本発明の実施の形態に係る内燃機関1は、図1に示すように、シリンダヘッド2と、シリンダヘッド2の下部に取り付けられたシリンダブロック4と、シリンダブロック4の下部に取り付けられたオイルパン6と、を備えている。
なお、内燃機関1は、3つの気筒(後述する「シリンダボア12a」)が直列に配置された直列3気筒内燃機関として構成されており、燃焼室CCで生じる燃焼圧力によってピストンPをシリンダボア12a内で往復運動させ、当該ピストンPの往復運動をクランクシャフトCSの回転運動に変換することにより動力を出力する(図3参照)。
シリンダブロック4は、アルミニウム合金製の鋳造品であって、内燃機関1の骨格を構成する主要部品の一つとして構成されており、図2ないし図4に示すように、シリンダ部10と、当該シリンダ部10に一体成型されたスカート部16と、から構成されている。即ち、本実施の形態におけるシリンダブロック4は、クランク室まで構成する所謂ディープスカートタイプとして構成されている。なお、本実施の形態では、便宜上、シリンダブロック4のシリンダヘッド2が締結される側、即ち、図3中の上側を、「上側」ないし「上方」として規定し、オイルパン6が締結される側、即ち、図3中の下側を、「下側」ないし「下方」として規定する。
シリンダ部10は、図2および図4に示すように、3つのシリンダボア12aを画定するシリンダボア壁12と、ウォータジャケットWJを介して当該シリンダボア壁12を囲繞するように構成された外壁14a,14b,14c,14dと、から構成されている。換言すれば、外壁14a,14b,14c,14dの内周面がウォータジャケットWJの外壁を構成していると言うことができる。シリンダボア壁12は、3つのシリンダボア12aが直列に配置されるように互いに連結されてサイアミーズシリンダーを構成しており、シリンダボア12a内には、ピストンPが摺動可能に収容される(図3参照)。
なお、外壁14a,14bは、シリンダボア12aの配列方向に沿う方向に延在しており、外壁14aは、エキゾーストマニホールドが配置される側(図3の左側。以下、「排気側」と言う場合がある)に配置され、外壁14bは、インテークマニホールドが配置される側(図3の右側。以下、「吸気側」と言う場合がある)に配置されている。また、外壁14c,14dは、シリンダボア12aの配列方向に対して直交する方向に沿って延在している。
各外壁14a,14b,14c,14dおよびシリンダボア壁12の上端面(図2ないし図4の上方側端面)は、面一状に形成されており、シリンダヘッド2のロアデッキが当接するトップデッキ面を構成している。トップデッキ面は、シリンダボア12aの軸線方向に対して直交している。また、各外壁14a,14b,14c,14dの下端面(図3の下方側端面)は、ボトムデッキ面として構成されている。
また、外壁14a,14b,14c,14dには、図2および図4に示すように、シリンダヘッド2をシリンダブロック4に締結するための図示しないヘッドボルトが挿通される8つの挿通孔15aが形成されている。当該挿通孔15aは、トップデッキ面からボトムデッキ面まで貫通している。また、挿通孔15aは、シリンダボア12aの配列方向の一方側から見た場合に、当該シリンダボア12aを挟むように当該シリンダボア12aの両側(排気側および吸気側)に直列に4つずつ配置されている。なお当該4つの挿通孔15aの配置は、シリンダボア12aの配列方向の両端に各1つずつ、および、シリンダボア12a間に各1つずつとなっている。
排気側の外壁14aの側面は、平面加工されており、トップデッキに対して直角に接続されている。そして、外壁14aには、図4に示すように、側面からウォータジャケットWJまで貫通する3つの貫通孔17,17,17が形成されている。3つの貫通孔17,17,17は、3つのシリンダボア12a,12a,12aに対応する位置に配置されている。換言すれば、挿通孔15aが形成されたボルトボス15(図27および図28参照)間に配置されている。
貫通孔17,17,17は、外壁14aの側面に直交する方向の一方側から見た場合、シリンダ部10のトップデッキ面よりもやや下方の位置からボトムデッキ面よりもやや上方の位置までの高さ寸法を有すると共に、シリンダボア12aの直径よりもやや小さい横寸法を有する略四角形状に形成されている。即ち、貫通孔17,17,17は、ほぼウォータジャケットWJの深さに相当する高さを有している。なお、外壁14aの側面のうち貫通孔17,17,17間の上下二か所および外壁14aの側面の長手方向(シリンダボア12aの配列方向)の両端の上下二か所には、袋とじ状のネジ孔13が形成されている。即ち、外壁14aの側面には計8つの袋とじ状のネジ孔13が形成されている。なお、吸気側の外壁14bにも、排気側の外壁14aと同様、3つの貫通孔17,17,17および8つのネジ孔13が形成されているが、重複した説明を避けるため、詳細な説明は省略する。
シリンダ部10には、、図3に示すように、3つの貫通孔17,17,17を介して本発明の実施の形態に係るウォータジャケットスペーサ20が設置される。なお、図3では、排気側のみにウォータジャケットスペーサ20が設置された状態が記載されている。排気側のウォータジャケットWJに設置されるウォータジャケットスペーサ20は、図5に示すように、主に、樹脂製のスペーサ本体22と、当該スペーサ本体22に取付けられる金属製のバインダプレート30と、から構成されている。なお、吸気側のウォータジャケットWJに設置されるウォータジャケットスペーサ20は、基本的には、排気側のウォータジャケットWJに設置されるウォータジャケットスペーサ20と同様の構成を有しているため、以下、排気側のウォータジャケットWJに設置されるウォータジャケットスペーサ20について説明し、吸気側のウォータジャケットWJに設置されるウォータジャケットスペーサ20については説明を省略する。
スペーサ本体22は、図6に示すように、主部22aと、当該主部22aに対して突出状に設けられた突出部22bと、を有している。スペーサ本体22を構成する面のうち突出部22bが突出する方向に設けられた面は、段付き面23として形成されている。また、スペーサ本体22は、図7に示すように、段付き面23とは反対側の面が開口された凹形状に形成された中空段付き直方体状に構成されている。換言すれば、スペーサ本体22は、段付き面23の背面に凹部22cを有するということができる。なお、以下では、説明の便宜上、図6中の紙面上方を「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を「下側」ないし「下方側」と規定する。また、図6中の紙面左方を「左側」ないし「左方側」と規定し、紙面右方を「右側」ないし「右方側」と規定する。
段付き面23を構成する二つの面は、図6に示すように、円弧面23a,23bとして構成されている。円弧面23aは、ウォータジャケットWJの外壁を構成するシリンダブロック10の外壁14aの内周面の曲率とほぼ同じ曲率を有するように形成されており、円弧面23bは、シリンダボア壁12の曲率とほぼ同じか若干大きい曲率を有するように形成されている。円弧面23bの周方向両端部には、図6および図8に示すように、スペーサ本体22の左右の側壁(4つの側壁のうち円弧面23bの周方向両端を画定する両側壁)から円弧面23bが向く方向に向かって延出する延出片23c,23cが一体に設けられている。
円弧面23aと円弧面23bとを接続する段差の高さ(円弧面23bの円弧面23aに対する突出代)は、ウォータジャケットWJの幅(シリンダボア壁12から外壁14aの内周面までの寸法)とほぼ同じとなるように設定されている。換言すれば、円弧面23bは、円弧面23aに対してウォータジャケットWJの幅(シリンダボア壁12から外壁14aの内周面までの寸法)分だけ突出している。
また、スペーサ本体22の4つの側壁には、図6ないし図8に示すように、複数のリブ24が突出形成されている。具体的には、スペーサ本体22の上側および下側の側壁には、それぞれ2本のリブ24が設けられており、スペーサ本体22の左側および右側の側壁には、それぞれ3本のリブ24が設けられている。各リブ24は、段付き面23側から段付き面23の背面側(凹部22cの開口側)に向かって直線状に延在している。スペーサ本体22のリブ24を含む上下方向の寸法は、シリンダ部10に形成された貫通孔17の高さ寸法よりも若干大きくなるよう設定されており、スペーサ本体22のリブ24を含む左右方向の寸法は、貫通孔17の横寸法よりも若干大きくなるように設定されている。
さらに、スペーサ本体22の右側の側壁のうち最も下方に配置されたリブ24と中央に配置されたリブ24との間であって、最も下方に配置されたリブ24寄りの位置には、図6ないし図8に示すように、円弧面23bの背面側(凹部22cの開口側)の端面が切り欠かれた切欠部27が形成されていると共に、円弧面23b側から円弧面23bの背面側(凹部22cの開口側)に向かうに伴って左側の側壁に近付く方向の(凹部22c側へ入り込むような)傾斜角度を有する傾斜面26が形成されている。当該傾斜面26は、先端(凹部22cの開口側端部)において切欠部27に接続されている。また、スペーサ本体22の左右の側壁のうち一対の延出片23c,23c近傍に対応する位置には、図6ないし図8に示すように、小凸部23d,23dが形成されている。
さらに、スペーサ本体22の凹部22cの底面には、図7および図8に示すように、当該底面側から見た場合の形状が略π字状を構成するリブ25が突設されている。即ち、当該リブ25は、スペーサ本体22の左右方向に延在する一本の横リブ25aと、一端が当該横リブ25aに直交するように接続されると共に他端がスペーサ本体22の下方の側壁の内面に直交するように接続された一対の縦リブ25b,25bと、から構成されている。
バインダプレート30は、図9および図10に示すように、主に、長手方向を有する平板状に構成された基部32と、当該基部32の長手方向に沿う両側縁部に一体に接続された一対の腕部34,35と、から構成されている。バインダプレート30は、鉄板をプレス加工することによって成形される。即ち、基部32と一対の腕部34,35とが一体に成形される。なお、以下では、説明の便宜上、図9および図10中の紙面上方を「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を「下側」ないし「下方側」と規定する。
基部32は、図9に示すように、長手方向の両端部が同方向に略直角に折り曲げられた折曲片32a,32bを有している。また、基部32のうち一方の折曲片32a寄りの部分には、略等脚台形状の開口32cが形成されている。なお、基部32の長手方向に沿う両側縁部のうち当該略等脚台形状の開口32cの斜辺に対応する部分は、略等脚台形状の開口32cの斜辺とほぼ同じ傾斜角度をもって傾斜されている。これにより、折曲片32aの幅は、折曲片32bの幅よりも小さくなっている。ここで、「幅」とは、基部32の長手方向に直交する方向の寸法として規定される。
折曲片32aから折曲片32bまでの寸法は、スペーサ本体22の凹部22cの上下方向(図7の上下方向)寸法とほぼ同じ値に設定されている。
一対の腕部34,35は、図9ないし図11に示すように、基部32の長手方向に沿う両側縁部から折曲片32a,32bの延出方向と同じ方向に向かって延出する第1延出片34a,35aと、第1延出片34a,35aの延出端において折り曲げられて、折曲片32a,32bの延出方向とは逆方向に向かって延出する第2延出片34b,35bと、から構成されている。即ち、バインダプレート30を上方側から見た場合に、一対の腕部34,35は、略J字ないし逆J字状に形成されている。これにより、バインダプレート30は、上方視略W字状を成している(図11参照)。一対の腕部34,35の上下方向の寸法(高さ寸法)は、スペーサ本体22の一対の延出片23c,23cの上下方向の寸法より若干小さくなるように設定されている。なお、一対の腕部34,35の上下方向の寸法(高さ寸法)は、スペーサ本体22の左右の側壁に設けた三つのリブ24,24,24のうち、中央に配置されたリブ24と最も下方に配置されたリブ24との間の寸法とほぼ同じ値に設定されている。
第1延出片34a,35aの中央には、図9ないし図11に示すように、延出端まで達する大開口34a’,35a’が形成されている。当該大開口34a’,35a’は、基部32の一部にまで達している。換言すれば、基部32の一部が大開口34a’,35a’によって切り欠かれているとも言える。また、第2延出片34bの延出端近傍の位置には、小開口34b’が形成されている。さらに、第2延出片35bの略中央には、大開口35b’が形成されている。小開口34b’は、スペーサ本体22の小凸部23dとほぼ同じ外形に形成されており、当該小凸部23dとほぼ同じか若干大きくなるように形成されている。
なお、第2延出片34bの内面(第1延出片34a側を向く面)から第2延出片35bの内面(第1延出片35a側を向く面)までの寸法は、リブ24を除くスペーサ本体22の左側の側壁面から右側の側壁面までの寸法と同じか若干小さくなるように設定されている。
クッション部材40は、図12ないし図14に示すように、本体部42と、当該本体部42に一体にされた一対の塊部44,44と、を備えている。クッション部材40は本発明における「弾性部材」に対応する実施構成の一例である。なお、以下では、説明の便宜上、図12および図13中の紙面上方を「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を「下側」ないし「下方側」と規定する。
本体部42は、図12および図13に示すように、蛇腹状部42aと、当該蛇腹状部42aの稜線ないし谷線に直交する方向(図12および図13の左右方向)の両端部に設けられた一対の平板部42b,42bと、を有しており、クッション部材40を上方側ないし下方側から見た場合に、略W字状に構成されている。なお、蛇腹状部42aの中央の稜線部42a’と一対の平板部42b,42bの主面のうち蛇腹状部42aの二つの谷部が開口された方向を向く主面42b1,42b1は、図12および図14に示すように、同一平面上に配置されるように構成されている。
一対の塊部44,44は、図12および図13に示すように、一対の平板部42b,42bに一体に設けられており、一対の平板部42b,42bの上下方向(蛇腹状部42aの稜線ないし谷線に沿う方向)のほぼ中央に配置されている。一対の塊部44,44は、図13および図14に示すように、一対の平板部42b,42bの一方の面、具体的には、一対の平板部42b,42bの主面のうち蛇腹状部42aの二つの山部が突出する方向を向く主面42b2,42b2に対して面一状に構成されている一方、一対の平板部42b,42bの他方の面、具体的には、一対の平板部42b,42bの主面42b1,42b1に対して突出するように構成されている。
なお、一対の塊部44,44の側面のうち外側を向く側面(互いに向かい合う側面とは反対側の側面)間の寸法は、スペーサ本体22の凹部22cの左右方向(図7の左右方向)寸法とほぼ同じ値に設定されている。また、一対の塊部44,44の上下方向の寸法は、バインダプレート30の一対の腕部34,35の第1延出片34a,35aに形成された大開口34a’,35a’の上下方向の寸法と同じか若干小さくなるように形成されている。
プレッシャプレート50は、図15に示すように、平板部52と、当該平板部52に突出状に設けられた3つの段付き突出部54,54,54と、を備えており、金属板をプレス加工することによって成形される。より具体的には、金属板に絞り加工を施すことによって、平板部52と3つの段付き突出部54,54,54とが一体に成形される。即ち、3つの段付き突出部54,54,54は、図16および図17に示すように、突出側とは反対側が凹形状に構成される。プレッシャプレート50は、本発明における「第1部分」に対応する実施構成の一例である。なお、以下では、説明の便宜上、図15中の紙面上方を「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を「下側」ないし「下方側」と規定する。また、図15中の紙面左方を「左側」ないし「左方側」と規定し、紙面右方を「右側」ないし「右方側」と規定する。
平板部52には、複数の貫通孔52aが形成されている。具体的には、貫通孔52aは、平板部52の長手方向の両端部の上下に2つ、3つの段付き突出部54,54,54間の上下にそれぞれ2つずつの計8つが平板部52に形成されている。なお、貫通孔52a同士の間隔(上下方向の間隔および左右方向の間隔)は、シリンダ部10の外壁14aの側面に形成されたネジ孔13同士の間隔(上下方向の間隔および左右方向の間隔)と同じに設定されている。
3つの段付き突出部54,54,54は、図15および図16に示すように、平板部52に直交する仮想直線VL1に沿う方向の一方側から見た場合に、上下方向に長い略長方形状に構成されており、平板部52の長手方向に沿って直列に配置されている。また、3つの段付き突出部54,54,54の間隔は、シリンダブロック4のシリンダ部10に形成された3つの貫通孔17,17,17と同じ間隔に設定されている。
3つの段付き突出部54,54,54の上下方向の寸法は、図26に示すように、バインダプレート30の折曲片32aから折曲片32bまでの寸法よりも若干小さくなるように設定されている。また、3つの段付き突出部54,54,54の左右方向の寸法は、図27および図28に示すように、バインダプレート30の一対の腕部34,35の第1延出片34a,35a間の寸法よりも若干小さくなるように設定されている。
また、3つの段付き突出部54,54,54は、図15および図17に示すように、上方に設けられた第1段部54a,54a,54aと、当該第1段部54a,54a,54aの下方に段差をもって接続された第2段部54b,54b,54bと、から構成されている。第1段部54a,54a,54aは、平板部52からの突出量が第2段部54b,54b,54bの平板部からの突出量よりも大きくなるように構成されている。
ヨーク60は、図18に示すように、ヨーク本体62と、ボルトBLTによって当該ヨーク本体62に締結されるカバー68と、から構成されている。ヨーク60は、本発明における「第2部分」に対応する実施構成の一例である。また、プレッシャープレート50およびヨーク60は、本発明における「カバー部材」に対応する実施構成の一例である。ヨーク本体62は、図18ないし図21に示すように、長手方向に沿って直列に3つの貫通開口62a,62a,62aが形成された枠状ブロック体として構成されている。なお、以下では、説明の便宜上、図20中の紙面上方を「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を「下側」ないし「下方側」と規定する。また、図15中の紙面左方を「左側」ないし「左方側」と規定し、紙面右方を「右側」ないし「右方側」と規定する。
ヨーク本体62の上下方向寸法は、シリンダ部10の外壁14aの側面の上下方向(シリンダボア12aの軸線方向)の寸法とほぼ同じに設定されており、ヨーク本体62の左右方向寸法(長手方向の寸法)は、シリンダ部10の外壁14aの側面の左右方向(シリンダボア12aの配列方向)の寸法とほぼ同じに設定されている。
3つの貫通開口62a,62a,62aは、シリンダブロック4のシリンダ部10の3つの貫通孔17,17,17の高さとほぼ同じ大きさの略四角形状に形成されている。即ち、3つの貫通開口62a,62a,62aの上下方向の寸法は、3つの貫通孔17,17,17の高さ寸法とほぼ同じに設定されており、3つの貫通開口62a,62a,62aの左右方向の寸法は、3つの貫通孔17,17,17の横寸法とほぼ同じに形成されている。また、3つの貫通開口62a,62a,62aの間隔は、3つの貫通孔17,17,17と同じ間隔に設定されている。
また、ヨーク本体62の長手方向の両端部の側壁63a,63bおよび3つの貫通開口62a,62a,62a間に配置されたリブ63c,63dには、図18ないし図21に示すように、深底切欠き64がヨーク本体62の長手方向に貫通するように形成されている。換言すれば、深底切欠き64は、側壁63aから2つのリブ63c,63dを経て側壁63bまで一直線状に配置されるように形成されている。深底切欠き64は、ヨーク本体62の長手方向の一方側から見た場合に、略U字状に形成されており、その幅寸法は、後述するパイプ70の直径とほぼ同じか若干大きくなるように形成されている。なお、深底切欠き64の深さ寸法は、パイプ70の直径よりも大きくなるよう形成されている。
また、ヨーク本体62の側壁63a,63bおよびリブ63c,63dには、それぞれ上下に2つずつヨーク本体62を厚み方向(ヨーク本体の上下方向および左右方向(長手方向)の両方に直交する方向)に貫通する貫通孔65が形成されている。貫通孔65は、ボルトBLTよりも大きな径を有するように形成されている。
さらに、ヨーク本体62のカバー68が締結される締結面62bのうちヨーク本体62の対角に位置する一組の隅部には、図20および図21に示すように、当該隅部を含む2つの貫通開口62a,62aの内側に張り出すように平板状のフランジ62c,62cが形成されている。当該フランジ62c,62cには、貫通孔62c’,62c’が形成されている(図20参照)。そして、当該貫通孔62c’,62c’には、図22に示すように、中間部にバルジ加工が施されたパイプ66,67が圧入嵌合されている。パイプ66,67は、中間部に形成されたバルジ部が締結面62bに当接されるまで貫通孔62c’,62c’に挿入される。これにより、パイプ66,67は、締結面62bから突出した状態となる。
なお、パイプ66は、図1、図2および図26に示すように、ヨーク60がシリンダ部10の外壁14aに締結された際に、上方側(シリンダボア12aの軸線方向の上側)となる貫通孔62c’に圧入嵌合され、パイプ67は、ヨーク60がシリンダ部10の外壁14aに締結された際に、下方側(シリンダボア12aの軸線方向の下側)となる貫通孔62c’に圧入嵌合される。貫通孔62c’を含むパイプ66は、本発明における「第1連通部」に対応し、貫通孔62c’を含むパイプ67は、本発明における「第2連通部」に対応する実施構成の一例である。
パイプ70は、内燃機関1を冷却した後の冷却水を図示しないウォータポンプまで戻すための通路部材として構成されている。パイプ70は、本発明における「通路部材」に対応する実施構成の一例である。冷却水は、本発明における「内燃機関の稼働に要する流体」に対応する実施構成の一例である。
カバー68は、図18に示すように、金属製の平板として構成されており、ヨーク本体62の貫通孔65に対応する位置に貫通孔69aが形成されている。また、カバー68は、ヨーク本体62に取り付けられたパイプ66,67に対応する位置にも、貫通孔69b,69bが形成されている。貫通孔69aは、ボルトBLTよりも大きな径を有するように形成されており、貫通孔69b,69bは、パイプ66,67が挿通可能な径を有するように形成されている。なお、カバー68は、ヨーク本体62の深底切欠き64にパイプ70がセットされた状態でボルトBLTによって締結面62bに締結される。
次に、ウォータジャケットスペーサ20をシリンダブロック4に組み付ける際の様子について説明する。ウォータジャケットスペーサ20をシリンダブロック4に組み付けるにあたっては、図23に示すように、まず、スペーサ本体22にバインダプレート30およびクッション部材40を組み付ける。
バインダプレート30のスペーサ本体22への組み付けは、図23および図26に示すように、バインダプレート30の折曲片32a,32bの延出端(図23には折曲片32bのみが記載されている)が、スペーサ本体22の凹部22cの開口端側を向くように、バインダプレート30の基部32がスペーサ本体22の一対の縦リブ25b,25b(図26参照)に当接するまでスペーサ本体22の凹部22cに挿入することにより行う。このとき、バインダプレート30の折曲片32a,32bがスペーサ本体22の凹部22cの上下方向の内壁面に当接されると共に(図26参照)、バインダプレート30の一対の腕部34,35の第1延出片34a,35aと第2延出片34b,35bとがスペーサ本体22の左右の側壁を挟持する(図23および図24参照)。
バインダプレート30の一対の腕部34,35の第1延出片34a,35aと第2延出片34b,35bとがスペーサ本体22の左右の側壁を挟持することによって、スペーサ本体22の一対の延出片23c,23cの外面(スペーサ本体22の左右の側壁面に連続する部分の面)が、第2延出片34b,35bによって支えられた状態、即ち、スペーサ本体22の一対の延出片23c,23cの外面(スペーサ本体22の左右の側壁面に連続する部分の面)が、第2延出片34b,35bによって補強された状態となる(図23および図24参照)。
このとき、図23に示すように、第2延出片34bの小開口34b’がスペーサ本体22の左側の側壁の小凸部23dに係合されると共に、図24に示すように、第2延出片35bの大開口35b’がスペーサ本体22の右側の側壁の小凸部23dに係合されるため、バインダプレート30のスペーサ本体22からの脱落を良好に防止し得る。なお、スペーサ本体22の右側の側壁に形成された傾斜面26および切欠部27は、第2延出片35bの大開口35b’によって外部に露呈された状態となっている。換言すれば、スペーサ本体22の凹部22cは、傾斜面26、切欠部27および第2延出片35bの大開口35b’によって、外部と連通されている。
こうして、バインダプレート30は、折曲片32a,32bによって上下方向の移動が規制されると共に、一対の腕部34,35によって左右方向の移動が規制された状態、即ち、スペーサ本体22の凹部22cに位置決めされた状態でバインダプレート30のスペーサ本体22への組み付けが完了する。
なお、バインダプレート30がスペーサ本体22の凹部22cに組み付けられた状態においては、図26および図28に示すように、バインダプレート30の基部32とスペーサ本体22の凹部22cの底面との間には空間が形成されている。
続いて、クッション部材40の平板部42b,42bの主面42b1,42b1、即ち、一対の塊部44,44の突出方向がバインダプレート30側を向くようにして、クッション部材40の稜線部42a’および平板部42b,42bの主面42b1,42b1がバインダプレート30の基部32に当接するまで、当該クッション部材40をスペーサ本体22の凹部22cに挿入する。
クッション部材40の稜線部42a’および平板部42b,42bの主面42b1,42b1がバインダプレート30の基部32に当接されるまでクッション部材40がスペーサ本体22の凹部22cに挿入されたときには、クッション部材40の一対の塊部44,44がバインダプレート30の第1延出片34a,35aに形成された大開口34a’,35a’に係合された状態となる(図25参照)。これにより、クッション部材40のバインダプレート30への組み付けが完了する。このとき、一対の塊部44,44は、バインダプレート30の基部32よりもスペーサ本体22の凹部22cの底面側に突出した状態となっている(図28参照)。しかしながら、一対の塊部44,44とスペーサ本体22の凹部22cの底面とは当接することはなく、隙間を有する状態が維持されている。
次に、バインダプレート30およびクッション部材40が組み付けられたスペーサ本体22を、シリンダブロック4のシリンダ部10に形成された貫通孔17,17,17に挿入する。ここで、バインダプレート30およびクッション部材40が組み付けられたスペーサ本体22は、当該スペーサ本体22の各側壁に形成されたリブ24によって、貫通孔17,17,17内での位置規制がなされる(位置決めがなされる)。
続いて、図26に示すように、プレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54が貫通孔17,17,17側を向くようにして、プレッシャプレート50の平板部52をガスケットGSKTを介してシリンダ部10の外壁14aの側面に当接させると共に、プレッシャプレート50の背面側からヨーク60の締結面62dを当接させ、ボルトBLTをヨーク本体62に形成された貫通孔65(図18参照)およびプレッシャプレート50の平板部52に形成された貫通孔52a(図16参照)を介してシリンダ部10の外壁14aの側面に形成されたネジ孔13(図4参照)にネジ係合させることによって、ウォータジャケットスペーサ20のシリンダブロック4への組み付けが完了する。
このとき、プレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54は、図26ないし図28に示すように、スペーサ本体22の凹部22cとの間に空間IS1を有する態様で当該スペーサ本体22の凹部22c内に収容される。なお、プレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54(具体的には、第2段部54b,54b,54b)は、クッション部材40(具体的には、蛇腹状部42aの稜線部のうち主面42b2側に突出する一対の稜線部)に当接している。空間IS1は、本発明における「第1空間」に対応する実施構成の一例である。
また、図26ないし図28に示すように、プレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54の背面側の凹部50a、ヨーク本体62の貫通開口62a,62a,62a、および、カバー68によって、ウォータジャケットスペーサ20の背面側には、閉空間IS2が構成される。閉空間IS2は、本発明における「第2空間」に対応する実施構成の一例である。
なお、ウォータジャケットスペーサ20のシリンダブロック4への組み付けが完了した際には、クッション部材40がプレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54とバインダプレート30(具体的には、基部32)との間で圧縮された状態となり、スペーサ本体22(延出片23c,23c)が、クッション部材40の圧縮変形に起因した復元力によってシリンダボア壁12に押圧された状態となっている。これにより、スペーサ本体22がウォータジャケットWJを流れる高温の冷却水からの受熱等によって経時的な永久歪(へたり)が生じても、スペーサ本体22の延出片23c,23cとシリンダボア壁12との当接状態を確実に維持することができる。この結果、ウォータジャケットスペーサ20の機能を長期間に亘って維持することができる。
また、ウォータジャケットスペーサ20のシリンダブロック4への組み付けが完了した際には、スペーサ本体22は、円弧面23bを含むスペーサ本体22の突出部のみがウォータジャケットWJ内に突出されている。換言すれば、スペーサ本体22は、円弧面23bを含むスペーサ本体22の突出部以外の部分は、シリンダ部10に形成された貫通孔17,17,17内に収容された状態となっている。スペーサ本体22の円弧面23bを含むスペーサ本体22の突出部は、ウォータジャケットWJの底部を埋めており、当該ウォータジャケットWJの底部での冷却水の流れを制限して、シリンダボア12aの過冷却を防止している。なお、スペーサ本体22の円弧面23aは、シリンダブロック4の外壁14aの内周面と共にウォータジャケットWJの外壁を形成している。
次に、こうして構成された内燃機関1の動作、特に、ウォータジャケットスペーサ20、プレッシャプレート50およびヨーク60によってウォータジャケットWJを流れる冷却水の放熱が抑制される際の様子について説明する。
本実施の形態に係る内燃機関1が稼働されると、図示しないウォータポンプによって冷却水がウォータジャケットWJに送給され、当該ウォータジャケットWJ内を流れる。ウォータジャケットWJ内を流れる冷却水は、シリンダボア壁12と接触してシリンダボア壁12からの熱を奪うことでシリンダボア壁12の冷却を行う。ところで、内燃機関1を稼働した直後(始動直後)においては、冷却水の温度が低く、潤滑油の粘度も高いことから、ピストンPの摺動フリクションが大きい状態となっており、燃費向上の観点から冷却水の温度を早期に上昇させることが望まれる。
本実施の形態に係る内燃機関1によれば、ウォータジャケットWJの外壁の一部を兼ねるスペーサ本体22が樹脂により構成されているため、冷却水の温度が放熱されることを抑制することができる。また、ウォータジャケットWJを流れる冷却水の一部がスペーサ本体22の凹部22cとプレッシャプレート50とによって構成された空間IS1内にに流入して滞留して断熱層を構成するため、ウォータジャケットWJを流れる冷却水がスペーサ本体22を介して外部に放熱されることを効果的に抑制することができる。
ここで、プレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54によって、スペーサ本体22の凹部22cの空間容積が減少されているため、ウォータジャケットWJを流れる冷却水がスペーサ本体22の凹部22cに流入する流量ないしスペーサ本体22の凹部22cに流入した冷却水が当該スペーサ本体22の凹部22cに滞留する流量を抑制することができるため、内燃機関1全体としての冷却水の流量の増大を良好に抑制できる
さらに、空間IS1の背面側には、ヨーク60によって閉空間IS2が構成されているため、ウォータジャケットWJを流れる冷却水がスペーサ本体22を介して外部に放熱されることをより一層効果的に抑制できる。なお、閉空間IS2によって、シリンダブロック4の排気側に配置される図示しないエキゾーストマニホールドや触媒コンバータなどの熱源からの高熱が、スペーサ本体22まで伝達されることを良好に防止することができる。ここで、プレッシャプレート50およびヨーク60は金属製とされているため、当該プレッシャプレート50およびヨーク60の耐久性も確保されている。
また、当該閉空間IS2には、内燃機関1を冷却した後の冷却水を図示しないウォータポンプに戻すための通路部材としてのパイプ70が配設されているため、パイプ70を流れる冷却水の保温性も確保することができる。これにより、内燃機関1の暖気性能をより向上することができると共に、冷却水が外気に曝されて氷結することも抑制することができる。
ここで、閉空間IS2がパイプ66によって外気と連通されているため、当該閉空間IS2内の空気の温度変化に起因して生じる当該空気の体積変化は良好に吸収され得る。また、当該空気の体積変化に起因して当該当該閉空間IS2内に凝縮水が発生したとしても、パイプ67を介して当該凝縮水を外部へ排出することができるため、ヨーク60の腐食を良好に抑制することができる。
以上説明した本発明の実施の形態に係る内燃機関1によれば、シリンダ部10の外壁14aに形成した貫通孔17,17,17を塞ぐべく当該外壁14aにプレッシャプレート50を締結した際に、当該プレッシャプレート50(段付き突出部54,54,54)とスペーサ本体22の凹部22cとの間に空間IS1が構成されると共に、プレッシャプレート50の背面側にたヨーク60を締結した際に、プレッシャプレート50を挟んで空間IS1とは反対側に閉空間IS2が構成される。即ち、ウォータジャケットスペーサ20の背面側に二層の断熱空間を形成する構成であるため、ウォータジャケットWJ内を流れる冷却水の熱が外部へ放熱されることを効果的に抑制することができる。なお、断熱空間を二層構造とすることによって、冷却水の放熱を良好に抑制できるため、最も外側に設置されるヨーク60を金属製とすることができる。これにより、シリンダブロック1の排気側の外壁14a近傍に配置される熱源、例えば、エキゾーストマニホールドや触媒コンバータなどからの熱に対するヨーク60の耐久性を向上することができる。
また、本発明の実施の形態に係る内燃機関1によれば、冷却水をウォータポンプへ戻すための通路部材としてのパイプ70を閉空間IS2内に配設する構成であるため、パイプ70を流れる冷却水の保温性を確保することができる。これにより、内燃機関1の暖気性能をより向上することができると共に、冷却水が外気に曝されて氷結することも抑制することができる。なお、断熱層としての閉空間IS2を利用する構成であるため、合理的である。
さらに、本発明の実施の形態に係る内燃機関1によれば、パイプ66,67によって閉空間IS2と外部とを連通する構成であるため、閉空間IS2内の空気の温度変化に起因した当該空気の体積変化に対応することができると共に、当該空気の温度変化に起因して生じる凝縮水を外部へ排出することができる。
また、本発明の実施の形態に係る内燃機関1によれば、プレッシャプレート50をシリンダ部10の外壁14aに締結した際に、当該プレッシャプレート50とウォータジャケットスペーサ20(スペーサ本体22)との間でクッション部材40が圧縮さされる構成であるため、当該クッション部材40の復元力を利用してウォータジャケットスペーサ20(スペーサ本体22)をシリンダボア壁12に密接状態で当接させることができる。
本実施の形態では、プレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54をスペーサ本体22の凹部22cに収容する構成としたが、これに限らない。
本実施形態および変形例の内燃機関1では、プレッシャプレート50とバインダプレート30(スペーサ本体22)との間に、ゴム製のクッション部材40を設置する構成としたが、これに限らない。例えば、プレッシャプレート50とバインダプレート30(スペーサ本体22)との間にコイルバネや板バネなどを設置する構成としても良い。
本実施形態および変形例の内燃機関1では、スペーサ本体22とクッション部材40との間にバインダプレート30を設置する構成としたが、バインダプレート30は無くても良い。
本実施形態および変形例の内燃機関1では、プレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54の背面側(段付き突出部54,54,54の突出側とは反対側)を凹形状に構成したが、プレッシャプレート50の段付き突出部54,54,54の背面側は凹形状でなくても良い。
本実施形態および変形例の内燃機関1では、閉空間IS2内にパイプ70は配設する構成としたが、閉空間IS2内にはパイプ70を配設しなくても良い。
本実施形態および変形例の内燃機関1では、パイプ70は、ウォータポンプへ冷却水を戻すための通路部材としたが、これに限らない。例えば、パイプ70は、ピストンPとシリンダボア12aとの隙間からクランク室内に流入したブローバイガスを吸気系へ還流するための還流通路部材としても良い。
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。