以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。
図1は、実施形態に係るOLED照明装置1000の分解斜視図である。OLED照明装置1000は、OLED1と、配線基板2(補強基板)と、を備える。図2は、OLED1の平面図である。図3は、配線基板2の平面図である。
図1および図2を参照して、OLED1は、ガラス基板11と、アノード電極12(第1電極)と、有機発光層13と、カソード電極14(第2電極)と、を備える。ガラス基板11上に、アノード電極12、有機発光層13、カソード電極14がこの順で積層されている。言い換えれば、アノード電極12、有機発光層13およびカソード電極14を含む構造体が、ガラス基板11上に形成されている。OLED1の平面形状は矩形である。なお、OLED1の外部からの酸素、水等でOLED1の性能劣化を防止するために、OLED1の上に封止缶または封止膜が配置される。しかしながら、これは実施形態と無関係であるので、省略されている。
アノード電極12は、透明電極である。透明電極の材料は、ITO、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の透明な導電性を有する化合物(透明電極材料)である。カソード電極14は、金属電極である。金属電極の材料は、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等の金属(合金を含む)である。
有機発光層13は、アノード電極12とカソード電極14との間に位置し、アノード電極12とカソード電極14によって給電されると、発光する部材である。有機発光層13は、一例では、正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)/正孔輸送層(HTL:Hole Transfer Layer)/発光層(EML:EMissive Layer)/電子輸送層(ETL:Electron Transfer Layer)/電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)により構成される。有機発光層13として、上記の他に、例えば発光層/電子輸送層により構成されるもの、正孔輸送層/発光層/電子輸送層により構成されるもの、正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層により構成されるもの、正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/バッファー層により構成されるもの、バッファー層/正孔輸送層/発光層ユニット/正孔阻止層/電子輸送層/バッファー層により構成されるものが挙げられる。なお、光量を増加させるために、有機発光層13が多層化されても良い。
有機発光層13は、アノード電極12、カソード電極14のそれぞれに向けて、光を出射する。アノード電極12へ向けて出射された光は、アノード電極12を透過し、OLED1の外部に出る。カソード電極14へ向けて出射された光は、カソード電極14で反射され、有機発光層13、アノード電極12を透過し、OLED1の外部に出る。
発光領域15は、有機発光層13が生成した光を、OLED1の外部に取り出す領域である。発光領域15は、OLED1が平面視されたとき、有機発光層13とアノード電極12とカソード電極14とが重なる領域である。
非発光領域16は、発光領域15の外側に位置しており、発光領域15を囲む領域である。非発光領域16に、アノード電極12およびカソード電極14が位置しているが、有機発光層13は位置していない。このように、アノード電極12、カソード電極14が、それぞれ、非発光領域16まで延びている。非発光領域16に位置するアノード電極12の部分がアノード取り出し電極121となる。非発光領域16に位置するカソード電極14の部分がカソード取り出し電極141となる。背景技術で説明したように、アノード取り出し電極121の面積は、カソード取り出し電極141の面積より大きくされている。
アノード電極12の平面形状は、略矩形形状である。矩形を構成する各辺の中央に凹部122が形成されている。アノード取り出し電極121の平面形状は、L字型である。アノード取り出し電極121の角部が、アノード電極12の角部となる。アノード取り出し電極121-1は、凹部122-1と凹部122-2との間に位置する。アノード取り出し電極121-2は、凹部122-2と凹部122-3との間に位置する。アノード取り出し電極121-3は、凹部122-3と凹部122-4との間に位置する。アノード取り出し電極121-4は、凹部122-4と凹部122-1との間に位置する。
カソード電極14の平面形状は、略矩形形状である。矩形を構成する各辺の中央に、凸形状を有するカソード取り出し電極141が形成されている。カソード取り出し電極141-1は、凹部122-1と重なっており、アノード取り出し電極121-4およびアノード取り出し電極121-1と分離されている。カソード取り出し電極141-2は、凹部122-2と重なっており、アノード取り出し電極121-1およびアノード取り出し電極121-2と分離されている。カソード取り出し電極141-3は、凹部122-3と重なっており、アノード取り出し電極121-2およびアノード取り出し電極121-3と分離されている。カソード取り出し電極141-4は、凹部122-4と重なっており、アノード取り出し電極121-3およびアノード取り出し電極121-4と分離されている。
アノード電極12およびカソード電極14は、有機発光層13より平面のサイズが大きい。このため有機発光層13の周りに絶縁層(不図示)が配置されており、この絶縁層および有機発光層13によって、アノード電極12とカソード電極14とが電気的に絶縁されている。絶縁層は、例えば、SiO2、Si3N4である。
図1および図3を参照して、配線基板2は、外部からケーブル900(図8)を介して供給された電力を、OLED1に供給するための部材である。配線基板2は、プリント基板(好ましくは、フレキシブルプリント基板)である。配線基板2の平面形状は、矩形の枠型であり、非発光領域16(図2)の形状と同じである。配線基板2は、非発光領域16と正対させて配置される。
図4は、上面視された配線基板2において、配線基板2の上面の一つの角部付近を拡大した拡大図である。図5は、上面視された配線基板2において、配線基板2の下面の一つの角部付近を拡大した拡大図である。配線基板2の下面でアノード電極12およびカソード電極14が配線基板2と接続される。図4および図5を参照して、配線基板2は、基板21と、アノード用配線22と、カソード用配線23と、を備える。
基板21には、アノード用配線22およびカソード用配線23が形成される。基板21は、例えば、プラスチックフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムにより形成される。
アノード用配線22は、基板21の下面212(配線基板2の下面)に形成されている。アノード用配線22は、アノード電極12と接続されている。カソード用配線23は、基板21の上面211(配線基板2の上面)に形成されている。カソード用配線23は、カソード電極14と接続されている。有機発光層13を発光させるために、OLED1に供給される電流は、アノード用配線22、OLED1、カソード用配線23の順に流れる。アノード用配線22およびカソード用配線23は、例えば、銅配線、アルミニウム配線である。なお、アノード用配線22が基板21の上面211に形成され、カソード用配線23が基板21の下面212に形成されてもよい。
基板21には、カソード用配線23を配線基板2の下面側に取り出すために、ビアホール24が形成されている。アノード配線22とカソード配線23がショートするのを防止するために、アノード配線22は、ビアホール24の出口と対応する箇所に位置する切り欠き部221を有する。
図6は、図5に示す配線基板2に、アノードコンタクト部材3およびカソードコンタクト部材4が配置された状態を説明する説明図である。アノードコンタクト部材3およびカソードコンタクト部材4は、例えば、導電性接着剤、はんだ、異方性導電膜、異方性導電ペーストである。
図1および図2を参照して、アノード電極12(第1電極)は、アノードコンタクト部材3(第1コンタクト部材)を用いて、非発光領域16で配線基板2と接続されている。アノードコンタクト部材3について詳しく説明する。
図1および図6を参照して、アノードコンタクト部材3は、アノード取り出し電極121とアノード用配線22とをコンタクトさせる部材である。これにより、アノード取り出し電極121とアノード用配線22とが電気的に接続される。アノードコンタクト部材3-1は、アノード取り出し電極121-1とアノード配線22とをコンタクトさせ、アノードコンタクト部材3-2は、アノード取り出し電極121-2とアノード配線22とをコンタクトさせ、アノードコンタクト部材3-3は、アノード取り出し電極121-3(図2)とアノード配線22とをコンタクトさせ、アノードコンタクト部材3-4は、アノード取り出し電極121-4(図2)とアノード配線22とをコンタクトさせる。
図1および図2を参照して、カソード電極14(第2電極)は、カソードコンタクト部材4(第2コンタクト部材)を用いて、非発光領域16で配線基板2と接続されている。カソードコンタクト部材4について詳しく説明する。
図1および図6を参照して、カソードコンタクト部材4は、カソード取り出し電極141とカソード用配線23とをコンタクトさせる部材である。これにより、カソード取り出し電極141とカソード用配線23とが電気的に接続される。カソードコンタクト部材4-1は、カソード取り出し電極141-1とカソード配線23とをコンタクトさせ、カソードコンタクト部材4-2は、カソード取り出し電極141-2とカソード配線23とをコンタクトさせ、カソードコンタクト部材4-3は、カソード取り出し電極141-3とカソード配線23とをコンタクトさせ、カソードコンタクト部材4-4は、カソード取り出し電極141-4とカソード配線23とをコンタクトさせる。
図2および図6を参照して、カソード取り出し電極141の面積がアノード取り出し電極121の面積より小さいので、カソードコンタクト部材4の面積は、アノードコンタクト部材3の面積より小さい。
図7は、OLED1の発光方式および調光方式を説明する説明図である。OLED1の発光方式には、連続発光方式と間欠発光方式がある。連続発光方式は、OLED1を定常発光させる。間欠発光方式は、OLED1をパルス発光させる。ストロボ発光およびオーバードライブ発光は、間欠発光方式であり、外部トリガーによってパルス発光が制御される。
ストロボ発光は、定格電流(定格電流値)以下の電流をOLED1に流す方式である。定格電流は、照明パネル(ここでは、OLED照明装置1000)を製造するメーカが保証する、照明パネルを安定的に使用できる電流値である。
オーバードライブ発光は、定格電流よりも大きな電流をOLED1に流す方式である。これにより、照明をより明るくすることができる。OLED1の故障、劣化の加速を防止するために、オーバードライブの期間は短く制限されている(例えば、1μs~1000μs)。
OLED1の調光方式には、連続調光方式と間欠調光方式がある。連続調光方式は、OLED1をDC(Direct Current)調光する。間欠調光方式は、OLED1をPWM(Pulse Width Modulation)調光する。
マシンビジョンでは、大量の検査対象を高速で検査することがあり、この場合、カメラの撮影範囲を検査対象が高速で通過する。このため、検査対象の撮影にハイスピードカメラが用いられる。本発明者は、ハイスピードカメラを用いた検査対象の撮影について、間欠発光方式でパルス発光するOLED照明装置1000を実用化することを検討した。検討の結果、以下の課題を見出した。
図1および図2を参照して、OLED1を点灯(発光)させるタイミングを、ハイスピードカメラのシャッターのタイミングに合わせるために、OLED1を点灯させるトリガー信号(トリガー信号はパルス信号である)の周波数を高くする必要がある(例えば、1kHz~50kHz)。OLED1は、有機発光層13をアノード電極12とカソード電極14とで挟んだ構造を備えるので、比較的大きな寄生容量を有する。このため、トリガー信号の周波数が高くなると、寄生容量の充放電が高速で繰り返されるので、OLED1の発熱量が大きくなる。
本発明者は、トリガー信号(パルス信号)の周波数が1kHz、10kHz、30kHz、50kHz、80kHz、100kHz、150kHzの下で、OLED1をパルス駆動させ、OLED1の表面の温度を測定する実験をした。実験の結果、カソード取り出し電極141の付近において、OLED1の表面の温度上昇量が大きいことが分かった。カソードコンタクト部材4の面積(平面積)が小さいことが原因である。
カソードコンタクト部材4の面積を大きくすれば、カソードコンタクト部材4の温度上昇量を小さくできる。しかしながら、アノードコンタクト部材3およびカソードコンタクト部材4が配置される非発光領域16は、OLED1をコンパクト化するために、面積を小さくする要請がされている。従って、カソードコンタクト部材4の面積を大きくすることには限界がある。
OLED1を間欠発光方式でパルス発光させる場合で説明したが、OLED1がPWM調光される場合にも、PWM信号の周波数が高くなると(例えば、1kHz以上)、カソードコンタクト部材4の温度上昇量が大きくなる。
カソードコンタクト部材4の温度上昇量が大きければ、ガラス基板11が局所的に加熱され、ガラス基板11が熱割れや疲労する。カソードコンタクト部材4の温度上昇量を把握する必要がある。そこで、本発明者は、下記式1を導き出した。式1は、カソードコンタクト部材4の温度上昇量を示す理論式である。
ΔT=(K×V×V×f)÷(s×s)・・・式1
ΔTは、OLED照明装置1000がパルス信号を用いて駆動されることにより発生するカソードコンタクト部材4の温度上昇量を示し、Kは、OLED照明装置1000の仕様で決まる定数を示し、Vは、駆動電圧値を示し、fは、周波数値を示し、sは、カソードコンタクト部材4の面積を示す。
Kは、有機発光層13の誘電率、有機発光層13の面積、有機発光層13の厚み、カソードコンタクト部材4の電気抵抗率、カソードコンタクト部材4の厚み等で決まる定数である。
駆動電圧値は、OLED1の駆動電圧の値である。ユーザ操作でOLED1に流す定電流の値(定電流値I)が入力される場合、駆動電圧値は、OLED1のI-V特性から算出される。OLED1のI-V特性は、OLED1に関する定電流-駆動電圧の特性である。この特性は、OLED1に流す定電流とOLED1の駆動電圧との関係を示す二次曲線で表され、予め求められている。定電流が大きくなると、駆動電圧が大きくなり、定電流が小さくなると、駆動電圧が小さくなる。OLED1に流す定電流値Iが決まると、この曲線からOLED1の駆動電圧値Vが求められる。定電流値Iが大きくなると、OLED1の輝度が大きくなり、定電流値Iが小さくなると、OLED1の輝度が小さくなる。
周波数値fは、パルス信号を用いたOLED1の駆動において、パルス信号の周波数の値である。OLED1を間欠発光方式でパルス発光させる場合、トリガー(パルス信号)の周波数の値がfである。OLED1をPWM調光させる場合、PWM信号(パルス信号)の周波数の値がfである。
本発明者が式1を導き出した過程については、後で説明する。
図8は、実施形態に係るOLED駆動装置800、OLED照明装置1000のそれぞれについて、物理的構成要素を示すブロック図である。OLED照明装置1000は、検査用照明に用いられる。OLED駆動装置800とOLED照明装置1000とは別体であり、これらはケーブル900によって電気的に接続されている。なお、OLED駆動装置800とOLED照明装置1000とが一体でもよい(すなわち、これらが1つの筐体に収められている)。
OLED駆動装置800は、電圧源81と、定電流回路82と、操作パネル84と、MCU(Micro Controller Unit)85と、を備えており、OLED照明装置1000を駆動する。
電圧源81は、例えば、AC-DCコンバータまたはDC-DCコンバータであり、ケーブル900を介して、OLED1のアノード電極12と接続されている。電圧源81は、アノード電極12に対して、OLED1の発光に必要な正電圧を印加する。
定電流回路82は、OLED1の発光に必要な定電流をOLED1に流すための回路である。定電流回路82は、OLED駆動装置800に適用可能な公知の回路であればよい。
マシンビジョンにおいて、OLED駆動装置800は、外部からトリガー信号S(パルス信号)が入力されることにより、OLED照明装置1000を点灯させる。トリガー信号Sは、カメラ(不図示)がシャッターを切るタイミング信号であり、カメラは、トリガー信号Sを生成し、出力し、カメラが出力したトリガー信号SがOLED駆動装置800に入力する。トリガー信号Sの立ち上がりが、OLED1が点灯するタイミングとなり、その立ち下がりが、OLED1が消灯するタイミングとなるのが通例である。大量の検査対象が高速で検査される場合、カメラの撮影範囲を高速で通過する検査対象を撮影するために、トリガー信号Sの周波数が高くなる。
操作パネル84は、ハードキー、ソフトキー、ディスプレイ等により構成される。ユーザは、操作パネル84を操作して、OLED照明装置1000の駆動に必要な設定(例えば、定電流値Iの入力)をする。定電流値Iは、OLED1に流す定電流の値である。
MCU85は、定電流回路82を制御することにより、OLED1の点灯と消灯を制御し、OLED1に流す定電流の値を定電流値Iに制御する。なお、MCU85の替わりに、PLD(Programmable Logic Device)を用いてもよい。
OLED照明装置1000は、OLED1とメモリ5とを備える。OLED1については既に説明した。メモリ5は、OLED1の最大電流(最大電流より大きな電流がOLED1に流れると、OLED1が故障、破壊する)等を示すOLED情報を予め記憶している。MCU85は、ケーブル900を介して、メモリ5と通信することができ、メモリ5に記憶されているOLED情報をメモリ5から読み出すことができる。
図9は、MCU85の機能ブロック図である。MCU85は、制御部851と、通信部852と、第2の算出部857と、記憶部853と、第1の算出部854と、判定部855と、を備える。
制御部851は、MCU85の各部(通信部852、第2の算出部857、記憶部853、第1の算出部854、判定部855)を、当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するための装置である。また、制御部851は、外部からトリガー信号Sが入力し、トリガー信号Sを基にして、定電流回路82を制御する制御信号を生成する。制御信号は、例えば、OLED1の点灯と消灯を制御する信号、OLED1に流す定電流の値を定電流値Iに制御する信号である。
通信部852は、制御部851が生成した命令信号をメモリ5に送信し、メモリ5から送信されてきたOLED情報を受信する。制御部851は、通信部852が受信したOLED情報を記憶部853に記憶させる。通信部852は、操作パネル84と通信可能であり、操作パネル84に入力された命令、情報、データ等(例えば、定電流値I)を受信し、操作パネル84のディスプレイに表示させる情報、データ等(例えば、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔT)を操作パネル84に送信する。
第2の算出部857は、制御部851に入力されたトリガー信号S(パルス信号)の周波数を示す値を周波数値fとして算出する。制御部851には、トリガー信号Sが連続して入力されており、第2の算出部857は、所定期間、トリガー信号(パルス信号)のパルスの数をカウントすることにより、周波数値fを算出する。周波数値fは、ユーザ操作で設定(入力)することもできる。この場合、ユーザは、操作パネル84を操作して、周波数値fをMCU85に入力する。
記憶部853は、定電流値I、周波数値f、式1およびOLED情報を記憶している。ユーザは、操作パネル84を操作して、定電流値IをMCU85に入力する。MCU85は、入力された定電流値Iを記憶部853に記憶させる。第2の算出部857は、算出した周波数値fを記憶部853に記憶させる。ユーザ操作で周波数値fが入力される場合、MCU85は、入力された周波数値fを記憶部853に記憶させる。式1は、OLED駆動装置800のメーカが用意した式1を実行するプログラムと一緒に、記憶部853に予め記憶されている。なお、式1および式1を実行するプログラムは、OLED情報に含まれていてもよい。
OLED情報は、OLED1の最大電流、OLED1のI-V特性(OLED1に関する定電流-駆動電圧の特性)、カソードコンタクト部材4の面積s、定数Kおよびしきい値Thを含む。OLED1の最大電流、および、OLED1に関する定電流-駆動電圧の特性は、既に説明されている。
カソードコンタクト部材4の面積sは、OLED照明装置1000に備えられるOLED1に含まれるカソードコンタクト部材4の面積であり、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTを算出するパラメータの1つである。
定数Kは、OLED照明装置1000の仕様で決まる値であり、上記ΔTを算出するパラメータの1つである。定数Kは、次の式7で表される。
h:熱伝達率
ε:有機発光層13の誘電率
S:有機発光層13の面積
d1:有機発光層13の厚み
ρ:カソードコンタクト部材4の電気抵抗率
d2:カソードコンタクト部材4の厚み
Rs:アノード(ITO)の面抵抗
L:アノード電極12(ITO)の長さ
W:アノード電極12(ITO)の幅
hは、ニュートンの冷却則で定められ、hが大きくなると、流体と物体との間の熱移動能力が大きくなる。
しきい値Thは、カソードコンタクト部材4の温度上昇量の許容値である。すなわち、しきい値Thは、ガラス基板11の熱割れや疲労を防止できる値である。カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTが、例えば、15度を超えたとき、ガラス基板11の熱割れや疲労が発生する懸念があるとする。この場合、しきい値Thは、15度以下となる。
第1の算出部854は、記憶部853に記憶されている定電流値Iと、記憶部853に記憶されているOLED情報に含まれるOLED1のI-V特性と、を用いて、定電流値IをOLED1の駆動電圧値Vに変換し、駆動電圧値Vを記憶部853に記憶させる。第1の算出部854は、定数K、駆動電圧値V、周波数値f、および、カソードコンタクト部材4の面積sを、式1に代入し、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTを算出する。判定部855は、第1の算出部854によって算出されたΔTが、しきい値Thを超えるか否かを判定する。
報知部は、判定部855によってΔTがしきい値Thを超える判定がされたとき、報知する。実施形態では、操作パネル84に備えられるディスプレイが報知部として機能し、MCU85は、ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ)に所定の表示をさせる。例えば、ディスプレイには、「OLED内の温度上昇が原因でガラス基板が熱割れや疲労する可能性があります。定電流値および周波数値の少なくとも一方を再設定して下さい。」を示す文字情報が表示される。報知の方法は、これに限定されない。例えば、操作パネル84に報知部となる警告ランプが搭載されており、MCU85は、警告ランプを点灯させてもよい。
周波数の再設定について説明する。第2の算出部857がトリガー信号Sを用いて、周波数値fを算出する場合、ユーザは、カメラがシャッターを切る間隔を再設定することにより、周波数を再設定する。ユーザ操作で周波数値fが入力される場合、ユーザは、操作パネル84を操作して、周波数値fを再設定(再入力)する。
ユーザ操作で駆動電圧値Vが入力される場合、例えば、ディスプレイには、「OLED内の温度上昇が原因でガラス基板が熱割れや疲労する可能性があります。駆動電流値および周波数値の少なくとも一方を再設定して下さい。」を示す文字情報が表示される。
実施形態に係るOLED駆動装置800の特徴となる動作を説明する。図10は、この動作のフローチャートである。図8、図9および図10を参照して、ユーザは、OLED駆動装置800とOLED照明装置1000とをケーブル900で接続する。ユーザは、OLED駆動装置800の電源をONする。これにより、MCU85が起動し、MCU85は、OLED照明装置1000に備えられるメモリ5からOLED情報を読み出し、記憶部853に記憶させる(ステップS1)。なお、上述したように、記憶部853には、式1が予め記憶されている。
ユーザが、操作パネル84を操作して、定電流値IをMCU85に入力すると、MCU85は、定電流値Iを記憶部853に記憶させる(ステップS2)。
第1の算出部854は、OLED1のI-V特性(OLED1に関する定電流-駆動電圧の特性)、および、定電流値Iを記憶部853から読み出し、これらを用いて、OLED1の駆動電圧値Vを算出し、記憶部853に記憶させる(ステップS3)。OLED1のI-V特性は、OLED情報に含まれている。
制御部851には、カメラ(不図示)から出力されたトリガー信号Sが入力されている。第2の算出部857は、トリガー信号Sを用いて、トリガー信号Sの周波数値fを算出し、記憶部853に記憶させる(ステップS18)。周波数値fの算出は、ステップS1の前でもよいし、ステップS2の前でもよいし、ステップS3の前でもよい。
第1の算出部854は、式1、定数K、駆動電圧値V、周波数値fおよびカソードコンタクト部材4の面積sを記憶部853から読み出し、定数K、駆動電圧値V、周波数値fおよびカソードコンタクト部材4の面積sを、式1に代入し、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTを算出する(ステップS4)。
判定部855は、しきい値Th(カソードコンタクト部材4の温度上昇量の許容値)を記憶部853から読み出し、ステップS4で算出されたΔTが、しきい値Thを超えるか否かを判定する(ステップS5)。
判定部855によって、ΔTがしきい値Th以下と判定されたとき(ステップS5でNo)、制御部851は、OLED照明装置1000の駆動を許可する(ステップS6)。これにより、OLED駆動装置800は、ステップS2で入力された定電流値Iおよび周波数値fの下で、パルス信号を用いて、OLED照明装置1000を駆動することが可能となる。
判定部855によって、ΔTがしきい値Thを超えたと判定されたとき(ステップS5でYes)、MCU85は、操作パネル84のディスプレイを用いてユーザに報知する(ステップS7)。ユーザは、定電流値Iおよび周波数値fの少なくとも一つを再設定(再入力)することにより、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTがしきい値Thを超えないようにすることができる。なお、MCU85は、この報知において、ステップS4で算出されたΔTをディスプレイに表示させてもよい。また、MCU85は、報知後、所定期間が経過するまでに再設定されないとき、OLED照明装置1000の駆動を禁止する制御をする。
実施形態の変形例を説明する。実施形態の場合、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTが、しきい値Thを超えたとき、ユーザが、定電流値Iおよび周波数値fの少なくとも一方を再設定する必要がある。変形例は、これを自動化する。図11は、変形例に係るMCU85aの機能ブロック図である。MCU85aが図9に示すMCU85と異なる点は、値変更部856を備えることである。
値変更部856は、判定部855によって、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTがしきい値Thを超えたと判定されたとき、当初の駆動電圧値V(図12のステップS3で算出された駆動電圧値V)または当初の周波数値f(図12のステップS18で算出された周波数値f)を下げる。以下、詳しく説明する。
値変更部856は、周波数値fを優先させる周波数優先モードがユーザ操作によって予め選択されているとき、当初の周波数値fを変更せずに、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTをしきい値Th以下にすることができる値に駆動電圧値Vを下げる。例えば、値変更部856は、周波数優先モードの下で駆動電圧値Vを下げる場合、当初の周波数値fを変更せずに、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTをしきい値Th以下にできる駆動電圧値Vの中で最大値Vmaxを、新たな駆動電圧値Vにする。ユーザは、当初の駆動電圧値Vにできるだけ近い値を望むと考えられるからである。この値が、最大値Vmaxである。ユーザは、最大値Vmaxを見つける手間を省くことができる。
第1の算出部854は、ユーザ操作で入力された定電流値Iを駆動電圧値Vに変換する。定電流値Iと駆動電圧値Vとは、正の相関関係を有する。従って、値変更部856が周波数優先モードの下で駆動電圧値Vを下げるとは、定電流値Iを下げることを意味する。値変更部856が、駆動電圧値Vの中で最大値Vmaxを新たな駆動電圧値Vにするとは、定電流値Iの中で最大値Imaxを新たな定電流値Iにすることを意味する。次に説明する電圧優先モード(駆動電圧値Vを優先させる電圧優先モード)は、定電流値Iを優先させる電流優先モードを意味する。
値変更部856は、駆動電圧値Vを優先させる電圧優先モード(電流優先モード)がユーザ操作によって予め選択されているとき、当初の駆動電圧値V(当初の定電流値I、すなわち、ユーザ操作で入力された定電流値I)を変更せずに、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTをしきい値Th以下にすることができる値に周波数値fを下げる。例えば、値変更部856は、電圧優先モード(電流優先モード)の下で周波数値fを下げる場合、当初の駆動電圧値V(当初の定電流値I)を変更せずに、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTをしきい値Th以下にできる周波数値fの中で最大値fmaxを、新たな周波数値fにする。ユーザは、ユーザ操作で入力された周波数値fにできるだけ近い値を望むと考えられるからである。この値が、最大値fmaxである。ユーザは、最大値fmaxを見つける手間を省くことができる。
OLED1のI-V特性(OLED1に関する定電流-駆動電圧の特性)において、最大値Imaxに対応する駆動電圧値Vが、最大値Vmaxとなる。最大値Vmaxは、式1としきい値Thから、以下の式2で示される。
最大値fmaxは、式1としきい値Thから、以下の式3で示される。
式2および式3は、式1と一緒に、記憶部853に予め記憶されている。
報知部は、値変更部856によって駆動電圧値V(定電流値I)または周波数値fが下げられたとき、報知する。変形例では、操作パネル84に備えられるディスプレイが報知部として機能し、MCU85aは、ディスプレイに所定の表示をさせる。周波数優先モードの場合、例えば、ディスプレイには、「OLED内の温度上昇が原因でガラス基板が熱割れや疲労する可能性があります。周波数値は変更せずに、温度上昇量を許容値以下にできる定電流値の中で最大値を、定電流値にします。」を示す文字情報が表示される。これにより、ユーザは、周波数値fが変更されずに、定電流値Iが下げられたことを知ることができる。値変更部856が算出するのは、最大値Vmaxであるが、ユーザは定電流値IをMCU85aに入力しているので、ユーザには最大値Imaxが知らされる。なお、ユーザ操作で駆動電圧値Vが入力される場合、例えば、ディスプレイには、「OLED内の温度上昇が原因でガラス基板が熱割れや疲労する可能性があります。周波数値は変更せずに、温度上昇量を許容値以下にできる駆動電圧値の中で最大値を、駆動電圧値にします。」を示す文字情報が表示される。
電圧優先モード(電流優先モード)の場合、例えば、ディスプレイには、「OLED内の温度上昇が原因でガラス基板が熱割れや疲労する可能性があります。定電流値は変更せずに、温度上昇量を許容値以下にできる周波数値の中で最大値を、周波数値にします。」を示す文字情報が表示される。これにより、ユーザは、定電流値Iが変更されずに、周波数値fが下げられたことを知ることができる。ユーザは、カメラがシャッタを切る間隔をこの周波数値fに設定する。なお、ユーザ操作で駆動電圧値Vが入力される場合、例えば、ディスプレイには、「OLED内の温度上昇が原因でガラス基板が熱割れや疲労する可能性があります。駆動電圧値は変更せずに、温度上昇量を許容値以下にできる周波数値の中で最大値を、周波数値にします。」を示す文字情報が表示される。
変形例の特徴となる動作を説明する。図12は、この動作のフローチャートである。図8、図11および図12を参照して、記憶部853には、式1、式2および式3が予め記憶されている。なお、式1、式2および式3は、OLED情報に含められていてもよい。ステップS1は、図10に示すステップS1と同じである。
ステップS2において、ユーザが、操作パネル84を操作して、定電流値IをMCU85aに入力すると、MCU85aは、定電流値Iを記憶部853に記憶させる。これは、図10に示すステップS2と同じである。ユーザは、操作パネル84を操作して、周波数優先モードまたは電圧優先モード(電流優先モード)をMCU85aに入力すると、MCU85aは、モードフラグを入力されたモードに設定する(ステップS2)。例えば、モードフラグが0のとき、周波数優先モードが選択されたことを示し、モードフラグが1のとき、電圧優先モード(電流優先モード)が選択されたことを示すとする。ユーザが操作パネル84を操作して、周波数優先モードをMCU85aに入力すると、MCU85aは、モードフラグを0に設定する。ユーザが操作パネル84を操作して、電圧優先モード(電流優先モード)をMCU85aに入力すると、MCU85aは、モードフラグを1に設定する。
ステップS3、ステップS18、ステップS4、ステップS5およびステップS6は、図10に示すステップS3、ステップS18、ステップS4、ステップS5およびステップS6と同じである。
判定部855によって、ΔTがしきい値Thを超えたと判定されたとき(ステップS5でYes)、値変更部856は、モードフラグが、周波数優先モードに設定されているのか、電圧優先モード(電流優先モード)に設定されているのかを判断する(ステップS11)。
モードフラグが周波数優先モードに設定されているとき、値変更部856は、最大値Vmaxを算出する(ステップS12)。詳しく説明する。値変更部856は、式2、しきい値Th(カソードコンタクト部材4の温度上昇量の許容値)、定数K、周波数値fおよびカソードコンタクト部材4の面積sを記憶部853から読み出し、しきい値Th、定数K、周波数値fおよびカソードコンタクト部材4の面積sを、式2に代入し、最大値Vmaxを算出する。
MCU85aは、操作パネル84のディスプレイを用いてユーザに報知する(ステップS13)。報知には、周波数優先モードの場合の文字情報が用いられる。この文字情報については既に説明されている。
制御部851は、OLED照明装置1000の駆動を許可する(ステップS14)。これにより、OLED駆動装置800は、ステップS12で算出された最大値Vmaxと対応する定電流値I(この定電流値Iは、最大値VmaxがOLED1のI-V曲線を用いて変換された値である)とステップS2で入力された周波数値fの下で、パルス信号を用いて、OLED照明装置1000を駆動することが可能となる。
モードフラグが電圧優先モード(電流優先モード)に設定されているとき、値変更部856は、最大値fmaxを算出する(ステップS15)。詳しく説明する。値変更部856は、式3、しきい値Th(カソードコンタクト部材4の温度上昇量の許容値)、定数Kおよびカソードコンタクト部材4の面積sを記憶部853から読み出し、しきい値Th、定数K、カソードコンタクト部材4の面積s、および、ステップS3で算出された駆動電圧値Vを、式3に代入し、最大値fmaxを算出する。駆動電圧値Vは、ユーザ操作で入力された定電流値Iが、OLED1のI-V特性を用いて、変換された値である。
MCU85aは、操作パネル84のディスプレイを用いてユーザに報知する(ステップS16)。報知には、電流優先モードの場合の文字情報が用いられる。この文字情報については既に説明されている。
制御部851は、OLED照明装置1000の駆動を許可する(ステップS17)。これにより、OLED駆動装置800は、ステップS2で入力された定電流値IとステップS15で算出された最大値fmaxの下で、パルス信号を用いて、OLED照明装置1000を駆動することが可能となる。
変形例は、周波数優先モードまたは電圧優先モード(電流優先モード)を選択することができるが、周波数優先モードのみの態様、または、電圧優先モード(電流優先モード)のみの態様でもよい。これらの態様の場合、ユーザが周波数優先モードまたは電圧優先モード(電流優先モード)を選択する操作が不要となる。
実施形態および変形例において、OLED1は、アノード電極12が透明電極にされ、カソード電極14が金属電極にされた構造を有する。カソード電極14が透明電極にされ、アノード電極12が金属電極にされた構造の場合、アノードコンタクト部材3の温度上昇量ΔTが問題となる。この場合、第1の算出部854は、アノードコンタクト部材3の温度上昇量ΔTを求める。
実施形態および変形例では、理論式である式1を用いて、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTを求める。理論式の替わりに、近似式、テーブルを用いても、ΔTが求められる。
近似式を用いる場合について簡単に説明する。OLED駆動装置800のメーカは、定電流値Iと周波数値fの組み合わせを変えて、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTを実測し、この結果を用いて、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTを示す近似式を求める。この近似式は、記憶部853に予め記憶されていてもよいし、OLED情報に含められていてもよい。第1の算出部854は、記憶部853に記憶されている定電流値Iおよび周波数値fを近似式に代入して、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTを求める。
テーブルを用いる場合について簡単に説明する。OLED駆動装置800のメーカは、近似式の場合と同様に、定電流値Iと周波数値fの組み合わせを変えて、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTを実測し、この結果を用いて、定電流値Iと周波数値fの組み合わせと、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTとの対応関係を示すテーブルを作成する。このテーブルは、記憶部853に予め記憶されていてもよいし、OLED情報に含められていてもよい。第1の算出部854は、記憶部853に記憶されている定電流値Iと周波数値fの組み合わせと同じ組み合わせをテーブルから探し出し、探し出した組み合わせが示す温度上昇量を、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTと決定する。
近似式、テーブルのいずれにおいても、ユーザ操作で駆動電圧値Vが入力される場合、定電流値Iの替わりに駆動電圧値Vが用いられる。
式1が導き出された過程を説明する。図13は、OLEDパネル(アノード電極12、有機発光層13およびカソード電極14で構成される構造体)と、配線基板2と、OLED駆動装置800との関係を示す等価回路図である。
Ra:アノード電極12の抵抗
Co:OLED1の寄生容量
Ro:OLED1のリーク電流が要因となるインピーダンス
Rk:カソード電極14の抵抗
Rca:アノードコンタクト部材3-1~3-4の抵抗の合計
Rck:カソードコンタクト部材4-1~4-4の抵抗の合計
rck:1つのカソードコンタクト部材4の抵抗
Rpa:配線基板2+OLED駆動装置800のアノード側の配線抵抗
Rpk:配線基板2+OLED駆動装置800のカソード側の配線抵抗
ニュートンの冷却則により、カソードコンタクト部材4の温度上昇量ΔTは、このカソードコンタクト部材4の熱損失電力P-Rckに比例し、このカソードコンタクト部材4の面積sに反比例する。温度上昇量ΔTと熱損失電力P-Rckとカソードコンタクト部材4の面積sと熱伝達率hとの関係は、下記式で定義される。
熱伝達率hは、雰囲気環境(流速、圧力、表面形状)により決まる定数と見なすことができる。自然対流時、熱伝達率hは、1~10[W/m・m・k]となる。一方、OLEDパネルの充放電電力Pcは、各直列抵抗の抵抗比によって損失するので、Rckでの損失は下記式となる。
Rall:Ra+Rca+Rpa+Rk+Rck+Rpk
V:OLED1の駆動電圧(この駆動電圧は、定電流値IとOLED1のI-V特性とから求められる)
f:周波数値
ε:有機発光層13の誘電率
S:有機発光層13の面積
d1:有機発光層13の厚み
ρ:カソードコンタクト部材4の電気抵抗率
d2:カソードコンタクト部材4の厚み
Rs:アノード(ITO)の面抵抗
L:アノード電極12(ITO)の長さ
W:アノード電極12(ITO)の幅
アノード電極12がITO電極の場合、ITO電極の電気抵抗率は、金属電極の電気抵抗率と比べて、二桁高い。従って、Rall≒Ra=Rs×(L÷W)が成立する。
式5が式4に代入されると、ΔTは、下記式6で表される。
{(ε×ρ×Rs)÷h}×{(S×d2×L)÷(d1×W)}は、OLEDパネル(OLED照明装置1000)の仕様で決まる。従って、OLEDパネルの設計では、定数Kと見なすことができる。
以上より、ΔTは、式1で示される。
本発明者は、駆動電圧値Vを12Vとし、周波数値fを、0Hz(直流)、60Hz、1kHz、10kHz、30kHz、50kHz、100kHzとして、ΔTを実測した。アノード電極12等の条件は、下記表の通りである。
本発明者は、これらの条件の下で、式1を用いて、ΔTを計算した。ΔTの実測値、計算値は、下記表の通りである。
周波数値fが、1kHz、10kHz、30kHz、50kHzの場合、ΔTの計算値は、ΔTの実測値と近いことが分かった。なお、本発明者は、アノードコンタクト部材3の温度上昇量についても計算したが、温度上昇量が僅かであるので、記載を省略している。