JP7096082B2 - 低体温の予防又は改善剤 - Google Patents
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Description
しかしながら、近年、平熱が0.5~1.5℃低下する低体温のヒトが増加している。その原因は、ミネラル、ビタミン、タンパク質の不足、運動不足、過度のストレスによる血行不良、自律神経の乱れ等が考えられている。また、ヒトの平熱は乳児で最も高く、加齢により徐々に低下する。青年期に体温の低下は止まるが、高齢者になると再び体温が低下し、平熱は若い時よりも凡そ0.2℃前後低い傾向がみられる。その一因として、熱産生を担う褐色脂肪組織の機能低下が関わっていると考えられている。
このような実情から、体温の低下を効果的に予防又は改善できる、低体温の予防若しくは改善剤が望まれている。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
また本発明は、小麦ふすまを有効成分として含有する、低体温の予防又は改善用飲食品組成物に関する。
また、本明細書において「改善」とは、疾患、症状若しくは状態の好転、疾患、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患、症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
上記使用は、治療的使用(即ち医療行為)であっても非治療的使用(非医療的な行為)であってもよい。また、上記使用の対象は、ヒト、非ヒト動物、又はそれらに由来する検体であり得る。なお、前記「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処理行為を含まない概念である。
低体温の原因は、ミネラル、ビタミン、若しくはタンパク質の不足、運動不足、過度のストレスによる血行不良若しくは自律神経の乱れ、加齢等が挙げられ、本発明は特にこれらに限定されない。本発明においては、加齢に伴って生じる低体温の予防又は改善に適する。
本発明で用いる「小麦ふすま」とは、全粒小麦の表皮(外皮)部分を指す。小麦ふすまは、質量換算で全粒小麦の15%に相当する。そして、小麦ふすまには食物繊維、ミネラル(鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅など)、ビタミンなどの栄養成分が豊富に含まれる。
さらに、本発明の予防若しくは改善剤、並びに本発明の組成物を医療用途や飲食品用途で適用することを考慮し、適宜処理を施してもよい。例えば、小麦ふすまの風味を改善するために、水洗処理、蒸煮処理、脱脂処理、焙煎処理、粉砕処理、湿熱処理、造粒処理、等を必要により適宜組合せて施すことが好ましい。
蒸煮処理をした小麦ふすま(以下、蒸煮処理小麦ふすま)は、小麦ふすまと水とを共存させた状態で熱処理に付したものを意味する。例えば、小麦ふすまをオートクレーブにより処理したり、小麦ふすまと水とを混合してエクストルーダーにより混練処理したり、小麦ふすまと水とを混合してニーダーを用いて混練処理したりして、その後、乾燥し、蒸煮処理小麦ふすまを得ることができる。蒸煮処理により、小麦ふすま特有の臭気、舌上に感じるざらつき感、唾液の吸収感等を改善し、小麦ふすまを食べやすい性状に改質することができる。
本発明の予防又は改善剤は、液状、固形状、乳液状、ペースト状、ゲル状、パウダー状(粉末状)、顆粒状、ペレット状、スティック状等、ヒトや動物に適用されうる各種剤型をとることができる。
また、本発明の予防又は改善剤は、小麦ふすまのみからなるものであってもよいし、効果に影響を与えない範囲で他の成分を含有するものであってもよい。他の成分とは、例えば下記の添加剤が挙げられる。
種々の剤型に調製するには、添加剤を用いて常法に従って製造すればよい。添加剤は、通常用いられているものを使用することができる。添加剤の例としては、薬学的に許容される賦形剤、液体担体、油性担体、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、崩壊剤、滑沢剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、矯臭剤、細菌抑制剤等が挙げられる。
飲食品への配合の例としては、小麦粉加工食品、米加工食品、菓子類、飲料類、乳製品、調味料、蓄肉加工食品、水産加工食品、調理油等が挙げられる。また、錠剤(タブレット)、カプセル等の錠剤食、濃厚流動食、自然流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク栄養食等の経口経腸栄養食品、機能性食品等の形態としてもよい。
飼料組成物としては、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等が挙げられる。
これらの飲食品組成物、飼料組成物及びペットフード組成物等は、本発明の予防若しくは改善剤、又は前述の有効成分を含有し、これに食品原料、例えば、甘味剤、着色剤、抗酸化剤、ビタミン類、香料、ミネラル等の添加剤、タンパク質、脂質、糖質、炭水化物、食物繊維等を適宜組み合わせて、常法に従って調製することができる。
本発明の予防又は改善剤を医薬品、医薬部外品に適用する場合、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤組成物、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤組成物の場合は、組成物(本発明の予防又は改善剤)の総量中、固形分濃度(固形分換算)として5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。またその上限値は、80質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。あるいは、5~80質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
本発明で用いる有効成分を飲食品やペットフード等に配合する場合は、組成物の総量中、前記有効成分の配合量は固形分濃度として5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。またその上限値は、99質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。あるいは、5~99質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
また、前記有効成分の投与又は摂取は、全身への投与又は摂取でもよいし、局所への投与又は摂取でもよい。また、本発明の予防若しくは改善剤、並びに飲食品組成物は、低体温状態、若しくは低体温が誘発される条件下で適用することが好ましい。
(1)動物および飼育方法
C57BL/6J雄性マウス(日本クレア(株))を4週齢で搬入後(室温23℃,湿度55±10%,明期;7:00~19:00)、自由摂餌、自由飲水下で飼育した。餌はCE-2(日本クレア(株))で1週間馴化を行った後、通常食(D12450K,Research Diets,Inc)、又は高脂肪食(D12451,Research Diets,Inc)で95週間飼育した。5週齢より毎週、マウス直腸へプローブを挿入し、体温(直腸温)を計測した。
5週齢より毎週、マウス直腸へプローブ(RET-3(19×0.7mmシャフト径),Physitemp社製)を挿入し、体温(直腸温)を計測した。直腸温測定はデジタル直腸温度計(NS-TC10,Neuroscience社製)を用いた。実験動物ハンドブック(養賢堂、1983年発行)に従い、無麻酔下でマウスを保定後、プローブの先端をマウス直腸に0.5~1cm挿入し,15~30秒間計測した。
解析結果は平均値(Ave.)±標準誤差(SE)で示した。統計解析には2-way
ANOVA followed by Bonferroni’s post hoc検定を用い、P値が0.05以下の場合においては統計学的に有意差ありと判定した。
加齢に伴って体温の低下が観察され、特に高脂肪食摂取群では通常食群と比較して、急速な体温低下が認められた(図1参照)。
日清ファルマ社より購入した小麦ふすまをエクストルーダーにて120℃で蒸煮処理し、小麦ふすま(以下、「蒸煮処理小麦ふすま製剤」ともいう)として使用した。
得られた小麦ふすまの栄養組成の測定は、食品成分分析センターに委託した(表1参照)。
本試験に用いた試験食(粉末飼料)中の餌組成を表2に示す。小麦ふすまは各栄養組成を考慮し、対照食と同等の栄養組成及びカロリーとなるように成分を置き換える形で混合した。
試験食中のコーン油、ラード、カゼイン、セルロース、AIN76ミネラル混合、AIN76ビタミン混合、及びα化ポテト澱粉はオリエンタル酵母工業(株)社製より入手し、使用した。また、ショ糖は和光純薬(株)製のスクロース細粒(特級)を使用した。
(1)動物および飼育方法
C57BL/6J雄性マウス(日本クレア社より入手)を7週齢で搬入後(室温23℃,湿度55±10%,明期;7:00~19:00)、自由摂餌、自由飲水下で飼育した。8週齢時の体重、および8~9週齢にかけての体重の増加を考慮して群分けを行い、10週齢より試験食給餌を開始した。
試験食として、30%の脂質を含む高脂肪食(対照群)、又は30%小麦ふすまを含む30%高脂肪食(小麦ふすま摂取群)をそれぞれ16週間給餌した。試験開始12週間後(22週齢)に深部体温を計測した。
上記製造例2の表2に記載した組成比の粉末飼料を用いた。飼育期間中、摂食量は週3回測定した。
直腸温測定はデジタル直腸温度計(NS-TC10,Neuroscience社製)を用いた。実験動物ハンドブック(養賢堂、1983年発行)に従い、無麻酔下でマウスを保定後、プローブ(RET-3(19×0.7mmシャフト径),Physitemp社製)の先端をマウス直腸に0.5~1cm挿入し、15~30秒間計測した。
得られた数値は平均±標準誤差で示し、有意差検定はGraphpad prism 6を用いて、多重比較検定であるDunnett’s testを用いて比較を行い、有意差水準を5%とした。
深部体温は対照群と比較して小麦ふすま摂取群で高く推移し、22週齢時において有意に高値を示した(図2参照)。
(1)動物および飼育方法
C57BL/6J雄性マウス(日本クレア(株))を4週齢で搬入後(室温23℃,湿度55±10%,明期;7:00~19:00)、自由摂餌、自由飲水下で飼育した。餌は高脂肪食(D12451,Research Diets,Inc)で57週間(61週齢まで)飼育を行った後、各群の体重、および深部体温が同等になるように群分けした。試験食として、30%の脂質を含む対照食(対照群)、又は30%小麦ふすまを含む30%高脂肪食(小麦ふすま摂取群)をそれぞれ19週間(80週齢)給餌した。
なお、飼育期間中は自由摂食、自由摂水とした。試験開始前(45週齢及び55週齢)、試験開始10週間後(70週齢)、15週間後(75週齢)、及び20週間後(80週齢)に深部体温を計測した。
上記製造例2の表2に記載した組成比の粉末飼料を用いた。飼育期間中、摂食量は週3回測定した。
実施例2と同様の深部体温測定方法により測定した。
解析結果は平均値(Ave.)±標準誤差(SE)で示した。統計解析には2-way ANOVA followed by Dunnett’s post hoc検定を用い、P値が0.05以下の場合においては統計学的に有意差ありと判定した。
対照群では加齢に伴った深部体温の低下が認められ、試験食摂取開始後、深部体温の低下は加速された。一方で、小麦ふすま摂取群では深部体温の低下が抑制され、摂取開始15週間以降で、対照群と比較して有意に高値を示した(図3参照)。
(1)動物および飼育方法
C57BL/6J雄性マウス(日本クレア(株))を4週齢で搬入後(室温23℃,湿度55±10%,明期;7:00~19:00)、自由摂餌、自由飲水下で飼育した。餌は高脂肪食(D12451,Research Diets,Inc)で42週間(46週齢まで)飼育を行った後、各群の体重、および深部体温が同等になるように群分けした。飼育期間中は自由摂食、自由摂水とした。
上記製造例2の表2に記載した組成比の粉末飼料を用いた。
46週齢時に18時間以上絶食し、200mgの粉末試料(表2)を1時間、自由摂取させた。試験食摂取前、及び摂取1、2、3時間後にて深部体温を測定した。
実施例2と同様の深部体温測定方法により測定した。
解析結果は平均値(Ave.)±標準誤差(SE)で示した。統計解析には2-way ANOVA followed by Dunnett’s post hoc検定を用い、P値が0.05以下の場合においては統計学的に有意差ありと判定した。
摂餌後の深部体温は、対照群と比較して小麦ふすま摂取群で有意に高値を示した(図4参照)。
Claims (6)
- 小麦ふすまを有効成分とする、加齢に伴う恒常的な深部体温の低下の予防又は改善剤。
- 前記剤の総量に対する、前記有効成分の配合量又は含有量が固形物換算で5質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載の加齢に伴う恒常的な深部体温の低下の予防又は改善剤。
- 小麦ふすまを有効成分として含有する、加齢に伴う恒常的な深部体温の低下の予防又は改善用飲食品組成物。
- 前記飲食品組成物の総量に対する、前記有効成分の配合量又は含有量が固形物換算で5質量%以上99質量%以下である、請求項3に記載の加齢に伴う恒常的な深部体温の低下の予防又は改善用飲食品組成物。
- 加齢に伴う恒常的な深部体温の低下により、深部体温が平熱より0.5℃以上低い状態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の剤又は組成物。
- 深部体温が低下し低体温となることを抑制する、又は深部体温を上げて低体温を改善する、請求項1~5のいずれか1項に記載の剤又は組成物。
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