JP7107455B1 - 半導体加工用粘着テープ - Google Patents

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【課題】エネルギー線照射前での再剥離性に優れるエネルギー線硬化型の半導体加工用粘着テープを提供する。【解決手段】半導体加工用粘着テープ10は、基材1と、基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層2と、を有し、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力をA1(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力をB1(N/25mm)としたとき、A1/B1の比が1.0未満である。【選択図】図1

Description

本開示は、半導体加工用粘着テープに関する。
半導体の製造工程では、ウェハをチップに切断(ダイシング)するダイシング工程において、ウェハおよびチップを保護および固定するために、ダイシングテープと呼ばれる半導体加工用粘着テープが用いられている。
半導体加工用粘着テープには、加工工程中はウェハやチップを十分な粘着力で固定できるとともに、加工工程後はチップを破損することなく容易に剥離できることが求められる。
このような半導体加工用粘着テープとしては、例えば、エネルギー線硬化型の粘着テープの開発が盛んに行われている(例えば特許文献1~5)。
特開2018-195616号公報 国際公開第2016/151911号 特開2005-19607号公報 国際公開第2014/20962号 特開2014-82414号公報
半導体加工用粘着テープは、リング状のフレームに貼付され、その半導体加工用粘着テープ上にウェハが固定されて使用される。
このような、リング状のフレームへの半導体加工用粘着テープの貼り付け時や、半導体加工用粘着テープへのウェハの貼り付け時には、例えば、位置ずれが生じたり、半導体加工用粘着テープにシワが生じたり、空気の巻き込みが起こって気泡が生じたりする等の貼り付け不良が生じる場合がある。また、半導体加工用粘着テープを介してリング状のフレームに固定されたフレーム付きウェハが、例えば、フレーム付きウェハを収納するための容器や、加工工程での治具に貼り付いてしまう場合がある。さらに、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、他のフレーム付きウェハのフレームが貼り付いてしまう場合もある。
上記のエネルギー線硬化型の粘着テープは、エネルギー線の照射により粘着層を硬化させることで粘着力を低下させることができるが、エネルギー線照射前の加工工程中はウェハやチップを強固に固定できるものである。このように、半導体加工用粘着テープにおいては、エネルギー線照射前のウェハやチップの固定、および、エネルギー線照射後のチップの剥離の観点からの検討はされているものの、エネルギー線照射前のリワーク性(再剥離性)についてはほとんど検討されていないのが実情である。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、エネルギー線硬化型の粘着テープにおいて、エネルギー線照射前での再剥離性に優れる半導体加工用粘着テープを提供することを主目的とする。
本開示の一実施形態は、基材と、上記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力をA1(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力をB1(N/25mm)としたとき、A1/B1の比が1.0未満である、半導体加工用粘着テープを提供する。
本開示の他の実施形態は、基材と、上記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、剥離速度6000mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をA3(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をB3(N/25mm)としたとき、A3/B3の比が1.0未満である、半導体加工用粘着テープを提供する。
本開示における半導体加工用粘着テープは、エネルギー線照射前での再剥離性に優れるという効果を奏する。
本開示における半導体加工用粘着テープの一例を示す概略断面図である。 半導体の製造方法を例示する工程図である。 半導体の製造方法を例示する工程図である。
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
本開示の半導体加工用粘着テープは、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様に分けて説明する。
I.第1実施態様
本開示の半導体加工用粘着テープの第1実施態様は、基材と、上記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有し、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力をA1(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力をB1(N/25mm)としたとき、A1/B1の比が1.0未満である。
図1は、本開示の半導体加工用粘着テープを例示する概略断面図である。図1における半導体加工用粘着テープ10は、基材1と、基材1の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層2とを有している。半導体加工用粘着テープ10においては、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力をA1(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力をB1(N/25mm)としたとき、A1/B1の比が所定の範囲である。
図2(a)~(e)は、半導体加工用粘着テープを用いた半導体の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、リング状のフレーム21に半導体加工用粘着テープ10を貼り付けて、ウェハ11を半導体加工用粘着テープ10に貼り付けた後、図2(b)に示すように、ウェハ11をチップ12に切断(ダイシング)するダイシング工程を行う。次に、図2(c)に示すように、半導体加工用粘着テープ10を引き伸ばして、チップ12同士の間隔を広げるエキスパンド工程を行う。次に、図示しないが、半導体加工用粘着テープ10のエネルギー線硬化性の粘着層にエネルギー線を照射して硬化させることで粘着力を低下させ、図2(d)に示すように、チップ12を半導体加工用粘着テープ10から剥離して、チップ12をピックアップするピックアップ工程を行う。次いで、図2(e)に示すように、ピックアップされたチップ12を基板30に接着するマウント(ダイボンディング)工程を行う。
図3(a)~(d)は、半導体加工用粘着テープを用いた半導体の製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図3(a)に示すように、リング状のフレーム21に半導体加工用粘着テープ10を貼り付けて、ウェハ11を半導体加工用粘着テープ10に貼り付けた後、図3(b)に示すように、ウェハ11をチップ12に切断(ダイシング)するダイシング工程を行う。次に、図3(c)に示すように、チップ12の半導体加工用粘着テープ10とは反対側の面に転写テープ40を貼り付けた後、図示しないが、半導体加工用粘着テープ10のエネルギー線硬化性の粘着層にエネルギー線を照射して硬化させることで粘着力を低下させ、図3(d)に示すように、半導体加工用粘着テープ10をチップ12から剥離して、チップ12を転写テープ40側に転写する転写工程を行う。
ここで、半導体の製造に際して、現実的な作業においては、リング状のフレームへの半導体加工用粘着テープの貼り付け時や、半導体加工用粘着テープへのウェハの貼り付け時に、例えば、位置ずれが生じたり、半導体加工用粘着テープにシワが生じたり、空気の巻き込みが起こって気泡が生じたりする等の貼り付け不良が生じる場合がある。また、例えば図2(a)や図3(a)に示すような、半導体加工用粘着テープ10によってリング状のフレーム21に固定されたフレーム付きウェハ20を重ねて収納する場合があり、このような場合には、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、他のフレーム付きウェハのフレームが貼り付いてしまう場合や、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、フレーム付きウェハを収納するための容器が貼り付いてしまう場合がある。また、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、半導体の製造工程での治具が貼り付いてしまう場合もある。そして、リング状のフレーム、フレーム付きウェハを収納するための容器、および、半導体の製造工程での治具は、例えば金属製である。また、リング状のフレームの材質はSUSであることが多い。
本実施態様においては、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力をA1(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力をB1(N/25mm)としたとき、A1/B1の比が1未満である。すなわち、SUS板から半導体加工用粘着テープを高速の剥離速度6000mm/minで剥離するときの粘着力が、SUS板から半導体加工用粘着テープを低速の剥離速度300mm/minで剥離するときの粘着力よりも、小さい。このように、本実施態様においては、エネルギー線照射前では、高速剥離時のSUS板に対する再剥離性が良好である。そのため、本実施態様の半導体加工用粘着テープを用いることにより、上記の貼り付け不良が生じた場合には、高速で剥離することによって、半導体加工用粘着テープからリング状のフレームやウェハを容易に剥離することができる。また、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、他のフレーム付きウェハのフレームが誤って貼り付いた場合には、高速で剥離することによって、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープから他のフレーム付きウェハのフレームを容易に剥離することができる。さらに、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、フレーム付きウェハを収納するための容器や半導体の製造工程での治具が誤って貼り付いた場合には、高速で剥離することによって、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープから容器や治具を容易に剥離することができる。したがって、本実施態様によれば、貼り付け時のリワークが可能であり、作業性を向上させることができる。また、本実施態様によれば、上記のような場合でもウェハを無駄にすることなく使用することができ、歩留りを向上させることができる。
また、本実施態様においては、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力をA1(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力をB1(N/25mm)としたとき、A1/B1の比が1未満であることにより、SUS板から半導体加工用粘着テープを低速で剥離するときの粘着力を相対的に大きくすることができる。そのため、エネルギー線を照射するまでの間、半導体加工用粘着テープにウェハや分割されたチップを十分に固定することができる。
以下、本実施態様の半導体加工用粘着テープの各構成について説明する。
1.半導体加工用粘着テープの特性
本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力をA1(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力をB1(N/25mm)としたとき、A1/B1の比は、1.0未満であり、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.7以下である。A1/B1の比が上記範囲であることにより、高速剥離時の再剥離性を良くすることができ、高速で剥離することによって、半導体加工用粘着テープから被着体を容易に剥離することができる。一方、A1/B1の比は、例えば、0.1以上であってもよく、0.3以上であってもよい。A1/B1の比が小さすぎると、半導体加工用粘着テープに不意に接触した際に、半導体加工用粘着テープが意図せず剥がれてしまう可能性がある。
また、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力は、上記のA1/B1の比を満たしていれば特に限定されないが、例えば、20N/25mm以下であり、10N/25mm以下であってもよく、5N/25mm以下であってもよい。剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力が上記範囲であることにより、高速剥離時の再剥離性を良くすることができ、高速で剥離することによって、半導体加工用粘着テープから被着体を容易に剥離することができる。一方、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力は、例えば、0.01N/25mm以上であり、0.2N/25mm以上であってもよく、0.4N/25mm以上であってもよい。剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力が小さすぎると、半導体加工用粘着テープに不意に接触した際に、半導体加工用粘着テープが意図せず剥がれてしまう可能性がある。
また、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力は、上記のA1/B1の比を満たしていれば特に限定されないが、例えば、0.01N/25mm以上であり、1N/25mm以上であってもよく、2N/25mm以上であってもよい。剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力が上記範囲であることにより、エネルギー線を照射するまでの間、半導体加工用粘着テープにウェハや分割されたチップを十分に固定することができる。一方、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力は、例えば、30N/25mm以下であり、20N/25mm以下であってもよく、15N/25mm以下であってもよい。剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力が大きすぎると、剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力も大きくなり、高速剥離時の再剥離性が低下する可能性がある。
本開示において、エネルギー線硬化性の粘着層は、エネルギー線の照射により硬化することで粘着力が低下する。本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、エネルギー線照射後の剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力は、例えば、2N/25mm以下であることが好ましく、1N/25mm以下であることがより好ましい。エネルギー線照射後の剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力が上記範囲であることにより、エネルギー線照射後には半導体加工用粘着テープからチップを容易に剥離することができる。一方、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、エネルギー線照射後の剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力の下限値は特に限定されないが、例えば、0.01N/25mm以上とすることができる。
ここで、SUS板に対する粘着力は、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minまたは6000mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定することができる。SUS板は、SUS304、表面仕上げBA、厚さ1.5mm、幅100mm、長さ150mmのSUS板を用いることができる。
上記のA1/B1の比を所定の範囲内とする手段としては、例えば、高速の剥離速度で剥離したときに硬さが高くなる粘着層を用いる方法が挙げられる。
高速の剥離速度で剥離したときに硬さが高くなる粘着層を用いる方法としては、具体的には、粘着層の硬さの剥離速度への依存性が大きい粘着層を用いる方法、より具体的には、粘着層の弾性率の周波数依存性が大きい粘着層を用いる方法を挙げることができる。
ここで、一般に、粘着層の弾性率はその変形速度に対して単調に増加することから、粘着層の粘着力も剥離速度に対して単調に増加する傾向にある。しかしながら、粘着層の弾性率が高くなりすぎると、粘着層として硬くなりすぎて、粘着力が低下することになる。そのため、粘着層の硬さの剥離速度への依存性が大きい粘着層を用いることにより、上記のA1/B1の比を所定の範囲とすることができる。
また、粘着層の硬さ(弾性率)および剥離速度の関係は、粘着層の弾性率および周波数の関係と相関があることが知られている。例えば、高周波数域の粘弾性の応答は高速で剥離するときの挙動に対応し、低周波数域の粘弾性の応答は低速で剥離するときの挙動に対応する。そのため、粘着層の弾性率の周波数依存性が大きい粘着層を用いることにより、上記のA1/B1の比を所定の範囲とすることができる。
また、高速の剥離速度で剥離したときに硬さが高くなる粘着層を用いる方法としては、具体的には、粘着層に含有される成分や組成を調整する方法、粘着層の架橋密度を調整する方法が挙げられる。
粘着層に含有される成分や組成を調整する方法としては、より具体的には、エネルギー線硬化性化合物の分子量、ガラス転移温度を調整する方法、添加剤の分子量、ガラス転移温度を調整する方法、粘着主剤であるアクリル系樹脂を構成するモノマーのガラス転移温度を調整する方法が挙げられる。例えば、エネルギー線硬化性化合物や添加剤の分子量が大きくなると、高速剥離時に粘着層が硬くなる傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。また、例えば、エネルギー線硬化性化合物や添加剤のガラス転移温度が高くなると、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすい傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。また、例えば、粘着主剤であるアクリル系樹脂を構成するモノマーとして、ガラス転移温度の高いモノマーを用いて共重合させると、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすい傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。
また、粘着層の架橋密度が高くなると、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすい傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。
また、本実施態様においては、剥離速度6000mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をA3(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をB3(N/25mm)としたとき、A3/B3の比が1未満であることが好ましい。
なお、以下、ポリエチレンテレフタレート板をPET板と略称する場合がある。
上記のA3/B3の比が1未満であるということは、PET板から半導体加工用粘着テープを高速の剥離速度6000mm/minで剥離するときの粘着力が、PET板から半導体加工用粘着テープを低速の剥離速度300mm/minで剥離するときの粘着力よりも、小さいということである。このような場合においては、エネルギー線照射前では、高速剥離時のPET板に対する再剥離性が良好となる。リング状のフレーム、フレーム付きウェハを収納するための容器、および、半導体の製造工程での治具は、例えば樹脂製である場合もある。そのため、リング状のフレームや、容器、治具が例えば樹脂製である場合であっても、上記のA3/B3の比が所定の範囲である場合には、本実施態様の半導体加工用粘着テープを用いることにより、上述の貼り付け不良が生じた場合には、高速で剥離することによって、半導体加工用粘着テープからリング状のフレームを容易に剥離することができる。また、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、他のフレーム付きウェハのフレームが誤って貼り付いた場合には、高速で剥離することによって、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープから他のフレーム付きウェハのフレームを容易に剥離することができる。さらに、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、容器や治具が誤って貼り付いた場合には、高速で剥離することによって、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープから容器や治具を容易に剥離することができる。
また、フレーム付きウェハにおいては、露出した半導体加工用粘着テープの粘着層側の面を保護したり、異物の付着を抑制したりするために、半導体加工用粘着テープの粘着層側の面に保護フィルムを配置する場合がある。この保護フィルムには例えば樹脂が用いられ、具体的にはPETフィルムが用いられる。この場合において、上記のA3/B3の比が所定の範囲である場合には、半導体加工用粘着テープから保護フィルムを容易に剥離することができる。
したがって、上記のA3/B3の比が所定の範囲であることにより、作業性をより向上させることができる。また、上記のような場合でもウェハを無駄にすることなく使用することができ、歩留りを向上させることができる。
本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力をA3(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのPET板に対する粘着力をB3(N/25mm)としたとき、A3/B3の比は、例えば、1.0未満であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。A3/B3の比が上記範囲であることにより、高速剥離時の再剥離性を良くすることができ、高速で剥離することによって、半導体加工用粘着テープから被着体を容易に剥離することができる。一方、A3/B3の比は、例えば、0.4以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。A3/B3の比が小さすぎると、半導体加工用粘着テープに不意に接触した際に、半導体加工用粘着テープが意図せず剥がれてしまう可能性がある。
また、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力は、上記のA3/B3の比を満たしていれば特に限定されないが、例えば、7N/25mm以下であり、5N/25mm以下であってもよく、3N/25mm以下であってもよい。剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力が上記範囲であることにより、高速剥離時の再剥離性を良くすることができ、高速で剥離することによって、半導体加工用粘着テープから被着体を容易に剥離することができる。一方、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力は、例えば、0.01N/25mm以上であり、0.5N/25mm以上であってもよく、1N/25mm以上であってもよい。剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力が小さすぎると、半導体加工用粘着テープに不意に接触した際に、半導体加工用粘着テープが意図せず剥がれてしまう可能性がある。
また、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度300mm/minでのPET板に対する粘着力は、上記のA3/B3の比を満たしていれば特に限定されないが、例えば、1.0N/25mm以上であり、3.0N/25mm以上であってもよく、5.0N/25mm以上であってもよい。剥離速度300mm/minでのPET板に対する粘着力が上記範囲であることにより、基材と粘着層との密着性を維持することができる。一方、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度300mm/minでのPET板に対する粘着力は、例えば、10N/25mm以下であり、8N/25mm以下であってもよく、7N/25mm以下であってもよい。剥離速度300mm/minでのPET板に対する粘着力が大きすぎると、剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力も大きくなり、高速剥離時の再剥離性が低下する可能性がある。
ここで、PET板に対する粘着力は、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minまたは6000mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定することができる。この際、PET板に半導体加工用粘着テープを貼付してから、1時間経過後に、粘着力を測定する。PET板としては、厚さ2.0mm、幅100mm、長さ150mmの住友ベークライト社製のPET樹脂プレート「サンロイドペットエース EPG 100(クリア)」を用いることができる。また、PET板としては、東レ社製のポリエステルフィルム「ルミラー#50-S10」を用いることもでき、この場合、PET板を、厚さ1.5mm、幅100mm、長さ150mmのSUS板に、両面テープ等を介して全面を固定して用いることとする。
上記のA3/B3の比を所定の範囲内とする手段としては、上記のA1/B1の比を所定の範囲内とする手段と同様とすることができる。
また、本実施態様の半導体加工用粘着テープのタック性は、低いことが好ましい。具体的には、半導体加工用粘着テープにおいて、JIS Z0237:2009に準拠する傾斜式ボールタック試験におけるボールナンバーが、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。このように半導体加工用粘着テープのタック性が低いことにより、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすく、高速剥離時の粘着力を低速剥離時の粘着力よりも小さくしやすくすることができる。
ここで、傾斜式ボールタック試験は、JIS Z0237:2009に準拠し、傾斜角度30°、温度23℃、湿度50%の条件で行う。ボールは、直径が1/32インチから1インチまでの大きさのボールを用いる。そして、半導体加工用粘着テープの粘着層の表面にボールを転がしたときに、半導体加工用粘着テープの粘着層の表面で停止するボールのうち、最大のボールのナンバーで評価する。ボールナンバーは、ボールの直径を32倍することで求められる。ボールナンバーが小さいほど、タック性が低い。
2.粘着層
本実施態様における粘着層は、基材の一方の面に配置され、エネルギー線硬化性を有する部材である。エネルギー線硬化性の粘着層は、エネルギー線の照射により硬化することで粘着力が低下する。エネルギー線硬化性の粘着層においては、その初期粘着力によりダイシング工程ではウェハや分割されたチップを十分に固定することが可能であり、また、ピックアップ工程または転写工程ではエネルギー線を照射して硬化させることで粘着力が低下して剥離性が向上するため、チップを容易に糊残りなく剥離または転写することが可能となる。
エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。中でも、汎用性等の観点から、紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
(1)粘着層の特性
粘着層は、上述したように、弾性率の周波数依存性が大きいものであることが好ましい。具体的には、温度25℃、周波数0.1Hzでの粘着層の貯蔵弾性率(単位:Pa)に対する、温度25℃、周波数70Hzでの粘着層の貯蔵弾性率(単位:Pa)の比が、30以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましい。上記の貯蔵弾性率の比が上記範囲であることにより、上記のA1/B1の比を所定の範囲内になるように容易に調整することができる。なお、低周波数域である周波数0.1Hzでの粘着層の貯蔵弾性率は、低速で剥離するときの硬さ(弾性率)に対応し、高周波数域である周波数70Hzでの粘着層の貯蔵弾性率は、高速で剥離するときの硬さ(弾性率)に対応する。上記の貯蔵弾性率の比が上記範囲であれば、高速で剥離するときの硬さ(弾性率)を高くすることができ、粘着層を硬く、変形しにくくすることができるので、高速で剥離することによって、被着体を容易に剥離することが可能となる。また、上記の貯蔵弾性率の比が上記範囲であれば、低速で剥離するときの硬さ(弾性率)を低くすることができ、粘着層を適度に柔らかくすることができるので、ウェハやチップを十分に固定することができる。一方、上記の貯蔵弾性率の比の上限は特に限定されないが、例えば、5000以下とすることができる。上記の貯蔵弾性率の比が大きすぎると、半導体加工用粘着テープの剥がし始めからの剥離速度に変化に伴う、粘着層の弾性率の変化が大きくなりすぎてしまうため、半導体加工用粘着テープを剥離した際、粘着層に微細なクラックが入ることによって、糊残りが発生してしまう可能性がある。
また、温度25℃、周波数70Hzでの粘着層の貯蔵弾性率は、例えば、20MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましい。上記の高周波数域での貯蔵弾性率が上記範囲であれば、高速で剥離するときの硬さ(弾性率)を高くすることができ、粘着層を硬く、変形しにくくすることができるので、高速で剥離することによって、被着体を容易に剥離することが可能となる。一方、上記の高周波数域での貯蔵弾性率の上限は特に限定されないが、例えば、1000MPa以下とすることができる。上記の高周波数域での貯蔵弾性率が大きすぎると、半導体加工用粘着テープを剥離した際に糊残りが発生したり、半導体加工用粘着テープに不意に触れたときに剥がれてしまったりする可能性がある。
また、温度25℃、周波数0.1Hzでの粘着層の貯蔵弾性率は、例えば、50MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、5MPa以下であることがさらに好ましい。上記の低周波数域での貯蔵弾性率が上記範囲であれば、低速で剥離するときの硬さ(弾性率)を低くすることができ、粘着層を適度に柔らかくすることができるので、ウェハやチップを十分に固定することができる。一方、上記の低周波数域での貯蔵弾性率の下限は特に限定されないが、例えば、0.01MPa以上とすることができる。上記の低周波数域での貯蔵弾性率が小さすぎると、粘着層が柔らかくなりすぎてしまうため、被着体に凹凸がある場合に、半導体加工用粘着テープを剥離した際に糊残りが生じやすくなる可能性がある。
ここで、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(DMA)によって測定された値である。動的粘弾性測定装置(DMA)によって、粘着層の貯蔵弾性率を測定する際には、粘着層を巻くことによって、直径5mm以上7mm以下、高さ5mm以上10mm以下程度の円柱状のサンプルとする。まず、動的粘弾性測定装置の圧縮冶具(パラレルプレートφ8mm)の間に、上記の円柱状の測定サンプルを取り付ける。次に、温度25℃、周波数範囲0.1Hz以上70Hz以下の条件で、圧縮荷重をかけ、動的粘弾性測定を行う。動的粘弾性測定装置としては、例えば、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン社製のRSA-3を用いることができる。
粘着層の貯蔵弾性率は、粘着層に含有される成分の組成や配合比等に応じて適宜調整が可能である。
また、粘着層のガラス転移温度は、例えば、25℃以上50℃以下であることが好ましい。粘着層のガラス転移温度が高くなると、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすい傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。そのため、粘着層のガラス転移温度が上記範囲内であることにより、上記のA1/B1の比を所定の範囲内になるように容易に調整することができる。
ここで、本明細書において、ガラス転移温度は、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づく方法(DMA法)により測定された値を意味する。また、損失正接は、損失弾性率/貯蔵弾性率の値により決定される。これら弾性率は、粘着層に対して一定の周波数で力を付与したときの応力を動的粘弾性測定装置を用いて測定される。
(2)粘着層の材料
粘着層としては、上記の粘着力を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂(粘着主剤)と、エネルギー線硬化性化合物とを少なくとも含有することができる。粘着層がエネルギー線硬化性化合物を含有することにより、エネルギー線の照射によりエネルギー線硬化性化合物を硬化させることで、粘着力を低下させることができ、また、このとき凝集力が高まるため、剥離が容易になる。
(a)樹脂(粘着主剤)
樹脂(粘着主剤)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等、一般に粘着剤の主剤として用いられる樹脂が挙げられる。中でも、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂を用いることにより、電子部品等の被着体への糊残りや汚染を低減することができる。
よって、粘着層は、アクリル系樹脂と、エネルギー線硬化性化合物と、架橋剤とを少なくとも含有することが好ましい。粘着層内において、アクリル系樹脂は、通常、架橋剤によりアクリル系樹脂間が架橋されてなる架橋体として存在するが、架橋体と共にアクリル系樹脂の単体が含まれていてもよい。
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルおよび他の単量体の具体例としては、特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。他の単量体は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ここでの主成分とは、共重合割合が51質量%以上であることを意味し、好ましくは65質量%以上である。
中でも、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーとの共重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの共重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好適に用いることができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方をいうものとする。
共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとしては、特に限定されず、例えば特開2012-31316号公報に開示される水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーが用いられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、例えば、20万以上100万以下であることが好ましく、20万以上80万以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量を上記範囲内とすることで、十分な初期粘着力を発揮できる。また、電子部品等の被着体への糊残りや汚染を低減することができる。
ここで、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算値である。重量平均分子量は、例えば、測定装置に東ソー株式会社製のHLC-8220GPCを、カラムに東ソー株式会社製のTSKGEL-SUPERMULTIPORE-HZ-Mを、溶媒にTHFを、標準品として分子量が1050、5970、18100、37900、96400、706000の標準ポリスチレンを用いることで測定することができる。
また、アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの(メタ)アクリル酸エステル共重合体である場合、上記水酸基含有モノマーと上記カルボキシル基含有モノマーとの質量比としては、例えば、51:49~100:0であることが好ましく、中でも75:25~100:0であることが好ましい。各モノマーの質量比が上記範囲内であれば、エネルギー線照射による効果的な粘着力の低下が期待でき、糊残りの発生を抑制することができる。
また、アクリル系樹脂は、エネルギー線硬化性を有していてもよく、例えば、側鎖にエネルギー線硬化性官能基を有していてもよい。エネルギー線硬化性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有することが好ましく、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
(b)エネルギー線硬化性化合物
エネルギー線硬化性化合物は、エネルギー線の照射を受けて重合するものであれば特に限定されず、例えば、エネルギー線硬化性官能基を有する化合物が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、エネルギー線硬化性モノマー、エネルギー線硬化性オリゴマー、エネルギー線硬化性ポリマーが挙げられる。なお、エネルギー線硬化性ポリマーは、上記の樹脂(粘着主剤)とは異なるポリマーである。中でも、エネルギー線照射前後の粘着力のバランスの観点から、エネルギー線硬化性オリゴマーが好ましい。また、エネルギー線硬化性モノマー、エネルギー線硬化性オリゴマー、エネルギー線硬化性ポリマーを組み合わせて用いてもよい。例えば、エネルギー線硬化性オリゴマーに加えてエネルギー線硬化性モノマーを用いる場合には、エネルギー線を照射した際に、粘着層を三次元架橋により硬化させて粘着力を低下させるとともに、凝集力を高めてチップ側へ転着させないようにすることができる。
また、エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性化合物が好ましい。硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、さらには、エネルギー線照射前後の粘着力等の物性を容易に制御することができる。
エネルギー線硬化性化合物において、エネルギー線硬化性官能基の数は、1分子中に2個以上であることが好ましく、1分子中に3個以上であることがより好ましく、4個以上であることがさらに好ましい。エネルギー線硬化性官能基の数が上記範囲内であれば、エネルギー線照射後の粘着層の架橋密度が十分となるので、所望の剥離性を実現することができる。また、凝集力の低下による糊残りの発生を抑制することができる。また、エネルギー線硬化性官能基の数の上限は、特に限定されない。
エネルギー線硬化性化合物は、ラジカル重合性オリゴマーであることが好ましく、ラジカル重合性多官能オリゴマーであることがより好ましい。ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。
また、エネルギー線硬化性化合物として、ラジカル重合性オリゴマーおよびラジカル重合性モノマーを用いてもよく、中でも、ラジカル重合性多官能オリゴマーおよびラジカル重合性多官能モノマーを用いてもよい。ラジカル重合性モノマーとしては、例えば特開2010-173091号公報に開示されるものが挙げられる。
また、エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー、(メタ)アクリレート系ポリマー等を挙げることができる。また、エネルギー線硬化性化合物として、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
また、エネルギー線硬化性化合物は、市販品を用いてもよい。例えば、三菱ケミカル社製のウレタンアクリレート「紫光UV7620EA(分子量:4100)」;根上工業社製のウレタンアクリレート「アートレジンUN-905(分子量:50000~210000)」、「アートレジンUN-905DU1(分子量:26000)」、「アートレジンUN-951SC(分子量:20000)」、「アートレジンUN-952(分子量:6500~9500)」、「アートレジンUN-953(分子量:14000~40000)」、「アートレジンUN-954(分子量:4200)」、「アートレジンH-219(分子量:25000~50000)」、「アートレジンH-315M(分子量:6600)」、「アートレジンH-417M(分子量:4000)」;大成ファインケミカル社製のアクリルウレタンポリマー「8BR-600(分子量:100000)」;DIC社製のポリマーアクリレート「ユニディックV-6850」;共栄社化学社製のアクリルポリマー「SMP-250AP(分子量:20000~30000)」、「SMP-360A(分子量:20000~30000)」;昭和電工マテリアルズ社製のアクリル樹脂アクリレート「HA7975」等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、エネルギー線硬化性化合物の分子量を調整することにより、エネルギー線照射前の粘着層の粘着力の制御が可能となる。例えば、エネルギー線硬化性化合物の分子量が大きくなると、高速剥離時に粘着層が硬くなる傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、1000以上500000以下であることが好ましく、3500以上300000以下であることがより好ましく、4100以上210000以下であることがさらに好ましい。エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、上記のA1/B1の比を所定の範囲内になるように容易に調整することができる。また、エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量が上記範囲内であれば、粘着層が、エネルギー線照射前には所望の粘着力を示し、エネルギー線照射後には糊残りの発生が抑制され、容易に剥離可能となる。
また、エネルギー線硬化性化合物のガラス転移温度を調整することにより、エネルギー線照射前の粘着層の粘着力の制御が可能となる。例えば、エネルギー線硬化性化合物のガラス転移温度が高くなると、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすい傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。
また、エネルギー線硬化性化合物のタック性を調整することにより、エネルギー線照射前の粘着層の粘着力の制御が可能となる。例えば、エネルギー線硬化性化合物のタック性が低くなると、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすい傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。
また、エネルギー線硬化性化合物は、粘着層のガラス転移温度が所定の範囲内になるように、適宜選択することが好ましい。
また、エネルギー線硬化性化合物の含有量としては、例えば、樹脂(粘着主剤)100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上80質量部以下であることがさらに好ましい。エネルギー線硬化性化合物の含有量が上記範囲内であれば、エネルギー線照射後の粘着層の架橋密度が十分となるので、所望の剥離性を実現することができる。また、凝集力の低下による糊残りの発生を抑制することができる。
(c)重合開始剤
粘着層は、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物に加えて、重合開始剤を含有することができる。
重合開始剤としては、一般的な光重合開始剤を用いることができる。具体的には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、ベンジルメチルケタール類、α-アミノケトン類、ビスアシルフォスフィンオキサイド類が挙げられる。エネルギー線硬化性化合物としてウレタンアクリレートを使用する場合には、重合開始剤がビスアシルフォスフィン系重合開始剤であることが好ましい。この重合開始剤は耐熱性を有するため、基材に粘着剤組成物を塗布してエネルギー線照射を行う際に、基材を介してエネルギー線照射を行う場合であっても、確実にエネルギー線硬化性化合物を硬化させることができる。
重合開始剤は、波長230nm以上に吸収を有することが好ましく、波長300nm以上400nm以下に吸収を有することが好ましい。このような重合開始剤は、波長300nm以上の幅の広いエネルギー線を吸収し、エネルギー線硬化性化合物の重合反応を誘発する活性種を効率的に生成することができる。そのため、少量のエネルギー線照射量でもエネルギー線硬化性化合物を効率的に硬化させることができ、容易に剥離可能となる。また、後述するように基材には樹脂等を用いることができ、樹脂には、波長300nm程度までのエネルギー線を吸収するものの、波長300nm程度以上のエネルギー線を透過するものが多い。さらに、近年では、エネルギー線照射装置において、波長300nm以上のLEDランプを使用することが多い。そのため、波長230nm以上に吸収を有する重合開始剤を用いることにより、基材を透過したエネルギー線を利用してエネルギー線硬化性化合物を硬化させることができる。
重合開始剤の含有量は、例えば、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物の合計100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上6質量部以下であることがより好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲に満たないと、エネルギー線硬化性化合物の重合反応が十分起こらず、エネルギー線照射後の粘着層の粘着力が過剰に高くなり、剥離性を実現することができない場合がある。一方、重合開始剤の含有量が上記範囲を超えると、エネルギー線照射面の近傍にしかエネルギー線が届かず、粘着層の硬化が不十分となる場合がある。また、凝集力が低下し、糊残りの発生の原因となる場合もある。
(d)架橋剤
粘着層は、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物に加えて、架橋剤を含有することができる。
架橋剤は、少なくとも樹脂(粘着主剤)間を架橋するものであれば特に限定されるものではなく、樹脂(粘着主剤)の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤の具体例としては、特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。架橋剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の含有量としては、架橋剤の種類に応じて適宜設定することができるが、例えば、樹脂(粘着主剤)100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲に満たないと、密着性が劣る場合や、チップを剥離または転写する際に粘着層が凝集破壊を起こして糊残りが生じる場合がある。一方、架橋剤の含有量が上記範囲を超えると、エネルギー線照射後の粘着層中に架橋剤が未反応モノマーとして残留することで、凝集力の低下により糊残りの発生の原因となる場合がある。
(e)添加剤
粘着層は、必要に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、粘着付与剤、耐電防止剤、可塑剤、シランカップリング剤、金属キレート剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤等が挙げられる。
また、粘着層は、添加剤として、フッ素系樹脂等の非粘着性の樹脂を含んでいてもよい。非粘着性の樹脂が含まれていることにより、粘着層の再剥離性を向上させることができる。また、非粘着性の樹脂が含まれていることで、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすい傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。
これらの添加剤においては、添加剤のガラス転移温度を調整することにより、エネルギー線照射前の粘着層の粘着力の制御が可能となる。例えば、添加剤のガラス転移温度が高くなると、高速剥離時に粘着層が硬くなりやすい傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。添加剤のガラス転移温度は、特に限定されないが、例えば、10℃以上150℃以下であることが好ましく、20℃以上120℃以下であることがより好ましい。添加剤のガラス転移温度が上記範囲内であることにより、上記のA1/B1の比を所定の範囲内になるように容易に調整することができる。粘着層が添加剤を含む場合、少なくとも1つの添加剤のガラス転移温度が上記範囲内であることが好ましい。
また、添加剤の分子量を調整することにより、エネルギー線照射前の粘着層の粘着力の制御が可能となる。例えば、添加剤の分子量が大きくなると、高速剥離時に粘着層が硬くなる傾向にあり、高速剥離時の粘着力が低速剥離時の粘着力よりも小さくなる傾向にある。添加剤の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、20000以上300000以下であることが好ましく、50000以上200000以下であることがより好ましい。添加剤の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、上記のA1/B1の比を所定の範囲内になるように容易に調整することができる。粘着層が添加剤を含む場合、少なくとも1つの添加剤の重量平均分子量が上記範囲内であることが好ましい。
また、粘着層は、粘着力調整剤を含むことが好ましい。粘着力調整剤としては、例えば、アクリル系ブロック共重合体、ポリエステル樹脂等が挙げられる。アクリル系ブロック共重合体としては、例えば、クラレ社製のクラリティシリーズ(例えば、「LA4285(Mw:約65000)」、「LA2250(Mw:約67000)」、「LA2140(Mw:約125000)」、「LA3320(Mw:約115000)」等)、アルケマ社製のNANOSTRENGTH(例えば、「M22(Mw:約130000)」、「M22N(Mw:約100000~200000)」、「M52N(Mw:約100000)」等)が挙げられる。また、ポリエステル樹脂としては、例えば、東洋紡社製のバイロンシリーズ(例えば、「バイロン200(Mn:約17000)」、「バイロン600(Mn:約16000)」等)、ユニチカ社製のエリーテルシリーズ(「エリーテルUE3210(Mw:約20000)」、「エリーテルUE9200(Mw:約15000)」等)が挙げられる。
(3)粘着層の厚さおよび形成方法
粘着層の厚さとしては、十分な粘着力が得られ、かつ、エネルギー線が内部まで透過することが可能な厚さであればよく、例えば、3μm以上50μm以下であり、好ましくは5μm以上40μm以下である。
粘着層の形成方法としては、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗布する方法が挙げられる。
3.基材
本実施態様における基材は、上記粘着層を支持する部材である。
基材としては、特に限定されないが、ピックアップ工程または転写工程では半導体加工用粘着テープの基材側からエネルギー線を照射して粘着層を硬化させることにより、粘着層の粘着力を低下させることが好ましいことから、基材は、エネルギー線を透過するものであることが好ましい。
基材は、エキスパンド可能であることが好ましい。具体的には、基材のヤング率は、例えば、500MPa以下であることが好ましく、300MPa以下であることがより好ましく、150MPa以下であることがさらに好ましい。基材のヤング率が上記範囲であれば、基材のエキスパンド性を向上させることができる。また、基材のヤング率は、例えば、20MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましく、40MPa以上であることがさらに好ましい。基材のヤング率が低すぎると、基材が極端に柔らかくなり、半導体加工用粘着テープを均一に拡張することが困難になる可能性がある。
ここで、基材のヤング率、JIS K7127に準拠して測定することができる。具体的な測定条件を下記に示す。
・試験片:試験片タイプ5
・チャック間距離:60mm
・引張速度:100mm/min
引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を用いることができる。
基材の材質としては、上記の特性を満たすものであることが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ウレタン樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;フッ素樹脂等が挙げられる。また、基材の材質としては、例えば、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、アミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等のゴム系材料を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、オレフィン系樹脂または塩化ビニル樹脂が好ましく、塩化ビニル樹脂がより好ましい。すなわち、基材は、オレフィン系樹脂または塩化ビニル樹脂を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂を含有することがより好ましい。塩化ビニル樹脂は可塑剤を添加することにより軟化するため、いわゆる軟質塩化ビニル樹脂を用いることにより、後述するように降伏点を有さない基材とすることができる。
塩化ビニル樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩素含有樹脂;それらの塩素含有樹脂の混合物;それらの塩素含有樹脂と他の塩素を含まない樹脂との混合物、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。他の塩素を含まない樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン三元共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等が挙げられる。
基材は、降伏点を有さないことが好ましい。すなわち、基材は、応力-歪み曲線において、弾性変形を示すことが好ましい。応力-歪み曲線は、引張試験により得られる応力と歪みの関係曲線であり、歪み(%)を横軸に、応力(MPa)を縦軸にとって描かれる。応力-歪み曲線における降伏点までの領域は、弾性変形領域とみなせ、応力-歪み曲線における降伏点以降の領域は、塑性変形領域とみなせる。そのため、基材が降伏点を有さない場合には、基材は弾性変形を示すということができる。基材が降伏点を有さない場合には、エキスパンド工程およびピックアップ工程において、半導体加工用粘着テープを均一に拡張させることができる。また、基材が降伏点を有さない場合には、基材を伸長させても復元性を失わないため、半導体の加工をしやすくすることができる。
ここで、「降伏」とは、応力-歪み曲線で見られるように、物体に働く応力が弾性限度を超えると応力の増大がないのに変形が徐々に進行する現象のことをいい、「降伏点」とは、弾性挙動の最大応力値における点のことをいう。
降伏点の有無は、以下の方法により確認することができる。基材についてMD方向およびTD方向にそれぞれ引張試験を行い、基材が破断するまでの応力と歪みを測定し、歪みを横軸、応力を縦軸にそれぞれプロットする。その際、傾きが正の値からゼロまたは負の値に変化する応力値をとる場合を降伏点を有する、傾きが正の値からゼロまたは負の値に変化する応力値をとらない場合を降伏点を有さないとする。引張試験は、JIS K7127に準拠して行うことができる。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を用いることができる。基材は、MD方向およびTD方向の引張試験のいずれの場合においても、降伏点を有さないことが好ましい。
基材は、必要に応じて、例えば、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、難燃剤、着色剤等の各種の添加剤を含有していてもよい。
基材は、例えば、単層であってもよく、多層であってもよい。
基材の粘着層側の面には、粘着層との密着性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、特に限定されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、蒸着処理、アルカリ処理等が挙げられる。
基材の厚さとしては、特に限定されず、例えば、20μm以上500μm以下であり、40μm以上350μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下であってもよい。基材の厚さが上記範囲内であれば、エキスパンドしやすく、また破断しない程度の十分な強度を有する基材とすることができる。
4.その他の構成
本開示の半導体加工用粘着テープは、上記の基材および粘着層の他に、必要に応じて、他の構成を有することができる。
本開示の半導体加工用粘着テープは、粘着層の基材とは反対側の面にセパレータを有していてもよい。セパレータにより粘着層を保護することができる。
また、本開示の半導体加工用粘着テープは、基材と粘着層との間にプライマー層を有していてもよい。プライマー層により基材および粘着層の密着性を高めることができる。
5.用途
本開示の半導体加工用粘着テープは、ダイシングテープとして好適に用いることができる。
II.第2実施態様
本開示の半導体加工用粘着テープの第2実施態様は、基材と、上記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、剥離速度6000mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をA3(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をB3(N/25mm)としたとき、A3/B3の比が1.0未満である。
ここで、上記第1実施態様の項に記載したように、半導体の製造に際して、現実的な作業においては、リング状のフレームへの半導体加工用粘着テープの貼り付け時に、例えば、位置ずれが生じたり、半導体加工用粘着テープにシワが生じたり、空気の巻き込みが起こって気泡が生じたりする等の貼り付け不良が生じる場合がある。また、例えば図2(a)や図3(a)に示すような、半導体加工用粘着テープ10によってリング状のフレーム21に固定されたフレーム付きウェハ20を重ねて収納する場合があり、このような場合には、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、他のフレーム付きウェハのフレームが貼り付いてしまう場合や、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、フレーム付きウェハを収納するための容器が貼り付いてしまう場合がある。また、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、半導体の製造工程での治具が貼り付いてしまう場合もある。そして、リング状のフレーム、フレーム付きウェハを収納するための容器、および、半導体の製造工程での治具は、例えば樹脂製である。
本実施態様においては、剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力をA3(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのPET板に対する粘着力をB3(N/25mm)としたとき、A3/B3の比が1未満である。すなわち、PET板から半導体加工用粘着テープを高速の剥離速度6000mm/minで剥離するときの粘着力が、PET板から半導体加工用粘着テープを低速の剥離速度300mm/minで剥離するときの粘着力よりも、小さい。このように、本実施態様においては、エネルギー線照射前では、高速剥離時のPET板に対する再剥離性が良好である。そのため、本実施態様の半導体加工用粘着テープを用いることにより、上記の貼り付け不良が生じた場合には、高速で剥離することによって、半導体加工用粘着テープからリング状のフレームを容易に剥離することができる。また、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、他のフレーム付きウェハのフレームが誤って貼り付いた場合には、高速で剥離することによって、一つのフレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープから他のフレーム付きウェハのフレームを容易に剥離することができる。さらに、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープに、フレーム付きウェハを収納するための容器や半導体の製造工程での治具が誤って貼り付いた場合には、高速で剥離することによって、フレーム付きウェハの半導体加工用粘着テープから容器や治具を容易に剥離することができる。
また、半導体加工用粘着テープとして、ロール状に巻かれた半導体加工用粘着テープを用いる場合があり、上述したように、半導体加工用粘着テープの基材には例えば樹脂が用いられている。この場合において、上記のA3/B3の比が所定の範囲であることにより、ロール状の半導体加工用粘着テープを高速で巻き出すことで、巻き出しが容易になる。
また、フレーム付きウェハにおいては、露出した半導体加工用粘着テープの粘着層側の面を保護したり、異物の付着を抑制したりするために、半導体加工用粘着テープの粘着層側の面に保護フィルムを配置する場合がある。この保護フィルムには例えば樹脂が用いられ、具体的にはPETフィルムが用いられる。この場合において、上記のA3/B3の比が所定の範囲であることにより、半導体加工用粘着テープから保護フィルムを容易に剥離することができる。
したがって、本実施態様によれば、貼り付け時のリワークが可能であり、作業性を向上させることができる。また、本実施態様によれば、上記のような場合でもウェハを無駄にすることなく使用することができ、歩留りを向上させることができる。
本実施態様の半導体加工用粘着テープにおいて、剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力をA3(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのPET板に対する粘着力をB3(N/25mm)としたとき、A3/B3の比は、1.0未満であり、0.4以上1.0未満であることが好ましい。なお、A3/B3の比については、上記第1実施態様に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、本実施態様の半導体加工用粘着テープにおける、剥離速度6000mm/minでのPET板に対する粘着力、および、剥離速度300mm/minでのPET板に対する粘着力については、上記第1実施態様に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、基材、粘着層、その他の構成、および用途については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに説明する。
[実施例1]
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートA(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-7620EA」)40質量部と、ウレタンアクリレートB(エネルギー線硬化性化合物、根上工業社製「アートレジン UN954」)30質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)0.5質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)7.0質量部と、架橋剤A(綜研化学社製「硬化剤E-AX」)0.35質量部と、架橋剤B(綜研化学社製「硬化剤M-5A」)0.2質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(ニッパ株式会社製「PET50×1-M-J2」、厚さ50μm)上に、乾燥後の厚さが20μmとなるように上記粘着剤組成物を塗工し、110℃オーブンで3分間乾燥させて、粘着層を形成した。
次に、上記粘着層上に、基材(ポリ塩化ビニルフィルム、ロンシール製「FV5-RP-TR-90」、厚さ90μm)をラミネートした後、40℃で3日間エージングを行い、半導体加工用粘着テープを作製した。
[比較例1]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートA(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-7620EA」)40質量部と、ウレタンアクリレートC(エネルギー線硬化性化合物、根上工業社製「アートレジン UN951SC」)15質量部と、ウレタンアクリレートD(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-6630B」)15質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)0.5質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)7.0質量部と、架橋剤A(綜研化学社製「硬化剤E-AX」)0.05質量部と、架橋剤B(綜研化学社製「硬化剤M-5A」)0.15質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[実施例2]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートA(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-7620EA」)40質量部と、ウレタンアクリレートC(エネルギー線硬化性化合物、根上工業社製「アートレジン UN951SC」)15質量部と、ウレタンアクリレートD(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-6630B」)15質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)0.5質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)7.0質量部と、架橋剤C(綜研化学社製「硬化剤L-45K」)3.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[実施例3]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートC(エネルギー線硬化性化合物、根上工業社製「アートレジン UN951SC」)70質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)0.5質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)7.0質量部と、架橋剤C(綜研化学社製「硬化剤L-45K」)3.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[実施例4]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートC(エネルギー線硬化性化合物、根上工業社製「アートレジン UN951SC」)70質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)1.0質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)7.0質量部と、架橋剤C(綜研化学社製「硬化剤L-45K」)3.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[実施例5]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと、および、下記の基材を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートE(エネルギー線硬化性化合物、新中村化学工業社製「NKオリゴU-10PA」)75質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)40.0質量部と、アクリル樹脂(DIC社製「アクリディックA-811-BE」)40.0質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)7.5質量部と、架橋剤C(綜研化学社製「硬化剤L-45K」)3.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
また、塩化ビニル樹脂70質量部と、可塑剤40質量部と、安定剤0.5質量部とを含有する樹脂組成物を用いて、キャスト法により製膜し、厚さ70μmのポリ塩化ビニルフィルムを作製した。このポリ塩化ビニルフィルムを、基材として用いた。
[実施例6]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例5と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1811L」)100質量部と、ウレタンアクリレートE(エネルギー線硬化性化合物、新中村化学工業社製「NKオリゴU-10PA」)50質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)50.0質量部と、アクリル樹脂(DIC社製「アクリディックA-811-BE」)50.0質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)5.0質量部と、架橋剤C(綜研化学社製「硬化剤L-45K」)3.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[比較例2]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートD(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-6630B」)50質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)5.0質量部と、架橋剤C(綜研化学社製「硬化剤L-45K」)3.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[比較例3]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートD(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-6630B」)50質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)0.5質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)5.0質量部と、架橋剤C(綜研化学社製「硬化剤L-45K」)3.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[比較例4]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートA(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-7620EA」)60質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)1.0質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)6.0質量部と、架橋剤A(綜研化学社製「硬化剤E-AX」)0.35質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[比較例5]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1811L」)100質量部と、ウレタンアクリレートE(エネルギー線硬化性化合物、新中村化学工業社製「NKオリゴU-10PA」)50質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)5.0質量部と、架橋剤C(綜研化学社製「硬化剤L-45K」)3.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[比較例6]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例5と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1838」)100質量部と、ウレタンアクリレートE(エネルギー線硬化性化合物、新中村化学工業社製「NKオリゴU-10PA」)50質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)5.0質量部と、架橋剤A(綜研化学社製「硬化剤E-AX」)0.35質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[比較例7]
下記のようにして粘着剤組成物を調製したこと以外は、実施例5と同様にして、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤(綜研化学社製「SKダイン1439U」)100質量部と、ウレタンアクリレートA(エネルギー線硬化性化合物、三菱ケミカル社製「紫光UV-7620EA」)60質量部と、アクリル系ブロック共重合体(クラレ社製「クラリティLA4285」)1.0質量部と、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819」)6.0質量部と、架橋剤D(綜研化学社製「硬化剤E-50C」)2.10質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
[評価]
(1)SUS板に対する粘着力
SUS板に対する粘着力は、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minまたは6000mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定した。SUS板は、SUS304、表面仕上げBA、厚さ1.5mm、幅100mm、長さ150mmのSUS板を用いた。
(2)PET板に対する粘着力
PET板に対する粘着力は、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minまたは6000mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定した。この際、PET板に半導体加工用粘着テープを貼付してから、1時間経過後に、粘着力を測定した。PET板は、東レ社製のポリエステルフィルム「ルミラー#50-S10」を用い、厚さ1.5mm、幅100mm、長さ150mmのSUS板に、両面テープを介して全面を固定した。
(3)貯蔵弾性率
動的粘弾性測定装置(ティー・エー・インスツルメント・ジャパン(株)製 RSA-3)を用いて、粘着層の貯蔵弾性率を測定した。粘着層は、直径5mm以上7mm以下、高さ5mm以上10mm以下程度の円柱状に丸めて、測定サンプルとした。測定条件は、温度25℃、周波数範囲0.1Hz以上70Hz以下とした。
(4)再剥離性
貼合装置(テクノビジョン社製のセミオートフィルム貼付装置)を用いて、半導体加工用粘着テープをSUS製のリングフレームに速度10mm/sで貼合した。貼合から5分間静置した後に、半導体加工用粘着テープをリングフレームから手で勢いよく剥離した際の剥離性を、以下の3水準にて評価した。
A:半導体加工用粘着テープを容易に剥離することができ、半導体加工用粘着テープの伸びや糊残りは確認されなかった。
B:半導体加工用粘着テープの剥離が重く、半導体加工用粘着テープの伸びが確認されたが、糊残りはなかった。
C:半導体加工用粘着テープの剥離が重く、半導体加工用粘着テープの伸びや糊残りが確認された。
(5)ダイシング適性
半導体加工用粘着テープを用いて、8インチ径、厚さ100μmのシリコンウェハを3mm×3mmのチップサイズで下記の条件にてダイシングした後、ダイシングを行い、チップの飛散の有無を確認した。なお、ウェハ周縁部で、3mm×3mmの方形をなしていない(たとえば三角形)チップについては観察から除外して、3mm×3mmのチップが形成されている部分でのみ評価した。
(ダイシング条件)
ダイシング装置:DISCO社製「DFD6361」
条件:ブレード Z1♯3500(幅40μm)
回転数 Z1 40,000rpm
送り速度 30mm/sec
(評価基準)
A:チップ飛びが発生しなかった。
B:1ヶ所以上のチップ飛びが発生した。
Figure 0007107455000002
実施例1~6の半導体加工用粘着テープでは、低速剥離時の粘着力に対する高速剥離時の粘着力の比が所定の範囲であるため、エネルギー線照射前での再剥離性およびダイシング適性に優れていた。一方、比較例1~7の半導体加工用粘着テープでは、低速剥離時の粘着力に対する高速剥離時の粘着力の比が所定の範囲を超えているため、エネルギー線照射前での再剥離性に劣っていた。
1 … 基材
2 … 粘着層
10 … 半導体加工用粘着テープ

Claims (4)

  1. 基材と、前記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、
    剥離速度6000mm/minでのSUS板に対する粘着力をA1(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのSUS板に対する粘着力をB1(N/25mm)としたとき、A1/B1の比が1.0未満である、半導体加工用粘着テープ。
  2. 基材と、前記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、
    剥離速度6000mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をA3(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をB3(N/25mm)としたとき、A3/B3の比が1.0未満である、半導体加工用粘着テープ。
  3. 剥離速度6000mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をA3(N/25mm)とし、剥離速度300mm/minでのポリエチレンテレフタレート板に対する粘着力をB3(N/25mm)としたとき、A3/B3の比が1.0未満である、請求項1に記載の半導体加工用粘着テープ。
  4. 温度25℃、周波数0.1Hzでの前記粘着層の貯蔵弾性率(Pa)に対する、温度25℃、周波数70Hzでの前記粘着層の貯蔵弾性率(Pa)の比が、30以上である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の半導体加工用粘着テープ。
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