JP7107880B2 - 負極合材層 - Google Patents
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Description
全固体電池の中でも全固体リチウムイオン電池は、リチウムイオンの移動を伴う電池反応を利用するためエネルギー密度が高いという点、また、正極と負極の間に介在する電解質として、有機溶媒を含む電解液に替えて固体電解質を用いるという点で注目されている。
本開示は、上記実情に鑑み、充電時の電池の拘束圧の増加を抑制し、電池の抵抗が低い全固体リチウムイオン二次電池用の負極合材層を提供することを目的とする。
前記多孔質シリコン粒子は、複数のシリコン微粒子の接合体であり、連続した空隙を有する三次元網目構造を有し、
前記多孔質シリコン粒子の空隙率が12%~51%であり、
前記多孔質シリコン粒子と前記硫化物系固体電解質の接触率が20%~44%であることを特徴とする負極合材層を提供する。
前記多孔質シリコン粒子は、複数のシリコン微粒子の接合体であり、連続した空隙を有する三次元網目構造を有し、
前記多孔質シリコン粒子の空隙率が12%~51%であり、
前記多孔質シリコン粒子と前記硫化物系固体電解質の接触率が20%~44%であることを特徴とする負極合材層を提供する。
負極活物質として、通常のダイヤモンド構造のSi材料を用いた場合、全固体リチウムイオン二次電池の充放電を繰り返すと電極内部にクラックが発生し電池の寿命が著しく低下すること、及び、全固体リチウムイオン二次電池の充電状態では拘束部品に極めて大きな応力がかかるため剛性の高い拘束構造が必要となること等の問題が発生する。
例えば、充電反応として、ダイヤモンド構造のSi粒子にLiイオンが挿入されると、Si粒子の結晶構造内にLiイオンが取り込まれる。このときSiの結晶格子が大きくなり、Si粒子が膨張する。
また、本研究者らは、多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質との接触率を高くすることにより、負極の膨張をより抑制し、全固体リチウムイオン二次電池の抵抗をより低減することができることを見出した。
負極の膨張をより抑制することができるのは、多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質との接触率を高くすることにより、負極内の多孔質シリコン粒子に均一にLiが挿入されるためと推定される。
また、全固体リチウムイオン二次電池の抵抗をより低減することができるのは、多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質との接触率を高くすることにより、イオン伝導経路が多くなり、Liイオンの多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質の間の移動が阻害されにくいためと推定される。
負極合材層は、負極合材からなり、負極合材は、負極活物質として多孔質シリコン粒子と、硫化物系固体電解質と、を含み、必要に応じ、さらに、導電材、及びバインダー等を含む。
多孔質シリコン粒子の作製方法は、例えば、以下の方法が挙げられる。
[1-1]
まず、所定量のシリコン微粒子と金属LiをAr雰囲気下にて混合してLiSi前駆体を得る。
[1-2]
LiSi前駆体をAr雰囲気下のガラス反応器内にて所定の温度のエタノールと120分反応させた後、吸引濾過にて液体1と固体反応物1を分離する。
[1-3]
得られた固体反応物1を大気雰囲気下のガラス反応器内にて酢酸と60分反応させた後、吸引濾過にて液体2と固体反応物2を分離する。
[1-4]
固体反応物2を100℃で2時間真空乾燥して多孔質シリコン粒子を得る。
多孔質シリコン粒子中の空隙率の算出方法は、特に限定されないが、例えば、多孔質シリコン粒子の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を観測して算出してもよい。
多孔質シリコン粒子の空隙率は、例えば、上記手順[1-2]において、エタノールの温度を0℃~25℃の範囲で変動させることにより制御することができる。
シリコン微粒子の平均粒径(D50)は、例えば2nm~10μmであってもよく、5nm~5μmであってもよい。
負極合材層における硫化物系固体電解質の含有量は、負極合材層の負極活物質、硫化物系固体電解質、導電材、及びバインダーの総質量を100質量%としたとき、1~80質量%であってもよい。
硫化物系固体電解質の形状は、取扱い性が良いという観点から粒子状であることが好ましい。
負極合材層の負極活物質、硫化物系固体電解質、導電材、及びバインダーの総質量を100質量%としたとき、当該負極合材層中に含まれる導電材の含有割合は、0.1質量%~10質量%であってもよい。
多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質の接触率は負極合材層の断面のSEM画像を観測して、下記式(1)に従って算出してもよい。なお、下記式(1)において接触面積の単位はいずれも[μm2]である。
式(1)
多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質の接触率[%]=[多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質との接触面積÷(多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質との接触面積+多孔質シリコン粒子と導電材との接触面積+多孔質シリコン粒子と多孔質シリコン粒子との接触面積)]×100
多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質の接触率は、例えば、負極合材層中の導電材の量を変動させることにより制御することができる。
負極合材層の負極活物質、硫化物系固体電解質、導電材、及びバインダーの総質量を100質量%としたとき、当該負極合材層中に含まれるバインダーの含有割合は、0.1質量%~10質量%であってもよい。
本開示の負極合材層は、全固体リチウムイオン二次電池の負極に用いられる。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、当該正極及び当該負極の間に配置される固体電解質層と、を有することを特徴とする。
図1は、本開示の全固体リチウムイオン二次電池の一例を示す断面模式図である。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1に示すように、全固体リチウムイオン二次電池100は、正極合材層12及び正極集電体14を含む正極16と、負極合材層13及び負極集電体15を含む負極17と、正極16と負極17の間に配置される固体電解質層11を備える。
正極は、少なくとも正極合材層を含み、必要に応じて正極集電体を含む。
正極合材層は、正極合材からなり、正極合材は、正極活物質を含み、任意成分として、固体電解質、導電材、及び、バインダー等が含まれていてもよい。
また、上記一般式LixMyOz以外の正極活物質としては、チタン酸リチウム(例えばLi4Ti5O12)、リン酸金属リチウム(LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、LiNiPO4)、遷移金属酸化物(V2O5、MoO3)、TiS2、LiCoN、Si、SiO2、Li2SiO3、Li4SiO4、及びリチウム貯蔵性金属間化合物(例えばMg2Sn、Mg2Ge、Mg2Sb、Cu3Sb)等を挙げることができる。
正極活物質の形状は特に限定されるものではないが、粒子状であってもよい。
正極活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有するコート層が形成されていても良い。正極活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。
Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO3、Li4Ti5O12、及びLi3PO4等が挙げられる。
正極合材層における正極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば10質量%~100質量%の範囲内であってもよい。
正極合材層に用いられる固体電解質は、後述する固体電解質層に用いられる固体電解質と同様のものが挙げられる。正極合材層中の固体電解質の含有割合は特に限定されるものではない。
例えば、正極活物質、及びバインダーを溶媒中に投入し、これらを撹拌することにより、正極合材層用スラリーを作製し、当該スラリーを正極集電体等の支持体の一面上に塗布して乾燥させることにより、正極合材層が得られる。
溶媒は、例えば酢酸ブチル、酪酸ブチル、ヘプタン、及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
正極集電体等の支持体の一面上に正極合材層用スラリーを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、及びスクリーン印刷法等が挙げられる。
また、正極合材層の形成方法の別の方法として、正極活物質及び必要に応じ他の成分を含む正極合材の粉末を加圧成形することにより正極合材層を形成してもよい。
正極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、メッシュ状等、種々の形態とすることができる。
固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含む。
硫化物系固体電解質としては、上述した負極合材に用いられる硫化物系固体電解質と同様のものが挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、例えばLi6.25La3Zr2Al0.25O12、Li3PO4、及びLi3+xPO4-xNx(LiPON)等が挙げられる。
また、固体電解質の粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、下限が0.5μm以上であることが好ましく、上限が2μm以下であることが好ましい。
固体電解質は、1種単独で、又は2種以上のものを用いることができる。また、2種以上の固体電解質を用いる場合、2種以上の固体電解質を混合してもよい。
固体電解質層の形成方法は、例えば、固体電解質、及び必要に応じ他の成分を含む固体電解質層の材料の粉末を加圧成形することにより固体電解質層を形成してもよい。
負極は、少なくとも負極合材層を含み、必要に応じて負極集電体を含む。
負極合材層は、上述した負極合材からなる。
負極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、メッシュ状等、種々の形態とすることができる。
外装体の形状としては、特に限定されないが、ラミネート型等を挙げることができる。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂等が挙げられる。
この場合、固体電解質材料の粉末、正極合材の粉末、及び負極合材の粉末を加圧成形する際のプレス圧は、通常1MPa以上600MPa以下程度である。
加圧方法としては、特に制限されないが、例えば、平板プレス、又はロールプレス等を用いて圧力を付加するプレス法等が挙げられる。
全固体リチウムイオン二次電池の製造は、系内の水分をできるだけ除去した状態で行うとよい。例えば、各製造工程において、系内を減圧すること、系内を不活性ガス等の水分を実質的に含まないガスで置換すること等が有効と考えられる。
[1]多孔質シリコン粒子の作製
[1-1]
シリコン微粒子(高純度化学、粒径5μm)0.65gと金属Li(本城金属)0.60gをAr雰囲気下にてメノウ乳鉢で混合してLiSi前駆体を得た。
LiSi前駆体1.0gをAr雰囲気下のガラス反応器内にて0℃のエタノール250ml(ナカライテスク)と120分反応させた後、吸引濾過にて液体1と固体反応物1を分離した。
得られた0.5gの固体反応物1を大気雰囲気下のガラス反応器内にて酢酸50ml(ナカライテスク)と60分反応させた後、吸引濾過にて液体2と固体反応物2を分離した。
固体反応物2を100℃で2時間真空乾燥して多孔質シリコン粒子のナノシートを得た。
多孔質シリコン粒子に対してイオンミリングによる断面加工を施して、多孔質シリコン粒子の断面を二次電子顕微鏡で観察した。
図2は、実施例1の多孔質シリコン粒子の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
得られた観察像から、多孔質シリコン粒子中のシリコン(Si)と空隙とを白部と灰部で2値化した上で、多孔質シリコン粒子中の空隙率を算出した。結果を表1に示す。
Li2S(フルウチ化学)0.550gとP2S5(アルドリッチ)0.887gとLiI(日宝化学)0.285gとLiBr(高純度化学)0.277gを秤量し、メノウ乳鉢で5分混合し、その後n-ヘプタン(脱水グレード、関東化学)を4g入れ、遊星型ボールミルを用い40時間メカニカルミリングすることで硫化物系固体電解質を得た。
[3-1]正極合材
正極活物質にLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(日亜化学工業)を使用した。
正極活物質にはLiNbO3の表面処理を施した。この正極活物質を1.5g、導電材としてVGCF(昭和電工)を0.023g、上記硫化物系固体電解質を0.239g、バインダーとしてPVdF(クレハ)を0.011g、溶媒として酪酸ブチル(キシダ化学)を0.8g秤量し、超音波ホモジナイザー(SMT社製UH-50)を用いて混合したものを正極合材とした。
負極活物質に[1]で合成した多孔質シリコン粒子のナノシート1.0g、導電材としてVGCF(昭和電工)を0.04g、上記硫化物系固体電解質0.776g、バインダーとしてPVdF(クレハ)0.02g、溶媒として酪酸ブチル(キシダ化学)1.7gを秤量し、超音波ホモジナイザー(SMT社製UH-50)を用いて混合したものを負極合材とした。
1cm2のセラミックス製の型に硫化物系固体電解質を0.065g秤量し、1ton/cm2でプレスし固体電解質層を作製した。
固体電解質層の片側に正極合材0.018gを配置し、1ton/cm2でプレスして正極合材層を作製した。その逆側に負極合材0.0054gを配置し、4ton/cm2でプレスすることで負極合材層を作製し、正極集電体にアルミ箔を、負極集電体に銅箔を用いて、全固体リチウムイオン二次電池を得た。
負極合材層に対してイオンミリングによる断面加工を施して、負極合材層の断面を二次電子顕微鏡で観察した。
得られた観察像から、負極合材層中の多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質と導電材を3値化した上で、多孔質シリコン粒子と硫化物系固体電解質との接触率を上述した式(1)を用いて算出した。結果を表1に示す。
初回充電として、全固体リチウムイオン二次電池を0.245mAで4.35VまでCC-CV充電した。
初回充電において、全固体リチウムイオン二次電池の拘束圧をモニタリングし、後述する比較例1の全固体リチウムイオン二次電池の拘束圧を基準として、比較例1の全固体リチウムイオン二次電池の拘束圧に対する実施例1の全固体リチウムイオン二次電池の初回充電時の拘束圧の比を算出した。後述する実施例2~3及び比較例2~3の全固体リチウムイオン二次電池の初回充電時の拘束圧についても後述する比較例1の全固体リチウムイオン二次電池の拘束圧に対する比を算出した。結果を表1に示す。
初回充電後、全固体リチウムイオン二次電池を0.245mAで3.0VまでCC-CV放電を行った。
その後、全固体リチウムイオン二次電池を3.7Vの電圧まで0.245mAにて充電を行った後、7.35mAを5秒間流し、電圧の変化から全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗を測定した。
後述する比較例1の全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗を基準として、比較例1の全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗に対する実施例1の全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗の比を算出した。後述する実施例2~3及び比較例2~3の全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗についても後述する比較例1の全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗に対する比を算出した。結果を表1に示す。
実施例1の手順[1-2]においてエタノールの温度を15℃とした以外は、実施例1と同様の手順にて全固体リチウムイオン二次電池を作製し、全固体リチウムイオン二次電池の評価を行った。
実施例1の手順[1-2]においてエタノールの温度を25℃とした以外は、実施例1と同様の手順にて全固体リチウムイオン二次電池を作製し、全固体リチウムイオン二次電池の評価を行った。
実施例1の手順[3-2]においてVGCFを0.12gとした以外は、実施例1と同様の手順にて全固体リチウムイオン二次電池を作製し、全固体リチウムイオン二次電池の評価を行った。
実施例1の手順[3-2]においてVGCFを0.12gとし、それ以外は実施例2と同様の手順にて全固体リチウムイオン二次電池を作製し、全固体リチウムイオン二次電池の評価を行った。
実施例1の手順[3-2]においてVGCFを0.12gとし、それ以外は実施例3と同様の手順にて全固体リチウムイオン二次電池を作製し、全固体リチウムイオン二次電池の評価を行った。
12 正極合材層
13 負極合材層
14 正極集電体
15 負極集電体
16 正極
17 負極
100 全固体リチウムイオン二次電池
Claims (1)
- 負極活物質として多孔質シリコン粒子と、硫化物系固体電解質と、を含む全固体リチウムイオン二次電池用の負極合材層であって、
前記多孔質シリコン粒子は、複数のシリコン微粒子の接合体であり、連続した空隙を有する三次元網目構造を有し、
前記多孔質シリコン粒子の空隙率が12%~51%であり、
前記多孔質シリコン粒子と前記硫化物系固体電解質の接触率が20%~44%であることを特徴とする負極合材層。
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