JP7086757B2 - インクジェットインク - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェットインクに関するものである。
たとえば、プラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、インクジェット印刷法によって印刷をする場合は、印刷したインクジェットインクを加熱して乾燥させるのが一般的である。
しかし近時、溶剤として有機溶剤のみを用いるか、もしくは水を併用する場合でも水より有機溶剤を多くすることで速乾性を付与して、加熱乾燥工程を省略可能とした、HEATLESSINK(登録商標)等のインクジェットインクが実用化されつつある。
また、非吸収性の被印刷体の中でも定着性に優れた印刷をするのが難しい、アルミニウム箔、コロナ処理延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の表面に、現状よりも定着性に優れた印刷をするために、種々検討がされている。
非吸収性の被印刷体の表面に、定着性に優れた印刷をするためには、インクジェットインクに、たとえば、有機溶剤可溶の樹脂をバインダとして配合するのが一般的である。
しかし、樹脂を含むインクジェットインクは、サーマル方式のインクジェットプリンタに用いると、当該インクジェットプリンタのヘッド内の、加熱素子の表面やその近傍で樹脂が固化して吐出不良の原因となる、いわゆるコゲーションを生じる場合がある。
とくに、水を全く含まない溶剤系のインクジェットインクにおいて、コゲーションを生じやすい。
ちなみに水を併用したインクジェットインクでは、水が冷却剤として機能するためコゲーションは生じにくいものの、水を含む分だけ速乾性が低下する傾向がある。
分子量が300以上で、室温(5~35℃)で固体状を呈する上、通常の樹脂よりも低分子量の成分、たとえば、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類を、樹脂に代わるバインダとして用いることが検討されている(特許文献1等)。
かかる構成では、バインダとして、室温で固体状を呈するポリエーテル類を用いることで印刷の定着性を確保しながら、当該ポリエーテル類が通常の樹脂よりも低分子量であることから、水を含まない溶剤系でもコゲーションの発生を抑制できるものと期待される。
特開昭63-132083号公報
ところが発明者の検討によると、特許文献1に記載されているように、ポリエーテル類を単に任意の着色剤、および特定の蒸気圧を有する揮発性の有機溶剤と組み合わせるだけでは、とくに印刷の耐擦過性が不足するという課題がある。
すなわち印刷を、たとえば、指先などで擦過した際に、当該印刷が摩擦熱や皮脂などによって軟化したり溶解したりして、かすれたり取れたりしやすくなる場合がある。
本発明の目的は、水を含まない(除く)溶剤系であって、しかもコゲーションを生じにくい上、とくにアルミニウム箔、OPP、PET等の非吸収性の被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性に優れた印刷をすることができるインクジェットインクを提供することにある。
本発明は、
金属錯塩染料、
数平均分子量Mnが4500以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
前記金属錯塩染料と前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをともに分散させて、室温で24時間静置しても析出を生じない第一溶剤、および
前記金属錯塩染料と前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをともに分散させて、室温で静置すると1分間以内に析出を生じるが、前記金属錯塩染料、および前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを別個に分散させて、それぞれ室温で24時間静置しても析出を生じない第二溶剤、
を含み、前記第一溶剤の引火点F(℃)と前記第二溶剤の引火点F(℃)とは式(1):
<F (1)
を満足するインクジェットインクである。
本発明によれば、水を含まない溶剤系であって、しかもコゲーションを生じにくい上、とくにアルミニウム箔、OPP、PET等の非吸収性の被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性に優れた印刷をすることができるインクジェットインクを提供することができる。
上述したように、本発明のインクジェットインクは、
金属錯塩染料、
数平均分子量Mnが4500以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをともに分散させて、室温で24時間静置しても析出を生じない第一溶剤、および
金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをともに分散させて、室温で静置すると1分間以内に析出を生じるが、金属錯塩染料、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを別個に分散させて、それぞれ室温で24時間静置しても析出を生じない第二溶剤、
を含み、かつ第一溶剤の引火点F(℃)と第二溶剤の引火点F(℃)とは式(1):
<F (1)
を満足することを特徴とするものである。
かかる本発明のインクジェットインクによれば、着色剤として有機溶剤可溶の金属錯塩染料を用い、バインダとして、通常の樹脂よりも分子量の小さいポリエーテル類である、数平均分子量Mnが4500以下のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを組み合わせている。
そのため、本発明のインクジェットインクをサーマル方式のインクジェットプリンタに用いても、コゲーションを生じにくくすることができる。
また本発明のインクジェットインクによれば、印刷前の段階から被印刷体の表面に印刷直後までの間は、主に第一溶剤の機能によって、金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとは、インク中に、析出を生じることなく均一に分散している。
しかし、被印刷体の表面に印刷してインクジェットインクの乾燥が始まると、引火点F、Fが式(1)を満足する第一溶剤と第二溶剤とでは、第二溶剤より第一溶剤の方が揮発性が高いため、より速くに揮発する。
そのため、印刷後のインクジェットインク中では第一溶剤の揮発とそれにともなう第二溶剤の比率の増加が始まり、それとほぼ同時に、金属錯塩染料、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの析出が始まる。
そして、第二溶剤の比率が徐々に増加するのにともなって、金属錯塩染料、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの析出が徐々に進行する。
その結果、被印刷体の表面で、徐々に析出しつつある金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとがゆっくり凝集して、当該表面にしっかりと定着される結果、当該表面に、現状よりも定着性、耐擦過性に優れた印刷をすることができる。
したがって、本発明のインクジェットインクによれば、水を含まない溶剤系であって、しかもコゲーションを生じにくい上、とくにアルミニウム箔、OPP、PET等の非吸収性の被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性に優れた印刷をすることが可能となる。
かかる効果は、発明者の検討によると、溶剤可溶の油溶性染料の中でも金属錯塩染料においてのみ、特異的に発現される。
すなわち、金属錯塩染料以外の他の油溶性染料は、第二溶剤の比率が増加しても、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとともに析出したり凝集したりすることはなく、被印刷体の表面にしっかり定着されることはない。
そのため、金属錯塩染料以外の他の油溶性染料では、被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性に優れた印刷をする効果は得られない。
なお本発明では、第一溶剤、第二溶剤の引火点F、Fを、日本工業規格JIS K2265-4:2007「引火点の求め方-第4部:クリーブランド開放法」に規定された測定方法に則って測定した値でもって表すこととする。
〈金属錯塩染料〉
金属錯塩染料としては、第一溶剤、および第二溶剤に対して上述した分散性を示す種々の金属錯塩染料を用いることができる。
金属錯塩染料の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種染料が挙げられる。
(イエロー)
C.I.ソルベントイエロー19、21、25、32、41、61、62、65、79、81、82、83、83:1、88、89、90、151;オリエント化学工業(株)のVALIFAST(登録商標)YELLOW3108、3120、3150、3170、3180、4120、4121;中央合成化学(株)製のNeo SuperColor Yellow C-131;田岡化学(株)製のOleosol(登録商標) Fast Yellow 2G、GCN;BASFジャパン(株)製のOrasol(登録商標)Yellow 141、152、157、190;Sensient社製のIntraplast(登録商標)Yellow 2GLN、3R;CLARIANT(株)製のSavinyl(登録商標)Yellow 2GLS 01、RLS、RLSN、2RLS。
(オレンジ)
C.I.ソルベントオレンジ5、6、11、20、41、54、56、58、59、62、99;オリエント化学工業(株)製のVALIFAST ORANGE2210、3208、3209、3210;中央合成化学(株)製のNeo Super Color Orange C-232;BASFジャパン(株)製のOrasol Orange245、247、251、272;Sensient社製のIntraplast Orange G、RLN;CLARIANT(株)製のSavinyl Orange RLS、RLSE。
(レッド)
C.I.ソルベントレッド8、91、99、100、102、109、118、119、122、124、125、127、130、132、142、160、218、233;オリエント化学工業(株)製のVALIFAST Red 2303、2320、3304、3306、3311、3312、3320、PINK 2310N;中央合成化学(株)製のNeo Super Color RED C-431、PINK C-331;田岡化学(株)製のOleosol Fast RED BL、PINK FB;BASFジャパン(株)製のOrasol Red 330、335、355、363、365、385、395、471、Pink 478;Sensient社製のIntraplast Red GC、 Scarlet 3GL;CLARIANT(株)製のSavinyl Red 3BLS、3GLS、Pink 6BLS。
(ブラウン)
C.I.ソルベントブラウン37、42、43、44;BASFジャパン(株)製のOrasol Brown 324、326;Sensient社製のIntraplast Brown GC。
(ブルー)
C.I.ソルベントブルー24、25、38、44、45、55、64、67、70;オリエント化学工業(株)製のVALIFAST Blue2606、2620、2670;中央合成化学(株)のNeo Super Color Blue C-555;BASFジャパン(株)製のOrasol Blue 825、855;Sensient社製のIntraplast Blue GN;CLARIANT(株)製のSavinyl Blue RS、GLS。
(ブラック)
C.I.ソルベントブラック22、27、28、29、34、35、43;オリエント化学工業(株)製のVALIFAST BLACK3804、3807、3808、3810、3820、3830、3840、3866、3870、3877、3878;中央合成化学(株)のNeo Super Color Black C-832;BASFジャパン(株)製のOrasol Black X45、X51、X55;Sensient社製のIntraplast Black CN、RLS;CLARIANT(株)製のSavinyl Black RLSN 01。
金属錯塩染料は、インクジェットインクの色目、および色濃度に応じて1種または2種以上を、適宜の割合で用いることができる。
ただし金属錯塩染料の割合は、インクジェットインクの総量中の5質量%以上、とくに6質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下、とくに10質量%以下であるのが好ましい。
なお上記割合は、1種のみの金属錯塩染料を用いる場合は、当該1種のみの金属錯塩染料の割合であり、2種以上を併用する場合は、当該2種以上の金属錯塩染料の合計の割合である。
〈ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール〉
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、通常は非イオン系界面活性剤等として用いられる、分子量が300以上で、室温で固体状を呈する上、コゲーションを生じる通常の樹脂よりも低分子量の化合物である。
なお、コゲーションを生じにくいバインダとしては、たとえば、先に説明したポリエチレングリコールや、あるいはアセチレングリコール等の他の、低分子量の化合物を用いることも考えられる。
しかしこれらの化合物は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールに比べて造膜性が低いため、被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性に優れた印刷をすることができない。
また、べたつきを生じて印刷後の速乾性が低下する場合もある。
これに対し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは高い造膜性を有するため、第一溶剤および第二溶剤と組み合わせることにより、前述したメカニズムによって、コゲーションを生じることなしに、被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性、および速乾性に優れた印刷をすることができる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)のブロックまたはランダム共重合体であって、第一溶剤、および第二溶剤に対して前述した分散性を示す種々のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのうち、数平均分子量Mnが4500以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用い
数平均分子量Mnがこの範囲を超えるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは分子量が大きすぎるため、インクジェットインク中での分散安定性が低下して、析出したり、コゲーションを生じたりしやすくなる傾向がある。
これに対し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとして、数平均分子量Mnが上記の範囲にある化合物を選択して用いることにより、インクジェットインク中での分散安定性を向上して、コゲーションが生じるのを有効に抑制することができる。
なお、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、上記のように数平均分子量Mnが4500以下で、しかもPOE含量が40%以下である化合物がさらに好ましい。
OE含量が上記の範囲を超えるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは親水性が強くなりすぎるため、インクジェットインク中での分散安定性が低下して、析出したり、コゲーションを生じたりしやすくなる傾向がある。
これに対し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとして、数平均分子量Mnが4500以下で、かつPOE含量が40%以下の範囲にある化合物を選択して用いることにより、インクジェットインク中での分散安定性を向上して、コゲーションが生じるのをさらに有効に抑制することができる。
かかる条件を満たす、好ましいポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、たとえば、(株)ADEKA製のアデカプルロニック(登録商標)LシリーズのうちL-31〔POE(3)POP(17)、数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕、L-34〔POE(16)POP(17)、数平均分子量Mn:1700、POE含量:40%〕、L-61〔POE(5)POP(30)、数平均分子量Mn:2000、POE含量:10%〕、L-62〔POE(10)POP(30)、数平均分子量Mn:2500、POE含量:20%〕、L-101〔POE(8)POP(55)、数平均分子量Mn:3800、POE含量:10%〕、L-121〔POE(10)POP(65)、数平均分子量Mn:4500:POE含量:10%〕等の1種または2種以上を用いることができる。
とくに、上述した効果をより一層向上することを考慮すると、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、上記の中でも、数平均分子量Mnが4000以下で、かつPOE含量が20%以下である化合物を用いるのが好ましい。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの割合は、金属錯塩染料に対して2.5質量%以上、とくに3質量%以上であるのが好ましく、60質量%以下、とくに50質量%以下であるのが好ましい。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの割合が上記の範囲未満、あるいは上記の範囲を超える場合には、このいずれにおいても、印刷の耐擦過性が低下する場合がある。
〈第一溶剤〉
第一溶剤としては、前述したように金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをともに同一系中に分散させて、室温で24時間静置しても析出を生じない種々の有機溶剤を用いることができる。
第一溶剤としては、たとえば、エステル、エーテル、ケトン等の溶解力の高い溶剤を用いることができる。
ただし、インクジェットプリンタのヘッドの構成部品、特にプラスチック部品などを溶解したりせず、かつ安全性の高いケトンが好ましい。
ケトンの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、アセトン〔ジメチルケトン、炭素数:3、引火点F:-10.0℃〕、2-ブタノン〔メチルエチルケトン(MEK)、炭素数:4、引火点F:-5.6℃〕、2-ペンタノン〔メチルプロピルケトン(MPK)、炭素数:5、引火点F:7.2℃〕、3-ペンタノン〔ジエチルケトン(DEK)、炭素数:5、引火点F:13.0℃〕、2-メチル-4-ペンタノン〔メチルイソブチルケトン(MIBK)、炭素数:6、引火点F:24.0℃〕、2,6-ジメチル-4-へプタノン〔ジイソブチルケトン(DIBK)、炭素数:9、引火点F:60.0℃〕等の1種または2種以上を用いることができる。
ただし、炭素数が6以上のケトンは沸点が高いため、インクジェットインクの吐出性や速乾性が低下して、加熱乾燥工程が必要となるなど、水との差別化が難しくなる。
また、組み合わせる第二溶剤にもよるが、当該第二溶剤の引火点Fよりも引火点Fが高くなって、先に説明したメカニズムによる、印刷の定着性、耐擦過性を高める効果が得られない場合もある。
すなわち、被印刷体の表面で、金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをゆっくりと凝集させて、当該表面にしっかりと定着させることができず、印刷の定着性や耐擦過性が低下する場合がある。
また、炭素数が3であるアセトンは引火点Fが低すぎて、組み合わせる第二溶剤にもよるが、当該第二溶剤の引火点Fとの差が大きくなりすぎる傾向がある。
そのため、やはり上記のメカニズムによる、印刷の定着性、耐擦過性を高める効果が得られない場合がある。
したがって、第一溶剤としては、炭素数が4または5のケトン、とくにMEK、DEKを用いるのが好ましい。
〈第二溶剤〉
第二溶剤としては、前述したように、金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをともに同一系中に分散させて、室温で静置すると1分間以内に析出を生じるが、金属錯塩染料、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを別個に分散させて、それぞれ室温で24時間静置しても析出を生じない種々の有機溶剤を用いることができる。
とくに、ケトン等の第一溶剤と組み合わせる第二溶剤としては、アルコールが好ましい。
第二溶剤としてアルコールを用いることにより、被印刷体の表面で、金属錯塩染料をポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとともにゆっくりと凝集させて、当該表面にしっかりと定着させる効果をより一層向上することができる。
アルコールの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、メタノール〔炭素数:1、引火点F:16.0℃〕、エタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕、1-プロパノール〔炭素数:3、引火点F:27.0℃〕、1-ブタノール〔炭素数:4、引火点F:40.0℃〕、2-ブタノール〔炭素数:4、引火点F:24.4℃〕、2-メチル-プロパン-1-オール〔イソブチルアルコール、炭素数:4、引火点F:27.5℃〕、2-メチル-プロパン-2-オール〔tert-ブチルアルコール、炭素数:4、引火点F:8.9℃〕等の1種または2種以上を用いることができる。
ただし、炭素数が4以上のアルコールは沸点が高いため、インクジェットインクの吐出性や速乾性が低下して、加熱乾燥工程が必要となるなど、水との差別化が難しくなる。
そのため、第二溶剤としては炭素数が3以下で、かつ引火点Fが30℃以下のアルコール、中でも炭素数が2以下で、かつ引火点Fが20℃以下であるメタノールおよび/またはエタノール、とくにエタノールを用いるのが好ましい。
〈両溶剤の引火点、割合〉
第一溶剤、および第二溶剤としては、上記例示の各種溶剤の中から、第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとが式(1):
<F (1)
を満足するものを選択して組み合わせる必要がある。
これにより、先に説明したメカニズムによって、被印刷体の表面で、金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをゆっくりと凝集させて、当該表面にしっかりと定着させることができ、現状よりも定着性、耐擦過性に優れた印刷をすることができる。
ただし、第一溶剤と第二溶剤としては、それぞれの引火点F、Fができるだけ近いものを組み合わせるのが好ましい。
詳しくは、第一溶剤、第二溶剤として、さらに引火点F、Fが式(2):
-F≦30℃ (2)
を満足するものを選択して用いるのが好ましい。
引火点F、Fの差が式(2)の範囲を超える場合には、両溶剤の揮発速度が違い過ぎるため、上述したメカニズムによる、印刷の定着性、耐擦過性を高める効果が十分に得られない場合がある。
これに対し、第一溶剤、第二溶剤として、引火点F、Fが式(1)、式(2)をともに満足するものを選択して用いることにより、さらに定着性、耐擦過性に優れた印刷をすることができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、引火点F、Fの差は、上記の範囲でも22℃以下であるのが好ましい。
なお第一溶剤として、引火点Fの異なる2種以上を併用する場合は、併用する2種以上の第一溶剤のうち最も量の多い溶剤、いわゆる主溶剤の引火点を、第一溶剤の引火点Fとして、引火点F、Fの差を求めることとする。
第二溶剤についても同様である。
第二溶剤として、引火点Fの異なる2種以上を併用する場合は、併用する2種以上の第二溶剤のうち最も量の多い主溶剤の引火点を、第二溶剤の引火点Fとして、引火点F、Fの差を求めることとする。
また、インクジェットインクの吐出性や速乾性等を向上することを考慮すると、第二溶剤としては、前述したように、引火点Fが30℃以下のアルコール、中でも20℃以下であるメタノールおよび/またはエタノール、とくにエタノールを単独で用いるのが好ましい。
第一溶剤と第二溶剤の総量中に占める第一溶剤の割合は15質量%以上、とくに30質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下、とくに40質量%以下であるのが好ましい。
第一溶剤の割合がこの範囲未満では、とくにポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの分散安定性が低下して、たとえば、インクジェットインクの貯蔵中等に析出を生じたりする場合がある。
一方、第一溶剤の割合が上記の範囲を超える場合には、インクジェットインクの速乾性が高くなりすぎる。
そのため、前述したように被印刷体の表面で、金属錯塩染料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをゆっくりと凝集させて、当該表面にしっかりと定着させることができず、印刷の定着性や耐擦過性が低下する場合がある。
また、たとえば、インクジェットインクをオンデマンド型のインクジェットプリンタに使用すると、とくに印刷のデキャップタイムにインクジェットプリンタのノズルで目詰まり等して、印刷の再開時にかすれ等を生じやすい場合がある。
デキャップタイムとは、オンデマンド型のインクジェットプリンタに複数設けられたノズルのうち、間欠印刷時に、印刷パターンに応じてインク滴が吐出されない待機状態とされたノズル内のインクジェットインクが、外気にさらされている時間を指す。
インクジェットプリンタには、通常、その運転停止時に、ノズル内のインクジェットインクが外気にさらされることで乾燥して、目詰まり等を生じたりしないようにするために、ノズルを閉じる(キャップする)機能が付与されているのが一般的である。
しかし印刷時にはキャップは解除されているため、とくに、間欠印刷時に待機状態となるノズルは、次にインク滴が吐出されるまでの間、ノズルが閉じられていない状態(デキャップの状態)が続く。
そしてその間、ノズル内のインクジェットインクは外気にさらされ続けることになるため、上記時間、つまりデキャップタイムが長いほど、ノズルの目詰まり等を生じやすくなる傾向がある。
デキャップタイムにノズルの目詰まり等を生じにくい特性を、以下では「間欠印刷性」の良否として評価することとする。
目詰まり等を生じないデキャップタイムが長ければ長いほど、インクジェットインクは、間欠印刷性が良好であると評価することができる。
なお、前述した第一溶剤の割合は、1種のみの第一溶剤を用いる場合は、当該1種のみの第一溶剤の割合であり、2種以上を併用する場合は、当該2種以上の第一溶剤の合計の割合である。
また第二溶剤の割合は、第一溶剤の残量である。
すなわち第二溶剤の割合は、第一溶剤と第二溶剤の総量中の50質量%以上、とくに60質量%以上であるのが好ましく、85質量%以下、とくに70質量%以下であるのが好ましい。
上記割合は、やはり1種のみの第二溶剤を用いる場合は、当該1種のみの第二溶剤の割合であり、2種以上を併用する場合は、当該2種以上の第二溶剤の合計の割合である。
〈その他〉
インクジェットインクには、本発明の効果を阻害しない範囲で、とくにコゲーションを生じない範囲で、少量の樹脂を配合してもよい。
樹脂を少量配合することで、印刷の定着性、耐擦過性をより一層向上することができる。
樹脂としては、第一溶剤および/または第二溶剤に可溶の任意の樹脂を用いることができる。
かかる樹脂としては、たとえば、ノボラック樹脂等のフェノール樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
樹脂の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、BASFジャパン(株)製のJONCRYL(登録商標)シリーズの各種アクリル樹脂の1種または2種以上を用いることができる。
樹脂の割合は、インクジェットインクの総量の1質量%以上であるのが好ましく、5質量%以下であるのが好ましい。
樹脂の割合がこの範囲未満では、当該樹脂を配合することによる、印刷の定着性、耐擦過性をさらに向上する効果が十分に得られない場合がある。
一方、樹脂の割合が上記の範囲を超える場合には、コゲーションを生じやすくなる場合がある。
これに対し、樹脂の割合を上記の範囲とすることにより、コゲーションが生じるのを抑制しながら、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとの相乗効果によって、印刷の定着性、耐擦過性をさらに向上することができる。
他の成分としては、さらにポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール以外の他の界面活性剤や、粘着性付与剤等の各種添加剤を、任意の割合で配合することができる。
上記各成分を含む本発明のインクジェットインクは、先述したオンデマンド型のインクジェットプリンタに、好適に使用することができる。とくに、オンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタに好適に使用することができる。
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
下記の各成分を配合したのち、5μmのメンブランフィルタを用いてろ過してインクジェットインクを調製した。
Figure 0007086757000001
表中の各成分は下記の通り。
着色剤:金属錯塩染料〔前出のオリエント化学工業(株)製のVALIFAST BLACK 3810〕
バインダ:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール〔前出のアデカプルロニックL-31、POE(3)POP(17)、数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕
第一溶剤:MEK〔炭素数:4、引火点F:-5.6℃〕
第二溶剤:エタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例2〉
第一溶剤として、DEK〔炭素数:5、引火点F:13.0℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは3.0℃であった。
〈実施例3〉
第二溶剤として、エタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕44質量%と、1-ブタノール〔炭素数:4、引火点F:40.0℃〕13質量%とを併用したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと、第二溶剤としての2種のアルコールの引火点Fとはいずれも式(1)を満足し、かつ第一溶剤の引火点Fと、第二溶剤のうち主溶剤であるエタノールの引火点Fとの差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例4〉
第二溶剤として、1-ブタノール〔炭素数:4、引火点F:40.0℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは45.6℃であった。
〈実施例5〉
第一溶剤として、アセトン〔炭素数:3、引火点F:-10.0℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは26.0℃であった。
〈実施例6〉
バインダとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである、前出のアデカプルロニックL-34〔POE(16)POP(17)、数平均分子量Mn:1700、POE含量:40%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例7〉
バインダとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである、前出のアデカプルロニックL-61〔POE(5)POP(30)、数平均分子量Mn:2000、POE含量:10%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例8〉
バインダとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである、前出のアデカプルロニックL-62〔POE(10)POP(30)、数平均分子量Mn:2500、POE含量:20%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例9〉
バインダとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである、前出のアデカプルロニックL-101〔POE(8)POP(55)、数平均分子量Mn:3800、POE含量:10%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例10〉
バインダとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである、前出のアデカプルロニックL-121〔POE(10)POP(65)、数平均分子量Mn:4500:POE含量:10%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例11〉
バインダとしてのアデカプルロニックL-31〔POE(3)POP(17)、数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕の割合を3.5質量%、第二溶剤としてのエタノールの割合を56.5質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例12〉
バインダとしてのアデカプルロニックL-31〔POE(3)POP(17)、数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕の割合を4質量%、第二溶剤としてのエタノールの割合を56質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例13〉
バインダとしてのアデカプルロニックL-31〔POE(3)POP(17)、数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕の割合を0.3質量%、第二溶剤としてのエタノールの割合を59.7質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例14〉
バインダとしてのアデカプルロニックL-31〔POE(3)POP(17)、数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕の割合を0.2質量%、第二溶剤としてのエタノールの割合を59.8質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例15〉
第一溶剤としてのMEK〔炭素数:4、引火点F:-5.6℃〕の割合を13.5質量%、第二溶剤としてのエタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕の割合を76.5質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例16〉
第一溶剤としてのMEK〔炭素数:4、引火点F:-5.6℃〕の割合を27質量%、第二溶剤としてのエタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕の割合を63質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例17〉
第一溶剤としてのMEK〔炭素数:4、引火点F:-5.6℃〕の割合を36質量%、第二溶剤としてのエタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕の割合を54質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例18〉
第一溶剤としてのMEK〔炭素数:4、引火点F:-5.6℃〕の割合を45質量%、第二溶剤としてのエタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕の割合を45質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈実施例19〉
バインダとしてのアデカプルロニックL-31〔POE(3)POP(17)、数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕の割合を2質量部として、さらにアクリル樹脂〔前出のBASFジャパン(株)製のJONCRYL682〕1質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈比較例1〉
バインダとしてのポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを配合せず、第二溶剤としてのエタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕の割合を60質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈比較例2〉
バインダとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールに代えてアクリル樹脂〔前出のBASFジャパン(株)製のJONCRYL682〕15質量%を配合し、第一溶剤としてのMEK〔炭素数:4、引火点F:-5.6℃〕の割合を31質量%、第二溶剤としてのエタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕の割合を47質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈比較例3〉
バインダとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールに代えてアクリル樹脂〔前出のBASFジャパン(株)製のJONCRYL682〕15質量%を配合し、第一溶剤としてのMEKに代えて超純水47質量%を配合するとともに、第二溶剤としてのエタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕の割合を31質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例4〉
着色剤として、金属錯塩染料でない油溶性染料〔オリエント化学工業(株)製のOIL BLACK860〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈比較例5〉
第一溶剤として、DIBK〔炭素数:9、引火点F:60.0℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足せず、両者の差F-Fは-44.0℃であった。
〈比較例6〉
第一溶剤を配合せず、第二溶剤としてのエタノール〔炭素数:2、引火点F:16.0℃〕の割合を90質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製したが、金属錯塩染料、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを良好に分散させることができず析出を生じたため、後述する各試験は実施しなかった。
〈比較例7〉
第一溶剤としてのMEK〔炭素数:4、引火点F:-5.6℃〕の割合を90質量%として、第二溶剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例8〉
バインダとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールに代えてアセチレングリコール〔日信化学工業(株)製のオルフィン(登録商標)E1020〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
第一溶剤の引火点Fと第二溶剤の引火点Fとは式(1)を満足し、両者の差F-Fは21.6℃であった。
〈連続印刷性試験〉
オンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタ〔ビデオジェット(株)製のPrint Mail Wide Array〕を使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、アルミニウム箔の表面に、300×600dpiの解像度で0.5インチ×0.5インチのベタ画像を連続印刷した。
そして印刷を観察して、インクジェットインクの吐出不良による印刷の欠けや抜けを生じなかった印刷回数を記録し、下記の基準で連続印刷性を評価した。
×:1万回未満。
△:1万回以上、2万回未満。
○:2万回以上。
〈耐擦過性試験〉
連続印刷性試験で使用したのと同じインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、アルミニウム箔の表面に、0.2pt(線幅0.07mm)のバーコードを印刷した。
次いで、印刷したバーコードの上に、皮脂の代用として植物油を滴下して一定時間待ってからガーゼで10往復拭き取った際の変化を観察して、下記の基準で耐油性を評価した。
×:滴下から5秒間待ってから拭き取ってもバーコードの一部に伸びが見られ、欠けも見られた。
△:滴下から5秒間待ってから拭き取るとバーコードの一部に溶解による伸びが見られたが、欠けは見られなかった。
○:滴下から5秒間待ってから拭き取ってもバーコードに変化は見られなかった。
◎:拭き取りの回数をさらに10往復追加して20往復にしても、バーコードに変化は見られなかった。
〈速乾性試験〉
連続印刷性試験で使用したのと同じインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、アルミニウム箔の表面に、300×300dpiの解像度で約8.5ptの文字を印刷した。
次いで、印刷した文字を一定時間待ってから綿棒でこすっても文字が取れなくなるのに要する時間(乾燥時間)を確認して、下記の基準で速乾性を評価した。
×:10秒以上。
△:5秒以上、10秒未満。
○:5秒未満。
〈分散安定性試験〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをスクリュー管瓶に入れて0℃、-20℃の低温環境下で1日間静置後、瓶内のインクジェットインクに析出が生じたか否かを観察して、下記の基準で分散安定性を評価した。
×:0℃、-20℃のいずれにおいても析出が見られた。
△:-20℃では析出が見られたが、0℃では析出は見られなかった。
○:0℃、-20℃のいずれにおいても析出は見られなかった。
〈間欠印刷性試験〉
連続印刷性試験で使用したのと同じインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、アルミニウム箔の表面に、300×300dpiの解像度で約8.5ptの文字を印刷した。
次いで、インクジェットプリンタを一定時間、デキャップの状態で静置した後に再び印刷した際に、かすれ等のない明瞭な印刷が可能であった静置時間を記録して、下記の基準で間欠印刷性を評価した。
×:1分間未満
△:1分間以上、10分間未満
○:10分間以上
以上の結果を表2~表7に示す。なお表中の「PEPPG」は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを示す。
Figure 0007086757000002
Figure 0007086757000003
Figure 0007086757000004
Figure 0007086757000005
Figure 0007086757000006
Figure 0007086757000007
表2~表7の実施例1~19、比較例1~8の結果より、金属錯塩染料、数平均分子量Mnが4500以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとともに、当該両成分の分散性が異なり、なおかつ引火点がF<Fを満足する第一溶剤と第二溶剤とを併用することで、コゲーションを生じにくい上、非吸収性の被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性に優れた印刷をすることができるインクジェットインクが得られることが判った。
また、とくに実施例1~5の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、第一溶剤と第二溶剤としては、引火点の差F-Fが30℃以下、とくに22℃以下であるものを組み合わせて用いるのが好ましいことが判った。
また、インクジェットインクの吐出性や速乾性を向上することを考慮すると、第二溶剤としては、引火点Fが30℃以下、とくに20℃以下のアルコールを用いるのが好ましいことが判った。
実施例1、6~10の結果より、インクジェットインクの分散安定性を向上することを考慮すると、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、数平均分子量Mnが、上記のように4500以下、とくに4000以下で、かつPOE含量が40%以下、とくに20%以下であるものを選択して用いるのが好ましいことが判った。
実施例1、11~14の結果より、印刷の定着性、耐擦過性をさらに向上することを考
慮すると、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの割合は、金属錯塩染料に対して2.5質量%以上、とくに3質量%以上であるのが好ましく、60質量%以下、とくに50質量%以下であるのが好ましいことが判った。
実施例1、15~18の結果より、インクジェットインクの分散安定性や間欠印刷性、そして印刷の定着性、耐擦過性をさらに向上することを考慮すると、第一溶剤と第二溶剤の総量中に占める第一溶剤の割合は15質量%以上、とくに30質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下、とくに40質量%以下であるのが好ましいことが判った。
さらに実施例1、19の結果より、バインダとしては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとともに樹脂を併用してもよく、その場合には印刷の定着性、耐擦過性をさらに向上できることが判った。

Claims (6)

  1. 金属錯塩染料、
    数平均分子量Mnが4500以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
    前記金属錯塩染料と前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをともに分散させて、室温で24時間静置しても析出を生じない第一溶剤、および
    前記金属錯塩染料と前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとをともに分散させて、室温で静置すると1分間以内に析出を生じるが、前記金属錯塩染料、および前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを別個に分散させて、それぞれ室温で24時間静置しても析出を生じない第二溶剤、
    を含み、前記第一溶剤の引火点F(℃)と前記第二溶剤の引火点F(℃)とは式(1):
    <F (1)
    を満足するインクジェットインク。
  2. 前記第一溶剤の引火点F(℃)と前記第二溶剤の引火点F(℃)とは、さらに式(2):
    -F≦30℃ (2)
    を満足する請求項1に記載のインクジェットインク。
  3. 前記第二溶剤の引火点F(℃)は30℃以下である請求項1または2に記載のインクジェットインク。
  4. 前記第一溶剤は炭素数4~5のケトン、前記第二溶剤は炭素数1~3のアルコールである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  5. 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、ポリオキシエチレン含量が40%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  6. 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの割合は、前記金属錯塩染料の2.5質量%以上、60質量%以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
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