JP7097023B2 - ペプチド、唾液腺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物及び肺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物 - Google Patents
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Description
〔1〕Leu-His-Lys若しくはLeu-Leu-His-Lys(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩。
〔2〕上記〔1〕に記載のペプチド又はその塩を含有する組成物。
〔3〕His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する、唾液腺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物。
〔4〕口腔乾燥症又は誤嚥性肺炎の予防又は改善のために使用される、上記〔3〕に記載の組成物。
〔5〕His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する、肺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物。
〔6〕肺活量の低下、肺気腫又は閉塞性肺疾患の予防又は改善のために使用される、上記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕上記His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、下記(a)~(c)のいずれかのペプチドである上記〔3〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
(a)X1-His-Lys-Z1(X1は、存在しないか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列のn1~58番目(n1は、1~58のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す。Z1は、存在しないか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列の61~m1番目(m1は、61~162のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、59~60番目以外の領域中に1~9個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるペプチド
(c)上記(b)のペプチドの部分配列からなるペプチドであって、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド
〔8〕上記His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、C末端にHis-Lysのアミノ酸配列を含む上記〔3〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕上記His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、X1-His-Lys(X1は、存在しないか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列のn1~58番目(n1は、1~58のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、上記〔3〕~〔8〕のいずれかに記載の組成物。
〔10〕上記His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、X2-His-Lys(X2は、存在しないか、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列のn2~18番目(n2は、1~18のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、上記〔3〕~〔9〕のいずれかに記載の組成物。
〔11〕上記His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、His-Lys、Leu-His-Lys又はLeu-Leu-His-Lys(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドである上記〔3〕~〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔12〕経口用組成物である上記〔2〕~〔11〕のいずれかに記載の組成物。
ペプチドの塩としては、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されず、酸性塩及び塩基性塩のいずれであってもよい。酸性塩として、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。塩基性塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
(a)X1-His-Lys-Z1(X1は、存在しないか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列のn1~58番目(n1は、1~58のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す。Z1は、存在しないか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列の61~m1番目(m1は、61~162のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、59~60番目以外の領域中に1~9個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるペプチド
(c)上記(b)のペプチドの部分配列からなるペプチドであって、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド
HK含有ペプチド又はその塩として、上記(a)のペプチド又はその塩がより好ましい。
上記(b)のペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、59~60番目以外の領域中に好ましくは1~8個(より好ましくは1~7個、1~6個、1~5個又は1~4個、さらに好ましくは1~3個、1~2個又は1個)のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列からなる。
上記(c)のペプチドは、上記(b)の部分配列からなり、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチドである。
本発明の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。
本発明の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物を、飲食品、医薬品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されない。例えば、有効成分として使用されるHK含有ペプチド又はその塩を用いて、一般的な方法により製造することができる。
本発明の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物の摂取量(投与量ということもできる)は特に限定されず、唾液腺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復効果、肺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復効果が得られるような量(有効量)であればよく、投与形態、投与方法等に応じて適宜設定すればよい。一態様において、ヒト(成人)を対象に経口で投与する又は摂取させる場合、HK含有ペプチド又はその塩の摂取量は、HK含有ペプチドに換算して、例えば、1日あたり0.1mg~2.5gが好ましく、2.5mg~250mgがより好ましい。上記量を、例えば1日1回で又は複数回(例えば、2~3回)に分けて経口投与又は摂取させることが好ましい。HK含有ペプチド又はその塩の摂取量が上記範囲となるように、本発明の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物を対象に摂取させる又は投与することが好ましい。
His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド(HK含有ペプチド)又はその塩を、対象に投与することを含む、唾液腺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復方法。His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を対象に投与することを含む、肺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復方法。His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を、対象に投与することを含む、口腔乾燥症又は誤嚥性肺炎の予防又は改善方法。His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を、対象に投与することを含む、肺活量の低下、肺気腫又は閉塞性肺疾患の予防又は改善方法。
HK含有ペプチド又はその塩、投与対象、投与方法、投与量及びそれらの好ましい態様等は、上述した萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物におけるものと同じである。HK含有ペプチド又はその塩の投与量は、唾液腺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復作用、又は、肺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復作用が得られる量、すなわち有効量であればよく、特に限定されない。例えば上述した摂取量を投与することが好ましい。HK含有ペプチド又はその塩は、そのまま投与してもよいし、HK含有ペプチド又はその塩を含有する組成物として投与してもよい。例えば、上述した本発明の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物を投与することができる。本発明によれば、安全に、唾液腺又は肺の萎縮又は機能低下を抑制又は回復させることができ、該萎縮に起因する唾液腺又は肺の機能低下を抑制又は回復させることができる。また、唾液腺又は肺の機能低下を抑制又は回復させることにより、当該機能低下に起因する状態又は疾患を予防又は改善することが可能となる。上記方法は、治療的な方法であってもよく、非治療的な方法であってもよい。一態様において、唾液腺の萎縮又は機能低下は、加齢による唾液腺の萎縮又は機能低下であってよい。肺の萎縮又は機能低下は、加齢による肺の萎縮又は機能低下であってよい。加齢等による唾液腺の萎縮又は機能低下を抑制又は回復させることにより、口腔乾燥症、誤嚥性肺炎等の状態又は疾患の予防又は改善が可能となる。加齢等による肺の萎縮又は機能低下を抑制又は回復させることにより、肺活量の低下、肺気腫、閉塞性肺疾患等の状態又は疾患の予防又は改善が可能となる。
唾液腺の萎縮又は機能低下を抑制又は回復させるための、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド(HK含有ペプチド)又はその塩の使用。肺の萎縮又は機能低下を抑制又は回復させるための、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド(HK含有ペプチド)又はその塩の使用。口腔乾燥症又は誤嚥性肺炎の予防又は改善のための、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用。肺活量の低下、肺気腫又は閉塞性肺疾患の予防又は改善のための、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用。
上記の使用は、ヒト又は非ヒト動物における使用である。使用は、治療的使用であってもよく、非治療的使用であってもよい。HK含有ペプチド又はその塩、対象、投与方法、投与量及びそれらの好ましい態様等は、上述した萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物におけるものと同じである。本発明はさらに、唾液腺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物を製造するための、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用;肺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物を製造するための、His-Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用も包含する。萎縮又は機能低下抑制又は回復用組成物及びその好ましい態様等は、上記と同じである。
(1)被験試料の調製
被験試料として、以下のジペプチド、トリペプチド及びテトラペプチドの酢酸塩を合成した。
His-Lysのアミノ酸配列からなるジペプチドの酢酸塩(以下、HKという)
Leu-His-Lysのアミノ酸配列からなるトリペプチドの酢酸塩(以下、LHKという)
Leu-Leu-His-Lys(配列番号1)のアミノ酸配列からなるテトラペプチドの酢酸塩(以下、LLHKという)
上記で調製したLLHKは30mg/30mL、LHKは23mg/30mL、HKは16mg/30mLとなるように水道水に溶解させてLLHK水溶液、LHK水溶液、HK水溶液の各被験試料水溶液を調製した。17ケ月齢のウイスター系雄ラット(老齢ラット)に、LLHK水溶液(LLHK飲用群)、LHK水溶液(LHK飲用群)、HK水溶液(HK飲用群)又は水道水(水飲用群:コントロール(老齢コントロール))を自由に飲用させて、1ケ月間飼育した(各群n=2)。なおこの期間中、被験試料(LLHK、LHK又はHK)飲用群及び水飲用群には、いずれも同じ固形飼料(商品名MF、オリエンタル酵母(株)製)を自由に摂取させた。
被験試料飲用前(実験開始前)と、1ケ月間被験試料飲用後のラットの体重を測定した。水飲用群についても、実験開始前と終了後に体重を測定した。
(2-2-1)唾液量の測定
1ケ月被験試料又は水を飲用させたラットに、セビメリン(第一三共(株)製)を10mg/kg腹腔内投与し、投与後5分~15分間の唾液を腔内からスポイトで採取し、その総量を測定した。
唾液中のアミラーゼ活性及びシスタチン量を下記(a)~(b)の方法に従って測定した。
唾液中のシスタチン(cistatin)は、システインプロテアーゼを阻害して、抗ウイルス作用や抗菌作用を発揮し、歯周病菌の増殖を抑制することが知られている。また唾液中のアミラーゼは、口腔内での消化作用と食渣中の成分を分解する自浄作用を担っている。通常、唾液に含まれるこれらの成分等が相俟って、口腔本来の食物摂取機能(消化機能、味覚)と口腔内環境の維持(自浄作用、抗菌作用、抗炎症作用、再石灰化作用、免疫作用等)がバランスよく行われている。従って唾液中のアミラーゼの活性が高く、シスタチン量が多いことは、唾液腺の唾液の機能性が高いことを意味する。
(a)アミラーゼ活性の測定
上記で採取した唾液を試料として、唾液中のアミラーゼ量をBernfeldの方法(Methods Enzymol, 1, 149-154, 1955)に従って測定した。
(b)シスタチン量の測定
上記で採取した唾液を試料として、唾液中のシスタチン量をAbrahamsonの方法(Methods Enzymol, 244, 685-700, 1994)に従って測定した。
(2-3-1)臓器の重量の測定
被験試料又は水を1ケ月飲用させた後、各群のラットから各種臓器を摘出し、重量を測定した(各群n=4、ただし舌下腺と肺はn=2)。
上記で摘出した耳下腺ホモジネート中のアミラーゼ活性を、Bernfeldの方法(Methods Enzymol, 1, 149-154, 1955)に従って測定し、アミラーゼ活性とした。
摘出した耳下腺ホモジネート中のシスタチン量をAbrahamsonの方法(Methods Enzymol, 244, 685-700, 1994)に従って測定した。
上記で摘出した舌下腺のホモジネートに、5%濃度となるようにSDSを添加し、ポリアクリルアミドゲルに載せ、SDS-PAGEに供した。このポリアクリルアミドゲルで分けられたタンパク質をニトロセルロース膜に転写し、ニトロセルロース膜を抗プローリンリッチプロテイン抗体及び抗アミラーゼ抗体と反応させ、ウエスタンブロッティング法にて、それぞれのタンパク質をバンドとして検出した。
上記で摘出した舌下腺又は肺を、直ちにRNA later(Ambion, Austin, TX, USA)に入れ、total RNA精製は、RNeasy Mini Kit(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)とQIAcube(Qiagen GmbH)を用いて行った。RNAの純度をNanoDrop ND-1000 spectro(ABPbeta)photometer(NanoDrop Technologies, Inc., Wilmington, DE, USA)とAgilent2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)を用いて確かめた後、cDNAを、Whole Transcript(WT)Expression Kit(Ambion)(Thermo Fisher Scientific社)を用いて合成した。cDNAをGeneChip(登録商標)WT Terminal Labeling Kit(Affymetrix, Santa Clara, CA, USA)を用いて、フラグメント化し、ラベルした。Affymetrix GeneChip(登録商標)Rat Gene 2.0 ST Array(Affymetrix)とGeneChip(登録商標)Hybridization Oven 640(Affymetrix)を用いて、ラベル化したcDNAフラグメントを45℃で17時間ハイブリダイズした。本Arrayは、約27,000個の遺伝子が解析できる。解析には、GeneSpring GX version 12(Agilent, Santa Clara, CA, USA)を用いた。
(2-5-1)唾液腺のHE染色
上記で摘出した舌下腺をホルマリンで固定後、パラフィン包埋切片を作製し、HE染色し、生物顕微鏡(オリンパス株式会社製、BX53)で10×20倍の拡大率にて観察した。
上記で摘出した肺の右中葉をホルマリンで固定後、パラフィン包埋切片を作製し、HE染色し、生物顕微鏡(オリンパス株式会社製、BX53)で10×4倍の拡大率にて観察した。
対比のため、20週齢のウイスター系雄ラット(若齢コントロール)から舌下腺及び肺を摘出し、上記と同様の方法でHE染色し、観察を行った。なお、16週齢のウイスター系雄ラットに水道水及び固形飼料(商品名MF、オリエンタル酵母(株)製)を自由に摂取させて、1カ月間飼育し、上記若齢コントロール(20週齢)とした。
以下に実験結果を示す。得られた値は、平均値±標準誤差で示した。有意差検定は、Excelの分析ツールを用いて、t検定(等分散を仮定した2標本による検定、p値、片側検定)により行った、水飲用群(コントロール)に対する検定結果である(*:p<0.05、**:p<0.01)。
実験開始前、及び、被験試料(LLHK、LHK又はHK)又は水を1ケ月飲用後(実験終了後)のラットの体重を表1に示す。被験試料飲用群と水飲用群との間で、体重への影響には有意差がなかった。
(3-2-1)唾液量
被験試料又は水飲用1ケ月後のラットの唾液量を、上記の方法で測定した結果を表2に示す。被験試料飲用群では、唾液量が有意に多かった。このことは、LLHK、LHK及びHKが唾液腺の機能低下を抑制又は回復させたことを示す。
被験試料又は水飲用1ケ月後の、ラットの唾液に含まれるアミラーゼの活性を、表3に示した。被験試料飲用群で、水飲用群に比し、アミラーゼ活性の有意な上昇が認められた。例えばLLHK飲用群では、水飲用群に比し、約1.8倍のアミラーゼ活性の上昇が認められた。このことから、LLHK、LHK及びHKが、唾液の質を向上させる作用を有することが分かる。
被験試料又は水飲用1ケ月後の、ラットの唾液に含まれるシスタチンの量を、表4に示した。被験試料群で、水飲用群に比し、3倍以上のシスタチン量の上昇が認められた。このことから、LLHK、LHK及びHKが、唾液の質を向上させる作用を有することが分かる。
(3-3-1)臓器重量(LLHK、LHK及びHKが臓器重量に及ぼす効果)
被験試料又は水飲用1ケ月後の、ラットの耳下腺、顎下腺、舌下腺、肺の左上葉及び右下葉の重量を、表5に示す。表5に示すように、耳下腺、顎下腺、舌下腺、肺左上葉及び右下葉の重量は、被験試料飲用群で、水飲用群に比し、有意に増加していた。
実施例1では、水飲用群のラット(18月齢)では、耳下腺の重量は178±11mgであり、上記若齢ラットと比較して減少した。一方、例えばLLHK飲用群のラット(18月齢)では、耳下腺の重量は244±23mgであった。このことから、LLHK飲用は、加齢による耳下腺の萎縮を抑制又は回復させたといえる。また、実施例1では、水を飲用したラット(18月齢)では、舌下腺の重量は46mgであり、上記若齢ラットと比較して減少した。一方LLHK水溶液を飲用したラット(18月齢)では、舌下腺の重量が66mgであった。このことから、LLHK飲用は、加齢による舌下腺の萎縮を抑制又は回復させた。顎下腺及び肺(左上葉及び右下葉)についても、LLHK飲用は、加齢によるこれらの臓器の萎縮を抑制又は回復させた。LHK又はHKの飲用も、上記の臓器の萎縮を抑制又は回復させた。従って、LLHK、LHK及びHKが表5に示す臓器において加齢による萎縮を抑制又は回復させることが示された。
被験試料又は水飲用1ケ月後の、ラットの耳下腺に含まれるアミラーゼ量を、アミラーゼ活性として表6に示した。被験試料飲用群では、水飲用群と比較してアミラーゼ活性が高かった。例えばLLHK飲用群で、水飲用群に比し、約2倍のアミラーゼ活性の上昇が認められた。これらから、LLHK、LHK及びHKが、唾液腺の機能低下を抑制又は回復させる作用を有することが分かる。
被験試料又は水飲用1ケ月後の、ラットの耳下腺に含まれるシスタチン量を、表7に示した。被験試料飲用群では、水飲用群と比較してシスタチン量の上昇が認められた。例えばLLHK飲用群及びLHK飲用群では、水飲用群に比し、約2倍のシスタチン量の上昇が認められた。このことから、LLHK、LHK及びHKが、唾液腺の機能低下を抑制又は回復する作用を有することが分かる。
LLHK又は水飲用1ケ月後の、舌下腺に含まれるアミラーゼ量とプローリンリッチプロテイン量をウエスタンブロッティング法で分析した結果を示す写真を図1及び図2に示す(図1:アミラーゼ、図2:プローリンリッチプロテイン)。図1中の矢印は、アミラーゼのバンドを、図2中の矢印は、プローリンリッチプロテインのバンドをそれぞれ指す。舌下腺に含まれるアミラーゼ及びプローリンリッチプロテインは、LLHK飲用によって、コントロール(水飲用)と比較して増加した。このことから、LLHKが、唾液腺の機能低下を抑制又は回復する作用を有することが分かる。
LLHK又は水飲用1ケ月後のラットについて、舌下腺又は肺における遺伝子発現量を調べた結果を表8~9に示す。表8~9に示す発現量(相対値)は、コントロール(水飲用群)における各遺伝子の発現量(n=2の平均値)を1とした場合の、LLHK飲用群における各遺伝子の発現量(n=2の平均値)の相対値である。
唾液腺に特異的に発現する主たるタンパク質(唾液腺に特異的に発現し、唾液腺の機能に重要な役割を果たすタンパク質)の遺伝子として、salivary protein 1(Spt1)(NM_019171)、proline-rich protein涙腺型(Prol1)(NM_133513)、mucin-like1(Mucl1)(XM_006242469)、cystatinS(Cyss)(NM_198685)、lysozyme2(Lyz2)の遺伝子発現量を表8に示す。唾液腺に特異的に発現するマイナーなタンパク質(唾液腺に特異的に発現するが、唾液腺の機能にあまり役割のない重要でないタンパク質)の遺伝子として、secretoglobulin, family 1B(Scgb1b30)(NM_001100859)及びimmunoglobulin kappaconstant(Igkc)の遺伝子発現量を調べた結果を表8に示す。
肺中のセリンプロテアーゼ(granzymeC(Gzmc)(NM_134332))の遺伝子発現量を調べた結果を表9に示す。
(3-5-1)唾液腺のHE染色
図3(a)~(e)は、ラットの舌下腺をHE染色した結果を示す顕微鏡写真である(スケールバー:50μm)。図3(a)~(e)は、(a)が若齢コントロール(20週齢のラット)、(b)が老齢コントロール(水飲用群のラット)、(c)がLLHK飲用群のラット、(d)がLHK飲用群のラット、(e)がHK飲用群のラットである。
LLHK、LHK、HK飲用群でコントロール群に比し、腺房細胞の大きさが大きくなり、結合組織が減少した。このことは、LLHK、LHK、HK飲用により、唾液腺の腺房細胞が消化酵素や抗菌物質を蓄え易くなることを意味している。
図4(a)~(e)は、ラットの肺右中葉をHE染色した結果を示す顕微鏡写真である(スケールバー:50μm)。図4(a)~(e)は、(a)が若齢コントロール(20週齢のラット)、(b)が老齢コントロール(水飲用群のラット)、(c)がLLHK飲用群のラット、(d)がLHK飲用群のラット、(e)がHK飲用群のラットである。図4(a)~(e)の白く見える部分は、肺の気腔である。
老化すると、肺の気腔が拡大し、肺表面積が低下する。LLHK、LHK又はHK飲用群では、コントロール群(老齢コントロール)に比し、気腔の大きさが小さくなり、組織細胞や血管が増えていた。このことは、LLHK、LHK、HK飲用により、血中へ酸素を取り込み易くなることを意味している。
Claims (7)
- Leu-His-Lys若しくはLeu-Leu-His-Lys(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩。
- 請求項1に記載のペプチド又はその塩を含有する組成物。
- His-Lys、Leu-His-Lys若しくはLeu-Leu-His-Lys(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩を有効成分として含有する、唾液腺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物。
- 口腔乾燥症又は誤嚥性肺炎の予防又は改善のために使用される、請求項3に記載の組成物。
- His-Lys、Leu-His-Lys若しくはLeu-Leu-His-Lys(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩を有効成分として含有する、肺の萎縮又は機能低下の抑制又は回復用組成物。
- 肺活量の低下、肺気腫又は閉塞性肺疾患の予防又は改善のために使用される、請求項5に記載の組成物。
- 経口用組成物である請求項2~6のいずれか一項に記載の組成物。
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