JP7101674B2 - 担体に固相化された真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質への非特異的結合を抑制する方法 - Google Patents

担体に固相化された真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質への非特異的結合を抑制する方法 Download PDF

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Description

本発明は、担体に固相化された真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質への非特異的結合を抑制する方法に関する。さらに本発明は、該抑制方法を含む、該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子を特異的に検出する方法に関する。
現在、悪性腫瘍等の診断は、肉眼観察、X線、CT(Computed Tomography)または超音波等による画像情報に基づく予備的判断が行われ、病理組織標本を用いた組織構造を顕微鏡的に観察することによって最終的に判断される。しかし、これらの情報に基づく診断は、医師の判断基準に基づいて行われるため少なからず誤診が生じる可能性があり、場合によっては致命的な医療事故につながる虞もある。そこで、誤診の可能性を小さくするために、さらに被疑組織内の遺伝子の異常、腫瘍マーカーの有無に関する情報を加えて、総合的に判断されるようになってきている。
腫瘍マーカーは、近年研究が盛んであり、腫瘍に関連する抗原、酵素、特定のタンパク質、代謝産物、腫瘍遺伝子、腫瘍遺伝子生産物及び腫瘍抑制遺伝子などを指し、例えば、癌胎児性抗原CEA、糖タンパク質CA19-9、CA125、前立腺特異抗原PSA、甲状腺で産生されるペプチドホルモンであるカルシトニンなどが一部の癌で腫瘍マーカーとして癌診断に活用されている。検出の対象となる腫瘍マーカーには体液性(血液、リンパ液、尿等)マーカーが多く、その検出は公知の手段によって実施することができる。例えば、免疫学的検出法は、抗原抗体反応を利用して腫瘍マーカーの検出を行うもので、一般に検出精度が優れているばかりでなく、迅速、簡便かつ経済的な検出法である。また、近年、表面プラズモン共鳴現象を応用し、共鳴角度変化をリアルタイムでとらえることにより、抗体および抗原の生体分子間の反応および結合量の測定および速度論解析をすることができる表面プラズモン共鳴装置(SPR(surface plasmon resonance)装置)が様々な研究および検査等で利用されており、腫瘍マーカーの検査にも応用されている。これらの方法は、抗体を担体に固相化することによって、安価かつ大量に被験試料を処理できるという大きな利点を有する。
しかし、全ての腫瘍マーカーに対して上記の方法を適用できるわけではない。哺乳動物細胞の直径は10μm以上である場合が多く、抗体に対して極めて大きい。そのため、細胞と抗体を接触させた場合、抗体の結合特異性に関わらず、細胞膜が抗体に直接結合してしまうことが知られていた。例えば、固相化された抗Ig抗体を用いて、脾臓リンパ球から膜表面Ig陽性細胞の精製を試みた場合、抗Ig抗体に結合する細胞のうち膜表面Ig陽性細胞は90%程度に留まる。このことは、抗Ig抗体に結合する細胞には非特異的に結合した細胞が含まれていることを示す(非特許文献1)。腫瘍マーカーには体液性マーカーだけでなく、癌細胞膜表面に発現するマーカーも存在するが、細胞膜にアンカーされた腫瘍マーカーを検出するために上記の方法を適用しようとすれば、該細胞の細胞膜と抗体との間に非特異的な結合が生じるため、該非特異的結合を抑制しなければならないという課題があった。しかし、これまで抗体に対する細胞膜の非特異的結合を抑制するための有効な方法はなかった。
右田俊介、紺田進、本庶佑、濱岡利之編 免疫実験操作法I, II 1995. 南江堂 P595
本発明は、担体に固相化された真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質への非特異的結合を抑制する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、該抑制方法を含む、該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子を特異的に検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、例えば、抗体(抗c-kit抗体または陰性抗体)をバイオチップ上にスポットして固相化した後、バイオチップをBSAで被覆し、c-kit発現細胞をバイオチップに接触させ、両者の反射率を確認した結果、抗c-kit抗体および陰性抗体の間に反射率の差がほとんど見られなかった。本結果について、本発明者らは、抗c-kit抗体と陰性抗体の両者に細胞膜との非特異的結合が生じたため、両者の反射率の差が縮まったと推測した。そこで本発明者らは、担体に固相化された抗体に対する非特異的結合を抑制する方法を提供すべく鋭意研究を行い、抗体(抗c-kit抗体または陰性抗体)をバイオチップ上にスポットして固相化する際に予めゼラチンを抗体に混合した結果、抗c-kit抗体の反射率の上昇を確認できた一方、陰性抗体の反射率の上昇が確認できなくなることを見出した。また、同様の条件で、赤血球とレクチンの結合特異性を検討した結果、ウサギ赤血球と結合することが予め知られていたレクチンSBAは反射率が上昇した一方、ウサギ赤血球と結合しないことが予め知られていたレクチンMAMは反射率が上昇しないことを確認した。ゼラチンを用いることによって確認された前記の現象は前記以外の細胞と該細胞に対する結合性タンパク質との間でも見られた。さらに、同様の条件で抗体またはレクチンを固相化したバイオチップにエクソソームを接触させた結果、陰性抗体の反射率の上昇は確認できない一方、一部のレクチンや抗体において反射率の上昇が確認できた。これらの事実から、真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質を担体に固相化する際に、ゼラチンを用いることによって、該結合性タンパク質に対する非特異的結合を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1]真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質をゼラチン存在下で担体に固相化することを含む、該結合性タンパク質に対する非特異的結合を抑制する方法;
[2]該結合性タンパク質が固相化された該担体をゼラチンまたはカゼインで被覆することをさらに含む、[1]に記載の方法;
[3]該真核細胞が哺乳動物細胞である、[1]または[2]に記載の方法;
[4]該結合性タンパク質が抗体またはレクチンである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法;
[5](1)真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質をゼラチン存在下で担体に固相化すること、(2)被験試料を該担体に接触させること、および(3)該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と該結合性タンパク質の結合を検出することを含む、該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子を特異的に検出する方法;
[6]工程(1)と工程(2)の間において、該結合性タンパク質が固相化された該担体をゼラチンまたはカゼインで被覆することをさらに含む、[5]に記載の方法;
[7]該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と該結合性タンパク質の結合が免疫学的方法または表面プラズモン共鳴法によって検出される、[5]または[6]に記載の方法;
[8]該真核細胞が哺乳動物細胞である、[5]~[7]のいずれか1つに記載の方法;
[9]該結合性タンパク質が抗体またはレクチンである、[5]~[8]のいずれか1つに記載の方法;
[10]真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質がゼラチン存在下で固相化された、担体;
[11]ゼラチンまたはカゼインでさらに被覆された、[10]に記載の担体;
[12]該真核細胞が哺乳動物細胞である、[10]または[11]に記載の担体;
[13]該結合性タンパク質が抗体またはレクチンである、[10]~[12]のいずれか1つに記載の担体;
を提供する。
真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質を担体に固相化する際にゼラチンを用いることによって、担体に固相化された該結合性タンパク質に対する非特異的結合を抑えることが可能になり、その結果、真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と結合性タンパク質の結合を特異的に検出することができる。
マイクロアレイ型SPRi装置((株)堀場製作所:OpenPlex)に付属したFlowcellを示す図である。 マイクロアレイ型SPRi装置((株)堀場製作所:OpenPlex)専用のバイオチップ((株)堀場製作所:CS-HD)を示す図である。網掛け部は抗体またはレクチンが固相化された部分を示す。6角形枠は図1におけるGasketが接触する場所を示す。 バイオチップに固相化された抗c-Kit抗体と細胞膜表面のc-kitとの特異的な結合の検出を示す図である(従来法)。各グラフと写真は、A P3X63Ag 8.653細胞(P3X細胞;マウス骨髄腫細胞株)、 B MEG01S細胞(ヒト巨核芽球白血病細胞株)、 C HEK293細胞(ヒト胎児腎臓上皮細胞株)における反射率変化(グラフ)とSPRイメージ(写真)を示している。グラフは、抗c-Kit抗体の反射率からヤギIgGの反射率を差分している。SPRイメージは、細胞送液から500秒後の画像を示す。 バイオチップに固相化された抗c-Kit抗体と細胞膜表面のc-kitとの特異的な結合の検出を示す図である(新規固相化法)。各グラフと写真は、A P3X細胞、 B MEG01S細胞、 C HEK293細胞における反射率変化(グラフ)とSPRイメージ(写真)を示す。グラフは、抗c-Kit抗体の反射率からヤギIgGの反射率を差分している。SPRイメージは、細胞送液から500秒後の画像を示す。 バイオチップに固相化されたレクチンとウサギ赤血球表面糖鎖との特異的な結合の検出を示す図である(新規固相化法)。各グラフと写真は、A レクチンSBA、 B レクチンMAMにおける反射率変化(グラフ)とSPRイメージ(写真)を示す。グラフは、レクチンの反射率からブランクの反射率を差分している。SPRイメージは、細胞送液から1000秒後の画像を示す。 バイオチップに固相化された各レクチンまたは各抗体とエクソソーム表面の糖鎖または表面抗原との特異的な結合の検出を示す図である(新規固相化法)。各写真は、各レクチン(ConA; Concanavalin A、SBA; Soybean Agglutinin、MAM; Maackia amurensis、LF; Lectin, Fucose specific from Aspergillus oryzae、SSA; Lectin, sialic acid specific from Sambucus sieboldiana、AAL; Aleuria aurantia Lectin、UEA-I; Ulex Europaeus Agglutinin I,Lotus; Lotus Tetragonolobus Lectin)、各抗体(CD9、CD63、CD81、Mouse IgG’s)におけるSPRイメージを示す。SPRイメージは、希釈エクソソーム送液から約1500秒後の画像を示す。
本発明は、真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質をゼラチン存在下で担体に固相化することを含む、該結合性タンパク質に対する非特異的結合を抑制する方法(以下、本発明の抑制方法と記載する場合もある)を提供する。
本発明の抑制方法において、真核細胞は、真核生物の細胞であれば特に制限はなく、動物細胞、植物細胞、真菌を含む概念として定義するが、その中でも動物細胞および植物細胞が好ましく、哺乳動物細胞がより好ましい。哺乳動物細胞としては、以下に制限されるものではないが、例えば、肝細胞、腎細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、赤血球、巨核芽球、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞、癌細胞もしくは培養細胞などが挙げられる。
植物細胞としては、細胞壁を分解することによって得られるプロトプラストが好ましく挙げられる。
本発明の抑制方法において、結合性分子を有する物質としては、他にガラクト(ガングリオシド)脂質、スフィンゴ糖脂質、また、膜タンパク質含有細胞小器官(例えば、葉緑体、細胞核、小胞、 粗面小胞体、ゴルジ体、微小管、滑面小胞体、ミトコンドリア、液胞、リソソーム、中心体)などが挙げられる。
本発明の抑制方法において、上記真核細胞の細胞膜またはエクソソームの表面分子(以下、単に表面分子と記載する場合もある)としては、タンパク質、糖鎖、脂質、糖タンパク質、糖脂質などが挙げられるが、その中でもタンパク質、糖鎖が好ましい。細胞膜またはエクソソームの表面タンパク質としては、例えば、表面抗原(c-kit、CD9、CD63、CD81など)や、膜貫通型として構築が可能なFC tagやclasp(Disulfide-bonded α-helical coiled-coil domains)などを用いた遺伝子組換えタンパク質が挙げられる。細胞膜またはエクソソームの表面糖鎖としては、例えば、糖鎖抗原125(CA125)、がん胎児性抗原(CEA)、シアリルTn抗原などが挙げられる。
本発明の抑制方法において、上記の真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質(以下、単に結合性タンパク質と記載する場合もある)は、真核細胞の細胞膜またはエクソソームの表面分子を特異的に認識し、結合できるタンパク質であれば、特に制限はないが、例えば、抗体、レクチン等が挙げられる。
本発明の抑制方法において、抗体は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体をともに包含する。また、当該抗体は、あらゆる哺乳動物由来の抗体を包含するものであってよく、さらに、IgG、IgA、IgM、IgDまたはIgEのいずれの免疫グロブリンクラスに属するものであってもよいが、好ましくはIgGである。当該抗体は目的の表面分子に結合する市販の抗体や研究機関に保存されている抗体を使用してもよい。あるいは、当業者であれば、従来公知の方法に従って、抗体を作製することができる。
また、抗体には、前記のポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体に加えて、これらの抗体の断片が含まれる。抗体の断片とは、前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的にはFab、Fab’、F(ab’)2、scAb、scFv、またはscFv-Fc等を包含する。
本発明の抑制方法において、レクチンは、抗体以外の、細胞または複合糖質を凝集する性質を有する、糖結合性のタンパク質または糖タンパク質であれば、特に制限されない。
本発明の抑制方法において、表面分子に結合するレクチンとしては、例えば、Soybean Agglutinin (SBA)、Lens culinaris Agglutinin (LCA)、Aleuria aurantia Lectin (AAL)、Ulex europaeus Agglutinin (UEA)、Peanut Agglutinin (PNA)、Wheat Germ Agglutinin (WGA)、Concanavalin A (Con A)、Maackia amurensis(MAM)、フコース特異的レクチン(LF)、シアル酸特異的レクチン(SSA)、Lotus tetragonolobus Lectin(Lotus)などが挙げられる。
本発明の抑制方法において、結合性タンパク質は、ゼラチン存在下で担体に固相化されることを特徴とする。結合性タンパク質をゼラチンと共に担体に固相化することによって、該結合性タンパク質への非特異的結合を抑制することができる。抑制とは、非特異的結合の完全な阻害のみならず、部分的な低減も含む。このように非特異的な結合が抑制できる理由は以下であると考えられる。仮にゼラチンの代わりにBSAを用いるとすると、BSAはゼラチンに比べて疎水性であるため、水素結合による分子近傍の結合水は少なくなる。そのため細胞膜表面に多数存在するタンパク質の疎水性部分はBSAと疎水的に結合しやすくなり非特異的な結合を生じると考えられる。また、仮に結合性タンパク質だけを固相化したとすると、結合性タンパク質はゼラチンと比べて疎水性であることが多いため、同様に細胞膜表面にあるタンパク質と結合性タンパク質が疎水的に結合しやすくなり、非特異的な結合を生じると考えられる。一方ゼラチンは、タンパク質の中でも非常に親水性に富んでおり、かつ繊維状のためお互いが交錯することによって、多くの結合水を分子近傍に保持する。そのためゼラチンが存在すると細胞膜表面にある疎水性のタンパク質は、疎水的な結合をしにくくなると考えられる。また、結合性タンパク質をゼラチン存在下で担体に固相化すると、結合性タンパク質の分子間にゼラチンが存在するようになり、結合性タンパク質間の距離が大きくなる。つまり1個の細胞に対して、親水性にとんだ結合性タンパク質による反応面を与えることになり、非特異的な結合が抑制されると考えられる。以上のような2つの理由のために、同様に水分子で細胞膜表面を覆われた細胞とゼラチン存在下で固相化された抗体の間の非特異的な結合が抑制できると考えられる。ゼラチンは、加熱した蒸留水にゼラチン粉末を加えてゼラチン溶液を作製した後、加熱した蒸留水で所望の濃度に希釈したのち、4℃にすることで調製できる。結合性タンパク質の固相化は、調製したゼラチンを最終濃度0.005-2%、好ましくは0.01-1%になるように上記結合性タンパク質と混合したのち、担体にスポットし、静置することによって実施することができる。静置する時間は適宜決定してよいが、例えば、8から16時間でよい。
本発明の抑制方法において、ゼラチンに代わり多糖類の存在下で結合性タンパク質を担体に固相化することもできる。多糖類としては、アガロース、寒天、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、カードランなどが挙げられる。
本発明の抑制方法で使用される担体は、免疫学的方法または表面プラズモン共鳴法で使用されうる担体であれば特に制限はないが、例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、ガラス、金属薄膜、ニトロセルロース膜等が挙げられる。
本発明の抑制方法は、結合性タンパク質が固相化された担体をゼラチンまたはカゼインで被覆することをさらに含んでもよい。該担体をゼラチンでさらに被覆することによって、担体に固相化された結合性タンパク質に対する非特異的結合をさらに抑制することができ、同時に結合性タンパク質が固相化されていない担体表面部分に対する非特異的結合も抑制することができる。被覆は、上記の方法に従って調製したゼラチンを、終濃度0.005-2%、好ましくは1%になるように溶媒で調整し、該担体表面に満たして静置することによって実施することができる。溶媒は、該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と該結合性タンパク質の結合性に影響を与えないものであれば、特に制限されない。そのような溶媒としては、例えば、蒸留水、PBSなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、ゼラチンを担体表面上に静置する時間、温度は当業者が適宜決定できるが、例えば、10分から2時間、室温で静置することができる。
上記の通り、結合性タンパク質はゼラチンと共に担体に固相化されることによって、該結合性タンパク質への非特異的結合を抑制することができる。従って、本発明はまた、(1)真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質をゼラチン存在下で担体に固相化すること、(2)被験試料を該担体に接触させること、および(3)該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と該結合性タンパク質の結合を検出することを含む、該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子を特異的に検出する方法(以下、本発明の検出方法と記載する場合もある)を提供する。
本発明の検出方法において、真核細胞、表面分子、結合性タンパク質、ゼラチン、担体は本発明の抑制方法に記載したものと同様であってよい。
本発明の検出方法において、被験試料は、検出対象である真核細胞膜またはエクソソームの表面分子を発現している真核細胞を含むまたは含む疑いがある試料であれば特に制限なく、例えば、該真核細胞を有するまたは有する疑いがある対象における体液(血液、唾液、涙液、尿、汗など)、組織由来の細胞試料などが挙げられる。
本発明の検出方法において、被験試料を該担体に接触させる前、接触させた後、または接触の前後両方において、洗浄バッファーで該担体表面を洗浄してもよい。洗浄バッファーは、本発明の検出方法における被験試料を懸濁できる溶媒であって、真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と結合性タンパク質の間の反応や抗原抗体反応に適した生理的な塩類溶液であれば特に制限はなく、例えば、0.1%ゼラチンと0.02%Tween20を含むPBSなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の洗浄バッファーの洗浄速度、洗浄時間、洗浄する際の温度は、当業者が適宜決定することができる。
本発明の検出方法において、真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と結合性タンパク質の結合を検出する方法は、結合を検出することができる方法であれば特に制限されるものではないが、例えば、免疫学的方法または表面プラズモン共鳴法が挙げられる。
本発明の検出方法において、免疫学的方法は、特に制限されるものではなく、被験試料中の真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と結合性タンパク質からなる真核細胞膜またはエクソソームの表面分子-結合性タンパク質複合体を化学的または物理的手段により検出する免疫学的方法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。また、必要に応じて既知量の真核細胞膜またはエクソソームの表面分子を含む標準液を用いて作製した標準曲線より真核細胞膜またはエクソソームの表面分子の量の算出を行うこともできる。免疫学的方法としては、ELISAなど、バッチ系、フロー系を問わずに固相表面で抗原抗体反応させる手法であれば良い。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体と標識剤との結合にビオチン-アビジン系を用いることもできる。
サンドイッチ法においては、担体に固相化された結合性タンパク質に被験試料を反応させ(1次反応)、さらに該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する標識二次抗体を反応させ(2次反応)た後、担体上の標識剤の量(活性)を測定することにより、被験試料中の真核細胞膜またはエクソソームの表面分子を検出および定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。
あるいは、表面プラズモン共鳴(SPR)法による免疫センサーを用いて、市販のセンサーチップの表面上に、常法に従って結合分子を固相化し、これに被験試料を接触させた後、該センサーチップに特定の波長の光を特定の角度から照射し、共鳴角度の変化を指標にして、固相化した結合性タンパク質への真核細胞膜またはエクソソームの表面分子の結合の有無を判定することができる。
本発明の検出方法は、本発明の抑制方法と同様に、工程(1)と工程(2)の間において、結合性タンパク質が固相化された担体をゼラチンまたはカゼインで被覆することをさらに含んでよい。被覆に用いるゼラチン、および被覆の方法は、本発明の抑制方法に記載したものと同様であってよい。
本発明はまた、真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質がゼラチン存在下で固相化された、担体(以下、本発明の担体と記載する場合もある)を提供する。本発明の担体は、該ゼラチンまたはカゼインでさらに被覆されていてもよい。
本発明の担体において、真核細胞、表面分子、結合性タンパク質、ゼラチン、担体は本発明の抑制方法に記載したものと同様であってよい。
以下において、実施例により本発明をより具体的に説明するが、この発明はこれらに限定されるものではない。
表面プラズモン共鳴(SPR)による細胞検出バイオセンサーの構築
表面プラズモン共鳴(SPR)による細胞検出バイオセンサーは、マイクロアレイ型SPRi装置((株)堀場製作所:OpenPlex)と装置専用のバイオチップ((株)堀場製作所:CS-HD; スクシンイミドで活性化されたカルボキシ基をチップ表面に固相化したタイプ)を用いて構築した。構築したセンサーは、チップ表面への細胞の結合によって誘起されるSPR現象に伴う反射光の変化量を反射率(%)として、3秒毎に測定することができる。同時に、SPRの反射率変化をスポットイメージとして観察することができる。またチップは12 mm×23 mmの表面積があるので、固相化するためのリガンド溶液のスポット径(スポット量)を調整することで多数のスポットを並列できる特徴がある。
比較例 抗体を結合したバイオチップによる細胞の検出(従来法:牛血清アルブミン(BSA)によるブロッキング)
細胞には、P3X63Ag 8.653細胞(P3X細胞;マウス骨髄腫細胞株)、MEG01S細胞(ヒト巨核芽球白血病細胞株)、およびHEK293細胞(ヒト胎児腎臓上皮細胞株)を用いた。抗体には、これらの細胞表面に発現しているc-Kit抗原(ヒトおよびマウス)に対する抗体(抗c-Kit 抗体;R&D systems Inc., AF1356)を用いた。また陰性抗体には、未感作ヤギ抗体(Abcam Inc., ab37373)を用いた。抗体は、スポッターを用いてチップ表面に10 nLスポットし、16時間静置することで固相化した。ダルベコのPBS(-)(以下、PBSと略記)で洗浄し、1%牛血清アルブミン(BSA)を溶解したPBSをチップ表面に満たして1時間室温で静置し、ブロッキングした。ブロッキングしたチップは、PBSで3回洗浄後、装置に装着した。チップ表面へのバッファーまたはサンプルの接触は、Flow-cell(図1)を介して行った。Flow-cellは、Gasket全体がチップに完全に覆われるような位置(図2)で、チップと接触固定する。また、Flow-cellの平面のうち、Gasketの枠に囲まれた平面は、Gasketの枠の周囲の平面よりも、80μm凹んでいる。結果的に、Flow-cellと接触したチップは、Flow-cellのGasketの枠に囲まれた平面とチップ表面の間に幅80μmの空間的隙間が生じる。従って、Flow-cellにFittingを介して連結された片方のポリ塩化ビニルチューブ(内径380μm)から送液されたバッファー等は、幅80μmの空間的隙間を満たすことによってチップ表面に接触し、もう片方のポリ塩化ビニルチューブから排出される。チップを装着した装置には、ランニングバッファーとして0.2% BSAと0.02% Tween20を含むPBS(バッファーA)を25μL/分の流速で送液し、チップ表面をコンディショニングした。安定化した時点の反射率を0%として、P3X細胞をバッファーAに懸濁して480秒間送液し、その後ただちにバッファーAのみを480秒間送液した。その結果、抗c-Kit抗体反射率から未感作ヤギ抗体反射率の差分は0.67%と、抗c-Kit抗体に特異的な結合を検出できたが、SPRiスポットイメージでわかるように未感作ヤギ抗体にも非特異的な結合が観察された(図3-A)。Yamasaki et al., AnaChem, (2016) 88, 6711-6717(以下、Yamasaki et al.)に基づく再生条件でチップを再生後、MEG01S細胞も同様にバッファーAに懸濁して480秒間送液し、その後ただちにバッファーAのみを480秒間送液した。その結果、抗c-Kit抗体反射率から未感作ヤギ抗体反射率の差分は0.4%と、抗c-Kit抗体に特異的な結合を検出できたが、P3X細胞の結果と同様にSPRiスポットイメージにおいて未感作ヤギ抗体にも非特異的な結合が観察された(図3-B)。HEK293細胞についてもバッファーAに懸濁して480秒間送液し、その後ただちにバッファーAのみを480秒間送液した。その結果、抗c-Kit抗体反射率から未感作ヤギ抗体反射率の差分は0.02%と、抗c-Kit抗体にわずかな特異的な結合しか検出できなかった(図3-C)。上記のように、c-kitに対して反応性を持たない陰性抗体にも反射率変化が見られたことは、陰性抗体は各細胞の細胞膜に対する非特異的結合を生じたことを示している。さらに、このことは、抗c-kit抗体は各細胞膜表面のc-kitに対する特異的結合を生じているが、同時に各細胞の細胞膜に対する非特異的結合もまた生じていることを示している。また、チップは抗体固相化後にBSAでブロッキングしたが、抗体の細胞膜への非特異的結合を抑制しなかった。従って、抗体を用いた細胞膜表面タンパク質の検出系を確立するためには、この非特異結合を抑える必要のあることが判った。
実施例1 抗体を結合したバイオチップによる細胞の検出(新規固相化法:抗体固相化時にゼラチンを添加)
上記を鑑みて、発明者らは、抗体固相化の際にゼラチン使用することを試みた。具体的には、センサーチップには、0.1%ゼラチン(Gelatin, fine powder (Nacalai tesque 16631-05))を含んだ抗体を、スポッターを用いてチップ表面に10 nLスポットし、16時間静置することで固相化した。PBSで洗浄し、1%ゼラチンを溶解したPBSをチップ表面に満たして1時間室温で静置し、ブロッキングした。チップを装置に装着し、0.1%ゼラチンと0.02% Tween20を含むPBS(バッファーB)を25μL/分の流速で送液し、コンディショニングした。安定化した時点の反射率を0%として測定を開始した。P3X細胞、MEG01S細胞あるいはHEK293細胞をバッファーBに懸濁し480秒間送液した後、バッファーBに切り替えて、さらに480秒間送液した。その結果、反射率は、P3X細胞が2.28%、MEG01S細胞が0.91%、HEK293細胞が0.72%と上昇し、細胞がチップ上の抗c-Kit抗体と特異的に結合した結果、ゼラチンを含まない上記の実験条件と比較して、特異的な反応性が飛躍的に向上した(図4A-C)。図4に示したように、これらの結合はSPRスポットイメージでも容易に観察することができ、抗c-Kit抗体を固相化したスポットでは反射率の上昇を白いイメージとして観察できた。一方、陰性抗体ではスポットが黒く抜けており、反射率は上昇しなかった。これらの結果から、抗体固相化時における0.1%ゼラチンの添加により、抗c-Kit抗体と細胞膜上のc-kitの特異的な相互作用を観察できたことが明らかになった。
実施例2 レクチンを結合したバイオチップによる細胞の検出(新規固相化法:レクチン固相化時にゼラチンを添加)
構築できた細胞検出条件を用いて、赤血球とレクチンの結合能を調べた。赤血球には、EDTA処理されたウサギ赤血球((株)日本バイオテスト研究所)を使用した。レクチンには、ウサギ赤血球と結合することが判明しているGlycine Max(SBA)、および結合しないことが判明しているMacackia amurensis(MAM)を用いた。抗体の場合と同様に、0.1%ゼラチンを含んだレクチン(SBA(J117)、MAM(J210);J-オイルミルズ)を、スポッターを用いてチップ表面に10 nLスポットし、16時間静置することで固相化した。PBSで洗浄し、1%ゼラチンを溶解したPBSをチップ表面に満たして1時間室温で静置し、ブロッキングした。チップを装置に装着し、バッファーBを25μL/分の流速で送液し、コンディショニングした。安定化した時点の反射率を0%として測定を開始した。ウサギ赤血球をバッファーBで10倍希釈し抗体と同様の条件で240秒間送液した。しかし、連続的な送液状態では、赤血球が結合できずに素通りすることが判った。そこで送液を20秒間停止し、赤血球の懸濁液をチップ表面に留めることによって、ウサギ赤血球とレクチンを結合させた。その後、バッファーBを1200秒間送液した。この時点の反射率は、SBAが1.5%となり、赤血球が固相化SBAと結合した(図5-A)。一方、MAMとは結合しなかった(図5-B)。SPRのスポットイメージにおいても、赤血球は固相化SBAと特異的に結合していることが判った(図5-A, -B)。これらの結果から、リガンドとしてレクチンを固相化する際の0.1%ゼラチンの添加は、抗体だけでなくレクチンと細胞の特異的な相互作用を観察するうえでも、効果的であることが判った。
実施例3 SPRイメージ法によるヒト血清由来エクソソームの糖鎖および表面抗原同時検出
細胞表面には、細胞膜を形成する脂質以外に膜蛋白質である表面抗原と糖鎖が存在する。表面抗原は、対応したリガンドや外部刺激の受容体として細胞の活性化を担う。また、糖鎖は、細胞がリガンドや外部刺激により分化や成熟した後、その配列が変化し標的分子となることが知られている。たとえば、微生物やウイルスは、特定細胞表面糖鎖を認識し、細胞に感染また侵入する。正常細胞からガン化する過程においては、ガン細胞特異的糖鎖発現や特定糖鎖発現が増加や、これら細胞が放出するエクソソームの表面糖鎖配列も変化する。従って、糖鎖は、微生物、細胞、エクソソーム識別に有用なバイオマーカーとして期待できる。実際に、臨床現場では、バイオマーカーとして表面抗原や糖鎖を使用する。表面抗原は、フローサイトメーターに代表される解析が主流である。しかし、糖鎖解析はその構造が複雑且つ、多くの環境要因に敏感に影響され、短時間での構造変化やDNAシークエンスによる解析ができず、糖鎖の解析方法は煩雑で大変困難である。このため、膜蛋白質である表面抗原と糖鎖解析の同時検出は現在のところなされていない。そこで本実施例では、アナライトとしてヒト検体を想定したヒト精製エクソソームを使用し、糖鎖配列特異的に認識するタンパクであるレクチンまたは表面抗原特異的抗体をリガンドとして用いることで、糖鎖と表面抗原の同時検出を行った。検出を行う手法としては、多検体の同時検出が可能であるSPRi法を用いた。
アナライトとして使用したヒト血清由来エクソソームは、Bio west社のHuman Serum (S4200-100) 10 mlと富士フイルム和光純薬株式会社製のMagCapture エクソソームアイソレーションキットPS (293-77601)を用いて、そのプロトコールに従って精製した。リガンドとして、エクソソーム糖鎖検出は、Concanavalin A (ConA;ナカライテスク株式会社、09446‐94)、Soybean Agglutinin(SBA; J-ケミカル社、J117)、Maackia amurensis(MAM; J-ケミカル社、J110)、Aspergillus oryzae由来精製フコース特異的レクチン(LF;東京化成株式会社、L0169)、Sambucus sieboldiana由来精製シアル酸特異的レクチン(SSA;、J-ケミカル社、J118)、Aleuria aurantia Lectin(AAL; J-ケミカル社、J101‐R)、Ulex europaeus Agglutinin I(UEA-I; J-ケミカル社、J119)、Lotus tetragonolobus Lectin(Lotus; J-ケミカル社、J109)の8種類を使用した。また、エクソソーム表面抗原検出は、テトラスパニン抗体であるCD9抗体(CD9;R&D systems Inc., MAB1880)、CD63抗体(CD63; Santa Cruz Biotechnology, sc-365604)、CD81抗体(CD81; Santa Cruz Biotechnology Inc., sc-166029)の3種類を使用した。陰性コントロールとしてはマウス抗体(Mouse IgG’s;Sigma-Aldrich Inc., 18765)を使用した。
前記の各リガンドとエクソソーム間の非特異的結合抑制効果を有する0.1%ゼラチンと前記の各リガンドを混合し、スポッターを用いてチップ表面に10 nLスポットし、16時間静置することで結合した。PBSでチップ表面を洗浄し、1%カゼインでチップ表面に満たして1時間室温で静置し、ブロッキングした。ブロッキングしたチップを、PBSで3回洗浄後、装置に装着した。装置には、ランニングバッファーとして 0.1%カゼインを含んだPBS(バッファーA)を25 μL/分の流速で送液し、チップ表面を平衡化した時点の反射率を0とした。次に、精製エクソソームを10倍希釈になるようにバッファーAで希釈した。希釈したエクソソーム 200 μLを装置に注入後、240秒間送液した。エクソソームとレクチンとの結合速度は遅く、液の流れにより結合が阻害されるため送液を一旦停止し、エクソソーム希釈液をチップ表面に600秒間留めることによって、エクソソームとレクチンを結合および凝集させた。その後、さらにバッファーAのみを240秒間送液し、合計1080秒を結合過程とした。その後、解離過程として、バッファーAのみを480秒間送液し、バイオチップ表面を洗浄した。
その結果、バッファーAに置換された解離過程における約1500秒後のSPRイメージにおいては、陽性レクチンがSBA、MAM、LF、SSA、UEA-I、Lotus、かつ、抗体は、CD63が陽性、Mouse IgG’sは陰性であった(図6)。以上の結果は、精製エクソソーム上には、α-結合フコースとシアル酸含有NまたO型糖鎖、脂質結合型糖鎖が存在し、かつ、表面抗原であるテトラスパニンは、CD63が存在することが同時計測できた。かつ、陰性コントロールのMouse IgG’sが陰性であることから、測定系は成立していた。
本発明の抑制方法を用いることによって、担体上の結合分子への非特異的結合を抑制することが可能になり、担体に結合分子を固相化する方法を採用できるようになるため、安価かつ大量に被験試料を処理できるという大きな利点を有する。また、真核細胞膜またはエクソソームの表面分子の定量的な測定が可能になり、創薬、再生医療、癌の診断などの産業分野に効果的な分析方法を提供することが可能になる。本出願は、日本で出願された特願2017-138115(出願日:平成29年7月14日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。

Claims (10)

  1. (1)真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質をゼラチン存在下で担体に固相化すること、および(2)該結合性タンパク質が固相化された該担体をゼラチンまたはカゼインで被覆することを含む、該結合性タンパク質に対する真核細胞膜またはエクソソームの非特異的結合を抑制する方法。
  2. 該真核細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 該結合性タンパク質が抗体またはレクチンである、請求項1または2に記載の方法。
  4. (1)真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質をゼラチン存在下で担体に固相化すること、(2)該結合性タンパク質が固相化された該担体をゼラチンまたはカゼインで被覆すること、真核細胞またはエクソソームを該担体に接触させること、および()該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と該結合性タンパク質の結合を検出することを含む、該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子を特異的に検出する方法。
  5. 該真核細胞膜またはエクソソームの表面分子と該結合性タンパク質の結合が免疫学的方法または表面プラズモン共鳴法によって検出される、請求項に記載の方法。
  6. 該真核細胞が哺乳動物細胞である、請求項4または5に記載の方法。
  7. 該結合性タンパク質が抗体またはレクチンである、請求項のいずれか1項に記載の方法。
  8. 真核細胞膜またはエクソソームの表面分子に対する結合性タンパク質がゼラチン存在下で固相化され、ゼラチンまたはカゼインでさらに被覆された、担体。
  9. 該真核細胞が哺乳動物細胞である、請求項に記載の担体。
  10. 該結合性タンパク質が抗体またはレクチンである、請求項8または9に記載の担体。
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