JP7106962B2 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Description
F1=S+{(P+Sn)/2}+{(As+Zn+Pb+Sb)/5}・・・(1)
F2=Nb+Ta+Zr+Hf+2Ti+(V/10)・・・(2)
これにより、溶接時にHAZに生じる液化割れを抑止できるとともに、高温で長時間使用された場合のHAZでの耐脆化割れ性にも優れ、しかも、高い耐食性、なかでも、ポリチオン酸SCCに対する高い抵抗力を有するオーステナイト系ステンレス鋼が得られる、と特許文献3に記載されている。
0.2Cu+325Sn≧1.5・・・(1)
Cu-10Sn≧1.9・・・(2)
Cu+35Sn≦6.5・・・(3)
これにより、高温強度を有し、耐孔食性及び耐凝固割れ性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼が得られる、と特許文献4に記載されている。
0<(Nb/92.9+Sn/118.69+Ta/180.95+Ti/47.9+Hf/178.49+V/50.94-C/12.01-N/14.01)×B/10.81・・・(1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、その元素の含有量(質量%)が代入される。
0<(Nb/92.9+Sn/118.69+Ta/180.95+Ti/47.9+Hf/178.49+V/50.94-C/12.01-N/14.01)×B/10.81・・・(1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、その元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、次の元素を含有する。特に断りが無い限り、元素に関する%は質量%を意味する。
炭素(C)は、Cr炭化物を生成して析出し、耐ポリチオン酸SCCを引き起こす。Cはさらに、粒界を強化する元素(Nb、Sn、Ta、Ti、Hf及びV)と結合して炭化物を生成する。この場合、これらの元素が粒界を強化する作用が低下する。そのため、C含有量は低い方が好ましい。C含有量は0.0180%未満である。C含有量の上限は好ましくは0.0160%未満であり、より好ましくは0.0120%である。一方、Cはより低い方が望ましいが、0.0050%未満にすると経済性を損なう。そのため、Cを0.0050%以上含有させてもよい。
シリコン(Si)は溶製時に鋼を脱酸する。Siはさらに、鋼の耐酸化性及び耐水蒸気酸化性を高める。Si含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Siはフェライト相を安定化する。そのため、Si含有量が高すぎれば、高温で時効処理した場合にシグマ(σ)相が生成しやすくなる。この場合、高温環境下における組織安定性が低下し、鋼の靱性及び延性が低下する。したがって、Si含有量は0.001~0.900%である。Si含有量の下限は好ましくは0.020%であり、より好ましくは0.100%である。Si含有量の上限は好ましくは0.800%であり、より好ましくは0.700%である。
マンガン(Mn)は、オーステナイト相を安定化する。Mnはさらに、硫黄(S)による熱間加工性の低下を抑制する。Mnはさらに、鋼を脱酸する。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、σ相等の金属間化合物相の析出が促進される。この場合、高温環境下における組織安定性が低下し、鋼の靱性及び延性が低下する。したがって、Mn含有量は0.001~1.800%である。Mn含有量の下限は好ましくは0.020%であり、より好ましくは0.100%である。Mn含有量の上限は好ましくは1.700%であり、より好ましくは1.600%である。
リン(P)は不純物である。Pは凝固時に粒界に偏析し、凝固割れ感受性を高める。そのため、P含有量は低い方が好ましい。したがって、P含有量は0.0400%以下である。P含有量の上限は好ましくは0.0350%であり、より好ましくは0.0300%である。本実施形態において、P含有量は検出限界以下(1ppm未満)の場合も有り得る。一方、P含有量を極限まで低減すれば、脱リンによる製造コストが高くなる。そのため、P含有量の下限は好ましくは0%超、より好ましくは0.0001%、さらに好ましくは0.0010%である。
硫黄(S)は不純物である。Sは凝固時に粒界に偏析し、凝固割れ感受性を高める。そのため、S含有量は低い方が好ましい。したがって、S含有量は0.0100%以下である。S含有量の上限は好ましくは0.0050%であり、より好ましくは0.0030%である。一方、S含有量を極限まで低減すれば、脱硫による製造コストが高くなる。そのため、S含有量の下限は好ましくは0.0001%である。
銅(Cu)は鋼中に微細に析出して鋼の長時間クリープ強度を高める。Cu含有量が低すぎれば、この効果を得られない。一方、Cuは粒界に偏析しやすい。そのため、Cu含有量が高すぎれば、凝固割れ感受性が高まる。したがって、Cu含有量は2.00~4.50%である。Cu含有量の下限は好ましくは2.20%であり、より好ましくは2.50%である。Cu含有量の上限は好ましくは4.00%であり、より好ましくは3.50%である。
ニッケル(Ni)はオーステナイト安定化元素である。Niは、長時間使用時における鋼組織を安定化する。そのため、Niは鋼の長時間クリープ強度を高める。Ni含有量が低すぎれば、この効果を得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、積層欠陥エネルギーが低下し、冷間加工性が低下する。Ni含有量が高すぎればさらに、コストが増大する。したがって、Ni含有量は9.00~16.00%である。Ni含有量の下限は好ましくは9.50%であり、より好ましくは10.00%である。Ni含有量の上限は好ましくは15.50%であり、より好ましくは15.00%である。
クロム(Cr)は
高温での鋼の耐酸化性及び耐食性を高める。Cr含有量が低すぎれば、この効果を得られない。一方、Crはフェライト安定化元素である。そのため、Cr含有量が高すぎれば、高温でのオーステナイト相の安定性が低下する。この場合、鋼の長時間クリープ強度が低下する。したがって、Cr含有量は15.00~19.00%である。Cr含有量の下限は好ましくは15.20%であり、より好ましくは15.50%であり、さらに好ましくは15.80%である。Cr含有量の上限は好ましくは18.70%であり、より好ましくは18.50%であり、さらに好ましくは18.20%である。
ニオブ(Nb)は、低C及び低Nの条件下で、Sn及びBと共存することで、鋼の長時間クリープ強度を高める。Nbは粒界に偏析して粒界を強化する。これにより、鋼の長時間クリープ強度を高める。Nbの一部はさらに、母相に固溶して鋼の長時間クリープ強度を高める。Nb含有量が低すぎれば、この効果を得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、オーステナイト相の安定性が低下する。Nb含有量が高すぎればさらに、溶接性が低下する。したがって、Nb含有量は0.100~1.000%である。Nb含有量の下限は好ましくは0.150%であり、より好ましくは0.200%である。Nb含有量の上限は好ましくは0.900%であり、より好ましくは0.700%である。
ボロン(B)は低C及び低Nの条件下で、Nb及びSnと共存することで、鋼の長時間クリープ強度を高める。Bは、粒界に偏析してNb及びSnの粒界強化を補助する。これにより、鋼の長時間クリープ強度を高める。B含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、B含有量が高すぎれば、鋼の凝固割れ感受性が高まる。したがって、B含有量は0.0005~0.0300%である。B含有量の下限は好ましくは0.0008%であり、より好ましくは0.0010%である。B含有量の上限は好ましくは0.0200%未満であり、より好ましくは0.0100%である。
スズ(Sn)は鋼の不導体被膜中に酸化物として存在し、鋼の耐孔食性を高める。Snはさらに、不導体被膜下の母相最表面に固溶した状態で濃化し、鋼の耐孔食性を高める。Snはさらに、低C及び低Nの条件下で、Nb及びBと共存することで、Nbの偏析による粒界強化を補助及び促進する。これにより、Snは鋼の長時間クリープ強度を高める。Sn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Snは粒界に偏析しやすい。そのため、Sn含有量が高すぎれば、鋼の凝固割れ感受性が高まる。Sn含有量が高すぎれば、かえって鋼の高温強度が低下する。したがって、Sn含有量は0.0005~0.0100%である。Sn含有量の下限は好ましくは0.0008%であり、より好ましくは0.0010%である。Sn含有量の上限は好ましくは0.0090%であり、より好ましくは0.0085%である。
窒素(N)は粒界を強化する元素(Nb、Sn、Ta、Ti、Hf及びV)と結合して窒化物を生成する。この場合、これらの元素の固溶を阻害し、これらの元素が粒界を強化する作用が低下する。この場合、鋼の長時間クリープ強度が低下する。また、N含有量が高すぎれば、溶接熱影響部での耐ポリチオン酸SCC性及び冷間加工性が低下する。したがって、N含有量は0.0090%以下である。N含有量の上限は好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0070%である。一方、Nはオーステナイト安定化元素であり、鋼の組織を安定化させる。Nはさらに、粒内に微細な窒化物を形成して鋼の強度を高める。したがって、Nをたとえば0.0010%以上含有させてもよい。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、以下の任意元素を含有してもよい。
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Mo含有量は0%であってもよい。含有される場合、Moは母相に固溶して高温強度を高める。Moはさらに、Cr炭化物の粒界析出を抑制する。Moが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、Mo含有量が高すぎれば、オーステナイト相の安定性が低下する。この場合、鋼の高温強度及び冷間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は0~2.00%である。Mo添加の効果を安定して得るためには、Mo含有量の下限は好ましくは0.10%であり、より好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.30%である。
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、W含有量は0%であってもよい。含有される場合、Wは母相に固溶して鋼の高温強度を高める。Wが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、W含有量が高すぎれば、オーステナイト相の安定性が低下する。この場合、鋼の高温強度及び冷間加工性が低下する。したがって、W含有量は0~3.0%である。W添加の効果を安定して得るためには、W含有量の下限は好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.3%である。W含有量の上限は好ましくは1.5%であり、より好ましくは1.2%であり、さらに好ましくは1.0%である。
コバルト(Co)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Co含有量は0%であってもよい。Coはオーステナイト相を安定化する。そのため、Coが含有される場合、Coは母相に固溶して鋼の高温強度を高める。Coが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、Co含有量が高すぎれば、コストが増大する。したがって、Co含有量は0~3.0%である。Co添加の効果を安定して得るためには、Co含有量の下限は好ましくは0.1%である。Co含有量の上限は好ましくは2.5%であり、より好ましくは2.0%である。
タンタル(Ta)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ta含有量は0%であってもよい。含有される場合、Taは粒内で炭化物を形成し、Cr炭化物の粒界への析出を抑制する。これにより、Taは鋼の耐粒界腐食性を高める。Taはさらに、粒内に炭化物として析出し、鋼の高温強度を高める。Taはさらに、Nbの偏析による粒界強化を補助及び促進する。これにより、Taは鋼の高温強度を高める。Taが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、Ta含有量が高すぎれば、Ta炭化物が粒内に過剰に析出する。これにより、粒内の変形が妨げられ、粒界の脆化が助長される。したがって、Ta含有量は0~1.0%である。Ta添加の効果を安定して得るためには、Ta含有量の下限は好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Ta含有量の上限は好ましくは0.9%であり、より好ましくは0.8%である。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは粒内で炭化物を形成し、Cr炭化物の粒界への析出を抑制する。これにより、Tiは鋼の耐粒界腐食性を高める。Tiはさらに、粒内に炭化物として析出し、鋼の高温強度を高める。Tiはさらに、Nbの偏析による粒界強化を補助及び促進する。これにより、Tiは鋼の高温強度を高める。Tiが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、Ti含有量が高すぎれば、Ti炭化物が粒内に過剰に析出する。これにより、粒内の変形が妨げられ、粒界の脆化が助長される。したがって、Ti含有量は0~1.0%である。Ti添加の効果を安定して得るためには、Ti含有量の下限は好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Ti含有量の上限は好ましくは0.9%であり、より好ましくは0.8%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、V含有量は0%であってもよい。含有される場合、Vは粒内で炭化物を形成し、Cr炭化物の粒界への析出を抑制する。これにより、Vは鋼の耐粒界腐食性を高める。Vはさらに、粒内に炭化物として析出し、鋼の高温強度を高める。Vはさらに、Nbの偏析による粒界強化を補助及び促進する。これにより、Vは鋼の高温強度を高める。Vが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、V含有量が高すぎれば、V炭化物が粒内に過剰に析出する。これにより、粒内の変形が妨げられ、粒界の脆化が助長される。したがって、V含有量は0~1.0%である。V添加の効果を安定して得るためには、V含有量の下限は好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。V含有量の上限は好ましくは0.9%であり、より好ましくは0.8%である。
ハフニウム(Hf)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Hf含有量は0%であってもよい。含有される場合、Hfは粒内で炭化物を形成し、Cr炭化物の粒界への析出を抑制する。これにより、Hfは鋼の耐粒界腐食性を高める。Hfはさらに、粒内に炭化物として析出し、鋼の高温強度を高める。Hfはさらに、Nbの偏析による粒界強化を補助及び促進する。これにより、Hfは鋼の高温強度を高める。Hfが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、Hf含有量が高すぎれば、Hf炭化物が粒内に過剰に析出する。これにより、粒内の変形が妨げられ、粒界の脆化が助長される。したがって、Hf含有量は0~1.0%である。Hf添加の効果を安定して得るためには、Hf含有量の下限は好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Hf含有量の上限は好ましくは0.9%であり、より好ましくは0.8%である。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ca含有量は0%であってもよい。CaはS及びOとの親和性が高い。そのため、Caが含有される場合、Caは溶製時に鋼を脱硫及び脱酸し、鋼の熱間加工性を高める。Caはさらに、Sの粒界偏析に起因した凝固割れ感受性を低減する。Caが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、Ca含有量が高すぎれば、CaがOと結合することにより、鋼の清浄性が低下し、かえって鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Ca含有量は0~0.020%である。Ca添加の効果を安定して得るためには、Ca含有量の下限は好ましくは0.0005%であり、より好ましくは0.0010%である。Ca含有量の上限は好ましくは0.015%であり、より好ましくは0.010%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Mg含有量は0%であってもよい。MgはS及びOとの親和性が高い。そのため、Mgが含有される場合、Mgは溶製時に鋼を脱硫及び脱酸し、鋼の熱間加工性を高める。Mgはさらに、Sの粒界偏析に起因した凝固割れ感受性を低減する。Mgが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、Mg含有量が高すぎれば、MgがOと結合することにより、鋼の清浄性が低下し、かえって鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Mg含有量は0~0.020%である。Mg添加の効果を安定して得るためには、Mg含有量の下限は好ましくは0.0005%であり、より好ましくは0.0010%である。Mg含有量の上限は好ましくは0.015%であり、より好ましくは0.010%である。
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、REM含有量は0%であってもよい。REMはS及びOとの親和性が高い。そのため、REMが含有される場合、REMは溶製時に鋼を脱硫及び脱酸し、鋼の熱間加工性を高める。REMはさらに、Sの粒界偏析に起因した凝固割れ感受性を低減する。REMが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、REM含有量が高すぎれば、REMがOと結合することにより、鋼の清浄性が低下し、かえって鋼の熱間加工性が低下する。したがって、REM含有量は0~0.100%である。REM添加の効果を安定して得るためには、REM含有量の下限は好ましくは0.0005%であり、より好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0020%である。REM含有量の上限は好ましくは0.070%であり、より好ましくは0.050%である。希土類元素(REM)とは、周期律表中の原子番号57のランタン(La)から原子番号71のルテチウム(Lu)に、イットリウム(Y)、及びスカンジウム(Sc)を加えた17元素の総称である。REMの含有量は、これらの元素の1種又は2種以上の総含有量を意味する。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、式(1)を満たす。
0<(Nb/92.9+Sn/118.69+Ta/180.95+Ti/47.9+Hf/178.49+V/50.94-C/12.01-N/14.01)×B/10.81・・・(1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、その元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼のミクロ組織は、溶体化状態においてオーステナイト相からなり、他の相の析出は極めて少ない。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、C含有量が低い。そのため高温での使用中においては、炭化物の析出量は顕著に低い。また、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、N含有量が低い。そのため、窒化物の析出量は顕著に低い。一方、高温での使用中においては微細なCu粒子が析出する。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の形状は特に限定されない。オーステナイト系ステンレス鋼の形状はたとえば、鋼管、鋼板、棒鋼及び線材である。
以下、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法を説明する。
準備工程では、初めに、上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼は、真空誘導溶解炉、電気炉、AOD炉、及びVOD炉等を用いて製造できる。
各鋼番号の長時間クリープ強度を、JIS Z2271(2010)に準拠したクリープ破断試験によって評価した。各鋼番号の固溶化熱処理後の鋼板から、クリープ破断試験片を採取した。試験片は、平行部の直径が6mm、標点間距離が30mmの丸棒試験片であった。試験片の採取は、試験時の引張方向が鋼板の圧延方向と平行になるように行った。クリープ破断試験の条件は、800℃、応力50MPaであった。破断時間が1000時間以上であった場合は、表3の長時間クリープ強度の欄に白丸印(○)を示す。破断時間が1000時間未満であった場合は、表3の長時間クリープ強度の欄にバツ印(×)を示す。
各鋼番号の冷間加工性を、JIS G0567(2012)に準拠した引張試験を室温で行うことにより求めた。各鋼番号の固溶化熱処理後の鋼板から、試験片を採取した。試験片は、平行部の直径が6mm、標点間距離が30mmの丸棒試験片であった。試験片の採取は、試験時の引張方向が鋼板の圧延方向と平行になるように行った。引張試験は室温で行った。引張試験は、0.2%耐力までは試験速度を0.3%/分とし、0.2%耐力から破断までは試験速度を7.5%/分として行った。
各鋼番号の孔食電位を、JIS G0577(2014)に準拠した孔食電位測定試験によって測定した。各鋼番号の鋼板から、厚さ5mm、直径15mmの円形の分極試験片を採取した。分極試験片を、JIS G0577(2014)に規定されるすきま腐食防止電極に装着した。アノード分極曲線を作成し、電流密度が100μA/cm2を超えた最も高い電位を孔食電位Vとした。なお、照合電極には、飽和甘こう電極を用いた。孔食電位Vが1.0×10-1V以上であった場合は、表3の耐孔食性の欄に白丸印(○)を示す。孔食電位Vが1.0×10-1V未満であった場合は、表3の耐孔食性の欄にバツ印(×)を示す。
表2及び表3を参照して、鋼番号A1~A16の鋼板の化学組成は適切だった。具体的には、低C及び低Nの条件下で、さらにNb、B及びSnが共存し、且つ、式(1)を満たした。そのため、鋼番号A1~A16の鋼板は、優れた長時間クリープ強度、優れた耐孔食性及び優れた冷間加工性を有した。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.0180%未満、
Si:0.001~0.900%、
Mn:0.001~1.800%、
P:0.0400%以下、
S:0.0100%以下、
Cu:2.00~4.50%、
Ni:9.00~16.00%、
Cr:15.00~19.00%、
Nb:0.100~1.000%、
B:0.0005~0.0300%、
Sn:0.0005~0.0100%、
N:0.0090%以下、
Mo:0~2.00%、
W:0~0.3%、
Co:0~0.6%、
Ta:0~0.5%、
Ti:0~0.2%、
V:0~0.2%、
Hf:0~0.1%、
Ca:0~0.008%、
Mg:0~0.020%、
希土類元素(REM):0~0.001%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する、オーステナイト
系ステンレス鋼。
0<(Nb/92.9+Sn/118.69+Ta/180.95+Ti/47.9+
Hf/178.49+V/50.94-C/12.01-N/14.01)×B/10.
81・・・(1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、その元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、前記化学組成は質量%で、
Mo:0.10~2.00%、
W:0.1~0.3%、及び、
Co:0.1~0.6%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、オーステナイト系ステンレス鋼
。 - 請求項1又は請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、前記化学組成
は質量%で、
Ta:0.01~0.5%、
Ti:0.01~0.2%、
V:0.01~0.2%、及び、
Hf:0.01~0.1%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、オーステナイト系ステンレス鋼
。 - 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
前記化学組成は質量%で、
Ca:0.0005~0.008%、
Mg:0.0005~0.020%、及び、
希土類元素(REM):0.0005~0.001%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、オーステナイト系ステンレス鋼
。
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