JP7107288B2 - 燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法 - Google Patents
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Description
各電極は、一般的に、電解質膜側から順に触媒層、ガス拡散層が積層した構造を有しており、前記ガス拡散層に、前記セパレータのガス流路を有する側の面を接触させて配置されている。
図9中、符号50はガス拡散複合層を示し、符号51は炭素繊維からなるガス拡散性電極基材を示し、符号52はマイクロポーラス層を示し、符号53は溝状の流路を示している。ガス拡散性電極基材51の大孔の一部は、小孔を有するマイクロポーラス層52により充填されている。ガス拡散複合層50においては、主にガス拡散性電極基材51の大孔を通じて、セパレータから供給されるガスの拡散及び電気化学反応に伴って生成する水の排出が行われる。
特許文献2では、ガス拡散層として前述した多孔質金属ガス拡散層を用いることでガス拡散層の剛性の向上を図るとともに、多孔質金属ガス拡散層と触媒層の間に微細多孔質層を介在させ、前記微細多孔質層を、前記多孔質金属ガス拡散層の細孔を充填しかつ前記多孔質金属ガス拡散層の表面をコーティングするように構築することで、触媒層と多孔質金属ガス拡散層との界面における水の滞留防止、及び、触媒層へのガス拡散性の向上を図っている。
なお、図10に示す膜電極接合体において、多孔質金属ガス拡散層61及び微細多孔質層62の複合層が、本開示の製造方法により製造されるガス拡散複合層に相当する。このため、以下の説明において、図10に示す多孔質金属ガス拡散層61及び微細多孔質層62の複合層を、ガス拡散複合層60と示す。
図10に示す膜電極接合体では、化学エッチングにより形成された多孔質金属ガス拡散層61の細孔611を通して、バイポーラプレートのガス流路であるガスチャネル64から供給されたガスの触媒層63への拡散及び触媒層63で生成した水のガスチャネル64への排水が行われる(図10(a)、(b)参照)。
本研究者は、金属材料を化学エッチングして形成された細孔611を有する、図10に示す多孔質金属ガス拡散層61は、炭素繊維からなる多孔質ガス拡散層51(図9参照)と比較して高い剛性を得られるものの、各細孔611間に存在するブリッジ612により、以下の(1)~(2)の現象が発生し、触媒層63へのガス拡散性及びガスチャネル64への排水性が低下する問題があり、当該多孔質金属ガス拡散層61を有するガス拡散複合層60を適用した燃料電池は、発電性能が十分に高められないことを知見した。
なお、ブリッジ612とは、金属材料の化学エッチングにより形成された多孔質金属ガス拡散層61における、連続する細孔611間の領域をいう。
(1)細孔611間に存在するブリッジ612が、各ガスチャネル64の開口部641の一部又は全部を閉塞することで、ガスチャネル64からガス拡散複合層60を経由して触媒層63に至るまでのガスの流路が閉塞され、ガス拡散性が低下する(図10(b)参照)。
(2)細孔611間に存在するブリッジ612が、各ガスチャネル64の開口部641の一部又は全部を閉塞することで、触媒層63で生成した水が、ガス拡散複合層60を経由してガスチャネル64に至るまでの流路が閉塞され、排水性が低下する(図10(b)参照)。
先ず、チタン、金、銀、銅、白金、錫、鉄及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含み平均粒子径が10μm以上150μm以下である金属材料粒子と、発泡剤とを含む混合物を成型して得た成型体を焼成して焼結させて多孔質ガス拡散層を作製する多孔質ガス拡散層作製工程を行う(工程I)。
次に、炭素材料を含む微細多孔質層形成用材料を用いて、前記多孔質ガス拡散層の細孔の少なくとも一部を充填し、かつ当該多孔質ガス拡散層の表面の少なくとも一部を被覆する微細多孔質層を形成する微細多孔質層形成工程を行う(工程II)。
先ず、多孔質ガス拡散層作製工程(工程I)について説明する。
図1は、本開示の燃料電池用ガス拡散複合層の製造方法における多孔質ガス拡散層作製工程の一例を説明するためのフローチャート図である。多孔質ガス拡散層作製工程(工程I)は、例えば図1に示す工程(I-1)~工程(I-5)により行うことができる。
先ず、金属材料粒子と発泡剤とを含む混合物を準備する準備工程を行う。
金属材料粒子の平均粒子径(D50)が10μm以上であることにより、後述する焼結工程(工程(I-3))の後に得られる多孔質ガス拡散層の空隙率の低下を抑制することができ、当該多孔質ガス拡散層の表面に微細多孔質層を形成した後の多孔質ガス拡散層におけるガス拡散抵抗の増大を抑制することができる。
また、金属材料粒子の平均粒子径(D50)が150μm以下であることにより、後述する焼結工程(工程(I-3))の後に得られる多孔質ガス拡散層の空隙率が過度に高くなるのを抑制することができ、当該多孔質ガス拡散層における剛性の低下を抑制することが可能となる。
金属材料粒子の平均粒子径(D50)は、好ましくは、20μm以上80μm以下である。
なお、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率と、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗との関係については、後述する参考実験例3の評価の項目において詳述する。
次に、工程(I-1)で得られた混合物を型に充填して所望の形状及び所望の厚さに成形し、成形体の厚みを均一にして表面を平滑化した後、発泡剤の発泡温度付近の温度で加熱することで発泡剤を発泡させ、発泡スラリーを得る発泡工程を行ってもよい。
なお、本開示の製造方法においては、工程(I-1)で得られた混合物を型に充填して所望の形状及び所望の厚さに成形して得た成形体を発泡剤の発泡温度付近の温度で加熱することなく、当該成形体をそのまま、後述する焼結工程(I-3)において焼成して焼結させてもよい。
次に、工程(I-2)で作製した発泡スラリーを乾燥させた後、金属材料粒子の材質に応じた温度で焼成して焼結させて、焼結金属多孔体である多孔質ガス拡散層を得る焼結工程を行う。
発泡スラリーの焼結は、得られる焼結金属多孔体の表面に酸化物層が形成することにより多孔質ガス拡散層の電気抵抗が増加するのを抑制する観点から、真空雰囲気下で行うことが好ましい。
次に、工程(I-3)で作製した多孔質ガス拡散層を所望の大きさに切断する切断工程を行う。
これにより、所望の大きさ及び厚さを有する多孔質ガス拡散層を得る。
なお、工程(I-3)において、所望の大きさの多孔質ガス拡散層が得られた場合には、切断工程(工程(I-4))は、必ずしも行わなくてもよい。
次に、工程(I-4)で作製した切断後の多孔質ガス拡散層が、所望の物性値を満たしているか否かを検査する検査工程を行う。
検査を行う項目は、例えば以下に示す、多孔質ガス拡散層の空隙率、曲げ弾性率等が挙げられる。なお、検査工程は任意の工程であり、必ずしも行わなくてもよい。
多孔質ガス拡散層の厚さを30μm以上とすることにより、当該多孔質ガス拡散層の面内透気度の低下を抑制し、ガス拡散複合層を燃料電池に適用したときの発電分布の均一性を向上させることができる。また、多孔質ガス拡散層の厚さを30μm以上とすることにより、当該多孔質ガス拡散層における剛性の低下を抑制することができる。多孔質ガス拡散層の厚さが30μm未満であると、ガス拡散複合層を燃料電池に適用したときに、多孔質ガス拡散層のガス流路への撓み込みや、これに伴う、ガス流路における圧力損失の増大及びガス拡散複合層の潰れ等が発生する虞がある。
また、多孔質ガス拡散層の厚さを300μm以下とすることにより、後述する微細多孔質層形成工程(工程II)において、微細多孔質層形成用材料が当該多孔質ガス拡散層の全域に浸透した場合に、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗が増大するのを抑制することができ、当該多孔質ガス拡散層を有するガス拡散複合層において、高いガス拡散性を得ることができる。
なお、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の厚さと、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗との関係については、後述する参考実験例2の評価の項目において詳述する。
なお、本開示において、多孔質ガス拡散層の面内透気度とは、多孔質ガス拡散層の面方向での通気性能を示す評価指標である。
微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率を60%以上とすることにより、後述する微細多孔質層形成工程(工程II)において、微細多孔質層形成用材料が当該多孔質ガス拡散層の全域に浸透した場合に、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗が増大するのを抑制することができ、当該多孔質ガス拡散層を有するガス拡散複合層において、高いガス拡散性を得ることができる。
一方、多孔質ガス拡散層の空隙率を90%以下とすることにより、当該多孔質ガス拡散層の剛性の低下を抑制することができる。
なお、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率と、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗との関係については、後述する参考実験例3の評価の項目において詳述する。
微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の曲げ弾性率を15GPa以上とすることで、当該多孔質ガス拡散層における剛性の低下を抑制することができる。このため、ガス拡散複合層を適用した燃料電池において、多孔質ガス拡散層のガス流路への撓み込みや、これに伴うガス流路における圧力損失の増大及び当該ガス拡散複合層の潰れ等の現象を抑制することができる。
また、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の曲げ弾性率を60GPa以下とすることで、当該多孔質ガス拡散層の空隙率を、前述した所望の範囲に調製することが可能となる。
なお、本開示において、曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定した値とする。
微細多孔質層形成工程(工程II)は、例えば、工程Iで作製した多孔質ガス拡散層の一方の主面の少なくとも一部に、炭素材料を含む微細多孔質層形成用材料を塗布した後、所定の温度で乾燥及び/又は焼成することにより行うことができる。
炭素材料としては、カーボンブラック(炭素粉末)、アセチレンブラック、膨張黒鉛、炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
微細多孔質層形成用材料は、前述した炭素材料に加えて、親水性を付与するための界面活性剤、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と示すことがある)等の撥水性樹脂を含むことが好ましい。また、微細多孔質層形成用材料には、さらに、前述した炭素材料を溶媒に均一に分散させ安定させるために、分散剤や増粘剤を配合してもよい。
多孔質ガス拡散層の厚さと微細多孔質層の表面被覆部の厚さとの比は特に限定されないが、1:4~4:1の範囲であってもよい。
図2に示すように、ガス拡散複合層10は、多孔質ガス拡散層11と微細多孔質層12とを有している。微細多孔質層12は、多孔質ガス拡散層11の細孔を充填する充填領域121と、多孔質ガス拡散層11の表面を被覆する表面被覆部122とを有している。図2中、符号13は触媒層を示しており、符号14は溝状のガス流路を示している。
従って、燃料電池に適用したときに、多孔質ガス拡散層のガス流路への撓み込みや、これに伴う、ガス流路における圧力損失の増大及びガス拡散複合層の潰れ等の発生が抑制されたガス拡散複合層を得ることができる。
このため、炭素繊維からなる多孔質ガス拡散層51を用いた場合と比較して、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層における空隙率を高めることが可能となり、微細多孔質層を形成した後の多孔質ガス拡散層において、ガス拡散抵抗が増大するのを抑制することができる。
なお、微細多孔質層形成前の多孔質ガス拡散層の空隙率と、微細多孔質層形成後の多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗との関係については、後述する評価の項目において詳述する。
従って、本開示の製造方法によって製造されるガス拡散複合層を適用した燃料電池においては、発泡剤により形成された多孔質ガス拡散層の孔部を通して、ガス流路から供給されるガスの触媒層への拡散及び触媒層で生成した水のガス流路への排水が行われる。
即ち、本開示の製造方法によれは、ブリッジ612(図10(b)参照)を有しないガス拡散複合層を得られるため、当該ガス拡散複合層を燃料電池に適用したときに、各ガス流路の開口部の一部又は全部が閉塞される現象を抑制できるガス拡散複合層を提供することができる。
従って、本開示の製造方法によれば、燃料電池に適用したときに、ガス流路からガス拡散複合層を経由して触媒層に至るまでのガスの流路が閉塞される現象や、触媒層で生成した水がガス拡散複合層を経由してガス流路に至るまでの流路が閉塞される現象を抑制することができ、多孔質ガス拡散層の全体に形成された孔部からなるシンプルな流路により、ガス流路から供給されたガスの触媒層への拡散及び触媒層で生成した水のガス流路への排水を行うことができる。
従って、当該多孔質ガス拡散層のガス拡散抵抗の増大を抑制することができ、燃料電池に適用したときに、高い発電性能を得られるガス拡散複合層を得ることができる。
本開示においては、平均細孔径とは、水銀圧入法により測定した累積細孔分布の50%における数平均細孔径(P50)を意味する。
ガス拡散複合層のガス拡散抵抗を80s/m以下とすることで、当該ガス拡散複合層を燃料電池に適用したときに、ガス流路から供給されたガスをガス拡散複合層中に均一に拡散させることができ、発電性能の良好な燃料電池を得ることができる。
ガス拡散抵抗とは、ガスの拡散困難性を示す指標値である。本開示において、ガス拡散抵抗は、公知の方法により測定することができる。
アノード側ガス拡散層104及びカソード側ガス拡散層105として、本開示の製造方法により製造されたガス拡散複合層を適用する。
電解質膜の材料は、燃料電池に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)膜などのパーフルオロカーボンスルホン酸膜等が挙げられる。
1.ガス拡散複合層(1)の作製
1)多孔質ガス拡散層(焼結金属多孔体)の作製
金属材料粒子(チタンの粒子、平均粒径(D50)100μm)と、発泡剤として炭酸水素ナトリウムと、水系バインダーとしてポリビニールアルコールとを混合することにより、多孔質ガス拡散層形成用の混合物1を調製した(工程I-1)。
多孔質ガス拡散層(1)の空隙率は50%であり、曲げ弾性率は50GPaであった。
微細多孔質層形成用材料は、カーボン粉末と、界面活性剤(Sigma-Aldrich製TRITON X-114)と、PTFEとを用意し、混合することにより調製した。
得られた微細多孔質層形成用材料を多孔質ガス拡散層(1)の片面上に配置して乾燥させ、厚さAの多孔質ガス拡散層(1)上に厚さBの表面被覆部を有する微細多孔質層(1)を備えるガス拡散複合層(1)を得た。微細多孔質層(1)の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(1)の各層の厚さを、表1に示す。
なお、表1及び後述する表2~3において、多孔質ガス拡散層のうち微細多孔質層による充填領域を有しない領域を、便宜的に「GDL」と示し、多孔質ガス拡散層のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域を、便宜的に「GDL+MPL」と示し、微細多孔質層のうち表面被覆部である領域を、便宜的に「MPL」と示す。また、表1~3中「B」は、「A/2」に相当する厚さである。また、表1~3中「‐」は、対象領域が存在しないことを示す。
多孔質ガス拡散層(1)と同様の方法で得た厚さAの多孔質ガス拡散層(2)の表面に、微細多孔質層形成用材料をドクターブレード法により塗布した後、多孔質ガス拡散層(2)の深さA/2まで当該微細多孔質層形成用材料を浸透させ、さらに、多孔質ガス拡散層(2)の当該微細多孔質層形成用材料を浸透させた表面に微細多孔質層形成用材料を塗布して乾燥させ、厚さA/2の充填領域及び厚さB/2の表面被覆部を有する微細多孔質層(2)を形成し、厚さAの多孔質ガス拡散層(2)と、厚さA/2の充填領域及び厚さB/2の表面被覆部を有する微細多孔質層(2)とを備えるガス拡散複合層(2)を得た。微細多孔質層(2)の表面被覆部の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(2)の各層の厚さを、表1に示す。
図4は、参考実験例1で作製したガス拡散複合層(2)の層構成を説明するための概略断面図である。
なお、図4中符号Cは、多孔質ガス拡散層のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)の厚さを示す。
多孔質ガス拡散層(1)と同様の方法で得た厚さAの多孔質ガス拡散層(3)の深さAまで微細多孔質層形成用材料を浸透させ、さらに、多孔質ガス拡散層(3)の一面上に微細多孔質層形成用材料を塗布して乾燥させることにより、厚さAの多孔質ガス拡散層(3)と、厚さAの充填領域及び厚さB/2の表面被覆部を有する微細多孔質層(3)とを備えるガス拡散複合層(3)を得た。微細多孔質層(3)の表面被覆部の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(3)の各層の厚さを、表1に示す。
4.ガス拡散複合層(4)の作製
1)多孔質ガス拡散層(焼結金属多孔体)の作製
厚さがA/2であること以外は多孔質ガス拡散層(1)と同様の方法で多孔質ガス拡散層(4)を得た。
多孔質ガス拡散層(4)の空隙率は50%であり、曲げ弾性率は35GPaであった。
多孔質ガス拡散層(4)の一面上に参考実験例1と同様の方法で得た微細多孔質層形成用材料を配置して乾燥させることにより、厚さA/2の多孔質ガス拡散層(4)と、厚さBの表面被覆部を有する微細多孔質層(4)とを備えるガス拡散複合層(4)を得た。微細多孔質層(4)の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(4)の各層の厚さを、表2に示す。
多孔質ガス拡散層(4)と同様の方法で得た厚さA/2の多孔質ガス拡散層(5)の深さA/2まで、参考実験例1と同様の方法で得た微細多孔質層形成用材料を浸透させ、さらに、多孔質ガス拡散層(5)の微細多孔質層形成用材料を浸透させた表面上に微細多孔質層形成用材料を塗布して乾燥させることにより、厚さA/2の多孔質ガス拡散層(5)と、厚さA/2の充填領域及び厚さB/2の表面被覆部とを有する微細多孔質層(5)とを備えるガス拡散複合層(5)を得た。微細多孔質層(5)の表面被覆部の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(5)の各層の厚さを、表2に示す。
図5は、参考実験例2で作製したガス拡散複合層(5)の層構成を説明するための概略断面図である。
なお、図5中符号Cは、多孔質ガス拡散層のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)の厚さを示す。
6.ガス拡散複合層(6)の作製
1)多孔質ガス拡散層(焼結金属多孔体)の作製
焼結処理後に得られる多孔質ガス拡散層の厚さがA/2、空隙率が75%となるようにしたこと以外は、参考実験例1と同様にして、多孔質ガス拡散層(6)を得た。
多孔質ガス拡散層(6)の空隙率は75%であり、曲げ弾性率は20GPaであった。
厚さA/2の多孔質ガス拡散層(6)の一面上に微細多孔質層形成用材料を配置して乾燥させることにより、厚さA/2の多孔質ガス拡散層(6)と、厚さBの表面被覆部を有する微細多孔質層(6)とを備えるガス拡散複合層(6)を得た。微細多孔質層(6)の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(6)の各層の厚さを、表3に示す。
多孔質ガス拡散層(6)と同様の方法で得た厚さA/2の多孔質ガス拡散層(7)の深さA/2まで参考実験例1と同様の方法で得た微細多孔質層形成用材料を浸透させ、さらに、多孔質ガス拡散層(7)の微細多孔質層形成用材料を浸透させた表面上に微細多孔質層形成用材料を塗布して乾燥させることにより、厚さA/2の多孔質ガス拡散層(7)と、厚さA/2の充填領域及び厚さB/2の表面被覆部を有する微細多孔質層(7)とを備えるガス拡散複合層(7)を得た。微細多孔質層(7)の表面被覆部の空隙率は50%であった。
ガス拡散複合層(7)の各層の厚さを、表3に示す。
(ガス拡散抵抗の測定)
ガス拡散複合層(1)~(7)について、ガス拡散抵抗の測定を行った。
ガス拡散抵抗の測定は、ガス拡散複合層(1)~(7)の多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有しない領域(GDL)、ガス拡散複合層(1)~(7)の多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)、及びガス拡散複合層(1)~(7)の微細多孔質層(1)~(7)のうちの表面被覆部(MPL)について、それぞれ行った。
45℃、165%RH、低酸素濃度(酸素濃度:1%)、測定装置(株式会社東陽テクニカ製装置)の条件下において、ガス拡散複合層の各層及び各部のI-V測定を実施し、限界電流密度から次式より算出される値をガス拡散抵抗とした。
Rtotal=PO2/(Ilim/4F)×RT
式中、Rtotal:ガス拡散抵抗、Ilim:限界電流密度、F:ファラデー定数、R:気体定数、T:絶対温度、PO2:酸素分圧である。
図6~8は、ガス拡散複合層(1)~(7)のガス拡散抵抗の測定結果を示す図である。
なお、図6(a)~図8(a)は、ガス拡散複合層(1)~(7)のガス拡散抵抗の測定値を示したものであり、それぞれ、多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有しない領域(GDL)についての測定値、多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)についての測定値、及び微細多孔質層(1)~(7)のうちの表面被覆部(MPL)についての測定値に分けて示している。
また、図6(b)~図8(b)は、多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有しない領域(GDL)、多孔質ガス拡散層(1)~(7)のうち微細多孔質層による充填領域を有する領域(GDL+MPL)、及び微細多孔質層(1)~(7)のうちの表面被覆部(MPL)のそれぞれについて、同一の構成材料で作製した層の厚さとガス拡散抵抗との関係を示す図である。
一方、ガス拡散複合層(2)の多孔質ガス拡散層(2)は、全体の厚さAの1/2の厚さの領域が、微細多孔質層(2)により充填されており(GDL+MPL)、当該領域のガス拡散抵抗は、ガス拡散複合層(1)の多孔質ガス拡散層(1)のガス拡散抵抗と比較して増大していた。従って、ガス拡散複合層(1)全体としてのガス拡散抵抗は、80s/mを超えるが所望の値に留めることができ、剛性と、ガス拡散性及び排水性とを両立することができた。
また、ガス拡散複合層(3)の多孔質ガス拡散層(3)は、その全域が微細多孔質層(3)により充填されており(GDL+MPL)、当該領域のガス拡散抵抗は、ガス拡散複合層(1)の多孔質ガス拡散層(1)のガス拡散抵抗と比較して、増大していたが所望の値に留めることができ、剛性と、ガス拡散性及び排水性とを両立することができた。
以上の結果から、多孔質ガス拡散層の空隙率が50%の場合、当該多孔質ガス拡散層の全域を微細多孔質層により充填すると、ガス拡散抵抗が増加するが、所望の値に留めることができ、剛性と、ガス拡散性及び排水性とを両立することができることが明らかとなった。
一方、例えば図10に示すような、金属材料の化学エッチングにより形成した細孔を有する多孔質金属ガス拡散層61は、一般に、参考実験例1で使用した多孔質ガス拡散層と同程度の空隙率(概ね50%程度)しか有しないため、当該多孔質ガス拡散層61の全域に微細多孔質層形成用材料が浸透することにより、当該多孔質ガス拡散層61を有するガス拡散複合層のガス拡散抵抗はガス拡散複合層(3)と比較して大幅に増大すると推定される。
一方、ガス拡散複合層(5)の多孔質ガス拡散層(5)は、その全域が微細多孔質層(5)により充填されており(GDL+MPL)、当該領域のガス拡散抵抗は、ガス拡散複合層(4)の多孔質ガス拡散層(4)のガス拡散抵抗と比較して増大しているものの、その増大幅は、参考実験例1における多孔質ガス拡散層(3)の微細多孔質層(3)による充填領域(GDL+MPL)のガス拡散抵抗の増大幅と比較して、大幅に低減されていた。
以上の結果から、多孔質ガス拡散層の厚さを低減した場合には、当該多孔質ガス拡散層の全域を微細多孔質層で充填した場合でも、多孔質ガス拡散層におけるガス拡散抵抗の増大幅を抑制できることが分かる。
一方、ガス拡散複合層(7)の多孔質ガス拡散層(7)は、その全域が微細多孔質層(7)により充填されており、当該多孔質ガス拡散層(7)のガス拡散抵抗は、ガス拡散複合層(6)の多孔質ガス拡散層(6)のガス拡散抵抗と比較して増大しているものの、その増大幅は、参考実験例2における多孔質ガス拡散層(5)の微細多孔質層(5)による充填領域(GDL+MPL)のガス拡散抵抗の増大幅と比較して、さらに低減されており、ガス拡散複合層(7)全体としてのガス拡散抵抗は、80s/mを下回っていた。
以上の結果から、多孔質ガス拡散層の空隙率が75%以上の場合には、当該多孔質ガス拡散層の全域を微細多孔質層で充填した場合でも、多孔質ガス拡散層におけるガス拡散抵抗の増大幅を抑制できることが分かる。
Claims (1)
- 多孔質ガス拡散層と、微細多孔質層とを含む燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法であって、
チタン、金、銀、銅、白金、錫、鉄及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含み、平均粒子径が10μm以上150μm以下である金属材料粒子と、発泡剤とを含む混合物を成型して得た成型体を焼成して焼結させて前記多孔質ガス拡散層を作製する工程と、
炭素材料を含む微細多孔質層形成用材料を用いて、前記多孔質ガス拡散層の細孔の少なくとも一部を充填し、かつ当該多孔質ガス拡散層の表面の少なくとも一部を被覆する前記微細多孔質層を形成する工程と、を有することを特徴とする燃料電池用のガス拡散複合層の製造方法。
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