以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下の記載は本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらに特定されない。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味するものとし、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味するものとし、また、「全固形分」とは、有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物における溶剤以外の全成分を意味するものとする。さらに、本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明において、「(共)重合体」とは、単一重合体(ホモポリマー)と共重合体(コポリマー)の双方を含むことを意味し、また、「(酸)無水物」、「(無水)…酸」とは、酸とその無水物の双方を含むことを意味する。
本発明において、「多塩基酸(無水物)」とは、「多塩基酸及び/又は多塩基酸無水物」を意味する。
本発明において、重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をさす。
また、本発明において、隔壁材とはバンク材、壁材をさし、同様に、隔壁とはバンク、壁をさす。
本発明において、発光部とは電気エネルギーを与えた場合に光を放出する部分をさす。
本発明において、「質量」と「重量」は同義である。
本発明において、化学式中の*は結合手を表す。
本発明において、「テーパー角が大きい」と「テーパー角が高い」は同義であり、「テーパー角が小さい」と「テーパー角が低い」は同義である。
[1]有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物
第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和化合物、(B)光重合開始剤及び(C)アルカリ可溶性樹脂を含有する有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物であって、前記(C)アルカリ可溶性樹脂が、後述の一般式(1)で表される部分構造を有するアルカリ可溶性樹脂(c)を含有し、さらに(E)連鎖移動剤を含有することを特徴とする。必要に応じて、さらにその他の成分を含んでいてもよく、例えば、(D)撥液剤や、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和化合物、(B)光重合開始剤及び(C)アルカリ可溶性樹脂を含有し、前記(A)エチレン性不飽和化合物が(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含有し、前記(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有割合が全固形分中30質量%以下であることを特徴とする。必要に応じて、さらにその他の成分を含んでいてもよく、例えば、(D)撥液剤や、(E)連鎖移動剤や、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
以下、特に断りがない限り、「本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物」は、前記第1の態様に係る有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物、及び第2の態様に係る有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物の両者を指す。
本発明において隔壁とは、例えば、アクティブ駆動型有機電界発光素子における機能層(有機層、発光部)を区画するためのものであり、区画された領域(画素領域)に機能層を構成するための材料であるインクを吐出、乾燥することで、機能層及び隔壁からなる画素等を形成させていくために使用されるものである。
[1-1]有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物の成分及び組成
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物を構成する成分及びその組成について説明する。
第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物(以下、単に「第1の態様に係る感光性樹脂組成物」という場合がある。)は、(A)エチレン性不飽和化合物、(B)光重合開始剤及び(C)アルカリ可溶性樹脂を含有し、さらに(E)連鎖移動剤を含有し、通常は、溶剤も含有する。また、第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、撥液性の隔壁を形成するために用いることが好ましく、係る観点からは(D)撥液剤を含有することが好ましく、また、前記(A)~(C)及び(E)成分として、撥液剤としての作用を示すものを用いてもよい。
第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物(以下、単に「第2の態様に係る感光性樹脂組成物」という場合がある。)は、(A)エチレン性不飽和化合物、(B)光重合開始剤及び(C)アルカリ可溶性樹脂を含有し、前記(A)エチレン性不飽和化合物が(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含有し、前記(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有割合が全固形分中30質量%以下であり、通常は溶剤も含有する。また、第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、撥液性の隔壁を形成するために用いることが好ましく、係る観点からは(D)撥液剤を含有することが好ましく、また、前記(A)~(C)成分として、撥液剤としての作用を示すものを用いてもよい。
[1-1-1](A)成分;エチレン性不飽和化合物
第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和化合物を含有する。(A)エチレン性不飽和化合物を含むことで、高感度となると考えられる。
ここで使用されるエチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物を意味するが、重合性、架橋性、及びそれに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましく、また、その不飽和結合は(メタ)アクリロイルオキシ基に由来するもの、つまり、(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましい。
第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物においては、特に、1分子中にエチレン性不飽和結合を2個以上有する多官能エチレン性単量体を使用することが望ましい。多官能エチレン性単量体が有するエチレン性不飽和基の数は特に限定されないが、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは5以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、特に好ましくは7以下である。前記下限値以上とすることで重合性が向上して高感度となる傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性がより良好となる傾向がある。
エチレン性不飽和化合物の具体例としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と、不飽和カルボン酸及び多塩基性カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステル等が挙げられる。
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等の脂肪族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル、これら例示化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル、クロネートに代えたクロトン酸エステルもしくはマレエートに代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジアクリレート、ハイドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールトリアクリレート等の芳香族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等が挙げられる。
脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と、不飽和カルボン酸及び多塩基性カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステルとしては必ずしも単一物ではないが、代表的な具体例を挙げれば、アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
その他、第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物に用いられる多官能エチレン性単量体の例としては、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル又はポリイソシアネート化合物とポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られるようなウレタン(メタ)アクリレート類;多価エポキシ化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリル酸との付加反応物のようなエポキシアクリレート類;エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が有用である。
上記ウレタン(メタ)アクリレート類としては、例えば、DPHA-40H、UX-5000、UX-5002D-P20、UX-5003D、UX-5005(日本化薬社製)、U-2PPA、U-6LPA、U-10PA、U-33H、UA-53H、UA-32P、UA-1100H(新中村化学工業社製)、UA-306H、UA-510H、UF-8001G(共栄社化学社製)、UV-1700B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7630B、UV7640B(日本合成化学社製)等が挙げられる。
これらの中でも、適正なテーパー角と感度の観点から、(A)エチレン性不飽和化合物として、エステル(メタ)アクリレート類又はウレタン(メタ)アクリレート類を用いることが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルフタル酸、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの二塩基酸無水物付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの二塩基酸無水物付加物等を用いることがより好ましい。
また、残渣発生抑制の観点から、第2の態様として後述するものを用いることも好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物において、(A)エチレン性不飽和化合物の分子量は特に限定されないが、感度、撥液性、テーパー角の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは150以上で、さらに好ましくは200以上、よりさらに好ましくは300以上、特に好ましくは400以上、最も好ましくは500以上であり、好ましくは1,000以下、より好ましくは700以下である。
また、(A)エチレン性不飽和化合物の炭素数は特に限定されないが、感度、撥液性、テーパー角の観点から、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、よりさらに好ましくは20以上、特に好ましくは25以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下、特に好ましくは30以下である。
また、感度、撥液性、テーパー角の観点から、エステル(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、及びウレタン(メタ)アクリレート類が好ましく、中でも、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等3官能以上のエステル(メタ)アクリレート類、2,2,2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルフタル酸、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの二塩基酸無水物付加物等の3官能以上のエステル(メタ)アクリレート類への酸無水物の付加物が、感度、撥液性、テーパー角の観点でさらに好ましい。
第1の態様に係る本発明の感光性樹脂組成物中の(A)エチレン性不飽和化合物の含有割合は、全固形分に対して通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。前記下限値以上とすることで露光時の感度やテーパー角が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性が良好となる傾向がある。
また、(C)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対する(A)エチレン性不飽和化合物の含有割合は、通常15質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上、特に好ましくは90質量部以上であり、通常150質量部以下、好ましくは130質量部以下、より好ましくは120質量部以下、さらに好ましくは110質量部以下である。前記下限値以上とすることで露光時に感度が良好となり、テーパー角が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性が良好となる傾向がある。
一方で、第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和化合物を含有する。(A)エチレン性不飽和化合物を含むことで、高感度となると考えられる。
<(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物>
第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物における(A)エチレン性不飽和化合物は、(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含有し、前記(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有割合が全固形分中30質量%以下である。このように(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含有することで、当該化合物が現像液への溶解性に優れるため画素部(発光部)の残渣発生が抑制され、インクジェット塗布特性が向上するものと考えられる。さらに、当該化合物の含有割合を前記上限値以下とすることで、当該化合物に含まれる酸基由来のアウトガス発生が低減され、形成後の隔壁からのアウトガス発生を十分に抑制できるものと考えられる。
エチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物を意味する。(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物が1分子中に有するエチレン性不飽和結合の数は1個以上であれば特に限定されないが、重合性、架橋性、及びそれに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の観点から、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、4個以上であることがさらに好ましく、5個以上であることが特に好ましく、また、通常15個以下であり、12個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、8個以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで重合性が向上して高感度となり、硬化性が高くなるに伴ってアウトガス発生量が低減する傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性がより良好となる傾向がある。
また、(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物が1分子中に有する酸基の数は1個以上であれば特に限定されないが、硬化性の観点から、4個以下が好ましく、2個以下がより好ましく、1個であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることで残膜率が高くなる傾向がある。
また、(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物が有する酸基の種類は特に限定されないが、カルボキシル基、リン酸基、スルホン基等が挙げられ、現像性の観点から、カルボキシル基が好ましい。酸基を2個以上有する場合には、酸基は同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物の分子量は特に限定されないが、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましく、350以上が特に好ましく、また、1,000以下が好ましく、800以下がより好ましく、700以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物の化学構造は特に限定されないが、現像性の観点から、例えば、下記一般式(a1)で表される化合物であることが好ましい。
上記式(a1)中、Ra1は水素原子又はメチル基を表す。Ra2、Ra3、Ra5及びRa6は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
Ra4はn+1価の連結基を表す。
Ra7は置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族環基を表す。
l及びmは各々独立に、0~12の整数を表す。
nは1以上の整数を表す。
(Ra2、Ra3、Ra5及びRa6)
前記一般式(a1)において、Ra2、Ra3、Ra5及びRa6は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
アルキレン基は直鎖でも、分岐鎖状でも、環状でも、それらの組み合わせでもよい。その炭素数は特に限定されないが、通常1以上、また、通常4以下、好ましくは2以下である。前記上限値以下とすることで残膜率が向上する傾向がある。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられ、硬化性の観点から、メチレン基又はエチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
アルキレン基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br、-I)、ヒドロキシ基、カルボキシル基等が挙げられ、硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
(Ra4)
前記一般式(a1)において、Ra4はn+1価の連結基を表す。n+1価の連結基の化学構造は特に限定されないが、置換基を有していてもよいn+1価の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよく、現像性の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、炭化水素基中の炭素-炭素単結合は、-O-、-CO-及び-NH-からなる群から選ばれる少なくとも1種で中断されていてもよい。
n+1価の連結基の具体例としては以下のものが挙げられる。
(Ra7)
前記一般式(a1)において、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族環基を表す。
Ra7におけるアルキレン基は直鎖でも、分岐鎖状でも、環状でも、それらの組み合わせでもよい。その炭素数は特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常8以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。前記下限値以上とすることで残膜率が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向やアウトガス発生量が低減する傾向がある。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられ、現像性の観点から、メチレン基又はエチレン基が好ましく、エチレンがより好ましい。
アルキレン基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br、-I)、ヒドロキシ基、カルボキシル基等が挙げられ、硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
Ra7におけるアルケニレン基は直鎖でも、分岐鎖状でも、環状でも、それらの組み合わせでもよい。その炭素数は特に限定されないが、通常2以上、好ましくは4以上、また、通常8以下、好ましくは6以下である。前記下限値以上とすることで残膜率が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
アルケニレン基の具体例としては、エテニレン基、プロペニレン基、ブチレニレン基、シクロへキセニレン基等が挙げられ、現像性と硬化性の観点から、エテニレン基又はシクロへキセニレン基が好ましく、エテニレン基がより好ましい。
アルケニレン基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br、-I)、ヒドロキシ基、カルボキシル基等が挙げられ、硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
Ra7における2価の芳香族環基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下がよりさらに好ましく、10以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の基が挙げられる。
また、2価の芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族複素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の基が挙げられる。
これらの中でも硬化性の観点から、2個の遊離原子価を有するベンゼン又はナフタレン環が好ましく、2個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
2価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br、-I)、ヒドロキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、無置換が好ましい。
これらの中でも現像性確保及びアウトガス発生量低減の観点から、Ra7が置換基を有していてもよいアルキレン基であることが好ましく、無置換のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基であることがさらに好ましい。
(l及びm)
前記一般式(a1)において、l及びmは各々独立に、0~12の整数を表す。現像性の観点から、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、また、硬化性の観点から、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下がさらに好ましく、2以下が特に好ましい。一方で、アウトガス発生量低減の観点からは0であることが好ましい。
(n)
前記一般式(a1)において、nは1以上の整数を表す。nは2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、5以上が特に好ましく、また、6以下が好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が高くなり、硬化性が高くなるに伴ってアウトガス発生量が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物の例としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と、不飽和カルボン酸及び多塩基性カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステルが挙げられ、必ずしも単一物ではないが、代表的な具体例を挙げれば、アクリル酸、フタル酸、及びペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、コハク酸、及びペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、コハク酸及びジペンタエリスリトールの縮合物等が挙げられる。
第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物において、(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有割合は、全固形分中30質量%以下であれば特に限定されないが、27質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、22質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がよりさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましく、また、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。前記上限値以下とすることでアウトガス発生量が低減する傾向があり、また、前記下限値以上とすることでインクジェット塗布適性が向上する傾向がある。
また、(A)エチレン性不飽和化合物中の(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有割合は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下がよりさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましく、また、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。前記上限値以下とすることでアウトガス発生量が低減する傾向があり、また、前記下限値以上とすることでインクジェット塗布適性が向上する傾向がある。
<(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物>
第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物における(A)エチレン性不飽和化合物は、(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物以外に、(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物を含有していてもよい。(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物は、(A)エチレン性不飽和化合物のうち、(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物以外のものを指す。(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物を含有することで、硬化性が向上し、撥液性が生じるために必要な最小露光量が小さくなり、また、アウトガス発生量が低減する傾向がある。
(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物が1分子中に有するエチレン性不飽和結合の数は1個以上であれば特に限定されないが、重合性、架橋性、及びそれに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の観点から、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、4個以上であることがさらに好ましく、5個以上であることがよりさらに好ましく、6個以上であることが特に好ましく、また、通常15個以下であり、12個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、8個以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで重合性が向上して高感度となり、硬化性が高くなるに伴ってアウトガス発生量が低減する傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性がより良好となる傾向がある。
(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物の分子量は特に限定されないが、200以上が好ましく、250以上がより好ましく、300以上がさらに好ましく、また、1,000以下が好ましく、800以下がより好ましく、600以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物は、重合性、架橋性、及びそれに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、つまり、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物の具体例としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル等が挙げられる。
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等の脂肪族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル、これら例示化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル、クロネートに代えたクロトン酸エステルもしくはマレエートに代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジアクリレート、ハイドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールトリアクリレート等の芳香族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等が挙げられる。
その他には、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル又はポリイソシアネート化合物とポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られるようなウレタン(メタ)アクリレート類;多価エポキシ化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリル酸との付加反応物のようなエポキシアクリレート類;エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が有用である。
上記ウレタン(メタ)アクリレート類としては、例えば、DPHA-40H、UX-5000、UX-5002D-P20、UX-5003D、UX-5005(日本化薬社製)、U-2PPA、U-6LPA、U-10PA、U-33H、UA-53H、UA-32P、UA-1100H(新中村化学工業社製)、UA-306H、UA-510H、UF-8001G(協栄社化学社製)、UV-1700B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7630B、UV7640B(日本合成化学社製)等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性の観点から、(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物として、エステル(メタ)アクリレート類又はウレタン(メタ)アクリレート類を用いることが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物において、(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物の含有割合は特に限定されないが、全固形分中に50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、また、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましい。前記上限値以下とすることでインクジェット塗布適性が向上する傾向があり、また、前記下限値以上とすることでアウトガス発生量が低減する傾向がある。
また、(A)エチレン性不飽和化合物中の(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物の含有割合は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましく、また、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、65質量%以上がよりさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。前記上限値以下とすることでインクジェット塗布適性が向上する傾向があり、また、前記下限値以上とすることでアウトガス発生量が低減する傾向がある。
[1-1-2](B)成分;光重合開始剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤を含有する。(B)光重合開始剤は、活性光線により、前記(A)エチレン性不飽和化合物が有するエチレン性不飽和結合を重合させる化合物であれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤として、この分野で通常用いられている光重合開始剤を使用することができる。このような光重合開始剤としては、例えば、ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシム系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ヒドロキシベンゼン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アントラキノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ハロゲン化炭化水素誘導体系光重合開始剤、有機硼素酸塩系光重合開始剤、オニウム塩系光重合開始剤、スルホン化合物系光重合開始剤、カルバミン酸誘導体系光重合開始剤、スルホンアミド系光重合開始剤、トリアリールメタノール系光重合開始剤が挙げられる。
ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤としては、吸光度及び感度、紫外線吸収剤の吸収波長とのマッチング性の観点から、下記一般式(1-1)及び/又は下記一般式(1-2)で表されるヘキサアリールビイミダゾール系化合物が好ましい。
上記式中、R11~R13は、各々独立に置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表し、m、n及びlは、各々独立に0~5の整数を表す。
R11~R13のアルキル基の炭素数は1~4の範囲内であれば特に限定されないが、感度の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。アルキル基は鎖状のものでも、環状のものでもよい。アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基が好ましい。R11~R13の炭素数1~4のアルキル基が有してもよい置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基が挙げられる。
また、R11~R13のアルコキシ基の炭素数は1~4の範囲内であれば特に限定されないが、感度の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。アルコキシ基のアルキル基部分は鎖状のものでも、環状のものでもよい。アルコキシ基の具体例とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基が挙げられ、中でもメトキシ基、エトキシ基が好ましい。R11~R13の炭素数1~4のアルコキシ基が有してもよい置換基としてはアルキル基、アルコキシ基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。
また、R11~R13のハロゲン原子とは、例えば、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子が挙げられ、中でも合成容易性の観点から、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
これらの中でも、感度や合成容易性の観点から、R11~R13は各々独立にハロゲン原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
m、n及びlは、各々独立に0~5の整数を表すが、合成容易性の観点から、m、n及びlの少なくとも1つが1以上の整数であることが好ましく、m、n及びlのうちいずれか1つが1であり、かつ、残りの2つが0であることがより好ましい。
一般式(1-1)及び/又は一般式(1-2)で表されるヘキサアリールビイミダゾール系化合物としては、例えば、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(o-メチルフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o,p-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(p-フルオロフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(o,p-ジブロモフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(p-クロロナフチル)ビイミダゾール等が挙げられる。中でも、ヘキサフェニルビイミダゾール化合物が好ましく、そのイミダゾール環上の2,2’-位に結合したベンゼン環のo-位がメチル基、メトキシ基、又はハロゲン原子で置換されたものが更に好ましく、そのイミダゾール環上の4,4’,5,5’-位に結合したベンゼン環が無置換、又は、ハロゲン原子若しくはメトキシ基で置換されたもの等が好ましい。
(B)光重合開始剤として、一般式(1-1)で表されるヘキサアリールビイミダゾール系化合物と一般式(1-2)で表されるヘキサアリールビイミダゾール系化合物のいずれかを用いてもよく、両者を併用して用いてもよい。併用して用いる場合には、その比率については特に限定されない。なお、実施例で用いたb-1は、一般式(1-1)を満足する構造を有する。
また、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等を好ましいものとして挙げることができる。
オキシム系光重合開始剤としては、日本国特表2004-534797号公報、日本国特開2000-80068号公報、日本国特開2006-36750号公報、日本国特開2008-179611号公報、日本国特表2012-526185号公報、日本国特表2012-519191号公報等に記載されているオキシムエステル化合物が挙げられる。中でも感度の観点から、N-アセトキシ-N-{4-アセトキシイミノ-4-[9-エチル-6-(o-トルオイル)-9H-カルバゾール-3-イル]ブタン-2-イル}アセトアミド、N-アセトキシ-N-{3-(アセトキシイミノ)-3-[9-エチル-6-(1-ナフトイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-メチルプロピル}アセトアミド、4-アセトキシイミノ-5-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-5-オキソペンタン酸メチルが、また、製品名として、OXE-01、OXE-02、OXE-03(BASF社製)、TR-PBG-304、TR-PBG-305(常州強力社製)、NCI-831、NCI-930(ADEKA社製)等を好ましいものとして挙げることができる。
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-(p-ドデシルフェニル)ケトン、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル-(p-イソプロピルフェニル)ケトン、1-トリクロロメチル-(p-ブチルフェニル)ケトン、α-ヒドロキシ-2-メチルフェニルプロパノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、4-ジメチルアミノエチルベンゾエート、4-ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、4-ジエチルアミノアセトフェノン、4-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-エチルヘキシル-1,4-ジメチルアミノベンゾエート、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、4-(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、ミヒラーケトン等が挙げられる。
ヒドロキシベンゼン系光重合開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルベンゾフェノン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等が挙げられる。
アントラキノン系光重合開始剤としては、例えば、2-メチルアントラキノン等が、また、ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール等が、それぞれ挙げられる。
チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4-ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,6-ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6-トリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6-ジフルオロフェニル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス〔2,6-ジフルオロ-3-(1-ピロリル)フェニル〕等が挙げられる。中でも、感度の観点から、ジシクロペンタジエニル構造とビスフェニル構造を有するチタン化合物が好ましく、ビスフェニル環のo-位がハロゲン原子で置換されたものが特に好ましい。
ハロゲン化炭化水素誘導体系光重合開始剤としては、ハロメチル化s-トリアジン誘導体類が挙げられ、例えば、2,4,6-トリス(モノクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-n-プロピル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(α,α,β-トリクロロエチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3,4-エポキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-〔1-(p-メトキシフェニル)-2,4-ブタジエニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシ-m-ヒドロキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-i-プロピルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-エトキシカルボニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ベンジルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジブロモメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化s-トリアジン誘導体類が挙げられ、中でも感度の観点から、ビス(トリハロメチル)-s-トリアジン類が好ましい。
有機硼素酸塩系光重合開始剤としては、例えば、有機硼素アンモニウム錯体、有機硼素ホスホニウム錯体、有機硼素スルホニウム錯体、有機硼素オキソスルホニウム錯体、有機硼素ヨードニウム錯体、有機硼素遷移金属配位錯体等が挙げられ、その有機硼素アニオンとしては、例えば、n-ブチル-トリフェニル硼素アニオン、n-ブチル-トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(p-メトキシフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(p-フルオロフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(m-フルオロフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(3-フルオロ-4-メチルフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(2,6-ジフルオロフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(p-クロロフェニル)硼素アニオン、n-ブチル-トリス(2,6-ジフルオロ-3-ピロリルフェニル)硼素アニオン等のアルキル-トリフェニル硼素アニオンが感度の観点から好ましく、また、対カチオンとしては、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン等のオニウム化合物が感度の観点から好ましく、テトラアルキルアンモニウム等の有機アンモニウムカチオンが感度の観点から特に好ましい。
オニウム塩系光重合開始剤としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ジシクロヘキシルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジシクロヘキシルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジシクロヘキシルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルヨードニウムカンファースルホネート等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリシクロヘキシルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリシクロヘキシルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリシクロヘキシルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリシクロヘキシルスルホニウムカンファースルホネート等のスルホニウム塩等が挙げられる。
スルホン化合物系光重合開始剤としては、例えば、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニルスルホニル)メタン、ビス(p-メトキシフェニルスルホニル)メタン、ビス(α-ナフチルスルホニル)メタン、ビス(β-ナフチルスルホニル)メタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)メタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)メタン、フェニルスルホニル(シクロヘキシルスルホニル)メタン等のビス(スルホニル)メタン化合物、フェニルカルボニル(フェニルスルホニル)メタン、ナフチルカルボニル(フェニルスルホニル)メタン、フェニルカルボニル(ナフチルスルホニル)メタン、シクロヘキシルカルボニル(フェニルスルホニル)メタン、tert-ブチルカルボニル(フェニルスルホニル)メタン、フェニルカルボニル(シクロヘキシルスルホニル)メタン、フェニルカルボニル(tert-ブチルカルボニル)メタン等のカルボニル(スルホニル)メタン化合物、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-ヒドロキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(α-ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(β-ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(スルホニル)ジアゾメタン、フェニルカルボニル(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ナフチルカルボニル(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルカルボニル(ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルカルボニル(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、tert-ブチルカルボニル(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルカルボニル(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルカルボニル(tert-ブチルカルボニル)ジアゾメタン等のカルボニル(スルホニル)ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
カルバミン酸誘導体系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルシクロヘキシルカルバメート、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、3,5-ジメトキシベンジルシクロヘキシルカルバメート、3-ニトロフェニルシクロヘキシルカルバメート等が挙げられる。
スルホンアミド系光重合開始剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-4-メチルフェニルスルホンアミド、N-シクロヘキシル-2-ナフチルスルホンアミド等が、また、トリアリールメタノール系光重合開始剤としては、例えば、トリフェニルメタノール、トリ(4-クロロフェニル)メタノール等が、それぞれ挙げられる。
これらの光重合開始剤は、感光性樹脂組成物中にその1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。これらの光重合開始剤の中で、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物は、吸光度が高いことから表面硬化性が高く、また、高い撥液性と大きいテーパー角が得られる点で特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中の(B)光重合開始剤の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上であり、通常25質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。前記下限値以上とすることで現像時に膜減りが生じず塗膜が形成され、また、十分な撥液性が生じる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターン形状が形成しやすくなる傾向がある。
また、本発明の感光性樹脂組成物中の(A)エチレン性不飽和化合物に対する(B)光重合開始剤の配合比としては、(A)エチレン性不飽和化合物100質量部に対して、(B)光重合開始剤1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また、200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下がよりさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましく、5質量部以下が最も好ましい。前記下限値以上とすることで適切な感度となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターン形状が形成しやすくなる傾向がある。
また、(B)光重合開始剤と併用して、増感剤を用いてもよい。増感剤により感度が向上すると同時に、感光性樹脂組成物内部への光透過率が減少することで、テーパー角が大きくなる傾向がある。
増感剤としては、この分野で通常用いられている増感剤を使用することができる。増感剤は、吸収して得たエネルギーを光重合開始剤に移行、もしくは光重合開始剤との電子の授受を起こし、効率よく反応ラジカル重合反応を促進させる特徴がある。
このような増感剤としては、例えば、カルコン誘導体やジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン系化合物、ベンゾイン系化合物、フルオレン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、キサンテン系化合物、チオキサンテン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、クマリン系化合物、ケトクマリン系化合物、シアニン系化合物、メロシアニン系化合物、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン系化合物、アジン系化合物、チアジン系化合物、オキサジン系化合物、インドリン系化合物、アズレン系化合物、アズレニウム系化合物、スクアリリウム系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラフェニルポルフィリン系化合物、トリアリールメタン系化合物、テトラベンゾポルフィリン系化合物、テトラピラジノポルフィラジン系化合物、フタロシアニン系化合物、テトラアザポルフィラジン系化合物、テトラキノキサリロポルフィラジン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、ピリリウム系化合物、チオピリリウム系化合物、テトラフィリン系化合物、アヌレン系化合物、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、チオスピロピラン系化合物、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、感度向上とテーパー角増大の観点から、チオキサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物が好ましい。
チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、4-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、4-エチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、4-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等が挙げられる。これらの中でも、感度向上とテーパー角増大の観点から、2,4-ジエチルチオキサントンが好ましい。
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらの中でも、感度向上とテーパー角増大の観点から、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
感光性樹脂組成物中の増感剤の含有割合は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上、よりさらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.2質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。前記下限値以上とすることで感度を向上し、テーパー角を大きくすることができる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターンを形成しやすくなる傾向がある。
[1-1-3](E)成分;連鎖移動剤
第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(E)連鎖移動剤を含む。(E)連鎖移動剤を含むことで、酸素阻害等による表面近傍におけるラジカル失活を改善して表面硬化性を高めることで、テーパー角が大きくなる傾向がある。
また、撥液剤を含む場合には、表面硬化性を高めることによって撥液剤の流出を抑制でき、撥液剤を表面近傍に固定しやすく接触角が高くなる傾向がある。
第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物においては、(E)連鎖移動剤は必須ではないが、テーパー角を大きくする観点からは、(E)連鎖移動剤を含むことが好ましい。
(E)連鎖移動剤としてはメルカプト基含有化合物や、四塩化炭素等が挙げられ、連鎖移動効果が高い傾向があることからメルカプト基含有化合物を用いることがより好ましい。メルカプト基含有化合物は、S-H結合エネルギーが小さいことによって結合開裂が起こりやすく、連鎖移動反応を起こしやすいため、表面硬化性を高めることができる傾向がある。
(E)連鎖移動剤の中でも、テーパー角、表面硬化性の観点から、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物と脂肪族系のメルカプト基含有化合物が好ましい。
芳香族環を有するメルカプト基含有化合物としては、テーパー角の観点から、下記一般式(1-3)で表される化合物が好適に用いられる。
式(1-3)中、Zは-O-、-S-又は-NH-を表し、R61、R62、R63、及びR64は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
これらのうち、テーパー角の観点から、Zは-S-又は-NH-が好ましく、-NH-がより好ましい。
また、テーパー角の観点から、R61、R62、R63、及びR64は各々独立に、水素原子、炭素数1~4アルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
具体的には、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリン、β-メルカプトナフタレン、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン等の芳香族環を有するメルカプト基含有化合物が挙げられ、テーパー角の観点から、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールが好ましい。
一方で脂肪族系のメルカプト基含有化合物としては、表面硬化性の観点から、へキサンジチオール、デカンジチオール、又は下記一般式(1-4)で表される化合物が好適に用いられる。
式(1-4)中、mは0~4の整数、nは2~4の整数を表す。R71及びR72は各々独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。Xはn価の基を表す。
前記一般式(1-4)において、合成容易性の観点から、mは1又は2であることが好ましい。また、表面硬化性の観点から、nは3又は4であることが好ましく、4であることがより好ましい。
また、R71及びR72のアルキル基としては、表面硬化性の観点から、炭素数1~3のものが好ましい。表面硬化性の観点から、R71及びR72のうちの少なくとも一方、例えば、R72は水素原子であることが好ましく、この場合において、R71は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
nが2である場合、表面硬化性の観点から、Xはエーテル結合及び/又は枝分かれ部を有してもよい炭素数1~6のアルキレン基が好ましい。表面硬化性、合成容易性の観点から、中でも炭素数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素数4のアルキレン基がさらに好ましい。
nが3である場合、表面硬化性、合成容易性の観点から、Xは下記一般式(1-5)又は(1-6)で表される構造であることが好ましい。
式(1-5)中、R73は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はメチロール基を表す。R73の中でも、テーパー角の観点から、エチル基が好ましい。
式(1-6)中、R74は炭素数1~4のアルキレン基を表す。R74の中でも、テーパー角の観点から、エチレン基が好ましい。
一方で、nが4である場合、Xは下記一般式(1-7)で表される構造であることが好ましい。
具体的には、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
このうち、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)がより好ましい。
これらは種々のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用できる。
これらの中でも、テーパー角を大きくする観点から、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、及び2-メルカプトベンゾオキサゾールからなる群から選択された1以上と、光重合開始剤とを組み合わせて、光重合開始剤系として使用することが好適である。例えば、2-メルカプトベンゾチアゾールを用いてもよく、2-メルカプトベンゾイミダゾールを用いてもよく、2-メルカプトベンゾチアゾールと2-メルカプトベンゾイミダゾールとを併用して用いてもよい。
また、表面硬化性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)からなる群から選択された1以上を用いることが好ましい。
さらに、特に線幅が細い隔壁であってもテーパー角を大きくする観点から、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物と脂肪族系のメルカプト基含有化合物を併用して使用することが好適である。これは、線幅が細い隔壁を形成するためには、開口部の幅が狭いマスクを用いることで露光時の回折によって単位面積あたりの照度が低くなり、線幅が太い場合に比べて酸素阻害の影響を受けやすく、表面硬化性が低くなる傾向があるからである。
特に、(B)光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤を用いた場合には、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物と脂肪族系のメルカプト基含有化合物を併用して使用することが好適である。一方で、アセトフェノン系光重合開始剤を用いた場合には、脂肪族系のメルカプト基含有化合物の単独使用でも十分に効果が得られる傾向がある。
例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、及び2-メルカプトベンゾオキサゾールよりなる群から選択された1以上と、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)よりなる群から選択された1以上と、光重合開始剤とを組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中の、(E)連鎖移動剤の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.025質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角が大きく、表面硬化性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターンを形成しやすくなる傾向がある。
また、(E)連鎖移動剤として、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物と脂肪族系のメルカプト基含有化合物を併用して使用するときのその含有割合としては、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物100質量部に対して、脂肪族系のメルカプト基含有化合物を通常10質量部以上、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上であり、通常400質量部以下、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角が大きくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで表面硬化性が高く接触角が高くなる傾向がある。
また、感光性樹脂組成物中の(B)光重合開始剤に対する、(E)連鎖移動剤の配合比としては、(B)光重合開始剤100質量部に対して、(E)連鎖移動剤10質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、80質量部以上が特に好ましく、また、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましく、300質量部以下がさらに好ましく、200質量部以下がよりさらに好ましく、150質量部以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることでテーパー角が大きく、表面硬化性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターンを形成しやすくなる傾向がある。
[1-1-4](C)成分;アルカリ可溶性樹脂
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有する。本発明において、(C)アルカリ可溶性樹脂としては現像液で現像可能なものであれば特に限定されないが、現像液としてはアルカリ現像液が好ましいため、本発明においては(C)アルカリ可溶性樹脂を用いる。
(C)アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基又は水酸基含有の各種樹脂等が挙げられる。中でも、適度なテーパー角の隔壁が得られること及びポストベーク時に隔壁表面の熱溶融による撥液剤の流出が抑えられ撥液性を保持できること等より、カルボキシル基を有するのが好ましく、エチレン性不飽和基を有するものであることがより好ましい。
(一般式(1)で表される部分構造を有するアルカリ可溶性樹脂(c))
第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物において、(C)アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(1)で表される部分構造を有するアルカリ可溶性樹脂(c)(以下、「樹脂(c)」と略記する場合がある。)を含有する。
なお、樹脂(c)も、(C)アルカリ可溶性樹脂と同様に、エチレン性不飽和基を有するものであることが好ましい。
このように、一般式(1)で表される部分構造、つまり、炭素数が短く熱分解しやすい酸成分を有する部分構造を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることで、隔壁を形成する際の熱硬化時に当該酸成分の多くがガスとして取り除かれるため、有機電界発光素子駆動時のアウトガス発生量が少なく信頼性が高くなるものと考えられる。
前記式(1)中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4の2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。
(R1)
前記一般式(1)において、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4の2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基が挙げられる。
アルキレン基は直鎖でも、分岐鎖でもよいが、現像溶解性の観点から、直鎖であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、2以上が好ましく、また、3以下が好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガス発生量が少なくなる傾向がある。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、アウトガス発生量低減の観点から、メチレン基又はエチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
また、アルケニレン基は直鎖でも、分岐鎖でもよいが、現像溶解性の観点から、直鎖であることが好ましい。アルケニレン基の炭素数は、2以上が好ましく、また、3以下が好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガス発生量が少なくなる傾向がある。
アルケニレン基の具体例としては、エテニレン基、プロペニレン基、ブチレニレン基が挙げられ、アウトガス発生量低減の観点から、エテニレン基が好ましい。
炭素数1~4の2価の炭化水素基が有していてもよい置換基は特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、ベンゾイル基、水酸基等が挙げられ、合成の容易さの観点から、無置換であることが好ましい。
これらの中でもアウトガス発生量低減の観点から、R1が炭素数1~4の2価のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがより好ましく、エチレン基であることがさらに好ましい。
アルカリ可溶性樹脂(c)としては、前記一般式(1)で表される部分構造を有するものであれば、その具体的構造は特に限定されないが、現像溶解性の観点から、(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び/又は(c2)アクリル共重合樹脂を含有することが好ましく、アウトガス発生量低減の観点から、(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有することがより好ましい。
以下に、(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂について詳述する。
[(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂]
(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、エポキシ樹脂にエチレン性不飽和結合を有する酸又はエステル化合物を付加し、更に多塩基酸又はその無水物を付加させた樹脂である。例えば、エポキシ樹脂のエポキシ基に、不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が開環付加されることにより、エポキシ樹脂にエステル結合(-COO-)を介してエチレン性不飽和結合が付加されると共に、その際生じた水酸基に、多塩基酸又はその無水物の一方のカルボキシ基が付加されたものが挙げられる。また、多塩基酸又はその無水物を付加するときに、多価アルコールを同時に添加して付加されたものも挙げられる。さらに、上記反応で得られた樹脂のカルボキシ基に、更に反応し得る官能基を有する化合物を反応させて得られる樹脂も、上記(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に含まれる。
このように、(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「(メタ)アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)が原料であり、かつ、「(メタ)アクリレート」が代表例であるので慣用に従いこのように命名されている。
ここで、エポキシ樹脂とは、熱硬化により樹脂を形成する以前の原料化合物をも含めて言うこととし、そのエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択して用いることができる。また、エポキシ樹脂は、フェノール性化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られる化合物を用いることができる。フェノール性化合物としては、2価もしくは2価以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、単量体でも重合体でもよい。
具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタンとの重合エポキシ樹脂、ジハイドロオキシルフルオレン型エポキシ樹脂、ジハイドロオキシルアルキレンオキシルフルオレン型エポキシ樹脂、9,9-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル化物、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)アダマンタンのジグリシジルエーテル化物等が挙げられ、このように主鎖に芳香族環を有するものを好適に用いることができる。
中でも、高い硬化膜強度の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタジエンとの重合エポキシ樹脂、9,9-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル化物等が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が更に好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する酸としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等、及び、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物等が挙げられる。中でも、感度の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
多塩基酸又はその無水物としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、及びそれらの無水物等が挙げられる。これらは1種を単独でも用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、前記一般式(1)表される部分構造を樹脂中に導入するとの観点から、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物が好ましく、コハク酸無水物がより好ましい。
また、多塩基酸又はその無水物を付加するときに、多価アルコールを用いることで、(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の分子量を増大させ、分子中に分岐を導入することが出来、分子量と粘度のバランスをとることができる傾向がある。また、分子中への酸基の導入率を増やすことができ、感度や密着性等のバランスがとれやすい傾向がある。
多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、1,2,3-プロパントリオールの中から選ばれる1種又は2種以上の多価アルコールであることが好ましい。
(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の酸価は特に限定されないが、10mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましく、40mgKOH/g以上がさらに好ましく、60mgKOH/g以上がよりさらに好ましく、80mgKOH/g以上が特に好ましく、また、200mgKOH/g以下が好ましく、180mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましく、120mgKOH/g以下がよりさらに好ましく、100mgKOH/g以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減し、テーパー角が大きくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガス発生量が低減する傾向がある。
(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、通常1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、さらに好ましくは4,000以上、よりさらに好ましくは5,000以上、特に好ましくは6,000以上、最も好ましくは7,000以上であり、また、通常30,000以下、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。前記下限値以上とすることで素子発光時のアウトガス発生量が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
(C)アルカリ可溶性樹脂に含まれる(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合は特に限定されないが、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がよりさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、また、通常100質量%以下である。前記下限値以上とすることでアウトガス発生量が低減する傾向がある。
(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、従来公知の方法により合成することができる。具体的には、前記エポキシ樹脂を有機溶剤に溶解させ、触媒と熱重合禁止剤の共存下、前記エチレン性不飽和結合を有する酸又はエステル化合物を加えて付加反応させ、更に多塩基酸又はその無水物を加えて反応を続ける方法を用いることができる。
ここで、反応に用いる有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤の1種または2種以上が挙げられる。
また、上記触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリベンジルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンミニウム塩類、トリフェニルホスフィン等の燐化合物、トリフェニルスチビン等のスチビン類等の1種または2種以上が挙げられる。
更に、熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン等の1種または2種以上が挙げられる。
また、エチレン性不飽和結合を有する酸又はエステル化合物としては、エポキシ樹脂のエポキシ基の1化学当量に対して通常0.7~1.3化学当量、好ましくは0.9~1.1化学当量となる量とすることができる。また、付加反応時の温度としては、通常60~150℃、好ましくは80~120℃の温度とすることができる。更に、多塩基酸又はその無水物の使用量としては、前記付加反応で生じた水酸基の1化学当量に対して、通常0.1~1.2化学当量、好ましくは0.2~1.1化学当量となる量とすることができる。
(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、前記一般式(1)で表される部分構造以外の部分構造を含むものであってもよく、素子発光時のアウトガス発生量低減の観点から、下記式(i)で表される繰り返し単位構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、下記式(ii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、及び下記式(iii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、素子発光時のアウトガス発生量低減の観点から、下記式(i)で表される繰り返し単位を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-1)であることが好ましい。理由の一つとしては、剛直な主骨格を有することで熱に対して分解しづらいこと等が類推される。
式(i)中、Raは水素原子又はメチル基を表し、Rbは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。式(i)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。
(Rb)
前記式(i)において、Rbは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。
2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族基、2価の芳香族環基、1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基が挙げられる。
2価の脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のものが挙げられる。これらの中でも現像溶解性の観点からは直鎖状のものが好ましく、一方で露光部への現像液の浸透低減の観点からは環状のものが好ましい。その炭素数は通常1以上であり、3以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の直鎖状脂肪族基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基等が挙げられる。これらの中でも残渣低減の観点から、メチレン基が好ましい。
2価の分岐鎖状脂肪族基の具体例としては、前述の2価の直鎖状脂肪族基に、側鎖としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等を有する構造が挙げられる。
2価の環状の脂肪族基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。2価の環状の脂肪族基の具体例としては、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、シクロドデカン環等の環から水素原子を2つ除した基が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環から水素原子を2つ除した基が好ましい。
2価の脂肪族基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成容易性の観点から、無置換であることが好ましい。
また、2価の芳香族環基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族複素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の基が挙げられる。これらの中でも光硬化性の観点から、2個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、2個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
2価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、無置換が好ましい。
また、1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基としては、前述の2価の脂肪族基を1以上と、前述の2価の芳香族環基を1以上とを連結した基が挙げられる。
2価の脂肪族基の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、通常10以下であり、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の芳香族環基の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、通常10以下であり、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基の具体例としては、下記式(i-A)~(i-E)で表される基等が挙げられる。これらの中でも骨格の剛直性と膜の疎水化の観点から、下記式(i-A)で表される基が好ましい。
前記のとおり、式(i)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。置換基の数も特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。
これらの中でも硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
また、前記式(i)で表される繰り返し単位構造は、現像溶解性の観点から、下記式(i-1)で表される繰り返し単位構造であることが好ましい。なお、式(i-1)で表される繰り返し単位構造は、式中に前記一般式(1)で表される部分構造を含む。
式(i-1)中、Ra及びRbは、前記式(i)のものと同義である。R1は前記式(1)のものと同義である。*は結合手を表す。式(i-1)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-1)1分子中に含まれる、前記式(i-1)で表される繰り返し単位構造は、1種でも2種以上でもよい。
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-1)1分子中に含まれる、前記式(i)で表される繰り返し単位構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-1)1分子中に含まれる、前記式(i-1)で表される繰り返し単位構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
以下にエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-1)の具体例を挙げる。
また一方で、(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、現像密着性の観点から、下記式(ii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-2)であることが好ましい。
式(ii)中、Rcは各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。Rdは、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。
(Rd)
前記式(ii)において、Rdは、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表す。
環状炭化水素基としては、脂肪族環基又は芳香族環基が挙げられる。
脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、脂肪族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としてはシクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、シクロドデカン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環が好ましい。
一方で、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。また、芳香族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がよりさらに好ましく、12以上が特に好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でもパターニング特性の観点から、フルオレン環が好ましい。
また、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基における、2価の炭化水素基は特に限定されないが、例えば、2価の脂肪族基、2価の芳香族環基、1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基が挙げられる。
2価の脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のものが挙げられる。これらの中でも現像溶解性の観点からは直鎖状のものが好ましく、一方で露光部への現像液の浸透低減の観点からは環状のものが好ましい。その炭素数は通常1以上であり、3以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、25以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の直鎖状脂肪族基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基等が挙げられる。これらの中でも残渣の観点から、メチレン基が好ましい。
2価の分岐鎖状脂肪族基の具体例としては、前述の2価の直鎖状脂肪族基に、側鎖としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等を有する構造が挙げられる。
2価の環状の脂肪族基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の環状の脂肪族基の具体例としては、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、シクロドデカン環等の環から水素原子を2つ除した基が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環から水素原子を2つ除した基が好ましい。
2価の脂肪族基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成容易性の観点から、無置換であることが好ましい。
また、2価の芳香族環基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族複素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の基が挙げられる。これらの中でも光硬化性の観点から、2個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、2個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
2価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、無置換が好ましい。
また、1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基としては、前述の2価の脂肪族基を1以上と、前述の2価の芳香族環基を1以上とを連結した基が挙げられる。
2価の脂肪族基の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、通常10以下であり、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の芳香族環基の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、通常10以下であり、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基の具体例としては、前記式(i-A)~(i-E)で表される基等が挙げられる。これらの中でも残渣低減の観点から、前記式(i-C)で表される基が好ましい。
これらの2価の炭化水素基に対して、側鎖である環状炭化水素基の結合態様は特に限定されないが、例えば、脂肪族基や芳香族環基の水素原子1つを該側鎖で置換した態様や、脂肪族基の炭素原子の1つを含めて側鎖である環状炭化水素基を構成した態様が挙げられる。
また、前記式(ii)で表される部分構造は、現像密着性の観点から、下記式(ii-1)で表される部分構造であることが好ましい。
式(ii-1)中、Rcは前記式(ii)と同義である。Rαは、置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基を表す。nは1以上の整数である。式(ii-1)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。
(Rα)
前記式(ii-1)において、Rαは、置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基を表す。
環状炭化水素基としては、脂肪族環基又は芳香族環基が挙げられる。
脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常6以下であり、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、脂肪族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としてはシクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、シクロドデカン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環が好ましい。
一方で、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。また、芳香族環基の炭素数は通常4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、フルオレン環が好ましい。
環状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、iso-アミル基等の炭素数1~5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成の容易性の観点から、無置換が好ましい。
nは1以上の整数を表すが、2以上が好ましく、また、3以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
これらの中でも、強固な膜硬化度と電気特性の観点から、Rαが1価の脂肪族環基であることが好ましく、アダマンチル基であることがより好ましい。
前記のとおり、式(ii-1)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。置換基の数も特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。これらの中でも硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
以下に前記式(ii-1)で表される部分構造の具体例を挙げる。
また、前記式(ii)で表される部分構造は、現像密着性の観点から、下記式(ii-2)で表される部分構造であることが好ましい。
式(ii-2)中、Rcは前記式(ii)と同義である。Rβは、置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。式(ii-2)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。
(Rβ)
前記式(ii-2)において、Rβは、置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。
環状炭化水素基としては、脂肪族環基又は芳香族環基が挙げられる。
脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、脂肪族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としては、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、シクロドデカン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環が好ましい。
一方で、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。また、芳香族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、フルオレン環が好ましい。
環状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、iso-アミル基等の炭素数1~5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成の簡易性の観点から、無置換が好ましい。
これらの中でも、硬化性の観点から、Rβが2価の脂肪族環基であることが好ましく、2価のアダマンタン環基であることがより好ましい。
一方で、現像密着性の観点から、Rβが2価の芳香族環基であることが好ましく、2価のフルオレン環基であることがより好ましい。
前記のとおり、式(ii-2)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。置換基の数も特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。これらの中でも硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
以下に前記式(ii-2)で表される部分構造の具体例を挙げる。
一方で、前記式(ii)で表される部分構造は、硬化性の観点から、下記式(ii-3)で表される部分構造であることが好ましい。なお、式(ii-3)で表される部分構造は、式中に前記一般式(1)で表される部分構造を含む。
式(ii-3)中、Rc及びRdは前記式(ii)と同義である。R1は前記式(1)と同義である。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-2)1分子中に含まれる、前記式(ii-3)で表される部分構造は、1種でも2種以上でもよい。
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-2)1分子中に含まれる、前記式(ii)で表される部分構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また一方で、(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、素子発光時のアウトガス量発生低減の観点から、下記式(iii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-3)であることが好ましい。
式(iii)中、Reは水素原子又はメチル基を表し、γは単結合、-CO-、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。式(iii)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。
(γ)
前記式(iii)において、γは単結合、-CO-、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。
アルキレン基は直鎖でも、分岐鎖でもよいが、現像溶解性の観点からは直鎖であることが好ましく、現像密着性の観点からは分岐鎖であることが好ましい。その炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常6以下であり、4以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基が挙げられ、現像密着性と現像溶解性の両立の観点から、エチレン基又はプロピレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
アルキレン基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成容易性の観点から、無置換であることが好ましい。
2価の環状炭化水素基としては、2価の脂肪族環基又は2価の芳香族環基が挙げられる。
脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、脂肪族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としては、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、シクロドデカン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環が好ましい。
一方で、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。また、芳香族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、フルオレン環が好ましい。
環状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、iso-アミル基等の炭素数1~5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成の簡易性の観点から、無置換が好ましい。
また、これらの中でも、残渣低減の観点から、γが置換基を有していてもよいアルキレン基であることが好ましく、ジメチルメチレン基であることがより好ましい。
前記のとおり、式(iii)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。置換基の数も特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。これらの中でも硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
一方で、前記式(iii)で表される部分構造は、現像溶解性の観点から、下記式(iii-1)で表される部分構造であることが好ましい。なお、式(iii-1)で表される部分構造は、式中に前記一般式(1)で表される部分構造を含む。
式(iii-1)中、Re及びγは前記式(iii)と同義である。R1は前記式(1)のものと同義である。*は結合手を表す。式(iii-1)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-3)1分子中に含まれる、前記式(iii)で表される繰り返し単位構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また、18以下が好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-3)1分子中に含まれる、前記式(iii-1)で表される繰り返し単位構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、また、18以下が好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
以下にエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-3)の具体例を挙げる。
[(c2)アクリル共重合樹脂]
次に、(c2)アクリル共重合樹脂について詳述する。(c2)アクリル共重合樹脂は、前記一般式(1)で表される部分構造を有するものであれば特に限定されないが、硬化性の観点から、側鎖にエチレン性不飽和基を有するものであることが好ましい。
(c2)アクリル共重合樹脂に含まれる、エチレン性不飽和基を有する側鎖を含む部分構造は特に限定されないが、現像溶解性の観点から、例えば、下記一般式(I)で表される部分構造が好ましい。
式(I)中、RAは水素原子又はメチル基を表す。RBは置換基を有していてもよいアルケニル基又は下記一般式(II)で表される基を表す。*は結合手を表す。
式(II)中、RCは置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。αは置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアルケニレン基を表す。*はカルボニル炭素との結合手を表す。
(RB)
前記式(I)において、RBは置換基を有していてもよいアルケニル基又は前記一般式(II)で表される基を表す。
RBにおけるアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、20以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、12以下であることがさらに好ましく、8以下であることがよりさらに好ましく、6以下であることが特に好ましく、4以下であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで硬化性が向上する傾向がある。
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブチレニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、エテニル基又はプロペニル基が好ましく、エテニル基がより好ましい。
また、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、スルホン基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。置換基を2以上有する場合には、置換基同士が連結して環を形成していてもよい。
RBとしては、これらの中でも現像性と硬化性の観点から、エテニル基又はプロペニル基が好ましく、エテニル基がより好ましい。
(RC)
前記式(II)においてRCは置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。
RCにおけるアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、20以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、12以下であることがさらに好ましく、8以下であることがよりさらに好ましく、6以下であることが特に好ましく、4以下であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで硬化性が向上する傾向がある。
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブチレニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、エテニル基又はプロペニル基が好ましく、エテニル基がより好ましい。
また、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、スルホン基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。置換基を2以上有する場合には、置換基同士が連結して環を形成していてもよい。
このように、RCは置換基を有していてもよいアルケニル基を表すが、これらの中でも現像性の観点から、エテニル基又はプロペニル基であることが好ましく、エテニル基であることがより好ましい。
(α)
前記式(II)においてαは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアルケニレン基を表す。
αにおけるアルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましく、12以下であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで硬化性が向上する傾向がある。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン基、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、エチレン基、シクロヘキシレン基又はメチルシクロヘキシレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
また、アルキレン基が有していてもよい置換基としては、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、スルフィド基等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アルケニルが好ましい。また、置換基を2以上有する場合には、置換基同士が連結して環を形成していてもよい。
また、αにおけるアリーレン基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は6以上であることが好ましく、また、24以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、18以下であることがよりさらに好ましく、16以下であることが特に好ましく、14以下であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、ベンゼン環、又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
また、アリーレン基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、スルホン基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、ヒドロキシ基又はカルボキシル基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。また、置換基を2以上有する場合には、置換基同士が連結して環を形成していてもよい。
置換基を有するアリーレン基の具体例としては、カルボキシルベンゼン環基等が挙げられる。
また、αにおけるアルケニレン基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニレン基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましく、12以下であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
アルケニレン基の具体例としては、エテニレン基、プロペニレン基、シクロヘキセニレン基、メチルエテニレン基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、エテニレン基、シクロヘキセニレン基が好ましく、エテニレン基がより好ましい。
また、アルケニレン基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、スルフィド基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。また、置換基を2以上有する場合には、置換基同士が連結して環を形成していてもよい。
このように、αは置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアルケニレン基を表すが、これらの中でも現像性の観点から、アルキレン基又はアルケニレン基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
また、前記式(I)で表される繰り返し単位構造は、現像性の観点から、下記式(I-1)で表される繰り返し単位構造であることが好ましい。なお、式(I-1)で表される繰り返し単位構造は、式中に前記一般式(1)で表される部分構造を含む。
式(I-1)中、RA及びRBは、前記式(I)のものと同義である。R1は前記式(1)のものと同義である。
また、前記式(I)で表される繰り返し単位構造は、感度の観点から、下記式(I-2)で表される繰り返し単位構造であることが好ましい。
式(I-2)中、RA及びRBは、前記式(I)のものと同義である。
(c2)アクリル共重合樹脂に含まれる前記一般式(I)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、5モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、50モル%以上がよりさらに好ましく、70モル%以上が特に好ましく、80モル%以上が最も好ましく、また、99モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。
(c2)アクリル共重合樹脂に含まれる前記一般式(I-1)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましく、15モル%以上がよりさらに好ましく、20モル%以上が特に好ましく、また、99モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましく、30モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで感度が高くなり、残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。
(c2)アクリル共重合樹脂に含まれる前記一般式(I-2)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、30モル%以上がよりさらに好ましく、40モル%以上が特に好ましく、50モル%以上が最も好ましく、また、99モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、80モル%以下がさらに好ましく、70モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで感度が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像性が向上する傾向がある。
(一般式(I’)で表される部分構造)
(c2)アクリル共重合樹脂が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、他に含まれる部分構造は特に限定されないが、現像密着性の観点から、例えば、下記一般式(I’)で表される部分構造が含まれることが好ましい。
上記式(I’)中、RDは水素原子又はメチル基を表し、REは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。
(RE)
前記式(I’)において、REは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。
REにおけるアルキル基としては直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで膜強度が高くなり、現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ドデカニル基等が挙げられる。これらの中でも膜強度の観点から、ジシクロペンタニル基又はドデカニル基が好ましく、ジシクロペンタニル基がより好ましい。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
REにおけるアリール基としては、1価の芳香族炭化水素環基及び1価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は6以上であることが好ましく、また、24以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、18以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、ベンゼン環、又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
また、アリール基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基等が挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
REにおけるアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブチレニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、エテニル基又はプロペニル基が好ましく、エテニル基がより好ましい。
また、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基等が挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
このように、REは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表すが、これらの中でも現像性の観点から、アルキル基又はアルケニルが好ましく、アルキル基がより好ましい。
(c2)アクリル共重合樹脂に含まれる前記一般式(I’)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、1.5モル%以上がさらに好ましく、2モル%以上が特に好ましく、また、90モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、50%モル以下がさらに好ましく、30モル%以下がよりさらに好ましく、10モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
(一般式(I’’)で表される部分構造)
(c2)アクリル共重合樹脂が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、他に含まれる部分構造として、耐熱性、膜強度の観点から、下記一般式(I’’)で表される部分構造が含まれることが好ましい。
上記式(I’’)中、RFは水素原子又はメチル基を表し、RGは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表す。tは0~5の整数を表す。
(RG)
前記式(I’’)においてRGは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表す。
RGにおけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ドデカニル基等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、ジシクロペンタニル基又はドデカニル基が好ましく、ジシクロペンタニル基がより好ましい。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
RGにおけるアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブチレニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、エテニル基又はプロペニル基が好ましく、エテニル基がより好ましい。
また、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基等が挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
RGにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中でも撥液性の観点から、フッ素原子が好ましい。
RGにおけるアルコキシ基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、アルコシ基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
RGにおけるアルキルスルフィド基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルスルフィド基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
アルキルスルフィド基の具体例としては、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、メチルスルフィド基又はエチルスルフィド基が好ましい。
また、アルキルスルフィド基におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
このように、RGは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表すが、これらの中でも現像性の観点から、ヒドロキシ基又はカルボキシル基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
(t)
前記式(I’’)においてtは0~5の整数を表す。tは、現像性の観点から、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0がさらに好ましい。
(c2)アクリル共重合樹脂に含まれる前記一般式(I’’)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましく、5モル%以上が特に好ましく、また、90モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましく、30モル%以下がよりさらに好ましく、20モル%以下が特に好ましく、10モル%以下が最も好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
(一般式(I’’’)で表される部分構造)
(c2)アクリル共重合樹脂が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、他に含まれる部分構造としては、現像性の観点から、下記一般式(I’’’)で表される部分構造が好ましい。
上記式(I’’’)中、RHは水素原子又はメチル基を表す。
(c2)アクリル共重合樹脂に含まれる前記一般式(I’’’)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、また、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましく、50モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。一方で、アウトガス発生量低減の観点から、0モル%、つまり、前記一般式(I’’’)で表される部分構造を含まないことが好ましい。
(c2)アクリル共重合樹脂の酸価は特に限定されないが、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましく、30mgKOH/g以上がさらに好ましく、40mgKOH/g以上がよりさらに好ましく、50mgKOH/g以上が特に好ましく、また、100mgKOH/g以下が好ましく、90mgKOH/g以下がより好ましく、70mgKOH/g以下がさらに好ましく、60mgKOH/g以下がよりさらに好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。
(c2)アクリル共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上、よりさらに好ましくは4,000以上、特に好ましくは5,000以上であり、また、通常30,000以下、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。特に好ましくは7,000以下である。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
(C)アルカリ可溶性樹脂に含まれる(c2)アクリル共重合樹脂の含有割合は特に限定されないが、現像性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましく、また、100質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像溶解性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることでテーパー角が大きくなる傾向がある。
(C)アルカリ可溶性樹脂中には、(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂又は(c2)アクリル共重合樹脂のいずれかが単独で含まれていてもよく、両者が含まれていてもよい。さらに、(c1)及び(c2)以外の樹脂が含まれていてもよい。例えば、フッ素原子含有官能基を有するアルカリ可溶性樹脂を含ませることで、(C)アルカリ可溶性樹脂自体に撥液性を付与してもよい。
第1の態様に係る本発明の感光性樹脂組成物中における(C)アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、全固形分に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。前記下限値以上とすることで現像性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガス発生量を低減する傾向がある。
また、全固形分中における(A)エチレン性不飽和化合物及び(C)アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、全固形分に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは85質量%以上であり、また、通常99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。前記下限値以上とすることで硬化性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガス発生量を低減する傾向がある。
また、感光性樹脂組成物中の(A)エチレン性不飽和化合物に対する(C)アルカリ可溶性樹脂の配合比としては、(A)エチレン性不飽和化合物100質量部に対して、(C)アルカリ可溶性樹脂50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましく、80質量部以上が特に好ましく、また、400質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましく、200質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで硬化性が向上する傾向がある。
一方で、第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物における(C)アルカリ可溶性樹脂として好適に用いられる、(C-1)カルボキシル基含有(共)重合体、(C-2)側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体、(C-3)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有樹脂について詳述する。
[1-1-4-a](C-1)カルボキシル基含有(共)重合体
[1-1-4-a-1]カルボキシル基含有(共)重合体(1)
カルボキシル基含有(共)重合体の代表的なものとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等のスチレン類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル類、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、酢酸ビニル等のビニル化合物類等との共重合体が挙げられる。
これらの中でも、感度の観点から、(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。そして、(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体においては、(メタ)アクリレート5~80モル%と、(メタ)アクリル酸20~95モル%とからなる共重合体が更に好ましく、(メタ)アクリレート10~70モル%と、(メタ)アクリル酸30~90モル%とからなる共重合体が特に好ましい。また、スチレン-(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体においては、スチレン3~60モル%、(メタ)アクリレート10~70モル%、(メタ)アクリル酸10~60モル%からなる共重合体がさらに好ましく、スチレン5~50モル%、(メタ)アクリレート20~60モル%、(メタ)アクリル酸15~55モル%からなる共重合体が特に好ましい。
[1-1-4-a-2]カルボキシル基含有(共)重合体(2)
また、前記の不飽和カルボン酸に代えて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに多塩基酸(無水物)を付加させた化合物と、前記のスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニル化合物類等との共重合体が挙げられる。
そのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、また、多塩基酸(無水物)としては、コハク酸(無水物)、アジピン酸(無水物)、フタル酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)、ヘキサヒドロフタル酸(無水物)、マレイン酸(無水物)等が挙げられ、両者の反応化合物としては、コハク酸〔2-(メタ)アクリロイルエチル〕エステル、アジピン酸〔2-(メタ)アクリロイルエチル〕エステル、フタル酸〔2-(メタ)アクリロイルエチル〕エステル、ヘキサヒドロフタル酸〔2-(メタ)アクリロイルエチル〕エステル、マレイン酸〔2-(メタ)アクリロイルエチル〕エステル、コハク酸〔2-(メタ)アクリロイルプロピル〕エステル、アジピン酸〔2-(メタ)アクリロイルプロピル〕エステル、フタル酸〔2-(メタ)アクリロイルプロピル〕エステル、ヘキサヒドロフタル酸〔2-(メタ)アクリロイルプロピル〕エステル、マレイン酸〔2-(メタ)アクリロイルプロピル〕エステル、コハク酸〔2-(メタ)アクリロイルブチル〕エステル、アジピン酸〔2-(メタ)アクリロイルブチル〕エステル、フタル酸〔2-(メタ)アクリロイルブチル〕エステル、ヘキサヒドロフタル酸〔2-(メタ)アクリロイルブチル〕エステル、マレイン酸〔2-(メタ)アクリロイルブチル〕エステル等が挙げられる。
これらのカルボキシル基含有(共)重合体は、現像溶解性の観点から、酸価が50~500mgKOH/gであることが好ましく、現像溶解性の観点から、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000~300,000であるのが好ましい。
[1-1-4-b](C-2)側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体
[1-1-4-b-1]不飽和カルボン酸と2種以上のエチレン性不飽和基を有する化合物との共重合体
側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体として、例えば、アリル(メタ)アクリレート、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、クロトニル(メタ)アクリレート、メタリル(メタ)アクリレート、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド等の2種以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、または、ビニル(メタ)アクリレート、1-クロロビニル(メタ)アクリレート、2-フェニルビニル(メタ)アクリレート、1-プロペニル(メタ)アクリレート、ビニルクロトネート、ビニル(メタ)アクリルアミド等の2種以上のエチレ性不飽和基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、またはさらに不飽和カルボン酸エステル等とを、前者のエチレン性不飽和基を有する化合物の全体に占める割合を10~90モル%、好ましくは30~80モル%程度となるように共重合させて得られた共重合体等が挙げられる。
なお、この不飽和カルボン酸と2種以上のエチレン性不飽和基を有する化合物との共重合体の酸価は、現像溶解性の観点から、好ましくは30~250mgKOH/gであり、重量平均分子量(Mw)は、現像溶解性の観点から、好ましくは1,000~300,000である。
[1-1-4-b-2]エポキシ基含有不飽和化合物変性カルボキシル基含有(共)重合体
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体として、例えば、カルボキシル基含有(共)重合体に、エポキシ基含有不飽和化合物を反応させて、カルボキシル基含有(共)重合体のカルボキシル基の一部にエポキシ基含有不飽和化合物のエポキシ基を付加させて変性した変性カルボキシル基含有(共)重合体が挙げられる。
そのカルボキシル基含有(共)重合体としては、感度の観点から、前述したカルボキシル基含有(共)重合体の(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体、及び、スチレン-(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体等が好ましい。
また、そのエポキシ基含有不飽和化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル、フマル酸モノアルキルモノグリシジルエステル、マレイン酸モルアルキルモノグリシジルエステル等の脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、及び、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、7,8-エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ-2-イル〕オキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が挙げられる。
そして、これらのエポキシ基含有不飽和化合物を、カルボキシル基含有(共)重合体の有するカルボキシル基の5~90モル%、好ましくは30~70モル%程度を反応させることにより得られる。なお、反応は公知の方法により実施することができる。
なお、このエポキシ基含有不飽和化合物変性カルボキシル基含有(共)重合体の酸価は、現像性の観点から、好ましくは30~250mgKOH/gであり、現像性の観点から、重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~300,000である。
[1-1-4-b-3]不飽和カルボン酸変性エポキシ基及びカルボキシル基含有(共)重合体
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体として、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、前述の脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物または脂環式エポキシ基含有不飽和化合物、またはさらに不飽和カルボン酸エステルやスチレン等とを、前者のカルボキシル基含有不飽和化合物の全体に占める割合を10~90モル%、好ましくは30~80モル%程度となるように共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸を反応させて、該共重合体のエポキシ基に不飽和カルボン酸のカルボキシル基を付加させて変性した変性エポキシ基及びカルボキシル基含有(共)重合体が挙げられる。
なお、この不飽和カルボン酸変性エポキシ基及びカルボキシル基含有(共)重合体の酸価は、現像性の観点から、好ましくは30~250mgKOH/gであり、現像性の観点から、重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~300,000である。
[1-1-4-b-4]酸変性エポキシ基含有(共)重合体
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体として、エポキシ基含有(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和化合物との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部にエチレン性不飽和モノカルボン酸を付加し、さらに付加により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸(無水物)を付加して得られる酸変性エポキシ基含有(共)重合体が挙げられる。
具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート5~99モル%と、(メタ)アクリル酸エステル等のエチレン性不飽和化合物通常2~95モル%との共重合体を、共重合体に含まれるエポキシ基の通常10~100モル%に、エチレン性不飽和モノカルボン酸を付加し、さらに付加したときに生成する水酸基の通常10~100モル%に、多塩基酸(無水物)を付加して得られる酸変性エポキシ基含有(共)重合体が挙げられる。
ここで、前記共重合体におけるエポキシ基含有(メタ)アクリレートの共重合割合は特に限定されないが、通常5モル%以上、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、よりさらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、通常99モル%以下、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。前記下限値以上とすることで高感度となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで適度な現像溶解性となる傾向がある。
一方、前記共重合体におけるエチレン性不飽和化合物の共重合割合は特に限定されないが、通常1モル%以上、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上であり、通常90モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、特に好ましくは10モル%以下である。前記下限値以上とすることで高感度となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで適度な現像溶解性となる傾向がある。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート等の脂肪族エポキシ基含有(メタ)アクリレート;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、7,8-エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ-2-イル〕オキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
ここで、エチレン性不飽和化合物としては、例えば、下記式(α)で表される部分構造を有するモノ(メタ)アクリレートの1種または2種以上を用いることが好ましい。
式(α)中、R1d~R4dは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表し、R5d及びR6dは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。また、R5dとR6dとは連結して環を形成していてもよい。R5dとR6dとが連結して形成される環は、好ましくは脂肪族環であり、飽和又は不飽和の何れでもよく、該環の炭素数は好ましくは5~6である。
R1d~R4dにおけるアルキル基の炭素数は好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。前記上限値以下とすることで適切な現像溶解性となる傾向がある。
これらの中でも、溶解性の観点から、R1d~R4dは水素原子であることが好ましい。
R5d及びR6dにおけるアルキル基の炭素数は好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。前記下限値以上とすることで適切な溶解性を示す傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が保持される傾向がある。
これらの中でも、現像溶解性の観点から、R5d及びR6dが水素原子であるか、R5dとR6dとが連結して炭素数5~6の脂肪族環を形成していることが好ましい。
上記式(α)の中では、下記式(α-a)、(α-b)、または(α-c)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。これらの部分構造を導入することによって、モノ(メタ)アクリレートの耐熱性や強度を増すことが可能である。なお、これらのモノ(メタ)アクリレートは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前記の式(α)で表される部分構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、公知の各種のものが使用できるが、硬化性の観点から、特に次の式(β)で表されるものが好ましい。
式(β)中、R9dは水素原子又はメチル基を表し、R10dは前記式(α)の部分構造を表す。
前記式(α)で表される部分構造を有するモノ(メタ)アクリレートを含有する場合、その共重合割合は、通常1モル%以上、好ましくは2モル%以上、また、通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。前記下限値以上とすることで残膜率が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が少なくなる傾向がある。
一方で、エチレン性不飽和化合物としては、上述した式(α)で表される部分構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和化合物(以下、「その他のエチレン性不飽和化合物」と称することがある。)、例えば、スチレンのα-、o-、m-、p-アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体等のスチレン類、ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸-1,1,1-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジ-iso-プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド類、(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等のビニル化合物類、シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル類、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド等のモノマレイミド類、N-(メタ)アクリロイルフタルイミド等のようなラジカル重合性化合物も挙げられる。
これらの中でも、より優れた耐熱性及び強度を付与させるためには、その他のエチレン性不飽和化合物としては、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート及びモノマレイミドから選択された少なくとも1種を使用することが有効である。この場合、耐熱性の観点から、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート及びモノマレイミドから選択された少なくとも1種の共重合割合は、通常1モル%以上、好ましくは3モル%以上、また、通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和化合物との共重合体に含まれるエポキシ基に付加させるエチレン性不飽和モノカルボン酸としては、公知のものを使用することができ、硬化性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。前記共重合体に含まれるエポキシ基にエチレン性不飽和モノカルボン酸を付加させる量は、該共重合体に含まれるエポキシ基の通常10モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、通常100モル%以下である。エチレン性不飽和モノカルボン酸の付加割合を前記下限値以上とすることで、硬化性を高めることができる傾向がある。なお、前記共重合体にエチレン性不飽和モノカルボン酸を付加させる方法としては公知の方法を採用することができる。
前記共重合体にエチレン性不飽和モノカルボン酸を付加させたときに生成する水酸基に付加させる多塩基酸(無水物)としては、特に限定されず公知のものを用いることができ、例えば、フタル酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)、ヘキサヒドロフタル酸(無水物)、コハク酸(無水物)、トリメリット酸(無水物)等が挙げられる。アウトガス発生量低減の観点からは、コハク酸(無水物)が好ましく、一方で、残膜率向上と残渣低減の観点からは、テトラヒドロフタル酸(無水物)が好ましい。多塩基酸(無水物)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。このような成分を付加させることにより、共重合体にアルカリ可溶性を付与することができる。
多塩基酸(無水物)を付加させる量は、前記共重合体にエチレン性不飽和モノカルボン酸を付加させたときに生成する水酸基の、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上である。また、通常100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。前記下限値以上とすることで現像性を付与できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像が進みすぎ膜溶解するのを抑制する傾向がある。なお、前記共重合体にエチレン性不飽和モノカルボン酸を付加させたときに生成する水酸基に多塩基酸(無水物)を付加させる方法としては、公知の方法を任意に採用することができる。
以上のエポキシ基含有(共)重合体のエチレン性不飽和モノカルボン酸及び多塩基酸(無水物)による変性物には、多塩基酸(無水物)付加後に生成したカルボキシル基の一部に、グリシジル(メタ)アクリレートやエチレン不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させることにより、さらに光感度を向上させることができる。また、多塩基酸(無水物)付加後に生成したカルボキシル基の一部にエチレン性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物を付加させることにより、現像性を向上させることもできる。さらに、多塩基酸(無水物)付加後にこれらの両者を付加させてもよい。
なお、上述したエポキシ基含有(共)重合体のエチレン性不飽和モノカルボン酸及び多塩基酸(無水物)による変性物としては、例えば、日本国特開平8-297366号公報や日本国特開2001-89533号公報に記載の樹脂が挙げられる。
また、酸変性エポキシ基含有(共)重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、通常3,000以上、好ましくは5,000以上、また、通常100,000以下、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは20,000以下、よりさらに好ましくは15,000以下、特に好ましくは10,000以下である。前記下限値以上とすることで相溶性を向上できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶解性を確保できる傾向がある。また、分子量分布〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕は、硬化性の観点から、2.0~5.0が好ましい。
また、酸変性エポキシ基含有(共)重合体の酸価は特に限定されないが、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましく、また、150mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましく、50mgKOH/g以下がさらに好ましく。前記下限値以上とすることで溶解性を担保できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで減膜を向上させることができる傾向がある。
[1-1-4-c](C-3)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有樹脂
[1-1-4-c-1]酸変性エポキシ樹脂
カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有樹脂として、例えば、エポキシ樹脂のエチレン性不飽和基モノカルボン酸付加体に、多塩基酸(無水物)が付加された、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂、つまりいわゆるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。即ち、エポキシ樹脂のエポキシ基に、エチレン性不飽和モノカルボン酸のカルボキシ基が開環付加されることにより、エポキシ樹脂にエステル結合(-COO-)を介してエチレン性不飽和結合が付加されると共に、その際生じた水酸基に、多塩基酸(無水物)の一方のカルボキシ基が付加されたものが挙げられる。
ここで、エポキシ樹脂とは、熱硬化により樹脂を形成する以前の原料化合物をも含めて言うこととし、そのエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタンとの重合エポキシ樹脂、ジハイドロオキシルフルオレン型エポキシ樹脂、ジハイドロオキシルアルキレンオキシルフルオレン型エポキシ樹脂、9,9-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル化物、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)アダマンタンのジグリシジルエーテル化物等が挙げられる。中でも、高い硬化膜強度の観点から、ビスフェノールAエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタジエンとの重合エポキシ樹脂、9,9-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル化物等が好ましく、ビスフェノールAエポキシ樹脂が更に好ましい。
また、エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等、及び、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物等が挙げられる。中でも、感度の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
また、多塩基酸(無水物)としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、及びそれらの無水物等が挙げられる。中でも、画像再現性、現像性、アウトガス発生量低減の観点から、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、またはヘキサヒドロフタル酸無水物が好ましく、コハク酸無水物又はテトラヒドロフタル酸無水物がより好ましく、コハク酸無水物が更に好ましい。
本発明における酸変性エポキシ樹脂の酸価は特に限定されないが、10mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましく、30mgKOH/g以上がさらに好ましく、また、200mgKOH/g以下が好ましく、180mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましく、100mgKOH/g以下がよりさらに好ましく、80mgKOH/g以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで密着性を向上できる傾向があり、また、前記上限値以下とすること溶解性を向上できる傾向がある。
また、酸変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、通常1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、さらに好ましくは4,000以上、よりさらに好ましくは5,000以上、特に好ましくは6,000以上であり、また、通常30,000以下、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。前記下限値以上とすることで密着性を向上できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで適正な溶解性を維持できる傾向がある。
上記酸変性エポキシ樹脂は、従来公知の方法により合成することができる。具体的には、前記エポキシ樹脂を有機溶剤に溶解させ、触媒と熱重合禁止剤の共存下、前記エチレン性不飽和モノカルボン酸を加えて付加反応させ、更に多塩基酸(無水物)を加えて反応を続ける方法を用いることができる。
ここで、反応に用いる有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤の1種または2種以上が挙げられる。また、上記触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリベンジルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンミニウム塩類、トリフェニルホスフィン等の燐化合物、トリフェニルスチビン等のスチビン類等の1種または2種以上が挙げられる。更に、熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン等の1種または2種以上が挙げられる。
また、エチレン性不飽和モノカルボン酸の使用量としては、エポキシ樹脂のエポキシ基の1化学当量に対して通常0.7~1.3化学当量、好ましくは0.9~1.1化学当量となる量とすることができる。また、付加反応時の温度としては、通常60~150℃、好ましくは80~120℃の温度とすることができる。更に、多塩基酸(無水物)の使用量としては、前記付加反応で生じた水酸基の1化学当量に対して、通常0.1~1.2化学当量、好ましくは0.2~1.1化学当量となる量とすることができる。
本発明における前記酸変性エポキシ樹脂について、具体例を以下に示す。酸変性エポキシ樹脂は、1種の樹脂を含むものであってもよく、2種以上の樹脂を含むものであってもよい。
式(C1-1)中、R111は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表し、n111は0~20の整数を表す。
式(C1-2)中、R121は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表し、n121は0~20の整数を表す。
式(C1-3)中、R131は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表し、m131及びn131は各々独立に0~20の整数を表す。なお、m131及びn131は繰り返し単位の数を意味し、ブロック共重合体であることを示すものではない。γは単結合、-CO-、-CH2-、-C(CH3)2-、下記式(γ)に示す基、又は下記式(δ)に示す基を表す。δは水素原子又は多塩基酸残基を表す。
式(C1-4)中、R141は各々独立にアルキル基又はハロゲン原子を表し、pは各々独立に0~4の整数を表す。
式(C1-6)中、R161は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表し、n161は0~20の整数を表す。
また、式(C1-1)~式(C1-6)中、Aは下記一般式(ε)に示す基を表す。
式(ε)中、R171は水素原子又はメチル基を表し、R172はアルキレン基を表し、m171は0~10の整数を表す。またδは、水素原子又は多塩基酸残基を表す。
[1-1-4-c-2]変性フェノール樹脂
カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有樹脂として、例えば、フェノール樹脂のエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物付加体に、多塩基酸(無水物)が付加された、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有フェノール樹脂が挙げられる。即ち、フェノール樹脂のフェノール性水酸基に、エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物のエポキシ基が開環付加されることにより、フェノール樹脂にエステル結合(-COO-)を介してエチレン性不飽和結合が付加されると共に、その際生じた水酸基に、多塩基酸(無水物)の一方のカルボキシ基が付加されたものが挙げられる。
ここで、フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、4,4’-ビフェニルジオール、ビスフェノール-A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール、安息香酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、サリチル酸、フロログルシノール等のフェノール類の少なくとも1種を、酸触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類、または、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させたノボラック樹脂、及び、その重縮合における酸触媒に代えてアルカリ触媒を用いる以外は同様にして重縮合させたレゾール樹脂等が挙げられる。ここで、上記フェノール類とアルデヒド類との縮合反応は、無溶剤下または溶剤中で行われる。
これらのノボラック樹脂、レゾール樹脂の重量平均分子量(Mw)は通常1,000~20,000であり、好ましくは1,000~10,000であり、更に好ましくは1,000~8,000である。重量平均分子量を前記下限値以上とすることで画像強度が確保しやすい傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性が確保しやすい傾向がある。
また、エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ビニル等が挙げられる。これらのうち、特にグリシジル(メタ)クリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
ノボラック樹脂、レゾール樹脂等とエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物との反応には公知の方法を用いることができる。例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の3級アミン、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ピリジン、トリフェニルホスフィン等の1種または2種以上を触媒として、有機溶剤中、反応温度50~150℃で数~数十時間反応させることにより、ノボラック樹脂、レゾール樹脂等にエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物を付加することができる。
該触媒の使用量は、反応原料混合物(ノボラック樹脂、レゾール樹脂とエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物との合計)に対して好ましくは0.01~10質量%、特に好ましくは0.3~5質量%である。また、反応中の重合を防止するために、重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ジブチルヒドロキシトルエン、フェノチアジン等の1種または2種以上)を使用することが好ましく、その使用量は、反応原料混合物に対して好ましくは0.01~10質量%、特に好ましくは0.03~5質量%である。
なお、ノボラック樹脂、レゾール樹脂等のフェノール性水酸基にエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物を付加させる好ましい割合は、1~99モル%である。この割合はフェノール性水酸基に対して加えるエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物の量で調整できる。
また、多塩基酸(無水物)としては、例えば、公知のものが使用でき、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等の二塩基性カルボン酸またはその無水物、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸等の多塩基性カルボン酸またはその無水物等が挙げられる。中でも好ましくは、テトラヒドロ無水フタル酸または無水コハク酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
多塩基酸(無水物)の付加率は、ノボラック樹脂、レゾール樹脂等とエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物の反応物の水酸基の、通常10~100モル%、好ましくは20~100モル%、より好ましくは30~100モル%である。この付加率を前記範囲内とすることで現像性が確保しやすい傾向がある。
[1-1-4-d]その他のアルカリ可溶性樹脂
その他、アルカリ現像液に対して劣化しやすい基板の有機電界素子に隔壁を設けようとする場合であって、弱アルカリ性のアルカリ性化合物の現像液、或いはアルカリ性化合物を含有しない現像液を用いる場合においては、アルカリ可溶性樹脂として、ポリビニルアルコール、あるいは前記[1-1-4-a-1]カルボキシル基含有(共)重合体(1)で挙げた共単量体(好ましい例としては、酢酸ビニル等)を0.1~40モル%、好ましくは1~30モル%共重合させたビニルアルコール共重合体、あるいは前記[1-1-4-a-1]カルボキシル基含有(共)重合体(1)で挙げた共重合体をエステル化反応により0.1~40モル%、好ましくは1~30モル%導入した変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
また、さらに、適度なテーパー角形成と撥液性の保持を目的として、前記[1-1-4-c-1]酸変性エポキシ樹脂で挙げたエチレン性不飽和モノカルボン酸(好ましい例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応物等)、あるいはさらに多塩基酸(無水物)(好ましい例としては、テトラヒドロフタル酸無水物等)をエステル化反応により0.1~30モル%、好ましくは0.5~20モル%導入した変性ポリビニルアルコール、または、日本国特開2008-45047号公報に記載の、(メタ)アクリロイル(オキシ)基あるいは(メタ)アクリルアミド基を有しアルデヒド基を有する化合物(好ましい例としては、4-アクリロイルオキシブタナール等)、あるいはジアルキルアセタール基を有する化合物(好ましい例としては、N-(2,2-ジメトキシエチル)メタクリルアミド等)をフォルマール反応により0.1~30モル%、好ましくは0.5~20モル%導入した変性ポリビニルアルコール等が好ましく用いられる。
(C)アルカリ可溶性樹脂として、上述のものの中でも、アウトガス発生量低減と硬化性の観点から、(C-2)側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボシキル基含有(共)重合体又は(C-3)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有樹脂が好ましく、(C-3)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有樹脂がより好ましく、酸変性エポキシ樹脂がさらに好ましい。また、第1の態様における(C)アルカリ可溶性樹脂として挙げたものを用いることもできる。
以上の(C)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましく、7,000以上が特に好ましく、また、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましく、10,000以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像が進みすぎ膜溶解するのを抑制する傾向があり、前記上限値以下とすることで適度な現像溶解性を示す傾向がある。
また、(C)アルカリ可溶性樹脂の酸価は特に限定されないが、10mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましく30mgKOH/g以上が好ましく、また、200mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以下がさらに好ましく、70mgKOH/g以下がよりさらに好ましく、50mgKOH/g以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高い残膜率を得られる傾向がある。
第2の態様に係る本発明の感光性樹脂組成物中における(C)アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、全固形分に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。前記下限値以上とすることで適度な現像溶解性と感度が得られる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで適度な現像溶解性と感度が得られる傾向がある。
また、全固形分中における(A)エチレン性不飽和化合物及び(C)アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、全固形分に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは85質量%以上であり、また、通常99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。前記下限値以上とすることで適度な現像溶解性と感度が得られる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで適度な現像溶解性と感度が得られる傾向がある。
また、感光性樹脂組成物中の(A)エチレン性不飽和化合物に対する(C)アルカリ可溶性樹脂の配合比としては、(A)エチレン性不飽和化合物100質量部に対して、(C)アルカリ可溶性樹脂50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましく、80質量部以上が特に好ましく、また、400質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましく、200質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで基板密着性が強くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで硬化性が高くなり、撥液性が生じるために必要な最小露光量が低くなるとなる傾向がある。
[1-1-5](D)成分;撥液剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(D)撥液剤を含有していてもよい。特に、インクジェット法で有機電界発光素子を作製する場合には(D)撥液剤を含有することが好ましく、(D)撥液剤を含有することでそれが隔壁の表面に撥液性を付与できることから、得られる隔壁を有機層の発光部(画素)ごとの混色を防ぐものとすることができると考えられる。
撥液剤としては、シリコーン含有化合物やフッ素系化合物が挙げられ、好ましくは、架橋基を有する撥液剤(以下、「架橋基含有撥液剤」と称す場合がある。)が挙げられる。架橋基としては、エポキシ基又はエチレン性不飽和基が挙げられ、現像液の撥液成分の流出抑制の観点から、好ましくはエチレン性不飽和基である。
架橋基含有撥液剤を用いる場合には、形成した塗布膜を露光する際にその表面での架橋反応を加速することができ、撥液剤が現像処理で流出しにくくなり、その結果、得られる隔壁を高い撥液性を示すものとすることができると考えられる。
撥液剤としてフッ素系化合物を用いた場合には、当該フッ素化合物が隔壁の表面に配向して、インキのにじみや混色を防止する働きをする傾向がある。さらに詳しくは、フッ素原子を有する基が、インキをはじき、インキが隔壁を越えて隣接する領域に進入することによるインキのにじみや混色を防ぐ働きをする傾向がある。
架橋基含有撥液剤、特にエチレン性不飽和基含有フッ素系化合物の具体例としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルアルキレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基と親水基を含むオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親油基を含むオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親水基と新油基を含むオリゴマー、パーフルオロアルキルと親水基を含むウレタン、パーフルオロアルキルエステル、パーフルオロアルキル燐酸エステル等のフッ素含有有機化合物を挙げることができる。これらのフッ素含有化合物の市販品としては、DIC社製「メガファックF116」、「メガファックF120」、「メガファックF142D」、「メガファックF144D」、「メガファックF150」、「メガファックF160」、「メガファックF171」、「メガファックF172」、「メガファックF173」、「メガファックF177」、「メガファックF178A」、「メガファックF178K」、「メガファックF179」、「メガファックF183」、「メガファックF184」、「メガファックF191」、「メガファックF812」、「メガファックF815」、「メガファックF824」、「メガファックF833」、「メガファックRS101」、「メガファックRS102」「メガファックRS105」、「メガファックRS201」、「メガファックRS202」、「メガファックRS301」、「メガファックRS303」「メガファックRS304」、「メガファックRS401」、「メガファックRS402」、「メガファックRS501」、「メガファックRS502」、「メガファックRS-72-K」、「DEFENSA MCF300」、「DEFENSA MCF310」、「DEFENSA MCF312」、「DEFENSA MCF323」、スリーエムジャパン社製「フロラードFC430」、「フロラードFC431」、「FC-4430」、「FC4432」、旭硝子社製「アサヒガードAG710」、「サーフロンS-382」、「サーフロンSC-101」、「サーフロンSC-102」、「サーフロンSC-103」、「サーフロンSC-104」、「サーフロンSC-105」、「サーフロンSC-106」、ダイキン工業社製「オプツールDAC―HP」等の商品名で市販されている含フッ素有機化合物を使用することができる。
このように、撥液剤としてフッ素系化合物を用いる場合において、撥液剤中のフッ素原子含有量は特に制限されないが、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、また、50質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで画素部への流出を抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高い接触角を示す傾向がある。
撥液剤の分子量は特に制限されず、低分子量の化合物でも、高分子量体であってもよい。高分子量体の撥液剤の方が、ポストベークによる撥液剤の流動性が抑えられるため、バンクから撥液剤の流出を抑えることができるため好ましく、係る観点から、撥液剤の数平均分子量は、100以上が好ましく、500以上がより好ましく、100,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中の(D)撥液剤の含有割合は、全固形分に対して通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、また、通常1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。前記下限値以上とすることで高い撥液性を示す傾向があり、また、前記上限値以下とすることで画素部への流出を抑制できる傾向がある。
一方で、本発明の隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(D)撥液剤と共に界面活性剤を用いてもよく、また、(D)撥液剤に代えて界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、隔壁形成用感光性樹脂組成物の塗布液としての塗布性、及び塗布膜の現像性の向上等を目的として用いることができ、中でもフッ素系又はシリコーン系の界面活性剤が好ましい。
特に、現像の際、未露光部から感光性樹脂組成物の残渣を除去する作用があり、また、濡れ性を発現する機能を有することから、シリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤がさらに好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖及び側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物が好適である。具体的には、1,1,2,2-テトラフルオロオクチル(1,1,2,2-テトラフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2-テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコールジ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2-テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロペンチル)エーテル、パーフルオロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10-デカフルオロドデカン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロデカン等を挙げることができる。これらの市販品としては、例えば、BM Chemie社製「BM-1000」、「BM-1100」、DIC社製「メガファックF142D」、「メガファックF172」、「メガファックF173」、「メガファックF183」、「メガファックF470」、「メガファックF475」、スリーエムジャパン社製「FC430」、ネオス社製「DFX-18」等を挙げることができる。
また、シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製「DC3PA」、「SH7PA」、「DC11PA」、「SH21PA」、「SH28PA」、「SH29PA」、「8032Additive」、「SH8400」、ビックケミー社製「BYK323」、「BYK330」等の市販品を挙げることができる。
界面活性剤として、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤以外のものを含んでいてもよく、その他、界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性界面活性剤等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンペンタエリスリット脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、花王社製の「エマルゲン104P」、「エマルゲンA60」等のポリオキシエチレン系界面活性剤等が挙げられる。
また、上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩類、特殊高分子系界面活性剤等が挙げられる。中でも、特殊高分子系界面活性剤が好ましく、特殊ポリカルボン酸型高分子系界面活性剤がさらに好ましい。このようなアニオン性界面活性剤としては市販品を用いることができ、例えば、アルキル硫酸エステル塩類では花王社製「エマール10」等、アルキルナフタレンスルホン酸塩類では花王社製「ペレックスNB-L」等、特殊高分子系界面活性剤では花王社製「ホモゲノールL-18」、「ホモゲノールL-100」等が挙げられる。
さらに、上記カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩類、イミダゾリン誘導体類、アルキルアミン塩類等が、また、両性界面活性剤としては、ベタイン型化合物類、イミダゾリウム塩類、イミダゾリン類、アミノ酸類等が挙げられる。これらのうち、第4級アンモニウム塩類が好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウム塩類がさらに好ましい。市販のものとしては、例えば、アルキルアミン塩類では花王社製「アセタミン24」等、第4級アンモニウム塩類では花王社製「コータミン24P」、「コータミン86W」等が挙げられる。
また、界面活性剤は2種類以上の組み合わせで用いてもよく、例えば、シリコーン系界面活性剤/フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤、フッ素系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。中でも、シリコーン系界面活性剤/フッ素系界面活性剤の組み合わせが好ましい。このシリコーン系界面活性剤/フッ素系界面活性剤の組み合わせでは、例えば、ネオス社製「DFX-18」、ビックケミー社製「BYK-300」または「BYK-330」/AGCセイミケミカル社製「S-393」、信越シリコーン社製「KP340」/DIC社製「F-478」または「F-475」、東レ・ダウコーニング社製「SH7PA」/ダイキン社製「DS-401」、NUC社製「L-77」/スリーエムジャパン社製「FC4430」等が挙げられる。
[1-1-6]重合禁止剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤を含有することでそれがラジカル重合を阻害することから、得られる隔壁のテーパー角を大きくすることができると考えられる。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルヒドロキノン、メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾール(BHT)等が挙げられる。これらの中でも重合禁止能力の観点から、ハイドロキノン又はメトキシフェノールが好ましく、メチルハイドロキノンがより好ましい。
重合禁止剤は、1種又は2種以上を含有することが好ましい。通常、(C)アルカリ可溶性樹脂を製造する際に、当該樹脂中に重合禁止剤が含まれることがあり、それを本発明の重合禁止剤として用いてもよいし、樹脂中の重合禁止剤の他に、それと同一、又は異なる重合禁止剤を感光性樹脂組成物製造時に添加してもよい。
感光性樹脂組成物中の重合禁止剤の含有割合は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、通常0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角を大きくすることができる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高感度を保つことができる傾向がある。
[1-1-7]紫外線吸収剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は、露光に用いられる光源の特定の波長を紫外線吸収剤によって吸収させることにより、光硬化分布を制御する目的で添加されるものである。紫外線吸収剤の添加により、現像後のテーパー角形状を改善したり、現像後に非露光部に残る残渣をなくしたりする等の効果が得られる。紫外線吸収剤としては、開始剤の光吸収の阻害の観点から、例えば、波長250nmから400nmの間に吸収極大を有する化合物を用いることができる。
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾエート化合物、桂皮酸誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ジナフタレン化合物、フェナントロリン化合物、染料等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、テーパー角を大きくする観点から、ベンゾトリアゾール系化合物及び/又はヒドロキシフェニルトリアジン系化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物の中でも、テーパー形状の点から、下記の一般式(Z1)で記載されるベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
上記式(Z1)中、R1e及びR2eは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、下記一般式(Z2)で表される基、又は下記一般式(Z3)で表される基を表す。R3eは、水素原子又はハロゲン原子を表す。
上記式(Z2)中、R4eは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R5eは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
上記式(Z3)中、R6eは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R7eは水素原子またはメチル基を表す。
(R1e及びR2e)
前記式(Z1)において、R1e及びR2eは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、一般式(Z2)で表される基、又は一般式(Z3)で表される基を表す。
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、また、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。これらの中でもtert-ブチル基が好ましい。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
(R3e)
前記式(Z1)において、R3eは、水素原子又はハロゲン原子を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中でも合成の観点から、R3eが水素原子であることが好ましい。
(R4e)
前記式(Z2)において、R4eは置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
アルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。その炭素数は通常1以上であり、2以上が好ましく、また6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。これらの中でもエチレン基が好ましい。
また、アルキレン基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
これらの中でも、R4eがエチレン基であることが好ましい。
(R5e)
前記式(Z2)において、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、また、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
これらの中でもテーパー形状の観点から、R5eがヘプチル基、オクチル基、ノニル基であることが好ましい。
(R6e)
前記式(Z3)において、R6eは置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
アルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。その炭素数は通常1以上であり、2以上が好ましく、また、6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。これらの中でもエチレン基が好ましい。
また、アルキレン基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
これらの中でもテーパー形状の観点から、R1eがtert-ブチル基、R2eが前記式(Z2)で表される基(ただしR4eがエチレン基、R5eが炭素数7~9のアルキル基)、R3eが水素原子である化合物、又はR1eが水素原子、R2eが前記式(Z3)で表される基(ただしR6eがエチレン基、R7eがメチル基)、R3eが水素原子である化合物が好ましく、R1eがtert-ブチル基、R2eが前記式(Z2)で表される基(ただしR4eがエチレン基、R5eが炭素数7~9のアルキル基)、R3eが水素原子である化合物がより好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートと2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートの混合物、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルの化合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、が挙げられる。これらの中でも、テーパー角と露光感度の観点から、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルの化合物が好ましい。
市販されているベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、スミソーブ200、スミソーブ250、スミソーブ300、スミソーブ340、スミソーブ350(住友化学製)、JF77、JF78、JF79、JF80、JF83(城北化学工業製)、TINUVIN PS、TINUVIN99-2、TINUVIN109、TINUVIN384-2、TINUVIN326、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130(BASF製)、EVERSORB70、EVERSORB71、EVERSORB72、EVERSORB73、EVERSORB74、EVERSORB75、EVERSORB76、EVERSORB234、EVERSORB77、EVERSORB78、EVERSORB80、EVERSORB81(台湾永光化学工業製)、トミソーブ100、トミソーブ600(エーピーアイコーポレーション製)、SEESORB701、SEESORB702、SEESORB703、SEESORB704、SEESORB706、SEESORB707、SEESORB709(シプロ化成製)、RUVA-93(大塚化学株式会社製)等が挙げられる。
トリアジン系化合物としては、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル」-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン等が挙げられる。これらの中でも、テーパー角と露光感度の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましい。
市販されているトリアジン系化合物としては、例えば、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477、TINUVIN479(BASF製)等を挙げることができる。
その他の紫外線吸収剤としては、例えば、スミソーブ130(住友化学製)、EVERSORB10、EVERSORB11、EVERSORB12(台湾永光化学工業製)、トミソーブ800(エーピーアイコーポレーション製)、SEESORB100、SEESORB101、SEESORB101S、SEESORB102、SEESORB103、SEESORB105、SEESORB106、SEESORB107、SEESORB151(シプロ化成製)等のベンゾフェノン化合物;スミソーブ400(住友化学製)、サリチル酸フェニル等のベンゾエート化合物;桂皮酸2-エチルヘキシル、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル等の桂皮酸誘導体;α-ナフトール、β-ナフトール、α-ナフトールメチルエーテル、α-ナフトールエチルエーテル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン誘導体;アントラセン、9,10-ジヒドロキシアントラセン等のアントラセン及びその誘導体;アゾ系染料、ベンゾフェノン系染料、アミノケトン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系染料、ジフェニルシアノアクリレート系染料、トリアジン系染料、p-アミノ安息香酸系染料等の染料;等が挙げられる。これらの中でも、露光感度の観点から、桂皮酸誘導体、ナフタレン誘導体を用いることが好ましく、桂皮酸誘導体を用いることが特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有割合は、全固形分に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角が大きくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。
また、(B)光重合開始剤に対する配合比としては、(B)光重合開始剤100質量部に対する紫外線吸収剤の配合量として、通常1質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、特に好ましくは80質量部以上であり、通常500質量部以下、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角が大きくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。
[1-1-8]熱重合開始剤
さらに、本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物には、熱重合開始剤が含有されていてもよい。熱重合開始剤を含有することで、膜の架橋度を高くできる傾向がある。このような熱重合開始剤の具体例としては、例えば、アゾ系化合物、有機過酸化物及び過酸化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、光重合開始剤に感度向上や膜の架橋密度の増大を期待して熱重合開始剤を併用する場合、これらの含有割合の合計が、前述の感光性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有割合となるようにすることが好ましく、また、光重合開始剤と熱重合開始剤との併用割合としては、感度の観点から、光重合開始剤100質量部に対して熱重合開始剤を5~300質量部とすることが好ましい。
[1-1-9]アミノ化合物
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物には、熱硬化を促進するためにアミノ化合物が含まれていてもよい。この場合、感光性樹脂組成物中のアミノ化合物の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。また、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上である。前記上限値以下とすることで保存安定性を維持できる傾向があり、前記下限値以上とすることで十分な熱硬化性を確保できる傾向がある。
アミノ化合物としては、例えば、官能基としてメチロール基、それを炭素数1~8のアルコール縮合変性したアルコキシメチル基を少なくとも2個有するアミノ化合物が挙げられる。具体的には、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを重縮合させたメラミン樹脂;ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを重縮合させたベンゾグアナミン樹脂;グリコールウリルとホルムアルデヒドとを重縮合させたグリコールウリル樹脂;尿素とホルムアルデヒドとを重縮合させた尿素樹脂;メラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、または尿素等の2種以上とホルムアルデヒドとを共重縮合させた樹脂;上述の樹脂のメチロール基をアルコール縮合変性した変性樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アミノ化合物としては中でも、メラミン樹脂及びその変性樹脂が好ましく、メチロール基の変性割合が、70%以上の変性樹脂が更に好ましく、80%以上の変性樹脂が特に好ましい。
上記アミノ化合物の具体例として、メラミン樹脂及びその変性樹脂としては、例えば、サイテック社製の「サイメル」(登録商標)300、301、303、350、736、738、370、771、325、327、703、701、266、267、285、232、235、238、1141、272、254、202、1156、1158、及び、三和ケミカル社製の「ニカラック」(登録商標)MW-390、MW-100LM、MX-750LM、MW-30M、MX-45、MX-302等が挙げられる。また、上記ベンゾグアナミン樹脂及びその変性樹脂としては、例えば、サイテック社製の「サイメル」(登録商標)1123、1125、1128等が挙げられる。また、上記グリコールウリル樹脂及びその変性樹脂としては、例えば、サイテック社製の「サイメル」(登録商標)1170、1171、1174、1172、及び、三和ケミカル社製の「ニカラック」(登録商標)MX-270等が挙げられる。また、上記尿素樹脂及びその変性樹脂としては、例えば、サイテック社製の「UFR」(登録商標)65、300、及び、三和ケミカル社製の「ニカラック」(登録商標)MX-290等が挙げられる。
[1-1-10]着色剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物には、隔壁を着色させる目的で着色剤が含まれていてもよい。着色剤としては、顔料、染料等公知の着色剤を用いることができる。また、例えば、顔料を用いる際に、その顔料が凝集したりせずに安定して感光性樹脂組成物中に存在できるように、公知の分散剤や分散助剤が併用されてもよい。特に撥液性隔壁を黒色に着色することで、鮮明な画素表示が得られる効果がある。黒色着色剤としては黒色染料や黒色顔料、カーボンブラック、チタンブラック等の他、有機顔料を混合させて黒く着色することも低導電性を持たせる効果として有効である。着色剤の含有割合としては製版性と色特性の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常60質量%以下、好ましくは40質量%以下である。
一方で、隔壁からのアウトガス発生量を低減させる目的の場合、隔壁を透明にするのが望ましく、その場合の着色剤の含有割合は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
[1-1-11]塗布性向上剤、現像改良剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物には、塗布性や現像溶解性を向上するために塗布性向上剤や現像改良剤が含まれていてもよい。塗布性向上剤あるいは現像改良剤としては、例えば公知の、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、フッ素系、シリコーン系界面活性剤を用いることができる。また、現像改良剤として、有機カルボン酸或いはその無水物等公知のものを用いることもできる。また、その含有割合は、感度の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
[1-1-12]シランカップリング剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物には、基板との密着性を改善するため、シランカップリング剤を添加することも好ましい。シランカップリング剤の種類としては、エポキシ系、メタクリル系、アミノ系、イミダゾール系等種々の物が使用できるが、密着性向上の観点から、特にエポキシ系、イミダゾール系のシランカップリング剤が好ましい。その含有割合は、密着性の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。
[1-1-13]リン酸系密着向上剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物には、基板との密着性を改善するため、リン酸系密着向上剤を添加することも好ましい。リン酸系密着向上剤としては、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類が好ましく、中でも下記一般式(Va)、(Vb)、(Vc)で表されるものが好ましい。
上記一般式(Va)、(Vb)、(Vc)において、R8は水素原子又はメチル基を示し、r及びr’は各々独立に1~10の整数、sは1、2又は3である。
[1-1-14]無機充填剤
また、本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、さらに、硬化物としての強度の向上と共に、アルカリ可溶性樹脂との適度な相互作用(マトリックス構造の形成)による塗布膜の優れた平坦性とテーパー角の向上等を目的として、無機充填剤を含有していてもよい。そのような無機充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、或いは、これらを各種シランカップリング剤により表面処理したもの等が挙げられる。
これら無機充填剤の平均粒子径としては、通常0.005~20μm、好ましくは0.01~10μmである。ここで本実施の形態にいう平均粒子径とは、ベックマン・コールター社製等のレーザ回折散乱粒度分布測定装置にて測定した値である。これらの無機充填剤のうち、特に、シリカゾル及びシリカゾル変性物は、分散安定性と共にテーパー角の向上効果に優れる傾向があるため、好ましく配合される。本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物がこれらの無機充填剤を含む場合、その含有量としては、感度の観点から、全固形分に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。
[1-1-15]溶剤
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、通常溶剤を含有し、前述の各成分を溶剤に溶解または分散させた状態で使用される(以下、溶剤を含む感光性樹脂組成物を「感光性樹脂組成物溶液」と記すことがある)。その溶剤としては、特に制限は無いが、例えば、以下に記載する有機溶剤が挙げられる。
すなわち、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテート等のグリコールアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテート等のグリコールジアセテート類;シクロヘキサノールアセテート等のアルキルアセテート類;アミルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノン等のケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン、ベンジルアルコール等の1価又は多価アルコール類;n-ペンタン、n-オクタン、ジイソブチレン、n-ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシル等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素類;アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトン等の鎖状又は環状エステル類;3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸等のアルコキシカルボン酸類;ブチルクロライド、アミルクロライド等のハロゲン化炭化水素類;メトキシメチルペンタノン等のエーテルケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類:テトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフラン等のテトラヒドロフラン類等が挙げられる。
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)等が挙げられる。
上記溶剤は、感光性樹脂組成物中の各成分を溶解または分散させることができるもので、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法に応じて選択されるが、塗布性の観点から、大気圧下(1013.25hPa)における沸点が60~280℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは70℃以上、260℃以下の沸点をもつものであり、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテートが好ましい。
これらの溶剤は1種を単独でもしくは2種以上を混合して使用することができる。また、これらの溶剤は、感光性樹脂組成物溶液中の全固形分の割合が、通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、通常90質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下となるように使用されることが好ましい。前記下限値以上とすることで高い膜厚に対しても塗膜が得られる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで適度な塗布均一性が得られる傾向がある。
[1-2]有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物の物性
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物の物性としては、例えば、酸価が挙げられる。有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物の全固形分に対する酸価は特に限定されないが、20mgKOH/g以上が好ましく、22mgKOH/g以上がより好ましく、24mgKOH/g以上がさらに好ましく、26mgKOH/g以上がよりさらに好ましく、28mgKOH/g以上が特に好ましく、また、通常60mgKOH/g以下であり、55mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下がより好ましく、40mgKOH/g以下がさらに好ましく、35mgKOH/g以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像液への溶解性が高く、未露光部が十分に溶解、除去できることでテーパー角が大きくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が良好となる傾向がある。
[1-3]有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物の調製方法
本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物は、上記の各成分を撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された感光性樹脂組成物が均一なものとなるよう、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
[2]隔壁及び隔壁の形成方法
本発明の感光性樹脂組成物は隔壁、特に有機電界発光素子の有機層(発光部)を区画するための隔壁を形成するために用いることができる。
以上説明した有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物を用いて隔壁(バンク)を形成する方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。隔壁の形成方法としては、例えば、有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物を、基板上に塗布し、感光性樹脂組成物層を形成する塗布工程と、感光性樹脂組成物層を露光する露光工程と、を含む方法が挙げられる。このような隔壁の形成方法の具体例としては、フォトリソグラフィー法が挙げられる。
フォトリソグラフィー法では、有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物を、基板の隔壁が形成される領域全面に塗布して感光性樹脂組成物層を形成する。形成された感光性樹脂組成物層を、所定の隔壁のパターンに応じて露光した後、露光された感光性樹脂組成物層を現像して、基板上に隔壁が形成される。
フォトリソグラフィー法における、感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程では、隔壁が形成されるべき基板上に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて感光性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥により溶媒を除去して、感光性樹脂組成物層を形成する。
次いで、露光工程では、ネガ型のマスクを利用して、感光性樹脂組成物に紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射し、感光性樹脂組成物層を隔壁のパターンに応じて部分的に露光する。露光には、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源を用いることができる。露光量は感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば、10~400mJ/cm2程度が好ましい。
次いで、現像工程では、隔壁のパターンに応じて露光された感光性樹脂組成物層を現像液で現像することにより隔壁を形成する。現像方法は特に限定されず、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液の具体例としては、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。又、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
その後、現像後の隔壁にポストベークを施して加熱硬化する。ポストベークは、150~250℃で15~60分間行うことが好ましい。
隔壁の形成に用いる基板は特に限定されず、隔壁が形成された基板を用いて製造される有機電界発光素子の種類に合わせて適宜選択される。好適な基板の材料としては、ガラスや、各種の樹脂材料が挙げられる。樹脂材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;ポリ(メタ)メタアクリル樹脂;ポリスルホン;ポリイミドが挙げられる。これらの基板の材料の中では、耐熱性に優れることからガラス、及びポリイミドが好ましい。また、製造される有機電界発光素子の種類に応じて、隔壁が形成される基板の表面には、予めITOやZnO等の透明電極層を設けておいてもよい。
[3]有機電界発光素子
本発明の有機電界発光素子は、前述の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物で構成される隔壁を備える。
以上説明した方法により製造された隔壁パターンを備える基板を用いて、種々の光学素子が製造される。有機電界発光素子を形成する方法は特に限定されないが、好ましくは、上記方法により基板上に隔壁のパターンを形成した後に、基板上の隔壁によって囲まれた領域内にインクを注入して画素等の有機層を形成することによって、有機電界発光素子が製造される。
有機電界発光素子のタイプとしては、ボトムエミッション型やトップエミッション型が挙げられる。
ボトムエミッション型では、例えば、透明電極を積層したガラス基板上に隔壁を形成し、隔壁で囲まれた開口部に正孔輸送層、発光層、電子輸送層、金属電極層を積層して作製される。一方で、トップエミッション型では、例えば、金属電極層を積層したガラス基板上に隔壁を形成し、隔壁で囲まれた開口部に電子輸送層、発光層、正孔輸送層、透明電極層を積層して作製される。
なお、発光層としては、日本国特開2009-146691号公報や日本国特許第5734681号公報に記載されているような有機電界発光層が挙げられる。また、日本国特許第5653387号公報や日本国特許第5653101号公報に記載されているような量子ドットを用いてもよい。
隔壁のテーパー角が小さく、隔壁の下部が図1のようなすそ引き形状である場合、その部分の上部に蒸着層を作製しても発光しないため、発光面積は低くなってしまう。またインクジェット方式で発光層を作製する場合には、有機層形成用のインクが隔壁のすそ部分で弾かれるため、隔壁によって囲まれた領域内が有機層形成用のインクにより均一に被覆されない場合がある。それに対して、テーパー角が大きく、すそ引きのない良好な形状とすることで、隔壁により囲まれた領域内を発光させることができ、また、インクジェット方式においては有機層形成用のインクにより均一に被覆することができる。これにより、例えば、有機EL表示素子におけるハレーションの問題を解消することができる。
有機層形成用のインクを形成する際に使用される溶媒としては、水、有機溶剤、及びこれらの混合溶剤を用いることができる。有機溶剤は、インクの注入後に形成された皮膜から除去可能であれば特に限定されない。有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、及び酢酸ブチル、3-フェノキシトルエン等が挙げられる。また、インクには、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
隔壁により囲まれた領域内にインクを注入する方法としては、少量のインクを所定の箇所に容易に注入可能であることから、インクジェット法が好ましい。有機層の形成に使用されるインクは、製造される有機電界発光素子の種類に応じて適宜選択される。インクをインクジェット法により注入する場合、インクの粘度はインクをインクジェットヘッドから良好に吐出できる限り特に限定されないが、4~20mPa・sが好ましく、5~10mPa・sがより好ましい。インクの粘度は、インク中の固形分含有量の調整、溶媒の変更、粘度調整剤の添加等により調整することができる。
[4]画像表示装置
本発明の画像表示装置は、前述の有機電界発光素子を含むものである。有機電界発光素子を含むものであれば、画像表示装置の型式や構造については特に制限はなく、例えば、アクティブ駆動型有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の画像表示装置を形成することができる。例えば、白色光を発光する有機電界発光素子とカラーフィルターとを組み合わせて画像表示させてもよいし、RGB等の発光色の異なる有機電界発光素子を組み合わせて画像表示させてもよい。
[5]照明
本発明の照明は、前述の有機電界発光素子を含むものである。型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。有機電界発光素子としては、単純マトリックス駆動方式としてもよいし、アクティブマトリックス駆動方式としてもよい。
本発明の照明が白色光を発光するものとするために、白色光を発光する有機電界発光素子を用いてもよい。また、発光色の異なる有機電界発光素子を組み合わせて、各色が混色して白色となるよう構成してもよいし、混色比率を調整できるように構成して調色機能を付与してもよい。
以下、第1の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[1] 有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物の調製及び評価
各成分を表1に記載の配合割合(質量部)で用い、かつ、全固形分の含有割合が25質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて、各成分を均一になるまで撹拌して実施例及び比較例の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の数値は固形分の値を意味する。
なお、表中の記号は以下のものを表す。
a-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社製)
b-1:2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(保土ヶ谷化学社製)
b-2:イルガキュア369(BASF社製、下記の化学構造の化合物)
d-1:メガファックRS-72-K(DIC社製、フッ素系、エチレン性二重結合を有するオリゴマー)
e-1:2-メルカプトベンゾイミダゾール(東京化成社製)
e-2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)(淀化学社製)
f-1:TINUVIN384-2(BASF社製、紫外線吸収剤)
g-1:KAYAMER PM-21(日本化薬社製)
c-1:以下のエチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(c1-1)に相当)
下記式で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量186g/eq、式中のnが1~20のものの混合物)100質量部、アクリル酸40質量部、p-メトキシフェノール0.06質量部、トリフェニルホスフィン2.4質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート126質量部を反応容器に仕込み、酸価が5mgKOH/g以下になるまで95℃で撹拌した。次いで、上記反応により得られた反応液80質量部にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12質量部を加え、無水コハク酸4.5質量部を添加し、95℃で3時間反応させ、固形分酸価60mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が8,000のアルカリ可溶性樹脂(c-1)溶液を得た。
c-2:以下のアクリル共重合樹脂((c2)アクリル共重合樹脂に相当)
トリシクロデカンメタクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(モル比:0.032/0.069/0.899)を構成モノマーとする共重合樹脂に、アクリル酸をグリシジルメタクリレートと等量付加反応させ、さらに無水コハク酸を上記の共重合樹脂1モルに対してモル比0.24になるように付加した、アルカリ可溶性のアクリル共重合樹脂(c-2)溶液。溶媒はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は4,800、固形分酸価は62.1mgKOH/g。
c-3:以下のアクリル共重合樹脂
トリシクロデカンメタクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(モル比:0.3/0.1/0.6)を構成モノマーとする共重合樹脂に、アクリル酸をグリシジルメタクリレートと等量付加反応させ、さらに無水テトラヒドロフタル酸を上記の共重合樹脂1モルに対してモル比0.39になるように付加した、アルカリ可溶性のアクリル共重合樹脂(c-3)溶液。溶媒はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は8,400、固形分酸価は81.4mgKOH/g。
有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物の物性評価は以下に記載の方法で行った。
(酸価の測定)
酸価はJIS K 0070-1992記載の方法で測定ができる。感光性樹脂組成物の酸価は感光性樹脂組成物を直接測定する他、樹脂等の酸基含有成分の酸価と含有量より算出してもよい。
(ガス量の測定)
ガラス基板上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.7μmの厚みになるように各隔壁形成用感光性樹脂組成物を塗布した。その後95℃で2分間ホットプレート上で加熱乾燥し、得られた塗膜をマスクを使用せずに、露光量100mJ/cm2で全面露光した。この時の波長365nmにおける強度は7.5mW/cm2であった。次いで24℃の2.38質量%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で60秒間スプレー現像した後、純水で10秒間洗浄した。この基板を、オーブン中230℃で30分間加熱硬化させ、硬化物付きのガス量測定用基板が得られた。
作製したガス量測定用基板(40mm×8mm、4枚)を加熱炉内で230℃、20分間加熱した際のアウトガスをGC/MS(Agilent Technologies社製、商品名「5973N」)にて分析し、検出されたピーク全成分の面積の総和を計算した。ただし、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液由来の、テトラメチルアンモニウムに対応するピークは除いて計算を行った。次に、検出されたピーク面積の総和より検量線を用いてトルエン量に換算し、測定した基板面積で除し、単位面積あたりのトルエン換算のアウトガス量(ng/cm2)を算出した。結果を表1に示した。なお、検量線は、濃度既知のトルエンを用いてGC/MSを測定し、トルエン量と検出されるガスのピーク面積値をプロットして、検量線を作成した。
(接触角の測定)
ガラス基板上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.7μmの厚みになるように各隔壁形成用感光性樹脂組成物を塗布した。その後95℃で2分間ホットプレート上で加熱乾燥し、得られた塗膜をマスクを使用せずに、露光量100mJ/cm2で全面露光した。この時の波長365nmにおける強度は7.5mW/cm2であった。次いで24℃の2.38質量%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で60秒間スプレー現像した後、純水で10秒間洗浄した。この基板を、オーブン中230℃で30分間加熱硬化させ、硬化物付きの接触角測定用基板が得られた。
接触角の測定は協和界面科学株式会社製Drop Master 500接触角測定装置により、23℃湿度50%の条件下で行った。接触角測定用基板の硬化物上にプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを0.7μL滴下し、1秒後の接触角を測定した。測定結果を表1に記載した。接触角が大きい方が、撥液性が高いことを表す。
[2] 隔壁の形成及び評価
以下に記載した方法で隔壁の形成と性能評価を行った。
(隔壁の形成)
表面にITO膜を形成したガラス基板の該ITO膜上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.7μmの厚みになるように各隔壁形成用感光性樹脂組成物を塗布した。その後95℃で2分間ホットプレート上で加熱乾燥して、得られた塗膜に、フォトマスク(80μm×280μmの被覆部を10μm間隔で複数有するマスク)を用い、露光ギャップ16μmで、波長365nmにおける強度が7.5mW/cm2である紫外線を用いて、露光量が100mJ/cm2となるよう露光した。この際の紫外線照射は空気下で行った。次いで24℃の2.38質量%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で60秒間スプレー現像した後、純水で1分間洗浄した。これらの操作により、不要な部分を除去してパターンの形成された基板を、オーブン中230℃で30分間加熱硬化させ、格子状の隔壁を形成した。
(隔壁のテーパー角及び線幅の評価)
前述の格子状の隔壁をカットして断面観察用のサンプルを作製し、走査型電子顕微鏡(SEM、キーエンス社製)を用いて隔壁の断面形状を観察し、そのテーパー角を測定した。測定結果を表1に記載した。隔壁の断面形状は略台形状に観察された。
この断面図において、図1のように隔壁1とITO膜2との境界面をS、隔壁の高さをHとした。隔壁の斜辺において、境界面Sと接する斜辺との接線をTとし、接線Tと境界面Sのなす角を測定し、テーパー角とした。テーパー角は大きいほど現像性が良好で残渣が発生しにくい傾向があり、インクジェット塗布において、より濡れ広がりやすい傾向がある。
(隔壁のインクジェット塗布適性評価)
前述の格子状の隔壁を有する基板において、格子状の隔壁で囲われた画素部分に対して、富士フィルム社製DMP-2831にてインクジェット塗布を行った。インクとして、溶剤(安息香酸イソアミル)を単独で使用し、1画素あたり80pLの塗布を行い、決壊(インクが隔壁を乗り越えて隣の画素部分に混入する現象)の有無の評価を行った。評価結果を表1に記載した。決壊しないほど撥液性が高いことを示す。
[決壊評価]
〇:インクを画素内に塗布することができ、隔壁外へのあふれ出しがなかった。
△:インクの一部分が隔壁の上面に乗り上げたが、概ね隔壁外へのあふれ出しはなかった。
×:インクが画素内から隔壁の上面の全面にあふれ出し、隣の画素部分に混入してしまった。(決壊)
(隔壁のテーパー角及び線幅の評価-2)
表面にITO膜を形成したガラス基板の該ITO膜上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.7μmの厚みになるように実施例1、2の各隔壁形成用感光性樹脂組成物を塗布した。その後、前述と同様の条件にてホットプレート上で加熱乾燥して得られた塗膜に、フォトマスク(80μm×280μmの被覆部を40μm間隔で複数有するマスク)を用いた以外は、同様の露光、現像、加熱硬化をさせ、格子状の隔壁を形成した。
前述と同様に、走査型電子顕微鏡(SEM、キーエンス社製)を用いて隔壁の断面形状を観察し、そのテーパー角及び線幅を測定したところ、実施例1、2のテーパー角はそれぞれ29°、20°であり、線幅は実施例1、2共に40μmであった。また、隔壁の下部の開口幅(横幅、縦幅)を測定し、それらを乗ずることで開口部の面積を算出したところ、実施例1、2共に100%であった。なお、開口部の面積は、対応するマスク遮蔽部の面積に対する相対値である。テーパー角が小さいほど、隔壁の線幅が大きくなり、開口部の面積は小さくなる。
表1より、実施例1~5のようにコハク酸を付加したアルカリ可溶性樹脂(c-1)及び(c-2)を含む隔壁形成用感光性樹脂組成物を用いて得た基板のアウトガス量は、比較例1のようにテトラヒドロフタル酸を付加したアルカリ可溶性樹脂(c-3)を含む隔壁形成用感光性樹脂組成物を用いて得た基板のものと比較して、大幅に少ないことがわかった。
これより、コハク酸のように炭素鎖が短い酸を付加したアルカリ可溶性樹脂を含む隔壁形成用感光性樹脂組成物の方が、テトラヒドロフタル酸のように炭素鎖が長い酸を付加したアルカリ可溶性樹脂を含む隔壁形成用感光性樹脂組成物よりも、230℃30分間のポストベークによる加熱硬化後の、さらなる230℃加熱のガス測定条件において、アウトガス量が少なくなることが確認された。これは、コハク酸のような炭素鎖が短い酸はポストベーク時に殆どが分解除去され、その後にさらに230℃加熱しても酸由来のガスが発生しないからだと考えられる。
また、表1より、実施例5のように連鎖移動剤を含む感光性樹脂組成物は、比較例2のように連鎖移動剤を含まない感光性樹脂組成物と比較して、テーパー角が十分に大きくなることが分かった。連鎖移動剤を含むことで、酸素阻害等による表面近傍におけるラジカル失活が改善されて表面硬化性が高くなり、テーパー角が大きくなったと考えられる。
また、接触角も十分に大きくインクジェット塗布においても決壊を起こさず塗布できることがわかった。連鎖移動剤を含むことで、表面硬化性を高めることによって撥液剤の流出を抑制でき、撥液剤を表面近傍に固定できたからであると考えられる。
さらに、実施例2~4の比較から、接触角が同等であってもテーパー角がより大きい場合、隔壁側面においてインクが隔壁外に広がろうとする力(表面エネルギー)が小さくなり、また、細線化した隔壁においても隔壁上部の表面硬化性がより高く、撥液剤も表面近傍により固定でき、その結果としてインクジェット塗布適性がより良好となることがわかった。
実施例1と2の比較から、(c2)アクリル共重合樹脂に対して(c1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂のほうがアルカリ現像液が浸透しにくいため、実施例1よりも実施例2のほうが、テーパー角が大きくなったと考えられる。
以下、第2の態様に係る本発明の有機電界発光素子隔壁形成用感光性樹脂組成物について、具体的な実験例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実験例に限定されるものではない。
[I] 隔壁形成用感光性樹脂組成物の調製
各成分を表2に記載の配合割合(質量部)で用い、かつ、全固形分の含有割合が25質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて各成分を均一になるまで撹拌して、実験例及び比較実験例の隔壁形成用感光性樹脂組成物を調製した。
なお、表中の記号は以下のものを表す。
a-11:以下のエチレン性不飽和化合物の混合物[(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物と(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物との混合物]
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(水酸基価113mgKOH/g)490質量部に、無水フタル酸148質量部、トリエチルアミン2.5質量部、及びハイドロキノン0.25質量部の存在下に100℃で5時間反応させ、下記に示すペンタエリスリトールトリアクリレートの無水フタル酸変性物とペンタエリスリトールテトラアクリレートを70:30(質量比)で含有する混合物a-11を得た。
a-12:以下のエチレン性不飽和化合物の混合物[(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物と(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物との混合物]
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(水酸基価100mgKOH/g)561質量部に、無水コハク酸100質量部、トリエチルアミン2.5質量部、及びハイドロキノン0.25質量部の存在下に100℃で5時間反応させ、下記に示すペンタエリスリトールトリアクリレートの無水コハク酸変性物とペンタエリスリトールテトラアクリレートを60:40(質量比)で含有する混合物a-12を得た。
a-13:以下のエチレン性不飽和化合物の混合物[(A1)酸基を有するエチレン性不飽和化合物と(A2)酸基を有さないエチレン性不飽和化合物との混合物]
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(水酸基価51mgKOH/g)1,000質量部に、無水コハク酸49質量部、トリエチルアミン2.5質量部、及びハイドロキノン0.25質量部の存在下に100℃で5時間反応させ、下記に示すジペンタエリスリトールペンタアクリレートの無水コハク酸変性物とジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを25:25:50(質量比)で含有する混合物a-13を得た。
a-14:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE―4A)(共栄社化学社製)
b-1:2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(保土谷化学工業社製)
c-4:以下のエチレン性不飽和基含有樹脂(エポキシアクリレート樹脂)
下記式で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量186g/eq、式中のnが1~20のものの混合物)100質量部、アクリル酸40質量部、p-メトキシフェノール0.06質量部、トリフェニルホスフィン2.4質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート126質量部を反応容器に仕込み、酸価が5mgKOH/g以下になるまで95℃で撹拌した。次いで、上記反応により得られた反応液80質量部にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3質量部を加え、無水コハク酸3質量部を添加し、95℃で3時間反応させ、固形分酸価40mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が8,000のアルカリ可溶性樹脂(c-4)溶液を得た。
d-1:メガファックRS-72-K(DIC社製、フッ素系、エチレン性二重結合を有するオリゴマー)
e-1:2-メルカプトベンゾイミダゾール(東京化成社製)
e-2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)(淀化学社製)
f-1:TINUVIN384-2(BASF社製、紫外線吸収剤)
g-1:KAYAMER PM-21(日本化薬社製)
[II] 硬化物及び隔壁の形成、並びにそれらの評価
以下に各感光性樹脂組成物の性能評価の方法を説明する。
(接触角測定用基板の作製)
表面にITO膜を形成したガラス基板の該ITO膜上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.5μmの厚みになるように各隔壁形成用感光性樹脂組成物を塗布した基板を、隔壁形成用感光性樹脂組成物ごとに10枚準備した。その後100℃で2分間ホットプレート上で加熱乾燥し、得られた塗膜をマスクを使用せずに、基板ごとに露光量を50~500mJ/cm2の範囲で50mJ/cm2おきに変えて露光した。この時の波長365nmにおける強度は40mW/cm2であった。次いで24℃の2.38質量%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で60秒間スプレー現像した後、純水で10秒間洗浄した。この基板を、オーブン中230℃で30分間加熱硬化させ、硬化物を形成した接触角測定用基板が得られた。
(接触角の評価)
組成物の感度により硬化性が異なるため、撥液性が生じる露光量は組成により異なる。ここで撥液性が生じる露光量とは、得られる硬化物の接触角が10度以上になる露光量のことを表す。前述の接触角測定用基板を用いてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角を測定し、接触角が10度以上である基板を特定した。それらの基板の作製時の露光量のうち最小値を最小露光量として表2に記載した。なお、接触角は、協和界面科学株式会社製Drop Master 500接触角測定装置により、23℃、湿度50%の条件下で測定した。
(隔壁の作製)
表面にITO膜を形成したガラス基板の該ITO膜上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.5μmの厚みになるように各隔壁形成用感光性樹脂組成物を塗布した。その後100℃で2分間ホットプレート上で加熱乾燥した。得られた塗膜に対してフォトマスクを用いて露光を行った。露光量は撥液性が生じる最小露光量で、露光ギャップは16μmにした。フォトマスクは格子状の開口部を有するマスク(80μm×280μmの被覆部を40μm間隔で複数有するマスク)を使用した。次いで、接触角測定用基板作製と同様に、TMAH水溶液で現像を行った後、加熱硬化を行い、格子状の隔壁が得られた。
(インクジェット塗布適性評価)
前述の格子状の隔壁を有する基板において、格子状の隔壁で囲われた発光部(画素部)に対して、富士フィルム社製DMP-2831にてインクジェット塗布を行った。インクとして、溶剤(安息香酸イソアミル)を単独で使用し、1画素部あたり、40pLにて塗布して濡れ広がり性の評価をおこなった。画素部内全域に濡れ広がるほど、隔壁作製時の残渣等が少なく、現像性が良好であることを示す。
〇:インクが画素部内全域に広がった。
×:インクが広がらない部分が画素部内に一部生じた。
(ガス量測定用基板の作製)
表面にITO膜を形成したガラス基板の該ITO膜上にスピナーを用いて、各隔壁形成用感光性樹脂組成物を加熱硬化後に1.5μmの厚みになるように塗布した。その後100℃で2分間ホットプレート上で加熱乾燥し、得られた塗膜をマスクを使用せずに、前述の撥液性が生じる最小露光量で露光した。この時の波長365nmにおける強度は40mW/cm2であった。次いで、接触角測定用基板作製と同様に、TMAH水溶液で現像を行った後、オーブン中230℃で30分間加熱硬化を行い、硬化物を形成したガス量測定用基板が得られた。
(ガス量の測定)
作製したガス量測定用基板(40mm×8mm、4枚)を加熱炉内で230℃、20分間加熱した際のアウトガス量をGC/MS(Agilent Technologies社製、商品名「5973N」)にて分析し、検出されたピーク全成分の面積の総和を計算した。次に、検出されたピーク面積の総和より検量線を用いてトルエン量に換算し、測定した基板面積で除し、単位面積あたりのトルエン換算のアウトガス量(ng/cm2)を算出した。なお検量線は、濃度既知のトルエンを用いてGC/MSを測定し、トルエン量と検出されるガスのピーク面積値をプロットして、検量線を作成した。
表2より、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を特定の比率で含有する各実験例の感光性樹脂組成物から得られた隔壁は、インクジェット塗布適性が良好であり、かつ、アウトガス量が低かった。これは、溶解性に優れる酸基を有するエチレン性不飽和化合物を用いることで、画素部の残渣発生が抑制されてインクジェット特性が向上すると共に、その配合量を特定量以下とすることで酸基由来のアウトガス発生が抑制できたためであると考えられる。
一方、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を多量に含む比較実験例1の感光性樹脂組成物から得られた隔壁は、インクジェット塗布適性が良好であるものの、アウトガス量が多く、これは酸基由来のアウトガス量が多かったからであると考えられる。また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含まない比較実験例2の感光性樹脂組成物から得られた隔壁はインクジェット塗布適性が十分ではなく、これは画素部に残渣が発生したからであると考えられる。
なお、インクジェット塗布適性に関して、インクが画素部内全域に広がるか否かは、残渣由来の撥液性が画素部内に生じているかどうかに起因する。そのため、安息香酸イソアミル以外の溶剤を用いた場合でも、上記の実験例・比較実験例と同様の結果が得られると考えられる。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は2016年9月5日付で出願された日本特許出願(特願2016-172875)及び2017年2月17日付で出願された日本特許出願(特願2017-028181)に基づいており、その全体が引用により援用される。