以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の被表面修飾半導体ナノ結晶は、半導体ナノ結晶(A)と、下記構造式(1)
(式中R
1はエーテル結合部位、カルボニル基、水酸基の何れかを有していてもよい脂肪族炭化水素基である。R
2は極性基、又は極性基を有する構造部位である。R
3は水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基の何れかである。nは2~10の整数である。*は芳香環との結合点である。)
で表される分子構造を有するカリックスアレーン化合物(B)とを必須の構成成分とする。
前記半導体ナノ結晶(A)について説明する。本明細書における用語「ナノ結晶」は、好ましくは、100nm以下の少なくとも1つの長さを有する粒子を指す。ナノ結晶の形状は、任意の幾何学的形状を有してもよく、対称または不対称であってよい。当該ナノ結晶の形状の具体例としては、細長、ロッド状の形状、円形(球状)、楕円形、角錐の形状、ディスク状、枝状、網状の他、任意の不規則な形状等を含む。
前記半導体ナノ結晶(A)の一例としては、半導体化合物(1)を含むコアと、半導体化合物(2)を含むシェルとを有するものが挙げられる。前記シェルは前記コアの少なくとも一部を被覆するものである。前記半導体化合物(1)及び前記半導体化合物(2)は、それぞれ一種類の半導体化合物からなっていてもよいし、複数種の半導体化合物からなっていてもよい。また、前記半導体化合物(1)と前記半導体化合物(2)は互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。また、前記シェルは複数層からなっていてもよい。即ち、前記半導体化合物(2)を含むシェルの他に、半導体化合物(n)を含むシェルを1乃至複数有していてもよい。シェルが複数層からなる場合、それぞれのシェルが含有する半導体化合物は互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
前記半導体ナノ結晶(A)は、の好ましい形態の例としては、例えば、以下3つのパターン等が挙げられる
1.半導体化合物(1)を含むコアと、半導体化合物(2)を含むシェルとを有し、前記半導体化合物(1)と前記半導体化合物(2)とが同一である形態
2.半導体化合物(1)を含むコアと、半導体化合物(2)を含むシェルとを有し、前記半導体化合物(1)と前記半導体化合物(2)とが異なるものである形態
3.半導体化合物(1)を含むコアと、半導体化合物(2)を含むシェルと、半導体化合物(3)を含むシェルとを有し、前記半導体化合物(1)と前記半導体化合物(2)とが互いに異なるものであり、かつ、前記半導体化合物(2)と前記半導体化合物(3)とが互いに異なるものである形態
前記半導体化合物(1)、(2)及び(n)は、例えば、II-V族半導体化合物、II-VI族半導体化合物、III-IV族半導体化合物、III-V族半導体化合物、III-VI族半導体化合物、IV-VI族半導体化合物、I-III-VI族半導体化合物、II-IV-VI族半導体化合物、II-IV-V族半導体化合物、I-II-IV-VI族半導体化合物、IV族元素又はこれを含む化合物等が挙げられる。これらはそれぞれを単独で用いてもよいし二種類以上を併用してもよい。
前記II-V族半導体化合物は、例えば、Zn3N2、Zn3P2、Zn3As2、Cd3N2、Cd3P2、Cd3As2等が挙げられる。前記II-VI族半導体化合物は、例えば、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe等の二元化合物;ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe等の三元化合物;CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、CdHgZnTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe等の四元化合物等が挙げられる。前記III-IV族半導体化合物は、例えば、B4C3、Al4C3、Ga4C3等が挙げられる。前記III-V族半導体化合物は、例えば、BP、BN、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の二元化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP等の三元化合物;GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb等の四元化合物等が挙げられる。前記III-VI族半導体化合物は、例えば、Al2S3、Al2Se3、Al2Te3、Ga2S3、Ga2Se3、Ga2Te3、GaTe、In2S3、In2Se3、In2Te3、InTe等が挙げられる。前記IV-VI族半導体化合物は、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の二元化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe等の三元化合物;SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe等の四元化合物等が挙げられる。前記I-III-VI族半導体化合物は、例えば、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaSe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaSe2、AgGaS2、AgGaTe2等が挙げられる。前記IV族元素又はこれを含む化合物は、例えば、C、Si、Ge、SiC、SiGe等が挙げられる。中でも、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、Si、C、Geの何れか一種類以上であることが好ましい。
前記半導体ナノ結晶(A)の発光色は特に限定されず、赤発光用半導体ナノ結晶、緑発光用半導体ナノ結晶、青発光用半導体ナノ結晶など、どのような色であってもよい。一般に、半導体ナノ結晶の発光色は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解により粒子径に依存するが、半導体ナノ結晶が有するエネルギーギャップにも依存するため、使用する半導体ナノ結晶とその粒子径を調整することにより、発光色を選択する。
前記赤色半導体ナノ結晶の蛍光スペクトルの波長ピークの上限は、665nm、663nm、660nm、658nm、655nm、653nm、651nm、650nm、647nm、645nm、643nm、640nm、637nm、635nm、632nmまたは630nmであることが好ましく、前記波長ピークの下限は、628nm、625nm、623nm、620nm、615nm、610nm、607nmまたは605nmであることが好ましい。
前記緑色半導体ナノ結晶の蛍光スペクトルの波長ピークの上限は、560nm、557nm、555nm、550nm、547nm、545nm、543nm、540nm、537nm、535nm、532nmまたは530nmであることが好ましく、前記波長ピークの下限は、528nm、525nm、523nm、520nm、515nm、510nm、507nm、505nm、503nmまたは500nmであることが好ましい。
前記青色半導体ナノ結晶の蛍光スペクトルの波長ピークの上限は、480nm、477nm、475nm、470nm、467nm、465nm、463nm、460nm、457nm、455nm、452nmまたは450nmであることが好ましく、前記波長ピークの下限は、450nm、445nm、440nm、435nm、430nm、428nm、425nm、422nmまたは420nmであることが好ましい。
前記赤色半導体ナノ結晶に使用される半導体材料は、発光のピーク波長が635nm±30nmの範囲に入っている事が望ましい。同じく、前記緑色半導体ナノ結晶に使用される半導体材料は、発光のピーク波長が530nm±30nmの範囲に入っている事が望ましい。前記青色半導体ナノ結晶に使用される半導体材料は、発光のピーク波長が450nm±30nmの範囲に入っている事が望ましい。
前記半導体ナノ結晶(A)を構成する半導体材料は例えば、発光色毎に下記のようなものが挙げられる。赤色:CdSeの半導体ナノ結晶、CdSeのロッド状半導体ナノ結晶、コアがCdSeを含みシェルがCdSを含むコアシェル構造を備えたロッド状半導体ナノ結晶、コアがZnSeを含みシェルがCdSを含むコアシェル構造を備えたロッド状半導体ナノ結晶、コアがCdSeを含みシェルがCdSを含むコアシェル構造を備えた半導体ナノ結晶、コアがZnSeを含みシェルがCdSを含むコアシェル構造を備えた半導体ナノ結晶、CdSeとZnSとの混晶の半導体ナノ結晶、CdSeとZnSとの混晶のロッド状半導体ナノ結晶、InPの半導体ナノ結晶、InPのロッド状半導体ナノ結晶、CdSeとCdSとの混晶の半導体ナノ結晶、CdSeとCdSとの混晶のロッド状半導体ナノ結晶、ZnSeとCdSとの混晶の半導体ナノ結晶、ZnSeとCdSとの混晶のロッド状半導体ナノ結晶など。緑色:CdSeの半導体ナノ結晶、CdSeのロッド状の半導体ナノ結晶、CdSeとZnSとの混晶の半導体ナノ結晶、CdSeとZnSとの混晶のロッド状半導体ナノ結晶、InPの半導体ナノ結晶、InPのロッド状半導体ナノ結晶など。青色:ZnSeの半導体ナノ結晶、ZnSeのロッド状半導体ナノ結晶、ZnSの半導体ナノ結晶、ZnSのロッド状半導体ナノ結晶、コアがZnSを含みシェルがZnSeを含むコアシェル構造を備えた半導体ナノ結晶、コアがZnS、CdSを含みシェルがZnSeを含むコアシェル構造を備えたロッド状半導体ナノ結晶など。
前記半導体ナノ結晶(A)がいわゆる量子ロッドの場合、当該量子ロッドの長軸方向の長さ(平均長さ)は、15~120nmであることが好ましく、20~80nmが好ましく、25~70nmがより好ましい。前記量子ロッドの短軸方向の長さ(平均長さ)は、1~11nmが好ましく、2~8nmがより好ましく、3~7nmがさらに好ましい。また、前記量子ロッドの形状は、特定の一方向に延在する長尺体であればよく、円柱型、多角柱型、多角錐型または円錐型などが挙げられる。前記量子ロッドのアスペクト比(量子ロッドの長軸方向の平均長さ/量子ロッドの短軸方向の平均長さ)は、3~30であることが好ましく、4~20がより好ましく、5~10がさらに好ましい。
前記カリックスアレーン化合物(B)は、半導体ナノ結晶(A)の表面修飾剤ないし分散剤として働く成分であり、半導体ナノ結晶(A)の有機溶剤や樹脂成分等への分散性を向上させる目的で用いる。前記カリックスアレーン化合物(B)は、これまで一般に知られていた表面修飾剤或いは分散剤と比較して半導体ナノ結晶(A)の分散能が飛躍的に高いため、比較的少量の使用であっても、各種有機溶剤への分散安定性に十分に優れる被表面修飾半導体ナノ結晶を得ることができる。半導体ナノ結晶(A)と前記カリックスアレーン化合物(B)とは化学的に結合していてもよいし、結合していなくてもよい。
前記構造式(1)中R1はエーテル結合部位、カルボニル基、水酸基の何れかを有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、有機溶剤や樹脂材料等の分散媒との親和性基として機能する構造部位である。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型のもの、分岐構造を有するもの、不飽和結合を有するもの、有さないもの、何れの構造であってもよく、炭素原子数も特に限定されない。前記脂肪族炭化水素基が不飽和結合を有する場合、その数は一つであっても複数であってもよく、脂肪族炭化水素基中の不飽和結合の位置も特に限定されない。R1がエーテル結合部位、カルボニル基、水酸基の何れかを有する脂肪族炭化水素基である場合、エーテル結合部位、カルボニル基、水酸基の数や置換位置等は特に限定されない。また、エーテル結合部位、カルボニル基、水酸基の2種以上を有していてもよい。R1がエーテル結合部位を複数有する場合には、所謂ポリオキシアルキレン構造であってもよい。R1が水酸基を有する場合には、R1の末端に水酸基を有することが好ましい。中でも、様々な分散媒に対し前記半導体ナノ結晶(A)をより安定に分散できることから、R1は脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、その炭素原子数は1~18の範囲であることが好ましく、1~12の範囲であることがより好ましく、1~6の範囲であることが特に好ましい。
前記構造式(1)中のnは2~10の整数である。中でも、構造的に安定であることからnが4、6又は8であるものが好ましい。前記構造式(1)中、R1、R2の結合位置や、*で表される結合点の位置は特に限定されず、どのような構造を有していてもよい。中でも、半導体ナノ結晶(A)用分散剤としての性能に一層優れるカリックスアレーン化合物(B)となることから、下記構造式(1-1)又は(1-2)
(式中R
1はエーテル結合部位、カルボニル基、水酸基の何れかを有していてもよい脂肪族炭化水素基である。R
2は極性基、又は極性基を有する構造部位である。R
3は水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基の何れかである。nは2~10の整数である。)
で表される分子構造を有するものが好ましい。
前記構造式(1)中のR2は極性基、又は極性基を有する構造部位である。前述のとおり、R2の芳香環上の置換位置は特に限定されないが、半導体ナノ結晶(A)用分散剤としての性能に一層優れるカリックスアレーン化合物(B)となることから、R1のパラ位に位置することが好ましい。
前記極性基は、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、ホスフィンオキシド基、アルコキシシリル基等が挙げられる。前記極性基を有する構造部位において、極性基以外の構造部位は特に制限されず、どのような構造を有していてもよい。極性基を有する構造部位の具体例としては、極性基をPで表した場合、例えば、―O―X―Pで表されるものが挙げられる。前記Xは、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、(ポリ)アルキレンエーテル構造、(ポリ)アルキレンチオエーテル構造、(ポリ)エステル構造、(ポリ)ウレタン構造、これらの組み合わせからなる構造部位等が挙げられる。中でも、アルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基であることがより好ましい。したがって、極性基を有する構造部位の好ましい例としては、下記構造式(2-1)~(2-7)の何れかで表される構造部位が挙げられる。
(式中R
4はそれぞれ独立に炭素原子数1~6のアルキレン基である。R
5は炭素数1~3のアルキル基である。)
前記構造式(1)中のR3は水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基の何れかである。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基のアルキル基等の脂肪族炭化水素基や、これら脂肪族炭化水素基の水素原子の一つ乃至複数が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換された構造部位;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等の芳香環含有炭化水素基や、これらの芳香核上に水酸基やアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。中でも、R3は水素原子であることが好ましい。
前記カリックスアレーン化合物(B)はどのような方法にて製造されたものであってもよく、多種多様な方法で製造することができる。以下、前記カリックスアレーン化合物(B)を製造する方法の一例について説明する。
前記カリックスアレーン化合物(B)は、例えば、下記構造式(3)で表される中間体(α)を得、前記中間体(α)のフェノール性水酸基に前記構造式(1)中のR2に相当する極性基又は極性基を有する構造部位を導入する方法にて製造することができる。
(式中R
1は脂肪族炭化水素基である。R
3は水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基の何れかである。nは2~10の整数である。)
前記中間体(α)を製造する方法は、例えば、脂肪族炭化水素基を有するフェノール化合物とアルデヒド化合物とを反応させて直接製造する方法(方法1-1)や、方法1-1で得た中間体(α)を一度脱アルキル化し、再度脂肪族炭化水素基を導入して製造する方法(方法1-2)等が挙げられる。通常は前記方法1-1にて製造することが簡便であり好ましいが、所望の脂肪族炭化水素基を有するフェノール化合物が入手困難である場合などには、前記方法1-2にて製造することができる。
前記方法1-1について、用いるフェノール化合物は、前記構造式(1)及び(3)中のR1に相当する脂肪族炭化水素基を一つ有するフェノール化合物であれば特に限定なく、何れの化合物を用いてもよい。前述の通り、R1は炭素原子数3~6の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、また、構造式(1)中のR1とR2とは互いに芳香環上のパラ位に位置することが好ましいことから、前記フェノール化合物はパラプロピルフェノール、パラブチルフェノール、パラペンチルフェノール、パラヘキシルフェノールの何れかであることが好ましい。
前記アルデヒド化合物は、前記フェノール化合物と縮合反応を生じてカリックスアレーン構造を形成しうるものであればよく、例えば、ホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物等が挙げられる。これらは一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。中でも、反応性に優れることからホルムアルデヒドを用いることが好ましい。ホルムアルデヒドは水溶液の状態であるホルマリンとして用いても、固形の状態であるパラホルムアルデヒドとして用いても、どちらでも良い。
前記フェノール化合物とアルデヒド化合物との反応割合は、前記中間体(α)を高収率で製造できることから、前記フェノール化合物1モルに対し、アルデヒド化合物が0.6~2モルの範囲であることが好ましい。
前記フェノール化合物とアルデヒド化合物との反応は、例えば、酸もしくは塩基触媒の存在下、80~250℃程度の温度条件にて行うことができる。前記酸触媒は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。酸触媒の添加量は、前記フェノール化合物とアルデヒド化合物との合計100質量部に対し、0.05~10質量部の範囲であることが好ましい。前記塩基触媒は、触媒として作用するものであって、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム.水酸化ルビジウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。塩基触媒の添加量は、前記フェノール化合物とアルデヒド化合物との合計100質量部に対し、0.01~1質量部の範囲であることが好ましい。
前記フェノール化合物とアルデヒド化合物との反応は有機溶媒中で行ってもよい。前記有機溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチルヘキノール等のアルコール系溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、THF、ジオキサン、ブチルカルビトール、ビフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール等のアルコールエーテル系溶媒等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い
前記方法1-2について、中間体(α)の脱アルキル化工程は、例えば、前記中間体(α)の貧溶媒であり、かつ、フェノールの良溶媒である有機溶剤中に前記中間体(α)とフェノールとを添加し、これに塩化アルミニウムを加えて撹拌する方法にて行うことができる。前記有機溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエンやキシレン等のアルキルベンゼンなどの香族炭化水素溶媒等が挙げられる。フェノールの添加量は、前記中間体(α)中の水酸基1モルに対し、1~2モルの範囲であることが好ましい。また、塩化アルミニウムの添加量は、前記中間体(α)中の水酸基1モルに対し、1~2モルの範囲であることが好ましい。反応は氷浴乃至室温程度の温度条件下で行うことが好ましい。
次いで、脂肪族炭化水素基を導入する方法は、例えば、目的の脂肪族炭化水素基と同炭素数のカルボン酸ハライドを反応させてアルキルカルボニル基を導入した後、カルボニル基を還元する方法等が挙げられる。
中間体(α)の脱アルキル化物と前記カルボン酸ハライドとの反応は、例えば、塩化アルミニウムと大過剰のニトロベンゼンとの存在下で両者を撹拌する方法にて行うことができる。前記カルボン酸ハライドの添加量は、前記中間体(α)の脱アルキル物が有するフェノール性水酸基1モルに対し1~3モルの範囲であることが好ましい。また、塩化アルミニウムの添加量は、前記中間体(α)の脱アルキル物中の水酸基1モルに対し、1~2モルの範囲であることが好ましい。反応は氷浴乃至室温程度の温度条件下で行うことが好ましい。
カルボニル基の還元は、クレメンゼン還元や、ウォルフ・キッシュナー還元等の方法より行うことができる。
前記中間体(α)のフェノール性水酸基に前記構造式(1)中のR2に相当する極性基又は極性基を有する構造部位を導入する方法は、導入する構造の種類によってそれぞれ異なり、多種多様な方法が例示できるが、如何なる方法を用いてもよい。以下、主な例を3パターン説明する。
方法2-1:R2に相当する構造部位を有するハロゲン化物を反応させる方法
具体的には、所謂ウイリアムソンエーテル合成と同様の要領で、塩基性触媒条件下、前記中間体(α)とハロゲン化物とを反応させる。両者の反応割合は、反応が効率的に進行することから、前記中間体(α)が有するフェノール性水酸基1モルに対しハロゲン化物を2~5モル範囲で用いることが好ましい。反応は有機溶媒中で行ってもよく、特にN-ジメチルホルムアミド、N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等の極性溶媒中で反応させることにより、より効率的に反応が進行する。
前記ハロゲン化物は、R2に相当する構造部位をそのまま有するものであってもよいし、R2に相当する構造部位を誘導し得る化合物であってもよい。例えば、R2がアミノ基を有する構造部位である場合には、フタルイミド基を有するハロゲン化物を反応させた後、ガブリエルアミン合成によりアミン化する方法が挙げられる。また、R2がホスホン酸基を有する構造部位である場合には、ホスホン酸エステル基を有するハロゲン化物を反応させた後、加水分解してホスホン酸基とする方法が挙げられる。
方法2-2:ハロゲン化アリルを反応させてアリルエーテル化した後、R2に相当する構造部位を有する化合物をアリル基に付加反応させる方法。
ハロゲン化アリルによるアリルエーテル化反応は、前記方法2-1で用いたハロゲン化物に替えてハロゲン化アリルを用いることにより、前記方法2-1と同様の要領で行うことができる。
アリル基への付加反応は、一般的な求核置換反応と同様の要領で行うことができる。また、アリル基に付加させる化合物はR2に相当する構造部位をそのまま有するものであってもよいし、R2に相当する構造部位を誘導し得る化合物であってもよい。例えば、R2がチオール基を有する構造部位である場合には、チオ酢酸を付加させた後、脱アセチル化してチオール基とする方法が挙げられる。
本発明では、前記半導体ナノ結晶(A)の表面修飾剤ないし分散剤として、前記カリックスアレーン化合物(B)以外の化合物(B’)を用いてもよい。前記化合物(B’)は、前記半導体ナノ結晶(A)の表面修飾剤ないし分散剤として働きうる化学構造を有していればよく、具体的には、水酸基、チオール基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、ホスフィンオキシド基、アルコキシシリル基等の極性基と、有機溶剤或いは樹脂成分等との親和性を有する炭化水素構造部位とを有する化合物が挙げられる。このような化合物(B’)は、例えば、トリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド;ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸等の長鎖脂肪酸;ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等の長鎖アルキルアミン等があげられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。これら化合物(B’)を用いる場合、前記カリックスアレーン化合物(B)との比率は特に限定なく、被表面修飾半導体ナノ結晶における所望の性能や、被表面修飾半導体ナノ結晶を混合して用いる有機溶剤或いは樹脂材料の種類等に応じて適宜調整することができる。
本発明の被表面修飾半導体ナノ結晶は、前記半導体ナノ結晶(A)の表面を前記カリックスアレーン化合物(B)で修飾したものである。その製造方法は特に限定されず、どのような方法にて製造してもよい。以下、本発明の被表面修飾半導体ナノ結晶を製造する方法の一例について説明する。
まず、前記半導体ナノ結晶(A)のコア粒子を製造する。前記半導体ナノ結晶(A)のコア粒子の製造方法は特に限定されず、公知の製法含め、多種多様な方法で製造することができる。製法例としては、湿式化学法(ホットソープ法とも呼ばれる)、有機金属化学蒸着法、分子ビームエピタキシー法、ゾルゲル法等が挙げられる。中でも、発光特性や分散性に優れる半導体ナノ結晶(A)となることから、前記湿式化学法によりコア粒子を製造することが好ましい。
前記湿式化学法とは、具体的には、コア粒子が含有する半導体化合物(1)の原料を150~350℃程度の高温有機溶媒中に投入して結晶粒子を成長させる方法である。前記半導体化合物(1)の原料は所望の半導体化合物(1)に応じて適宜選択される。例えば、前記半導体化合物(1)がInPである場合には、酢酸インジウム等のIn源と、トリス(トリアルキルシリル)ホスフィン等のP源との組み合わせ等が挙げられる。CdSeの場合には、ジメチルカドミウムや酸化カドミウム等のCd源と、Se粉末等のSe源との組み合わせが挙げられる。また、用いる有機溶媒は、前記原料の溶解性や反応温度等に応じて適宜選択される。前記コア粒子の平均粒子径は1nm~20nm程度であることが好ましい。前記コア粒子や半導体ナノ結晶(A)、被表面修飾半導体ナノ結晶の平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)により任意の複数個の結晶を直接観測し、投影二次元映像よる長短径比から求める方法や、光散乱法による測定、溶媒を用いた沈降式粒度測定法による測定等による値である。
次に、コア粒子の少なくとも一部を被覆するシェルを形成し、半導体ナノ結晶(A)を形成させると共に被表面修飾半導体ナノ結晶を得る。シェルの形成方法は特に限定されず、多種多様な方法で製造することができる。中でも、発光特性や分散性に優れる半導体ナノ結晶(A)となることから、前記コア粒子の製造と同様に、湿式化学法により形成することが好ましい。具体的には、先で得たコア粒子と、シェルが含有する半導体材料(2)の原料とを150~350℃程度の高温有機溶媒中に投入して結晶粒子を成長させる方法である。シェルが多層の場合には、一層ずつ順に形成してもよいし、原料を一括で投入して一度に形成させてもよい。前記半導体化合物(2)の原料は所望の半導体化合物(2)に応じて適宜選択される。例えば、前記半導体化合物(2)がZnSの場合には、ジアルキル亜鉛、亜鉛酸化物、脂肪酸亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛源と、チオアセトアミド、ビス(トリメチルシリル)、スルフィド元素硫黄等の硫黄源との組み合わせ等が挙げられる。また、用いる有機溶媒は、前記原料の溶解性や反応温度等に応じて適宜選択される。
前記カリックスアレーン化合物(B)や化合物(B’)は、コア粒子の製造段階で添加してもよいし、シェル形成段階で添加してもよい。また、その添加量は特に限定されず、分散媒の種類や、得られる被表面修飾半導体ナノ結晶における所望の性能等によって適宜調整される。中でも、被表面修飾半導体ナノ結晶を効率的かつ安定的に製造することができことから、コア粒子の製造段階とシェル形成段階との両方で添加することが好ましい。また、前記カリックスアレーン化合物(B)はシェル形成段階で添加することが好ましい。前記カリックスアレーン化合物(B)や化合物(B’)の添加量は、前記半導体ナノ結晶(A)の原料総質量に対し0.5~1000質量%の範囲で用いることが好ましい。コア粒子の製造段階での添加量は、前記半導体化合物(1)の原料総質量に対し、前記カリックスアレーン化合物(B)及び化合物(B’)を合計で0.5~1000質量%の範囲で用いることが好ましい。また、シェル形成段階での添加量は、コア粒子と前記半導体化合物(2)の原料との合計質量に対し、前記カリックスアレーン化合物(B)及び化合物(B’)を合計で0.5~1000質量%の範囲で用いることが好ましい。
前記被表面修飾半導体ナノ結晶の平均粒子径は1nm~50nm程度であることが好ましい。また、前記被表面修飾半導体ナノ結晶の蛍光量子収率は30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。前記被表面修飾半導体ナノ結晶の蛍光スペクトルの半値幅は60nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましい。
本発明の被表面修飾半導体ナノ結晶は、特に制限なく多種多様な用途に用いることができる。前記アリックスアレーン化合物(B)は、半導体ナノ結晶(A)への吸着点を複数有するため、一般に知られている表面修飾剤と比較して半導体ナノ結晶(A)への吸着力が強い。そのため、比較的少量の使用であっても半導体ナノ結晶(A)表面を被覆する事ができる。また、前記R1基とR2基との間に嵩高いカリックスアレーン構造が存在するため、表面修飾剤が多層で半導体ナノ結晶(A)表面に吸着する事が無く、必要最低限の表面修飾剤のみを半導体ナノ結晶(A)の表面に吸着させる事が出来る。したがって、本発明の被表面修飾発光用ナノ結晶は各種有機溶剤や樹脂材料への分散安定性に非常に優れると同時に、半導体ナノ結晶(A)濃度を高くした場合においても膜物性が優れ、蛍光量子収率或いは発光効率等の観点からも非常に優れた性能を発揮する。
前記有機溶剤は、特に限定なく多種多様なものを用いることができる。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルキルモノアルコール溶剤;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のアルキルポリオール溶剤;2-エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート溶剤;1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等の環状エーテル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン溶剤;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル溶剤:ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤等が挙げられる。
本発明の被表面修飾半導体ナノ結晶は、特に制限なく多種多様な用途に用いることができる。本発明の被表面修飾半導体ナノ結晶の用途としては、例えば、表示ディスプレイ分野、電気・電子デバイス分野、蛍光インキ、コーティング剤、レンズ、バイオ用蛍光プローブ等が挙げられる。前記表示ディスプレイ分野について、更に詳しくは、カラーフィルタ、バックライト、波長変換膜等が挙げられる。前記電気・電子デバイス分野について、更に詳しくは、LED、光発電や太陽電池、半導体レーザー、受光センサー、波長変換素子、光光変換素子等が挙げられる。
前記各種用途において、前記被表面修飾半導体ナノ結晶は、主に樹脂材料に分散させて用いることが一般的である。前記被表面修飾半導体ナノ結晶を樹脂材料に分散させる方法は特に限定されず、例えば、樹脂材料中に直接混合する方法や、前記被表面修飾半導体ナノ結晶の溶剤溶液を樹脂と混合する方法、前記被表面修飾半導体ナノ結晶、有機溶剤、及び樹脂材料を一括で混合する方法等が挙げられる。また、前記被表面修飾半導体ナノ結晶、有機溶剤及び樹脂材料を含有する組成物を一度調整した後に脱溶剤を行ってもよい。
前記樹脂材料は各用途に応じて適宜好適なものを選択することができるが、基本的には光透過性を有する必要がある。なお、硬化性の樹脂材料においては、硬化前の状態に多少濁り等があっても、硬化物において光透過性を有していれば十分である。このような樹脂材料としては、(メタ)アクリレート化合物やオキセタン化合物等の活性エネルギー線硬化性樹脂材料;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂材料;アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂等の熱可塑性樹脂材料等が挙げられる。前記被表面修飾半導体ナノ結晶を分散させた樹脂材料は、インクジェットプリント、レーザープリント、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、バーコート、スピンコート等の方法で基材に印刷又は塗布し適宜硬化させる方法や、金型を用いて賦形する方法にて所望の応用物を得ることができる。
半導体ナノ結晶の応用用途のうち特に広く検討されているものとして、カラーフィルタ用途が挙げられる。カラーフィルタの製造法としては、フォトリソグラフィー法や、インクジェット法等が挙げられる。特に、製造工程の簡略化等の観点では、インクジェット法による製造が好ましい。以下、本発明の被表面修飾半導体ナノ結晶の利用法の一例として、これを用いたインクジェット法によるカラーフィルタの製造について簡単に説明する。
前記被表面修飾半導体ナノ結晶をインクジェット法によるカラーフィルタの製造に用いる場合、前記樹脂材料としては、活性エネルギー線硬化性樹脂材料又は熱硬化性樹脂材料を用いる。樹脂材料として活性エネルギー線硬化性樹脂材料を用いた場合のインクジェット用樹脂組成物を組成物(1)とし、樹脂材料として熱硬化性樹脂材料を用いた場合のインクジェット用樹脂組成物を組成物(2)として説明する。
前記組成物(1)について、前記活性エネルギー線硬化性樹脂材料としては各種の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。各種の(メタ)アクリレート化合物は、具体的には、モノ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R1)、脂肪族炭化水素型ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R2)、脂環式ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R3)、芳香族ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R4)、シリコーン鎖を有する(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R5)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R6)、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R7)、アクリル(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R8)、デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R9)等が挙げられる。
前記モノ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R1)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノール(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物;下記構造式(4)
(式中R
4は水素原子又はメチル基である。)
で表される化合物等のモノ(メタ)アクリレート化合物:前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素型ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R2)は、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記各種の脂肪族炭化水素型ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種の脂肪族炭化水素型ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
前記脂環式ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R3)は、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種の脂環式ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種の脂環式ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
前記芳香族ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R4)は、例えば、ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、下記構造式(5)
[式中R
5はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基の何れかである。]
で表されるビカルバゾール化合物、下記構造式(6-1)又は(6-2)
[式中R
5はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基の何れかである。]
で表されるフルオレン化合物等の芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種の芳香族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種の芳香族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
前記シリコーン鎖を有する(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R5)は、分子構造中にシリコーン鎖と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であれば特に限定されず、多種多様なものを用いてよい。また、その製造方法も特に限定されない。前記シリコーン鎖を有する(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R5)の具体例としては、例えば、アルコキシシラン基を有するシリコーン化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物との反応物等が挙げられる。
前記アルコキシシラン基を有するシリコーン化合物は、市販品の例として、例えば、信越化学工業株式会社製「X-40-9246」(アルコキシ基含有量12質量%)、「KR-9218」(アルコキシ基含有量15質量%)、「X-40-9227」(アルコキシ基含有15質量%)、「KR-510」(アルコキシ基含有量17質量%)、「KR-213」(アルコキシ基含有量20質量%)、「X-40-9225」(アルコキシ基含有量24質量%)、「X-40-9250」(アルコキシ基含有量25質量%)、「KR-500」(アルコキシ基含有量28質量%)、「KR-401N」(アルコキシ基含有量33質量%)、「KR-515」(アルコキシ基含有量40質量%)、「KC-89S」(アルコキシ基含有量45質量%)等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、アルコキシ基含有量が15~40質量%の範囲であることが好ましい。また、シリコーン化合物として2種類以上を併用する場合には、それぞれのアルコキシ基含有量の平均値が15~40質量%の範囲であることが好ましい。
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;前記各種の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
また、前記シリコーン鎖を有する(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R5)として、片末端に(メタ)クリロイル基を有するシリコーンオイルである信越化学工業株式会社製「X-22-174ASX」(メタクリロイル基当量900g/当量)、「X-22-174BX」(メタクリロイル基当量2,300g/当量)、「X-22-174DX」(メタクリロイル基当量4,600g/当量)、「KF-2012」(メタクリロイル基当量4,600g/当量)、「X-22-2426」(メタクリロイル基当量12,000g/当量)、「X-22-2404」(メタクリロイル基当量420g/当量)、「X-22-2475」(メタクリロイル基当量420g/当量);両末端に(メタ)クリロイル基を有するシリコーンオイルである信越化学工業株式会社製「X-22-164」(メタクリロイル基当量190g/当量)、「X-22-164AS」(メタクリロイル基当量450g/当量)、「X-22-164A」(メタクリロイル基当量860g/当量)、「X-22-164B」(メタクリロイル基当量1,600g/当量)、「X-22-164C」(メタクリロイル基当量2,400g/当量)、「X-22-164E」(メタクリロイル基当量3,900g/当量)、「X-22-2445」(アクリロイル基当量1,600g/当量);1分子中に(メタ)アクリロイル基を複数有するオリゴマー型シリコーン化合物である信越化学工業株式会社製「KR-513」(メタクリロイル基当量210g/当量)、「-40-9296」(メタクリロイル基当量230g/当量)、東亞合成株式会社製「AC-SQ TA-100」(アクリロイル基当量165g/当量)、「AC-SQ SI-20」(アクリロイル基当量207g/当量)、「MAC-SQ TM-100」(メタクリロイル基当量179g/当量)、「MAC-SQ SI-20」(メタクリロイル基当量224g/当量)、「MAC-SQ HDM」(メタクリロイル基当量239g/当量)等の市販品を用いても良い。
前記シリコーン鎖を有する(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R5)は、重量平均分子量(Mw)が1,000~10,000の範囲であるものが好ましく、1,000~5,000の範囲であるものがより好ましい。また、その(メタ)アクリロイル基当量が150~5,000g/当量の範囲であることが好ましく、150~2,500g/当量の範囲であることがより好ましい。
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R6)は、例えば、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸又はその無水物を反応させて得られるものが挙げられる。前記エポキシ樹脂は、例えば、ヒドロキノン、カテコール等の2価フェノールのジグリシジルエーテル;3,3’-ビフェニルジオール、4,4’-ビフェニルジオール等のビフェノール化合物のジグリシジルエーテル;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;1,4-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、1,6-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、ビナフトール、ビス(2,7-ジヒドロキシナフチル)メタン等のナフトール化合物のポリグリジシルエーテル;4,4’,4”-メチリジントリスフェノール等のトリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;前記各種のエポキシ樹脂の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のエポキシ樹脂の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R7)は、例えば、各種のポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、及び必要に応じて各種のポリオール化合物を反応させて得られるものが挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物は、例えばブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記構造式(7)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。
[式中、R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基の何れかである。R
7はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、又は構造式(7)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。qは0又は1~3の整数であり、pは1以上の整数である。]
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;前記各種の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
前記ポリオール化合物は、例えば、エチレングリコール、プロプレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R8)は、例えば、水酸基やカルボキシ基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(β)を更に反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られるものが挙げられる。
前記反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(α)は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有(メタ)アクリレートモノマー;2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記アクリル樹脂中間体は、前記(メタ)アクリレートモノマー(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させたものであってもよい。前記その他の重合性不飽和基含有化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のシクロ環含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
前記(メタ)アクリレートモノマー(β)は、前記(メタ)アクリレートモノマー(α)が有する反応性官能基と反応し得るものでれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレートモノマー(α)として前記水酸基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレートモノマー(β)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレートモノマー(α)として前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレートモノマー(β)として前記グリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレートモノマー(α)として前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレートモノマー(β)として前記水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレートモノマー(α)として前記グリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレートモノマー(β)として前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R8)は、重量平均分子量(Mw)が5,000~50,000の範囲であることが好ましい。また、(メタ)アクリロイル基当量が200~300g/当量の範囲であることが好ましい。
前記デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R9)とは、規則性のある多分岐構造を有し、各分岐鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂のことをいい、デンドリマー型の他、ハイパーブランチ型或いはスターポリマーなどと呼ばれている。このような化合物は、例えば、下記構造式(8-1)~(8-8)で表されるものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、規則性のある多分岐構造を有し、各分岐鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂であればいずれのものも用いることができる。
(式中R
4は水素原子又はメチル基であり、R
8は炭素原子数1~4の炭化水素基である。)
このようなデンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R9)として、大阪有機化学株式会社製「ビスコート#1000」[重量平均分子量(Mw)1,500~2,000、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数14]、「ビスコート1020」[重量平均分子量(Mw)1,000~3,000]、「SIRIUS501」[重量平均分子量(Mw)15,000~23,000]、MIWON社製「SP-1106」[重量平均分子量(Mw)1,630、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数18]、SARTOMER社製「CN2301」、「CN2302」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数16]、「CN2303」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数6]、「CN2304」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数18]、新日鉄住金化学株式会社製「エスドリマーHU-22」、新中村化学株式会社製「A-HBR-5」、第一工業製薬株式会社製「ニューフロンティアR-1150」、日産化学株式会社製「ハイパーテックUR-101」等の市販品を用いても良い。
前記デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R9)は、重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000の範囲であることが好ましい。また、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数が5~30の範囲であるものが好ましい。
これら(メタ)アクリレート化合物は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。中でも、前記モノ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R1)、前記脂肪族炭化水素型ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R2)、前記脂環式ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R3)、前記芳香族ポリ(メタ)アクリレート化合物及びその変性体(R4)のような比較的低分子量のものと、前記シリコーン鎖を有する(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R5)、前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R6)、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R7)、前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R8)、前記デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂及びその変性体(R9)のような比較的高分子量のものとを組み合わせて用いることが好ましい。
前記組成物(1)は、(メタ)アクリレート化合物以外のその他の樹脂成分を含有していてもよい。その他の樹脂成分は粘度の調整や、印刷基材への接着性改良等を目的に用いるものであり、例えば、メチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート系共重合物等のアクリル樹脂;ポリスチレン、メチルメタクリレート-スチレン系共重合物;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリブタジエンやブタジエン-アクリロニトリル系共重合物などのポリブタジエン樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂等が挙げられる。その他の樹脂成分を使用する場合には、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して20質量部以下で使用することが好ましく、10質量部以下で使用することが好ましい。
前記組成物(1)は光重合開始剤を配合することが好ましい。前記光重合開始剤は、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いればよい。光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記光重合開始剤の市販品は、例えば、BASF社製「IRGACURE127」、「IRGACURE184」、「IRGACURE250」、「IRGACURE270」、「IRGACURE290」、「IRGACURE369E」、「IRGACURE379EG」、「IRGACURE500」、「IRGACURE651」、「IRGACURE754」、「IRGACURE819」、「IRGACURE907」、「IRGACURE1173」、「IRGACURE2959」、「IRGACURE MBF」、「IRGACURE TPO」、「IRGACURE OXE 01」、「IRGACURE OXE 02」等が挙げられる。
前記光重合開始剤の使用量は、組成物(1)中0.05~20質量%の範囲で用いることが好ましく、0.1~10質量%の範囲で用いることがより好ましい。
前記組成物(1)は保存安定性を高めるため、ハイドロキノン、メトキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン、P-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等の重合禁止剤を含有していてもよい。これら重合禁止剤の添加量は組成物(1)中0.01~2質量%の範囲であることが好ましい。
前記組成物(1)は、必要に応じて色材を含有していてもよい。当該色材としては、公知の色材を使用することができ、例えば、ジケトピロロピロール顔料、アニオン性赤色有機染料等の赤色色材;ハロゲン化銅フタロシニアン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料、アゾ系黄色有機染料等の緑色色材;ε型銅フタロシニアン顔料、カチオン性青色有機染料等の青色色材等が挙げられる。
前記組成物(1)は、必要に応じて各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光増感剤、シリコン系添加剤、シランカップリング剤、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤、密着補助剤、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。これら添加剤の添加量は組成物(1)中0.05~20質量%の範囲であることが好ましい。
前記組成物(1)は必要に応じて溶剤を含有させても良いが、作業環境等の観点から溶剤の含有率は少ないほうが好ましい。具体的には、組成物(1)中の溶剤含有率は100ppm以下が好ましく、実質的に含有しないことが好ましい。
前記組成物(1)は、その粘度が1~1000mPa・secとなるように設計することが好ましい。なお当該粘度は、回転粘度計(東機産業社製粘度測定器:TVE-20L)を用い測定される値である。また、前記組成物(1)は、その表面張力が20~50mN/mであることが好ましく、30~50mN/mであることがより好ましい。
前記組成物(2)について、熱硬化性樹脂材料としては、エポキシ化合物等が挙げられる。前記エポキシ化合物の具体例としては、例えば、脂肪族ポリオール化合物のポリグリシジルエーテル(R10)、芳香族ポリオール化合物のポリグリシジルエーテル(R11)、各種フェノール性水酸基含有化合物と各種アルデヒド化合物との反応物であるノボラック型樹脂のポリグリシジルエーテル(R12)、グリシジル基含有アクリル樹脂(R13)、グリシジルアミン化合物(R14)、脂環構造含有エポキシ樹脂(R15)等が挙げられる。
前記脂肪族ポリオール化合物のポリグリシジルエーテル(R10)は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物のポリグリシジルエーテル化物等が挙げられる。ポリグリシジルエーテル(R10)は、エポキシ基と水酸基との開環付加反応物等を一部含有してもよい。
前記芳香族ポリオール化合物のポリグリシジルエーテル(R11)は、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビナフトール、ビス(ジヒドロキシナフチル)メタン、トリフェノールメタン等の芳香族ポリオール化合物のポリグリシジルエーテル化物等が挙げられる。ポリグリシジルエーテル(R11)は、エポキシ基と水酸基との開環付加反応物等を一部含有してもよい。
各種フェノール性水酸基含有化合物と各種アルデヒド化合物との反応物であるノボラック型樹脂のポリグリシジルエーテル(R12)について、前記フェノール性水酸基含有化合物は、例えば、フェノール、ナフトール、アントラセノールの他、これらの芳香核上の水素原子の一つ乃至複数が脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換された化合物が挙げられる。前記アルデヒド化合物は、例えば、ホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、ヒドロキシナフトアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物等が挙げられる。
前記グリシジル基含有アクリル樹脂(R13)は、グリシジル(メタ)アクリレートや4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーを必須の成分とするアクリル樹脂等が挙げられる。アクリル樹脂(R13)は前記グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体であってもよいし、その他のモノマー共重合させたものであってもよい。前記その他のモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のシクロ環含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
これらエポキシ化合物は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。中でも、比較的低分子量のものと、比較的高分子量のものとを組み合わせて用いることが好ましい。
前記組成物(2)は前記エポキシ化合物の硬化剤を含有する。硬化剤は、例えば、フェノール系硬化剤、酸系硬化剤、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、尿素系硬化剤、リン系化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
前記フェノール系硬化剤は、例えば、ポリヒドロキシベンゼン、ポリヒドロキシナフタレン、ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、ノボラック型フェノール樹脂、フェニレン又はナフチレンエーテル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応物型フェノール樹脂等が挙げられる。
前記酸系硬化剤は、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドエチレンテトラヒドロフタル酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸等の酸無水物;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。
前記アミン系硬化剤は、例えば、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン化合物;N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロ環含有アミン化合物;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等nポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物;ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、トリエチレンジアミン(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、ピリジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)-1,3,5-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン等の複素環式アミン化合物;フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、N-メチルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ジエチルトルエンジアミン、キシリレンジアミン、α-メチルベンジルメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香環含有アミン化合物;イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;2-メチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物等が挙げられる。
前記アミド系硬化剤は、例えば、ジシアンジアミド、或いは、脂肪族ジカルボン酸やダイマー酸等のカルボン酸化合物とアミン化合物との反応物等が挙げられる。
前記尿素系硬化剤は、例えば、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N-ジメチル尿素、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素等が挙げられる。
これら硬化剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。硬化剤の配合量は特に限定されないが、エポキシ化合物中のエポキシ基との反応により硬化する硬化剤の場合には、エポキシ化合物中のエポキシ基と硬化剤中の官能基との割合がおおよそ当量になるように配合することが好ましい。また、硬化触媒として働く化合物の場合には、エポキシ樹脂に対し0.1~20質量%程度配合することが好ましい。
前記組成物(2)は、必要に応じて色材を含有していてもよい。当該色材としては、公知の色材を使用することができ、例えば、ジケトピロロピロール顔料、アニオン性赤色有機染料等の赤色色材;ハロゲン化銅フタロシニアン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料、アゾ系黄色有機染料等の緑色色材;ε型銅フタロシニアン顔料、カチオン性青色有機染料等の青色色材等が挙げられる。
前記組成物(2)は、必要に応じて各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光増感剤、シリコン系添加剤、シランカップリング剤、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤、密着補助剤、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。これら添加剤の添加量は組成物(1)中0.05~20質量%の範囲であることが好ましい。
前記組成物(2)は必要に応じて溶剤を含有させても良い。用いる溶剤は、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテー、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、安息香酸プロピル、炭酸ジエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3―エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、フェノール、ジエチルエーテル、アニソール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、2-エトキシエチルアセテート、アセトン、メチルイソブチルケトン類等が挙げられる。これら溶剤は主に組成物(2)のインクジェット吐出性を調整するために用いられ、その配合量は特に限定されない。
前記組成物(2)は、その粘度が1~1000mPa・secとなるように設計することが好ましい。なお当該粘度は、回転粘度計(東機産業社製粘度測定器:TVE-20L)を用い測定される値である。また、前記組成物(2)は、その表面張力が20~50mN/mであることが好ましく、30~50mN/mであることがより好ましい。
前記組成物(1)や(2)を用いたインクジェット法によるカラーフィルタの製造は、公知慣用の方法にて行うことができる。以下、その一例について説明する。
前記カラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備え、前記着色層の少なくとも1つを前記組成物(1)や(2)を用いて形成する。通常、前記着色層はR、G、Bの三色の着色領域を有する。
前記透明基板は、可視光に対して透明な基材であればよく、その材質は特に限定されない。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材や、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等が挙げられる。透明基板の厚みは特に限定されないが、一般的には100μm~1mm程度のものを使用することが通常である。
前記透明基板は、一般的なカラーフィルタ同様、パターン状に形成された遮光部を有することが好ましい。当該遮光部は前記組成物(1)や(2)を各着色領域内に付着させるための隔壁であり、各着色層の間及び着色層形成領域の外側を取り囲むように設けられることにより、表示画像のコントラストを向上させることができる。
遮光部はどのように形成されたものでもよく、公知慣用の方法により形成することができる。具体例としては、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜や、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層等が挙げられる。遮光部が遮光性粒子を含有させた樹脂層である場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。遮光部の厚さは、金属薄膜の場合は1000~2000Å程度であることが好ましく、遮光性樹脂層の場合は0.5~2.5μm程度であることが好ましい。
前記着色層は、前記組成物(1)や組成物(2)を用いて形成される。着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。着色層の平均厚みは1~5μmの範囲であることが好ましく、さらに1~2.5μmの範囲であることが好ましい。
前記着色層は、例えば下記の方法により形成することができる。まず、R、G、Bそれぞれように調整された前記組成物(1)或いは組成物(2)を用意する。次に、透明基板表面に遮光部をパターニングし、着色領域を形成する。次いで、R、G、Bそれぞれの着色層形成領域に対応する色の前記組成物(1)或いは組成物(2)をインクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する。最後に、前記組成物(1)或いは組成物(2)を硬化させて、着色層が形成される。
硬化方法について、用いた組成物が組成物(1)である場合には、紫外線や電子線を照射して硬化させる。紫外線照射により硬化させる場合には、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等を有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが調整される。高圧水銀灯を使用する場合には、通常80~160W/cmの範囲である光量を有したランプ1灯に対して搬送速度5~50m/分の範囲で硬化させることが好ましい。一方、電子線により硬化させる場合には、通常10~300kVの範囲である加速電圧を有する電子線加速装置にて、搬送速度5~50m/分の範囲で硬化させることが好ましい。前記組成物(1)が有機溶剤を含有する場合には、光を照射する前に60~80℃程度の温度条件下、数秒から数分間の乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥は減圧条件下で行うことにより、より低温で行うことができる。
他方、用いた組成物が組成物(2)である場合には、80~300℃程度の温度条件下で加熱硬化させる。前記組成物(2)が有機溶剤を含有する場合には、60~150℃程度の温度条件下、数秒から数分間の乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥は減圧条件下で行うことにより、より低温で行うことができる。硬化は温度条件を変えて数段に分けて行ってもよい。
前記カラーフィルタは、前記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
以下に製造例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例中の部及び%は、特に記載のない限り、すべて質量基準である。
本願実施例で製造したカリックスアレーン化合物の構造同定は、主に下記条件のNMR及びFD-MSの測定結果に基づき行った。
1H-NMRはJEOL RESONANCE製「JNM-ECM400S」を用い、下記条件により測定した。
磁場強度:400MHz
積算回数:16回
溶媒:重水素化クロロホルム
試料濃度:2mg/0.5ml
13C-NMRはJEOL RESONANCE製「JNM-ECM400S」を用い、下記条件により測定した。
磁場強度:100MHz
積算回数:1000回
溶媒:重水素化クロロホルム
試料濃度:2mg/0.5ml
FD-MSは日本電子株式会社製「JMS-T100GC AccuTOF」を用い、下記条件により測定した。
測定範囲:m/z=50.00~2000.00
変化率:25.6mA/min
最終電流値:40mA
カソード電圧:-10kV
実施例1 カリックスアレーン化合物(B-1)の製造
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた300ミリリットルの四つ口フラスコに、下記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーン15g、脱水N,N-ジメチルホルムアミド84.49g、50%NaOH水溶液22.19gを仕込み、窒素フロー環境下、65℃に加熱して、300rpmで撹拌した。溶液は淡黄色透明であった。次いで、滴下ロートを用いて臭化アリル33.56gを30分かけて滴下した。滴下終了から30分後、乳白色の固体が析出しスラリー状になった。更に5時間反応させた後、酢酸と純水をゆっくり加えて反応を停止させた。桐山ロートで結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して下記構造式(b)で表されるアリルエーテル化物14.16gを得た。
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた200ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(b)で表されるアリルエーテル化物7g、脱水トルエン15.95g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.86g、及びチオ酢酸5.27gを仕込み、窒素フロー環境下、65℃に加熱して、300rpmで撹拌しながら12時間反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物を分液ロートに移し、1N炭酸水素ナトリウム水溶液15g及びクロロホルム15gを投入して有機相を分液した。水相にクロロホルム15gを加えて有機成分を抽出する作業を3回行い、得られた抽出液を先で回収した有機相と合わせた。有機相を1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去し、得られた赤色透明液体を氷冷しながら、メタノールを加えて結晶物を再沈殿させた。桐山ロートで灰色結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して下記構造式(c)で表される化合物8.754gを得た。
攪拌装置、温度計及び還流冷却管を取り付けた100ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(c)で表される化合物5g、テトラヒドロフラン12.94g、メタノール28.77g、37%濃塩酸2.669gを仕込み、窒素フロー環境下、65℃に加熱して、300rpmで撹拌しながら8時間反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物を分液ロートに移し、イオン交換水20gおよびクロロホルム20g投入して有機相を分液した。水相にクロロホルム20gを加えて有機成分を抽出する作業を3回行い、得られた抽出液を先で回収した有機相と合わせた。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液15gで洗浄し、更に、飽和食塩水で洗浄した。有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過した後、エバポレーターで溶媒を留去し、赤色透明液体を得た。赤色透明液体を氷冷しながらノルマルヘキサンとメタノールを加えて生成物を再沈殿させた。桐山ロートで乳白色結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して下記構造式(d)で表されるカリックスアレーン化合物(B-1)3.33gを得た。
実施例2 カリックスアレーン化合物(B-2)の製造
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた100ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーンを2g、脱水N,N-ジメチルホルムアミド10g、60%水素化ナトリウムオイルディスパージョン2gを仕込み、窒素フロー環境下、300rpmで撹拌しながら室温で30分間反応させた。反応混合物は黄土色の懸濁液であった。脱水N,N-ジメチルホルムアミド5gにブロモ酢酸4.585gを溶解させた溶液を滴下ロートで30分かけて滴下した。滴下終了から30分後、黄土色の固体が析出しスラリー状になった。更に5時間反応させた後、酢酸と純水をゆっくり加えて反応を停止させた。桐山ロートで結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、下記構造式(e)で表されるカリックスアレーン化合物(B-2)2.069gを得た。
実施例3 カリックスアレーン化合物(B-3)の製造
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた100ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(b)で表されるアリルエーテル化物2g、脱水トルエン3.55g、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の5.5質量%キシレン溶液0.0089gを仕込み、窒素フロー環境下、300rpmで撹拌しながら氷浴中で30分間反応させた。滴下ロートを用いてトリエトキシシラン1.550gを30分かけて滴下した。滴下終了から30分後、50℃に加熱し、更に8時間反応させた。溶液は淡黄色透明であった。室温まで冷却した後、活性炭と珪藻土で白金(0)錯体を濾過し、濾液を濃縮して淡黄色透明の液体を得た。得られた液体を真空乾燥して下記構造式(f)で表されるカリックスアレーン化合物(B-3)2.937gを得た。
実施例4 カリックスアレーン化合物(B-4)の製造
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた100ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーンを1.5g、脱水テトラヒドロフラン50g、60%水素化ナトリウムオイルディスパージョン4.8g、N-(2-ブロモエチル)フタルイミド30.48gを仕込み、窒素フロー環境下、300rpmで撹拌した。反応混合物は淡黄色の懸濁液になった。フラスコ内が還流するまで加熱し、12時間反応させた。メタノールをゆっくり加えて反応を停止させた後、反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム50gおよび1N塩酸25gを投入して有機相を分液した。水相にクロロホルム20gを加えて有機成分を抽出する作業を3回行い、得られた抽出液を先で得た有機相と合わせた。有機相を1M炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、更にイオン交換水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去した後、氷冷しながらメタノールを加えて生成物再沈殿させた。桐山ロートで乳白色結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して下記構造式(g)で表されるフタルイミド化合物1.503gを得た。
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた100ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(g)で表されるフタルイミド化合物1g、エタノール25g、95%ヒドラジン一水和物0.7940gを仕込み、窒素フロー環境下、300rpmで撹拌しながらフラスコ内が還流するまで加熱して5時間反応させた。反応混合物は淡黄色の懸濁液になった。室温まで冷却した後、反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム20gおよびイオン交換水20gを投入して有機相を分液した。水相にクロロホルム20gを加えて有機成分を抽出する作業を3回繰り返し、得られた抽出液を先で得た有機相と合わせた。有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過した後、エバポレーターで溶媒を留去した。残った反応生成物にメタノール10gと37%濃塩酸0.5908gを加え、窒素フロー環境下、フラスコ内が還流するまで加熱して4時間反応させた。室温まで冷却し、反応混合物を分液ロートに移してイオン交換水20gおよびクロロホルム20g投入し、有機相を分液した。水相にクロロホルム20gを加えて有機成分を抽出する作業を3回繰り返し、得られた抽出液を先で得た有機相と合わせた。有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去した後、メタノールを加えて生成物を再沈殿させた。桐山ロートで乳白色結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して下記構造式(h)で表されるカリックスアレーン化合物(B-4)0.3978gを得た。
実施例5 カリックスアレーン化合物(B-5)の製造
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた100ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーンを1.5g、脱水テトラヒドロフラン50g、60%水素化ナトリウムオイルディスパージョン1.109g、2-ブロモエチルホスホン酸ジエチル6.80gを仕込み、窒素フロー環境下、300rpmで撹拌した。反応混合物は淡黄色の懸濁液になった。フラスコ内が還流するまで加熱し、12時間反応させた。メタノールをゆっくり加えて反応を停止させ、反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム50gおよび1N塩酸25gを投入して有機相を分液した。水相にクロロホルム20gを加えて有機成分を抽出する作業を3回繰り返し、得られた抽出液を先で得た有機相と合わせた。有機相をイオン交換水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去した後、氷冷しながらメタノールを加えて生成物を再沈殿させた。桐山ロートで乳白色結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して下記構造式(i)で表されるホスホン酸エステル化合物1.885gを得た。
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた100ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(i)で表されるホスホン酸エステル化合物1.266g、脱水アセトニトリル10g、臭化トリメチルシリル2.449gを仕込み、窒素フロー環境下、300rpmで撹拌しながらフラスコ内が還流するまで加熱し、6時間反応させた。反応混合物は淡黄色の懸濁液になった。メタノール5gを加えてフラスコ内が還流するまで加熱し、12時間反応させた。更にメタノール5gを加えて2時間反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム20gおよびイオン交換水20gを投入して有機相を分液した。水相にクロロホルム10gを加えて有機成分を主ツウ出する作業を3回繰り返し、得られた抽出液を先で得た有機相と合わせた。有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去した後、氷冷しながらメタノールを加えて生成物を再沈殿させた。桐山ロートで乳白色結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して下記構造式(j)で表されるカリックスアレーン化合物(B-5)0.758gを得た。
実施例6 カリックスアレーン化合物(B-6)の製造
攪拌装置、温度計及び還流冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、前記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーン50g、フェノール32.26gおよび脱水トルエン350mlを仕込み、窒素フロー環境下、300rpmで撹拌した。tert-ブチルカリックス[4]アレーンは溶解せずに懸濁していた。フラスコを氷浴に漬けながら無水塩化アルミニウム(III)51.37gを数回に分けて投入した。溶液の色が淡橙透明に変化すると共に、底に無水塩化アルミニウム(III)が沈殿していた。室温で5時間撹拌を続けた後、反応混合物を1Lのビーカーに移し、氷、1N塩酸100ml、トルエン350mlを加えて反応を停止させた。溶液の色は淡黄色透明に変化した。反応混合物を分液ロートに移し、有機相を回収した。水相にトルエン100mlを加えて有機成分を抽出する作業を3回行い、得られた抽出液を先で回収した有機相と合わせた。有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した後、ろ過して有機相を回収した。エバポレーターで溶媒を留去し、白色結晶と無色透明液体の混合物を得た。混合物を撹拌しながらメタノールをゆっくり添加し、液体中に溶解していた生成物を再沈殿させた。桐山ロートで白色結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して下記構造式(k)で表される化合物29.21gを得た。
攪拌装置、温度計及び還流冷却管を取り付けた200ミリリットルの四つ口フラスコに、ブチリルクロリド10.61g及びニトロベンゼン101.5gを入れ攪拌した。フラスコを氷浴に漬けながら無水塩化アルミニウム(III)16.96gを数回に分けて投入した。溶液の色が淡橙透明に変化すると共に、底に無水塩化アルミニウム(III)が沈殿していた。室温で30分攪拌を続けた後、前記構造式(k)で表される化合物7g(を数回に分けて投入した。反応混合物は発泡し、橙透明溶液となった。室温で5時間反応させた後、1Lのビーカーに内容物を移し、氷と1N塩酸100ml、クロロホルム30gをゆっくり加えて反応を停止させた。溶液の色は淡黄色透明になった。反応混合物を分液ロートに移し、有機相を回収した。水相にクロロホルム30gを加えて有機成分を抽出する作業を3回繰り返し、得られた抽出液を先で得た有機相と合わせた。有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過した後、エバポレーターで溶媒を留去して黄色透明の液体を得た。得られた黄色透明液体を氷冷しながらメタノールを加え、生成物を再沈殿させた。桐山ロートで白色結晶をろ過した後、クロロホルムおよびメタノールで再結晶し、更に真空乾燥して下記構造式(l)で表される化合物8.018gを得た。
攪拌装置、温度計及び還流冷却管を取り付けた300ミリリットルの四つ口フラスコに、前記構造式(l)で表される化合物7g及びジエチレングリコールモノエチルエーテル81.44gを入れ攪拌した。ヒドラジン一水和物2.585g加えた後、水酸化カリウムペレット6.809gを加えた。100℃まで加熱して30分攪拌した後、フラスコ内が還流するまで加熱し、12時間反応させた。90℃まで冷却した後、イオン交換水30gを加えて30分攪拌した。室温まで冷却した後、混合溶液をビーカーに移し、1N塩酸100ml及びクロロホルム30gを加えた。混合物を分液ロートに移して有機相を分液した。水相にクロロホルム30gを加えて有機成分を抽出する作業を3回繰り返し、得られた抽出液を先で得た有機相と合わせた。有機相に無水硫酸マグネシウムを加えた脱水し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去して橙色の粘稠液体を得、ヘキサンおよびメタノールを加えて生成物を再沈殿させた。桐山ロートで白色結晶をろ過し、得られた乳白色結晶を真空乾燥して下記構造式(m)で表される化合物4.156gを得た。
実施例1において、前記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーンの代わりに前記構造式(m)で表される化合物を用い、実施例1と同様に反応させて、下記構造式(n)で表されるアリルエーテル化物を得た。更に、前記構造式(b)で表されるアリルエーテル化物の代わりに下記構造式(n)で表されるアリルエーテル化物を用い、実施例1と同様に反応させて、下記構造式(o)で表されるカリックスアレーン化合物(B-6)を得た。
実施例7 カリックスアレーン化合物(B-7)の製造
実施例2において、前記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーンの変わりに前記構造式(m)で表される化合物を用い、実施例2と同様に反応させて、下記構造式(p)で表されるカリックスアレーン化合物(B-7)を得た。
実施例8 カリックスアレーン化合物(B-8)の製造
実施例3において、前記構造式(b)で表されるアリルエーテル化物の代わりに前記構造式(n)で表されるアリルエーテル化物を用い、実施例3と同様に反応させて下記構造式(q)で表されるカリックスアレーン化合物(B-8)を得た。
実施例9 カリックスアレーン化合物(B-9)の製造
実施例4において、前記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーンの変わりに前記構造式(m)で表される化合物を用い、実施例4と同様に反応させて下記構造式(r)で表されるカリックスアレーン化合物(B-9)を得た。
実施例10 カリックスアレーン化合物(B-10)の製造
実施例5において、前記構造式(a)で表されるtert-ブチルカリックス[4]アレーンの変わりに前記構造式(m)で表される化合物を用い、実施例5と同様に反応させて下記構造式(s)で表されるカリックスアレーン化合物(B-10)を得た。
実施例1~10 被表面修飾半導体ナノ結晶の製造及び評価
下記要領で被表面修飾半導体ナノ結晶を製造し、各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
〈被表面修飾半導体ナノ結晶の製造〉
100mlのフラスコに酢酸インジウム2.33g、トリオクチルホスフィンオキサイド4.0g、ラウリン酸4.8gを仕込み、窒素ガスでバブリングしながら160℃で40分撹拌した。更に250℃で20分間撹拌した後、270℃まで加熱して撹拌を続けた。グローブボックス内でトリス(トリメチルシリル)ホスフィンをトリオクチルホスフィンに溶解させて25質量%溶液を調整し、ガラス注射器に6.0ml充填した。これを270℃に保たれたフラスコ中に注入し、250℃で5分間反応させた。フラスコを室温まで冷却し、トルエン10mlとエタノール40mlを加えて微粒子を凝集させた。遠心分離機を用いて微粒子を沈殿させた後、上澄み液を廃棄し、沈殿した微粒子をトリオクチルホスフィンに溶解させた。この操作を3回繰り返して未反応の原料を洗浄する事により、リン化インジウム(InP)微粒子のトリオクチルホスフィン溶液を得た。
先で得たリン化インジウム(InP)微粒子のトリオクチルホスフィン溶液を、リン化インジウム(InP)微粒子量が120mgとなるように100mlのフラスコに投入した。ステアリン酸亜鉛2.53gをトリオクチルホスフィン15mlに溶解させ、更に、カリックスアレーン化合物0.1gを加えて溶解させて溶液(1)とした。チオアセトアミド0.3gをトリオクチルホスフィン15mlに溶解させて溶液(2)とした。前記溶液(1)と溶液(2)とを混合し、硫化亜鉛(ZnS)溶液を得た。硫化亜鉛(ZnS)溶液の1/4を上記フラスコに投入し、200℃まで加熱して30分撹拌した後、80℃まで冷却した。この操作を4回繰り返して硫化亜鉛(ZnS)溶液の全量を仕込んだ。反応終了後、フラスコを常温まで冷却し、トルエン30mlとエタノール200mlを加えて微粒子を凝集させた。遠心分離機を用い、沈殿物として目的の被表面修飾半導体ナノ結晶を得た。
〈分散安定性試験〉
得られた被表面修飾半導体ナノ結晶をトルエン、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチルそれぞれに溶解させて、濁りや沈殿の有無で評価した。
A:溶媒中に沈殿物が無く、濁りも無い状態。
B:溶媒中に沈殿物が存在する、もしくは溶液が濁っている。
〈加熱時重量減少量の測定〉
被表面修飾半導体ナノ結晶を真空乾燥機にて完全にドライアップし、これをアルミパン上に約5mg計量した。SII製のTG-DTA装置(EXSTAR TG/DTA6200)にて毎分10℃の昇温速度で600℃まで昇温した際の重量減少を測定し、下記基準で評価した。重量減少量が小さいほど、半導体ナノ結晶濃度が高いと考えられる。
A:重量減少量15wt%未満
B:重量減少量15wt%以上
比較例1、2 比較用被表面修飾半導体ナノ結晶の製造及び評価
前記実施例1において、カリックスアレーン化合物の代わりにトリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)を0.1g又は4g用いた以外は同様にして比較用被表面修飾半導体ナノ結晶を得た。得られた比較用被表面修飾半導体ナノ結晶について、実施例と同様にして各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
比較例3 比較用被表面修飾半導体ナノ結晶の製造及び評価
InP/ZnS量子ドットのトルエン分散体(オプトシリウス社製)30mlにエタノール200mlを加えて微粒子を凝集させた。遠心分離機を用い、沈殿物として比較用被表面修飾半導体ナノ結晶を得た。得られた比較用被表面修飾半導体ナノ結晶について、実施例と同様にして各種評価試験を行った。結果を表1に示す。