次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
本形態の繊維状セルロース(セルロース繊維)の製造方法は、セルロース繊維のヒドロキシ基(-OH基)の一部又は全部をカルバメート基で置換する工程と、セルロース繊維を平均繊維幅が0.1~19μmとなるように、つまりマイクロ繊維セルロース(ミクロフィブリル化セルロース)となるように解繊する工程とを有する。そして、前記置換の工程は加熱工程を有し、この加熱工程に先立つ乾燥工程が設けられており、前記置換は、セルロース繊維を絶乾状態で加熱(5℃/分、105→350℃)した場合の5%重量減少の温度が240℃以上になるように行う。より好ましくは、前記置換を前記解繊に先立って、かつ置換率が1.0~2.0mmol/gとなるように行う。また、前記解繊は、解繊後のセルロース繊維の平均繊維長が0.10mm以上に留まるように行う。さらに、繊維状セルロース複合樹脂の製造方法においては、以上の製造方法によって繊維状セルロースを得、この繊維状セルロースと樹脂とを混合する。以下、詳細に説明する。
なお、本形態においては、平均繊維幅(径)が0.1~19μmの繊維状セルロースを、マイクロ繊維セルロース、あるいはミクロフィブリル化セルロース、あるいはMFCという。
(繊維状セルロース)
本形態の方法においては、原料パルプ(セルロース原料)を平均繊維幅が0.1~19μmのマイクロ繊維セルロース(ミクロフィブリル化セルロース)となるように解繊する。マイクロ繊維セルロースであると、樹脂の補強効果が著しく向上する。また、マイクロ繊維セルロースは、同じく微細繊維であるセルロースナノファイバーよりもカルバメート基で変性する(カルバメート化)のが容易である。ただし、微細化する前のセルロース原料をカルバメート化するのがより好ましく、この場合においては、マイクロ繊維セルロース及びセルロースナノファイバーは同等である。
本形態において、マイクロ繊維セルロースは、セルロースナノファイバーよりも平均繊維径(幅)の太い繊維を意味する。具体的には、平均繊維径が、例えば0.1~19μm、好ましくは0.2~15μm、より好ましくは0.5超~10μmである。マイクロ繊維セルロースの平均繊維径が0.1μmを下回ると(未満になると)、セルロースナノファイバーであるのと変わらなくなり、樹脂の強度(特に曲げ弾性率)向上効果が十分に得られないおそれがある。また、解繊時間が長くなり、大きなエネルギーが必要になる。さらに、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化する。脱水性が悪化すると、乾燥に大きなエネルギーが必要になり、乾燥に大きなエネルギーをかけるとセルロース繊維が熱劣化して、強度が低下するおそれがある。特に、平均繊維径が50nm以下になると、熱分解温度が著しく低下するため、耐熱性が低下するおそれがあり、樹脂との混練に不向きなものとなる。他方、マイクロ繊維セルロースの平均繊維径が19μmを上回ると(超えると)、パルプであるのと変わらなくなり、補強効果が十分でなくなるおそれがある。
本形態において微細繊維(マイクロ繊維セルロース及びセルロースナノファイバー)の平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%の微細繊維の水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
前述したようにマイクロ繊維セルロースは、セルロース原料を解繊(微細化)することで得ることができる。原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物(粉状物)の状態等であってもよい。
ただし、不純物の混入を可及的に避けるために、原料パルプとしては、木材パルプを使用するのが好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
セルロース繊維(原料パルプ)は、解繊するに先立って化学的手法によって前処理することができる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。ただし、化学的手法による前処理としては、酵素処理を施すのが好ましく、加えて酸処理、アルカリ処理、及び酸化処理の中から選択された1又は2以上の処理を施すのがより好ましい。以下、酵素処理について詳細に説明する。
酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。これらの酵素を使用すると、セルロース原料の解繊がより容易になる。なお、セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を惹き起こす。また、ヘミセルラーゼ系酵素は、水共存下でヘミセルロースの分解を惹き起こす。
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ-ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
また、セルラーゼ系酵素としては、EG(エンドグルカナーゼ)及びCBH(セロビオハイドロラーゼ)のいずれかもを使用することもできる。EG及びCBHは、それぞれを単体で使用しても、混合して使用してもよい。また、ヘミセルラーゼ系酵素と混合して使用してもよい。
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
ヘミセルロースは、植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で木材の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。針葉樹の2次壁では、グルコマンナンが主成分であり、広葉樹の2次壁では4-O-メチルグルクロノキシランが主成分である。そこで、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から微細繊維を得る場合は、マンナーゼを使用するのが好ましい。また、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)から微細繊維を得る場合は、キシラナーゼを使用するのが好ましい。
セルロース繊維に対する酵素の添加量は、例えば、酵素の種類、原料となる木材の種類(針葉樹か広葉樹か)、機械パルプの種類等によって決まる。ただし、セルロース原料に対する酵素の添加量は、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.3~2.5質量%、特に好ましくは0.5~2質量%である。酵素の添加量が0.1質量%を下回ると、酵素の添加による効果が十分に得られないおそれがある。他方、酵素の添加量が3質量%を上回ると、セルロースが糖化され、セルロース繊維の収率が低下するおそれがある。また、添加量の増量に見合う効果の向上を認めることができないとの問題もある。
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0~6.9)であるのが好ましい。他方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1~10.0)であるのが好ましい。
酵素処理時の温度は、酵素としてセルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素のいずれを使用する場合においても、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃、特に好ましくは40~60℃である。酵素処理時の温度が30℃以上であれば、酵素活性が低下し難くなり、処理時間の長期化を防止することができる。他方、酵素処理時の温度が70℃以下であれば、酵素の失活を防止することができる。
酵素処理の時間は、例えば、酵素の種類、酵素処理の温度、酵素処理時のpH等によって決まる。ただし、一般的な酵素処理の時間は、0.5~24時間である。
酵素処理した後には、酵素を失活させるのが好ましい。酵素を失活させる方法としては、例えば、アルカリ水溶液(好ましくはpH10以上、より好ましくはpH11以上)を添加する方法、80~100℃の熱水を添加する方法等が存在する。
次に、アルカリ処理の方法について説明する。
解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース原料の分散が促進される。
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を使用することができる。ただし、製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
解繊に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、マイクロ繊維セルロースの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。この点、マイクロ繊維セルロースの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
セルロース繊維を酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解される。結果、解繊のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。ただし、前処理は、マイクロ繊維セルロースのアスペクト比を低下させるため、樹脂の補強材として使用する場合には、過度の前処理を避けるのが好ましい。
セルロース繊維の解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用してセルロース繊維を叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
セルロース繊維を解繊して得るマイクロ繊維セルロースの平均繊維長(単繊維の長さの平均)は、好ましくは0.10~2.00mm、より好ましくは0.12~1.50mm、特に好ましくは0.15~1.00mmである。平均繊維長が0.10mmを下回ると、繊維同士の三次元ネットワークを形成できず、複合樹脂の曲げ弾性率等が低下するおそれがあり、補強効果が向上しないとされる可能性がある。他方、平均繊維長が2.00mmを上回ると、原料パルプと変わらない長さのため補強効果が不十分となるおそれがある。
また、解繊前のセルロース繊維の平均繊維長は、好ましくは0.50~5.00mm、より好ましくは1.00~3.00mm、特に好ましくは1.50~2.50mmである。平均繊維長が0.50mmを下回ると、解繊処理した際の、樹脂の補強効果が十分得られない可能性がある。他方、平均繊維長が5.00mmを上回ると、解繊時の製造コストの面で不利となるおそれがある。
さらに、セルロース繊維の解繊は、平均繊維長比が30未満となるように行うのが好ましく、2~20となるように行うのがより好ましく、1.5~10となるように行うのが特に好ましい。平均繊維長比が30以上になると、繊維への機械的せん断が過多となり、繊維へのダメージが多くなる。したがって、繊維が短くなり過ぎたり、繊維自体の強度が低下したりし、結果、樹脂と複合化した際の樹脂補強効果が発現しなくなるおそれがある。
本形態において、平均繊維長比とは、解繊前におけるセルロース繊維の平均繊維長を解繊後におけるセルロース繊維の平均繊維長で除した値(解繊前の平均繊維長/解繊後の平均繊維長)である。
セルロース繊維の平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
本形態においてセルロース繊維の平均繊維長は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」によって測定した値である。なお、以下で説明するファイン率(Fine率)についても同様である。
解繊して得たマイクロ繊維セルロースのファイン率は、30%以上であるのが好ましく、35~99%であるのがより好ましく、40~95%であるのが特に好ましい。ファイン率が30%以上であると、均質な繊維の割合が多く、複合樹脂の破壊が進行し難くなる。ただし、ファイン率が99%を超えると、曲げ弾性率が不十分になる可能性がある。
以上はマイクロ繊維セルロース、つまり解繊後のセルロース繊維のファイン率であるが、解繊前のセルロース繊維のファイン率も所定の範囲内としておくとより好ましいものとなる。具体的には、解繊前のセルロース繊維のファイン率が、1%以上であるのが好ましく、3~20%であるのがより好ましく、5~18%であるのが特に好ましい。解繊前のセルロース繊維のファイン率が上記範囲内であれば、マイクロ繊維セルロースのファイン率が30%以上になるように解繊したとしても繊維のダメージが少なく、樹脂の補強効果が向上すると考えられる。
ファイン率の調整は、酵素処理等の前処理によって行うことができる。ただし、特に酵素処理する場合は、繊維自体がボロボロになって樹脂の補強効果が低下する可能性がある。したがって、この観点からの酵素の添加量は、2質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましく、0.5質量%以下であるのが特に好ましい。また、酵素処理しない(添加量0質量%)のも1つの選択枠である。
本形態において「ファイン率」とは、繊維長が0.2mm以下であるパルプ繊維の質量基準の割合をいう。
マイクロ繊維セルロースのアスペクト比は、好ましくは2~15,000、より好ましくは10~10,000である。アスペクト比が2を下回ると、三次元ネットワークを十分に構築することができないため、たとえ平均繊維長が0.10mm以上であるとしても、補強効果が不十分となるおそれがある。他方、アスペクト比が15,000を上回ると、マイクロ繊維セルロース同士の絡み合いが高くなり、樹脂中での分散が不十分となるおそれがある。
本形態においてアスペクト比とは、平均繊維長を平均繊維幅で除した値である。アスペクト比が大きいほど引っかかりが生じる箇所が多くなるため補強効果が上がるが、他方で引っかかりが多くなる分、樹脂の延性が低下するものと考えられる。
マイクロ繊維セルロースのフィブリル化率は、好ましくは1.0~30.0%、より好ましくは1.5~20.0%、特に好ましくは2.0~15.0%である。フィブリル化率が30.0%を上回ると、水との接触面積が広くなり過ぎるため、たとえ平均繊維幅が0.1μm以上に留まる範囲で解繊したとしても、脱水が困難になる可能性がある。他方、フィブリル化率が1.0%下回ると、フィブリル同士の水素結合が少なく、強硬な三次元ネットワークを形成することができなくなるおそれがある。
本形態においてフィブリル化率とは、セルロース繊維をJIS-P-8220:2012「パルプ-離解方法」に準拠して離解し、得られた離解パルプをFiberLab.(Kajaani社)を用いて測定した値をいう。
マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上である。結晶化度が50%を下回ると、パルプやセルロースナノファイバー等の他の繊維との混合性は向上するものの、繊維自体の強度が低下するため、樹脂の強度を向上することができなくなるおそれがある。また、結晶化度が50%を下回ると、特にカルバメート基の置換率が1.0mmol/g以上とされる本形態においては、耐熱性が不十分になるおそれがある。結晶化度が低いと外部から加えられた熱によってただちに熱分解反応が進み、一方、結晶化度が高いと外部から加えられた熱が結晶を緩めるために使用され、その後に熱分解が開始されるためであると考えられる。他方、マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、特に好ましくは85%以下である。結晶化度が95%を上回ると、分子内の強固な水素結合割合が多くなり、繊維自体が剛直となり、分散性が劣るようになる。
マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、微細化処理で任意に調整可能である。
本形態において結晶化度は、JIS K 0131(1996)に準拠して測定した値である。
マイクロ繊維セルロースのパルプ粘度は、好ましくは2cps以上、より好ましくは4cps以上である。マイクロ繊維セルロースのパルプ粘度が2cpsを下回ると、マイクロ繊維セルロースの凝集を抑制するのが困難になるおそれがある。
本形態においてパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
マイクロ繊維セルロースのフリーネスは、好ましくは500ml以下、より好ましくは300ml以下、特に好ましくは100ml以下である。マイクロ繊維セルロースのフリーネスが500mlを上回ると、樹脂の強度向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。
本形態においてフリーネスは、JIS P8121-2(2012)に準拠して測定した値である。
マイクロ繊維セルロースのゼータ電位は、好ましくは-150~20mV、より好ましくは-100~0mV、特に好ましくは-80~-10mVである。ゼータ電位が-150mVを下回ると、樹脂との相溶性が著しく低下し補強効果が不十分となるおそれがある。他方、ゼータ電位が20mVを上回ると、分散安定性が低下するおそれがある。
マイクロ繊維セルロースの保水度は、好ましくは80~400%、より好ましくは90~350%、特に好ましくは100~300%である。保水度が80%を下回ると、原料パルプと変わらないため補強効果が不十分となるおそれがある。他方、保水度が400%を上回ると、脱水性が劣る傾向にあり、また、凝集し易くなる。この点、マイクロ繊維セルロースの保水度は、当該繊維のヒドロキシ基がカルバメート基に置換されていることで、より低くすることができ、脱水性や乾燥性を高めることができる。
マイクロ繊維セルロースの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
本形態において保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
本形態のマイクロ繊維セルロースは、カルバメート基を有する。どのようにしてカルバメート基を有するものとされているかは特に限定されない。例えば、セルロース原料がカルバメート化されていることでカルバメート基を有するものであっても、マイクロ繊維セルロース(微細化されたセルロース原料)がカルバメート化されることでカルバメート基を有するものであってもよい。
なお、カルバメート基を有するとは、繊維状セルロースにカルバメート基(カルバミン酸のエステル)が導入された状態を意味する。カルバメート基は、-O-CO-NH-で表される基であり、例えば、-O-CO-NH2、-O-CONHR、-O-CO-NR2等で表わされる基である。つまり、カルバメート基は、下記の構造式(1)で示すことができる。
ここでRは、それぞれ独立して、飽和直鎖状炭化水素基、飽和分岐鎖状炭化水素基、飽和環状炭化水素基、不飽和直鎖状炭化水素基、不飽和分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基の少なくともいずれかである。
飽和直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~10の直鎖状のアルキル基を挙げることができる。
飽和分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基を挙げることができる。
飽和環状炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基を挙げることができる。
不飽和直鎖状炭化水素基としては、例えば、エテニル基、プロペン-1-イル基、プロペン-3-イル基等の炭素数2~10の直鎖状のアルケニル基、エチニル基、プロピン-1-イル基、プロピン-3-イル基等の炭素数2~10の直鎖状のアルキニル基等を挙げることができる。
不飽和分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、プロペン-2-イル基、ブテン-2-イル基、ブテン-3-イル基等の炭素数3~10の分岐鎖状アルケニル基、ブチン-3-イル基等の炭素数4~10の分岐鎖状アルキニル基等を挙げることができる。
芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
誘導基としては、例えば、上記飽和直鎖状炭化水素基、飽和分岐鎖状炭化水素基、飽和環状炭化水素基、不飽和直鎖状炭化水素基、不飽和分岐鎖状炭化水素基及び芳香族基が有する1又は複数の水素原子が、置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等。)で置換された基を挙げることができる。
カルバメート基を有する(カルバメート基が導入された)マイクロ繊維セルロースにおいては、極性の高いヒドロキシ基の一部又は全部が、相対的に極性の低いカルバメート基に置換されている。したがって、カルバメート基を有するマイクロ繊維セルロースは、親水性が低く、極性の低い樹脂等との親和性が高い。結果、カルバメート基を有するマイクロ繊維セルロースは、樹脂との均一分散性に優れる。また、カルバメート基を有するマイクロ繊維セルロースのスラリーは、粘性が低く、ハンドリング性が良い。
マイクロ繊維セルロースのヒドロキシ基に対するカルバメート基の置換率は、好ましくは1.0~2.5mmol/g、より好ましくは1.1~2.0mmol/g、特に好ましくは1.2~1.8mmol/gである。置換率を1.0mmol/g以上にすると、カルバメート基を導入した効果、特に樹脂の曲げ弾性率の向上効果が確実に奏せられる。これは、置換率を1.0mmol/g以上にすると、セルロースの持つ水酸基に起因して生じるセルロース同士の水素結合が弱まり(凝集緩和効果)、加えて水酸基よりも疎水性の高いカルバメート基の導入により、樹脂との親和性が高まり(親和性向上効果)、結果、樹脂中においてマイクロ繊維セルロース同士が凝集せず、樹脂補強の役割を確実に果たすようになるためと考える。他方、カルバメート基の置換率が2.5mmol/gを超えると、複合樹脂の耐熱性が低下する。この点、セルロース繊維が熱を受けると、通常水酸基の脱離等が発生し、脱離等が発生した箇所を起点に分子鎖が短くなり得る。そして、水酸基の一部がカルバメート化等で変性されていると、水酸基の脱離がより発生し易くなる。故に、カルバメート化率を上げ過ぎると分子鎖が短くなり過ぎてしまい、分解温度が下がり、耐熱性が落ちるものと考えられる。具体的には、カルバメート基の置換率が2.5mmol/gを超えると、セルロース繊維を絶乾状態で加熱(5℃/分、105→350℃)した場合の5%重量減少の温度が240℃未満になる可能性が高い。また、カルバメート基の置換率が2.5mmol/gを超えると、セルロース繊維をカルバメート化する場合においてパルプの平均繊維長が短くなり、結果としてマイクロ繊維セルロースの平均繊維長が0.1mm未満となり易く、十分な樹脂補強効果が出せなくなるおそれがある。なお、置換率が5.0mmol/gを超えると、セルロース繊維が繊維の形状を保てなくなる。
本形態においてカルバメート基の置換率(mmol/g)とは、カルバメート基を有するセルロース繊維1gあたりに含まれるカルバメート基の物質量をいう。カルバメート基の置換率は、カルバメート化したパルプ内に存在するN原子をケルダール法によって測定し、単位重量当たりのカルバメート化率を算出する。また、セルロースは、無水グルコースを構造単位とする重合体であり、一構造単位当たり3つのヒドロキシ基を有する。
本形態のセルロース繊維は、絶乾状態で加熱(5℃/分、105→350℃)した場合の5%重量減少の温度が240℃以上であるのが好ましく、245℃以上であるのがより好ましく、250℃以上であるのが特に好ましい。5%重量減少の温度が240℃以上であれば、耐熱性に優れる複合樹脂を得ることができるようになる。
さらに、本形態のセルロース繊維は、絶乾状態で加熱(5℃/分、105→350℃)した場合の10%重量減少の温度が260℃以上であるのが好ましく、265℃以上であるのがより好ましく、270℃以上であるのが特に好ましい。10%重量減少の温度が260℃以上であれば、樹脂との複合化等の各種加工に際して、様々な温度で、あるいは複数回にわたり熱を受けたとしても繊維へのダメージが少なく抑えられるため、樹脂の加工温度について過度の制限を必要とせず、加工条件の幅を広げることのできる。
以上の重量減少を測定する際の加熱の条件は、セルロース繊維を絶乾状態とした後、105℃から5℃/分で350℃まで温度上昇させた場合である。
<カルバメート化>
マイクロ繊維セルロース(解繊前にカルバメート化する場合は、セルロース原料。以下、同様であり、単に「セルロース繊維」ともいう。)にカルバメート基を導入する(カルバメート化)点については、前述したようにセルロース原料をカルバメート化してから微細化する方法と、セルロース原料を微細化してからカルバメート化する方法とがある。この点、本明細書においては、先にセルロース原料の解繊について説明し、その後にカルバメート化(変性)について説明している。しかしながら、解繊及びカルバメート化は、どちらを先に行うこともできる。ただし、先にカルバメート化を行い、その後に、解繊をする方が好ましい。解繊する前のセルロース原料は脱水効率が高く、また、カルバメート化に伴う加熱によってセルロース原料が解繊され易い状態になるためである。
セルロース繊維をカルバメート化する工程は、例えば、混合処理、乾燥処理(乾燥工程)、加熱処理等の工程に区分することができる。なお、混合処理及び乾燥処理は合わせて、加熱処理に供される混合物を調製する調製処理ということもできる。また、カルバメート化は、有機溶剤を使用せずに化学変性することができるという利点を有する。
混合処理においては、セルロース繊維と尿素又は尿素の誘導体(以下、単に「尿素等」ともいう。)とを分散媒中で混合する。
尿素や尿素の誘導体としては、例えば、尿素、チオ尿素、ビウレット、フェニル尿素、ベンジル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、テトラメチル尿素、尿素の水素原子をアルキル基で置換した化合物等を使用することができる。これらの尿素又は尿素の誘導体は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、尿素を使用するのが好ましい。
セルロース繊維に対する尿素等の混合質量比(尿素等/セルロース繊維)の下限は、好ましくは10/100、より好ましくは20/100である。他方、上限は、好ましくは300/100、より好ましくは200/100である。混合質量比を10/100以上にすることで、カルバメート化の効率が向上する。他方、混合質量比が300/100を上回っても、カルバメート化は頭打ちになる。
分散媒は、通常、水である。ただし、アルコール、エーテル等の他の分散媒や、水と他の分散媒との混合物を用いてもよい。
混合処理においては、例えば、水にセルロース繊維及び尿素等を添加しても、尿素等の水溶液にセルロース繊維を添加しても、セルロース繊維を含むスラリーに尿素等を添加してもよい。また、均一に混合するために、添加後、攪拌してもよい。さらに、セルロース繊維と尿素等とを含む分散液には、その他の成分が含まれていてもよい。
乾燥処理においては、混合処理において得られたセルロース繊維及び尿素等を含む分散液から分散媒を除去する。したがって、乾燥処理は除去処理ということもできる。分散媒を除去することで、これに続く加熱処理において効率的に尿素等を反応させることができる。
分散媒の除去は、加熱によって分散媒を揮発させることで行うのが好ましい。この方法によると、尿素等の成分を残したまま分散媒のみを効率的に除去することができる。
除去処理における加熱温度の下限は、分散媒が水である場合は、好ましくは50℃、より好ましくは70℃、特に好ましくは90℃である。加熱温度を50℃以上にすることで効率的に分散媒を揮発させる(除去する)ことができる。他方、加熱温度の上限は、好ましくは120℃、より好ましくは100℃である。加熱温度が120℃を上回ると、分散媒と尿素が反応し、尿素が単独分解するおそれがある。
除去処理における加熱時間は、分散液の固形分濃度等に応じて適宜調節することができる。具体的には、加熱時間(乾燥時間)の上限は、例えば15時間、好ましくは13時間、より好ましくは10時間、特に好ましくは9時間である。他方、下限は、6時間である。乾燥時間が6~9時間であれば、乾燥の目的を達しつつ、加熱による繊維劣化等の副作用を確実に抑えることができる。
以上のように、加熱処理(反応処理)に先立っては、乾燥処理(乾燥工程)を設けると好適である。特にこの乾燥工程においては、加熱処理に供せられるセルロース繊維の水分率が10%以下となるように、好ましくは0~9%となるように、より好ましくは0~8%となるように乾燥を行うと好適である。加熱処理に先立ってセルロース繊維の水分率が10%以下となるように乾燥を行っておくことで、カルバメート化率を容易に1mmol/g以上とすることができるようになる。この点、カルバメート化が困難であると、加熱処理を高温で、あるいは長時間行う必要が生じ、セルロース繊維が熱劣化する可能性が上がる。セルロース繊維が熱劣化すると、樹脂の補強効果が低下する。
加熱処理(反応処理)においては、セルロース繊維と尿素等との混合物を加熱処理する。この加熱処理において、セルロース繊維のヒドロキシ基の一部又は全部が尿素等と反応してカルバメート基に置換される。より詳細には、尿素等が加熱されると下記の反応式(1)に示すようにイソシアン酸及びアンモニアに分解される。そして、イソシアン酸はとても反応性が高く、例えば、下記の反応式(2)に示すようにセルロースの水酸基にカルバメート基が形成される。
NH2-CO-NH2 → H-N=C=O + NH3 …(1)
Cell-OH + H-N=C=O → Cell-O-CO-NH2 …(2)
加熱処理における加熱温度の下限は、好ましくは120℃、より好ましくは130℃、特に好ましくは尿素の融点(約134℃)以上、さらに好ましくは140℃、最も好ましくは150℃である。加熱温度を120℃以上にすることで、カルバメート化が効率的に行われる。加熱温度の上限は、好ましくは200℃、より好ましくは180℃、特に好ましくは170℃である。加熱温度が200℃を上回ると、セルロース繊維が分解し、補強効果が不十分となるおそれがある。
加熱処理における加熱時間の下限は、好ましくは1分、より好ましくは5分、特に好ましくは30分である。加熱時間を1分以上にすることで、カルバメート化の反応を確実に行うことができる。他方、加熱時間の上限は、好ましくは15時間、より好ましくは10時間、特に好ましくは5時間である。加熱時間が15時間を上回ると、経済的ではなく、15時間で十分カルバメート化を行うことができる。
以上のように、乾燥工程と反応工程とでは、反応温度及び反応時間が主に異なる。乾燥工程は水等の分散媒を飛ばすのが主目的であるため、低温で、かつ長時間処理を行う。他方、反応工程は反応を進ませるのが主目的であるため、高温で、かつセルロース繊維の劣化を引き起こさないよう短時間処理を行う。なお、水分率が高い状態で反応工程において加熱を行うと、高温状態に晒された水や蒸気が、セルロースを構成するグルコースが結合しているアセタール結合を解裂させるおそれがある。これは、繊維がダメージを受けることを意味し、熱分解温度の低下につながる。また、水(H-O-H)は尿素と反応し、アンモニア(NH3)と二酸化炭素(CO2)に分解する。この反応は、セルロースの水酸基(セルロース-O-H)と尿素との反応に競合する。したがって、水が存在すると無駄に尿素を消費することになる。
上記したように加熱時間の長期化は、セルロース繊維の劣化を招く。そこで、加熱処理におけるpH条件が重要となる。pHは、好ましくはpH9以上、より好ましくはpH9~13、特に好ましくはpH10~12のアルカリ性条件である。また、次善の策として、pH7以下、好ましくはpH3~7、特に好ましくはpH4~7の酸性条件又は中性条件である。ただし、pH7~8の中性条件であると、セルロース繊維の平均繊維長が短くなり、樹脂の補強効果に劣る可能性がある。これに対し、pH9以上のアルカリ性条件であると、セルロース繊維の反応性が高まり、尿素等への反応が促進され、効率良くカルバメート化反応するため、セルロース繊維の平均繊維長を十分に確保することができる。他方、pH7以下の酸性条件であると、尿素等からイソシアン酸及びアンモニアに分解する反応が進み、セルロース繊維への反応が促進され、効率良くカルバメート化反応するため、セルロース繊維の平均繊維長を十分に確保することができる。ただし、可能であれば、アルカリ性条件で加熱処理する方が好ましい。酸性条件であるとセルロースの酸加水分解が進行するおそれがあるためである。
pHの調整は、混合物に酸性化合物(例えば、酢酸、クエン酸等。)やアルカリ性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等。)を添加すること等によって行うことができる。
加熱処理において加熱する装置としては、例えば、熱風乾燥機、抄紙機、ドライパルプマシン等を使用することができる。
加熱処理後の混合物は、洗浄してもよい。この洗浄は、水等で行えばよい。この洗浄によって未反応で残留している尿素や副生成物等を除去することができる。ただし、前述したように解繊及びカルバメート化はいずれをも先に行うことができるが、前記洗浄を行う場合は、解繊後にカルバメート化するよりも、カルバメート化後に解繊する方が好ましい。これは、セルロース繊維を解繊すると、保水性(度)が上がって脱水しづらくなることや、繊維が微細化されていると乾燥した際に不可逆的に凝集し易くなること等による。なお、例えば、パルプの保水度が100%であるとすると、解繊後のMFCの保水度は300%程度にもなる。
(スラリー)
マイクロ繊維セルロースは、必要により、水系媒体中に分散して分散液(スラリー)にする。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましいが、一部が水と相溶性を有する他の液体である水系媒体も使用することができる。他の液体としては、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
スラリーの固形分濃度は、好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.5~5.0質量%である。固形分濃度が0.1質量%を下回ると、脱水や乾燥する際に過大なエネルギーが必要となるおそれがある。他方、固形分濃度が10.0質量%を上回ると、スラリー自体の流動性が低下してしまい分散剤を使用する場合において均一に混合できなくなるおそれがある。
(酸変性樹脂)
マイクロ繊維セルロースは、好ましくは酸変性樹脂と混合する。酸変性樹脂を混合すると、酸基がカルバメート基の一部又は全部とイオン結合する。このイオン結合により、樹脂の補強効果が向上する。
酸変性樹脂としては、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂、酸変性エポキシ樹脂、酸変性スチレン系エラストマー樹脂等を使用することができる。ただし、酸変性ポリオレフィン樹脂を使用するのが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸成分とポリオレフィン成分との共重合体である。
ポリオレフィン成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のアルケンの重合体の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、好適には、プロピレンの重合体であるポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
不飽和カルボン酸成分としては、例えば、無水マレイン酸類、無水フタル酸類、無水イタコン酸類、無水シトラコン酸類、無水クエン酸類等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、好適には、無水マレイン酸類を使用するのが好ましい。つまり、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
酸変性樹脂の混合量は、マイクロ繊維セルロース100質量部に対して、好ましくは0.1~1,000質量部、より好ましくは1~500質量部、特に好ましくは10~200質量部である。特に酸変性樹脂が無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂である場合は、好ましくは1~200質量部、より好ましくは10~100質量部である。酸性変性樹脂の混合量が0.1質量部を下回ると強度の向上が十分ではない。他方、混合量が1,000質量部を上回ると、過剰となり強度が低下する傾向となる。
無水マレイン酸変性ポリプロピレンの重量平均分子量は、例えば1,000~100,000、好ましくは3,000~50,000である。
また、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価は、0.5mgKOH/g以上、100mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下がより好ましい。
さらに、酸変性樹脂のMFR(メルトフローレート)が2000g/10分(190℃/2.16kg)以下であるのが好ましく、1500g/10分以下であるのがより好ましく、500g/10分以下であるのが特に好ましい。MFRが2000g/10分を上回ると、セルロース繊維の分散性が低下する可能性がある。
なお、酸価の測定は、JIS-K2501に準拠し、水酸化カリウムで滴定する。また、MFRの測定は、JIS-K7210に準拠し、190℃で2.16kgの荷重を載せ、10分間に流れ出る試料の重量で決める。
(分散剤)
本形態のマイクロ繊維セルロースは、好ましくは分散剤と混合する。分散剤としては、芳香族類にアミン基及び/又は水酸基を有する化合物、脂肪族類にアミン基及び/又は水酸基を有する化合物が好ましい。
芳香族類にアミン基及び/又は水酸基を有する化合物としては、例えば、アニリン類、トルイジン類、トリメチルアニリン類、アニシジン類、チラミン類、ヒスタミン類、トリプタミン類、フェノール類、ジブチルヒドロキシトルエン類、ビスフェノールA類、クレゾール類、オイゲノール類、没食子酸類、グアイアコール類、ピクリン酸類、フェノールフタレイン類、セロトニン類、ドーパミン類、アドレナリン類、ノルアドレナリン類、チモール類、チロシン類、サリチル酸類、サリチル酸メチル類、アニスアルコール類、サリチルアルコール類、シナピルアルコール類、ジフェニドール類、ジフェニルメタノール類、シンナミルアルコール類、スコポラミン類、トリプトフォール類、バニリルアルコール類、3-フェニル‐1-プロパノール類、フェネチルアルコール類、フェノキシエタノール類、ベラトリルアルコール類、ベンジルアルコール類、ベンゾイン類、マンデル酸類、マンデロニトリル類、安息香酸類、フタル酸類、イソフタル酸類、テレフタル酸類、メリト酸類、ケイ皮酸類などが挙げられる。
また、脂肪族類にアミン基及び/又は水酸基を有する化合物としては、例えば、カプリルアルコール類、2-エチルヘキサノール類、ペラルゴンアルコール類、カプリンアルコール類、ウンデシルアルコール類、ラウリルアルコール類、トリデシルアルコール類、ミリスチルアルコール類、ペンタデシルアルコール類、セタノール類、ステアリルアルコール類、エライジルアルコール類、オレイルアルコール類、リノレイルアルコール類、メチルアミン類、ジメチルアミン類、トリメチルアミン類、エチルアミン類、ジエチルアミン類、エチレンジアミン類、トリエタノールアミン類、N,N-ジイソプロピルエチルアミン類、テトラメチルエチレンジアミン類、ヘキサメチレンジアミン類、スペルミジン類、スペルミン類、アマンタジン類、ギ酸類、酢酸類、プロピオン酸類、酪酸類、吉草酸類、カプロン酸類、エナント酸類、カプリル酸類、ペラルゴン酸類、カプリン酸類、ラウリン酸類、ミリスチン酸類、パルミチン酸類、マルガリン酸類、ステアリン酸類、オレイン酸類、リノール酸類、リノレン酸類、アラキドン酸類、エイコサペンタエン酸類、ドコサヘキサエン酸類、ソルビン酸類などが挙げられる。
以上の分散剤は、セルロース繊維同士の水素結合を阻害する。したがって、マイクロ繊維セルロース及び樹脂の混練に際してマイクロ繊維セルロースが樹脂中において確実に分散するようになる。また、以上の分散剤は、マイクロ繊維セルロース及び樹脂の相溶性を向上させる役割も有する。この点でマイクロ繊維セルロースの樹脂中における分散性が向上する。
なお、マイクロ繊維セルロース及び樹脂の混練に際して、別途、相溶剤(薬剤)を添加することも考えられるが、この段階で薬剤を添加するよりも、予めマイクロ繊維セルロースと分散剤(薬剤)とを混合して繊維状セルロース含有物としておく方が、マイクロ繊維セルロースに対する薬剤の纏わりつきが均一になり、樹脂との相溶性向上効果が高くなる。
また、例えば、ポリプロピレンは融点が160℃であり、したがって繊維状セルロース(マイクロ繊維セルロース)及び樹脂の混練は、180℃程度で行う。しかるに、この状態で分散剤(液)を添加すると、一瞬で乾燥してしまう。そこで、融点の低い樹脂を使用してマスターバッチ(マイクロ繊維セルロースの濃度の濃い複合樹脂)を作製し、その後に通常の樹脂で濃度を下げる方法が存在する。しかしながら、融点の低い樹脂は一般的に強度が低い。したがって、当該方法によると、複合樹脂の強度が下がるおそれがある。
分散剤の混合量は、マイクロ繊維セルロース100質量部に対して、好ましくは0.1~1,000質量部、より好ましくは1~500質量部、特に好ましくは10~200質量部である。分散剤の混合量が0.1質量部を下回ると、樹脂強度の向上が十分ではないとされるおそれがある。他方、混合量が1,000質量部を上回ると、過剰となり樹脂強度が低下する傾向となる。
この点、前述した酸変性樹脂は酸基とマイクロ繊維セルロースのカルバメート基とがイオン結合することで相溶性を向上し、もって補強効果を上げるためのものであり、分子量が大きいため樹脂とも馴染み易く、強度向上に寄与していると考えられる。一方、上記の分散剤は、マイクロ繊維セルロース同士の水酸基同士の間に介在して凝集を防ぎ、もって樹脂中での分散性を向上するものであり、また、分子量が酸変性樹脂に比べ小さいため、酸変性樹脂が入り込めないようなマイクロ繊維セルロース間の狭いスペースに入ることができ、分散性を向上して強度向上する役割を果たす。以上のような観点から、上記酸変性樹脂の分子量は、分散剤の分子量の2~2,000倍、好ましくは5~1,000倍であると好適である。
(相互作用しない粉末)
本形態のマイクロ繊維セルロースは、当該マイクロ繊維セルロースと相互作用しない粉末と混合しておくと好適である。相互作用しない粉末と混合しておくことで、マイクロ繊維セルロースを樹脂の補強性を発揮できる形態とすることができる。この点、本形態においては、マイクロ繊維セルロースを樹脂と複合化する前に、水系媒体を除去して含有水分率を所定の範囲に調節しておくと好適である。しかしながら、水系媒体を除去する際にセルロース同士が水素結合により不可逆的に凝集し、繊維としての補強効果を十分に発揮できなくなる可能性がある。そこで、マイクロ繊維セルロースと共に相互作用しない粉末を含むことで、セルロース同士の水素結合を物理的に阻害するものである。
ここで、相互作用しないとは、セルロースと共有結合、イオン結合、金属結合による強固な結合をしないことを意味する(つまり、水素結合、ファンデルワールス力による結合は相互作用しないという概念に含まれる。)。好ましくは、強固な結合は、結合エネルギーが100kJ/molを超える結合である。
相互作用しない粉末は、好ましくは、スラリー中で共存した際に、セルロース繊維の持つ水酸基を水酸化物イオンへ解離させる作用の少ない無機粉末及び樹脂粉末の少なくともいずれか一方である。より好ましくは、無機粉末である。かかる物性を有すると、マイクロ繊維セルロースや相互作用しない粉末等を混合して繊維状セルロース含有物とした後に樹脂等と複合化した際に、セルロース繊維と、セルロース繊維と相互作用しない粉末とを樹脂等へ容易に分散することができるようになる。また、特に無機粉末であると、操業上有利である。具体的には、繊維状セルロース含有物の含有水分率調節方法としては、例えば、熱源である金属ドラムに水分散体(繊維状セルロースや相互作用しない粉末の混合液)を直接あてる方法で乾燥(例えば、ヤンキードライヤーやシリンダードライヤーによる乾燥等。)する方法と、熱源に水分散体を直接触れさせずに加温する方法、つまり空気中で乾燥(例えば、恒温乾燥機による乾燥等。)する方法とが存在する。しかるに、樹脂粉末を使用すると、加温した金属板(例えば、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー等。)に接触させて乾燥した際に、金属板表面に皮膜ができ熱伝導が悪化し、乾燥効率が著しく低下する。このような問題が生じ難い点で、無機粒子は有利である。
相互作用しない粉末の平均粒子径は、1~10,000μmが好ましく、10~5,000μmがより好ましく、100~1,000μmが特に好ましい。平均粒子径が10,000μmを超えると、繊維状セルローススラリーから水系媒体を除去する際に、セルロース繊維同士の間隙に入って凝集を阻害する効果が発揮できないおそれがある。他方、平均粒子径が1μm未満であると、微細なためにマイクロ繊維セルロース同士の水素結合を阻害することができないおそれがある。
特に相互作用しない粉末が樹脂粉末である場合においては、平均粒子径が上記範囲にあることによりセルロース繊維同士の間隙に入って凝集を阻害する効果が効果的に発揮されるようになる。しかも、樹脂との混練性に優れ、大きなエネルギーが不要となり経済的である。なお、樹脂粉末は樹脂との混練時に溶融し粒として外観に影響を与えなくなるため、大きな粒子径のものも効果的に使用することができる。他方、樹脂粉末が無機粉末である場合においても無機粉末の平均粒子径が上記範囲にあることでセルロース繊維同士の間隙に入って凝集を阻害する効果が発揮されるが、無機粉体は混練してもサイズは大きく変わらないため、粒径が大きすぎると粒として外観に影響を与える可能性がある。
なお、樹脂粉末は物理的にマイクロ繊維セルロース同士の間に介在することで水素結合を阻害し、もってマイクロ繊維セルロースの分散性を向上する。これに対し、前述した酸変性樹脂は、酸基とマイクロ繊維セルロースのカルバメート基とをイオン結合することで相溶性を向上し、もって補強効果を上げる。この点、分散剤がマイクロ繊維セルロース同士の水素結合を阻害する点は同じであるが、樹脂粉末はマイクロオーダーであるため、物理的に介在して水素結合を抑制する。したがって、分散性が分散剤にくらべ低いものの、樹脂粉末自身が溶融してマトリックスになるため物性低下に寄与しない。一方、分散剤は分子レベルであり、極めて小さいためマイクロ繊維セルロースを覆うようにして水素結合を阻害し、マイクロ繊維セルロースの分散性を向上する効果は高い。しかしながら、樹脂中に残り、物性低下に働く可能性がある。
本明細書において、相互作用しない粉末の平均粒子径は、粉体をそのまま又は水分散体の状態で粒度分布測定装置(例えば株式会社堀場製作所のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を用いて測定される体積基準粒度分布から算出される中位径である。
無機粉末としては、例えば、Fe、Na、K、Cu、Mg、Ca、Zn、Ba、Al、Ti、ケイ素元素等の周期律表第I族~第VIII族中の金属元素の単体、酸化物、水酸化物、炭素塩、硫酸塩、ケイ酸塩、亜硫酸塩、これらの化合物よりなる各種粘土鉱物等を例示することができる。具体的には、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、酸化亜鉛、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ほう酸アルミニウム、アルミナ、酸化鉄、チタン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、ワラストナイト、ガラスビーズ、ガラスパウダー、シリカゲル、乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪砂、硅石、石英粉、珪藻土、ホワイトカーボン、ガラスファイバー等を例示することができる。これらの無機充填剤は、複数が含有されていてもよい。また、古紙パルプに含まれるものであってもよいし、製紙スラッジ中の無機物を再生したいわゆる再生填料等であってもよい。
ただし、製紙用の填料や顔料として好適に使用される炭酸カルシウム、タルク、ホワイトカーボン、クレー、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウム及び再生填料等の中から選択される少なくとも1種以上の無機粉末を使用するのが好ましく、炭酸カルシウム、タルク、クレーの中からから選択される少なくとも1種以上を使用するのがより好ましく、軽質炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムの少なくともいずれか一方を使用するのが特に好ましい。炭酸カルシウム、タルク、クレーを使用すると、樹脂等のマトリックスとの複合化が容易である。また、汎用的な無機材料であるため、用途の制限が生じることが少ないとのメリットがある。さらに、炭酸カルシウムは下記の理由から特に好ましい。軽質炭酸カルシウムを使用する場合は、粉末のサイズや形状を一定に制御しやすくなる。このため、セルロース繊維のサイズや形状に合わせて、間隙に入り込んでセルロース繊維同士の凝集を抑制する効果を生じやすくするようにサイズや形状を調整して、ピンポイントで効果を発揮しやすくできるメリットがある。また、重質炭酸カルシウムを使用すると、重質炭酸カルシウムが不定形であることから、スラリー中に様々なサイズの繊維が存在する場合でも、水系媒体除去時に繊維が凝集する過程において、間隙に入り込んでセルロース繊維同士の凝集を抑制することができるとのメリットがある。
一方、樹脂粉末としては、複合樹脂を得る際に使用する樹脂と同様のものを使用することができる。もちろん、異種であってもよいが、同種である方が好ましい。
相互作用しない粉末の配合量は、繊維状セルロース(マイクロ繊維セルロース)に対して、好ましくは1~9900質量%、より好ましくは5~1900質量%、特に好ましくは10~900質量%である。配合量が1質量%を下回ると、セルロース繊維の間隙に入って凝集抑制する作用が不足となるおそれがある。他方、配合量が9900質量%を上回ると、セルロース繊維としての機能を発揮できなくなるおそれがある。なお、相互作用しない粉末が無機粉末である場合は、サーマルリサイクルに支障が出ない割合で配合するのが好ましい。
相互作用しない粉末としては、無機粉末及び樹脂粉末を併用することもできる。無機粉末及び樹脂粉末を併用すると、無機粉体同士や樹脂粉末同士が凝集する条件で混合した場合でも無機粉末及び樹脂粉末がお互いに凝集を防ぐような効果を発揮する。また、粒径が小さい粉体は表面積が大きく重力の影響よりも分子間力の影響を受けやすく、その結果として凝集しやすくなるため、粉体とマイクロ繊維セルローススラリーとを混合する際に粉体がスラリー中でうまくほぐれなかったり、含有水分率の調節時に粉体同士が凝集することで、マイクロ繊維セルロースの凝集を防ぐ効果が十分に発揮されなくなったりするおそれがある。しかしながら、無機粉末及び樹脂粉末を併用すると、自身の凝集を緩和することができると考えられる。
無機粉末及び樹脂粉末を併用する場合、無機粉末の平均粒径:樹脂粉末の平均粒径の比は、1:0.1~1:10000が好ましく、1:1~1:1000がより好ましい。この範囲にあると、自身の凝集力の強さから生じる問題(例えば、粉体とマイクロ繊維セルローススラリーとを混合する際に粉体がスラリー中でうまくほぐれなかったり、含有水分率の調節時に粉体同士が凝集したりする問題。)が発生せずに、マイクロ繊維セルロースの凝集を防ぐ効果を十分に発揮できるようになると考えられる。
無機粉末及び樹脂粉末を併用する場合、無機粉末の質量%:樹脂粉末の質量%の比は、1:0.01~1:100が好ましく、1:0.1~1:10がより好ましい。この範囲にあると、異種粉体同士が自身の凝集を阻害することが可能になると考えられる。この範囲にあると、自身の凝集力の強さから生じる問題(例えば、粉体とマイクロ繊維セルローススラリーとを混合する際に粉体がスラリー中でうまくほぐれなかったり、含有水分率の調節時に粉体同士が凝集したりする問題。)が発生せずに、マイクロ繊維セルロースの凝集を防ぐ効果を十分に発揮できるようになると考えられる。
(製造方法)
繊維状セルロース(マイクロ繊維セルロース)及び酸変性樹脂、分散剤、相互作用しない粉末等の混合物は、以下で詳細に説明するように、樹脂と混練するに先立って含有水分率が18%未満の繊維状セルロース含有物とすると好適である。この繊維状セルロース含有物は、通常、乾燥体である。また、この乾燥体は、好ましくは粉砕して粉状物にする。この形態によると、樹脂と混練して得る繊維状セルロース複合樹脂の着色が低減される。また、樹脂との混練に際して繊維状セルロースを乾燥させる必要がなく、熱効率が良い。さらに、混合物に相互作用しない粉末や、分散剤が混合されている場合は、当該混合物を乾燥したとしても、繊維状セルロース(マイクロ繊維セルロース)が再分散しなくなるおそれが低い。
混合物は、乾燥するに先立って必要により脱水して脱水物にする。この脱水は、例えば、ベルトプレス、スクリュープレス、フィルタープレス、ツインロール、ツインワイヤーフォーマ、バルブレスフィルタ、センターディスクフィルタ、膜処理、遠心分離機等の脱水装置の中から1種又は2種以上を選択使用して行うことができる。
混合物、あるいは脱水物の乾燥は、例えば、ロータリーキルン乾燥、円板式乾燥、気流式乾燥、媒体流動乾燥、スプレー乾燥、ドラム乾燥、スクリューコンベア乾燥、パドル式乾燥、一軸混練乾燥、多軸混練乾燥、真空乾燥、攪拌乾燥等の中から1種又は2種以上を選択使用して行うことができる。
乾燥した混合物(乾燥物)は、粉砕して粉状物にするのが好ましい。乾燥物の粉砕は、例えば、ビーズミル、ニーダー、ディスパー、ツイストミル、カットミル、ハンマーミル等の中から1種又は2種以上を選択使用して行うことができる。
粉状物の平均粒子径は、好ましくは1~10,000μm、より好ましくは10~5,000μm、特に好ましくは100~1,000μmである。粉状物の平均粒子径が10,000μmを上回ると、樹脂との混練性に劣るものになるおそれがある。他方、粉状物の平均粒子径が1μmを下回るものにするには大きなエネルギーが必要になるため、経済的でない。
粉状物の平均粒子径の制御は、粉砕の程度を制御することのほか、フィルター、サイクロン等の分級装置を使用した分級によることができる。
混合物(粉状物)の嵩比重は、好ましくは0.03~1.0、より好ましくは0.04~0.9、特に好ましくは0.05~0.8である。嵩比重が1.0を超えるということは繊維状セルロース同士の水素結合がより強固であり、樹脂中で分散させることは容易ではなくなることを意味する。他方、嵩比重が0.03を下回るものにするのは、移送コストの面から不利である。
嵩比重は、JIS K7365に準じて測定した値である。
混合物(繊維状セルロース含有物)の含有水分率は、好ましくは18%未満、より好ましくは0~17%、特に好ましくは0~16%である。含有水分率が18%以上になると、セルロース繊維由来の成分に起因して繊維状セルロース複合樹脂の着色を低減することができない可能性がある。特にカルバメート基の置換率を1mmol/g以上とする場合においては、着色を低減することができない可能性がある。
なお、含有水分率が18%以上であると、溶融混練等で例えば180℃以上の高温に晒された際に、マイクロ繊維セルロースと高温水とが接触し、マイクロ繊維セルロースの低分子化反応等が起こり、着色の要因となる低分子化合物が生成し、混練工程で低分子化合物による着色が進行すると考えられる。含有水分率を18%以下とすることで、高温水がマイクロ繊維セルロースと接触する前に蒸発させることが可能となり、着色を防止できるのである。
ちなみに、もともと存在する着色原因物質(ヘミセルロース等)が低分子化すると水溶化し、カルバメート化パルプの洗浄工程で着色原因物質を除去することが可能となる。着色原因物質がマイクロ繊維セルロースに残留すると、上記した高温水と着色原因物質とが接触して着色が顕著になるのである。
含有水分率は、定温乾燥機を用いて、試料を105℃で6時間以上保持し質量の変動が認められなくなった時点の質量を乾燥後質量とし、下記式にて算出した値である。
含有水分率(%)=[(乾燥前質量-乾燥後質量)÷乾燥前質量]×100
脱水・乾燥したマイクロ繊維セルロースには、相互作用しない粉末としての樹脂粉末以外の樹脂が含まれていても良い。樹脂が含まれていると、脱水・乾燥したマイクロ繊維セルロース同士の水素結合が阻害され、混練の際の樹脂中での分散性を向上することができる。
脱水・乾燥したマイクロ繊維セルロースに含まれる樹脂の形態としては、例えば、粉末状、ペレット状、シート状等が挙げられる。ただし、粉末状(粉末樹脂)が好ましい。
粉末状とする場合、脱水・乾燥したマイクロ繊維セルロースに含まれる粉末樹脂の平均粒子径は、1~10,000μmが好ましく、10~5,000μmがより好ましく、100~1,000μmが特に好ましい。平均粒子径が10,000μmを超えると、粒子径が大きいために混練装置内に入らないおそれがある。他方、平均粒子径が1μm未満であると、微細なためにマイクロ繊維セルロース同士の水素結合を阻害することができないおそれがある。なお、ここで使用する粉末樹脂等の樹脂は、マイクロ繊維セルロースと混練する樹脂(主原料としての樹脂)と同種であっても異種であってもよいが、同種である方が好ましい。
平均粒子径1~10,000μmの粉末樹脂は、脱水・乾燥前の水系分散状態で混合するのが好ましい。水系分散状態で混合することで、粉末樹脂をマイクロ繊維セルロース間へ均一に分散することができ、混練後の複合樹脂中にマイクロ繊維セルロースを均一に分散できることができ、強度物性をより向上することができる。
以上のようにして得た繊維状セルロース含有物(樹脂の補強材)は、樹脂と混練し、繊維状セルロース複合樹脂を得る。この混練は、例えば、ペレット状の樹脂と補強材とを混ぜ合わす方法によることのほか、樹脂をまず溶融し、この溶融物の中に補強材を添加するという方法によることもできる。なお、酸変性樹脂や分散剤等は、この段階で添加することもできる。
混練処理には、例えば、単軸又は二軸以上の多軸混練機、ミキシングロール、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、スクリュープレス、ディスパーザー等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。これらの中では、二軸以上の多軸混練機を使用することが好ましい。二軸以上の多軸混練機を2機以上、並列又は直列にして、使用しても良い。
混練処理の温度は、樹脂のガラス転移点以上であり、樹脂の種類によって異なるが、80~280℃とするのが好ましく、90~260℃とするのがより好ましく、100~240℃とするのが特に好ましい。
樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、脂肪族ポリエステル樹脂や芳香族ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、メタアクリレート、アクリレート等のポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
ただし、ポリオレフィン及びポリエステル樹脂の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましい。また、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレンを使用するのが好ましい。さらに、ポリエステル樹脂としては、脂肪族ポリエステル樹脂として、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等を例示することができ、芳香族ポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等を例示することができるが、生分解性を有するポリエステル樹脂(単に「生分解性樹脂」ともいう。)を使用するのが好ましい。
生分解性樹脂としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル、カプロラクトン系脂肪族ポリエステル、二塩基酸ポリエステル等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルとしては、例えば、乳酸、リンゴ酸、グルコース酸、3-ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や、これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、ポリ乳酸、乳酸と乳酸を除く上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体を使用するのが好ましく、ポリ乳酸を使用するのが特に好ましい。
この乳酸としては、例えば、L-乳酸やD-乳酸等を使用することができ、これらの乳酸を単独で使用しても、2種以上を選択して使用してもよい。
カプロラクトン系脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリカプロラクトンの単独重合体や、ポリカプロラクトン等と上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
二塩基酸ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
生分解性樹脂は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂等を使用することができる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
樹脂には、無機充填剤が、好ましくはサーマルリサイクルに支障が出ない割合で含有されていてもよい。
無機充填剤としては、例えば、Fe、Na、K、Cu、Mg、Ca、Zn、Ba、Al、Ti、ケイ素元素等の周期律表第I族~第VIII族中の金属元素の単体、酸化物、水酸化物、炭素塩、硫酸塩、ケイ酸塩、亜硫酸塩、これらの化合物よりなる各種粘土鉱物等を例示することができる。
具体的には、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ほう酸アルミニウム、アルミナ、酸化鉄、チタン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、クレーワラストナイト、ガラスビーズ、ガラスパウダー、珪砂、硅石、石英粉、珪藻土、ホワイトカーボン、ガラスファイバー等を例示することができる。これらの無機充填剤は、複数が含有されていてもよい。また、古紙パルプに含まれるものであってもよい。
繊維状セルロース(マイクロ繊維セルロース)及び樹脂の配合率は、繊維状セルロースが1~80質量%、樹脂が20~90質量%であるのが好ましく、繊維状セルロースが5~60質量%、樹脂が30~80質量%であるのがより好ましく、繊維状セルロースが10~50質量%、樹脂が40~70質量%であるのが特に好ましい。繊維状セルロースの配合率が相対的に下がると、補強する繊維同士での相互作用がなくなり、繊維単体で樹脂を補強することにより補強効果が十分に発揮できなくなると考える。他方、相対的に繊維状セルロースの配合率が上がると、補強する繊維同士での相互作用が生じ、繊維単体での補強性に加えて繊維同士で補強性を補い合うことで、樹脂の補強効果を十分に発揮できるようになると考える。
なお、最終的に得られ樹脂組成物に含まれる繊維状セルロース及び樹脂の含有割合は、通常、繊維状セルロース及び樹脂の上記配合率と同じとなる。
マイクロ繊維セルロース及び樹脂の溶解パラメータ(cal/cm3)1/2(SP値)の差は、マイクロ繊維セルロースのSPMFC値、樹脂のSPPOL値とすると、SP値の差=SPMFC値-SPPOL値とすることができる。SP値の差は10~0.1が好ましく、8~0.5がより好ましく、5~1が特に好ましい。SP値の差が10を超えると、樹脂中でマイクロ繊維セルロースが分散せず、補強効果を得ることはできない可能性がある。他方、SP値の差が0.1未満であるとマイクロ繊維セルロースが樹脂に溶解してしまい、フィラーとして機能せず、補強効果が得られない。この点、樹脂(溶媒)のSPPOL値とマイクロ繊維セルロース(溶質)のSPMFC値の差が小さい程、補強効果が大きい。
なお、溶解パラメータ(cal/cm3)1/2(SP値)とは、溶媒-溶質間に作用する分子間力を表す尺度であり、SP値が近い溶媒と溶質であるほど、溶解度が増す。
(成形処理)
繊維状セルロース含有物及び樹脂の混練物は、必要により再度混練する等した後、所望の形状に成形することができる。この成形の大きさや厚さ、形状等は、特に限定されず、例えば、シート状、ペレット状、粉末状、繊維状等とすることができる。
成形処理の際の温度は、樹脂のガラス転移点以上であり、樹脂の種類によって異なるが、例えば90~260℃、好ましくは100~240℃である。
混練物の成形は、例えば、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等によることができる。また、混練物を紡糸して繊維状にし、前述した植物材料等と混繊してマット形状、ボード形状とすることもできる。混繊は、例えば、エアーレイにより同時堆積させる方法等によることができる。
混練物を成形する装置としては、例えば、射出成形機、吹込成形機、中空成形機、ブロー成形機、圧縮成形機、押出成形機、真空成形機、圧空成形機等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
以上の成形は、混練に続いて行うことも、混練物をいったん冷却し、破砕機等を使用してチップ化した後、このチップを押出成形機や射出成形機等の成形機に投入して行うこともできる。もちろん、成形は、本発明の必須の要件ではない。
(その他の組成物)
繊維状セルロースには、マイクロ繊維セルロースと共にセルロースナノファイバーが含まれていてもよい。セルロースナノファイバーは、マイクロ繊維セルロースと同様に微細繊維であり、樹脂の強度向上にとってマイクロ繊維セルロースを補完する役割を有する。ただし、可能であれば、微細繊維としてセルロースナノファイバーを含むことなくマイクロ繊維セルロースのみによる方が好ましい。なお、セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは4~100nm、より好ましくは10~80nmである。
また、繊維状セルロースには、パルプが含まれていてもよい。パルプは、セルロース繊維スラリーの脱水性を大幅に向上する役割を有する。ただし、パルプについてもセルロースナノファイバーの場合と同様に、配合しないのが、つまり含有率0質量%であるのが最も好ましい。
繊維状セルロース複合樹脂には、微細繊維やパルプ等のほか、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた植物材料に由来する繊維を含ませることもでき、含まれていてもよい。
繊維状セルロース複合樹脂には、例えば、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、ラジカル捕捉剤、発泡剤等の中から1種又は2種以上を選択して、本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。これらの原料は、繊維状セルロースの分散液に添加しても、繊維状セルロース及び樹脂の混練の際に添加しても、これらの混練物に添加しても、その他の方法で添加してもよい。ただし、製造効率の面からは、繊維状セルロース及び樹脂の混練の際に添加するのが好ましい。
繊維状セルロース複合樹脂には、ゴム成分として、エチレン-αオレフィン共重合エラストマー又はスチレン-ブタジエンブロック共重合体が含有されていてもよい。α-オレフィンの例としては、例えば、ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、メチル-ペンテン、オクテン、デセン、ドデセン等が挙げられる。
(その他)
本形態の製造方法は、各種装置を用いて連続的に行うか、各種装置を使用するか否かに関わらずバッチ式で行うかを問わない。例えば、カルバメート化は、バッチ式であれば、シート状の繊維状セルロース含有物を尿素等を含む反応液に漬け込み、これを乾燥機で乾燥(例えば、4時間かけて絶乾状態にする。)させた後、反応させることで実現することができる。一方、連続式であれば、抄紙機様の装置(実機)、例えば、サイズプレスやドライヤ等を用いるなどして実現することができる。この点、シート状の繊維状セルロース含有物が厚み5mm程度であれば乾燥に時間がかかり、連続式とするには向かず、バッチ式とするに適する。この場合は、シート状の繊維状セルロース含有物を、例えば、常温下で3~5日間さらす(風乾)ことで乾燥時間を短縮化することも考えられる。一方、厚み100μ程度であれば、ドライヤ等の装置を用いることで、乾燥までをも連続的に行うことができ、連続式とするに好適である。連続式とする場合は、バッチ式における反応液の含浸に換えて、サイズプレス等の装置を使用して反応液を塗工するとよい。
次に、本発明の実施例を説明する。
以下、カルバメート化する際の乾燥工程の有無による影響、及び耐熱性に関する効果を明らかにする試験例について説明する。
水分率10%以下の針葉樹クラフトパルプと濃度10%の尿素水溶液とpH調整液とを固形分換算の質量比で表1に記載の配合となるように混合した。この混合物は、試験例3以外においては105℃で乾燥させて混合物の水分率を10%以下とした。一方、試験例3においては、混合物を乾燥させず、混合物の水分率を10%以下としなかった。また、試験例6については、未変性パルプを蒸留水で希釈攪拌して、脱水洗浄を2回繰り返した。洗浄した未変性パルプは、ナイヤガラビーターで4時間叩解してマイクロ繊維セルロースを得た。また、参考例はTEMPO触媒酸化したセルロース繊維での数値であり、耐熱性の低さを読み取ることができる。
混合物は、その後、反応時間3時間、表中に記載の反応温度で加熱処理し、カルバメート変性パルプを得た。得られたカルバメート変性パルプは蒸留水で希釈攪拌して、脱水洗浄を2回繰り返した。洗浄したカルバメート変性パルプをナイヤガラビーターで4時間叩解してカルバメート変性マイクロ繊維セルロースを得た。
以上の各種マイクロ繊維セルロースは固形分濃度2重量%の水分散体とし、この水分散体500gに無水マレイン酸変性ポリプロピレン5g及びポリプロピレン粉末85gを添加し、105℃で加熱乾燥してカルバメート変性マイクロ繊維セルロース含有物を得た。このカルバメート変性マイクロ繊維セルロース含有物の含水率は、10%未満であった。このカルバメート変性マイクロ繊維セルロース含有物は、180℃、200rpmの条件で二軸混練機にて混練し、カルバメート変性マイクロ繊維セルロース複合樹脂を得た。そして、この複合樹脂をペレッターで2mm径、2mm長の円柱状にカットし、180℃で直方体試験片(長さ59mm、幅9.6mm、厚さ3.8mm)に射出成形した。以上のようにして得た各種試験片について、曲げ弾性率、曲げ強度を測定し、表1に示した。また、同表に、解繊前後におけるセルロース繊維の平均繊維長、及び5%重量減少温度も示した。なお、曲げ弾性率及び曲げ強度の測定は、JIS K 7171:1994に準拠した。ただし、表中には、樹脂自体の曲げ弾性率を1として複合樹脂の曲げ弾性率が1.60倍以上の場合を◎、1.40倍以上、かつ1.60倍未満の場合を○、1.40倍未満の場合を×として記載した。また、樹脂自体の曲げ強度を1として複合樹脂の曲げ強度が1.30倍以上の場合を◎、1.20倍以上、かつ1.30倍未満の場合を○、1.18倍以上、かつ1.20倍未満の場合を△、1.18倍未満の場合を×として記載した。平均繊維長や5%重量減少温度の測定は、前述したとおりである。