以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、この実施の形態に係る配車システムの構成を示す図である。図1を参照して、配車システム1は、車両100A~100Dと、携帯端末4と、データセンタ6と、管理装置500とを含む。図1には1つの携帯端末4のみを図示しているが、携帯端末4は、ユーザごとに携帯されている。車両100A~100Dと、ユーザごとの携帯端末4と、データセンタ6と、管理装置500とが通信ネットワーク2を介して相互通信可能に接続されることによって、配車システム1が構築されている。
車両100A~100Dの各々は、カーシェアリングに利用される電動車両(たとえば、後述する図2に示す構成を有するPHV車)である。カーシェアリングは、所定の車両(以下、「シェアカー」とも称する)を複数人のユーザで共有する車両の利用形態である。この実施の形態では、車両100A~100Dをシェアカーとする。ただし、シェアカーの台数は4台に限定されず任意であり、10台以上であってもよい。カーシェアリングは個人間で行なわれることもあるが、この実施の形態に係るカーシェアリングは事業者を介して行なわれる。事業者は、登録したユーザ(以下、「会員」とも称する)にシェアカーを貸し出す仕組みを提供する。ユーザを特定するためのID(以下、「ユーザID」とも称する)が会員ごとに付与される。事業者は、ユーザIDが記憶された会員カード(たとえば、ICカード)を各会員に発行する。
車両100A~100Dは、拠点Pに所属するシェアカーである。事業者は、拠点Pに対するカーシェアリングの予約をユーザから受け付ける。予約内容は、利用日時(すなわち、利用日及び利用時間帯)を含む。予約された日時にユーザが拠点Pを訪れると、事業者は、配車可能なシェアカーの中から1つの車両を選び、選んだ車両をユーザに配車する。事業者は拠点Pでシェアカーをユーザに貸し出し、ユーザは、シェアカーを利用した後、拠点Pに返却する。たとえば、車両100A~100Dのうち車両100Aがユーザに貸し出されると、車両100Aはユーザに運転されて拠点Pを離れ、残りの車両100B~100Dは拠点Pで待機状態(駐車状態)になる。この実施の形態では、事業者が拠点Pのみでカーシェアリングを行なう。しかしこれに限られず、事業者が複数の拠点(拠点Pを含む)を管理し、ユーザが拠点Pで借りた車両を他の拠点に返却できるようにしてもよい。また、複数車種のシェアカーが所属する拠点でカーシェアリングが行なわれる場合には、予約内容に希望車種が含まれてもよい。
事業者は、管理装置500を用いて、拠点P(ひいては、車両100A~100D)を管理することができる。管理装置500には、シェアカーに関する各種情報や、予約された貸出スケジュールなどが登録される。
管理装置500は、プロセッサ510、RAM(Random Access Memory)520、記憶装置530、及び通信装置540を含んで構成される。プロセッサ510としては、たとえばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。RAM520は、プロセッサ510によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置530は、各種情報を保存するストレージとして機能する。記憶装置530は、たとえば、ROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。通信装置540は、通信ネットワーク2にアクセス可能に構成される。
管理装置500は、予め登録された全ての車両及びユーザに関する情報を管理するように構成される。記憶装置530は、管理装置500に登録されたユーザ(会員)ごとの情報(以下、「ユーザ情報」とも称する)を記憶している。ユーザ情報はユーザIDと紐付けられている。また、記憶装置530は、管理装置500に登録された車両ごとの情報(以下、「車両情報」とも称する)を記憶している。登録時に車両を特定するためのID(以下、「車両ID」とも称する)が各車両に付与される。車両情報は車両IDと紐付けられている。この実施の形態では、車両100A~100Dが管理装置500に登録される。
ユーザ情報には、カーシェアリングの予約内容(たとえば、利用日時)と、過去にそのユーザがカーシェアリングを利用したときの使用履歴(たとえば、過去にそのユーザに使用された各車両の使用中の状態変化を示すデータ)とが含まれる。車両情報は、車両の仕様(初期の車両データ)と、車両の使用履歴とを含む。また、車両情報には、車両に搭載された通信端末(車載端末)の通信アドレスが含まれ、管理装置500は所定の情報を車載端末(たとえば、後述する図2に示す通信装置160)に送信するように構成される。また、管理装置500は、車両IDを用いて車両情報を管理し、各車両から送られてくる情報(たとえば、後述する待機履歴データ使用履歴データ)を用いて車両情報を更新するように構成される。
記憶装置530は、ユーザごとに登録される携帯端末4の情報(以下、「端末情報」とも称する)をさらに記憶している。端末情報もユーザIDと紐付けられている。ユーザに登録された携帯端末4(以下、「登録端末」とも称する)には、所定のアプリケーションソフトウェア(以下、単に「アプリ」と称する)がインストールされ、管理装置500は、そのアプリを通じて登録端末を操作することができる。ユーザは、管理装置500からの情報を登録端末で受信することができる。この実施の形態では、携帯端末4としてスマートフォンを採用する。ただしこれに限られず、スマートフォンの代わりに、スマートウォッチ、ノートパソコン、タブレット端末、又は携帯型ゲーム機なども採用できる。
管理装置500は、所定の情報を登録端末に送り、ユーザへの報知処理(たとえば、情報の表示、又は音声による情報伝達)を登録端末に行なわせることができる。管理装置500は、たとえば、シェアカーの返却時刻が近づいたときに、返却をユーザに促す通知を登録端末に送ることができる。ユーザは、登録端末を用いてカーシェアリングの予約を行なうことができる。管理装置500は、登録端末(ユーザ)からの予約要求を受信すると、登録端末のアプリを通じて所定の情報(利用日時等)の入力をユーザへ要求する。この際、管理装置500は、ユーザにアンケートを実施してもよい。ユーザが、要求された情報を入力して管理装置500へ送信すると、予約が完了する。予約された内容は、管理装置500の記憶装置530に登録(ユーザ情報として保存)される。
記憶装置530には、上述した車両情報、ユーザ情報、及び端末情報のほか、各種制御で用いられるプログラム、及びプログラムで使用される各種パラメータも予め格納されている。記憶装置530に記憶されているプログラムをプロセッサ510が実行することで、各種制御が実行される。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
通信ネットワーク2は、たとえば、インターネットと無線基地局とによって構築されるネットワークであってもよい。通信ネットワーク2は、移動体通信ネットワークと、無線LAN(Local Area Network)とを含んでもよい。たとえば、管理装置500と、拠点P内の車両100A~100Dの各々とは、無線LANを介して相互通信可能に構成されてもよい。管理装置500と携帯端末4とは、移動体通信ネットワークを介して相互通信可能に構成されてもよい。管理装置500とデータセンタ6とは、インターネットを介して相互通信可能に構成されてもよい。
データセンタ6は、気象情報を提供する施設である。データセンタ6は、たとえば、各種機関(気象庁、教育機関、外国機関等)及び専門家(気象予報士、学者等)から得た気象情報を集約して保有する。データセンタ6が保有する気象情報には、実測データ(たとえば、現在及び過去の外気温の実測値)と気象予測情報(たとえば、未来の外気温の予測値)とが含まれる。管理装置500は、データセンタ6から気象情報(たとえば、所定の期間における外気温の予測推移)を取得することができる。
車両100A~100Dの基本的な構成は同一である。以下、区別して説明する場合を除いて、車両100A~100Dの各々を「車両100」と記載する。図2は、車両100の構成を示す図である。
図2を参照して、車両100は、二次電池110と、走行駆動装置120と、ドアロック装置130と、認証装置140と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVIシステム」とも称する)150と、通信装置160と、制御装置180と、入力装置184と、報知装置185とを備える。走行駆動装置120は、エンジン121と、モータジェネレータ(以下、「MG(Motor Generator)」と称する)122,123と、動力分割装置124と、電力制御ユニット(以下、「PCU(Power Control Unit)」と称する)125と、駆動軸126とを含んで構成される。二次電池110は、PCU125(ひいては、MG123)に電力を供給するように構成される。
二次電池110としては、たとえばリチウムイオン電池を採用できる。二次電池110は、電気的に接続された複数のセル(たとえば、リチウムイオン電池)から構成される組電池であってもよい。なお、二次電池110は、リチウムイオン電池に限られず、他の二次電池(たとえば、ニッケル水素電池)であってもよい。
二次電池110には、二次電池110の状態を監視する監視ユニット111が設けられている。監視ユニット111は、二次電池110の状態(たとえば、温度、電流、及び電圧)を検出する各種センサを含み、検出結果を制御装置180へ出力するように構成される。制御装置180は、監視ユニット111の出力(各種センサの検出値)に基づいて二次電池110の状態(たとえば、温度、電流、電圧、内部抵抗、及びSOC(State Of Charge))を取得することができる。SOCは、蓄電残量を示し、たとえば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
二次電池110は、車両外部から供給される電力による充電(以下、「外部充電」とも称する)が可能なように構成される。より具体的には、車両100は、外部充電を行なうための受電口141及び充電器142(車載充電器)をさらに備える。受電口141は、車両外部の給電設備321(たとえば、普通充電器又は急速充電器のような充電スタンド)の充電コネクタ322と接続可能に構成される。充電コネクタ322が受電口141に接続されることで、給電設備321から車両100に電力を供給することが可能になる。給電設備321から車両100に供給される電力は充電器142を経由して二次電池110に供給される。充電器142は、受電口141に入力される電力に所定の処理を行なう回路(図示せず)を含む。充電器142は、電力変換回路を含んでもよいし、フィルタ回路を含んでもよい。こうした回路の処理により、二次電池110の充電に適した電力(直流電力)が、充電器142から二次電池110へ出力される。これにより、二次電池110が充電される。
PCU125は、制御装置180からの制御信号に従って、二次電池110とMG122,123との間で双方向の電力変換を実行する。PCU125は、MG122,123の状態をそれぞれ別々に制御可能に構成されており、たとえば、MG122を発電状態にしつつ、MG123を力行状態にすることができる。PCU125は、たとえば、MG122,123に対応して設けられる2つのインバータと、MG122,123から各インバータに供給される直流電圧を昇圧するコンバータとを含んで構成される。
MG122,123は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。MG122は、主として、エンジン121により駆動される発電機として動作する。エンジン121の駆動力は動力分割装置124を経由してMG122に伝達される。MG122が発電した電力は、PCU125を経由してMG123及び二次電池110の少なくとも一方に供給される。MG122は、エンジン121から出力される動力(たとえば、出力軸の回転力)を利用して発電(以下、「エンジン発電」とも称する)を行ない、エンジン発電によって生成された電力(以下、「エンジン発電電力」とも称する)を二次電池110に供給することができる。
MG123の回転軸は、駆動軸126に機械的に接続されている。MG123は、二次電池110に蓄えられた電力(以下、「蓄電電力」とも称する)とMG122の発電電力(エンジン発電電力)との少なくとも一方によって駆動されることによって、力行状態になる。力行状態のMG123は、電動機として動作し、駆動軸126を回転させる。走行中の車両100の減速時及び制動時には、MG123は、発電状態になり、回生発電を行なう。回生発電によって生成された電力(以下、「回生電力」とも称する)は、PCU125を経由して二次電池110に供給される。PCU125から供給される回生電力によって、二次電池110は回生充電される。
エンジン121は、空気と燃料との混合気を燃焼させたときに生じる燃焼エネルギーをピストン又はロータのような運動子の運動エネルギーに変換することによって動力を出力する内燃機関である。エンジン121は、制御装置180によって制御される。動力分割装置124は、たとえば、サンギヤ、キャリア、及びリングギヤを含む遊星歯車機構を備える。動力分割装置124は、エンジン121から出力される動力を、MG122を駆動する動力と、駆動軸126を回転させる動力とに分割するように構成される。
図示しない燃料タンク内の燃料(たとえば、ガソリン)が燃料ポンプ(図示せず)によりエンジン121に供給され、エンジン121で動力に変換される。一方、二次電池110に蓄えられた電力は、MG123に供給され、MG123で動力に変換される。エンジン121及びMG123から出力される動力は、駆動軸126を回転させる。車両100の駆動輪(図示せず)は、駆動軸126の両端に取り付けられ、駆動軸126と一体となって回転するように構成される。車両100は、エンジン121が停止しているときに、二次電池110の蓄電電力で駆動されるMG123に駆動軸126を回転させることによって、EV走行(エンジン121が停止した状態での走行)を行なうことができる。また、車両100は、エンジン121が作動しているときには、HV走行(エンジン121が作動した状態での走行)を行なうことができる。HV走行では、エンジン121から出力される動力を利用して駆動軸126を回転させることができる。
ドアロック装置130は、認証装置140又は制御装置180からの信号(ロック信号/アンロック信号)に従い、図示しないドア(より特定的には、ユーザが車両100の乗り降りを行なうためのドア)のロック状態(施錠/解錠)を切り替えるように構成される。ドアのロック状態(施錠/解錠)は、図示しないセンサによって検出され、制御装置180へ出力される。制御装置180は、現在のドアのロック状態(施錠/解錠)を報知装置185(たとえば、メータパネル)を通じてユーザへ報知するように構成される。制御装置180は、ユーザからの指示(施錠指示又は解錠指示)に応じてドアロック装置130へロック信号又はアンロック信号を送信する。ユーザは、後述する入力装置184を通じて制御装置180にドアの施錠又は解錠を指示することができる。また、ユーザは、図示しないメカニカルキーを用いて、車両100のドアのロック状態(施錠/解錠)を車外から切り替えることができる。
認証装置140は、ユーザが車外(車両100の外側)から所定の情報(以下、「認証情報」とも称する)を入力可能に構成される入力装置(図示せず)を備える。この実施の形態では、認証装置140の入力装置として、会員カードに記憶されたユーザIDを読み取るカードリーダを採用する。また、認証情報としてユーザIDを採用する。ユーザは、車外から認証装置140のカードリーダに会員カードをかざすことによって、認証装置140にユーザID(認証情報)を入力することができる。
車両100(シェアカー)の貸出し時にユーザが認証装置140に認証情報を入力すると、認証装置140は、ユーザによって入力された認証情報を用いて認証を行ない、認証が成功したときにドアロック装置130へアンロック信号を送信する。これにより、車両100のドアが解錠され、ユーザが車両100を利用できるようになる。
車両100(シェアカー)の返却時にユーザが認証装置140に認証情報を入力すると、認証装置140は、ユーザによって入力された認証情報を用いて認証を行ない、認証が成功したときにドアロック装置130へロック信号を送信する。これにより、車両100のドアが施錠され、車両100の返却が完了する。
認証装置140は、ユーザから入力された認証情報が所定の照合情報と一致するときに、認証が成功したと判断する。照合情報は、管理装置500によって設定される。車両100が拠点Pで駐車状態であるときに、認証装置140と管理装置500とは通信可能な状態になっており、認証装置140に設定された照合情報を管理装置500が変更できるようになっている。この実施の形態では、車両100の利用が許可されたユーザ(以下、「利用権者」とも称する)のユーザIDが、照合情報として設定される。ユーザによって入力されたユーザID(認証情報)が照合情報のユーザID(すなわち、利用権者のユーザID)と一致しない場合には、認証装置140による認証は失敗する。車両100の利用権者は、日時によって変わる。管理装置500は、認証装置140の照合情報を随時変更することによって、利用権者のみが認証装置140による認証を成功できるようにする。
なお、認証方法は上記に限られず任意の方法を採用できる。たとえば、照合情報としてパスワード又はコード(たとえば、QRコード(登録商標))を採用し、正しいパスワード又はコード(すなわち、照合情報に一致するパスワード又はコード)を認証装置140に入力したユーザのみが認証装置140による認証を成功できるようにしてもよい。たとえば、管理装置500が利用権者の登録端末のみに正しいパスワード又はコードを発行することで、利用権者のみが認証装置140による認証を成功できるようになる。認証装置140の入力装置は、パスワードを入力するための画面(パスワード入力画面)を表示するタッチパネルディスプレイと、携帯端末4の画面に表示されたコードを読み取るコードリーダとの少なくとも一方を含んで構成されてもよい。
NAVIシステム150は、タッチパネルディスプレイと、GPSモジュールと、記憶装置と(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。タッチパネルディスプレイは、ユーザからの入力を受け付けたり、地図及びその他の情報を表示したりする。GPSモジュールは、GPS衛星300からの信号(以下、「GPS信号」と称する)を受信するように構成される。NAVIシステム150は、GPS信号を用いて車両100の位置を特定することができる。NAVIシステム150は、地図上に車両100の位置をリアルタイムで表示するように構成される。制御装置180は、車両100の位置情報をNAVIシステム150から取得できる。
通信装置160は、遠距離通信モジュールと近距離通信モジュールとを含んで構成される。遠距離通信モジュールは、通信ネットワーク2(図1)にアクセス可能に構成される。遠距離通信モジュールの例としては、LTE(Long Term Evolution)に準拠した通信モジュールが挙げられる。遠距離通信モジュールは、DCM(Data Communication Module)であってもよい。近距離通信モジュールは、車内又は車両周辺と無線通信を行なうように構成される。近距離通信モジュールは、車載機器、又は車内に持ち込まれた携帯端末4と無線通信を行なう通信モジュールを含んでもよい。近距離通信モジュールは、車車間(V2V)又は路車間(V2I)の無線通信を行なう通信モジュールを含んでもよい。
制御装置180は、プロセッサ181、RAM182、及び記憶装置183を含んで構成される。プロセッサ181としては、たとえばCPUを採用できる。RAM182は作業用メモリとして機能し、記憶装置183はストレージとして機能する。記憶装置183は、たとえば、ROM及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置183に記憶されているプログラムをプロセッサ181が実行することで、車両100の各種制御(たとえば、走行制御及び充電制御)が実行される。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
制御装置180は、二次電池110の充電量(たとえば、二次電池110に入力される電力)を所定の上限値(以下、「Win」とも称する)以下に制限するように構成される。たとえば回生発電によって生成される電力がWinを超える場合には、制御装置180は、二次電池110の充電量を制限して、Winを超える電力が二次電池110に入力されないようにする。制御装置180は、たとえばPCU125を制御することによって、二次電池110の充電量を調整すること(ひいては、充電量を制限すること)ができる。この実施の形態では、二次電池110の充電側(入力側)の電力値を負の値で表す。Winは0よりも小さい値(負の値)に設定される。二次電池110の充電量がWinを超えるとは、二次電池110の電力値がWinよりも小さくなることを意味する。制御装置180に設定されたWinは、管理装置500によって可変とされる。
制御装置180は、二次電池110の放電量(たとえば、二次電池110から出力される電力)を所定の上限値(以下、「Wout」とも称する)以下に制限するように構成される。たとえば車両100のEV走行中に大電力が要求されて二次電池110の放電量がWoutを超える可能性がある場合には、制御装置180は、二次電池110の放電量を制限して、Woutを超える電力が二次電池110から出力されないようにする。制御装置180は、たとえばEV走行からHV走行に切り替えることによって、二次電池110の放電量を調整すること(ひいては、放電量を制限すること)ができる。この実施の形態では、二次電池110の放電側(出力側)の電力値を正の値で表す。Woutは0よりも大きい値(正の値)に設定される。二次電池110の放電量がWoutを超えるとは、二次電池110の電力値がWoutよりも大きくなることを意味する。制御装置180に設定されたWoutは、管理装置500によって可変とされる。
車両100は、外気温センサ186及び外気圧センサ187をさらに備える。外気温センサ186及び外気圧センサ187の各々の検出値(外気温、外気圧)は、制御装置180へ出力される。図示は省略しているが、車両100は、エンジン121の状態を検出して制御装置180へ出力する各種センサ(新気量センサ、吸気圧センサ、排気圧センサ、エンジン回転速度センサ、エンジン冷却水温センサ等)を備える。さらに、車両100は、車両100の走行を監視する各種センサ(図示しない車速センサ、オドメータ、アクセル開度センサなど)を備える。
待機中の車両100の状態(たとえば、二次電池110の状態)は、逐次検出されるとともに、車両100から管理装置500へ送信され、車両情報として記憶装置530に記録される(たとえば、後述する図4のS11~S14)。以下、こうして記録される車両データを、「待機履歴データ」とも称する。待機履歴データは、車両IDと紐付けられて管理される。
使用中の車両100の状態(たとえば、位置、外気温、外気圧、エンジン121の状態、二次電池110の状態、車速、走行回数、走行時間、及び走行距離)は、逐次検出され、記憶装置183に記録される。以下、こうして記録される車両データを、「使用履歴データ」とも称する。使用履歴データは、拠点Pでユーザが車両100を事業者へ返却する際に車両100から管理装置500へ送信され(たとえば、後述する図5のS23)、管理装置500の記憶装置530にユーザ情報及び車両情報として保存される。ユーザ情報では使用履歴データがユーザIDと紐付けられて管理され、車両情報では使用履歴データが車両IDと紐付けられて管理される。
入力装置184は、ユーザからの入力を受け付ける装置である。入力装置184は、ユーザによって操作され、ユーザの操作に対応する信号を制御装置180へ出力する。たとえば、ユーザは、入力装置184を通じて、所定の指示又は要求を制御装置180に入力したり、パラメータの値を制御装置180に設定したりすることができる。通信方式は有線でも無線でもよい。入力装置184としては、たとえば車両100の運転席周辺(たとえば、ステアリングホイール又はインストルメントパネル)に設けられた各種スイッチ(押しボタンスイッチ、スライドスイッチ等)を採用できる。ただしこれに限られず、各種ポインティングデバイス(マウス、タッチパッド等)、キーボードなども、入力装置184として採用可能である。
報知装置185は、制御装置180から要求があったときに、ユーザ(たとえば、車両100の運転者)へ所定の報知処理を行なうように構成される。報知装置185の例としては、表示装置(たとえば、メータパネル又はヘッドアップディスプレイ)、スピーカー、ランプが挙げられる。
ところで、二次電池110の内部抵抗が増加する原因としては、経年劣化のほかに、ハイレート劣化が知られている。二次電池110のハイレート劣化は、二次電池110の過充電(すなわち、大電流での充電)に起因する第1ハイレート劣化と、二次電池110の過放電(すなわち、大電流での放電)に起因する第2ハイレート劣化とに大別される。二次電池110において、第1ハイレート劣化又は第2ハイレート劣化が生じると、電解液中のイオン濃度分布に偏りが生じて内部抵抗が増加する。また、ハイレート劣化が生じた状態でリチウムイオン電池が使用されると、リチウムイオン電池の電極にLi(リチウム)が析出しやすくなる。経年劣化は、いったん劣化すると基本的には回復しないが、ハイレート劣化による二次電池110の劣化は回復し得る。たとえば、車両が使用されない期間(待機期間)においては、電解液中のイオン濃度の偏りが緩和されることによって、ハイレート劣化が回復する傾向がある。しかし、1台の車両が複数のユーザで使用されるカーシェアリングでは、車両が使用されない期間(待機期間)が短くなり、イオン濃度の偏りが十分に緩和される前に次のユーザに貸し出されてしまうことが起こりやすい。
この実施の形態に係る配車システム1では、管理装置500が、以下に説明する配車手段を備える。配車手段は、二次電池110の第1ハイレート劣化量が所定の第1劣化量を超えていると判断される場合には、制御装置180に放電制限を緩和する設定を行なった後、車両100をユーザに配車し、二次電池110の第2ハイレート劣化量が所定の第2劣化量を超えていると判断される場合には、制御装置180に充電制限を緩和する設定を行なった後、車両100をユーザに配車するように構成される。
管理装置500は、あるユーザ(第1ユーザ)によって第1車両(たとえば、車両100A~100Dのいずれか)が使用された後、拠点Pに存在する車両100(返却された第1車両を含む)の中から、次のユーザ(第2ユーザ)に配車する車両(以下、「貸出車両」とも称する)を選ぶ。この際、管理装置500は、第2ユーザが第1車両を所定の期間TX使用すると仮定したときの期間TX経過後の第1車両の二次電池110のハイレート劣化量(予測劣化量Z)が所定の許容範囲外である場合には第1車両(すなわち、第1ユーザによって返却された車両)を貸出車両として選び、予測劣化量Zが許容範囲内である場合には第2車両(すなわち、第1車両以外の車両)を貸出車両として選ぶ。上述した配車手段による設定(すなわち、充電又は放電の制限を緩和する設定)は、第1車両が貸出車両として選ばれたときに、第1車両の制御装置180に対して行なわれる。
第2車両としては、配車タイミング(すなわち、貸出車両を選ぶタイミング)において、待機中の車両100の中から二次電池110の経年劣化量(たとえば、後述する熱劣化量)が最も小さい車両100が選ばれる。この実施の形態では、期間TXを、第1車両が返却されたタイミング(すなわち、配車タイミング)から所定時間が経過するまでの期間とする。所定時間は、任意に設定できるが、たとえば1日であってもよい。所定時間は、配車タイミングにおける第1車両の二次電池110の温度などに応じて可変であってもよい。
図3は、管理装置500の構成要素を機能別に示す機能ブロック図である。図3を参照して、管理装置500は、X推定部500Aと、Y推定部500Bと、判定部500Cと、第1配車部500Dと、第2配車部500Eとを含む。管理装置500においては、たとえば、プロセッサ510と、プロセッサ510により実行されるプログラムとによって、X推定部500A、Y推定部500B、判定部500C、第1配車部500D、及び第2配車部500Eが具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。この実施の形態に係る第1配車部500Dは、本開示に係る「配車手段」の一例を構成する。
X推定部500Aは、現在の第1車両の二次電池110のハイレート劣化量(以下、「蓄積劣化量X」とも称する)を求めるように構成される。蓄積劣化量Xは、初期(たとえば、車両100に二次電池110が搭載された時点)から現在までの二次電池110の充放電の履歴と充放電が行なわれていない期間とを考慮して求められる。二次電池110の充放電が行なわれていないときには、電解液中のイオン濃度分布の偏りが緩和される。
以下、ハイレート劣化量のうち、第1ハイレート劣化量(過充電による劣化量)を負の値で表し、第2ハイレート劣化量(過放電による劣化量)を正の値で表す。ハイレート劣化が生じていないときには、ハイレート劣化量は「0」になる。また、充電量が所定の電流値(以下、「Ic」とも称する)を超える大電流での充電を「ハイレート充電」と称し、放電量が所定の電流値(以下、「Id」とも称する)を超える大電流での放電を「ハイレート放電」と称し、充電も放電も行なわれていないことを「放置」と称する。充電側の電流値を負の値で表し、放電側の電流値を正の値で表す。Icは0よりも小さい値(負の値)に設定され、Idは0よりも大きい値(正の値)に設定される。二次電池110の充電量がIcを超えるとは、二次電池110の電流値がIcよりも小さくなることを意味する。二次電池110の放電量がIdを超えるとは、二次電池110の電流値がIdよりも大きくなることを意味する。
蓄積劣化量Xは、二次電池110のハイレート劣化が進むほど絶対値が大きくなり、二次電池110のハイレート劣化が回復すると0に近づくパラメータである。X推定部500Aは、たとえば第1車両の待機履歴データ及び使用履歴データを用いて、蓄積劣化量Xを求めるように構成される。X推定部500Aは、監視ユニット111によって逐次検出される二次電池110の状態から、各検出タイミングにおいて二次電池110がハイレート充電、ハイレート放電、又は放置の状態になっているかを判断することができる。
蓄積劣化量Xは、ハイレート放電の電流値が大きい(正側に0から遠い)ほど、ハイレート放電の時間が長いほど、ハイレート放電が高頻度で行なわれるほど、大きくなる(正側に0から遠ざかる)。蓄積劣化量Xは、ハイレート充電の電流値が小さい(負側に0から遠い)ほど、ハイレート充電の時間が長いほど、ハイレート充電が高頻度で行なわれるほど、小さくなる(負側に0から遠ざかる)。X推定部500Aは、蓄積劣化量Xを算出するときに、ハイレート放電中及びハイレート充電中の二次電池110の温度及びSOCを考慮してもよい。二次電池110の温度が低いほど、二次電池110のSOCが低いほど、ハイレート劣化が生じやすくなる。
一方、長時間の放置が行なわれると、ハイレート劣化が回復し、蓄積劣化量Xが0に近づく。放置によるハイレート劣化の回復量は、たとえば放置時間と所定の緩和係数とを用いて算出することができる。緩和係数は、緩和速度を示す係数である。緩和係数は、放置中の二次電池110の温度に応じて可変であってもよい。放置中の二次電池110の温度が低いほどハイレート劣化が回復しにくくなる。
蓄積劣化量Xを算出するための具体的な数式及び上記緩和係数は、たとえば、予め実験等によって求めて記憶装置530に格納することができる。各車両100から管理装置500に収集されるビッグデータを利用し、公知の機械学習技術又は人工知能によって、待機履歴データ及び使用履歴データの各々と蓄積劣化量Xとの関係が導かれるようにしてもよい。また、ハイレート劣化量は、公知のハイレート劣化評価方法(たとえば、国際公開第2010/079595号に記載される方法)を用いて算出されてもよい。
Y推定部500Bは、第2ユーザが第1車両を期間TX使用すると仮定したときに期間TXで第1車両の二次電池110がハイレート劣化する量(以下、「予測劣化量Y」とも称する)を求めるように構成される。予測劣化量Yは蓄積劣化量Xに対応するパラメータであるが、蓄積劣化量Xと予測劣化量Yとでは、対象とする期間が異なる。蓄積劣化量Xは初期から現在までの劣化及び回復を対象とするが、予測劣化量Yは期間TX(未来)の劣化及び回復を対象とする。Y推定部500Bは、第2ユーザの使用履歴データを用いることで、第2ユーザが第1車両を使用する期間TXにおいて第1車両の二次電池110にどのようなハイレート劣化が生じるかを推定することができる。
予測劣化量Yは、第2ユーザの使用履歴データにおいて1日あたりの走行時間(又は、走行距離)が長いほど大きくなる(正側に0から遠ざかる)。予測劣化量Yは、第2ユーザの使用履歴データにおいて高速走行(又は、アクセル開度が大きい走行)の頻度が多いほど大きくなる。予測劣化量Yは、第2ユーザの使用履歴データにおいて、低SOC(たとえば、所定値以下のSOC)での走行の頻度が多いほど大きくなる。また、予測劣化量Yは、第2ユーザの使用履歴データにおいて、二次電池110が低温(たとえば、所定値以下の温度)である状態での走行の頻度が多いほど大きくなる。
第2ユーザの使用履歴データから求められる平均値で、ハイレート放電の電流値が大きい(正側に0から遠い)ほど予測劣化量Yが大きくなり(正側に0から遠ざかり)、ハイレート充電の電流値が小さい(負側に0から遠い)ほど予測劣化量Yが小さくなる(負側に0から遠ざかる)。また、予測劣化量Yは、第2ユーザの使用履歴データにおいて、ハイレート放電が長時間、高頻度で行なわれるほど大きくなり、ハイレート充電が長時間、高頻度で行なわれるほど小さくなる。
Y推定部500Bは、第2ユーザの使用履歴データにおいて1日あたりの停車時間が長いほど予測劣化量Yを0に近づけるように補正する。ただし、停車したときに二次電池110が低温(たとえば、所定値以下の温度)である場合には、補正量(回復量)を小さくする。二次電池110の温度は、たとえばデータセンタ6から取得される気象情報を用いて予測してもよい。
予測劣化量Yを算出するための具体的な数式は、たとえば、予め実験等によって求めて記憶装置530に格納することができる。Y推定部500Bは、第2ユーザの使用履歴データと予測劣化量Yとの関係が分かれば、第2ユーザの使用履歴データから予測劣化量Yを求めることができる。各ユーザの使用履歴データと予測劣化量Yとの関係は、実験又はシミュレーションによって求めてもよいし、公知の機械学習技術又は人工知能によって求めてもよい。使用履歴データと予測劣化量Yとの関係を示す情報は、数式に限られずマップ又はモデルなども採用可能である。Y推定部500Bは、予測劣化量Yを求めるために、使用履歴データに代えて又は加えて予約時のアンケート結果を用いてもよい。
第1車両が返却されたときに、X推定部500Aが蓄積劣化量X(すなわち、現在の第1車両の二次電池110のハイレート劣化量)を取得し、Y推定部500Bが予測劣化量Y(すなわち、期間TXで第1車両の二次電池110がハイレート劣化する量)を取得する。判定部500Cは、蓄積劣化量Xと予測劣化量Yとを加算して予測劣化量Z(=X+Y)を取得し、予測劣化量Zが許容範囲内であるか否かを判断する。第1配車部500Dは、判定部500Cによって予測劣化量Zが許容範囲外であると判断された場合に、第1車両(すなわち、第1ユーザによって返却された車両)を貸出車両として選ぶ。
判定部500Cによって予測劣化量Zが許容範囲よりも小さいと判断された場合には、第1配車部500Dは、第1車両の制御装置180に放電制限(放電量の制限)を緩和する設定を行なうとともに、第1車両の認証装置140に第2ユーザのユーザIDを照合情報として設定する。第1配車部500Dは、放電制限を緩和する設定として、制御装置180にWoutを大きくする設定を行なう。たとえば、二次電池110の電流値がIdよりも大きくなるようにWoutが変更される。この際、Woutと一緒にWinを大きくしてもよい。放電制限が緩和されることで、第2ユーザの使用中に過放電が起こりやすくなる。なお、予測劣化量Zが許容範囲よりも小さいことは、第1車両の二次電池110の第1ハイレート劣化量が第1劣化量を超えていることを意味する。
判定部500Cによって予測劣化量Zが許容範囲よりも大きいと判断された場合には、第1配車部500Dは、第1車両の制御装置180に充電制限(充電量の制限)を緩和する設定を行なうとともに、第1車両の認証装置140に第2ユーザのユーザIDを照合情報として設定する。第1配車部500Dは、充電制限を緩和する設定として、制御装置180にWinを小さくする設定を行なう。たとえば、二次電池110の電流値がIcよりも小さくなるようにWinが変更される。この際、Winと一緒にWoutを小さくしてもよい。充電制限が緩和されることで、第2ユーザの使用中に過充電が起こりやすくなる。なお、予測劣化量Zが許容範囲よりも大きいことは、第1車両の二次電池110の第2ハイレート劣化量が第2劣化量を超えていることを意味する。
第2配車部500Eは、判定部500Cによって予測劣化量Zが許容範囲内であると判断された場合に、第2車両(すなわち、第1車両以外の車両)を貸出車両として選ぶ。第2配車部500Eは、待機中の車両100の中から貸出車両を選び、選んだ貸出車両の認証装置140に第2ユーザのユーザIDを照合情報として設定する。これにより、第2ユーザが貸出車両を利用できるようになる。
以下、図4~図6を用いて、配車システム1において実行されるカーシェアリングに係る制御について説明する。図4~図6中の各ステップ(以下、単に「S」とも表記する)について順に説明する。
図4は、待機中の車両100と管理装置500との間で行なわれる送受信処理を説明するためのフローチャートである。待機中の車両100の制御装置180は、S11及びS12を所定の制御周期ごとに繰り返し実行する。管理装置500は、S13及びS14を所定の制御周期ごとに繰り返し実行する。
図4を参照して、S11では、制御装置180が、待機中の車両100の状態(待機履歴データ)を取得する。S12では、制御装置180が、S11で取得した待機履歴データを車両ID(すなわち、待機中の車両100の車両ID)と一緒に管理装置500へ送信する。S13では、S12で送信された待機履歴データと車両IDとを管理装置500が受信する。S14では、待機履歴データが、管理装置500の記憶装置530に保存される。S13で受信した待機履歴データによって、記憶装置530内の車両情報が更新される。
図5は、使用中の車両100の制御装置180によって実行される制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、車両100が貸し出されたタイミング(たとえば、認証装置140による認証が成功して車両100のドアが解錠されたタイミング)で開始される。
図5を参照して、S21では、制御装置180が、使用中の車両100の状態(使用履歴データ)を記憶装置183に保存する。S22では、車両100が事業者に返却されたか否かが、制御装置180によって判断される。たとえば、ユーザが車両100を返却するために車両100から出て車外から認証装置140のカードリーダに会員カードをかざすと、認証装置140は、ドアロック装置130へロック信号を送信し、ドアロック装置130によって車両100のドアが施錠される。制御装置180は、この施錠が行なわれたときに、車両100が事業者に返却された(S22にてYES)と判断することができる。
車両100が使用中であるとき(すなわち、S22にてNOと判断されている期間)においては、S21及びS22が繰り返し実行され、記憶装置183に使用履歴データが蓄積される。車両100が返却されると(S22にてYES)、制御装置180が、S23において、記憶装置183に蓄積(保存)された車両データ(使用履歴データ)を車両ID(すなわち、使用中の車両100の車両ID)及びユーザID(すなわち、車両100を使用しているユーザのユーザID)と一緒に管理装置500へ送信し、図5の一連の処理が終了する。
図6は、管理装置500によって実行される制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえば所定時間経過毎又は所定条件の成立時にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて繰り返し実行される。
図6を参照して、S31では、貸出し中の車両100が事業者に返却されたか否かが、管理装置500によって判断される。車両100の返却がない期間(すなわち、S31にてNOと判断されている期間)においては、S31が繰り返し実行される。他方、車両100が返却されると(S31にてYES)、管理装置500は、S32~S35を実行する。返却された車両100は、「第1車両」に相当する。
管理装置500は、S32において、返却された車両100(第1車両)から、車両データ、車両ID、及びユーザID(すなわち、図5のS23で送信される車両データ、車両ID、及びユーザID)を受信する。S33では、管理装置500のX推定部500A(図3)が前述の方法で蓄積劣化量Xを推定する。S34では、管理装置500のY推定部500B(図3)が前述の方法で予測劣化量Yを推定する。S35では、判定部500C(図3)が蓄積劣化量Xと予測劣化量Yとを加算して予測劣化量Z(=X+Y)を取得する。
S35の処理後、判定部500Cは、S351及びS352において、予測劣化量Zが所定の許容範囲内であるか否かを判断する。図6の例では、許容範囲を閾値Th1以上閾値Th2以下とする。閾値Th1は0よりも小さい値(すなわち、負の値)であり、閾値Th2は0よりも大きい値(すなわち、正の値)である。
S351では、予測劣化量Zが閾値Th2(以下、単に「Th2」とも称する)よりも大きいか否かが、判定部500Cによって判断される。予測劣化量ZがTh2よりも大きい場合(S351にてYES)には、第1配車部500D(図3)が、S361において、第1車両(すなわち、返却された車両100)の制御装置180に充電制限を緩和する設定(たとえば、Winを小さくする設定)を行なうとともに、第1車両を次のユーザ(第2ユーザ)に配車する。これにより、第2ユーザの使用中に過充電が起こりやすくなる。他方、予測劣化量ZがTh2以下である場合(S351にてNO)には、処理がS352に進む。
S352では、予測劣化量Zが閾値Th1(以下、単に「Th1」とも称する)よりも小さいか否かが、判定部500Cによって判断される。予測劣化量ZがTh1よりも小さい場合(S352にてYES)には、第1配車部500D(図3)が、S362において、第1車両(すなわち、返却された車両100)の制御装置180に放電制限を緩和する設定(たとえば、Woutを大きくする設定)を行なうとともに、第1車両を次のユーザ(第2ユーザ)に配車する。これにより、第2ユーザの使用中に過放電が起こりやすくなる。他方、予測劣化量Zが許容範囲内(Th1以上Th2以下)である場合(S352にてNO)には、処理がS371に進む。
S371では、第2配車部500E(図3)が、待機中の車両100(返却された車両100以外の車両)の中から、貸出車両を選択する。第2配車部500Eは、待機中の車両100のうち、以下に説明する二次電池110の熱劣化量が最も小さい車両100を、貸出車両として選択する。S371において選択された車両100が、「第2車両」に相当する。
管理装置500は、使用中及び待機中の両方の車両100の状態(図4及び図5参照)を取得するように構成される。管理装置500は、車両100から取得した車両データを用いて、初期(たとえば、車両100に二次電池110が搭載された時点)から現在までに二次電池110に蓄積された熱による劣化量(熱劣化量)を求めるように構成される。管理装置500は、各車両100の熱劣化量を、車両情報として管理する。管理装置500は、車両100から取得した車両データを用いて電池温度頻度分布及び電池劣化速度βを取得し、これら電池温度頻度分布及び電池劣化速度βを用いて二次電池110の熱劣化量を求めることができる。管理装置500は、使用中に熱によって二次電池110が劣化した量と、待機中に熱によって二次電池110が劣化した量とを積算することによって、二次電池110の熱劣化量(ひいては、初期からの容量低下量)を取得することができる。
上記S371において二次電池110の熱劣化量が最も小さい車両100が選ばれることで、二次電池110の熱劣化量が小さい車両100ほど利用順序が先になる。こうすることで、拠点Pに所属する車両100A~100D(図1)間での電池寿命のばらつきを抑制することができる。ただし、S371における貸出車両の選択方法は上記に限られず任意である。貸出回数が少ない車両から順にローテーションで貸出車両が選ばれてもよい。この実施の形態では、待機中の車両100(第1車両を含まない)の中から貸出車両を選んでいるが、配車可能な車両100(第1車両を含む)の中で二次電池110の熱劣化量が最も小さい車両100が貸出車両として選択されてもよい。
S371の処理後、第2配車部500Eは、S372において、S371で選択した車両100(第2車両)を次のユーザ(第2ユーザ)に配車する。なお、S361、S362、及びS372の各々においては、管理装置500が、貸出車両(S361,S362:第1車両、S372:第2車両)の認証装置140に第2ユーザのユーザIDを照合情報として設定することによって、第2ユーザへの配車を行なう。これにより、第2ユーザが貸出車両を利用できるようになる。
以上説明したように、この実施の形態に係る配車システム1では、第1ハイレート劣化量が第1劣化量を超えている場合(図6のS352にてYES)に、管理装置500が、放電制限を緩和する設定を第1車両の制御装置180に行なう。これにより、次のユーザ(第2ユーザ)が第1車両を使用しているときに二次電池110の過放電(たとえば、ハイレート放電)が起こりやすくなる。過充電によって生じたイオン濃度の偏り(すなわち、第1ハイレート劣化)は、過放電によって緩和することができるため、過放電が起こりやすくなることによって第1ハイレート劣化が回復しやすくなる。第1車両の制御装置180に対する上記設定(すなわち、放電制限を緩和する設定)は、たとえば、第1車両が返却されて待機状態になるときに、管理装置500によって元の設定に戻される。
この実施の形態に係る配車システム1では、第2ハイレート劣化量が第2劣化量を超えている場合(図6のS351にてYES)に、管理装置500が、充電制限を緩和する設定を第1車両の制御装置180に行なう。これにより、次のユーザ(第2ユーザ)が第1車両を使用しているときに過充電(たとえば、ハイレート充電)が起こりやすくなる。過放電によって生じたイオン濃度の偏り(すなわち、第2ハイレート劣化)は、過充電によって緩和することができるため、過充電が起こりやすくなることによって第2ハイレート劣化が回復しやすくなる。第1車両の制御装置180に対する上記設定(すなわち、充電制限を緩和する設定)は、たとえば、第1車両が返却されて待機状態になるときに、管理装置500によって元の設定に戻される。
このように、上記の配車システム1によれば、車両100の二次電池110のハイレート劣化量が小さくなるように配車を行なうことができる。
管理装置500によって制御装置180の設定(たとえば、Win,Woutの値)が変更された第1車両が事業者に返却されたときに、変更された設定が元の設定(変更前の値)に戻されることなく、第1車両が待機状態になるようにしてもよい。各車両100の制御装置180の設定(たとえば、Win,Woutの値)が管理装置500において管理されてもよい。
なお、第1ハイレート劣化量及び第2ハイレート劣化量の各々は、電池のハイレート劣化が進むほど絶対値が大きくなり、かつ、電池のハイレート劣化が回復すると0に近づくパラメータであれば任意である。たとえば、ハイレート劣化による電池の内部抵抗の増加量、又はハイレート劣化による電池の内部抵抗の増加量を電池の初期の内部抵抗で除算した値(=初期からの内部抵抗の増加量/初期の内部抵抗)を、第1ハイレート劣化量及び第2ハイレート劣化量の各々として採用してもよい。第1ハイレート劣化量と第2ハイレート劣化量とを区別する方法は、ハイレート劣化量の符号(正/負)による区別に限られず、たとえば、過充電及び過放電のいずれで生じた内部抵抗の増加であるかを示す情報(たとえば、フラグ)を記憶装置530に保存してもよい。
PHV車の構成は、図2に示した構成に限られず任意である。たとえば、モータジェネレータの数は、2つに限定されず任意であり、たとえば1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。上記実施の形態では、配車システムによって配車される車両をPHV車としたが、他の電動車両(たとえば、EV車、HV車、FC車、又はレンジエクステンダーEV車)であってもよい。
上記実施の形態では、配車システムを会員制のカーシェアリングに適用したが、配車システムは、不特定多数のユーザに車両を貸し出すレンタカー(自動車を有料で貸し出す事業)に適用されてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。