以下、本発明の光学非破壊検査装置及び光学非破壊検査方法の第1~第7の実施の形態を、図面を用いて順に説明する。以下に説明する第1~第7の実施の形態では、図1に示すように、IC等の電子部品における電極92(第2部材に相当)にワイヤ91(アルミワイヤ等であり、第1部材に相当)を接合した例について説明する。第1~第7の実施の形態では、第1部材に設定して計測点に加熱用レーザを照射している。そして、計測点から取得される計測点情報、あるいは、前記計測点情報及び加熱用レーザに関する加熱用レーザ情報、に基づいて、第1部材と第2部材との接合界面における接合部の面積である接合部面積を求める。この場合の「接合界面における接合部」とは、図3に示すように、第1部材(ワイヤ91)と第2部材(電極92)とが接合されている面状の領域である接合部96を指す。
なお、加熱用レーザに関する情報とは、第1の実施の形態(図5参照)において、計測点SPに照射される加熱用レーザの強度であって時間の経過に対する加熱用レーザの強度を含む。また計測点SPから取得される計測点情報とは、第1の実施の形態(図5参照)または第2の実施の形態(図20参照)または第4の実施の形態(図30参照)において、計測点SPから放射された赤外線の強度であって時間の経過に対する赤外線の強度を含む。また、第3の実施の形態(図29参照)において、計測点SPから取得される計測点情報とは、計測点SPから放射された赤外線の強度であって時間の経過に対する赤外線の強度と、計測点SPにて反射された加熱用レーザの強度であって時間の経過に対する加熱用レーザの強度と、を含む。
また、以降の各図において、X軸、Y軸、Z軸が示されている場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Z軸は鉛直上方に向かう方向を示しており、X軸とY軸は水平方向を示している。
●[測定対象物の例(図1~図3)]
図1~図3を用いて測定対象物90の例について説明する。図1は、基板98上に設けた銅箔等の各電極92に、径(幅)が数10[μm]~数100[μm]程度のアルミニウム等のワイヤ91の一方端をワイヤボンディングにて接合し、基板98上のベース93上に接着剤95等にて固定した半導体チップ94の各端子に、ワイヤ91の他方端をワイヤボンディングにて接合した状態の斜視図を示している。また図2は、図1をII方向から見た図であり、図3は図2におけるAA部の拡大図である。なお、ワイヤ91は第1部材に相当し、電極92は第2部材に相当している。
電極92にワイヤ91が適切に接合されているか否かを判定するには、接合部96(図3参照)の面積である接合部面積(ワイヤ91と電極92とが接合されている面積)が許容範囲内であるか否かを判定することで、接合状態(内部の状態)の良否を判定すればよい。そこで、図3に示すように、接合部の近傍のワイヤ91の表面に計測点SPを設定し、計測点SPに加熱用レーザを照射して加熱する。すると、計測点SPの温度は徐々に上昇し、計測点SPからワイヤ91内及び接合部96を経由して電極92へと熱が伝播される。また計測点SPからは、上昇した温度に応じた赤外線が放射される。また、以降に説明する第1~第4の実施の形態では、図1~図3に示す計測対象物90における電極92とワイヤ91との接合部の接合部面積を求める例を説明する。
●[第1の実施の形態の光学非破壊検査装置1の外観(図4)と全体構成(図5)]
図4は、第1の実施の形態の光学非破壊検査装置1の外観の斜視図を示しており、図5は、図4に示す光学非破壊検査装置1の全体構成の例を示している。第1の実施の形態の光学非破壊検査装置1は、レーザ光源(この場合、半導体レーザ光源21)から出射されるレーザ光そのものの強度を正弦波状に変化させて計測点に照射し、計測点に照射されて正弦波状に変化する加熱用レーザの強度と、計測点から放射されて正弦波状に変化する赤外線の強度と、の位相差に基づいて、計測対象物の接合部面積を求める。そして判定装置70にて、求めた接合部面積が許容範囲内であるか否かを判定して接合状態の良否を判定する。
図4及び図5に示すように、第1の実施の形態の光学非破壊検査装置1は、基台78、支持部71、レーザヘッド部73、X軸方向スライドテーブル75、X軸方向移動手段75X、Y軸方向スライドテーブル76、Y軸方向移動手段76Y、Z軸方向支持体77、Z軸方向移動手段77Z、位相差検出装置60、判定装置70等にて構成されている。そしてX軸スライドテーブル75には、計測対象物(この場合、図1の例に示した計測対象物90)が固定されている。
図4及び図5に示すように、基台78には、Z軸方向支持体77が固定されており、Z軸方向支持体77には、Z軸方向移動手段77Z(エンコーダを備えた電動モータ等)が設けられているとともにY軸方向スライドテーブル76が取り付けられている。Z軸方向移動手段77Zは、判定装置70からの制御信号に基づいて、Z軸方向支持体77に対するY軸方向スライドテーブル76のZ軸方向の位置を移動させるとともに、移動量に応じた移動量検出信号を判定装置70に出力する。
またY軸方向スライドテーブル76には、Y軸方向移動手段76Y(エンコーダを備えた電動モータ等)が設けられているとともにX軸方向スライドテーブル75が取り付けられている。Y軸方向移動手段76Yは、判定装置70からの制御信号に基づいて、Z軸方向支持体77に対するY軸方向スライドテーブル76のY軸方向の位置を移動させるとともに、移動量に応じた移動量検出信号を判定装置70に出力する。
またX軸方向スライドテーブル75には、X軸方向移動手段75X(エンコーダを備えた電動モータ等)が設けられている。X軸方向移動手段75Xは、判定装置70からの制御信号に基づいて、Y軸方向スライドテーブル76に対するX軸方向スライドテーブル75のX軸方向の位置を移動させるとともに、移動量に応じた移動量検出信号を判定装置70に出力する。以上に説明したように、判定装置70は、X軸方向移動手段75X、Y軸方向移動手段76Y、Z軸方向移動手段77Zを用いて、基台78に対する計測対象物90の位置を、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能である。
図4に示すように、基台78には支持部71が固定されており、支持部71はレーザヘッド部73を保持している。またレーザヘッド部73は、レーザ出力装置27、集光手段10(図5の例では、反射型対物レンズ)、レーザ強度検出手段41、赤外線強度検出手段31等を有している。
レーザ出力装置27は、例えば半導体レーザ光源21と、コリメートレンズ22と、変調信号出力手段25と、を有している。変調信号出力手段25は、例えばオシレータであり、判定装置70からの制御信号に基づいて、電圧が所定周波数かつ所定振幅で正弦波状に変化する変調信号を発生させる。半導体レーザ光源21は、強度を調整するための強度調整用入力を備えており、この強度調整用入力には、変調信号出力手段25から変調信号が入力される。そして半導体レーザ光源21は、変調信号出力手段25からの変調信号に基づいて、強度が正弦波状に変化する加熱用レーザLaを出射する。半導体レーザ光源21から出射された加熱用レーザLaは、コリメートレンズ22にて平行光に変換されて加熱レーザ選択反射手段23に達する。なお出射された加熱用レーザが平行光である場合は、コリメートレンズ22を省略することができる。従って、計測点SPに集光される加熱用レーザLaの強度は正弦波状に変化し、その周波数は変調信号の周波数に同期する。なお、加熱用レーザの出力は、計測対象物90を破壊することなく加熱できる出力に調整されている。
また、レーザ出力装置27は、加熱用レーザを出射する前に、ワイヤ91(第1部材)を破壊することなく熱歪を発生させるように、一定の出力強度とされた熱歪発生強度と照射時間が調整された予備加熱レーザを照射する制御信号が判定装置70から入力されると、強度:熱歪発生強度、時間:照射時間、とされた予備加熱レーザを出力する。なお、予備加熱レーザの波長は、加熱用レーザの波長と同じである。
集光手段10は、自身の光軸に沿って一方の側から(図5の例では上方から)入射された平行光を、焦点位置として第1部材91の表面に設定した計測点SPに向けて集光して他方の側から(図5の例では下方から)出射する。また集光手段10は、(焦点位置である)計測点SPから放射及び反射されて他方の側から入射された光を、自身の光軸に沿った平行光である第1測定光L11に変換して一方の側から出射する。なお集光手段10は、光を透過させて屈折する集光レンズで構成することも可能であるが、異なる複数の波長の光を扱うので、色収差が発生する集光レンズではあまり好ましくない。そこで、(非球面)反射ミラー10A、10Bにて集光手段を構成することで、色収差の発生を排除し、広い波長帯に対応させている。なお集光手段10は、対物レンズが好ましい。
レーザ出力装置27から出射される加熱用レーザLaの光軸と、集光手段10の光軸と、が交差する位置には、加熱レーザ選択反射手段23が配置されている。例えば加熱レーザ選択反射手段23は、加熱用レーザLaの波長の光を反射し、加熱用レーザの波長以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーである。なお図5の例では、加熱レーザ選択反射手段23は、加熱用レーザLaの波長の光を、数[%]程度(例えば2%程度)透過する。そして加熱用レーザLaが透過した先には、レーザ強度検出手段41が配置されている。コリメートレンズ22と加熱レーザ選択反射手段23にて加熱用レーザ導光手段が構成されており、加熱用レーザ導光手段は、半導体レーザ光源21から出射された加熱用レーザLaを、平行光に変換して集光手段10の一方の側へと導く。
レーザ強度検出手段41は、例えば加熱用レーザの波長の光のエネルギー(強度)を検出可能なフォトセンサである。加熱レーザ選択反射手段23を透過した加熱用レーザL4(正弦波状に強度が変化する加熱用レーザ)は、集光レンズ41Lにて集光されてレーザ強度検出手段41に入力される。そしてレーザ強度検出手段41から出力されるレーザ強度検出信号は、例えばセンサアンプ41Aにて増幅されて位相差検出装置60に入力される。
集光手段10にて平行光に変換された第1測定光L11(計測点SPにて反射した照射光と計測点SPから放射された赤外線を含む測定光)には、計測点SPから放射された所定波長の赤外線が含まれている。第1測定光L11の先には、赤外線強度検出手段31が配置されている。
赤外線強度検出手段31は、例えば所定波長の赤外線のエネルギー(強度)を検出可能な赤外線センサである。第1測定光L11に含まれている所定波長の赤外線(正弦波状に強度が変化する赤外線)は、集光レンズ31Lにて集光されて赤外線強度検出手段31に入力される。そして赤外線強度検出手段31から出力される赤外線強度検出信号は、例えばセンサアンプ31Aにて増幅されて位相差検出装置60に入力される。加熱レーザ選択反射手段23と集光レンズ31Lにて赤外線導光手段が構成されており、赤外線導光手段は、計測点SPから放射されて集光手段10の一方の側から出射された平行光の中から所定波長の赤外線を、赤外線強度検出手段31へと導く。
センサアンプ31Aは、例えば電圧増幅回路であり、入力された赤外線強度検出信号の振幅(電圧レベル)を増幅して出力する。なお、センサアンプ31Aは省略されていてもよい。センサアンプ41Aは、例えば電圧増幅回路であり、入力されたレーザ強度検出信号の振幅(電圧レベル)を増幅して出力する。なお、センサアンプ41Aは省略されていてもよい。
位相差検出装置60は、例えばロックインアンプであり、レーザ強度検出手段41から出力された正弦波状の検出信号(レーザ強度検出信号)と、赤外線強度検出手段31から出力された正弦波状の検出信号(赤外線強度検出信号)と、が入力される。そして位相差検出装置60は、正弦波状のレーザ強度検出信号と正弦波状の赤外線強度検出信号との位相差を測定し、測定した位相差に関する情報を判定装置70に出力する。なお、レーザ強度検出手段41から出力されたレーザ強度検出信号は、計測点SPに照射される加熱用レーザLaである照射光の強度であって正弦波状に変化する照射光の強度に応じた信号である。また、赤外線強度検出信号は、計測点SPから放射された赤外線の強度であって正弦波状に変化する赤外線の強度に応じた信号である。そして上記の位相差には、接合界面における接合部の面積に関する情報が含まれている。また位相差検出装置60は、例えば出力経路60Aからレーザ強度検出信号や赤外線強度検出信号等のアナログ信号を出力し、出力経路60Dから位相差の値(時間や角度等、位相差に関する情報)や、赤外線強度検出信号のピーク電圧等を含む情報であるデジタル信号を出力する。
判定装置70は、例えばパーソナルコンピュータであり、レーザ出力装置27に制御信号を出力し、位相差検出装置60から位相差に関する情報等を取り込む。そして判定装置70は、後述するように、取り込んだ位相差に関する情報に基づいた位相差と、記憶している(計測対象物に対する)位相差・接合部面積特性と、に基づいて、接合界面における接合部の面積である接合部面積を求める。なお、位相差・接合部面積特性の詳細、及び接合部面積を求める手順については後述する。
なお、例えば工場等の施設に光学非破壊検査装置1を設ける場合、施設内の通信回線80(例えば施設内LAN)に、判定装置70を接続して、(計測対象物に対する)判定情報(図15に示す判定情報H1を参照)を、通信回線80に接続された配信装置81(配信サーバ)から配信すると便利である。光学非破壊検査装置1の判定装置70は、通信回線80を介して、(位相差・接合部面積特性を含む)判定情報を受信して記憶する。特に、施設内に複数の光学非破壊検査装置1を設けた場合、1台ずつ判定情報を記憶させる場合と比較して、手間無く容易に複数の光学非破壊検査装置1に、判定情報を受信させて記憶させることができるので、便利である。
●[接合面における領域の種類(図6)と予備加熱の効果(図7)]
図4及び図5を用いて説明した第1の実施の形態の光学非破壊検査装置1を用いて、計測対象物90の計測点SPに正弦波状に強度が変化する加熱用レーザを照射して、同一のワイヤ91と電極92との接合部面積を複数回求めると、求めた接合部面積のバラつきが比較的大きくなる場合がある。例えば、同一のワイヤ91と電極92において、1回目の計測で求めた接合部面積に対して、2回目の計測で求めた接合部面積の方が小さくなる場合がある。この接合部面積のバラつきは、下記の[領域B]が、接触状態となったり離間状態となったりすることで発生していると考えられる。
図6は、図3をさらに拡大した図である。ワイヤ91と電極92とが対向している接合面には、以下の3つの[領域A]、[領域B]、[領域C]がある。
[領域A]ワイヤ91(第1部材に相当)と電極92(第2部材に相当)が、常に接触した状態(充分に接合された状態)を維持している[接触状態で安定している領域]。
[領域B]ワイヤ91と電極92が接合されておらず、接触したり離間したりする状態であり[接触状態が不安定な領域]。
[領域C]ワイヤ91と電極92が接合されておらず、常に非接触の状態(離間した状態)を維持している[非接触状態(離間状態)で安定している領域]。
接合部面積のバラつきを抑制するためには、上記の[領域B](接触状態が不安定な領域)を排除する必要がある。しかし、接合の工程を終えた後、[領域B]を[領域A]に変換することは非常に困難であるので、[領域B]を[領域C]に変換することが好ましい。そこで、接合部面積の計測を行う前に、ワイヤ91(第1部材)に物理的な歪(反り)を発生させて、[領域B]を[領域C]へと変換する。本実施の形態の光学非破壊検査装置は、加熱用レーザを用いてワイヤ91の計測点を加熱しているので、物理的な歪として「熱歪」を発生させることが好ましい。以上より、図7に示すように、接合部面積の計測を行う前に、ワイヤ91(第1部材)を破壊することなくワイヤ91が熱歪(反り)を生じて[領域B]が[領域C]へと適切に変換されるように、出力と照射時間が調整された「予備加熱レーザ」を、ワイヤ91に照射する。この予備加熱レーザを照射することで、ワイヤ91に熱歪(反り)を発生させた後、接合部面積を求めることで、接合部面積のバラつきを抑制することができる。なお、予備加熱レーザの出力と照射時間は、第1部材と第2部材の材質、形状、サイズ等に応じて適切な値が変化するので、製品品番毎に、種々の実験等によって適切な値が決定される。なお「熱歪を発生させる」ことは、温度が低下しても復元されない変形を加える、ことである。
●[予備加熱の照射例(図8~図13)]
次に、図8~図13を用いて、予備加熱レーザを、どこに、どのように照射するか、という例(下記の[パターン1]~[パターン3])について説明する。なお、予備加熱レーザは、加熱用レーザの出力と照射時間を調整することで比較的容易に実現できるので、新たなレーザ出力装置を追加する必要は無い。
[パターン1]である図8及び図9に示す例は、出力と照射時間が調整された予備加熱レーザLpを、計測点SPに照射する例である。なお図9は、図8におけるIX-IX断面図を示している。ワイヤ91に照射された予備加熱レーザLpの径は、例えば約200[μm]であり、接合部面積を求める際の加熱用レーザがワイヤ91の計測点SPに照射された場合の径とほぼ同等である。この場合、接合部面積を求める際に照射する計測点SPに予備加熱レーザを照射するので、集光手段10(図5参照)の位置に対する計測対象物の位置を変更する必要がない。図8及び図9に示す例では、計測対象物の位置を変更することなく、予備加熱レーザの照射から接合部面積の計測を行うことができるので、短時間で効率よく作業を行うことができる。
[パターン2]である図10及び図11に示す例は、出力と照射時間が調整された予備加熱レーザLpを、計測点SPを含む予備加熱範囲PAに照射する例である。なお図11は、図10におけるXI-XI断面図である。ワイヤ91に照射された予備加熱レーザLpの径は、例えば約300~400[μm]であり、接合部面積を求める際の加熱用レーザがワイヤ91の計測点SPに照射された場合の径よりも大きい。この場合、計測点SPよりも範囲が広い予備加熱範囲PAに予備加熱レーザを照射するために、図4及び図5に示すZ軸方向移動手段77Zを用いて、計測対象物を集光手段10(図5参照)に少し近づける(間隔を焦点距離よりも短くする)、あるいは計測対象物を集光手段10(図5参照)から少し遠ざける(間隔を焦点距離よりも長くする)。図10及び図11に示す例では、計測点を含むより広い範囲の予備加熱範囲PAを加熱することで、より広い範囲に熱歪を発生させることができる。
[パターン3]である図12及び図13に示す例は、出力と照射時間が調整された予備加熱レーザLpを、計測点SPを含む予備加熱範囲PA内に予め設定した予備加熱点P1~P4に照射する例である。図12に示す例では、4点の予備加熱点を設定した例を示しているが、予備加熱点は単数でも複数でもよい。なお図13は、図12におけるXIII-XIII断面図である。ワイヤ91に照射された予備加熱レーザLpの径は、例えば約200[μm]であり、接合部面積を求める際の加熱用レーザがワイヤ91の計測点SPに照射された場合の径とほぼ同等である。この場合、予備加熱範囲PA内に設定した予備加熱点P1~P4のそれぞれに予備加熱レーザを照射するために、図4及び図5に示すX軸方向移動手段75X及びY軸方向移動手段76Yを用いて、計測対象物を集光手段10に対して、X軸方向及びY軸方向に移動させる。図12及び図13に示す例では、予備加熱の時間が長くなるが、ワイヤ91の種々の個所に予備加熱レーザを照射するので、熱歪をより発生させやすい。
以下、第1~第4の実施の形態では、図8及び図9に示す[パターン1]の予備加熱を行う場合で説明する。
●[判定装置70及び位相差検出装置60の処理手順(図14、図15)]
次に図14に示すフローチャートを用いて、判定装置70及び位相差検出装置60の処理手順の例について説明する。例えば作業者が判定装置70を起動すると、位相差検出装置60が連動して起動され、判定装置70はステップS15へと処理を進め、位相差検出装置60はステップS140へと処理を進める。
まず、判定装置70におけるステップS15~ステップS35の処理手順について説明する。ステップS15にて判定装置70は、受信データ(通信回線80を介して受信するデータ)があるか否かを判定し、受信データがある場合(Yes)はステップS20に進み、受信データが無い場合(No)はステップS30に進む。
ステップS20に進んだ場合、判定装置70は、通信回線80を介してデータを受信し、ステップS25に進む。そしてステップS25にて判定装置70は、受信が終了したか否かを判定し、受信が終了した場合(Yes)はステップS30に進み、受信が終了していない場合(No)はステップS20に戻る。
判定装置70が受信するデータは、図5に示す配信装置81から配信される位相差・接合部面積特性を含む判定情報であり、図17に位相差・接合部面積特性の例を示し、図15に判定情報の例を示す。図15の例に示すように、判定情報H1には、製品品番(計測対象物に相当)、予備加熱パターン、予備加熱レーザ出力、予備加熱時間、待ち時間、加熱用レーザ出力、加熱用レーザ周波数、計測時間、位相差・接合部面積特性(図17の例に示すグラフやマップ、あるいは回帰式f(δ)(図17の例のグラフから求めた回帰式))、最小許容面積、最大許容面積、等が含まれている。例えば配信装置81は、所定のタイミング(施設内で検査する計測対象物の製品品番が変わる毎、位相差・接合部面積特性の内容が変更される毎、予備加熱に関するデータが変更される毎、等)で判定情報の配信を行い、判定装置70は、通信回線80を介して配信装置81から判定情報を受信し、受信した判定情報を記憶する。
計測対象物は、第1部材の材質、第1部材のサイズ、第2部材の材質、第2部材のサイズ、第1部材と第2部材との間の接合部材の有無、等に応じて複数あるので、「製品品番」で計測対象物が区別されている。そして当該「製品品番」に応じて、予備加熱パターン、予備加熱レーザ出力、予備加熱時間、待ち時間、加熱用レーザ出力、加熱用レーザ周波数、計測時間、位相差・接合部面積特性(グラフやマップ、あるいは回帰式f(δ))、最小許容面積、最大許容面積、等が対応付けられている。例えば、製品品番「A」では、第1部材が径400[μm]のアルミニウムのワイヤ、第2部材が銅箔であり、予備加熱パターンが「パターン1」(図8及び図9参照)、予備加熱レーザ出力A1が220[W]、予備加熱時間A2が100[ms]、待ち時間A3が120[ms]、加熱用レーザ出力A4が180[W]、加熱用レーザ周波数A5が71.4[Hz]、計測時間A6が300[ms]、位相差・接合部面積特性が特性A7、最小許容面積が面積A8、最大許容面積が面積A9とされている。
なお、最小許容面積は、本フローチャートにて最終的に算出された接合部面積において、正常と判定するべき面積の最小値を示している。また最大許容面積は、本フローチャートにて最終的に算出された接合部面積において、正常と判定するべき面積の最大値を示している。
ステップS30に進んだ場合、判定装置70は、作業者からの計測指示の有無を判定し、計測指示がある場合(Yes)はステップS31Aに進み、計測指示が無い場合(No)はステップS30に戻る。なお、計測指示には「製品品番」の入力が含まれており、作業者は、キーボードやバーコードリーダ(計測対象物に製品品番に対応するバーコードが付与されている場合)等から製品品番を入力する。
ステップS31Aに進んだ場合、判定装置70は、判定情報H1(図15参照)を用いて、製品品番に対応する予備加熱パターンを読み出し、予備加熱パターンに応じて、X軸方向移動手段、Y軸方向移動手段、Z軸方向移動手段を制御して、集光手段10に対する計測対象物の位置を調整し、ステップS31Bに進む。
ステップS31Bにて判定装置70は、判定情報H1(図15参照)を用いて、製品品番に対応する予備加熱レーザ出力(一定の出力強度とされた熱歪発生強度に相当)と、予備加熱時間(照射時間に相当)とを読み出し、出力が「予備加熱レーザ出力」とされたレーザを、レーザ出力装置から出射させ、ステップS32に進む。
ステップS32にて判定装置70は、予備加熱レーザの照射を開始してから予備加熱時間が経過したか否かを判定し、予備加熱時間を経過した場合(Yes)はステップS33に進み、予備加熱時間を経過していない場合(No)はステップS31Bに戻る。
ステップS33に進んだ場合、判定装置70は、予備加熱レーザの照射を停止し、X軸方向移動手段、Y軸方向移動手段、Z軸方向移動手段を制御して計測対象物の位置を戻し(加熱用レーザが計測点に照射される位置に戻し)、ステップS34に進む。上記のステップS31A~S33は、加熱用レーザ出射ステップの前に、熱歪発生強度と照射時間が調整された予備加熱レーザを、計測点、あるいは予備加熱範囲、あるいは予備加熱範囲内に設定した予備加熱点、に照射して第1部材に熱歪を発生させる予備加熱ステップに相当している。この予備加熱ステップにて、上述した[領域B](接触状態が不安定な領域)を、[領域C](非接触状態で安定している領域)へと変換する。
ステップS34にて判定装置70は、判定情報H1(図15参照)を用いて、製品品番に対応する待ち時間を読み出し、予備加熱レーザを停止してから待ち時間が経過したか否かを判定し、待ち時間が経過した場合(Yes)はステップS35に進み、待ち時間を経過していない場合(No)はステップS34に戻る。なお、予備加熱ステップによる予備加熱レーザの照射状態を、図16に示す。図16において予備加熱レーザSGpは、時間t1から時間t2までの予備加熱時間Tawの間、熱歪発生強度に相当する出力Wapとされた予備加熱レーザを照射した例を示している。この予備加熱レーザによって、信号SGqに示すように、計測点の温度はTapまで上昇する。そして時間t2から時間t3までの待ち時間Tbwの間、レーザの照射は停止され、計測点の温度は徐々に下降する。なお、図1の例に示す電子部品のように、接合された第1部材と第2部材であって計測するべき個所が複数個所である場合、待ち時間Tbwを設けることなく、計測するべき各個所に対して順番に予備加熱レーザを照射し、その後、順番に加熱用レーザを照射して接合状態を判定すると、待ち時間を省略した分、時間を短縮化することができる。
ステップS35に進んだ場合、判定装置70は、判定情報H1(図15参照)を用いて、製品品番に対応する加熱用レーザ出力、加熱用レーザ周波数を読み出し、読み出した加熱用レーザ出力、及び加熱用レーザ周波数となるように、レーザ出力装置27に向けて制御信号を出力する。レーザ出力装置27は、入力された制御信号に基づいて、計測点SPに照射された加熱用レーザの強度が(加熱用レーザ周波数の)正弦波状に変化するように加熱用レーザを出射する。そして判定装置70は、ステップS35の処理を終えると、ステップS60にて、位相差検出装置60からの位相差に関する情報の入力を待つ。このステップS35の処理は、計測点SPにおける強度が正弦波状に変化するように加熱用レーザを出射するレーザ出射ステップ(加熱用レーザを計測点に向けて出射して計測点を加熱するレーザ出射ステップ)に相当する。
次に、位相差検出装置60におけるステップS140~ステップS155の処理手順について説明する。ステップS140にて、位相差検出装置60は、レーザ強度検出手段41からのレーザ強度検出信号の入力の有無(照射光(図5参照)である加熱用レーザの有無)を判定し、レーザ強度検出信号の入力が有る場合(Yes)はステップS145に進み、レーザ強度検出信号の入力が無い場合(No)はステップS140に戻る。
ステップS145に進んだ場合、位相差検出装置60は、赤外線強度検出手段31からの赤外線強度検出信号に基づいた温度応答の有無を判定し、温度応答が有る場合(Yes)はステップS150に進み、温度応答が無い場合(No)はステップS145に戻る。なお、所定波長の赤外線の入力の有無で判定してもよい。
ステップS150に進んだ場合、位相差検出装置60は、レーザ強度検出手段41からのレーザ強度検出信号(図16の例に示す信号SGaに対応する信号)を取り込み、強度が正弦波状に変化する照射光(図5参照)を計測する。また位相差検出装置60は、赤外線強度検出手段31からの赤外線強度検出信号(図16の例に示す信号SGbに対応する信号)を取り込み、強度が正弦波状に変化する赤外線を計測する。そして位相差検出装置60は、図16の例に示すように、信号SGaに対応するレーザ強度検出信号と、信号SGbに対応する赤外線強度検出信号と、の位相差δa(または位相差δb)を計測してステップS155に進む。
このステップS150におけるレーザ強度検出信号を取り込む処理、及び赤外線強度検出信号を取り込む処理は、計測点SPから放射される赤外線の強度を含む計測点情報及び計測点SPに照射される加熱用レーザの強度を含む加熱用レーザ情報を取得する情報取得ステップに相当している。より具体的には、計測点SPにおいて正弦波状に変化する加熱用レーザの強度に基づいてレーザ強度検出手段から出力される加熱用レーザ情報であるレーザ強度検出信号を、位相差検出装置にて取り込み、計測点SPから放射されて正弦波状に変化する赤外線の強度に基づいて赤外線強度検出手段から出力される計測点情報である赤外線強度検出信号を、位相差検出装置にて取り込む、情報取得ステップに相当している。
ステップS155にて位相差検出装置60は、計測した位相差δb(または位相差δa)を含む取得関連情報(位相差の時間または角度等を含む情報)を判定装置70に向けて出力し、ステップS140に戻る。ステップS150において位相差を計測する(求める)処理、及びステップS155にて位相差を判定装置に出力する処理は、接合状態判定ステップの一部に相当している。
次に、判定装置70におけるステップS60~ステップS80の処理手順について説明する。ステップS60にて判定装置70は、位相差検出装置60からの位相差に関する情報の入力の有無を判定し、位相差に関する情報の入力が有る場合(Yes)はステップS65に進み、位相差に関する情報の入力が無い場合(No)はステップS60に戻る。
ステップS65に進んだ場合、判定装置70は、取得関連情報(位相差に関する情報)を取り込み、レーザ出力装置27に制御信号を出力し、レーザ出力装置27からの加熱用レーザの出射を停止させてステップS70に進む。なお、判定装置70にて、判定情報(図15参照)を用いて、製品品番に対応する計測時間を読み出し、加熱用レーザの照射を開始してから計測時間を経過した場合に加熱用レーザの照射を停止するようにしてもよい。
ステップS70にて判定装置70は、取り込んだ取得関連情報(位相差に関する情報)に含まれている位相差と、自身あるいは外部の記憶装置に記憶している判定情報(図15参照)の「製品品番」に対応した位相差・接合部面積特性(位相差と接合部面積との相関関係を示す特性)と、に基づいて、接合部面積を求め、ステップS80に進む。なお、位相差・接合部面積特性の詳細、及び接合部面積の求め方の詳細については後述する。このように、判定装置70は、位相差と、位相差・接合部面積特性(後述するように、グラフやマップ、あるいは回帰式の少なくとも1つ)と、に基づいて、位相差を接合部面積に変換する変換手段(変換部)を有している。
ステップS80にて判定装置70は、ステップS70にて求めた接合部面積に応じて、第1部材と第2部材との接合状態が正常または異常であることを示す判定結果を出力(図18参照)して処理を終了する。例えば判定装置70は、求めた接合部面積が、判定情報(図15参照)における「製品品番」に対応した最小許容面積から最大許容面積までの所定範囲内である場合に正常と判定する。あるいは判定装置70は、求めた接合部面積が、最小許容面積以上である場合に正常と判定する。なおステップS80の処理は、求めた接合部面積が、予め設定された所定範囲内であるか否か、あるいは予め設定された所定面積以上であるか否か、を示す判定結果を出力する、判定結果出力ステップに相当する。このように、判定装置70は、求めた接合部面積が、予め設定された所定範囲内であるか否か、あるいは予め設定された所定面積以上であるか否か、を示す判定結果を出力する、出力手段(出力部)を有している。なお、ステップS65において取得関連情報を取り込む処理、及びステップS70、S80の処理は、計測点情報及び加熱用レーザ情報、に基づいた取得関連情報を用いて、接合界面における接合部の接合状態を判定する接合状態判定ステップに相当している。より具体的には、取得関連情報を取り込み、取得関連情報に含まれている位相差に基づいて、接合界面における接合部の接合状態を判定する接合状態判定ステップに相当している。なお、判定結果の出力の詳細については後述する。
●[位相差・接合部面積特性の作成方法と、接合部面積の求め方(図17)]
次に、位相差・接合部面積特性の作成方法の例について説明する。例えば、特定の製品品番(例えば製品品番:A)である計測対象物に対して、第1部材と第2部材との接合部面積の大きさのみが異なる複数のサンプルを用意する。そして、各サンプルを、図1に示す光学非破壊検査装置にかけて、位相差(δ)を計測する。なお、位相差の計測前、または位相差の計測後、各サンプルの接合部面積を測定する。そして、計測した位相差と、測定した接合部面積と、に基づいて、当該製品品番の計測対象物に対する位相差・接合部面積特性(図17参照)を作成する。このようにして、第1部材と第2部材との接合部面積の大きさのみが異なる複数のサンプルを用いて、図17の例に示すように、(製品品番:Aに対する)位相差・接合部面積特性を得ることができる。なお、複数のサンプルを用意して位相差・接合部面積特性を得る代わりに、複数のシミュレーションに基づいて、図17の例に示す位相差・接合部面積特性と同等の特性を得るようにしてもよい。なお、接合部面積が大きい場合は、熱が逃げやすいため、加熱時や減熱時のピークに達するまでの時間が早く、位相差が小さくなる傾向にある。接合部面積が小さい場合は、熱が逃げにくいため、加熱時や減熱時のピークに達するまでの時間が遅く、位相差が大きくなる傾向にある。
また、この(製品品番:Aに対する)位相差・接合部面積特性から、位相差(δ)に対する接合部面積(S)を導出する回帰式f(δ)を求めることもできる。なお、位相差・接合部面積特性は、図17に示すようなグラフ形式であってもよいし、種々の値の位相差に対する接合部面積を示すルックアップテーブルやマップの形式等であってもよい。そして判定装置(または記憶装置)には、上記の位相差・接合部面積特性を示すグラフ、マップ、回帰式、の少なくとも1つを含む判定情報が記憶されている。これにより、判定装置は、計測対象物に応じた位相差・接合部面積特性を用いて、位相差から接合部面積を求めることができる。この方法であれば、第1部材と第2部材とが溶接等で直接接合されている計測対象物の場合、第1部材と第2部材とがハンダ等の接合部材を挟んで接合されている計測対象物の場合、第1部材や第2部材が単一の物質でない場合、など、種々の計測対象物(種々の製品品番)に対して、より正確に、かつ容易に、接合部面積を求めることができる。なお、求めた接合部面積の良否判定については、例えば図18に示すように、最小許容面積と最大許容面積を設定して、求めた接合部面積が最小許容面積以上かつ最大許容面積以下である場合に正常と判定するようにしてもよいし、求めた接合部面積が最小許容面積以上である場合に正常と判定するようにしてもよい。あるいは、接合部面積に換算することなく、図17に示すように、最小許容面積A8に対応する位相差δ(A8)以下、かつ最大許容面積A9に対応する位相差δ(A9)以上の位相差である場合に正常、あるいは最小許容面積A8に対応する位相差δ(A8)以下の位相差である場合に正常、と判定するようにしてもよい。
●[判定結果の出力(図18)]
また図18に、判定装置70の表示手段(モニタ等)に、求めた接合部面積Sを含む判定結果情報70Gを表示した例を示す。図18中における最小許容面積は、判定装置70または記憶装置が記憶している判定情報と、ステップS30にて入力された製品品番にて特定された最小許容面積である。また図18中における最大許容面積は、判定装置70または記憶装置が記憶している判定情報と、ステップS30にて入力された製品品番にて特定された最大許容面積である。判定装置70は、算出した接合部面積Sが、最小許容面積以上かつ最大許容面積以下以下である場合、接合状態は「正常」であると判定し、最小許容面積よりも小さいまたは最大許容面積よりも大きい場合、接合状態は「異常」であると判定する。図10の例は、「正常」と判定した場合の例を示している。作業者は、判定結果情報70Gを見ることで、計測対象物の接合状態が、正常であるか異常であるかを、容易に知ることができる。
なお、主にデジタル値を扱うソフトウェアを用いた上記の例の他にも、種々の方法で判定結果を出力することができる。例えば、アナログ値を扱うハードウェアの電圧比較器を用いて、最小許容面積に相当する電圧と、求めた接合部面積に相当する電圧と、を入力し、「最小許容面積に相当する電圧」≦「求めた接合部面積に相当する電圧」である場合に、電圧比較器からON信号を出力させて正常ランプの点灯や、正常チャイム等の音声の出力をさせるようにしてもよい。このように、判定結果を出力する出力手段(出力部)は、ソフトウェア、ハードウェア、デジタル、アナログ等にかかわらず、種々の構成とすることができる。
●[第2の実施の形態の光学非破壊検査装置1Bの外観(図19)と全体構成(図20)]
図19は、第2の実施の形態の光学非破壊検査装置1Bの外観の斜視図を示しており、図20は、図19に示す光学非破壊検査装置1Bの全体構成の例を示している。第2の実施の形態の光学非破壊検査装置1Bは、レーザ光源(この場合、半導体レーザ光源21)から出射されるレーザ光の強度を、一定の強度である加熱強度として計測点に照射し、計測点から放射された赤外線の強度に基づいた温度上昇特性に基づいて、計測対象物の接合部面積を求める。そして判定装置70にて、求めた接合部面積が許容範囲内であるか否かを判定して接合状態の良否を判定する。第1の実施の形態では、正弦波状に強度が変化する加熱用レーザを計測点SPに照射して、正弦波状の加熱用レーザの強度と正弦波状の赤外線の強度との位相差から接合部面積を求めたが、第2の実施の形態では、加熱強度(一定強度)の加熱用レーザを計測点SPに照射して、計測点の温度上昇特性から接合部面積を求める点が異なる。ただし、接合部面積の計測を行う前に、予備加熱レーザを照射して、ワイヤ91(第1部材)に熱歪を発生させる点は同じである。以下では、第1の実施の形態との、構成上の相違点、処理手順の相違点、について主に説明する。
図19及び図20に示すように、第2の実施の形態の光学非破壊検査装置1Bは、第1の実施の形態(図4及び図5参照)の構成に対して、レーザヘッド部73Bから、レーザ強度検出手段41や変調信号出力手段25(図4及び図5参照)が省略され、赤外線強度検出手段32が追加されている。また、第2の実施の形態の光学非破壊検査装置1Bは、第1の実施の形態(図4及び図5参照)の構成に対して、位相差検出装置60(図4及び図5参照)が省略されている。
レーザ出力装置27は、例えば半導体レーザ光源21と、コリメートレンズ22とを有している。半導体レーザ光源21は、強度を調整するための強度調整用入力を備えており、この強度調整用入力には、判定装置70からの制御信号が入力される。そして半導体レーザ光源21は、判定装置70からの制御信号に基づいて、強度が加熱強度(一定の強度)に設定された加熱用レーザLaを出射する。半導体レーザ光源21から出射された加熱用レーザLaは、コリメートレンズ22にて平行光に変換されて加熱レーザ選択反射手段23Rに達する。なお出射された加熱用レーザが平行光である場合は、コリメートレンズ22を省略することができる。なお、加熱用レーザの出力は、計測対象物90を破壊することなく加熱できる出力に調整されている。例えば、加熱レーザ選択反射手段23Rは、加熱用レーザの波長の光を反射し、加熱用レーザの波長以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーである。コリメートレンズ22と加熱レーザ選択反射手段23Rにて加熱用レーザ導光手段が構成されており、加熱用レーザ導光手段は、半導体レーザ光源21から出射された加熱用レーザLaを、平行光に変換して集光手段10の一方の側へと導く。
また、レーザ出力装置27は、加熱用レーザを出射する前に、ワイヤ91(第1部材)を破壊することなく熱歪を発生させるように、一定の出力強度とされた熱歪発生強度と照射時間が調整された予備加熱レーザを照射する制御信号が判定装置70から入力されると、強度:熱歪発生強度、時間:照射時間、とされた予備加熱レーザを出力する。なお、予備加熱レーザの波長は、加熱用レーザの波長と同じである。
(第1)赤外線強度検出手段31は、第1赤外線選択反射手段23Aにて反射された所定波長の赤外線のエネルギー(強度)を検出可能な赤外線センサである。例えば、第1赤外線選択反射手段23Aは、第1波長λ1の波長を有する第1赤外線を反射し、第1波長λ1以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーであり、第1測定光L11の経路中に配置されている。第1測定光L11に含まれている第1波長λ1の赤外線は、第1赤外線選択反射手段23Aにて取り出され、集光レンズ31Lにて集光されて(第1)赤外線強度検出手段31に入力される。そして(第1)赤外線強度検出手段31から出力される(第1)赤外線強度検出信号は、例えばセンサアンプ31Aにて増幅されて判定装置70に入力される。加熱レーザ選択反射手段23と第1赤外線選択反射手段23Aと集光レンズ31Lにて(第1)赤外線導光手段が構成されており、(第1)赤外線導光手段は、計測点SPから放射されて集光手段10の一方の側から出射された平行光(第1測定光L11)の中から、第1波長λ1の赤外線を、(第1)赤外線強度検出手段31へと導く。センサアンプ31Aは、第1の実施の形態と同様であり、省略してもよい。
(第2)赤外線強度検出手段32は、第2赤外線選択反射手段23Bにて反射された所定波長の赤外線のエネルギー(強度)を検出可能な赤外線センサである。例えば、第2赤外線選択反射手段23Bは、第2波長λ2の波長を有する第2赤外線を反射し、第2波長λ2以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーであり、第1測定光L11の経路中に配置されている。第1測定光L11に含まれている第2波長λ2の赤外線は、第2赤外線選択反射手段23Bにて取り出され、集光レンズ32Lにて集光されて(第2)赤外線強度検出手段32に入力される。そして(第2)赤外線強度検出手段32から出力される(第2)赤外線強度検出信号は、例えばセンサアンプ32Aにて増幅されて判定装置70に入力される。加熱レーザ選択反射手段23と第2赤外線選択反射手段23Bと集光レンズ32Lにて(第2)赤外線導光手段が構成されており、(第2)赤外線導光手段は、計測点SPから放射されて集光手段10の一方の側から出射された平行光(第1測定光L11)の中から、第2波長λ2の赤外線を、(第2)赤外線強度検出手段32へと導く。センサアンプ32Aは、例えば電圧増幅回路であり、入力された(第2)赤外線強度検出信号の振幅(電圧レベル)を増幅して出力する。なお、センサアンプ32Aは省略されていてもよい。
●[判定装置70の処理手順(図21、図22)]
次に図21に示すフローチャートを用いて、判定装置70の処理手順の例について説明する。例えば作業者が判定装置70を起動すると、判定装置70はステップS15へと処理を進める。なお、図21に示すフォローチャートにおけるステップS15~ステップS35は、図14に示す第1の実施の形態のフローチャートのステップS15~ステップS35と同じであるので、ステップS15~ステップS35の説明については省略する。判定装置70は、ステップS30にて指示された「製品品番」に対応する「予備加熱パターン」と「予備加熱レーザ出力」と「予備加熱時間」を、図22に示す判定情報H2から読み出し、予備加熱を行う。そして判定装置70は、ステップS35の処理を実行すると、ステップS36に進む。なお、ステップS31Bにて出射される予備加熱レーザと、ステップS35にて出射される加熱用レーザの様子と、計測点SPの温度の状態は、図23の例に示すとおりである。予備加熱レーザSGpと、当該予備加熱レーザSGpによる計測点の温度の状態は、図16に示す第1の実施の形態と同じであり、第1部材(ワイヤ91)に、熱歪を発生させる。そして図23における時間t3以降の加熱用レーザの状態、及び時間t3以降の計測点の温度の状態が、図16に示す第1の実施の形態と相違している。
なおステップS35では、判定装置70は、判定情報H2(図22参照)を用いて、製品品番に対応する加熱用レーザ出力を読み出し、一定の出力強度である加熱強度とされた加熱用レーザとなるように、レーザ出力装置27に向けて制御信号を出力し、ステップS36に進む。このステップS35の処理は、レーザ出力装置から、計測点に向けて、一定の出力強度である加熱強度とされた加熱用レーザを出射する加熱用レーザ出射ステップに相当する。
ステップS36にて判定装置70は、所定時間経過したか否かを判定し、所定時間経過した場合(Yes)はステップS37に進み、所定時間経過していない場合(No)はステップS36に戻る。ここで「所定時間」は、計測点SPの温度を計測するサンプリング時間であり、例えば数[ms]~数10[ms]程度の時間に設定されている。
ステップS37に進んだ場合、判定装置70は、赤外線の強度を計測してステップS38に進む。具体的には、判定装置70は、(第1)赤外線強度検出手段31からの(第1)赤外線強度検出信号を取り込み、(第2)赤外線強度検出手段32からの(第2)赤外線強度検出信号を取り込む。ステップS37の処理は、計測点から放射された赤外線の強度に基づいて赤外線強度検出手段から出力される計測点情報である赤外線強度検出信号を判定装置に取り込む、情報取得ステップに相当している。
ステップS38にて判定装置70は、計測した赤外線の強度を温度に換算してステップS39に進む。例えば、図24に、放射率=100%の場合における(赤外線)波長と、赤外線エネルギー(強度)と、温度との関係を表す、波長・強度・温度特性の例を示す。図24は、計測点SPの放射率が100%であれば、例えば計測点の温度がM2[℃]の場合、(第1)赤外線強度検出手段31からの波長λ1の赤外線の強度は強度E1Cであり、(第2)赤外線強度検出手段32からの波長λ2の赤外線の強度は強度E2Cであることを示している。しかし実際には、計測対象物毎に放射率は異なっているが、放射率が異なっていても、温度がM2[℃]の場合、強度E1C/強度E2Cは一定となる。従って、図25に示す温度・2波長強度比特性を用いることで、波長λ1の赤外線強度/波長λ2の赤外線強度(2波長強度比)から、温度へと換算することができる。つまり、判定装置70は、(第1)赤外線強度検出信号に基づいた強度/(第2)赤外線強度検出信号に基づいた強度、にて2波長強度比を求め、求めた2波長強度比と、図25に示す温度・2波長強度比特性から、計測点SPの温度を求めることができる。
ステップS39にて判定装置70は、指示された「製品品番」に対応する「計測時間」を、判定情報H2(図22参照)から読み出し、ステップS35からの経過時間が、計測時間に達したか否かを判定し、計測時間に達した場合(Yes)はステップS65Aに進み、計測時間に達していない場合(No)はステップS36に戻る。ステップS36~S39にて赤外線強度検出信号を判定装置に取り込む処理は、計測点から放射された赤外線の強度に基づいて赤外線強度検出手段から出力される計測点情報である赤外線強度検出信号を判定装置にて取り込む、情報取得ステップに相当している。
ステップS65Aに進んだ場合、判定装置70は、レーザ出力装置27に制御信号を出力し、レーザ出力装置27からの加熱用レーザの出射を停止させてステップS70Aに進む。
ステップS70Aにて判定装置70は、所定時間ご毎に求めた計測点SPの温度に基づいた温度上昇特性と、自身あるいは外部の記憶装置に記憶している判定情報H2(図22参照)の「製品品番」に対応した正規化温度上昇特性(時間と温度との相関関係を示す特性を正規化した特性)と、の関係を求め、ステップS80Aに進む。
例えば、図26における「計測結果A」は、製品品番Aにおける接合部面積が最大許容面積のサンプルの計測結果の例である。また、図26における「計測結果B」は、製品品番Aにおける接合部面積が最小許容面積のサンプルの計測結果の例である。加熱強度(一定強度)の加熱用レーザを計測点SPに照射すると、計測点SPの温度は徐々に上昇するが、加熱量と放熱量が一致する飽和温度に達すると、温度の上昇が止まり、加熱を継続してもほぼ一定の温度(飽和温度)となる。ここで、接合部面積が比較的大きい場合は熱伝導量が多く、接合部を介して熱が逃げやすいので、飽和温度に達するまでの時間が短く、飽和温度も比較的低くなる。また接合部面積が比較的小さい場合は熱伝導量が少なく、接合部を介して熱が逃げにくいので、飽和温度に達するまでの時間が長く、飽和温度も比較的高くなる。
計測対象物の温度上昇特性の飽和温度が、図26に示す「計測結果A」と「計測結果B」の飽和温度の間にあるとき、その計測対象物の接合部面積は、最小許容面積以上かつ最大許容面積以下であるので、良品である、と判定することもできるが、以下のように「正規化」することで、温度計測の誤差を抑制し、より適切に良否を判定することができる。
以下、図26を用いて、製品品番Aに対する「正規化」について説明する。例えば、製品品番Aに対する理想的な接合部面積の大きさを有する(理想)サンプルの温度上昇特性を求め、当該(理想サンプル)の飽和温度を、正規化飽和温度に設定する。そして、製品品番Aに対して接合部面積が最大許容面積であるサンプルの温度上昇特性である「計測結果A」を得た後、「計測結果A」の飽和温度が正規化飽和温度と一致するように温度方向に伸長(または圧縮)した「正規化A」を得る。また、製品品番Aに対して接合部面積が最小許容面積であるサンプルの温度上昇特性である「計測結果B」を得た後、「計測結果B」の飽和温度が正規化飽和温度と一致するように温度方向に圧縮(または伸長)した「正規化B」を得る。
そして、図27に示すように、計測対象物の温度上昇特性の飽和温度が正規化飽和温度と一致するように、計測した温度上昇特性を、温度方向に圧縮または伸長して、「計測した温度上昇特性(正規化)」を得る。この「計測した温度上昇特性(正規化)」における正規化飽和温度に達するまでの部分が、「正規化した最大許容面積温度上昇特性(正規化A)」と「正規化した最小許容面積温度上昇特性(正規化B)」との間にある場合、判定装置70は、その計測対象物の接合部面積は、最小許容面積以上かつ最大許容面積以下であるので良品である、と判定する。
ステップS80Aにて判定装置70は、ステップS70Aにて求めた接合部面積(最小許容面積以上かつ最大許容面積であるか否か)に応じて、第1部材と第2部材との接合状態が正常または異常であることを示す判定結果を出力(図28参照)して処理を終了する。例えば判定装置70は、図27に示すように、「計測した温度上昇特性(正規化)」が、最大許容面積の温度上昇特性(正規化A)と最小許容面積の温度上昇特性(正規化B)の間に有る場合に、接合状態は正常であると判定し、図28の例に示すように判定結果を表示する。あるいは、判定装置70は、「計測した温度上昇特性(正規化)」が、最小許容面積の温度上昇特性(正規化B)のラインよりも最大許容面積の温度上昇特性(正規化A)の側に有る場合に接合状態は正常であると判定し、判定結果を表示する。このように、判定装置70は、接合部面積が、予め設定された所定範囲内であるか否か、あるいは予め設定された所定面積以上であるか否か、を示す判定結果を出力する、出力手段(出力部)を有している。そしてステップS70A及びステップS80Aの処理は、赤外線強度検出信号から求めた取得関連情報である計測点における温度上昇特性(図27参照)に基づいて、接合界面における接合部の接合状態を判定する、接合状態判定ステップに相当している。
●[第3の実施の形態の光学非破壊検査装置1Cの全体構成(図29)]
次に図29を用いて、第3の実施の形態における光学非破壊検査装置1Cの全体構成について説明する。第3の実施の形態の光学非破壊検査装置1Cは、第1の実施の形態の光学非破壊検査装置(図5)に対して、レーザ光源21Aから出射されるレーザ光そのものの強度を変化させるのではなく、出射されたレーザ光を種々の角度で屈折させてピンホールPHを通過するレーザ光を増減させ、計測点SPにて反射したレーザ光の強度を検出するタイプの光学非破壊検査装置の例を示している。図29に示す第3の実施の形態の光学非破壊検査装置1Cは、図5に示す第1の実施の形態の光学非破壊検査装置1に対して、レーザ出力装置27がレーザ出力装置27Aに変更されて加熱用レーザLaが線状である点と、加熱レーザ選択反射手段23が省略されている点と、反射光選択反射手段43が追加されている点が異なる。また、加熱用レーザLaの照射方向(入射角度)と反射方向(反射角度)に合わせて、計測対象物90を傾斜させている点も異なる。以下、これらの相違点について主に説明する。相違点以外の構成については、第1の実施の形態にて説明したとおりであるので、説明を省略する。
レーザ出力装置27Aは、例えば線状の加熱用レーザLaを出射するレーザ光源21Aと、音響光学変調器24と、変調信号出力手段25と、を有しており、計測点SPに照射された加熱用レーザLaの強度が正弦波状に変化するように、判定装置70からの制御信号に基づいて、加熱用レーザLaを出射する。変調信号出力手段25は、例えばオシレータであり、判定装置70からの制御信号に基づいて、電圧が所定周波数かつ所定振幅で正弦波状に変化する変調信号を発生させる。レーザ光源21Aから出射された線状の加熱用レーザLaは、音響光学変調器24に入力され、後述するように音響光学変調器24によって回折(屈折)される。音響光学変調器24は、光変調器(EOM)デバイスや、弾性表面波(SAW)デバイスを含む。例えば光変調器デバイスは、圧電結晶中に光を透過させるとき、変調信号出力手段25からの変調信号に基づいて電界や超音波を印加して圧電効果を生じさせ、圧電結晶中の屈折率を変化させる。そして屈折された加熱用レーザは、回折光として取り出される。そして音響光学変調器24から出射された加熱用レーザLaは、上記のとおり微細な屈折角度で周期的に屈折されており、レーザ遮光部材に設けられたピンホールPHを通過した後、対物レンズLTにて計測点SPに集光されている。つまり、加熱用レーザLaが種々の屈折角度で周期的に屈折しながらピンホールPHを通過する際、ピンホールPHを通過する加熱用レーザLaの量が周期的に変化する。結果として計測点SPに照射された加熱用レーザLaの強度は正弦波状に変化し、その周波数は変調信号の周波数に同期する。なお、加熱用レーザの出力は、計測対象物を破壊することなく加熱できる出力に調整されている。
また、レーザ出力装置27Aは、加熱用レーザを出射する前に、ワイヤ91(第1部材)を破壊することなく熱歪を発生させるように、一定の出力強度とされた熱歪発生強度と照射時間が調整された予備加熱レーザを照射する制御信号が判定装置70から入力されると、強度:熱歪発生強度、時間:照射時間、とされた予備加熱レーザを出力する。なお、予備加熱レーザの波長は、加熱用レーザの波長と同じである。
第1測定光L11(計測点SPにて反射した照射光と計測点SPから放射された赤外線を含む測定光)の光路中のいずれかの位置には、反射光選択反射手段43が配置されている。例えば反射光選択反射手段43は、加熱用レーザLaが計測点SPにて反射した反射光の波長(すなわち加熱用レーザの波長)の光を反射し、反射光の波長以外の光を透過するダイクロイックミラーである。そして反射光選択反射手段43が反射した反射光L5の先には、集光レンズ41L及びレーザ強度検出手段41が配置されている。なお、集光レンズ41L及びレーザ強度検出手段41については、第1の実施の形態にて説明したとおりであるので、説明を省略する。
X軸方向スライドテーブル75と計測対象物90との間には、計測点SPに対する加熱用レーザLaの入射角度と、当該加熱用レーザLaの反射角度(光軸10Zに沿った第1測定光L11の角度)とに基づいた傾斜角度θを有する傾斜テーブル75Tが配置されている。傾斜テーブル75TはX軸方向スライドテーブル75に固定されており、傾斜テーブル75Tには計測対象物90が固定されている。
なお、第3の実施の形態における判定装置70及び位相差検出装置60の処理手順及び判定情報等は、図14~図18を用いて説明した第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
●[第4の実施の形態の光学非破壊検査装置1Dの全体構成(図30)]
次に図30を用いて、第4の実施の形態における光学非破壊検査装置1Dの全体構成について説明する。図30に示す第4の実施の形態の光学非破壊検査装置1Dは、図20に示す第2の実施の形態の光学非破壊検査装置1Bに対して、レーザ出力装置27がレーザ出力装置27Aに変更されて加熱用レーザLaが線状である点と、加熱レーザ選択反射手段23Rが省略されている点が異なる。また、加熱用レーザLaの照射方向(入射角度)と反射方向(反射角度)に合わせて、計測対象物90を傾斜させている点も異なる。以下、これらの相違点について主に説明する。相違点以外の構成については、第2の実施の形態にて説明したとおりであるので、説明を省略する。
レーザ出力装置27Aにおけるレーザ光源21Aは、図29に示す第3の実施の形態と同じである。レーザ光源21Aは、判定装置70からの制御信号にて指示された強度(一定の加熱強度)の加熱用レーザLaを出射する。レーザ光源21Aから出射された線状の加熱用レーザLaは、ピンホールPHを通過した後、対物レンズLTにて計測点SPに集光される。なお、加熱用レーザの出力は、計測対象物を破壊することなく加熱できる出力に調整されている。
また、レーザ出力装置27Aは、加熱用レーザを出射する前に、ワイヤ91(第1部材)を破壊することなく熱歪を発生させるように、一定の出力強度とされた熱歪発生強度と照射時間が調整された予備加熱レーザを照射する制御信号が判定装置70から入力されると、強度:熱歪発生強度、時間:照射時間、とされた予備加熱レーザを出力する。なお、予備加熱レーザの波長は、加熱用レーザの波長と同じである。
X軸方向スライドテーブル75と計測対象物90との間には、第3の実施の形態と同様、計測点SPに対する加熱用レーザLaの入射角度と、当該加熱用レーザLaの反射角度(光軸10Zに沿った第1測定光L11の角度)とに基づいた傾斜角度θを有する傾斜テーブル75Tが配置されている。傾斜テーブル75TはX軸方向スライドテーブル75に固定されており、傾斜テーブル75Tには計測対象物90が固定されている。
なお、第4の実施の形態における判定装置70の処理手順及び判定情報等は、図21~図28を用いて説明した第2の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
●[第5の実施の形態の光学非破壊検査装置1Eの全体構成(図31)]
次に図31を用いて、第5の実施の形態における光学非破壊検査装置1Eの全体構成について説明する。図31に示す第5の実施の形態の光学非破壊検査装置1Eは、図20に示す第2の実施の形態の光学非破壊検査装置1Bに対して、第2赤外線選択反射手段23Bと集光レンズ23Lと(第2)赤外線強度検出手段32が省略され、補正用レーザ選択反射手段23Cとビームスプリッタ22Aと補正用レーザ光源29とコリメートレンズ29Lとレーザ強度検出手段42と集光レンズ42Lが追加されている点が異なる。以下、これらの相違点について主に説明する。相違点以外の構成については、第2の実施の形態にて説明したとおりであるので、説明を省略する。
補正用レーザ光源29は、加熱レーザよりも充分小さな出力に調整された、補正レーザ波長(加熱用レーザとは異なる波長)の補正用レーザを、判定装置70からの制御信号に基づいて出射する。例えば補正用レーザ光源29は、半導体レーザである。
コリメートレンズ29Lは、補正用レーザ光源29の近傍に配置されて、補正用レーザ光源29から出射された補正用レーザを平行光の補正用レーザLbに変換する。なお補正用レーザ光源29が平行光の補正用レーザを出射できるのであればコリメートレンズ29Lを省略することができる。
ビームスプリッタ22Aは、補正用レーザ光源29から出射された補正レーザ波長の補正用レーザを第1所定割合で反射するとともに第2所定割合で透過し、反射した第1所定割合の平行光の補正用レーザを、補正用レーザ選択反射手段23Cへと導光する。補正用レーザ選択反射手段23Cは、補正レーザ波長の光を反射し、補正レーザ波長以外の光を透過するダイクロイックミラーである。
そして、コリメートレンズ29Lとビームスプリッタ22Aと補正用レーザ選択反射手段23Cと加熱レーザ選択反射手段23Rにて補正用レーザ導光手段が構成されており、補正用レーザ導光手段は、補正用レーザ光源29から出射された補正用レーザを、平行光に変換して集光手段10の一方の側へと導く。
レーザ強度検出手段42は、計測点SPにて反射された補正用レーザのエネルギーを検出可能であり、例えばレーザ強度検出手段42は、補正レーザ波長の光のエネルギーを検出可能な光センサである。なおレーザ強度検出手段42からの検出信号はセンサアンプ42Aを介して判定装置70に取り込まれる。
ビームスプリッタ22Aは、計測点SPから反射されて補正用レーザ選択反射手段23Cにて反射された(反射)補正用レーザを、レーザ強度検出手段42に向けて第2所定割合で透過する。
集光レンズ42Lは、レーザ強度検出手段42の近傍に配置され、計測点SPから反射されてビームスプリッタ22Aを透過してきた補正レーザ波長の平行光Lbr(補正用レーザ)を、レーザ強度検出手段42に向けて集光する。
そして、加熱レーザ選択反射手段23Rと補正用レーザ選択反射手段23Cとビームスプリッタ22Aと集光レンズ42Lにて反射レーザ導光手段が構成されており、反射レーザ導光手段は、計測点SPにて反射されて集光手段10の一方の側から出射された補正用レーザを、レーザ強度検出手段42へと導く。
判定装置70の処理は、図21に示す第2の実施の形態の処理手順に対して、ステップS35、S37、S38、S65Aが以下のように異なるが、他のステップについては同じであるので説明を省略する。
図21に示すステップS35に対して、第5の実施の形態では判定装置70は、加熱用レーザの出射と補正用レーザの出射を行う。図21に示すステップS37に対して、第5の実施の形態では判定装置70は、(第1)赤外線強度検出手段31からの赤外線強度検出信号と、レーザ強度検出手段42からのレーザ強度検出信号と、を取り込む。また、図21に示すステップS38に対して、第5の実施の形態では判定装置70は、補正用レーザの強度と、ビームスプリッタ22Aの第1所定割合及び第2所定割合と、レーザ強度検出信号と、に基づいて計測点SPにおける反射率を求め、反射率に基づいて放射率を求める。そして、求めた放射率に基づいて、赤外線強度検出信号の強度を補正し、補正した強度と図24に示す波長・強度・温度特性から計測点SPの温度を求める。そして図21に示すステップS65Aに対して、第5の実施の形態では判定装置70は、加熱用レーザと補正用レーザの出射を停止する。
以上、本発明の光学非破壊検査装置及び光学非破壊検査方法は、接合界面にて互いに接合された第1部材と第2部材、あるいは互いの接合界面にて接合部材を挟んで互いに接合された第1部材と第2部材、である計測対象物において、非破壊にて接合状態の良否を判定することができる。
上記のとおり、第1~第5の実施の形態にて説明した光学非破壊検査装置及び光学非破壊検査方法は、加熱用レーザを照射する前に、予備加熱レーザを照射(図16、図23参照)することで、第1部材に熱歪を発生させる。これにより、第1部材と第2部材が接触したり離間したりする[接触状態が不安定な領域]を、[非接触状態(離間状態)で安定している領域]へと変換するので、接合状態のバラつきを抑制し、より安定した接合状態を取得して接合状態の良否を判定することができる。また、予備加熱レーザを照射することで、計測点に酸化膜を形成することもできるので、計測点の表面粗さと放射率を、より安定な良好な状態にするので、より精度よく接合状態の良否を判定することができる。また、複数のサンプルあるいは複数のシミュレーションにて求めた計測対象物に対する判定情報を用いることで、第1部材と第2部材とが溶接等で直接接合されている計測対象物の場合、第1部材と第2部材とがハンダ等の接合部材を挟んで接合されている計測対象物の場合、第1部材や第2部材が単一の物質でない場合、など、種々の計測対象物に対して、より正確に、かつ容易に、接合状態の良否を判定することができる。
●[第6の実施の形態(図32~図38)]
次に図32~図38を用いて、第6の実施の形態の光学非破壊検査装置及び光学非破壊検査方法について説明する。第6の実施の形態の光学非破壊検査装置の全体構成は、図4及び図5に示す第1の実施の形態と同じであるので、全体構成についての説明は省略する。加熱用レーザを出射する前に予備加熱レーザを出射する第1の実施の形態に対して、第6の実施の形態では、さらに、予備加熱レーザを出射する前に表面異物除去用レーザを出射する処理が追加されている点が異なる。以下、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
例えば、第1部材がワイヤ91、第2部材が電極92であり、ハンダ付けで接合されている場合、計測点SPには、ハンダ付け時のフラックスや、フラックスの洗浄に使用した有機溶剤等の異物が表面に残っている場合がある。これの異物が計測点SPの表面に残っている場合、計測点SPに加熱用レーザLaを照射すると、図32に示すように、計測点SPの表面に付着していた異物が溶融して計測点SPから流れ出し、計測点SPの周囲に環状の異物堆積層Y1が形成される場合がある。図32の例に示す環状の異物堆積層Y1が計測点SPの周囲に形成された場合、図33に示す加熱用レーザ(SGa)を計測点SPに照射すると、図33に示す信号SGbに示す温度特性を示す場合がある。図33の例では、異物堆積層Y1によって、計測点の温度にノイズNbが重畳された例を示している。第6の実施の形態では、第1の実施の形態に対して、以降に説明する「表面異物除去処理」を追加することで、計測点SP及び計測点SPの周囲から異物を除去し(異物を溶融して計測点SPの周囲よりも外方に押出し)、計測点の温度に異物からのノイズが重畳されることを防止する。
●[表面異物除去用レーザの出力強度、照射径、照射時間など(図34、図35)]
そこで、図34及び図35に示すように、予備加熱レーザを照射する前に、表面異物除去用レーザLyを、計測点SP及び計測点SPの周囲に照射して、異物堆積層Y1を、計測点SPに隣接する外周部よりも外方に離間した位置に移動させる(押し出す)。表面異物除去用レーザLyは、予備加熱レーザと同じレーザ出力装置から出射させることができる。なお、図38に示すように、表面異物除去用レーザSGyの出力強度Wayは、加熱用レーザの(最大)出力強度Wamよりも小さな出力強度、かつ、予備加熱レーザの出力強度Wapよりも小さな出力強度に設定されている。表面異物除去用レーザLyの出力強度Wayは、異物の種類等に応じて、照射範囲内の異物を溶融させることが可能な出力強度に設定されている。表面異物除去用レーザLyの照射エネルギーをE、温度上昇幅をΔT、比熱をc、レーザ径をd、深さをH、密度をρとした場合、照射エネルギーEは、以下の(式1)に基づいて決定される。
E=ΔT*(π/4)*d2*H*ρ*c (式1)
また表面異物除去用レーザLyの照射径は、計測点SPへの加熱用レーザの照射径(図35の例では計測点SPの径である計測点径RA)よりも大きな表面異物除去径RC(図35参照)に設定されている。従って、図35において表面異物除去用レーザは、表面異物除去径RC内の異物(異物堆積層Y1)を溶融して、表面異物除去領域Ya(表面異物除去用レーザの照射領域)の外方に押し出す。例えば図35において、計測点SPの計測点径RAが約200[μm]の場合、表面異物除去径RCは、約300~400[μm]に設定されている。判定装置70は、図4及び図5に示すZ軸方向移動手段77Zを制御することで、表面異物除去径RCの大きさを調整可能である。表面異物除去領域Yaは、計測点SPとほぼ同心であり、計測点SPを覆う(囲む)領域である。そして表面異物除去径RCは、表面異物除去領域Yaの外周に押し出した異物からの赤外線が計測点SPから放射される赤外線の検出に影響を与えない径に設定されている。
また表面異物除去用レーザLyの照射時間は、予備加熱レーザの照射時間(図38中における予備加熱時間Taw)よりも短い表面異物除去照射時間Tyw(図38参照)に設定されている。例えば図38中の予備加熱時間が約100[ms]程度の場合、表面異物除去照射時間Tywは、約1[ms]未満でよい。表面異物除去照射時間Tywは、上記の出力強度Wayの表面異物除去用レーザLyを、上記の表面異物除去径RCにて計測点SPを含む表面異物除去領域Yaに照射した際に、表面異物除去領域Ya内の異物を溶融して表面異物除去領域Yaの外周に押し出すことが可能な時間に設定されている。例えば、前工程での付着物(異物)の種類(フラックス、有機溶剤の種類、及び融点等)、第1部材の材質、表面異物除去用レーザLyの出力強度(照射エネルギー)、表面異物除去径RC等、を用いたシミュレーションにて、表面異物除去照射時間Tywの範囲が求められ、当該範囲の中から適切な表面異物除去照射時間Tywが決定される。
●[判定装置70及び位相差検出装置60の処理手順(図36)]
次に図36に示すフローチャートを用いて、判定装置70及び位相差検出装置60の処理手順の例について説明する。なお図36に示す第6の実施の形態のフローチャートは、図14に示す第1の実施の形態のフローチャートに対して、ステップS30A~S30E(表面異物除去処理)が追加されている点が異なり、他のステップは同じである。以下、この相違点について主に説明する。
ステップS30に進んだ場合、判定装置70は、作業者からの計測指示の有無を判定し、計測指示がある場合(Yes)はステップS30Aに進み、計測指示が無い場合(No)はステップS30に戻る。
ステップS30Aに進んだ場合、判定装置70は、判定情報H01(図37参照)を用いて、製品品番に対応する「表面異物除去用レーザ照射径」を読み出し、読み出した「表面異物除去用レーザ照射径」となるように、Z軸方向移動手段77Z(図4、図5参照)を制御して、集光手段10に対する計測対象物の位置を調整し、ステップS30Bに進む。なお第6の実施の形態の判定情報H01(図37参照)では、図15に示す第1の実施の形態の判定情報H1に対して、「表面異物除去用レーザ出力」、「表面異物除去用レーザ照射時間」、「表面異物除去用レーザ照射径」、「待ち時間1」(図37中の符号H01A)が追加されている。
ステップS30Bにて判定装置70は、判定情報H01(図37参照)を用いて、製品品番に対応する「表面異物除去用レーザ出力」と「表面異物除去用レーザ照射時間」を読み出し、「表面異物除去用レーザ出力」の出力強度に設定したレーザ(表面異物除去用レーザ)を、レーザ出力装置から出射させ、ステップS30Cに進む。
ステップS30Cにて判定装置70は、表面異物除去用レーザの照射を開始してから、「表面異物除去用レーザ照射時間」(表面異物除去照射時間)が経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップS30Dに進み、経過していない場合(No)はステップS30Bに戻る。
ステップS30Dに進んだ場合、判定装置70は、表面異物除去用レーザの照射を停止し、ステップS30Eに進む。
ステップS30Eにて判定装置70は、判定情報H01(図37参照)を用いて、製品品番に対応する「待ち時間1」を読み出し、表面異物除去用レーザを停止してから、「待ち時間1」が経過したか否かを判定し、待ち時間1が経過した場合(Yes)はステップS31Aに進み、待ち時間1が経過していない場合(No)はステップS30Eに戻る。以降の処理は、図14に示す第1の実施の形態のフローチャートと同じであるので、説明を省略する。
以上に説明したステップS30A~S30Eは、予備加熱ステップの前に、計測点SPに向けて、加熱用レーザの照射径よりも大きな照射径の表面異物除去径となるように、予備加熱レーザの出力強度よりも小さな出力強度の表面異物除去用レーザを、予備加熱レーザの照射時間よりも短い表面異物除去照射時間で照射して、計測点及び計測点の周囲に付着している異物を除去する、表面異物除去ステップに相当している。
以上の処理手順により、図38に示すように、予備加熱レーザ(SGp)を照射する前に、表面異物除去用レーザ(SGy)が照射される。そして表面異物除去用レーザ(SGy)の出力強度Wayは、予備加熱レーザ(SGp)の出力強度Wapよりも小さく、かつ、加熱用レーザ(SGa)の(最大)出力強度Wamよりも小さい。また表面異物除去用レーザ(SGy)の照射時間(表面異物除去照射時間Tyw)は、予備加熱レーザ(SGp)の照射時間(予備加熱時間Taw)よりも短い。また、表面異物除去用レーザ(SGy)の照射が終了してから予備加熱レーザ(SGp)の照射の開始までには、適切な待ち時間Tzwが設定されている。
以上、第6の実施の形態では、図36のステップS30A~S30Eの「表面異物除去処理」が、予備加熱処理の前に追加されていることで、計測点SPの表面にフラックスや有機溶剤等の異物が付着している場合であっても、計測点及び計測点の周囲から異物を適切に除去することができる。これにより、「表面異物除去処理」を行っていない図33と比較して、計測点の温度から、異物によるノイズを適切に除去することができる(図38の信号SGb参照)。従って、接合状態の判定を、より適切に行うことができる。
●[第7の実施の形態(図39~図41)]
次に図39~図41を用いて、第7の実施の形態の光学非破壊検査装置及び光学非破壊検査方法について説明する。第7の実施の形態の光学非破壊検査装置の全体構成は、図19及び図20に示す第2の実施の形態と同じであるので、全体構成についての説明は省略する。加熱用レーザを出射する前に予備加熱レーザを出射する第2の実施の形態に対して、第7の実施の形態では、さらに、予備加熱レーザを出射する前に表面異物除去用レーザを出射する処理が追加されている点が異なる。以下、第2の実施の形態との相違点について主に説明する。
なお、計測点SPの表面に付着している異物、当該異物によって計測点の温度にノイズが重畳される点、及び表面異物除去用レーザの出力強度、照射径、照射時間などは、第6の実施の形態と同じであるので、これらについては説明を省略する。
●[判定装置70及び位相差検出装置60の処理手順(図39)]
次に図39に示すフローチャートを用いて、判定装置70の処理手順の例について説明する。なお図39に示す第7の実施の形態のフローチャートは、図21に示す第2の実施の形態のフローチャートに対して、ステップS30A~S30E(表面異物除去処理)が追加されている点が異なり、他のステップは同じである。以下、この相違点について主に説明する。
ステップS30に進んだ場合、判定装置70は、作業者からの計測指示の有無を判定し、計測指示がある場合(Yes)はステップS30Aに進み、計測指示が無い場合(No)はステップS30に戻る。
ステップS30Aに進んだ場合、判定装置70は、判定情報H02(図40参照)を用いて、製品品番に対応する「表面異物除去用レーザ照射径」を読み出し、読み出した「表面異物除去用レーザ照射径」となるように、Z軸方向移動手段77Z(図19、図20参照)を制御して、集光手段10に対する計測対象物の位置を調整し、ステップS30Bに進む。なお第7の実施の形態の判定情報H02(図40参照)では、図22に示す第2の実施の形態の判定情報H2に対して、「表面異物除去用レーザ出力」、「表面異物除去用レーザ照射時間」、「表面異物除去用レーザ照射径」、「待ち時間1」(図40中の符号H02A)が追加されている。
ステップS30Bにて判定装置70は、判定情報H02(図40参照)を用いて、製品品番に対応する「表面異物除去用レーザ出力」と「表面異物除去用レーザ照射時間」を読み出し、「表面異物除去用レーザ出力」の出力強度に設定したレーザ(表面異物除去用レーザ)を、レーザ出力装置から出射させ、ステップS30Cに進む。
ステップS30Cにて判定装置70は、表面異物除去用レーザの照射を開始してから、「表面異物除去用レーザ照射時間」(表面異物除去照射時間)が経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップS30Dに進み、経過していない場合(No)はステップS30Bに戻る。
ステップS30Dに進んだ場合、判定装置70は、表面異物除去用レーザの照射を停止し、ステップS30Eに進む。
ステップS30Eにて判定装置70は、判定情報H02(図40参照)を用いて、製品品番に対応する「待ち時間1」を読み出し、表面異物除去用レーザを停止してから、「待ち時間1」が経過したか否かを判定し、待ち時間1が経過した場合(Yes)はステップS31Aに進み、待ち時間1が経過していない場合(No)はステップS30Eに戻る。以降の処理は、図21に示す第2の実施の形態のフローチャートと同じであるので、説明を省略する。
以上に説明したステップS30A~S30Eは、予備加熱ステップの前に、計測点SPに向けて、加熱用レーザの照射径よりも大きな照射径の表面異物除去径となるように、予備加熱レーザの出力強度よりも小さな出力強度の表面異物除去用レーザを、予備加熱レーザの照射時間よりも短い表面異物除去照射時間で照射して、計測点及び計測点の周囲に付着している異物を除去する、表面異物除去ステップに相当している。
以上の処理手順により、図41に示すように、予備加熱レーザ(SGp)を照射する前に、表面異物除去用レーザ(SGy)が照射される。そして表面異物除去用レーザ(SGy)の出力強度Wayは、予備加熱レーザ(SGp)の出力強度Wapよりも小さく、かつ、加熱用レーザ(SGc)の(最大)出力強度Wamよりも小さい。また表面異物除去用レーザ(SGy)の照射時間(表面異物除去照射時間Tyw)は、予備加熱レーザ(SGp)の照射時間(予備加熱時間Taw)よりも短い。また、表面異物除去用レーザ(SGy)の照射が終了してから予備加熱レーザ(SGp)の照射の開始までには、適切な待ち時間Tzwが設定されている。
以上、第7の実施の形態では、図39のステップS30A~S30Eの「表面異物除去処理」が、予備加熱処理の前に追加されていることで、計測点SPの表面にフラックスや有機溶剤等の異物が付着している場合であっても、計測点及び計測点の周囲から異物を適切に除去することができる。これにより、計測点の温度から、異物によるノイズを適切に除去することができる(図41の信号SGd参照)。従って、接合状態の判定を、より適切に行うことができる。
第7の実施の形態では、第2の実施の形態の処理にステップS30A~S30E(表面異物除去処理)を追加したが、第5の実施の形態(図31参照)の処理に同様の追加を行ってもよい。
本発明の光学非破壊検査装置の構成、外観等、及び光学非破壊検査方法の処理手順等は、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
本実施の形態の説明では、第1部材がワイヤ91、第2部材が電極92、ワイヤボンディングにて接合した計測対象物の例を説明したが、第1部材が電子チップ部品、第2部材がプリント基板の電極、ハンダ(接合部材)で接合した計測対象物や、第1部材がボンディングワイヤ、第2部材が半導体のチップフレーム、超音波圧着で接合した計測対象物等、種々の計測対象物に適用することができる。つまり、第1部材の材質、第2部材の材質、接合部材の有無及び接合方法、等に限定されず、種々の計測対象物に対して、接合状態の良否の判定に適用することができる。
加熱用レーザには、赤外線レーザや紫外線レーザや可視光レーザ等、種々のレーザを用いることができる。また、本実施の形態の説明では、位相差検出装置60と判定装置70とを別々の装置で構成した例を説明したが、位相差検出装置と判定装置とを一体化した装置としてもよい。
第2、第4の実施の形態では、2個の赤外線強度検出手段を有する例を説明したが、第5の実施の形態では、1個の赤外線強度検出手段を有する例を説明した。従って、少なくとも1つの赤外線強度検出手段を有していればよい。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。