以下、添付図面を参照して、本発明に係る照明装置について詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1は、実施形態に係る顕微鏡装置の概略構成図である。図1に示されるように、構造化照明顕微鏡装置である顕微鏡装置100は、光源101と、光変調ユニット102と、コリメータ103と、ビームスプリッタ104と、対物レンズ105と、集光レンズ106と、受光素子107と、制御部108と、表示装置109とを有する。光変調ユニット102及び制御部108は、光源101から出射された光をコリメータ103へ向けて出射する照明装置を構成する。ただし、照明装置は、本実施形態において示される光変調ユニット102の全ての構成要素を有していなくてもよい。また、照明装置は、本実施形態において示される光変調ユニット102の構成要素以外の構成要素を有していてもよい。
光変調ユニット102の下方には、光軸OA1に沿って配置される光源101が描かれている。また光変調ユニット102の側方には、光軸OA1と直交し、コリメータ103によって規定される光軸OA2に沿って一列に配置されたコリメータ103及びビームスプリッタ104が描かれている。光軸OA2と直交し、対物レンズ105と集光レンズ106とによって規定される光軸OA3に沿ってビームスプリッタ104、対物レンズ105、集光レンズ106及び受光素子107が一列に配置される。なお、構造化照明光としての干渉縞を試料(標本)に投影する構造化照明装置は、光源101、光変調ユニット102、コリメータ103、ビームスプリッタ104及び対物レンズ105を有する。なお、構造化照明装置に制御部108が設けられていてもよい。また、構造化照明装置に光源101が設けられていなくてもよい。
光源101は、直線偏光である照明光(レーザ光)を出力する。そのために、光源101は、例えば、半導体レーザを有する。あるいは、光源101は、アルゴンイオンレーザといったガスレーザ、またはYAGレーザといった固体レーザを有していてもよい。光源101から出力されるレーザ光は光変調ユニット102に出射される。光源101から出力されるレーザ光が直線偏光でない場合、光源101とコリメータ103との間に、レーザ光を直線偏光にするために光学素子が配置されてもよい。さらにまた、光源101からの光は、例えば、光ファイバを介して光変調ユニット102に出射するようにしてもよい。
光源101は、所定の波長域に含まれる互いに異なる波長を有する光を出力する第1光源101A及び第2光源101Bを有する。第1光源101Aが出力する光は、例えば450nm~495nmの波長域に含まれる波長を有する青色レーザ光であり、第2光源101Bが出力する光は、例えば620nm~750nmの波長域に含まれる波長を有する赤色レーザ光である。
光変調ユニット102に入射された、光源101から放射されたレーザ光は、光変調ユニット102から出射され、光軸OA2からの複数の放射方向の何れかに沿った複数の次数の回折光に分離される。各次数の回折光の偏光方向は、顕微鏡装置100の利用者によって設定された方向に回転される。例えば、各次数の回折光の偏光方向は、試料200にS偏光で入射するように回転されてもよい。なお、各回折光の回折方向又はレーザ光を回折させる回折格子の位相は、モアレ縞の画像の撮影の度に変更される。各次数の回折光は、コリメータ103により集光されビームスプリッタ104により反射された後、対物レンズ105の瞳面(後側焦点面)において集光される。対物レンズ105の瞳面(後側焦点面)において集光された各次数の回折光は、対物レンズ105から平行光となって射出し、試料200の表面または内部に設定された、観察対象となる物体面上において干渉縞が形成される。物体面で反射または散乱され、あるいは物体面から蛍光発光した光は、再び対物レンズ105を通った後、ビームスプリッタ104を直進する。その後、物体面で反射または散乱され、あるいは物体面から蛍光発光した光は、集光レンズ106によって受光素子107上に集光される。このように、コリメータ103、ビームスプリッタ104及び対物レンズ105は、青色レーザ光による各次数の回折光を干渉させて青色干渉縞を形成し、赤色レーザ光による各次数の回折光を干渉させて赤色干渉縞を形成し、青色干渉縞及び赤色干渉縞で標本を照明する照明光学系として機能する。
なお、理解を容易にするために図示していないが、顕微鏡装置100は、光路上に、球面収差用補償光学系などの各種の補償光学系、または光路を曲げるためのミラーを有していてもよい。
受光素子107は、アレイ状に配列された複数のCCD、C-MOSなどの撮像素子を有し、構造化照明光である干渉縞と試料の構造により生じるモアレ縞の画像を生成し、そのモアレ縞の画像を制御部108へ出力する。受光素子107は、モアレ縞の画像として、青色干渉縞で照明された標本の像である青色変調像及び赤色干渉縞で照明された標本の像である赤色変調像を生成する。
制御部108は、例えば、プロセッサと、メモリと、制御部108を顕微鏡装置100の各部と接続するためのインターフェース回路とを有する。制御部108は、光源101に対して所定の電力を供給することにより、光源101にレーザ光を出力させる。制御部108は、不図示の駆動回路を介して光変調ユニット102が有する液晶素子に印加する電圧を制御することで、光変調ユニット102から出力される各次数の回折光の回折方向、レーザ光を回折させる回折格子の位相などを制御する。
制御部108は、受光素子107から受信した複数のモアレ縞の画像から試料200の物体面の超解像画像(標本の復調像であり、以下では、便宜上試料画像と呼ぶ)を生成し、表示装置109に表示する。なお、複数のモアレ縞の画像から試料画像を得るための画像演算の詳細は、例えば、WO2006/109448に開示されている。
表示装置109は、例えば、タッチパネル式の表示装置、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等であり、制御部108が生成した画像等を出力する。
図2は、光変調ユニット102の模式図である。
光変調ユニット102は、第1光源101A及び第2光源101Bから出射されたレーザ光を、複数の方向のうちの何れか一つの方向に沿って回折させて複数の次数の回折光を生成する。そのために、光変調ユニット102は、光軸OA2に沿って、回折素子11側から順に、回折素子11と、第1位相変調素子12と、偏光ビームスプリッタ13と、第2位相変調素子14と、光変調サブユニット10とを有する。光変調サブユニット10は、シャッター素子15と、偏光方向回転素子16とを有する。ただし、光変調サブユニット10は、本実施形態において示される光変調サブユニット10の全ての構成要素を有していなくてもよい。また、光変調サブユニット10は、本実施形態において示される光変調サブユニット10の構成要素以外の構成要素を有していてもよい。
回折素子11は、空間光変調素子であり、構造化照明で利用される複数の位相の内の選択された一つの位相を有し、複数の方向の内の選択された一つの方向に沿ってレーザ光を回折させて複数の次数の回折光を生成するための回折格子を表示させる。回折素子11は、第1光源101Aが出射した青色レーザ光を回折させて複数の0次及び±1次の青色回折光を生成して出射し、第2光源101Bが出射した赤色レーザ光を回折させて複数の0次及び±1次の赤色回折光を生成して出射する。そのために、回折素子11は、例えば、液晶層の少なくとも一方の面(すなわち、反射側の面)に、2次元に配列された複数の画素ごとに独立した駆動電極を有する液晶素子で構成される。このような液晶素子は、液晶層の他方の面(すなわち、透過側の面)に、光を制御する領域全体を覆うように設けられた透明電極と各画素の駆動電極との間に印加する電圧を画素ごとに調節することで、画素ごとに独立して透過率または屈折率を調節できる。本実施形態では、回折素子11として、例えば、Liquid crystal on silicon(LCOS)といった、反射型の液晶素子を利用する。
制御部108は、回折素子11の各画素に印加する電圧を調節することで、任意の回折方向に各レーザ光を回折させる回折格子を表示させることができる。例えば、各レーザ光を、所定の方向に回折させる場合、制御部108は、その方向に、透過率または屈折率が周期的に変化するように、回折素子11に回折格子を表示させる。
また、制御部108は、干渉縞(構造化照明)の位相をシフトするために、回折素子11に表示させる回折格子の各格子線の位置を、格子線と直交する方向、すなわち各レーザ光が回折する方向に沿って、位相に応じた量だけシフトさせる。
図3は、回折素子11による各レーザ光の回折について説明するための模式図である。ただし、図3において、第1位相変調素子12は、図示されていない。
第2光源101Bが出射する赤色レーザ光211Bの波長は、第1光源101Aが出射する青色レーザ光211Aの波長より長い。そのため、図3に示すように、回折素子11の格子法線と、赤色レーザ光211Bを回折素子11で回折した±1次の赤色回折光212B、213Bとのなす回折角は、回折素子11の格子法線と、青色レーザ光211Aを回折素子11で回折した±1次の青色回折光212A、213Aとのなす回折角より大きくなる。ただし、回折素子11から出射された±1次の赤色回折光212B、213Bと、回折素子11から出射された±1次の青色回折光212A、213Aは、偏光ビームスプリッタ13を透過する際に、偏光ビームスプリッタ13の表面や内部で屈折する場合があるが、そのような屈折は、ここでは考慮されていない。
以下、第1光源101Aおよび第2光源101Bから同時に青色レーザ光211Aと赤色レーザ光211Bが射出される場合について説明するが、第1光源101Aおよび第2光源101Bから青色レーザ光211Aと赤色レーザ光211Bとは同時に射出されなくてもよい。回折素子11は、0次の赤色回折光及び青色回折光を光軸OA2の方向に向かって同時に回折させる。また、回折素子11は、光軸OA2からの複数の放射方向の内の第1の方向に沿って+1次の青色回折光及び赤色回折光を同時に回折させ、さらに第1の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って-1次の青色回折光及び赤色回折光を同時に回折させる。同様に、回折素子11は、第1の方向から時計回りに120°回転した第2の方向に沿って+1次の青色回折光及び赤色回折光を同時に回折させ、さらに第2の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って-1次の青色回折光及び赤色回折光を同時に回折させる。同様に、回折素子11は、第2の方向から時計回りに120°回転した第3の方向に沿って+1次の青色回折光及び赤色回折光を同時に回折させ、さらに第3の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って-1次の青色回折光及び赤色回折光を同時に回折させる。このように、回折素子11は、0次及び±1次の赤色回折光及び青色回折光を7つの方向に向かって回折させる。
第1位相変調素子12は、例えばλ/2波長板であり、偏光ビームスプリッタ13と回折素子11の間に配置され、回折素子11から出射された各回折光の偏光方向を、各回折光が偏光ビームスプリッタ13を効率よく透過するように調整する。
偏光ビームスプリッタ13は、第1光源101A及び第2光源101Bから出射されたレーザ光を回折素子11へ向けて反射させるとともに、第1位相変調素子12から出射された回折光を透過させる。
第2位相変調素子14は、例えばλ/2波長板であり、偏光ビームスプリッタ13と光変調サブユニット10の間に配置され、レーザ光の偏光方向を調整する。
シャッター素子15は、入射した複数の±1次の青色回折光及び複数の±1次の赤色回折光を選択的に透過させる。そのために、シャッター素子15は、光軸OA2に沿って、回折素子11側から順に、液晶素子15Aと検光子15Bとを有する。
図4は、回折光が入射する側から見た液晶素子15Aの概略正面図であり、図5は、図4の矢印A、A’で示される線における、液晶素子15Aの概略側面断面図である。
図5に示すように、液晶素子15Aは、液晶層20と、光軸OA2に沿って液晶層20の両側に略平行に配置された透明基板21、22と、透明基板21と液晶層20の間に配置された透明電極23と、液晶層20と透明基板22の間に配置された対向電極24とを有する光変調素子として構成される。液晶層20は、例えばネマティック液晶を含む。液晶層20に含まれる液晶分子27は、透明基板21及び22と、シール部材28との間に封入されている。液晶層20の厚さは、液晶素子15Aが半波長板として動作するのに十分な厚さ、例えば、5μmとされる。ただし、液晶素子15Aは、本実施形態において示される液晶素子15Aの構成要素の全てを有していなくてもよい。また、液晶素子15Aは、本実施形態において示される液晶素子15Aの構成要素以外の構成要素を有していてもよい。
透明基板21、22は、例えば、ガラスまたは樹脂など、光源101が発するレーザ光に対して透明な材料により形成される。透明電極23、24は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)と呼ばれる、酸化インジウムに酸化スズを添加した材料により形成される。透明電極23と液晶層20の間には配向膜25が配置され、対向電極24と液晶層20の間には配向膜26が配置される。配向膜25、26は、液晶分子27を所定の方向に配向させる。
図4に示すように、液晶層20は、光軸OA2の延長線が通過する位置に配置された円形状の中央透過領域20Aと、中央透過領域20Aを囲うドーナツ形状を有する第1透過領域20Bと、第1透過領域20Bを囲うドーナツ形状を有する第2透過領域20Cとを有する。第1透過領域20Bは、光軸OA2に直交する面内で円周方向に沿って6等分に分割された6個の小領域20B1~20B6を有する。また、第2透過領域20Cは、光軸OA2に直交する面内で円周方向に沿って6等分に分割された6個の小領域20C1~20C6を有する。
中央透過領域20Aは、各回折光のうちの0次の青色回折光及び赤色回折光が入射する位置に配置され、第1透過領域20Bは、±1次の青色回折光が透過する位置に配置され、第2透過領域20Cは、±1次の赤色回折光が透過する位置に配置される。
第1透過領域20Bの小領域20B1には、第1の方向に沿って回折された+1次の青色回折光が入射し、小領域20B1と中央透過領域20Aを挟んで対向する小領域20B4には、第1の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って回折された-1次の青色回折光が入射する。また、小領域20B2には、第2の方向に沿って回折された+1次の青色回折光が入射し、小領域20B2と中央透過領域20Aを挟んで対向する小領域20B5には、第2の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って回折された-1次の青色回折光が入射する。さらに、小領域20B3には、第3の方向に沿って回折された+1次の青色回折光が入射し、小領域20B3と中央透過領域20Aを挟んで対向する小領域20B6には、第3の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って回折された-1次の青色回折光が入射する。
第2透過領域20Cの小領域20C1には、第1の方向に沿って回折された+1次の赤色回折光が入射し、小領域20C1と中央透過領域20Aを挟んで対向する小領域20C4には、第1の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って回折された-1次の赤色回折光が入射する。また、小領域20C2には、第2の方向に沿って回折された+1次の赤色回折光が入射し、小領域20C2と中央透過領域20Aを挟んで対向する小領域20C5には、第2の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って回折された-1次の赤色回折光が入射する。さらに、小領域20C3には、第3の方向に沿って回折された+1次の赤色回折光が入射し、小領域20C3と中央透過領域20Aを挟んで対向する小領域20C6には、第3の方向とは光軸OA2を中心として線対称となる方向に沿って回折された-1次の赤色回折光が入射する。
液晶層20の各透過領域(小領域)に封入された液晶分子27は、例えば、ホモジニアス配向される。各液晶分子27は、入射する回折光の偏光方向202に対して45°(75°-30°)をなす方向204に配向される。
図6は、回折光が入射する側から見た透明電極23の概略正面図である。
透明電極23は、液晶層20の中央透過領域20A、第1透過領域20B及び第2透過領域20Cのそれぞれに電圧を印加する中央透明電極23A、第1透明電極23B及び第2透明電極23Cを有する。第1透明電極23Bは、第1透過領域20Bを複数の小領域20B1~B6に分割するために、各小領域20B1~B6に電圧を印加する複数の電極23B1~B6を有する。第2透明電極23Cは、第2透過領域20Cを複数の小領域20C1~C6に分割するために、各小領域20C1~C6に電圧を印加する複数の電極23C1~C6を有する。各電極23A、B1~B6、C1~C6は、液晶層20の各領域毎に、各領域の回折光が入射する側の面を覆い、互いに絶縁されている。各電極23A、B1~B6、C1~C6は、それぞれ配線23A’、B1’~B6 ’、C1’~C6 ’を介して制御部108に接続される。
対向電極24は、中央透明電極23A、第1透明電極23B及び第2透明電極23Cと対向する透明なベタ電極である。
検光子15Bは、偏光方向が所定の方向である回折光のみを透過させる。検光子15Bは、例えば偏光板である。
偏光方向回転素子16は、光変調ユニット102が出力する回折光の偏光方向が、利用者によって設定された方向になるように、シャッター素子15を透過した青色回折光及び赤色回折光の偏光方向を回転する。そのために、偏光方向回転素子16は、第2液晶素子16A及び第3液晶素子16Bを有する。
図7は、回折光が入射する側から見た第2液晶素子16Aの概略正面図である。
第2液晶素子16Aも、シャッター素子15が有する液晶素子15Aと同様に、第2液晶層と、光軸OA2に沿って液晶層20の両側に略平行に配置された二つの第2透明基板と、一方の第2透明基板と第2液晶層の間に配置された回転領域透明電極と、他方の第2液晶層と第2透明基板の間に配置された第2対向電極とを有する。第2液晶層及び第2透明基板は、それぞれ液晶素子15Aの液晶層20及び透明基板21、22と同様の構成を有する。
第2液晶層は、中央透過領域20Aと対向する中央回転領域30Aと、第1透過領域20Bと対向する第1回転領域30Bと、第2透過領域20Cと対向する第2回転領域30Cとを有する。即ち、中央透過領域20Aと中央回転領域30A、第1透過領域20Bと第1回転領域30B、及び、第2透過領域20Cと第2回転領域30Cは、それぞれ光軸OA2方向に投影した位置が等しくなるように設定される。ただし、第1回転領域30B及び第2回転領域30Cは、第1透過領域20B及び第2透過領域20Cと異なり、複数の小領域に分割されない。
中央回転領域30Aは、各回折光の内の0次の青色回折光及び赤色回折光が入射する位置に配置され、第1回転領域30Bは、±1次の青色回折光が透過する位置に配置され、第2回転領域30Cは、±1次の赤色回折光が透過する位置に配置される。
また、第2液晶層の各回転領域に封入された液晶分子は、液晶素子15Aの液晶分子27と同様にホモジニアス配向されるが、各液晶分子の配向方向は、液晶素子15Aの液晶分子27の配向方向と異なる。各液晶分子は、入射する回折光の偏光方向202に対して60°(75°-15°)をなす方向205に配向される。
図8は、回折光が入射する側から見た回転領域透明電極33の概略正面図である。
回転領域透明電極33は、第2液晶層の中央回転領域30A、第1回転領域30B及び第2回転領域30Cのそれぞれに電圧を印加する中央回転領域透明電極33A、第1回転領域透明電極33B及び第2回転領域透明電極33Cを有する。各電極33A~33Cは、第2液晶層の各回転領域毎に、各回転領域の回折光が入射する側の面を覆い、互いに絶縁されている。各電極33A~33Cは、それぞれ配線33A’~33C’を介して制御部108に接続される。
一方、第2対向電極は、中央回転領域透明電極33A、第1回転領域透明電極33B及び第2回転領域透明電極33Cと対向する透明なベタ電極である。
図9は、回折光が入射する側から見た第3液晶素子16Bの概略正面図である。
第3液晶素子16Bも、第2液晶素子16Aと同様の構成を有する。ただし、第3液晶素子16Bの液晶層の各回転領域に封入された液晶分子は、入射する回折光の偏光方向202に対して120°(75°-(-45°))をなす方向207に配向される。
なお、変形例によれば、第2液晶素子16A及び第3液晶素子16Bの内の何れか一方又は両方は省略されてもよい。
制御部108は、シャッター素子15による選択的透過と、偏光方向回転素子16による偏光方向の回転とを制御する。
図10は、第1光源101Aが出射した青色レーザ光211Aに対する処理について説明するための模式図である。
図10に示すように、第1光源101Aが出射した青色レーザ光211Aの偏光方向は、第1光源101Aから出射されたときは鉛直方向221を向いている。この青色レーザ光211Aは、光軸OA2に対して直交する方向から偏光ビームスプリッタ13に入射され、偏光ビームスプリッタ13により回折素子11へ向けて反射され、回折素子11に入射する。回折素子11から出射した0次又は特定の方向に沿って回折された±1次の青色回折光は、第1位相変調素子12により偏光方向を調整され、偏光ビームスプリッタ13に入射される。偏光ビームスプリッタ13は、第1位相変調素子12から出射された青色回折光のうち、水平成分222のみを透過させ、第2位相変調素子14に入射させる。第2位相変調素子14は、偏光ビームスプリッタ13から出射された青色回折光の偏光方向を水平方向に対して反時計回りに75°をなす方向223に回転させる。第2位相変調素子14から出射した青色回折光は、液晶素子15Aに入射する。
制御部108は、液晶素子15Aの第1透過領域20Bの内、入射した±1次の青色回折光の回折方向に対応する小領域20B1~B6からその±1次の青色回折光が出射して検光子15Bを透過するように、液晶素子15Aの対向電極24及び各第1透明電極23B1~B6間に印加される電圧を制御する。即ち、制御部108は、第1透過領域20Bの内の中央透過領域20Aを挟んで相互に対向する2個の小領域から出射する±1次の青色回折光の偏光方向が同じになり、その2個の小領域から±1次の青色回折光が出射して検光子15Bを同時に透過するように、液晶素子15Aの対向電極24及び各第1透明電極23B1~B6間に印加される電圧を制御する。また、制御部108は、液晶素子15Aの中央透過領域20Aから出射した0次の青色回折光が検光子15Bを透過しないように、液晶素子15Aの対向電極24及び中央透明電極23A間に印加される電圧を制御する。
前述したように、液晶素子15Aの液晶分子27は、入射する±1次の青色回折光の偏光方向に対して時計回りに45°をなす方向(図4の方向204)に配向されている。制御部108は、検光子15Bを透過させる±1次の青色回折光が入射する小領域を半波長板として機能させないように、その小領域に印加される電圧を制御し、その小領域に入射した±1次の青色回折光の偏光方向を回転させない(偏光方向は図4の矢印202の方向、即ち、図10の方向224になる)。一方、制御部108は、検光子15Bを透過させない光が入射する小領域を半波長板として機能させるように、その小領域に印加される電圧を制御し、その小領域に入射した±1次の青色回折光の偏光方向を時計回りに90°回転させる(偏光方向は図4の矢印203の方向、即ち、図10の方向224と直交する方向になる)。この半波長板として機能させる小領域に入射する光は、例えば迷光である。また、制御部108は、液晶素子15Aの中央透過領域20Aに入射した0次の青色回折光の偏光方向を時計回りに90°回転させる(偏光方向は図4の矢印203の方向、即ち、図10の方向224と直交する方向になる)。液晶素子15Aを透過した0次又は±1次の青色回折光は、検光子15Bに入射する。
検光子15Bは、液晶素子15Aに入射した±1次の青色回折光の偏光方向(方向223)と平行な偏光方向(方向225)を有する青色回折光のみを透過させる。図10に示す例において、0次の青色回折光は、検光子15Bを透過せず、±1次の青色回折光は、検光子15Bを透過する。検光子15Bを透過した±1次の青色回折光は、第2液晶素子16Aの第1回転領域30Bに入射する。
なお、検光子15Bは、液晶素子15Aに入射した回折光の偏光方向と直交する偏光方向を有する回折光のみを透過させるように配置されてもよい。その場合、制御部108は、検光子15Bを透過させる回折光が入射する液晶素子15Aの小領域を半波長板として機能させ、検光子15Bを透過させない回折光が入射する液晶素子15Aの小領域を半波長板として機能させないように、小領域に印加される電圧を制御する。
制御部108は、利用者による設定に応じて、第2液晶素子16Aの第1回転領域30Bにおいて、入射した±1次の青色回折光の偏光方向を回転するように、第2対向電極及び第1回転領域透明電極33B間に印加される電圧を制御する。
前述したように、第2液晶素子16Aの液晶分子は、入射する±1次の青色回折光の偏光方向に対して時計回りに60°をなす方向(図7の方向205)に配向されている。制御部108は、±1次の青色回折光の偏光方向を回転させる場合、第2液晶素子16Aの第1回転領域30Bを半波長板として機能させるように、第1回転領域30Bに印加される電圧を制御し、その±1次の青色回折光の偏光方向を時計回りに120°回転させる(偏光方向は図7の矢印206の方向、即ち、図10の方向226の方向になる)。一方、制御部108は、±1次の青色回折光の偏光方向を回転させない場合、第2液晶素子16Aの第1回転領域30Bを半波長板として機能させないように、第1回転領域30Bに印加される電圧を制御し、その±1次の青色回折光の偏光方向を回転させない(偏光方向は図7の矢印202の方向になる)。
同様に、制御部108は、利用者による設定に応じて、第3液晶素子16Bの第1回転領域40Bにおいて、入射した±1次の青色回折光の偏光方向を回転するように、第3液晶素子16Bの第2対向電極及び第1回転領域透明電極間に印加される電圧を制御する。
前述したように、第3液晶素子16Bの液晶分子は、入射する±1次の青色回折光の偏光方向に対して時計回りに120°をなす方向(図9の方向207)に配向されている。制御部108は、±1次の青色回折光を回転させる場合、第3液晶素子16Bの第1回転領域40Bを半波長板として機能させるように、第1回転領域40Bに印加される電圧を制御し、その±1次の青色回折光の偏光方向を時計回りに240°回転させる(偏光方向は図9の矢印208の方向、即ち、図10の方向227の方向になる)。一方、制御部108は、±1次の青色回折光の偏光方向を回転させない場合、第3液晶素子16Bの第1回転領域を半波長板として機能させないように、第1回転領域40Bに印加される電圧を制御し、その±1次の青色回折光の偏光方向を回転させない(偏光方向は図7の矢印202の方向になる)。
図10に示す方向228は、検光子15Bを透過し、第3液晶素子16Bにより偏光方向を回転された青色回折光の偏光方向を表す。
図11は、第2光源101Bが出射した赤色レーザ光211Bに対する処理について説明するための模式図である。図11に示す赤色レーザ光211Bに対する処理は、図10に示す青色レーザ光211Aに対する処理と同時に実行される。
図11に示すように、第2光源101Bが出射した赤色レーザ光211Bの偏光方向も、第1光源101Aが出射した青色レーザ光211Aの偏光方向と同様に、第2光源101Bから出射されたときは鉛直方向231を向いている。その後、青色レーザ光211Aと同様に、赤色レーザ光211Bは回折素子11に入射し、回折素子11から出射した0次又は特定の方向に沿って回折された±1次の赤色回折光は、各部を介して液晶素子15Aに入射する。
制御部108は、液晶素子15Aの第2透過領域20Cの内、入射した±1次の赤色回折光の回折方向に対応する小領域20C1~C6からその±1次の赤色回折光が出射して検光子15Bを透過するように、液晶素子15Aの対向電極24及び各第2透明電極23C1~C6間に印加される電圧を制御する。即ち、制御部108は、液晶素子15Aの第2透過領域20Cの内の±1次の青色回折光を透過させた2個の小領域のそれぞれと隣接する2個の小領域から出射する±1次の赤色回折光の偏光方向が同じになり、その2個の小領域から±1次の赤色回折光が同時に出射して検光子15Bを透過するように、液晶素子15Aの対向電極24及び各第2透明電極23C1~C6間に印加される電圧を制御する。また、制御部108は、液晶素子15Aの中央透過領域20Aから出射する0次の赤色回折光が検光子15Bを透過しないように、液晶素子15Aの対向電極24及び中央透明電極23A間に印加される電圧を制御する。
このように、制御部108は、液晶素子15Aの第1透過領域20Bの内、対応する小領域から±1次の青色回折光が出射して検光子15Bを透過するように、液晶素子15Aの対向電極24及び各第1透明電極23B1~B6間に印加される電圧を制御し、且つ同時に、液晶素子15Aの第2透過領域20Cの内、対応する小領域から±1次の赤色回折光が出射して検光子15Bを透過するように、液晶素子15Aの対向電極24及び各第2透明電極23C1~C6間に印加される電圧を制御する。これにより、制御部108は、各方向に沿って回折された±1次の青色回折光及び赤色回折光を、各方向毎に同時にシャッター素子15を透過させて、超解像画像を生成するために利用することができる。
制御部108は、液晶素子15Bを透過させる±1次の赤色回折光が入射する小領域については半波長板として機能させないように、その小領域に印加される電圧を制御し、その小領域に入射した±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させない。一方、制御部108は、液晶素子15Bを透過させる±1次の赤色回折光が入射する小領域については半波長板として機能するように、その小領域に印加される電圧を制御し、その小領域に入射した±1次の赤色回折光の偏光方向を時計回りに90°回転させる。この半波長板として機能させる小領域は、前述の半波長板として機能させない小領域以外の小領域であり、この半波長板として機能させる小領域に入射する光は、例えば迷光である。また、制御部108は、液晶素子15Aの中央透過領域20Aが半波長板として機能するように、中央透過領域20Aに印加される電圧を制御し、中央透過領域20Aに入射した0次の赤色回折光の偏光方向を時計回りに90°回転させる。液晶素子15Aを透過した0次又は±1次の赤色回折光は、検光子15Bに入射する。
透明電極23と対向電極24の間に電圧が印加されると、液晶分子27は、その電圧に応じて電圧が印加された方向に対して平行になる方向に傾く。図5に示すように、液晶分子27の長軸方向と、電圧が印加された方向(図5のz軸方向)とがなす角度をψとすれば、液晶層20を透過する回折光の光軸OA2と、液晶分子27の長軸方向とは角度ψをなす。このとき、液晶分子27を図5のz軸方向からxy平面に投影した場合の投影像の長軸方向に平行な偏光成分に対する液晶分子の屈折率(液晶分子を図5のz軸方向から見た場合の見かけ上の屈折率)をnψとすると、no≦nψ≦neとなる。ただし、noは液晶分子27の長軸方向に直交する偏光成分に対する屈折率であり、neは液晶分子27の長軸方向に平行な偏光成分に対する屈折率である。
液晶層20に含まれる液晶分子27がホモジニアス配向されており、液晶層20の厚さがdである場合、液晶分子27の配向方向に平行な偏光成分(液晶分子27を図5のz軸方向からxy平面に投影した場合の投影像の長軸方向に平行な偏光成分)の光路長はnψdとなり、液晶分子27の配向方向に直交する偏光成分(液晶分子27を図5のz軸方向からxy平面に投影した場合の投影像の短軸方向に平行な偏光成分)の光路長はnodとなる。即ち、液晶分子27の配向方向に平行な偏光成分と液晶分子27の配向方向に直交する偏光成分との間に、光路長差Δnd(=nψd-nod)が生じる。したがって、透明電極23と対向電極24の間に印加する電圧を調節することにより、液晶分子27の配向方向に平行な偏光成分と、液晶分子27の配向方向に直交する偏光成分との光路長差を調節できる。しかしながら、この光路長差によって各偏光成分の間に生じる位相差は回折光の波長に応じて異なるため、各偏光成分の間に半波長分の位相差を生じさせるために印加すべき電圧は回折光の波長に応じて異なる。
図12は、各波長を有する回折光毎に、透明電極23と対向電極24の間に印加する電圧と、各電圧を印加したときに回折光の相互に直交する二つの偏光成分の間に生じる位相差の関係を表すグラフである。
図12の横軸は、透明電極23と対向電極24の間に印加する電圧(実行電圧)[Vrms]を示し、縦軸は、位相差量を示す。この位相差量の単位は、一波長であり、位相差量に各光の波長を乗じた値が光路長差となる。
図12に示すように、例えば、波長405[nm]の青色回折光に対して、半波長(0.5波長)分の位相差を生じさせるためには略5.0[Vrms]の電圧を印加する必要がある。一方、波長647[nm]の赤色回折光に対して、半波長分の位相差を生じさせるためには略3.3[Vrms]の電圧を印加する必要がある。即ち、液晶層20を半波長板として機能させるために印加する電圧は、液晶層20に透過させる光の波長に応じて異なる。したがって、液晶層20を半波長板として機能させるために液晶層20全体に同じ電圧を印加した場合、青色回折光及び赤色回折光の内の少なくとも一方の回折光に対する位相変調精度が低下し、所望の回折光を適切に透過させることができなくなる。
そこで、制御部108は、入射する回折光の波長が異なる液晶素子15Aの第1透過領域20Bと第2透過領域20Cとで、液晶層20を半波長板として機能させるために液晶素子15Aの対向電極24及び各第1透明電極23B1~B6間に印加する電圧と、対向電極24及び各第2透明電極23C1~C6間に印加する電圧とを、入射する回折光の波長に応じて異ならせる。なお、各電極間に印加される電圧の値は、図12に示したグラフ等に基づいて定められる。このように、制御部108は、液晶素子15Aの第1透過領域20Bに入射する回折光及び第2透過領域20Cに入射する回折光について、相互に直交する二つの偏光成分の間に生じる位相差がそれぞれ各回折光の波長の半分となるように、液晶素子15Aの第1透過領域20B及び第2透過領域20Cに印加される電圧を制御する。これにより、制御部108は、第1透過領域20Bを透過した±1次の青色回折光の偏光方向、及び、第2透過領域20Cを透過した±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させる角度が、各回折光の波長に関わらず一定(90°)となるように制御する。
これにより、シャッター素子15は、波長の異なる複数の回折光の各偏光方向を同時に、検光子15Bが透過させる角度又はその角度と直交する角度に精度良く回転させることが可能となり、特定の小領域に入射した各回折光を精度良く透過させ、他の小領域に入射した各回折光を精度良く遮断させることが可能となる。
検光子15Bは、偏光方向が、液晶素子15Aに入射した±1次の赤色回折光の偏光方向(方向233)と平行な偏光方向(方向235)又は直交する偏光方向を有する赤色回折光のみを透過させる。図11に示す例において、0次の赤色回折光は、検光子15Bを透過せず、±1次の赤色回折光は、検光子15Bを透過する。検光子15Bを透過した±1次の赤色回折光は、第2液晶素子16Aの第2回転領域30Cに入射する。
制御部108は、利用者による設定に応じて、第2液晶素子16Aの第2回転領域30Cにおいて、入射した±1次の赤色回折光の偏光方向を回転するように、第2対向電極及び各第2回転領域透明電極33C間に印加される電圧を制御する。
このように、制御部108は、第2液晶素子16Aの第1回転領域30Bにおいて±1次の青色回折光の偏光方向を回転させ、且つ同時に、第2液晶素子16Aの第2回転領域30Cにおいて±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させるように電圧を制御する。これにより、制御部108は、±1次の青色回折光及び赤色回折光の偏光方向を同時に回転させて、超解像画像を生成するために利用することができる。
制御部108は、±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させる場合、第2液晶素子16Aの第2回転領域30Cを半波長板として機能させるように、第2回転領域30Cに印加される電圧を制御し、その±1次の赤色回折光の偏光方向を時計回りに120°回転させる。一方、制御部108は、±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させない場合、第2液晶素子16Aの第2回転領域30Cを半波長板として機能させないように、第2回転領域30Cに印加される電圧を制御し、その±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させない。
また、液晶素子15Aと同様に、制御部108は、第2液晶素子16Aの第1回転領域30Bと第2回転領域30Cとで、第2液晶層を半波長板として機能させるために第2対向電極及び第1回転領域透明電極33B間に印加する電圧と、第2対向電極及び第2回転領域透明電極33C間に印加する電圧とを、入射する回折光の波長に応じて異ならせる。このように、制御部108は、第2液晶素子16Aの第1回転領域30B及び第2回転領域30Cを透過させる各回折光において相互に直交する二つの偏光成分の間に生じる位相差がそれぞれ各回折光の波長の半分となるように、第2液晶素子16Aの第1回転領域30B及び第2回転領域30Cに印加される電圧を制御する。これにより、制御部108は、第2液晶素子16Aの第1回転領域30Bを透過した±1次の青色回折光の偏光方向、及び、第2回転領域30Cを透過した±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させる角度が、各回折光の波長に関わらず一定(120°)となるように、第2液晶素子16Aの第1回転領域30B及び第2回転領域30Cに印加される電圧を制御する。
これにより、第2液晶素子16Aは、波長の異なる複数の光の各偏光方向を同時に、所望の角度に精度良く回転させることが可能となる。
また、制御部108は、液晶素子15Aの第1透過領域20B及び第2透過領域20Cと異なり、第2液晶素子16Aの第1回転領域30B及び第2回転領域30Cのそれぞれにおいて、回折光の偏光方向の回転を一括して制御する。これにより、制御部108は、偏光方向の回転制御に係る処理負荷が増大することを抑制できる。
同様に、制御部108は、利用者による設定に応じて、第3液晶素子16Bの第2回転領域40Cにおいて、入射した±1次の赤色回折光の偏光方向を回転するように、第3液晶素子16Bの第2対向電極及び各第2回転領域透明電極間に印加される電圧を制御する。
制御部108は、±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させる場合、第3液晶素子16Bの第2回転領域40Cを半波長板として機能させるように、第2回転領域40Cに印加される電圧を制御し、その±1次の赤色回折光の偏光方向を時計回りに240°回転させる。一方、制御部108は、±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させない場合、第3液晶素子16Bの第2回転領域40Cを半波長板として機能させないように、第2回転領域40Cに印加される電圧を制御し、その±1次の赤色回折光の偏光方向を回転させない。
図11に示す方向238は、検光子15Bを透過し、第3液晶素子16Bにより偏光方向を回転された赤色回折光の偏光方向を表す。図10及び図11に示すように、光変調ユニット102が出力する波長の異なる複数の回折光の偏光方向は、同一の方向を向いている。このように、光変調ユニット102は、青色レーザ光と赤色レーザ光のそれぞれに対して、独立して、各色レーザ光の波長に応じた適切な量の位相変調を行うことが可能となり、青色レーザ光と赤色レーザ光に対する処理を同時且つ適切に実行することが可能となる。
図13は、制御部108によって生成される試料画像の一例を示す模式図である。
図13に示す画像Jは、第1光源101Aが出射した青色レーザ光に基づいて生成された試料画像の一例である。画像A~Iに示される各矩形は、回折素子11に表示される回折格子の各格子線の概念図を示す。
画像A~Cは、液晶素子15Aの第1透過領域20Bの小領域20B1、B4を透過させた青色回折光に基づいて生成されたモアレ縞の画像である。画像D~Fは、液晶素子15Aの第1透過領域20Bの小領域20B2、B5を透過させた青色回折光に基づいて生成されたモアレ縞の画像である。画像G~Iは、液晶素子15Aの第1透過領域20Bの小領域20B3、B6を透過させた青色回折光に基づいて生成されたモアレ縞の画像である。画像A~C、D~F、G~Iのそれぞれにおいて、回折素子11に表示させる回折格子の各格子線の位置は、各格子線と直交する方向、すなわち各レーザ光が回折する方向に沿ってシフトしている。試料画像Jは、画像A~Iを合成することにより生成される。試料画像Jは、回折方向、及び、回折格子の位相が異なる複数の回折光を用いて生成されるため、高解像度に生成される。
なお、第2光源101Bが出射した赤色レーザ光に基づく試料画像も同様に、液晶素子15Aの第2透過領域20Cの小領域20C1、C4を透過させた各位相の回折格子による赤色回折光に基づく三つの画像と、小領域20C2、C5を透過させた各位相の回折格子による赤色回折光に基づく三つの画像と、小領域20C3、C6を透過させた各位相の回折格子による赤色回折光に基づく三つの画像とを合成することにより生成される。
顕微鏡装置100は、このような青色レーザ光に基づく試料画像及び赤色レーザ光に基づく試料画像を同時に生成することができるため、試料画像の生成に要する時間を短縮することができる。
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態に係る照明装置は、各回折光の偏光方向を液晶素子によって制御するので、機械的に作動する部品をなくすことができる。また、照明装置は、機械的に作動する部品をなくすことにより、回折格子の位相及び回折方向を変更する際に要する時間を短縮できるので、顕微鏡装置100は、個々のモアレ縞の画像を撮影するのに要する時間を短縮でき、結果として、試料画像の生成に要する時間を短縮できる。さらに、液晶素子は、波長の異なる複数の回折光を透過させる領域を別個に有し、各領域から各回折光が同時に透過するように各領域に印加する電圧を制御する。これにより、照明装置は、波長の異なる複数の回折光に対して、独立して、各回折光の波長に応じた適切な量の位相変調を行うことが可能となり、波長の異なる複数の回折光を同時且つ適切に処理することが可能となる。
なお、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、第1光源101A及び第2光源101Bが出射する光は、青色レーザ光及び赤色レーザ光に限定されず、他の波長を有する色のレーザ光でもよい。また、光源101は、3つ以上の色のレーザ光を同時に出射するように構成されてもよい。その場合、液晶素子15Aの各透過領域と、第2液晶素子16A及び第3液晶素子16Bの各回転領域は、光源101が出射する各色のレーザ光の各次の回折光が入射する位置に設けられる。また、制御部108は、各透過領域、各回転領域を半波長板として機能させるために各領域に印加する電圧を、光源101が出射するレーザ光の波長に応じて異ならせる。
また他の変形例によれば、回折素子11は、液晶層の少なくとも一方の表面に、2次元に配列された複数の画素ごとに独立した透明電極を有する、透過型の液晶素子であってもよい。この場合には、光源101は、各レーザ光が光軸OA2に沿って回折素子11に入射するように配置される。そして回折素子11によって回折された回折光は、レーザ光が入射した側の面と反対側であり、かつ、第1位相変調素子12と対向する側の面から出射する。
さらに他の変形例によれば、シャッター素子15は、中央透過領域20Aにおいて、0次の回折光を選択的に透過させてもよい。その場合、偏光方向回転素子16は、シャッター素子15を透過した0次の回折光の偏光方向を中央回転領域において回転させてもよい。これにより、±1次の回折光に加えて、0次の回折光を、試料画像を生成するために利用することができ、試料画像の解像度をより高くすることができる。
さらに他の変形例によれば、偏光方向回転素子16が有する第2液晶素子16A及び/又は第3液晶素子16Bとして、シャッター素子15が有する液晶素子15Aと同一の構造を有する素子が用いられてもよい。これにより、部品の共通化を図ることが可能となり、光変調ユニット102のコストを低減することができる。
なお、シャッター素子15及び偏光方向回転素子16を有する光変調サブユニット10は、顕微鏡装置100又は光変調ユニット102とは独立したパッケージとして提供されてもよい。
また、図11に示す赤色レーザ光211Bに対する処理は、図10に示す青色レーザ光211Aに対する処理と同時に実行されなくてもよい。
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
液晶素子を用いて各回折光の偏光方向を調節する場合、液晶素子内の液晶分子の傾きを変更することにより、各回折光の偏光方向を変更する。しかしながら、各回折光の偏光方向を一定量回転させるための液晶分子の傾きの変更量は、各回折光の波長によって異なるため、波長の異なる複数の回折光の偏光方向を同時に適切に調節することは困難である。このような問題に対し、本発明に係る照明装置は、機械的に作動する部品を利用せず、且つ、波長の異なる複数の回折光を適切に処理することができるという効果を奏する。