JP7102327B2 - 立体構造物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、立体構造物の製造方法に関する。
遮水シートが施工される現場では、排水管などのシート貫通部、法面の変化点(折れ点)、コンクリート構造物などの柱周り(円柱、四角柱など)などが存在する。このような現場における施工方法として、例えば特許文献1に開示される防水シート施工方法が知られている。この防水シート施工方法は、壁面を覆う下地シートを貫通して突出する管材等の突出物と下地シートの貫通孔を防水する防水シート施工方法において、密封シートの連結部を介して下地当接部と巻回部とを折曲げ、連結部を突出物と壁面との間に形成される鋭角部へ配置し、下地当接部を下地シートへ接着し、巻回部は突出物へ巻付けるとともに巻回部の両側部に形成される突起部を下地シートへ接着するようになっている。これにより、加工が簡単で水密信頼性が高い防水シー卜施工方法を得ることを目的とする。
特開昭58-83714号公報
しかしながら、現場におけるシート施工は、熟練した職人の技術が必要となる。具体的には、管路や柱状体に沿う管状体または法面の変化点に合う入隅出隅部を遮水シートと同素材で作製する。次いで、管状体または入隅出隅部の遮水シートとの接合端部を鍔状に加工してなるシート成形体を現場にて作製する。さらに、シート成形体と遮水シートとを接合することによって施工がなされる。そのため、作業効率が悪く、施工費用が高騰する問題や、作業者によって品質が一定せず、漏水リスクが高くなる問題があった。
これに対し、シート成形体をブロー成形、射出成形、回転成形、真空成形などによって成型加工して製造する方法もあるが、現場施工された構造物の形状は多様であるため、全ての形状に対して金型を作成する必要があり、莫大な費用がかかる。また、成型加工品を用いることとしても、現場施工された構造物の形状が設計図通りではない場合があり、構造物と成型加工品とを施工現場にて接合する際に、成型加工品を無理に変形させて接合させるなど、作業性が悪く、接合後の品質が好ましくない状態になる虞がある。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、熟練した技術を必要とせずに、施工手間を省くことが可能となり、品質を安定させて、漏水リスクを軽減できる立体構造物及び立体構造物の製造方法を提供することにある。
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の立体構造物の製造方法は、現場構築物11における表面の一部分を被接合面21として、この被接合面21に増設される増設部17の三次元の増設部外形状データを予め用意するステップと、
前記被接合面21を現場にて計測して三次元の被接合面形状データを得るステップと、
前記被接合面21の略中央部に前記増設部17を配置したときに、前記増設部17の外周と前記被接合面21の輪郭とに挟まれる形状部分を、前記被接合面形状データ及び前記増設部外形状データから三次元ののりしろ部形状データとして前記現場にて算出するステップと、
前記増設部外形状データ及び前記のりしろ部形状データから三次元の成形データを前記現場にて算出するステップと、
前記成形データに基づき増設部17及びのりしろ部19を一体に備える立体構造物を前記現場にて3Dプリンタ27により各層体ごとに積層して形成するステップと、
を含むことを特徴とする。
この立体構造物の製造方法では、増設部外形状データが予め用意される。被接合面形状データは、被接合面21を現場にて計測して得られる。これら増設部外形状データと被接合面形状データとから、のりしろ部形状データが算出される。こののりしろ部形状データと増設部外形状データとにより成形データが算出される。成形データは、3Dプリンタ27へ出力される。3Dプリンタ27は、成形データに基づき、立体構造物を平行な複数の面で切断した各断面に対応する層体を、素材を吐出することによって形成し、層体を順次積層していくことで立体構造物を形成する。この3Dプリンタ27による立体構造物の形成は、現場の近傍にて行われる。
3Dプリンタ27を用いた立体構造物の形成では、上記の増設部外形状データと、被接合面形状データとからなる成形データが必要となる。このうち、増設部17を形成するための増設部外形状データは、予め生成しておくことができる。一方、被接合面形状データは、3Dスキャナを用いたパターン投影計測などにより、被接合面21をレーザースキャン等して得ることができる。つまり、立体構造物を形成するためのデータは、現場にて全て揃えることができる。これに加え、得られた成形データに基づき立体構造物を形成する3Dプリンタ27が現場に持ち込まれていれば、成形データの確立から製品形成までが連続した工程で現場にて実現可能となる。
3Dプリンタ27に使用される素材は、遮水シート13と同じ素材とすることができる。3Dプリンタ27により形成される立体構造物は、増設部17とのりしろ部19を継目なく一体化した成形品となる。
これにより、例えば現場で施工困難な箇所の3Dスキャニングを行い、画像データを読み込みモデリングし3D図面を起こし、その形状に応じた立体構造物をその場で3Dプリンタ27により形成することができる。このため、様々な現場の困難箇所において適応可能な継目のない立体構造物を、専用の金型を用いることなく高品質で得ることができる。
本発明の請求項2記載の立体構造物の製造方法は、請求項1に記載の立体構造物の製造方法であって、可搬性を有して構成された前記3Dプリンタ27を前記現場に持ち込み、前記被接合面形状データの取得に続けて前記立体構造物を形成することを特徴とする。
この立体構造物の製造方法では、立体構造物の使用される現場に、3Dプリンタ27が直接持ち込まれ、立体構造物が現場形成される。この場合、3Dプリンタ27は、キャスタ等を備えた可搬性を有するものとする。さらに、3Dプリンタ27は、駆動装置を備えた自走式とすることもできる。これにより、車両の進入が困難で且つ広大な面積に、複数の被接合面21が散在する現場構築物11においても、それぞれの現場に合わせた立体構造物を効率的且つ迅速に形成できる。
本発明の請求項3記載の立体構造物の製造方法は、請求項1または2に記載の立体構造物の製造方法であって、前記3Dプリンタ27が、複数のノズル67を備え、それぞれの前記ノズル67ごとに異素材を吐出し、前記立体構造物の異なる部位を、前記異素材により形成することを特徴とする。
この立体構造物の製造方法では、増設部17と、のりしろ部19とをそれぞれに適した素材で形成することができる。この場合、例えばのりしろ部19は、熱溶着性に適した低融点の素材を用いることができる。また、増設部17には、のりしろ部19の溶着時の熱に対して影響を受けにくい高融点の素材を用いることができる。
なお、立体構造物15(29,31,37,41,45,55)は、請求項1~3のいずれか1つに記載の立体構造物の製造方法によって製造される立体構造物であって、
現場構築物11における表面の一部分を被接合面21として、この被接合面21の略中央部に相当する位置で前記被接合面21とは接合されずに、前記現場構築物11の表面に対して任意の形状に増設となって位置する任意形状の増設部17と、
熱可塑性樹脂からなり、前記増設部17の外周に内側縁部が連続して前記増設部17と一体となるとともに、外形状が前記増設部17の外周と前記被接合面21の輪郭とに挟まれる前記被接合面21に沿った形状で、熱溶着により前記被接合面21に密着固定が可能となる環状若しくはC字状ののりしろ部19と、
を具備し、前記現場構築物11の被接合面21が前記のりしろ部19で覆われるとともに、前記被接合面21の略中央部に相当する位置で前記増設部17が前記任意形状となって位置し、前記現場構築物11に固定されることを特徴とする。
この立体構造物15(29,31,37,41,45,55)では、現場構築物11における被接合面21の略中央部に相当する位置に配置される増設部17を有する。この増設部17は、被接合面21に接合されることなく現場形成される。増設部17には、のりしろ部19が現場形成される。のりしろ部19は、熱可塑性樹脂からなり、増設部17の外周に内側縁部が連続するとともに、外形状が被接合面21の輪郭に沿った形成となる。つまり、増設部17と、のりしろ部19とが連続する一体構造として立体構造物15(29,31,37,41,45,55)が現場形成される。
この立体構造物15(29,31,37,41,45,55)は、増設部17と、のりしろ部19とが連続して一体となる。このため、立体構造物15(29,31,37,41,45,55)は、増設部17と、のりしろ部19との間に高い水密構造を得ることができる。のりしろ部19は、熱可塑性樹脂により形成されるので、現場構築物11の被接合面21が遮水シート13からなる場合、容易に熱溶着が可能となる。これにより、立体構造物15(29,31,37,41,45,55)は、のりしろ部19を被接合面21に熱溶着するのみで、手作業による複雑形状の現場加工を不要として、それぞれの現場形状にあった継目のない遮水シート加工を、現場構築物11に対して容易に施すことができる。
また、立体構造物15,29は、
前記増設部17が、前記被接合面21の略中央部に設けられている貫通穴23に通じる管部25であり、
前記のりしろ部19が、前記管部25の外周面にフランジ部であることを特徴としてもよい。
この立体構造物15,29では、管部25の外周面に、のりしろ部19としてのフランジ部が形成される。この立体構造物15,29は、例えば一般・産業廃棄物埋立処分場において遮水シート13で覆われた法面から突出する排水管部分等に用いることができる。管部25は、排水管に外挿される。のりしろ部19は、排水管が貫通したシート貫通穴周縁の遮水シート表面に熱溶着により密着固定される。管部25の外周面は、環状に形成されるのりしろ部19の内側縁部に連続して一体に形成される。このため、排水管と遮水シート13との間を高い水密性で塞ぐことができる。
さらに、立体構造物31,41は、
前記被接合面21が、異なる角度で複数の面が交わる隅部33であり、
前記増設部17が、前記隅部33の略中央に相当する位置に配置され、
前記のりしろ部19が、前記隅部33におけるそれぞれの面に密着固定が可能となった環状であることを特徴としてもよい。
この立体構造物31,41では、被接合面21が、法面の変化点39(折れ点)や、入隅や出隅などの隅部33となる。これらの被接合面21では、異なる角度で複数の面が交わる。のりしろ部19は、これら全ての面に亘って密着固定が可能となる環状に形成される。これにより、立体構造物31,41は、法面の変化点39や入隅を水密に覆ったり、出隅に設けられる排水管を水密に覆ったりすることが容易に、安定した品質で可能となる。
また、立体構造物は、
前記増設部17と、前記のりしろ部19とが、異なる素材であることを特徴としてもよい。
この立体構造物では、増設部17と、のりしろ部19とをそれぞれに適した素材で形成することができる。この場合、例えばのりしろ部19は、熱溶着性に適した低融点の素材を用いることができる。また、増設部17には、のりしろ部19の溶着時の熱に対して影響を受けにくい高融点の素材を用いることができる。
本発明に係る請求項1記載の立体構造物の製造方法によれば、熟練した技術を必要とせず、施工手間を省くことが可能となり、品質を安定させて、漏水リスクを軽減できる立体構造物を、容易且つ迅速に製造できる。
本発明に係る請求項2記載の立体構造物の製造方法によれば、成形データを、現場に持ち込んだ3Dプリンタへ出力するだけで、現場形状にあった遮水シート加工品などの立体構造物を製造できるため、手作業により現場加工を行う場合の準備段階での手間を削減できる。
本発明に係る請求項3記載の立体構造物の製造方法によれば、例えば増設部とのりしろ部とを、異なる溶融温度の異素材で形成して、のりしろ部の加熱溶着を容易にしつつ、本体部の熱変形の影響を抑制することができる。
本発明の実施形態に係る立体構造物の一例を現場構築物の要部とともに表した斜視図である。 管部が垂直に形成される変形例1に係る立体構造物を現場構築物の要部とともに表した斜視図である。 入隅を閉塞する変形例2に係る立体構造物を現場構築物の要部とともに表した斜視図である。 管部を備えて入隅を閉塞する変形例3に係る立体構造物を現場構築物の要部とともに表した斜視図である。 法面の変化点を覆う変形例4に係る立体構造物を現場構築物の要部とともに表した斜視図である。 柱段部を覆う変形例5に係る立体構造物を現場構築物の要部とともに表した斜視図である。 柱基部を覆う変形例6に係る立体構造物を現場構築物の要部とともに表した斜視図である。 立体構造物の製造方法の手順を概略的に説明した概念図である。
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る立体構造物の一例を現場構築物11の要部とともに表した斜視図である。
本実施形態に係る立体構造物は、例えば遮水シート13(防水シートを含む)などの特殊加工部品として用いることができる。
遮水シート13の主な用途として、次のものが挙げられる。一般・産業廃棄物埋立処分場、濁水沈澱池、工場廃液処理池、ヘドロ浚渫池、農業用貯水池、宅地造成調整池、ゴルフ場・庭園・公園などの観賞池、農・工業用水路、排水路、ボックストンネル・ビル・プール・タンクなどの地下構造物の外防水、アースダム・ロックフィルダム・河川堰堤・貯水池堰堤などの遮水コア、デスクマット、トラックシート、テント倉庫生地、コンテナバック、シートシャッター、シート間仕切りカーテン、スクリーン、ブラインド等。
本実施形態では、立体構造物がフランジ付傾斜管15である場合を例に説明する。フランジ付傾斜管15は、例えば一般・産業廃棄物埋立処分場の法面に好適に使用することができる。
フランジ付傾斜管15は、増設部17と、のりしろ部19と、を主要な構成として有する。
フランジ付傾斜管15は、現場構築物11における表面の一部分を被接合面21とする。ここで言う現場構築物11は、一般・産業廃棄物埋立処分場の壁部等となる。壁部は、傾斜した法面を有する。法面は、表面が遮水シート13により覆われている。また、壁部には、例えば排水用の穴が穿設される。遮水シート13には、この穴を開放する貫通穴23が形成されている。フランジ付傾斜管15は、被接合面21が、遮水シート13のシート貫通穴周縁(図1中のハッチング部分)となる。被接合面21は、内側の貫通穴23を包囲した四角形の輪郭を有する。
フランジ付傾斜管15の増設部17は、管部25となる。管部25は、貫通穴23の内径に外径が略一致して、貫通穴23に挿入される。増設部17は、被接合面21の略中央部に相当する位置で、被接合面21とは接合されずに現場形成される。
なお、本明細書中、現場とは、現場構築物11が現存する場所を言う。また、現場形成とは、工場で形成したものを現場へ搬入するのではなく、現場で直接素材を加工して立体構造物を形成することを言う。
のりしろ部19は、熱可塑性樹脂からなる。のりしろ部19は、増設部17の外周に内側縁部が連続して増設部17と一体となる。また、のりしろ部19は、外形状が被接合面21の輪郭(すなわち、四角形)に沿って現場形成される。のりしろ部19は、熱溶着により被接合面21に密着固定が可能となる環状若しくはC字状に形成される。本実施形態において、のりしろ部19は、外形が四角形で円形の内穴を有する環状のシート状に形成される。
なお、後述するように、のりしろ部19は、平面形状に限らず、立体形状であってもよい。また、増設部17は、立体形状に限らず、平面形状であってもよい。
つまり、フランジ付傾斜管15は、増設部17が、被接合面21の略中央部に設けられている貫通穴23に通じる管部25として形成され、のりしろ部19が、この管部25の外周面にフランジ部として形成される。
管部25は、傾斜する法面から略水平方向に突出する。従って、のりしろ部19は、略水平な管部25に対して傾斜して管部25に接続している。
管部25は、のりしろ部19との接続部が、のりしろ部19の背面と同一平面で終端となってもよい。また、管部25は、終端がのりしろ部19の背面から所定長さ突出して、貫通穴23に挿入可能となっていてもよい。
フランジ付傾斜管15は、のりしろ部19が遮水シート13のシート貫通穴周縁に熱溶着により接合される。のりしろ部19は、貫通穴23と管部25との間を水密にシールする。これにより、フランジ付傾斜管15は、壁部を貫通して遮水シート13の貫通穴23から流出しようとする水を、管部25から漏水を生じさせることなく、法面の外方へ排出することが可能となる。
フランジ付傾斜管15は、管部25と、のりしろ部19とが、異なる素材で形成されることとしてもよい。この場合、のりしろ部19は、遮水シート13と熱溶着されるので、管部25よりも低融点の素材が好ましい。一方、管部25は、のりしろ部19の熱溶着による熱影響を抑制するために、のりしろ部19よりも高融点の素材であることが好ましい。
フランジ付傾斜管15は、後述するように、管部25及びのりしろ部19が、3Dプリンタ27(図8参照)を使用した例えば熱溶解積層法により、現場形成される。
3Dプリンタ27で製造される継目のないフランジ付傾斜管15は、遮水シート13と同材質である。この素材としては、例えばEPDM、軟質塩化ビニル、オレフィン系熱可塑性エラストマ、ポリエチレンなどの樹脂を挙げることができる。
なお、法面の表面は、遮水シート13の代わりに、遮水板により覆われていてもよい。この場合、フランジ付傾斜管15は、遮水板にのりしろ部19が固定されることになる。
次に、上記した実施形態に係る構成の変形例を説明する。
図2は管部25が垂直に形成される変形例1に係る立体構造物を現場構築物11の要部とともに表した斜視図である。
この変形例1に係る立体構造物は、フランジ付垂直管29となる。フランジ付垂直管29は、管部25の外周面に、面状ののりしろ部19が、管軸に垂直な向きで形成される。その他の構成は、フランジ付傾斜管15と同じである。
このフランジ付垂直管29は、例えば地面から垂直に突出する柱や管と、地面に敷設した遮水シート13、或いは遮水板との間を水密に塞ぐことができる。
図3は入隅を閉塞する変形例2に係る立体構造物を現場構築物11の要部とともに表した斜視図である。
この変形例2に係る立体構造物は、隅部閉鎖体31となる。隅部閉鎖体31の被接合面21は、異なる角度で複数の面が交わる隅部33となる。隅部閉鎖体31における増設部17は、閉塞部35となる。閉塞部35は、隅部33の略中央に相当する位置に配置される。のりしろ部19は、閉塞部35の外周に連続して一体に形成される。のりしろ部19は、隅部33におけるそれぞれの面に密着固定が可能となった環状に形成される。
この隅部閉鎖体31によれば、例えば入隅部分の穴を塞ぐことができる。隅部閉鎖体31は、隣り合う両壁と、底部分との3面に対応する3つの面部を有したのりしろ部19からなり、こののりしろ部19に包囲されて隅部分を覆う閉塞部35を有するので、のりしろ部19を加熱溶着することで、入隅部分に空いた穴を水密に塞ぐことができる。
図4は管部25を備えて入隅を閉塞する変形例3に係る立体構造物を現場構築物11の要部とともに表した斜視図である。
この変形例3に係る立体構造物は、管付隅部閉鎖体37となる。管付隅部閉鎖体37の被接合面21は、異なる角度で複数の面が交わる出隅部となる。管付隅部閉鎖体37は、例えば、出隅部分にドレンパイプなどの管部25を増設する際に用いられる。管付隅部閉鎖体37は、隅形状部分とパイプ部分とが、予め形成される立体構造物となる。管付隅部閉鎖体37は、のりしろ部19を出隅部の3つの面に加熱溶着するのみで、複雑な構造の被接合面21に、管部25を水密構造で容易に増設することができる。
図5は法面の変化点39を覆う変形例4に係る立体構造物を現場構築物11の要部とともに表した斜視図である。
この変形例4に係る立体構造物は、隅部閉鎖体41となる。隅部閉鎖体41は、矩形板状の増設部17が、長辺に平行な折り曲げ線で折り曲げられた形状で形成される。隅部閉鎖体41は、処分場法面の変化点39、図5に示した変化点39は凹稜線部分であり、この変化点39における補修に用いることができる。隅部閉鎖体41は、異なる角度で交わる双方の法面に亘って接合される2つののりしろ部19を有する。2つののりしろ部19は、折り曲げ線で屈曲した閉塞部35の外周に連続して一体に形成される。
この隅部閉鎖体41によれば、変化点39における各面に接合される環状ののりしろ部分を備えるので、複雑な変化点39における穿孔補修なども容易に行うことができる。
図6は柱段部43を覆う変形例5に係る立体構造物を現場構築物11の要部とともに表した斜視図である。
この変形例5に係る立体構造物は、柱段部被覆体45となる。柱段部被覆体45は、異径柱の接続部分の外周を覆う。柱段部被覆体45は、柱段部43を直径を挟んで二分割される一対の半割体として形成することができる。この場合、一つの柱段部被覆体45は、大径柱47の半径方向に延在する段部面49を覆う半円環面部51を有する。柱段部被覆体45は、この半円環面部51の内周及び外周に、柱軸線方向に突出する半円弧状の一対ののりしろ部19を設けて形成される。
柱段部被覆体45によれば、これら一対の半割体を一組として、小径柱53と大径柱47の接続部分を覆うことができる。小径柱53と大径柱47のそれぞれに樹脂被覆が施されている場合、その段部において、のりしろ部19を樹脂被覆に熱溶着することにより、複雑な段部においても遮水構造を容易に得ることができる。なお、この場合、のりしろ部19に加えて、半円環面部51の円弧に沿う方向の両端同士も熱溶着される。
図7は柱基部を覆う変形例6に係る立体構造物を現場構築物11の要部とともに表した斜視図である。
この変形例6に係る立体構造物は、柱基端被覆体55となる。柱基端被覆体55は、角柱57の基端(根元)と、基端が接続される平面部59とを覆う。柱基端被覆体55は、角柱57の軸線を挟んで二分割する一対の半割体として形成することができる。この場合、一つの柱基端被覆体55は、角柱57の外周半部を覆う樋状体の端に、平面部59と平行なのりしろ部19が連続して一体に形成される。この柱基端被覆体55では、増設部17とのりしろ部19とが同一部位となって兼用される。
柱基端被覆体55によれば、これら一対の半割体を一組として、柱基部と平面部59とを遮水被覆することができる。
次に、立体構造物の製造方法として、上記本実施形態で述べたフランジ付傾斜管15の製造方法を説明する。
図8は立体構造物の製造方法の手順を概略的に説明した概念図である。
本実施形態に係る立体構造物の製造方法は、増設部外形状データ準備ステップと、被接合面形状データ取得ステップと、のりしろ部形状データ算出ステップと、成形データ算出ステップと、立体構造物形成ステップと、を有する。
増設部外形状データ準備ステップは、現場構築物11における表面の一部分を被接合面21として、この被接合面21に増設される増設部17の三次元の増設部外形状データを予め用意する。本実施形態では、増設部17が管部25となる。従って、増設部外形状データは、管部25の形状データとなる。
被接合面形状データ取得ステップは、被接合面21を現場にて計測して、三次元の被接合面形状データを得る。本実施形態では、被接合面21が四角形となる。
ここで、被接合面形状データは、例えば投影計測器61を用いたパターン投影計測により得ることが好ましい。パターン投影計測は、被接合面21に特有のパターン光を連続で投影し、投影された領域のデータを取得する。投影されたパターン光のエッジや歪みを識別することで、被接合面21の形状を算出しデータを取得する。パターン投影計測を行うことで、レーザー計測の場合のように、三脚を据えるなどの測量士の技術が不要となる。また、SFM(Structure from Motion )のように、最低2個の画像ファイルを撮影するカメラを使用し、相対距離情報を三次元オブジェクトに与えることで、オブジェクトの大きさを算出する煩雑な処理が不要となる。
のりしろ部形状データ算出ステップは、被接合面21の略中央部に増設部17を配置したときに、増設部17の外周と被接合面21の輪郭とに挟まれる形状部分を、被接合面形状データ及び増設部外形状データから三次元ののりしろ部形状データとして現場にて算出する。本実施形態では、四角形に円形の内穴が空いた形状データとなる。
成形データ算出ステップは、増設部外形状データ及びのりしろ部形状データから、三次元の成形データを現場にて算出する。本実施形態では、フランジ付傾斜管15の形状データとなる。
立体構造物形成ステップは、成形データに基づき現場にて増設部17及びのりしろ部19を一体に備えるフランジ付傾斜管15を3Dプリンタ27により形成する。3Dプリンタ27は、本体部63に、制御部、リール、移動機構を備える。移動機構は、装置下部に配置される成形基準面65に対してノズル67を移動自在に支持する。
立体構造物の製造方法に使用される3Dプリンタ27は、例えば処分場建設資材に特化した大型3Dプリンタとなる。大型3Dプリンタは、幅・奥行が2m程度、高さが3m程度のサイズとなる。また、大型3Dプリンタは、マルチリンク駆動制御を行う、熱溶解積層加工方式となる。成形サイズは、1m四方となる。また、この3Dプリンタ27は、造形が難しいポリエチレンを積層可能とする。
3Dプリンタ27のその他の構成は、周知の技術(特開2015-189238、特許第5909309、特開2017-128073、特開2018-75825等に開示される技術)を利用することができる。
3Dプリンタ27によるフランジ付傾斜管15の形成では、フランジ付傾斜管15を平行な複数の面で切断した各断面に対応する層体を所定の材料を吐出することによって形成する。この層体を順次積層していくことで、造形対象物である三次元造形物のフランジ付傾斜管15を生成する。
立体構造物の製造方法は、可搬性を有して構成された3Dプリンタ27を現場に持ち込み、すなわち、現場構築物11の近傍まで搬入し、被接合面形状データの取得に続けてフランジ付傾斜管15を形成することが好ましい。
また、立体構造物の製造方法は、3Dプリンタ27が、複数のノズル67を備え、それぞれのノズル67ごとに異素材を吐出し、フランジ付傾斜管15の異なる部位を、異素材により形成することが好ましい。
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係る立体構造物では、現場構築物11における被接合面21の略中央部に相当する位置に配置される増設部17である管部25を有する。この増設部17は、被接合面21に接合されることなく現場形成される。増設部17には、のりしろ部19が現場形成される。のりしろ部19は、熱可塑性樹脂からなり、増設部17の外周に内側縁部が連続するとともに、外形状が被接合面21の輪郭に沿った形成となる。つまり、増設部17と、のりしろ部19とが連続する一体構造として立体構造物が現場形成される。
この立体構造物は、増設部17と、のりしろ部19とが連続して一体となる。このため、立体構造物は、増設部17と、のりしろ部19との間に高い水密構造を得ることができる。のりしろ部19は、熱可塑性樹脂により形成されるので、現場構築物11の被接合面21が遮水シート13からなる場合、容易に熱溶着が可能となる。これにより、立体構造物は、のりしろ部19を被接合面21に熱溶着するのみで、手作業による複雑形状の現場加工を不要として、それぞれの現場形状にあった継目のない遮水シート加工を、現場構築物11に対して容易に施すことができる。
また、立体構造物は、現場のフィッティング度が向上し、接合部分にしわなどが発生しない。切り込みなどで対応しないので、漏水の危険性が減る。また、管部25と、のりしろ部19が連続形成されるので、外力がかかった場合の損傷を低下させることもできる。
また、フランジ付傾斜管15では、管部25の外周面に、のりしろ部19としてのフランジ部が形成される。このフランジ付傾斜管15は、例えば一般・産業廃棄物埋立処分場において遮水シート13で覆われた法面から突出する排水管部分に用いることができる。管部25は、排水管に外挿される。のりしろ部19は、排水管が貫通したシート貫通穴周縁の遮水シート表面に熱溶着により密着固定される。管部25の外周面は、環状に形成されるのりしろ部19の内側縁部に連続して一体に形成される。このため、排水管と遮水シート13との間を高い水密性で塞ぐことができる。その結果、管部25の外周面に、環状のフランジ部を継目なく一体化して成形でき、管部25とフランジ部との間に高い水密性を付与することができる。
また、立体構造物(隅部閉鎖体31、管付隅部閉鎖体37、隅部閉鎖体41)では、被接合面21が、法面の変化点39(折れ点)や、入隅や出隅などの隅部33となる。これらの被接合面21では、異なる角度で複数の面が交わる。のりしろ部19は、これら全ての面に亘って密着固定が可能となる環状に形成される。これにより、立体構造物は、法面の変化点39や入隅を水密に覆ったり、出隅に設けられる排水管を水密に覆ったりすることが容易に、安定した品質で可能となる。その結果、隅部33におけるそれぞれの面にのりしろ部19を密着固定して、現場ごとに異なる現場構築物11の複雑な被接合面21を水密に覆うことができる。
また、立体構造物では、増設部17と、のりしろ部19とをそれぞれに適した素材で形成することができる。この場合、例えばのりしろ部19は、熱溶着性に適した低融点の素材を用いることができる。また、増設部17には、のりしろ部19の溶着時の熱に対して影響を受けにくい高融点の素材を用いることができる。その結果、例えば増設部17とのりしろ部19とを、異なる溶融温度の異素材で形成して、のりしろ部19の加熱溶着を容易にしつつ、本体部63の熱変形の影響を抑制することができる。
本実施形態に係る立体構造物の製造方法では、増設部外形状データが予め用意される。被接合面形状データは、被接合面21を現場にて計測して得られる。これら増設部外形状データと被接合面形状データとから、のりしろ部形状データが算出される。こののりしろ部形状データと増設部外形状データとにより成形データが算出される。成形データは、3Dプリンタ27へ出力される。3Dプリンタ27は、成形データに基づき、立体構造物を平行な複数の面で切断した各断面に対応する層体を、素材を吐出することによって形成し、層体を順次積層していくことで立体構造物を形成する。この3Dプリンタ27による立体構造物の形成は、現場にて行われる。
3Dプリンタ27を用いた立体構造物の形成では、上記の増設部外形状データと、被接合面形状データとからなる成形データが必要となる。このうち、増設部17を形成するための増設部外形状データは、予め生成しておくことができる。一方、被接合面形状データは、3Dスキャナを用いたパターン投影計測などにより、被接合面21をレーザースキャンして得ることができる。つまり、立体構造物を形成するためのデータは、現場にて全て揃えることができる。これに加え、得られた成形データに基づき立体構造物を形成する3Dプリンタ27が現場に持ち込まれていれば、成形データの確立から製品形成までが連続した工程で現場にて実現可能となる。
3Dプリンタ27に使用される素材は、遮水シート13と同じ素材とすることができる。3Dプリンタ27により形成される立体構造物は、増設部17とのりしろ部19を継目なく一体化した成形品となる。
これにより、例えば現場で施工困難な箇所の3Dスキャニングを行い、画像データを読み込みモデリングし3D図面を起こし、その形状に応じた立体構造物を3Dプリンタ27により形成することができる。このため、様々な現場の困難箇所において適応可能な継目のない立体構造物を、専用の金型を用いることなく高品質で得ることができる。
また、立体構造物の製造方法では、立体構造物の使用される現場に、3Dプリンタ27が直接持ち込まれ、立体構造物が現場形成される。この場合、3Dプリンタ27は、キャスタ等を備えた可搬性を有するものとする。さらに、3Dプリンタ27は、駆動装置を備えた自走式とすることもできる。これにより、車両の進入が困難で且つ広大な面積に、複数の被接合面21が散在する現場構築物11においても、それぞれの現場に合わせた立体構造物を効率的且つ迅速に形成できる。その結果、成形データを、現場に持ち込んだ3Dプリンタ27へ出力するだけで、現場形状にあった遮水シート加工品などの立体構造物を製造できるため、手作業により現場加工を行う場合の準備段階での手間を削減できる。
また、立体構造物の製造方法は、3Dプリンタ27を自走式とすることにより、計測しながら、3Dプリンタ27を移動させて立体構造物を連続成形することができる。これにより、立体構造物の製造方法は、3Dプリンタ27に収容できない大型(例えば長尺)の立体構造物を形成することができる。
また、立体構造物の製造方法は、のりしろ部分があることで、接合箇所がわかりやすく、接合が確実となる。これによっても作業時間を短縮し、作業工程の簡略化が可能となる。
また、立体構造物の製造方法では、増設部17と、のりしろ部19とをそれぞれに適した素材で形成することができる。この場合、例えばのりしろ部19は、熱溶着性に適した低融点の素材を用いることができる。また、増設部17には、のりしろ部19の溶着時の熱に対して影響を受けにくい高融点の素材を用いることができる。その結果、例えば増設部17とのりしろ部19とを、異なる溶融温度の異素材で形成して、のりしろ部19の加熱溶着を容易にしつつ、本体部63の熱変形の影響を抑制することができる。
従って、本実施形態に係る立体構造物によれば、熟練した技術を必要とせず、施工手間を省くことが可能となり、品質を安定させて、漏水リスクを軽減できる。
本実施形態に係る立体構造物の製造方法によれば、熟練した技術を必要とせず、施工手間を省くことが可能となり、品質を安定させて、漏水リスクを軽減できる立体構造物を、容易且つ迅速に製造できる。
11…現場構築物
15…立体構造物(フランジ付傾斜管)
17…増設部
19…のりしろ部
21…被接合面
23…貫通穴
25…管部
27…3Dプリンタ
29…立体構造物(フランジ付垂直管)
31…立体構造物(隅部閉鎖体)
33…隅部
37…立体構造物(管付隅部閉鎖体)
41…立体構造物(隅部閉鎖体)
45…立体構造物(柱段部被覆体)
55…立体構造物(柱基端被覆体)
67…ノズル

Claims (3)

  1. 現場構築物における表面の一部分を被接合面として、この被接合面に増設される増設部の三次元の増設部外形状データを予め用意するステップと、
    前記被接合面を現場にて計測して三次元の被接合面形状データを得るステップと、
    前記被接合面の略中央部に前記増設部を配置したときに、前記増設部の外周と前記被接合面の輪郭とに挟まれる形状部分を、前記被接合面形状データ及び前記増設部外形状データから三次元ののりしろ部形状データとして前記現場にて算出するステップと、
    前記増設部外形状データ及び前記のりしろ部形状データから三次元の成形データを前記現場にて算出するステップと、
    前記成形データに基づき前記現場にて増設部及びのりしろ部を一体に備える立体構造物を3Dプリンタにより各層体ごとに積層して形成するステップと、
    を含むことを特徴とする立体構造物の製造方法。
  2. 可搬性を有して構成された前記3Dプリンタを前記現場に持ち込み、前記被接合面形状データの取得に続けて前記立体構造物を形成することを特徴とする請求項1に記載の立体構造物の製造方法。
  3. 前記3Dプリンタが、複数のノズルを備え、それぞれの前記ノズルごとに異素材を吐出し、前記立体構造物の異なる部位を、前記異素材により形成することを特徴とする請求項1または2に記載の立体構造物の製造方法。
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