給送シーケンスについて説明する。
ステップS3101では、I/F部213を介してホストコンピュータ214から記録データが送信されると記録動作を開始する。ステップS3102でH、先行シート1-Aの給送動作を開始する。具体的には、給送モータ206を低速駆動する。ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転する。ピックアップローラ2によって先行シート1-Aをピックアップし、給送ローラ3によって先行シート1-Aを記録ヘッド7に向けて給送する。
ステップS3103では、シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端が検知される。シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端が検知されると、ステップS3104で給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御することによって、ステップS3105で先行シート1-Aの先端を搬送ニップ部に突き当てて先行シート1-Aの斜行矯正動作を行う。
ステップS3106では、記録データに基づいて先行シート1-Aを頭出しする。すなわち、搬送ローラ5の回転量を制御することによって、記録データに基づいた搬送ローラ5の位置を基準とした記録開始位置まで先行シート1-Aを搬送する。ステップS3107では、給送モータ206を低速駆動に切り替える。ステップS3108では、先行シート1-A表面に対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。具体的には、搬送ローラ5による先行シート1-Aを間欠搬送する搬送動作と、キャリッジ10により移動される記録ヘッド7からインクを吐出する画像形成動作(インク吐出動作)とを繰り返すことによって、先行シート1-A表面に対する記録動作を行う。
搬送ローラ5によって先行シート1-Aを間欠搬送する動作と同期して、給送モータ206を間欠的に低速駆動する。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで間欠的に回転する。
ステップS3109では、先行シート1-A表面の記録動作の完了を待ち、ステップS3110に進み、先行シート1-A後端を所定位置(図29のST11のLA)まで搬送する。ステップS3111では、記録シートが反転可能なシート長であるかを確認する。先行シート1-Aのシート長を確認し、所定範囲外の場合は、ステップS3112に進み先行シート1-Aの排出を行い、終了する。先行シート1-Aのシート長を確認し、所定範囲内の場合は、ステップS3114に進み、所定時間の乾燥待ちを行う。
ステップS3115では、搬送ローラ5と排出ローラ9の逆回転と、給送ローラ3の正回転を開始し、先行シート1-Aの反転動作を行う。ステップS3116で先行シート1-Aがシート検知センサ16を通過すると、ステップS3117で搬送ローラ5、排出ローラ9、及び給送ローラ3の回転を停止する。ステップS3118では所定時間乾燥待ちを行い、ステップS3119で給送ローラ3を回転し、再び先行シート1-Aを記録ヘッド7に向けて給送する。
ステップS3120では、シート検知センサ22によって先行シート1-Aの先端が検知されるのを待つ。そして、先行シート1-Aの先端が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御することによって、先行シート1-Aの先端を搬送ニップ部に突き当てて先行シート1-Aの斜行矯正動作を行う(ステップS3121)。
ステップS3122では、記録データに基づいて先行シート1-Aを頭出しする。ステップS3123では、先行シート1-A裏面に対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。
ステップS3124では、次ページの記録データがあるかを判定し、次ページの記録データが無い場合はステップS3126で先行シート1-Aに対する記録動作が完了するのを待ち、完了したらステップS3127で先行シート1-Aを排出し、ステップS3128で記録動作を終了する。
なお、ステップS3124で次ページの記録データがある場合は、ステップS3125に進み、両面重ね動作を開始する。
図32は、図31のステップS3125における両面重ね動作シーケンスを示している。
ステップS3124で次ページの記録データがある場合は、ステップS3201で後続シート1-Bの給送動作を開始する。具体的には、ピックアップローラ2によって後続シート1-Bをピックアップし、給送ローラ3によって後続シート1-Bを記録ヘッド7に向けて給送する。ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転する。前述のように、駆動軸19の突起19aに対して、ピックアップローラ2の凹部2cが大きく設けられているため、後続シート1-Bは先行シート1-A裏面の後端と所定の間隔をもった状態で給送される。
ステップS3202では、シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知される。シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知されると、ステップS3203で給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御することによって、ステップS3204では、後続シート1-Bの先端が搬送ニップ部の所定量手前の位置となるように後続シート1-Bを搬送する。先行シート1-A裏面は記録データに基づいて間欠搬送される。後続シート1-Bは給送モータ206を連続的に高速駆動することによって、先行シート1-A裏面の後端上に後続シート1-Bの表面の先端が重なる重ね状態が形成される。
ステップS3205では、後続シート1-Bの先端が規定位置(図8のST5のP3)まで到達しているかを判定する。ここで到達していない場合、重ね状態を解消して後続シート1-Bを頭出しする。具体的には、ステップS3211で先行シート1-A裏面の最終行の画像形成動作が終了するとステップS3212で先行シート1-A裏面の排出動作を行う。この間、給送モータ206は駆動されないため、後続シート1-Bの表面はその先端が搬送ニップ部の所定量手前の位置のまま停止している。先行シート1-Aの裏面は排出されるため、重ね状態は解消する。ステップS3213では、後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行う。そして、ステップS3217で後続シート1-Bを頭出しする。
後続シート1-Bが規定位置まで到達している場合は、ステップS3206で重ね量の算出を行う。このとき、重ね量算出過程で算出する重ね削減量の有無によって処理が異なる。ステップS3207で重ね削減量の有無の判定を行い、重ね削減量がない場合は先行シート1-A裏面の最終行画像形成動作中に後続シート1-Bの斜行矯正動作を行うことが可能であり、ステップS3214に進む。ステップS3214では、先行シート1-Aの画像形成動作が開始されるのを待つ。
ステップS3215では、重ね状態を維持したまま後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行う。そして、ステップS3216では、先行シート1-A裏面の最終行の画像形成動作が終了するのを待ち、ステップS3217では重ね状態を維持したまま後続シート1-Bを頭出しする。
ステップS3207で重ね削減量がある場合は、ステップS3208で先行シート1-A裏面の最終行画像形成動作の終了を待つ。先行シート1-A裏面の最終行画像形成動作が終了するとステップS3209で、後述する重ね量となるよう、搬送ローラ5により先行シート1-A裏面を所定位置まで搬送する。ステップS3210では、後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行い、ステップS3217で後続シート1-Bの頭出しを行う。
ステップS3218では、給送モータ206を低速駆動に切り替える。ステップS3219では、後続シート1-B表面に対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。具体的には、搬送ローラ5による後続シート1-B表面を間欠搬送する搬送動作と、キャリッジ10により移動される記録ヘッド7からインクを吐出する画像形成動作とを繰り返すことで後続シート1-B表面に対する記録動作を行い、図31のステップS3109へ戻る。
次に、先行シート1-Aに両面印刷を行うことにより発生する特有の重ね要件を考慮し、先行シート起因重ね量Lb(A)を決定する処理について図33を参照して説明する。また、図34は重ね動作を行う際の、重ね量と記録データから決まるインク付与領域について示したものである。
ステップS3301では、ホストコンピュータ214より送信された先行シート1-Aの記録情報から先行シート1-Aの搬送方向の長さLp(A)を取得する。ステップS3302では、先行シート1-Aの表面の記録データの書き出し位置Lu(A-F)、及び、先行シート1-Aの裏面の記録データの書き出し位置Lu(A-B)を取得する。ステップS3303では、先行シート1-A裏面の印刷長さLd(A-B)を取得する。ステップS3304では、取得した先行シート1-Aの搬送方向の長さLp(A)、裏面の書き出し位置Lu(A-B)、及び裏面の記録データの印刷長さLd(A-B)から先行シート1-A裏面の後端余白を算出し、先行シート1-Aの裏面に依存する最大重ね量Lmax(AーB)とする。
本実施形態の記録装置はシート反転機構を有し、重ね動作を行う直前の記録動作である先行シート1-A裏面の記録データだけでなく、先行シート1-A表面の記録データを考慮して先行シート起因重ね量Lb(A)を決定する。ここで、図34に示すように、先行シート1-A裏面のインク付与領域100A-Bから外れた後端側の領域、すなわち後端余白領域の対向する表面側に先行シート1-A表面のインク付与領域100A-Fがあるものとする。この場合、先行シート1-A裏面の後端余白領域であっても、先行シート1-A表面の記録動作で付与されたインクにより先行シート1-Aは変形している。この先行シート1-A上に後続シート1-Bを重ねた場合、実施形態2で説明した図18のように、後続シート1-Bが記録ヘッド7に近づくことになる。このため、先行シート起因重ね量Lb(A)を、先行シート1-A表面の記録情報を用いて決定する。
ステップS3305では、ステップS3304で算出した先行シート1-Aの裏面に依存する最大重ね量Lmax(AーB)と、ステップS3302で取得した先行シート1-Aの表面の記録データの書き出し位置Lu(A-F)とを比較し、表裏ともにインクの付与がない領域を確認する。図34のように、先行シート1-Aの裏面に依存する最大重ね量Lmax(AーB)が先行シート1-Aの表面の記録データの書き出し位置Lu(A-F)よりも大きい場合、Lmax(AーB)とLu(A-F)の差分に固定値である余裕分Mを加え、先行シート起因重ね削減量X(A)とする(ステップS3306)。また、図35のように、先行シート1-Aの裏面に依存する最大重ね量Lmax(AーB)が先行シート1-Aの表面の記録データの書き出し位置Lu(A-F)と同じか小さい場合、ステップS3307に進み、先行シート起因重ね削減量X(A)を固定値である余裕分Mに設定する。
ステップS3308では、先行シート起因重ね削減量X(A)と最大重ね量Lmax(AーB)から、先行シート起因重ね量Lb(A)を算出する。
一方、搬送ガイド15によって挟まれた搬送路及び搬送ローラ5と給送ローラ3の配置により、機構上、重ねられる距離の上限LMがある。そのため、記録データから算出された先行シート起因重ね量Lb(A)と重ねられる距離の上限LMとを比較し、上限LMの方が小さい場合は先行シート起因重ね量Lb(A)をLMの値に置き換える(ステップS3309、S3310)。
以上のように、先行シート起因重ね量Lb(A)を算出する。
上述した実施形態によれば、先行シートに後続シートを重ねて搬送して高濃度の両面印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[実施形態6]次に、図36から図39を参照して、実施形態6による先行シート起因重ね量Lb(A)を決定する処理について説明する。
本実施形態の装置構成は実施形態1と同一であり、実施形態5と同様のシート反転機構を備えている。
図36は、先行シート1-Aに両面印刷を行うことにより発生する特有の重ね要件を考慮し、先行シート起因重ね量Lb(A)を決定する処理を示している。また、図37は重ね動作を行う際の、重ね量と記録データから決まるインク付与領域について示したものである。
ステップS3601~S3604では、図33のステップS3301~S3304と同様に、最大重ね量Lmax(AーB)を求める。
ステップS3605では、先行シート起因重ね削減量X(A)を算出する。ここで、図38を参照して、先行シート起因重ね削減量X(A)を算出する処理の詳細について説明する。ステップS3801では、説明の容易化のため、先行シート1-A表面の記録領域Ld(A-F)が単位領域の搬送方向の距離L0のm倍(mは整数)となるように切り上げ処理をする。ステップS3802では、図39に示すように、記録領域をa(1)~a(m)にm分割する。このとき、領域a(m)は搬送方向の距離がL0に満たない可能性がある。
ステップS3803~S3805では、先行シート1-A表面の先端側の領域から順次、所定の記録濃度を超えているか否かの判定を行い、領域a(i)における記録濃度da(i)の検出を行う。この記録濃度da(i)の検出処理は図11と同様であるため、説明は省略する。
ステップS3806では、領域a(i)における記録濃度da(i)がしきい値d0を超えているか否かの判定を行う。領域a(i)における記録濃度da(i)がしきい値d0を超えている場合、ステップS3808で先行シート1-A表面の記録濃度から後続シート1-Bを重ね可能な領域XX(A)を算出する。ここで、領域a(3)の記録濃度da(3)がしきい値d0を超えたとする。図39の斜線で示した領域が領域a(3)の記録濃度が最も大きな記録濃度であり、この領域の記録濃度がda(3)の値となる。記録濃度da(3)がしきい値d0を超えたため、XX(A)は、図39に示すように、
XX(A)=L0*(3-1)
となる。また、全ての領域a(i)で記録濃度da(i)がしきい値d0を超えなかった場合は、ステップS3809に進み、XX(A)を先行シート1-A表面の記録データの印刷長さLd(A-F)とする。
ステップS3810では、先行シート1-Aの裏面に依存する最大重ね量Lmax(AーB)と、先行シート1-Aの表面の記録濃度から求めた記録シート端部からの重ね可能な距離(XX(A)+Lu(A-F))とを比較する。先行シート1-Aの裏面に依存する最大重ね量Lmax(AーB)の方が大きい場合、先行シート起因重ね削減量X(A)は2つの値の差分に固定値である余裕分Mを加え、
X(A)=Lmax(A-B)-(XX(A)+Lu(A-F))+M
とする(ステップS3811)。2つの値が同一、または先行シート1-Aの裏面に依存する最大重ね量Lmax(AーB)の方が小さい場合、先行シート起因重ね削減量X(A)は固定値である余裕分Mに設定する(ステップS3812)。
図36に戻り、ステップS3606では、ステップS3605で算出した先行シート1-Aの表面に依存する重ね削減量X(A)と、ステップS3604で算出した先行シート1-Aの裏面に依存する最大重ね量Lmax(A-B)から、先行シート起因重ね量Lb(A)を算出する。
一方、搬送ガイド15によって挟まれた搬送路及び搬送ローラ5と給送ローラ3の配置により、機構上、重ねられる距離の上限LMがある。そのため、記録データから算出された先行シート起因重ね量Lb(A)と重ねられる距離の上限LMとを比較し、上限LMの方が小さい場合は先行シート起因重ね量Lb(A)をLMの値に置き換える(ステップS3607、S3608)。
以上のように、先行シート起因重ね量Lb(A)を算出する。
上述した実施形態によれば、先行シートに後続シートを重ねて搬送して高濃度の両面印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[実施形態7]次に、図40及び図41を参照して、実施形態7による先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を決定する処理について説明する。
本実施形態は、実施形態5、6と同様に両面印刷の重ね連送動作を行うが、複数枚の記録シートの両面印刷を、全ての記録シート表面の記録動作が終了した後に、全ての記録シート裏面の記録動作を行う。
本実施形態の装置構成は実施形態1と同一であり、実施形態5と同様のシート反転機構を備えている。
図40は、後続シート1-Bに両面印刷を行うことにより発生する特有の重ね要件を考慮し、先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を決定する処理を示している。また、図41は重ね動作を行う際の、重ね量と記録データから決まるインク付与領域について示したものである。
ステップS4001では、図33と同様に、先行シート1-Aの表面および裏面に依存する重ね量Lb(A)を算出する。
図41に示すように、後続シート1-B裏面のインク付与領域100B-Bから外れた先端側の領域、すなわち先端余白領域に対応する後続シート1-Bの表面にインク付与領域100B-Fがあるものとする。この場合、後続シート1-B裏面の後端余白領域であっても、後続シート1-Bの表面の記録動作で付与されたインクにより後続シート1-Bは変形している。この先行シート1-A上に後続シート1-Bを重ねた場合、実施形態1で説明した図13のように、後続シート1-Bが記録ヘッドに近づくことになる。そのため、先行シート1-A裏面と後続シート1-B表面の重ね量Lt(B)を、後続シート1-B表面の記録情報を用いて決定する。
ステップS4002では、後続シート1-Bの表面、裏面の書き出し位置Lu(B-F)、Lu(B-B)を取得する。ステップS4003では、2つの書き出し位置を比較し、小さい方の値から固定値である余裕分Mを引いたものを後続シート1-Bに依存する重ね量(後続シート起因重ね量)Lu(B)として定義する(ステップS4004、S4005)。さらにステップS4001で算出した先行シート起因重ね量Lb(A)と後続シート1-Bに依存する重ね量Lu(B)とを比較し(ステップS4006)、小さい方の値を最終的な重ね量Lt(B)とする(ステップS4007、S4008)。
以上のように、先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を算出する。
上述した実施形態によれば、先行シートに後続シートを重ねて搬送して高濃度の両面印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[実施形態8]次に、図42から図47を参照して、実施形態8による先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を決定する処理について説明する。
本実施形態は、実施形態6、7と同様に、複数枚の記録シートの両面印刷を、全ての記録シート表面の記録動作が終了した後に、全ての記録シート裏面の記録動作を行う。
本実施形態の装置構成は実施形態1と同一であり、実施形態5と同様のシート反転機構を備えている。
図42から図45は、後続シート1-Bに両面印刷を行うことにより発生する特有の重ね要件を考慮し、先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を決定する処理を示している。また、図46は重ね動作を行う際の、重ね量と記録データから決まるインク付与領域について示したものである。
ステップS4201では、図33と同様に、先行シート1-Aの表面および裏面に依存する重ね量Lb(A)を算出する。ステップS4202では、後続シート起因重ね削減量Y(B)の算出を行う。図43に処理の詳細を示す。
図43において、ステップS4301では、後続シート1-Bの表面、裏面の書き出し位置Lu(B-F)、Lu(B-B)を取得する。ステップS4302では、2つの書き出し位置を比較し、小さい方を後続シート1-Bの記録開始位置基準に設定する(ステップS4303、S4304)。ステップS4305では、重ね量算出のための後続シート1-Bの表裏を総合した記録濃度検出領域LDA(B)を算出する。ステップS4306及びS4307では、後続シート1-Bのそれぞれ表面、裏面の記録濃度検出を行う。ここで、表面の記録濃度検出は、実際は表面の記録動作中に行い、記録濃度を不図示のメモリに格納しておくことが望ましいので、ステップS4306は全ての表面のみの連続記録動作中に実行しても構わない。図44(a)、(b)はステップS4306、S4307における後続シート1-Bのそれぞれ表面、裏面の記録濃度検出処理の詳細を示しているが、基本的に同一のフローであるため、図44(a)に示す表面の記録濃度検出のみについて説明する。ステップS4401では、説明の容易化のため、後続シート1-B表面の記録領域Ld(B-F)が単位領域の搬送方向の距離L0のm倍(mは整数)となるように切り上げ処理をするものとする。図47(a)に示すように、記録領域をa(1)~a(m)にm分割する(ステップS4402)。このとき、領域a(m)は搬送方向の距離がL0に満たない可能性がある。ステップS4403~S4406では、後続シート1-B表面の先端側の領域から順次、記録濃度の検出を行う。ステップS4405での領域af(i)における記録濃度daf(i)の検出処理は図11と同様であるため、説明は省略する。
図43に戻り、ステップS4308、S4309では、後続シート1-Bの表裏総合の記録濃度検出領域LDA(B)を分割し、領域a(1)~a(m)を設定する。ステップS4310~S4312では、後続シート1-Bの裏面記録動作時の先端側の領域a(i)から順次、記録濃度da(i)を検出する。図45は、ステップS4312における処理の詳細を示している。ステップS4501では、後続シート1-Bの表裏の書き出し位置を比較する。ここでは図47(b)に示すように表面の書き出し位置Lu(B-F)が小さい場合(S4501でNO)を例にして説明するが、表面の書き出し位置Lu(B-F)の方が大きい場合(S4510でYES)は裏表を反対にすることで同様に考えることができる(S4502、S4503)。この場合、ステップS4504に進み、後続シート1-B表面の記録濃度検出領域af(i)に対向する裏面の検出領域ab(j)を抽出する。図47(b)では、af(1)の対向部は余白及びab(1)があり、af(2)の対向部にはab(1)とab(2)があり、ab(i)及びab(i-1)で表すことができる。ステップS4505では、表裏総合の記録濃度(Duty)を算出する。検出領域a(i)と基準とする表面の検出領域af(i)は一致しているため、表面の記録濃度(Duty)daf(i)はそのまま加算対象となる。裏面の検出領域ab(i)は表裏総合の検出領域a(i)とは一致しないため、どの領域の記録濃度を加算するか、判定する必要がある。そこで、ステップS4504で抽出した対象領域ab(i)及びab(i-1)の記録濃度dab(i)とdab(i-1)を比較して大きい方の値を加算対象とする。つまり、領域a(i)の表裏記録濃度da(i)は、daf(i)と、dab(i)あるいはdab(i-1)のうち大きい方を、加算したものとなる。
図43に戻り、ステップS4313では、算出した表裏記録濃度da(i)がしきい値d0を超えているかを判定し、超えている場合はその領域は重ね不可領域となり、1つ手前のa(i-1)までが重ね可能領域となる。このため、後続シート起因重ね削減量Y(B)を
Y(B)=(m-(i-1))*L0
とする(ステップS4415)。
図42に戻り、ステップS4203では、先行シート1-Aと後続シート1-Bの最終的な重ね量Lt(B)を
Lt(B)=Lb(A)-Y(B)
と設定する。
上述した実施形態によれば、先行シートに後続シートを重ねて搬送して高濃度の両面印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[実施形態9]最後に、図48を参照して、実施形態9について説明する。
上述した各実施形態では、記録ヘッドを含む記録部がガイドレールによって主走査方向に往復移動可能に案内支持された、いわゆるシリアル方式であった。これに対して、本実施形態は、記録ヘッドが搬送方向と直交する紙幅方向全域に設けられた、いわゆるラインヘッド方式の場合である。
図48は本実施形態の記録装置の内部構成を示す模式的断面図であり、記録シート1を給送トレイ11から排出ローラ9までの搬送経路及び搬送に関する構成は上記各実施形態で示したシリアル方式の記録装置と同一である。記録ヘッド70は、シート幅方向全域にインクを吐出する不図示のノズルが設けられたラインヘッドである。
ラインヘッド方式では、ピックアップローラ2から給送ローラ3を経由して搬送ローラ5へ送られた記録シート1は、搬送ローラ5によって一定速度でラインヘッド70の対向部を通過するように搬送される。ラインヘッド70は、搬送ローラ5の搬送速度に合わせて、インクを記録シート1に吐出し、画像形成を行う。ラインヘッド方式では、シリアル方式と異なり、基本的に同一画像領域については1度の搬送動作のみで画像形成を行う。そのため、画像解像度、すなわち印刷品位に応じて、ラインヘッド70の吐出周波数、搬送速度を変化させている。例えば、高速印刷モードでは、搬送速度の増加に合わせ、画像解像度を低くする間引き印刷を行う。高画質モードでは、搬送速度の低下に合わせ、画像解像度を高くするよう、印刷を行う。
本実施形態による先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね量Lt(B)を決定する処理は、基本的には図24と同様である。図19に示した先行シート起因重ね削減量X(A)の算出処理において、図22に示した関数から、記録濃度Dmaxを元に求める。この関数は、環境温度や環境湿度だけでなく、画像解像度が高くなる、あるいは記録シートの搬送速度が低下するほど値が減少する特性を有し、各記録条件に応じて選定した関数を元に先行シート起因重ね削減量X(A)を算出する。
さらに、図10に示した後続シート起因重ね削減量Y(B)の算出処理において、記録濃度のしきい値d0を元に領域a(1)~a(3)ごとに重ね可否を決定している。このしきい値d0は、環境温度や環境湿度だけでなく、画像解像度が高くなる、あるいは記録シートの搬送速度が低下するほどしきい値が減少する特性を有し、各記録条件に応じて選定した記録濃度のしきい値d0を元に後続シート起因重ね削減量Y(B)を算出する。
以上のようにして求めた後続シート起因重ね削減量Y(B)と、すでに算出されている先行シート起因重ね量Lb(A)から、最終的な重ね量Lt(B)を算出する。
上述した実施形態によれば、ラインヘッド方式で記録を行う記録装置において高濃度印刷を行う際に発生する、シートの汚れ、紙詰まり、画質の低下などを抑制し、印刷の高速化が可能となる。
[他の実施形態]本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。