JP7107288B2 - 燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法 - Google Patents

燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法に関する。
燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜電極接合体を基本構造とし、当該膜電極接合体を、ガス流路を有する一対のセパレータで挟持した構造を有する単セルを複数積層して構成されている。
各電極は、一般的に、電解質膜側から順に触媒層、ガス拡散層が積層した構造を有しており、前記ガス拡散層に、前記セパレータのガス流路を有する側の面を接触させて配置されている。
燃料電池用のガス拡散性電極基材(GDL)には、セパレータから供給されるガスを触媒層へと拡散するための高いガス拡散性と、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、および発生した電流を取り出すための高い導電性が必要である。そのため、炭素繊維等からなる炭素シートをガス拡散複合層のガス拡散性電極基材とし、その表面にマイクロポーラス層(MPL)を形成したガス拡散複合層が広く用いられている(例えば、図9参照)。
図9中、符号50はガス拡散複合層を示し、符号51は炭素繊維からなるガス拡散性電極基材を示し、符号52はマイクロポーラス層を示し、符号53は溝状の流路を示している。ガス拡散性電極基材51の大孔の一部は、小孔を有するマイクロポーラス層52により充填されている。ガス拡散複合層50においては、主にガス拡散性電極基材51の大孔を通じて、セパレータから供給されるガスの拡散及び電気化学反応に伴って生成する水の排出が行われる。
特許文献1には、少なくとも炭素繊維を含む多孔質の炭素シート、及び、少なくとも導電性フィラーを含むマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材において、ガス拡散性が31.0~35.5%であり、前記ガス拡散電極基材を厚み方向に小孔部と大孔部とに分けた際に、大孔部の厚みを3μmより小さいものとすることで、大孔部で形成される生成水の液滴サイズの増大を抑制し、排水性及びガス拡散性の低下を抑制することにより発電性能の低下の抑制を図ったガス拡散電極基材の例が開示されている。
例えば特許文献1に記載されているような、炭素繊維からなるガス拡散性電極基材は、面内透気度が高いため高い排水性を得られる利点がある一方、剛性が低いため、当該ガス拡散性電極基材の緻密度を低下させると、ガス拡散性電極基材の剛性低下に伴いセパレータの流路内へのガス拡散複合層の撓み込みが生じ易く(図9(b)参照)、当該流路における圧力損失の増加や、膜電極接合体の潰れ等の不具合が生じ易いという問題がある。
これに対し、特許文献2には、金属材料を化学エッチングすることにより細孔を形成した多孔質金属ガス拡散層及び触媒層を含む膜電極接合体の例が開示されている。
特許文献2では、ガス拡散層として前述した多孔質金属ガス拡散層を用いることでガス拡散層の剛性の向上を図るとともに、多孔質金属ガス拡散層と触媒層の間に微細多孔質層を介在させ、前記微細多孔質層を、前記多孔質金属ガス拡散層の細孔を充填しかつ前記多孔質金属ガス拡散層の表面をコーティングするように構築することで、触媒層と多孔質金属ガス拡散層との界面における水の滞留防止、及び、触媒層へのガス拡散性の向上を図っている。
特開2017-139219号公報 特表2017-510967号公報
しかしながら、特許文献2に記載の膜電極接合体でも、排水性やガス拡散性を十分に高められず、発電性能を向上させる効果を十分に得られないという問題がある。
本開示は、上記実情に鑑み、高い剛性と、高いガス拡散性及び排水性とを両立することができ、燃料電池の発電性能を高くすることのできる、燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法は、多孔質ガス拡散層と、微細多孔質層とを含む燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法であって、チタン、金、銀、銅、白金、錫、鉄及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含み、平均粒子径が10μm以上150μm以下である金属材料粒子と、発泡剤とを含む混合物を成型して得た成型体を焼成して焼結させて前記多孔質ガス拡散層を作製する工程と、炭素材料を含む微細多孔質層形成用材料を用いて、前記多孔質ガス拡散層の細孔の少なくとも一部を充填し、かつ当該多孔質ガス拡散層の表面の少なくとも一部を被覆する前記微細多孔質層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本開示によれば、高い剛性と、高いガス拡散性及び排水性とを両立することができ、燃料電池の発電性能を高くすることのできる、燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法を提供することができる。
本開示の燃料電池用ガス拡散複合層の製造方法における多孔質ガス拡散層作製工程の一例を説明するためのフローチャート図である。 図2(a)は、本開示のガス拡散複合層の製造方法により製造したガス拡散複合層を燃料電池に適用した状態を説明するための概略断面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すガス拡散複合層の一部を拡大して示す図である。 本開示の製造方法により製造されたガス拡散複合層を適用した燃料電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。 参考実験例1のガス拡散複合層(2)の層構成を説明するための概略断面図である。 参考実験例2のガス拡散複合層(5)の層構成を説明するための概略断面図である。 ガス拡散複合層(1)~(3)のガス拡散抵抗の測定値を示す図である。 ガス拡散複合層(4)~(5)のガス拡散抵抗の測定値を示す図である。 ガス拡散複合層(6)~(7)のガス拡散抵抗の測定値を示す図である。 図9(a)は、炭素繊維からなるガス拡散性電極基材を有する従来のガス拡散複合層を燃料電池に適用した状態を説明するための概略断面図であり、図9(b)は、図9(a)に示すガス拡散複合層の一部を拡大して示す図である。 図10(a)は、従来の製造方法により製造したガス拡散複合層を燃料電池に適用した状態を説明するための概略断面図であり、図10(b)は、図10(a)に示すガス拡散複合層の一部を拡大して示す図である。
本開示の燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法は、多孔質ガス拡散層と、微細多孔質層とを含む燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法であって、チタン、金、銀、銅、白金、錫、鉄及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含み、平均粒子径が10μm以上150μm以下である金属材料粒子と、発泡剤とを含む混合物を成型して得た成型体を焼成して焼結させて前記多孔質ガス拡散層を作製する工程と、炭素材料を含む微細多孔質層形成用材料を用いて、前記多孔質ガス拡散層の細孔の少なくとも一部を充填し、かつ当該多孔質ガス拡散層の表面の少なくとも一部を被覆する前記微細多孔質層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
最初に、従来の製造方法により製造された燃料電池用のガス拡散複合層の問題を説明した上で、本開示の燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法について説明する。
図10(a)は、従来の製造方法により製造したガス拡散複合層を燃料電池に適用した状態を説明するための概略断面図であり、具体的には、特許文献2に記載の膜電極接合体を燃料電池に適用した状態を示す模式図である。また、図10(b)は、図10(a)に示すガス拡散複合層の一部を拡大して示す図である。
図10に示す膜電極接合体は、金属材料の化学エッチングにより形成された細孔611を有する多孔質金属ガス拡散層61と、当該多孔質金属ガス拡散層61と触媒層63との間に介設された微細多孔質層62とを有している。前述したように、微細多孔質層62は、多孔質金属ガス拡散層61の細孔611を充填しかつ多孔質金属ガス拡散層61の表面をコーティングするように形成されている。
なお、図10に示す膜電極接合体において、多孔質金属ガス拡散層61及び微細多孔質層62の複合層が、本開示の製造方法により製造されるガス拡散複合層に相当する。このため、以下の説明において、図10に示す多孔質金属ガス拡散層61及び微細多孔質層62の複合層を、ガス拡散複合層60と示す。
図10に示す膜電極接合体では、化学エッチングにより形成された多孔質金属ガス拡散層61の細孔611を通して、バイポーラプレートのガス流路であるガスチャネル64から供給されたガスの触媒層63への拡散及び触媒層63で生成した水のガスチャネル64への排水が行われる(図10(a)、(b)参照)。
本研究者は、金属材料を化学エッチングして形成された細孔611を有する、図10に示す多孔質金属ガス拡散層61は、炭素繊維からなる多孔質ガス拡散層51(図9参照)と比較して高い剛性を得られるものの、各細孔611間に存在するブリッジ612により、以下の(1)~(2)の現象が発生し、触媒層63へのガス拡散性及びガスチャネル64への排水性が低下する問題があり、当該多孔質金属ガス拡散層61を有するガス拡散複合層60を適用した燃料電池は、発電性能が十分に高められないことを知見した。
なお、ブリッジ612とは、金属材料の化学エッチングにより形成された多孔質金属ガス拡散層61における、連続する細孔611間の領域をいう。
(1)細孔611間に存在するブリッジ612が、各ガスチャネル64の開口部641の一部又は全部を閉塞することで、ガスチャネル64からガス拡散複合層60を経由して触媒層63に至るまでのガスの流路が閉塞され、ガス拡散性が低下する(図10(b)参照)。
(2)細孔611間に存在するブリッジ612が、各ガスチャネル64の開口部641の一部又は全部を閉塞することで、触媒層63で生成した水が、ガス拡散複合層60を経由してガスチャネル64に至るまでの流路が閉塞され、排水性が低下する(図10(b)参照)。
また、本研究者は、図10に示す微細多孔質層62を形成する際に、多孔質金属ガス拡散層61の各細孔611に微細多孔質層形成用材料が浸透し、多孔質金属ガス拡散層61の細孔611の全てが微細多孔質層62により略完全に充填された状態(図10(b)参照。)となることにより、多孔質金属ガス拡散層61のガス拡散抵抗が増大し易い問題があり、当該多孔質金属ガス拡散層61を有するガス拡散複合層60を適用した燃料電池は、発電性能が十分に高められないことを知見した。
このような従来の製造方法に対して、本開示の燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法は、以下の特徴を有することにより、上記問題を解決することができる。
本開示の燃料電池用ガス拡散複合層の製造工程について、図1~図2を参照しつつ説明する。
先ず、チタン、金、銀、銅、白金、錫、鉄及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含み平均粒子径が10μm以上150μm以下である金属材料粒子と、発泡剤とを含む混合物を成型して得た成型体を焼成して焼結させて多孔質ガス拡散層を作製する多孔質ガス拡散層作製工程を行う(工程I)。
次に、炭素材料を含む微細多孔質層形成用材料を用いて、前記多孔質ガス拡散層の細孔の少なくとも一部を充填し、かつ当該多孔質ガス拡散層の表面の少なくとも一部を被覆する微細多孔質層を形成する微細多孔質層形成工程を行う(工程II)。
(工程I)
先ず、多孔質ガス拡散層作製工程(工程I)について説明する。
図1は、本開示の燃料電池用ガス拡散複合層の製造方法における多孔質ガス拡散層作製工程の一例を説明するためのフローチャート図である。多孔質ガス拡散層作製工程(工程I)は、例えば図1に示す工程(I-1)~工程(I-5)により行うことができる。
(工程(I-1))
先ず、金属材料粒子と発泡剤とを含む混合物を準備する準備工程を行う。
金属材料粒子としては、チタン、金、銀、銅、白金、錫、鉄及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含む金属材料の粒子を用いる。鉄を含む金属材料としては、例えばSUSを用いても良い。
金属材料粒子の平均粒径(D50)は、10μm以上150μm以下である。
金属材料粒子の平均粒子径(D50)が10μm以上であることにより、後述する焼結工程(工程(I-3))の後に得られる多孔質ガス拡散層の空隙率の低下を抑制することができ、当該多孔質ガス拡散層の表面に微細多孔質層を形成した後の多孔質ガス拡散層におけるガス拡散抵抗の増大を抑制することができる。
また、金属材料粒子の平均粒子径(D50)が150μm以下であることにより、後述する焼結工程(工程(I-3))の後に得られる多孔質ガス拡散層の空隙率が過度に高くなるのを抑制することができ、当該多孔質ガス拡散層における剛性の低下を抑制することが可能となる。
金属材料粒子の平均粒子径(D50)は、好ましくは、20μm以上80μm以下である。
なお、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率と、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗との関係については、後述する参考実験例3の評価の項目において詳述する。
本開示において、金属材料粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定により測定される値である。また、本開示においてメディアン径(D50)とは、粒径の小さい粒子から順に粒子を並べた場合に、金属材料粒子の累積体積が全体の体積の半分(50%)となる径である。
発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム等の無機発泡剤が挙げられる。
金属材料粒子と発泡剤とを含む混合物には、例えば、ポリビニルアルコール等の水系バインダーを混合してもよい。
金属材料粒子と発泡剤と水系バインダーとの配合比率は、後述する焼結工程(工程(I-3))後に得られる多孔質ガス拡散層において目標とする空隙率等に応じて、適宜調整することができる。
(工程(I-2))
次に、工程(I-1)で得られた混合物を型に充填して所望の形状及び所望の厚さに成形し、成形体の厚みを均一にして表面を平滑化した後、発泡剤の発泡温度付近の温度で加熱することで発泡剤を発泡させ、発泡スラリーを得る発泡工程を行ってもよい。
なお、本開示の製造方法においては、工程(I-1)で得られた混合物を型に充填して所望の形状及び所望の厚さに成形して得た成形体を発泡剤の発泡温度付近の温度で加熱することなく、当該成形体をそのまま、後述する焼結工程(I-3)において焼成して焼結させてもよい。
(工程(I-3))
次に、工程(I-2)で作製した発泡スラリーを乾燥させた後、金属材料粒子の材質に応じた温度で焼成して焼結させて、焼結金属多孔体である多孔質ガス拡散層を得る焼結工程を行う。
発泡スラリーの焼結は、得られる焼結金属多孔体の表面に酸化物層が形成することにより多孔質ガス拡散層の電気抵抗が増加するのを抑制する観点から、真空雰囲気下で行うことが好ましい。
(工程(I-4))
次に、工程(I-3)で作製した多孔質ガス拡散層を所望の大きさに切断する切断工程を行う。
これにより、所望の大きさ及び厚さを有する多孔質ガス拡散層を得る。
なお、工程(I-3)において、所望の大きさの多孔質ガス拡散層が得られた場合には、切断工程(工程(I-4))は、必ずしも行わなくてもよい。
(工程(I-5))
次に、工程(I-4)で作製した切断後の多孔質ガス拡散層が、所望の物性値を満たしているか否かを検査する検査工程を行う。
検査を行う項目は、例えば以下に示す、多孔質ガス拡散層の空隙率、曲げ弾性率等が挙げられる。なお、検査工程は任意の工程であり、必ずしも行わなくてもよい。
多孔質ガス拡散層の厚さは、30μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上200μm以下であることがより好ましい。
多孔質ガス拡散層の厚さを30μm以上とすることにより、当該多孔質ガス拡散層の面内透気度の低下を抑制し、ガス拡散複合層を燃料電池に適用したときの発電分布の均一性を向上させることができる。また、多孔質ガス拡散層の厚さを30μm以上とすることにより、当該多孔質ガス拡散層における剛性の低下を抑制することができる。多孔質ガス拡散層の厚さが30μm未満であると、ガス拡散複合層を燃料電池に適用したときに、多孔質ガス拡散層のガス流路への撓み込みや、これに伴う、ガス流路における圧力損失の増大及びガス拡散複合層の潰れ等が発生する虞がある。
また、多孔質ガス拡散層の厚さを300μm以下とすることにより、後述する微細多孔質層形成工程(工程II)において、微細多孔質層形成用材料が当該多孔質ガス拡散層の全域に浸透した場合に、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗が増大するのを抑制することができ、当該多孔質ガス拡散層を有するガス拡散複合層において、高いガス拡散性を得ることができる。
なお、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の厚さと、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗との関係については、後述する参考実験例2の評価の項目において詳述する。
なお、本開示において、多孔質ガス拡散層の面内透気度とは、多孔質ガス拡散層の面方向での通気性能を示す評価指標である。
微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率は、60%以上90%以下であることが好ましく、75%以上85%以下であることがより好ましい。
微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率を60%以上とすることにより、後述する微細多孔質層形成工程(工程II)において、微細多孔質層形成用材料が当該多孔質ガス拡散層の全域に浸透した場合に、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗が増大するのを抑制することができ、当該多孔質ガス拡散層を有するガス拡散複合層において、高いガス拡散性を得ることができる。
一方、多孔質ガス拡散層の空隙率を90%以下とすることにより、当該多孔質ガス拡散層の剛性の低下を抑制することができる。
なお、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率と、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗との関係については、後述する参考実験例3の評価の項目において詳述する。
本開示において、「空隙率」とは、材料の密度から算出される理論体積と実際の体積との比から求められる値である。空隙率は、液浸法、排除気体容積法、圧力比較法等により測定することができる。
微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率は、例えば、前述した混合物の準備工程(工程(I-1))において混合物を調製する際に、金属材料粒子、発泡剤及び水系バインダーの配合比率を調整する、又は、前述した発泡工程(工程(I-2))における発泡温度や発泡時間を制御することによって、所望の範囲に調製することができる。
微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の曲げ弾性率は、15GPa以上60GPa以下であることが好ましく、20GPa以上50GPa以下であることがより好ましい。
微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の曲げ弾性率を15GPa以上とすることで、当該多孔質ガス拡散層における剛性の低下を抑制することができる。このため、ガス拡散複合層を適用した燃料電池において、多孔質ガス拡散層のガス流路への撓み込みや、これに伴うガス流路における圧力損失の増大及び当該ガス拡散複合層の潰れ等の現象を抑制することができる。
また、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の曲げ弾性率を60GPa以下とすることで、当該多孔質ガス拡散層の空隙率を、前述した所望の範囲に調製することが可能となる。
なお、本開示において、曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定した値とする。
(工程II)
微細多孔質層形成工程(工程II)は、例えば、工程Iで作製した多孔質ガス拡散層の一方の主面の少なくとも一部に、炭素材料を含む微細多孔質層形成用材料を塗布した後、所定の温度で乾燥及び/又は焼成することにより行うことができる。
微細多孔質層形成用材料は、炭素材料を含む。
炭素材料としては、カーボンブラック(炭素粉末)、アセチレンブラック、膨張黒鉛、炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
微細多孔質層形成用材料は、前述した炭素材料に加えて、親水性を付与するための界面活性剤、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と示すことがある)等の撥水性樹脂を含むことが好ましい。また、微細多孔質層形成用材料には、さらに、前述した炭素材料を溶媒に均一に分散させ安定させるために、分散剤や増粘剤を配合してもよい。
微細多孔質層形成用材料の塗布は、ドクターブレード法またはスクリーン印刷法を用いて行うことができる。
多孔質ガス拡散層の表面に塗布した微細多孔質層形成用材料の少なくとも一部は、多孔質ガス拡散層の細孔に浸透させてもよい。微細多孔質層形成用材料は、多孔質ガス拡散層の一部に浸透させるようにしてもよく、多孔質ガス拡散層における水の液滴化を抑制する観点から多孔質ガス拡散層の全体に浸透させるようにしてもよい。
微細多孔質層形成用材料を多孔質ガス拡散層に浸透させた後、さらに微細多孔質層形成用材料を多孔質ガス拡散層の表面に塗布することにより、多孔質ガス拡散層の表面を被覆する、微細多孔質層形成用材料の層を形成することができる。
以上のようにして微細多孔質層形成用材料を塗布した後の多孔質ガス拡散層を、乾燥及び/又は焼成することにより、後述する充填領域及び表面被覆部を有する微細多孔質層を形成することができる。
多孔質ガス拡散層の厚さと微細多孔質層の表面被覆部の厚さとの比は特に限定されないが、1:4~4:1の範囲であってもよい。
本開示の製造方法によれば、焼結金属多孔体である多孔質ガス拡散層の表面に、当該多孔質ガス拡散層の細孔の少なくとも一部を充填し、かつ当該多孔質ガス拡散層の表面の少なくとも一部を被覆する微細多孔質層を形成することで、燃料電池に適用したときに、高い剛性を有し、触媒層と多孔質ガス拡散層との界面における水の滞留が生じ難く、またガス流路から供給されたガスの触媒層への拡散が生じ易く、排水性及びガス拡散性に優れたガス拡散複合層を提供することができる。
図2(a)は、本開示のガス拡散複合層の製造方法により製造したガス拡散複合層を燃料電池に適用した状態を説明するための概略断面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すガス拡散複合層の一部を拡大して示す図である。
図2に示すように、ガス拡散複合層10は、多孔質ガス拡散層11と微細多孔質層12とを有している。微細多孔質層12は、多孔質ガス拡散層11の細孔を充填する充填領域121と、多孔質ガス拡散層11の表面を被覆する表面被覆部122とを有している。図2中、符号13は触媒層を示しており、符号14は溝状のガス流路を示している。
本開示の製造方法によれば、チタン、金、銀、銅、白金、錫、鉄及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含む金属材料粒子と、発泡剤とを含む混合物を焼結させて、焼結金属多孔体である多孔質ガス拡散層を作製することにより、炭素繊維からなる多孔質ガス拡散層51(図9参照。)と比較して、高い剛性を有する多孔質ガス拡散層を備えたガス拡散複合層を得ることができる。
従って、燃料電池に適用したときに、多孔質ガス拡散層のガス流路への撓み込みや、これに伴う、ガス流路における圧力損失の増大及びガス拡散複合層の潰れ等の発生が抑制されたガス拡散複合層を得ることができる。
また、本開示の製造方法によれば、前述した金属材料粒子と発泡剤とを含む混合物を焼結させて、焼結金属多孔体である多孔質ガス拡散層を作製しているため、炭素繊維からなる多孔質ガス拡散層51(図9参照。)を用いた場合と比較して、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層において高い剛性を得られ易い。
このため、炭素繊維からなる多孔質ガス拡散層51を用いた場合と比較して、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層における空隙率を高めることが可能となり、微細多孔質層を形成した後の多孔質ガス拡散層において、ガス拡散抵抗が増大するのを抑制することができる。
なお、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率と、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗との関係については、後述する評価の項目において詳述する。
また、本開示の製造方法によれば、前述した金属材料粒子と、発泡剤とを含む混合物を焼結させて、焼結金属多孔体である多孔質ガス拡散層を作製しているため、層全体に、発泡剤により形成された微細な孔部を有する多孔質ガス拡散層を備えたガス拡散複合層を得ることができる。
従って、本開示の製造方法によって製造されるガス拡散複合層を適用した燃料電池においては、発泡剤により形成された多孔質ガス拡散層の孔部を通して、ガス流路から供給されるガスの触媒層への拡散及び触媒層で生成した水のガス流路への排水が行われる。
即ち、本開示の製造方法によれは、ブリッジ612(図10(b)参照)を有しないガス拡散複合層を得られるため、当該ガス拡散複合層を燃料電池に適用したときに、各ガス流路の開口部の一部又は全部が閉塞される現象を抑制できるガス拡散複合層を提供することができる。
従って、本開示の製造方法によれば、燃料電池に適用したときに、ガス流路からガス拡散複合層を経由して触媒層に至るまでのガスの流路が閉塞される現象や、触媒層で生成した水がガス拡散複合層を経由してガス流路に至るまでの流路が閉塞される現象を抑制することができ、多孔質ガス拡散層の全体に形成された孔部からなるシンプルな流路により、ガス流路から供給されたガスの触媒層への拡散及び触媒層で生成した水のガス流路への排水を行うことができる。
また、本開示の製造方法によれば、金属材料粒子と発泡剤とを含む混合物を焼結させることにより、発泡剤により形成された細孔を層全体に有する多孔質ガス拡散層を作製し、当該多孔質ガス拡散層の表面に、微細多孔質層を形成する。そのため、例えば図10に示すような、金属材料の化学エッチングにより形成された細孔611を有する多孔質金属ガス拡散層61の表面に微細多孔質層62を形成する場合と比較して、多孔質ガス拡散層の各細孔の全てに、微細多孔質層形成用材料が浸透する現象が生じ難く、当該多孔質ガス拡散層の細孔の全てが微細多孔質層により略完全に充填された状態(例えば、図10(b)参照。)となるのを抑制することができる。
従って、当該多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗の増大を抑制することができ、燃料電池に適用したときに、高い発電性能を得られるガス拡散複合層を得ることができる。
なお、本開示において、多孔質ガス拡散層とは、例えば平均細孔径が10~100μmの範囲にあるものをいい、微細多孔質層とは、例えば平均細孔径が0.1~2.0μmの範囲にあるものをいうものとすることができる。
本開示においては、平均細孔径とは、水銀圧入法により測定した累積細孔分布の50%における数平均細孔径(P50)を意味する。
ガス拡散複合層のガス拡散抵抗は、80s/m以下であることが好ましく、60s/m以下であることがより好ましい。
ガス拡散複合層のガス拡散抵抗を80s/m以下とすることで、当該ガス拡散複合層を燃料電池に適用したときに、ガス流路から供給されたガスをガス拡散複合層中に均一に拡散させることができ、発電性能の良好な燃料電池を得ることができる。
ガス拡散抵抗とは、ガスの拡散困難性を示す指標値である。本開示において、ガス拡散抵抗は、公知の方法により測定することができる。
図3は、本開示の製造方法により製造されたガス拡散複合層を適用した燃料電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。燃料電池100は、水素イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ということがある)101と、前記電解質膜101を挟んだ一対のアノード電極106及びカソード電極107とでなる膜・電極接合体108を含み、さらに前記膜・電極接合体108を電極の外側から挟んだ一対のアノード側セパレータ109及びカソード側セパレータ110とでなる。セパレータと電極の境界にはガス流路111及び112が確保され、アノード側では水素ガスに代表される燃料が、カソード側では酸素を含むガス(通常は空気)がそれぞれ連続的に供給される。通常は電極として、電解質膜側から順に触媒層とガス拡散層とを積層して構成されたものが用いられる。すなわち、アノード電極106はアノード触媒層102とアノード側ガス拡散層104とを積層したものからなり、カソード電極107はカソード触媒層103とカソード側ガス拡散層105とを積層したものからなる。
アノード側ガス拡散層104及びカソード側ガス拡散層105として、本開示の製造方法により製造されたガス拡散複合層を適用する。
アノード触媒層に含まれるアノード触媒としては、触媒成分を導電性粒子に担持させたものが用いられる。触媒成分としては、アノード触媒層に供給される燃料の酸化反応を触媒する成分であれば特に限定されず、例えば、白金等が用いられる。触媒担体である導電性粒子としては、カーボンブラック等の炭素粒子等が用いられる。
カソード触媒層に含まれるカソード触媒としては、触媒成分を導電性粒子に担持させたものが用いられる。触媒成分としては、例えば、白金等が用いられる。触媒担体である導電性粒子としては、カーボンブラック等の炭素粒子等が用いられる。
電解質膜は、通常、アノード触媒層とカソード触媒層との間に存在する層である。電解質膜を介して、アノード触媒層とカソード触媒層との間にイオンが伝導する。
電解質膜の材料は、燃料電池に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)膜などのパーフルオロカーボンスルホン酸膜等が挙げられる。
アノード触媒層、カソード触媒層、カソード側ガス拡散層、アノード側ガス拡散層及び電解質膜を含む膜・電極接合体の外側に、さらにセパレータが設けられていてもよい。
アノード側セパレータ及びカソード側セパレータは、ガス遮断性及び電子伝導性を有する部材によって形成されており、例えばカーボンを圧縮してガス不透過とした緻密性カーボンなどのカーボン部材や、プレス成型したステンレス鋼などの金属部材によって形成されている。
燃料電池の製造方法の一例を以下説明する。まず、電解質膜の一方の面にアノード触媒層を形成し、電解質膜の他方の面にカソード触媒層を形成する。次に、得られた接合体について、アノード触媒層に面する側にアノード側ガス拡散層及びアノード側セパレータを配置し、カソード触媒層に面する側にカソード側ガス拡散層及びカソード側セパレータを配置することによって、燃料電池が完成する。
[参考実験例1]
1.ガス拡散複合層(1)の作製
1)多孔質ガス拡散層(焼結金属多孔体)の作製
金属材料粒子(チタンの粒子、平均粒径(D50)100μm)と、発泡剤として炭酸水素ナトリウムと、水系バインダーとしてポリビニールアルコールとを混合することにより、多孔質ガス拡散層形成用の混合物1を調製した(工程I-1)。
次に、混合物1を型に充填して成形し、成形体の厚みを均一にして表面を平滑化した後、加熱することで発泡剤を発泡させ、発泡スラリー1を得た(工程(I-2))。
次に、工程(I-2)で得られた発泡スラリー1を乾燥させ、次いで、真空条件下、焼成して焼結させて、焼結金属多孔体である多孔質ガス拡散層を得た(工程(I-3))。
次に、工程(I-3)で作製した多孔質ガス拡散層を所望の大きさに切断し、厚さAの多孔質ガス拡散層(1)を得た(工程(I-4))。
次に、工程(I-4)で得られた多孔質ガス拡散層(1)が、所望の物性値を満たしているか否かを検査する検査工程を行った(工程(I-5))。
多孔質ガス拡散層(1)の空隙率は50%であり、曲げ弾性率は50GPaであった。
2)微細多孔質層の形成
微細多孔質層形成用材料は、カーボン粉末と、界面活性剤(Sigma-Aldrich製TRITON X-114)と、PTFEとを用意し、混合することにより調製した。
得られた微細多孔質層形成用材料を多孔質ガス拡散層(1)の片面上に配置して乾燥させ、厚さAの多孔質ガス拡散層(1)上に厚さBの表面被覆部を有する微細多孔質層(1)を備えるガス拡散複合層(1)を得た。微細多孔質層(1)の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(1)の各層の厚さを、表1に示す。
なお、表1及び後述する表2~3において、多孔質ガス拡散層のうち微細多孔質層による充填領域を有しない領域を、便宜的に「GDL」と示し、多孔質ガス拡散層のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域を、便宜的に「GDL+MPL」と示し、微細多孔質層のうち表面被覆部である領域を、便宜的に「MPL」と示す。また、表1~3中「B」は、「A/2」に相当する厚さである。また、表1~3中「‐」は、対象領域が存在しないことを示す。
2.ガス拡散複合層(2)の作製
多孔質ガス拡散層(1)と同様の方法で得た厚さAの多孔質ガス拡散層(2)の表面に、微細多孔質層形成用材料をドクターブレード法により塗布した後、多孔質ガス拡散層(2)の深さA/2まで当該微細多孔質層形成用材料を浸透させ、さらに、多孔質ガス拡散層(2)の当該微細多孔質層形成用材料を浸透させた表面に微細多孔質層形成用材料を塗布して乾燥させ、厚さA/2の充填領域及び厚さB/2の表面被覆部を有する微細多孔質層(2)を形成し、厚さAの多孔質ガス拡散層(2)と、厚さA/2の充填領域及び厚さB/2の表面被覆部を有する微細多孔質層(2)とを備えるガス拡散複合層(2)を得た。微細多孔質層(2)の表面被覆部の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(2)の各層の厚さを、表1に示す。
図4は、参考実験例1で作製したガス拡散複合層(2)の層構成を説明するための概略断面図である。
なお、図4中符号Cは、多孔質ガス拡散層のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)の厚さを示す。
3.ガス拡散複合層(3)の作製
多孔質ガス拡散層(1)と同様の方法で得た厚さAの多孔質ガス拡散層(3)の深さAまで微細多孔質層形成用材料を浸透させ、さらに、多孔質ガス拡散層(3)の一面上に微細多孔質層形成用材料を塗布して乾燥させることにより、厚さAの多孔質ガス拡散層(3)と、厚さAの充填領域及び厚さB/2の表面被覆部を有する微細多孔質層(3)とを備えるガス拡散複合層(3)を得た。微細多孔質層(3)の表面被覆部の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(3)の各層の厚さを、表1に示す。
Figure 0007107288000001
[参考実験例2]
4.ガス拡散複合層(4)の作製
1)多孔質ガス拡散層(焼結金属多孔体)の作製
厚さがA/2であること以外は多孔質ガス拡散層(1)と同様の方法で多孔質ガス拡散層(4)を得た。
多孔質ガス拡散層(4)の空隙率は50%であり、曲げ弾性率は35GPaであった。
2)微細多孔質層の形成
多孔質ガス拡散層(4)の一面上に参考実験例1と同様の方法で得た微細多孔質層形成用材料を配置して乾燥させることにより、厚さA/2の多孔質ガス拡散層(4)と、厚さBの表面被覆部を有する微細多孔質層(4)とを備えるガス拡散複合層(4)を得た。微細多孔質層(4)の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(4)の各層の厚さを、表2に示す。
5.ガス拡散複合層(5)の作製
多孔質ガス拡散層(4)と同様の方法で得た厚さA/2の多孔質ガス拡散層(5)の深さA/2まで、参考実験例1と同様の方法で得た微細多孔質層形成用材料を浸透させ、さらに、多孔質ガス拡散層(5)の微細多孔質層形成用材料を浸透させた表面上に微細多孔質層形成用材料を塗布して乾燥させることにより、厚さA/2の多孔質ガス拡散層(5)と、厚さA/2の充填領域及び厚さB/2の表面被覆部とを有する微細多孔質層(5)とを備えるガス拡散複合層(5)を得た。微細多孔質層(5)の表面被覆部の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(5)の各層の厚さを、表2に示す。
図5は、参考実験例2で作製したガス拡散複合層(5)の層構成を説明するための概略断面図である。
なお、図5中符号Cは、多孔質ガス拡散層のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)の厚さを示す。
Figure 0007107288000002
[参考実験例3]
6.ガス拡散複合層(6)の作製
1)多孔質ガス拡散層(焼結金属多孔体)の作製
焼結処理後に得られる多孔質ガス拡散層の厚さがA/2、空隙率が75%となるようにしたこと以外は、参考実験例1と同様にして、多孔質ガス拡散層(6)を得た。
多孔質ガス拡散層(6)の空隙率は75%であり、曲げ弾性率は20GPaであった。
2)微細多孔質層の形成
厚さA/2の多孔質ガス拡散層(6)の一面上に微細多孔質層形成用材料を配置して乾燥させることにより、厚さA/2の多孔質ガス拡散層(6)と、厚さBの表面被覆部を有する微細多孔質層(6)とを備えるガス拡散複合層(6)を得た。微細多孔質層(6)の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(6)の各層の厚さを、表3に示す。
7.ガス拡散複合層(7)の作製
多孔質ガス拡散層(6)と同様の方法で得た厚さA/2の多孔質ガス拡散層(7)の深さA/2まで参考実験例1と同様の方法で得た微細多孔質層形成用材料を浸透させ、さらに、多孔質ガス拡散層(7)の微細多孔質層形成用材料を浸透させた表面上に微細多孔質層形成用材料を塗布して乾燥させることにより、厚さA/2の多孔質ガス拡散層(7)と、厚さA/2の充填領域及び厚さB/2の表面被覆部を有する微細多孔質層(7)とを備えるガス拡散複合層(7)を得た。微細多孔質層(7)の表面被覆部の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(7)の各層の厚さを、表3に示す。
Figure 0007107288000003
[評価方法]
(ガス拡散抵抗の測定)
ガス拡散複合層(1)~(7)について、ガス拡散抵抗の測定を行った。
ガス拡散抵抗の測定は、ガス拡散複合層(1)~(7)の多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有しない領域(GDL)、ガス拡散複合層(1)~(7)の多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)、及びガス拡散複合層(1)~(7)の微細多孔質層(1)~(7)のうちの表面被覆部(MPL)について、それぞれ行った。
ガス拡散抵抗の測定は、具体的には以下のようにして行った。
45℃、165%RH、低酸素濃度(酸素濃度:1%)、測定装置(株式会社東陽テクニカ製装置)の条件下において、ガス拡散複合層の各層及び各部のI-V測定を実施し、限界電流密度から次式より算出される値をガス拡散抵抗とした。
total=PO2/(Ilim/4F)×RT
式中、Rtotal:ガス拡散抵抗、Ilim:限界電流密度、F:ファラデー定数、R:気体定数、T:絶対温度、PO2:酸素分圧である。
(評価)
図6~8は、ガス拡散複合層(1)~(7)のガス拡散抵抗の測定結果を示す図である。
なお、図6(a)~図8(a)は、ガス拡散複合層(1)~(7)のガス拡散抵抗の測定値を示したものであり、それぞれ、多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有しない領域(GDL)についての測定値、多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)についての測定値、及び微細多孔質層(1)~(7)のうちの表面被覆部(MPL)についての測定値に分けて示している。
また、図6(b)~図8(b)は、多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有しない領域(GDL)、多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)、及び微細多孔質層(1)~(7)のうちの表面被覆部(MPL)のそれぞれについて、同一の構成材料で作製した層の厚さとガス拡散抵抗との関係を示す図である。
図6に示すように、ガス拡散複合層(1)の多孔質ガス拡散層(1)は微細多孔質層(1)による充填領域(GDL+MPL)を有しないため、ガス拡散複合層(1)全体としてのガス拡散抵抗が、概ね80s/mに止まっていた。
一方、ガス拡散複合層(2)の多孔質ガス拡散層(2)は、全体の厚さAの1/2の厚さの領域が、微細多孔質層(2)により充填されており(GDL+MPL)、当該領域のガス拡散抵抗は、ガス拡散複合層(1)の多孔質ガス拡散層(1)のガス拡散抵抗と比較して増大していた。従って、ガス拡散複合層(1)全体としてのガス拡散抵抗は、80s/mを超えるが所望の値に留めることができ、剛性と、ガス拡散性及び排水性とを両立することができた。
また、ガス拡散複合層(3)の多孔質ガス拡散層(3)は、その全域が微細多孔質層(3)により充填されており(GDL+MPL)、当該領域のガス拡散抵抗は、ガス拡散複合層(1)の多孔質ガス拡散層(1)のガス拡散抵抗と比較して、増大していたが所望の値に留めることができ、剛性と、ガス拡散性及び排水性とを両立することができた。
以上の結果から、多孔質ガス拡散層の空隙率が50%の場合、当該多孔質ガス拡散層の全域を微細多孔質層により充填すると、ガス拡散抵抗が増加するが、所望の値に留めることができ、剛性と、ガス拡散性及び排水性とを両立することができることが明らかとなった。
一方、例えば図10に示すような、金属材料の化学エッチングにより形成した細孔を有する多孔質金属ガス拡散層61は、一般に、参考実験例1で使用した多孔質ガス拡散層と同程度の空隙率(概ね50%程度)しか有しないため、当該多孔質ガス拡散層61の全域に微細多孔質層形成用材料が浸透することにより、当該多孔質ガス拡散層61を有するガス拡散複合層のガス拡散抵抗はガス拡散複合層(3)と比較して大幅に増大すると推定される。
図7に示すように、ガス拡散複合層(4)の多孔質ガス拡散層(4)は、参考実験例1のガス拡散複合層(1)の多孔質ガス拡散層(1)の厚さAの1/2の厚さとされており、当該多孔質ガス拡散層(4)は微細多孔質層(4)による充填領域を有しないため、ガス拡散複合層(4)全体としてのガス拡散抵抗は、80s/mを下回っていた。
一方、ガス拡散複合層(5)の多孔質ガス拡散層(5)は、その全域が微細多孔質層(5)により充填されており(GDL+MPL)、当該領域のガス拡散抵抗は、ガス拡散複合層(4)の多孔質ガス拡散層(4)のガス拡散抵抗と比較して増大しているものの、その増大幅は、参考実験例1における多孔質ガス拡散層(3)の微細多孔質層(3)による充填領域(GDL+MPL)のガス拡散抵抗の増大幅と比較して、大幅に低減されていた。
以上の結果から、多孔質ガス拡散層の厚さを低減した場合には、当該多孔質ガス拡散層の全域を微細多孔質層で充填した場合でも、多孔質ガス拡散層におけるガス拡散抵抗の増大幅を抑制できることが分かる。
図8に示すように、ガス拡散複合層(6)の多孔質ガス拡散層(6)は、参考実験例1のガス拡散複合層(1)の多孔質ガス拡散層(1)の厚さAの1/2の厚さであり、また、当該多孔質ガス拡散層(6)の空隙率は75%と、参考実験例1の多孔質ガス拡散層(1)の空隙率より高い値とされている。当該ガス拡散複合層(6)の多孔質ガス拡散層(6)は、微細多孔質層(6)による充填領域を有しないため、ガス拡散複合層(6)全体としてのガス拡散抵抗は、80s/mを下回っていた。
一方、ガス拡散複合層(7)の多孔質ガス拡散層(7)は、その全域が微細多孔質層(7)により充填されており、当該多孔質ガス拡散層(7)のガス拡散抵抗は、ガス拡散複合層(6)の多孔質ガス拡散層(6)のガス拡散抵抗と比較して増大しているものの、その増大幅は、参考実験例2における多孔質ガス拡散層(5)の微細多孔質層(5)による充填領域(GDL+MPL)のガス拡散抵抗の増大幅と比較して、さらに低減されており、ガス拡散複合層(7)全体としてのガス拡散抵抗は、80s/mを下回っていた。
以上の結果から、多孔質ガス拡散層の空隙率が75%以上の場合には、当該多孔質ガス拡散層の全域を微細多孔質層で充填した場合でも、多孔質ガス拡散層におけるガス拡散抵抗の増大幅を抑制できることが分かる。
10 ガス拡散複合層、11 多孔質ガス拡散層、12 微細多孔質層、121 充填領域、122 表面被覆部、13 触媒層、14 ガス流路、50 ガス拡散複合層、51 炭素繊維からなるガス拡散性電極基材、52 マイクロポーラス層、53 流路、60 ガス拡散複合層、61 多孔質金属ガス拡散層、611 細孔、612 ブリッジ、62 微細多孔質層、63 触媒層、64 ガスチャネル、641 ガスチャネル64の開口部、100 燃料電池、101 固体高分子電解質膜、102 アノード触媒層、103 カソード触媒層、104 アノード側ガス拡散層、105 カソード側ガス拡散層、106 アノード電極、107 カソード電極、108 膜・電極接合体、109 アノード側セパレータ、110 カソード側セパレータ、111,112 ガス流路

Claims (1)

  1. 多孔質ガス拡散層と、微細多孔質層とを含む燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法であって、
    チタン、金、銀、銅、白金、錫、鉄及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含み、平均粒子径が10μm以上150μm以下である金属材料粒子と、発泡剤とを含む混合物を成型して得た成型体を焼成して焼結させて前記多孔質ガス拡散層を作製する工程と、
    炭素材料を含む微細多孔質層形成用材料を用いて、前記多孔質ガス拡散層の細孔の少なくとも一部を充填し、かつ当該多孔質ガス拡散層の表面の少なくとも一部を被覆する前記微細多孔質層を形成する工程と、を有することを特徴とする燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法。
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